説明

ポリオレフィン樹脂用改質剤

【課題】 ポリオレフィン樹脂からなるポリオレフィン樹脂基材の樹脂物性を低下させることなく、水に対する優れた濡れ性をポリオレフィン樹脂基材に付与するポリオレフィン樹脂用改質剤、該改質剤とポリオレフィン樹脂を含有してなるポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ラジカル開始剤の存在下で、数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン、不飽和ジカルボン酸(無水物)およびスチレンもしくはスチレン誘導体を共重合させてなるポリオレフィン樹脂用改質剤;並びに、該改質剤とポリオレフィン樹脂を含有してなるポリオレフィン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた濡れ性をポリオレフィン樹脂基材に付与するポリオレフィン樹脂用改質剤に関する。さらに詳しくは、機械的強度を損なうことなく優れた濡れ性をポリオレフィン樹脂基材に付与するポリオレフィン樹脂用改質剤に関する。ここおよび以下において濡れ性とは、水に対する親和性を意味し、後述する濡れ張力で評価されるものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は成形性、剛性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等に優れ、また安価であることから、フィルム、繊維、その他さまざまな形状の成形品として幅広く汎用的に使用されている。一方で、ポリオレフィン樹脂は分子内に極性基を有しない、いわゆる非極性で極めて不活性な高分子物質である。 さらに、結晶性が高く、溶剤類に対する溶解性も著しく低いため、接着性、塗装性等に課題があり、また水に対する濡れ性が悪く、水をはじくため水性塗料が適用できない等の問題もあった。
従来、濡れ性を向上させる方法としては、熱可塑性樹脂基材、例えばポリオレフィン樹脂成形品の表面にコロナ処理またはプラズマ処理を施す方法(例えば特許文献1参照)、ポリオレフィン樹脂組成物に界面活性剤を添加し、これを成形品とする方法(例えば特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−319426号公報
【特許文献2】特開2004−169014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、成形品表面にコロナ処理またはプラズマ処理を施す方法では、処理後の時間の経過とともに濡れ性が低下するという問題がある。また、ポリオレフィン樹脂組成物に界面活性剤を添加し、これを成形品とする方法では、改質効果を十分発揮する添加量を加えると元のポリオレフィン樹脂基材の成形品が本来有する機械的強度(引張弾性率、耐衝撃性等。以下同じ。)が損なわれたり、界面活性剤が成形品からブリードアウトしたりするという問題等があり改善が切望されていた。
本発明の目的は、機械的強度を損なうことなく、水に対する優れた濡れ性をポリオレフィン樹脂基材に付与するポリオレフィン樹脂用改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ラジカル開始剤(E)の存在下で、数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン(A)、不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)およびスチレンもしくはスチレン誘導体(C)を共重合させてなるポリオレフィン樹脂用改質剤(K)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリオレフィン樹脂用改質剤、該改質剤を含有してなるポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品は下記の効果を奏する。
(1)該改質剤は、本来の機械的強度を損なうことなくポリオレフィン樹脂基材に水に対する優れた濡れ性を付与する。
(2)該成形品は水に対する優れた濡れ性を有し、その持続性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のポリオレフィン樹脂用改質剤(K)は、ラジカル開始剤(E)の存在下で、数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン(A)、不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)およびスチレンもしくはスチレン誘導体(C)を共重合させてなる。
[ポリオレフィン(A)]
本発明におけるポリオレフィン(A)には、オレフィンの1種または2種以上の(共)重合体、並びにオレフィンの1種または2種以上と他の単量体の1種または2種以上との共重合体が含まれる。
上記オレフィンには、炭素数(以下、Cと略記)2〜30のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、1−および2−ブテン、およびイソブテン、並びにC5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等);他の単量体には、オレフィンとの共重合性を有するC4〜30の不飽和単量体、例えばスチレン、酢酸ビニルが含まれる。
【0008】
