説明

ポリオレフィンを含有する対象の柔軟仕上げ

本発明は、一般式(I):A-B-C-B-Aおよび/または(II):A-B-A [式中、Aは、R-COO基(ここで、Rは7〜21個の炭素原子を含む、飽和、分岐または未分岐のアルキル基である)であり、Bは、(Cn2nO)k基(ここで、nは2〜4の整数であり、kは1〜15の値であってよい)であり、Cは、少なくとも2個しかし6個を越えない炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキレン基である]で示される化合物の使用に関する。これらの化合物を、ポリオレフィンを含有する合成繊維の柔軟仕上げを行うための内部添加剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン含有材料、好ましくはポリプロピレン繊維を永久的に親水性化するための添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合に、プラスチック製品の表面に特別の効果を付与しなければならないが、これは、技術的理由のために成形/形状化中には得られるとしても不完全にしか得られないか、または経済的理由のために不十分にしか得られない。このような効果の1つは、例えば、特にヒト皮膚と直接接触することになる物品の場合において、製品の柔軟性を改善することである。
【0003】
衛生物品(例えば、おむつまたは生理用ナプキン)、さらに拭い布あるいは「ジオフリース(geofleece)」の製造において、吸収性物質を用いて水性液体を吸収する。装着中の吸収性物質との直接接触を妨げるため、および装着の快適さを増大させるために、この材料は、薄い水透過性の不織布中に包まれている。通常、このような不織布は、合成繊維(例えば、ポリオレフィンまたはポリエステル繊維)から製造されるが、これは、これらの繊維が安価に製造され、良好な機械的特性示し、そして耐熱性であるためである。この応用を念頭において、高レベルの柔軟性を有する不織布を製造しうることが望ましい。
【0004】
通常、当該種類の添加剤を、ポリオレフィン顆粒と一緒に加工してマスターバッチを生成させ、次いでこれをそのままポリマー顆粒に添加し、次いで繊維または他の最終製品に加工する(後の押出によって)。しかし、コストの理由から、このような添加剤を、押出機における実際の押出過程中に導入しうることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ポリオレフィン繊維またはこのような繊維を含有する物品の柔軟性を改善するための添加剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、ポリオレフィン含有物品の柔軟仕上げのための、一般式(I)または(II):
【化1】

