説明

ポリオレフィン樹脂フィルム

【課題】NOxガスにより変色せず、耐候性に優れるポリオレフィン樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、フェノール系酸化防止剤と、アミノ基の水素原子がアルコキシ基に置換されている下記式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤とを含有し、上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%であることを特徴とするポリオレフィン樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、その品質として、基材に貼り付けた時に下地が見えないこと、シートの外観がきれいなこと(例えば、表面が平滑であること)等が要求される。
従来、化粧シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や塩化ビニルからなるフィルムが用いられていたが、近年、環境対応への要求や、コストダウンの要求等に応えるべく、ポリオレフィン樹脂からなるフィルムも用いられるようになってきている。
【0003】
ポリオレフィン樹脂フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂成分に、酸化防止剤、光安定剤、無機充填剤等の各種添加剤を配合した樹脂組成物をフィルム状に成形して製造したものが一般的である。
ここで、酸化防止剤としては、種々のものが知られており、ポリオレフィン樹脂に対する酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系の酸化防止剤が一般的に使用されている。
また、光安定剤は、ポリエチレンやポリプロピレンの耐候性を向上させるために配合される添加剤であり、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤が使用されている。
【0004】
具体的には、例えば、特許文献1には、ポリプロピレン、無機フィラー、金属石鹸、フェノール系酸化防止剤、アミン基が全てアルキル基により置換されたヒンダードアミン系耐光剤からなるポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
そして、特許文献1には、ヒンダードアミン系耐光剤とフェノール系酸化防止剤を併用した場合、黄色やピンク等に変色するとの問題が生じることがあるが、ヒンダードアミン系耐光剤として、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換されたヒンダードアミン系耐光剤を用いることにより、変色の問題が解消されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−233305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの研究によると、ポリエチレンやポリプロピレンを樹脂成分として、フェノール系酸化防止剤、及び、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換されたヒンダードアミン系光安定剤を添加剤として配合した樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂フィルムは、その使用態様によっては、フィルムに変色が生じることが明らかとなった。
そこで、本発明者らは、その原因を解明するとともに上記課題を解決するための方策について鋭意検討を重ねた。
【0007】
その結果、上述した変色の問題は、NOxガスリッチな環境下でポリオレフィン樹脂フィルムを使用することにより生じること、即ち、上記変色は、NOxガスによって生じることが明らかとなった。
その上で、さらに本発明者らは、フェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とを含む樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂フィルムにおいて、ヒンダードアミン系光安定剤として、特定の構造を有するヒンダードアミン系光安定剤を特定量配合させることにより上述した変色の問題を解決することができ、加えて、ポリオレフィン樹脂フィルムの耐候性も向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、
少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、
フェノール系酸化防止剤と、
ヒンダードアミン系光安定剤と
を含有する樹脂組成物からなり、
上記ヒンダードアミン系安定剤は、下記一般式(1)又は(2)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であり、
【化1】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜20のアルキル基である。)
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜20のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基である。)
上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%である
ことを特徴とする。
【0009】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、カレンダー加工により成形されたものであることが望ましい。
【0010】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムにおいて、上記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンであることが望ましい。
【0011】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、厚さが0.04〜0.5mmであることが望ましい。
【0012】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムにおいて、上記樹脂組成物は、さらに、無機充填剤を含有し、その含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、50〜80重量%であることが望ましい。
ここで、上記無機充填剤は、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタン(TiO)であることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、NOxガスによる変色がなく、耐候性に優れ、自動車、建材等に貼付する化粧シート、ステッカー、マーキングシート等として好適に使用することができる。
【0014】
以下、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムについて説明する。
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、
少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、
フェノール系酸化防止剤と、
特定の構造を有するヒンダードアミン系光安定剤(以下、光安定剤Aともいう)と
を含有する樹脂組成物からなり、
上記光安定剤Aは、下記一般式(1)又は(2)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であり、
【化3】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜20のアルキル基である。)
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜20のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基である。)
上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%である
ことを特徴とする。
【0015】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、フェノール系酸化防止剤と、上記一般式(1)又は(2)で表される特定のヒンダードアミン系光安定剤(光安定剤A)とを含有しているため、NOxガスによる変色を防止することができる。なお、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、上記一般式(1)で表されるヒンダードアミン系安定剤と、上記一般式(2)で表されるヒンダードアミン系安定剤との両方を含有していてもよい。
上記の変色防止効果についてもう少し詳しく説明する。
【0016】
ポリオレフィン樹脂フィルムの変色は、フェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基から水素原子が引き抜かれ、キノイド構造を有する化合物が誘導された際に生じることが原因の1つと考えられる。
例えば、フェノール系酸化防止剤が、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕、(別名:テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)である場合には、下記反応式(3)に示す化学反応が進行することにより、キノイド構造を有する化合物が生成される。そして、反応が進行することで、ポリオレフィン樹脂フィルムが変色(発色)すると考えられる。
【0017】
【化5】