(A)の具体例には、エチレン単位含有(プロピレン単位非含有)(共)重合体、例えば高、中、および低密度ポリエチレン、およびエチレンとC4〜30の不飽和単量体[ブテン(1−ブテン等)、C5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル等]との共重合体[重量比はポリオレフィン樹脂組成物の成形性および(A)の末端二重結合量の観点から好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜95/5)等;プロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体、例えばポリプロピレン、プロピレンとC4〜30の不飽和単量体(前記に同じ)との共重合体(重量比は前記に同じ);エチレン/プロピレン共重合体(重量比はポリオレフィン樹脂基材の成形性および(A)の末端二重結合量の観点から、好ましくは0.5/99.5〜30/70、さらに好ましくは2/98〜20/80);C4以上のオレフィンの(共)重合体、例えばポリブテンが含まれる。
これらのうち、後述する不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)、スチレンもしくはスチレン誘導体(C)との共重合性の観点から好ましいのはポリエチレン、ポリプロレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/C4〜30の不飽和単量体共重合体、さらに好ましいのはエチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/C4〜30の不飽和単量体共重合体である。
【0009】
(A)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定は後述するゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。以下同じ。]は、800〜50,000、好ましくは1,000〜45,000である。Mnが800未満では、該(A)に基づくポリオレフィン樹脂用改質剤(K)をポリオレフィン樹脂に含有させた組成物の成形品の機械的強度が悪化し、50,000を超えると(K)の生産性および濡れ性が悪くなる。
【0010】
本発明におけるGPC法によるMnの測定条件は以下のとおりである。
装置 :高温ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列[ポリマーラボラトリ
ーズ(株)製]
カラム温度 :135℃
【0011】
(A)は、後述の不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)、スチレンもしくはスチレン誘導体(C)との重合性の観点から分子末端に不飽和結合(二重結合)を有することが好ましい。
(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端の不飽和結合(二重結合)数は、(A)の、(B)、(C)との共重合性および(K)の生産性の観点から好ましくは0.1〜20個、さらに好ましくは0.3〜18個、とくに好ましくは0.5〜15個である。ここにおいて、該不飽和結合数は1H−NMR(核磁気共鳴)分光法から得られるスペクトル中の4.5〜6.0ppmにおける二重結合由来ピークの積分値から算出できる。
【0012】
(A)の製造方法には、重合法(例えば特開昭59−206409号公報に記載のもの)および減成法[熱的、化学的および機械的減成法等、これらのうち熱的減成法(以下において熱減成法ということがある)としては、例えば特公昭43−9368号公報、特公昭44−29742号公報、特公平6−70094号公報に記載のもの]が含まれる。
【0013】
重合法には前記オレフィンの1種または2種以上を(共)重合させる方法、およびオレフィンの1種または2種以上と他の単量体の1種または2種以上を共重合させる方法が含まれる。
【0014】
減成法には、前記重合法で得られる高分子量[好ましくはMn30,000〜400,000、さらに好ましくは50,000〜200,000]のポリオレフィン(A0)を熱的、化学的または機械的に減成する方法が含まれる。
【0015】
減成法のうち、熱減成法には、前記ポリオレフィン(A0)を窒素通気下で、(1)有機過酸化物不存在下、通常300〜450℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成する方法、および(2)有機過酸化物存在下、通常180〜300℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成する方法等が含まれる。
これらのうち、得られる(A)の、(B)、(C)との共重合性の観点から好ましいのは、分子末端の不飽和結合(二重結合)数のより多いものが得やすい(1)の方法である。
【0016】
これらの(A)の製造方法のうち、分子末端の不飽和結合(二重結合)数のより多いものが得やすく、(A)と、(B)、(C)との共重合が容易であるとの観点から好ましいのは減成法、さらに好ましいのは熱減成法である。
【0017】
[不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)]
本発明における不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)は、重合性不飽和基を1個有するジカルボン酸(無水物)である。なお、本発明において不飽和ジカルボン酸(無水物)は、不飽和ジカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸無水物を表す。