で示される化合物の使用に関する。これらの式において、Aは、R-COO基(ここで、Rは飽和、分岐または未分岐のC7-21アルキル基である)であり、Bは、(Cn2nO)k基(ここで、nは2〜4の整数であり、kは値1〜15を有する)であり、式(I)におけるCは、少なくとも2個および多くとも6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。インデックスkは、個々のB基に関係し、分子中のB基の合計数を示すものではない。インデックスkは、個々の分子の変化する技術的に関連したアルコキシル化度のゆえに変化し、従って、端数であることもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
一般式(I)で示される化合物は、例えば、ポリアルキレングリコールとアルコキシドとのおよび飽和脂肪酸との反応によって得られる。他方において、2〜6個の炭素原子を含むジオール(これは、本発明に係る添加剤の構造単位Cを構成する)、ならびに、エチレン、プロピレンおよび/またはブチレンオキシド(これは、本発明に係る化合物においてB基を構成する)が存在していなければならない。アルコキシドの遊離ヒドロキシル基の末端には飽和C8-22脂肪酸が存在する。このような化合物およびその製造は、独国特許出願DE10123863.0から既知である。
【0008】
ジオールは、好ましくは、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオールおよびブタン-1,4-ジオールからなる群から選択される。原則的に、ジオールの混合物を使用することもできるが、1種類のジオールだけを反応に使用するのが有利であることがわかった。
【0009】
アルコキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドならびにこれらの混合物からなる群から選択される。異なる種類のアルコキシドを反応させるときには、このアルコキシル化反応は、ブロックおよびランダムの両方で起こりうる。式(I)の化合物中のアルコキシド単位の数は、2〜30に変化するので、kは値1〜15をとりうる。式(I)の好ましい化合物は、kが値2〜15、好ましくは値4〜10、より具体的には値10を有するものである。他の好ましい式(I)の化合物は、B基としてエチレンオキシド単位を、好ましくはエチレンオキシド単位だけを含有する。
【0010】
適当な飽和脂肪酸(これは、本発明に係る化合物のA基を構成する)は、好ましくは、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸およびドコサン酸からなる群から選択される。Rが飽和のC9-13またはC9-11アルキル基である式(I)で示される化合物が好ましい。デカン酸(C10)およびウンデカン酸(C11)に基づく式(I)で示される化合物が最も好ましい。
【0011】
式(I)の好ましい化合物は、12℃以下、好ましくは10℃以下、より具体的には6℃以下の冷時曇り点を有する。5℃以下、より具体的には3℃以下の冷時曇り点を有する式(I)の化合物を使用するのが特に有利である。
【0012】
本発明に従って添加剤として適する式(I)の好ましい化合物は、Rが9個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、kが値5を有し、nが値2を有し、CがCH2-CH(CH3)基である化合物、または、Rが11個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、kが値5を有し、nが値2を有し、CがCH2-CH2(CH3)基である化合物である。
【0013】
本発明に係る添加剤は、それら自体で、または互いに混合して使用することができる。さらに、ポリマーの押出または製造のために当分野から既知の他の添加剤を添加することができる。
【0014】
また、式(I)の添加剤に加えて、式(II)の添加剤を使用することもできる。これらの化合物(II)は、2部のC8-22脂肪酸(好ましくはC10-12脂肪酸)を1部のポリエチレングリコールと反応させることによって得られる。分子量300〜600(好ましくは分子量400)を有するポリエチレングリコールを、好ましくは触媒の存在下に、自体既知の方法によって脂肪酸または脂肪酸誘導体と反応させるのが好ましい。飽和C10-12脂肪酸が特に好ましい。適当な脂肪酸誘導体は、C10-12脂肪酸のメチルエステルである。アルコールおよび酸成分を、約1:2のモル比で反応させる。ポリエチレングリコール(分子量400)とデカン酸またはラウリン酸との反応生成物の使用が特に好ましい。また、酸の混合物を、ポリエチレングリコールと反応させることもできる。式(II)の化合物は、国際特許出願WO01/75199の対象である。また、この文献は、ポリオレフィン含有繊維を親水性化するための式(II)の化合物の使用を開示しているが、この添加剤が柔軟仕上げのためにも適することを示唆していない。
【0015】
本発明によれば、本添加剤を、柔軟性を改善するために、ポリオレフィン含有材料、好ましくは繊維、シート形態の材料、例えば不織布およびフィルムにおいて使用する。
【0016】
適当なポリオレフィン含有材料は、エチレンまたはプロピレンに基づくあらゆる既知のポリマーおよびコポリマーである。原則的に、純粋なポリオレフィンとコポリマーとの混合物も適している。また、より柔軟性の高いポリオレフィン繊維を提供するために、本添加剤を、ポリオレフィンと他の合成または天然ポリマー(例えばセルロースまたは麻)との混合物において使用することもできる。
【0017】
本発明の教示の目的に特に適するポリマーを以下に挙げる:ポリ(エチレン)類、例えばHDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、UHMPE(超高分子ポリエチレン)、VPE(架橋ポリエチレン)、HPPE(高圧法ポリエチレン);ポリ(プロピレン)類、例えばアイソタクチック ポリプロピレン;シンジオタクチック ポリプロピレン;メタロセン触媒のポリプロピレンPP、耐衝撃性ポリプロピレン、エチレンとプロピレンに基づくランダムコポリマー、エチレンとプロピレンに基づくブロックコポリマー;EPM[ポリ(エチレン-コ-プロピレン)];EPDM[ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-非共役ジエン)]。
【0018】
他の適当なポリマーは以下の通りである:ポリ(スチレン);ポリ(メチルスチレン);ポリ(オキシメチレン);メタロセン触媒のα-オレフィンまたはシクロオレフィンコポリマー、例えばノルボルネン/エチレン コポリマー;少なくとも60%のエチレンおよび/またはスチレンと40%未満のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸、アクリロニトリル、塩化ビニル)を含有するコポリマー。このようなポリマーの例は以下の通りである:ポリ(エチレン-コ-アクリル酸エチル)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-コ-塩化ビニル)、ポリ(スチレン-コ-アクリロニトリル)。また適するのは、グラフトコポリマーおよびポリマーブレンド、即ち、特に上記したポリマーが存在しているポリマーの混合物、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンに基づくポリマーブレンドである。
【0019】
また、本発明に係る添加剤は、PES/PEまたはPP/PEから製造されるいわゆる「ビコ(bico)」繊維(芯-鞘 繊維)の柔軟化にも適している。
【0020】
エチレンおよびプロピレンに基づくホモポリマーおよびコポリマーが、本発明の目的に特に好ましい。従って、本発明の1つの態様においては、ポリエチレンそれ自体をポリオレフィンとして使用し、別の態様においては、ポリプロピレンそれ自体をポリオレフィンとして使用し、さらに別の態様においては、エチレン/プロピレン コポリマーをポリオレフィンとして使用する。
【0021】
本発明の1つの特に好ましい態様においては、本添加剤をポリプロピレン繊維において使用する。このような繊維は、好ましくは、10〜1,500dg/分の溶融流量を有する(230℃/2.16kg荷重で測定)。好ましい繊維は、例えば、150〜1,200または20〜25または400〜1,000dg/分の溶融流量を有していてよい。
【0022】
また本発明は、ポリオレフィンを完全にまたは部分的に含有する物品の柔軟仕上げのための方法であって、式(I)および/または(II)で示される化合物を、ポリオレフィンを完全にまたは部分的に含有するポリマー顆粒に、該顆粒を基準に0.1〜5重量%の量で添加し、次いで既知の方法で、好ましくは押出によって繊維またはフィルムに加工する方法に関する。
【0023】
これらの物品、好ましくは繊維またはフィルムあるいはこれら繊維のシート形態の材料(例えば不織布)は、本添加剤を、該物品の全重量を基準に、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜2.0重量%、最も好ましくは0.1〜1.8重量%の量で含有する。これらの量は、部分的には親水性効果を達成するために知られている濃度よりもかなり低い。内部添加剤として本発明に従って式(I)および/または(II)の化合物を使用すると、高い柔軟性レベルを有するポリオレフィン含有製品が導かれる。原則的に、本発明に係る添加剤で仕上げた繊維を、外部柔軟化処理にかけることも勿論可能である。これに関連して、この追加の外部処理に使用する仕上剤の量を、内部柔軟化を行わない場合よりも、明らかに少なく維持しうることが利点である。
【実施例】
【0024】
本発明に係る添加剤の柔軟化効果を以下のように試験した。2種類のPPスパンボンド不織布を製造した。1つは式(I)で示される本発明に係る添加剤を含み(1.8重量%)、1つはこの添加剤を含まなかった。次いで、これら不織布の柔軟性を感触試験によって測定した。可能な感触評点は、1=非常に柔軟ないし4=硬いの範囲であった。添加剤を含まない不織布の評点は3〜4であったが、本発明に係る不織布の評点は2であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含有する物品の柔軟仕上げのための内部添加剤としての、一般式(I)および/または(II):
【化1】