【0018】
そして、上記反応式(3)に示す、フェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基から水素原子を引き抜く反応は、ヒンダードアミン系光安定剤としてアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されたヒンダードアミン系光安定剤を使用した場合に、このヒンダードアミン系光安定剤のアルキル基に存在する水素原子が炭素原子から電離する反応がNOxガスにより進行した場合、即ち、下記反応式(4)に示す化学反応が右側に進行し、上記アルキル基が不安定な−CHとなった場合に促進されると考えられる。
【0019】
【化6】

【0020】
一方、本発明のように、ヒンダードアミン系光安定剤として光安定剤Aを使用した場合には、光安定剤Aは、アミノ基の水素原子がアルコキシ基に置換されており、アルコキシ基に存在する水素原子が炭素原子から電離する反応が進行しても、下記反応式(5)に示す反応が進行するだけであり、下記反応式(5)の進行に伴い生じる−O=CH−は、−CHに比べてはるかに安定であり、上記反応式(3)の反応(フェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基から水素原子を引き抜く反応)を促進させることはない。
【0021】
【化7】

【0022】
従って、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムでは、NOxガスに暴露されたとしても、ヒンダードアミン系光安定剤の反応に起因して、フェノール系酸化防止剤からキノイド構造を有する化合物が誘導されることがなく、そのため、ポリオレフィン樹脂フィルムの変色を防止することができると考えられる。
【0023】
上記光安定剤Aの具体例としては、例えば、アデカ社製、アデカスタブLA−81(一般式(1)中、R及びRが共に炭素数11のアルキル基)、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、チヌビン123(一般式(2)中、R及びRが共に炭素数8のアルキル基であり、Rが炭素数8のアルキレン基である、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル)等が挙げられる。
なお、これらのヒンダードアミン系光安定剤は既に上市されており、その存在自体は公知であるものの、上述したように、フェノール系酸化防止剤と併用した際に、フェノール系酸化防止剤のキノイド化に起因する変色を好適に防止することができること、特に、NOxガスに暴露された際の変色を好適に防止することができることは一切知られておらず、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換されたヒンダードアミン系光安定剤とフェノール系酸化防止剤とを併用した場合にNOxガスによる変色が生じるとの課題や、上述したような光安定剤Aとフェノール系酸化防止剤とを併用した際にNOxガスによる変色を防止することができるとの効果は、本発明者らによって初めて見出された知見である。
【0024】
上記フェノール系酸化防止剤としては特に限定されず、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕以外にも、従来公知のフェノール系酸化防止剤を使用することができ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチル)フェノール、4,4′−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−3−メチル)フェノール、2,2−メチレン−ビス(6−t−ブチル−3−メチル)フェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチル)フェノール、4,4′−チオビス(2−メチル−6−t−ブチル)フェノール、4,4′−チオビス(3−メチル−2−t−ブチル)フェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−α−ヒドロキシベンゼン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0025】
上記樹脂組成物は、少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方を樹脂成分として含有する。
上記ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらのなかでは、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。高密度ポリエチレンは、耐候性及び引張強度に優れ、さらに高密度ポリエチレンからなるフィルムは、長尺の巻物にしても弛みがなく折り曲げ加工時に白化による外観不良が発生しにくいからである。
特に、樹脂成分がポリエチレンのみである場合は、高密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが望ましい。
また、高密度ポリエチレンは、加工時の耐熱性及び加工性に優れるため、カレンダー加工によりフィルムに成形するのに特に適している。
【0026】
また、上記ポリエチレンは、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が、0.1〜4.0g/10minであることが望ましく、0.4〜2.0g/10minであることがより望ましい。MFRが上記範囲にあると、カレンダー加工によりフィルムを成形するのに適している。
【0027】
上記ポリプロピレンとしては、例えば、単独重合ポリプロピレン(h−PP)、ランダム共重合ポリプロピレン(r−PP)、ブロック共重合ポリプロピレン(b−PP)、メタロセンポリプロピレン樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらのなかでは、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂が望ましい。その理由は、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂は、単独重合ポリプロピレン樹脂やブロック共重合体ポリプロピレン樹脂に比べて、折り曲げ時に白化しにくいからである。
【0028】
また、上記ポリプロピレンは、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が、0.1〜4.0g/10minであることが望ましく、0.4〜2.0g/10minであることがより望ましい。MFRが上記範囲にあると、カレンダー加工によりフィルムを成形するのに適している。
【0029】
また、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物を樹脂成分とすることもでき、特に、ポリオレフィン樹脂フィルムをカレンダー加工により製造する場合には、ポリエチレン又はポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いることが望ましい。ポリプロピレンのみではカレンダー加工での成形性に劣る傾向にあるからである。
また、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物を用いる場合、ポリエチレンとポリプロピレンの合計量に対するポリプロピレンの含有量は、90重量%以下であることが望ましい。PPの含有量が多いと、厚さの薄いフィルムを成形した場合にその表面に凹凸が形成される(表面粗さが大きくなる)場合がある。
【0030】
上記樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリエチレン、ポリプロピレン以外の樹脂を含有していてもよい。具体的には、例えば、エチレン−プロピレン共重合体成分及び/又はポリブチレン成分と、ポリプロピレン成分とを有する共重合体(所謂、リアクターTPO)等を含有していてもよい。
【0031】
上記樹脂組成物では、上記光安定剤Aの含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%である。
上記光安定剤Aの含有量が0.05重量%未満では、ポリオレフィン樹脂フィルムの耐候性が不充分であり、一方、5重量%を超えると、ポリオレフィン樹脂フィルムのNOxガスによる変色を防止することができなくなるからである。
【0032】
上記樹脂組成物は、さらに無機充填剤を含有していてもよい。
上記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン・酸化アンチモン・酸化ニッケル固溶体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらのなかでは、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタンが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、炭酸カルシウムを含有することで、印刷時のインクの密着性や、裁断時の裁断性が向上する。
【0033】
上記無機充填剤の含有量は、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、50〜80重量%であることが望ましい。この理由は後述する。
【0034】
上記樹脂組成物は、さらに、紫外線吸収剤、滑剤、熱安定剤、顔料、改質剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤、防カビ剤等の公知の添加剤を適量含有していてもよい
【0035】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0036】
このような樹脂組成物からなる本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、厚さが0.04〜0.5mmであることが望ましい。
この理由は、カレンダー加工で成形するのに適しており、上記厚さのフィルムはカレンダー加工により、優れた表面平滑性及び高い厚み精度を有するフィルムとして成形するのに適しているからである。
【0037】
次に、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法について説明する。
上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、例えば、所定量の各原料を溶融混練して樹脂組成物とした後、これをカレンダー加工によってフィルムとすることによって製造することができる。
即ち、樹脂成分、フェノール系酸化防止剤及び光安定剤A、更には必要に応じて、無機充填剤や他の各種添加材を配合した後、これを連続混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等によって、通常、150〜200℃の温度で加熱混練して溶融し、樹脂組成物(混錬物)を調製する。続いて、この混練物を、ロール温度150〜220℃、好ましくは、160〜190℃のカレンダーロールに供給し圧延することより、所要厚さのフィルムをカレンダー加工によって得ることができる。
ここで、カレンダー装置としては、3本型、4本L型、4本逆L型、4本Z型、6本型等、適宜のものを使用すればよい。
また、上記ポリオレフィン樹脂フィルムは、カレンダー加工以外にも、例えば、押出成形等、公知の成形方法によっても製造することができる。
【0038】
しかしながら、上記ポリオレフィン樹脂フィルムの成形方法は、カレンダー加工が望ましい。
その理由は、フィルムの厚さが薄い場合、厚さの均一なフィルムを製造するに適しているからである。
また、カレンダー成形は、成形機の構造上、多くの色、サイズ、樹脂の種類に対応し易く、小ロットにも対応し易い点でも好適である。
【0039】
特に、上記樹脂組成物が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、50〜80重量%の無機充填剤を含有する場合は、カレンダー加工により成形することが望ましい。
このように、無機充填剤を多量に含有させる場合、例えば、押出成形によって成形すると、得られるフィルムの表面が荒れ、フィルムが裂け易くなるのに対し、カレンダー加工による成形ではこのような不都合が発生せず、表面の平滑なフィルムを製造することができるからである。
そして、このような無機充填剤を50〜80重量%含有する場合のカレンダー加工の優位性は、ポリオレフィン樹脂フィルムの厚さが40〜70μm程度と薄い場合に特に顕著に認められる。
【0040】
また、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、製造後、各種表面処理が施されてもよい。
上記表面処理としては、例えば、例えば、コロナ処理(コロナ放電処理)、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理(電子線放射処理)等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明について実施例を掲げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン系樹脂(融点:155℃、MFR(190℃、2160g):2.0g/10minのランダムポリプロピレン樹脂)100重量部、紫外線吸収剤として2(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(アデカ社製、アデカスタブLA−81)0.4重量部、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕0.1重量部、無機充填剤1として炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム(充填率60%のPEマスターバッチ):PEの含有量8重量部)20重量部、無機充填剤2としてチタン顔料(充填率80%のPEマスターバッチ:PEの含有量8重量部)40重量部を混合し、バンバリーミキサーを用いて、180℃で溶融混練した。なお、得られた混練物中に含まれるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との合計量は116重量部であり、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との合計量に対するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、0.34重量%である。
次に、得られた混錬物を、直径12インチ×30Lコモンヘッド型ミキシングロール(回転速度:18rpm)に供給し、ロール温度165〜190℃で圧延し、厚さ140μmのポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
なお、アデカスタブLA−81は、下記化学式(6)で表される化合物、(ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートである。
【0043】
【化8】