[式中、Aは、R-COO基(ここで、Rは飽和、不飽和、分岐または未分岐のC7-21アルキル基である)であり、
Bは、(Cn2nO)k基(ここで、nは2〜4の整数であり、kは値1〜15であってよい)であり、
Cは、少なくとも2個および多くとも6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキレン基である]
で示される化合物の使用。
【請求項2】
式(I)におけるRが、9〜13個の炭素原子、好ましくは9〜11個の炭素原子を含む飽和の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)におけるkが、値1〜15、好ましくは値4〜10、より具体的には値5を有することを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)におけるCが、CH2-CH2、CH2-CH(CH3)、CH2-CH2-CH2または(CH2)4基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
式(I)におけるnが、値2を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
式(I)におけるRが、9個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、kが値5を有し、nが2であり、CがCH2-CH2(CH3)基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
式(I)におけるRが、11個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、kが値5を有し、nが2であり、CがCH2-CH2(CH3)基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
式(I)の化合物が、12℃以下、好ましくは10℃以下、より具体的には6℃以下の冷時曇り点を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
式(I)の化合物が、5℃以下、好ましくは3℃以下の冷時曇り点を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
式(II)の化合物が、2部のC8-22脂肪酸と1部のポリエチレングリコールとの反応によって製造されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
式(II)の化合物が、2部のC10-12脂肪酸と1部のポリエチレングリコールとの反応によって製造されることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
分子量300〜600、好ましくは400〜500を有するポリエチレングリコールが反応において生成することを特徴とする請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
ポリオレフィンを完全にまたは部分的に含有する物品の柔軟仕上げのための方法であって、式(I)および/または(II)で示される化合物を、ポリオレフィンを完全にまたは部分的に含有するポリマー顆粒に、該顆粒を基準に0.1〜10重量%の量で添加し、次いで既知の方法で、好ましくは押出によって繊維またはフィルムに加工することを特徴とする方法。
【請求項14】
式(I)の化合物を、ポリマー顆粒に、0.1〜2.0重量%の量で、より具体的には0.1〜1.8重量%の量で添加することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
次いで最終物品に外部仕上げを供することを特徴とする請求項13または14に記載の方法。

【公表番号】特表2006−508194(P2006−508194A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−567976(P2003−567976)
【出願日】平成15年2月5日(2003.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2003/001096
【国際公開番号】WO2003/068856
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(302039841)コグニス・ドイッチュランド・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (7)
【Fターム(参考)】