【0044】
(実施例2)
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0045】
(実施例3)
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を0.7.重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0046】
(実施例4)
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を5.8重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0047】
(実施例5)
ポリオレフィン樹脂として、ポリプロピレン系樹脂に代えて、ポリエチレン系樹脂(融点:130℃、MFR(190℃、2160g):0.5g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE))を使用した以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0048】
(比較例1)
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0049】
(比較例2)
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量を6.0重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0050】
(比較例3)
ヒンダードアミン系光安定剤を、アデカスタブLA−81からアデカスタブLA−68(アデカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
なお、アデカスタブLA−68は、下記化学式(7)で表される化合物である。
【0051】
【化9】

【0052】
(比較例4)
ヒンダードアミン系光安定剤を、アデカスタブLA−81からアデカスタブLA−67(アデカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
なお、アデカスタブLA−67は、下記化学式(8)で表される化合物である。
【0053】
【化10】

【0054】
(比較例5)
ヒンダードアミン系光安定剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂フィルムを製造した。
【0055】
ポリオレフィン樹脂フィルムの評価
実施例及び比較例で製造したポリオレフィン樹脂フィルムについて、下記の評価を行った。
【0056】
NOxガスによる変色
実施例及び比較例で製造したポリオレフィン樹脂フィルムのNOxガスによる変色の度合を評価した。結果を表1に示した。
なお、本評価は、JIS L 0855(窒素酸化物に対する染色堅ろう度試験方法)を参考に下記の方法に行った。
また、評価サンプルとして、実施例及び比較例で製造したポリオレフィン樹脂フィルムをそれぞれ5×5cmに切断し、試験片とした。
【0057】
(1)亜硝酸ナトリウムをガス濃度0.1%になるように計量し、少量の蒸留水にて溶解し、溶液Aを調製した。
(2)溶液Aの調製とは別に、85%リン酸を5g計量し、20gの蒸留水にて溶解し、溶液Bを調製した。
(3)実施例1〜5及び比較例1〜5の試験片を同時に収納できるサイズで、かつ、密閉できるサイズの容器を用意し、この容器内に各試験片を同一の高さで立てかけた。
(4)溶液A及びBを混合した混合溶液を上記容器内に載置し、容器を密閉した。
(5)48時間放置した。
(6)上記容器から試験片を取り出し、水洗後、乾燥させた。
(7)分光光度計(コニカミノルタホールディングス社製、SPECTROPHOTO METER CM−3600d)を用いて変色度合(ΔE)を測定した。
【0058】
耐候性
JIS A 1415に準拠した試験方法(光源としてサンシャインカーボン(WS形)を使用)で評価した。結果を表1に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示した結果より、フェノール系酸化防止剤と併用するヒンダードアミン系光安定剤として光安定剤Aを用いることにより、他のヒンダードアミン系光安定剤を使用した場合と比較して、NOxガスによる変色を極めて小さくすることができることが明らかとなった。また、光安定剤Aを使用することにより、ポリオレフィン樹脂フィルムに優れた耐候性を付与することができることも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、自動車、建材等の構造物に貼付する化粧シート、ステッカー、マーキングシート等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエチレン及びポリプロピレンのいずれか一方と、
フェノール系酸化防止剤と、
ヒンダードアミン系光安定剤と
を含有する樹脂組成物からなり、
前記ヒンダードアミン系安定剤は、下記一般式(1)又は(2)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であり、
【化1】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜20のアルキル基である。)
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜20のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基である。)
前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、0.05〜5重量%である
ことを特徴とするポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項2】
カレンダー加工により成形された請求項1に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項4】
厚さが0.04〜0.5mmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、さらに、無機充填剤を含有し、
その含有量は、ポリエチレンとポリプロピレンとの合計量に対して、50〜80重量%である請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項6】
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタン(TiO)である請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂フィルム。

【公開番号】特開2011−236369(P2011−236369A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110570(P2010−110570)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】