該(B)としては、C4〜30、例えば脂肪族のもの(C4〜24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸およびこれらの無水物)、および脂環式のもの(C8〜24、例えばシクロへキサンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸)が挙げられる。(B)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
これらのうち前記(A)、後述するスチレンもしくはスチレン誘導体(C)との共重合性の観点から好ましいのは不飽和ジカルボン酸無水物、さらに好ましいのは無水マレイン酸である。
【0018】
[スチレンもしくはスチレン誘導体(C)]
本発明におけるスチレンもしくはスチレン誘導体(C)には、スチレン、C9〜26のアルキルスチレン(α−メチルスチレン、o−、m−およびp−メチル、−エチル、−プロピルおよび−ブチルスチレン、o−およびp−フェニルスチレン、メシチルスチレン、2,4−、2,5−および3,5−ジメチルスチレン等);C9〜26のアルコキシスチレン(o−、m−およびp−メトキシスチレン等);C8〜26のハロゲン化スチレン(o−、m−およびp−クロロスチレン、o−、m−およびp−ブロモスチレン、o−、m−およびp−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等);シリル化スチレン(トリメチルシリルスチレン等)およびカルボキシル基含有スチレン(ビニル安息香酸等)が挙げられる。(C)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
これらのうち前記(A)、(B)との共重合性の観点から好ましいのは、スチレンおよびアルキルスチレン、さらに好ましいのはスチレンである。
【0019】
(A)、(B)、(C)の合計重量に基づく各成分の含有量は、(A)は本発明の改質剤(K)の生産性およびポリオレフィン樹脂基材の濡れ性向上の観点から好ましくは30〜98%、さらに好ましくは40〜90%;(B)は組成物の濡れ性向上および(K)の生産性の観点から好ましくは0.03〜40%、さらに好ましくは0.5〜35%;(C)はポリオレフィン樹脂基材の機械的強度および濡れ性向上の観点から好ましくは0.6〜65%、さらに好ましくは1〜50%である。
【0020】
本発明のポリオレフィン樹脂用改質剤(K)を構成する共重合成分には、前記(A)、(B)、(C)の他に、ポリオレフィン樹脂基材の濡れ性をさらに向上させるために必要により、さらにC6〜36のα−オレフィン(D)を共重合成分に加えることができる。
(D)には、C6〜36のα−オレフィン、改質するポリオレフィン樹脂基材の機械的強度の維持および本発明の改質剤(K)の、該基材への水に対する優れた濡れ性付与の観点から好ましくはC8〜30の、直鎖α−オレフィンおよび分岐鎖を有するα−オレフィンが含まれる。
(D)のうち直鎖α−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
また、分岐鎖を有するα−オレフィンとしては、プロピレン三量体、プロピレン四量体およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらの(D)のうち前記(A)、(B)、(C)との共重合性の観点から好ましいのは直鎖α−オレフィン、さらに好ましいのは1−デセンである。
【0021】
(D)の含有量は、(A)、(B)、(C)の合計重量に基づいて、通常65%以下、ポリオレフィン樹脂基材の濡れ性向上および機械的強度の観点から好ましくは0.6〜60%、さらに好ましくは1〜50%である。
【0022】
[ラジカル開始剤(E)]
本発明における(A)、(B)、(C)および必要により加えられる(D)[以下においては(A)、(B)、(C)等、ということがある。]は、ラジカル開始剤(E)の存在下で共重合させる。
(E)としては、例えばアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)(ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等)および多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート等]〕等が挙げられる。
これらのうち(A)、(B)、(C)等の共重合成分の共重合性の観点から好ましいのは、過酸化物、さらに好ましいのは単官能過酸化物、とくに好ましいのはジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドである。
【0023】
(E)の使用量は、反応性および副反応抑制の観点から、(A)、(B)、(C)等の共重合成分の合計重量に基づいて好ましくは0.05〜10%、さらに好ましくは0.2〜5%、とくに好ましくは0.5〜3%である。
【0024】
[ポリオレフィン樹脂用改質剤(K)]
本発明のポリオレフィン樹脂用改質剤(K)は、ラジカル開始剤(E)の存在下で、Mn800〜50,000のポリオレフィン(A)、不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)、スチレンもしくはスチレン誘導体(C)、および必要により加えるC6〜36のα−オレフィン(D)を共重合させてなるポリオレフィン樹脂用の改質剤である。
【0025】
(K)の具体的な製造方法には、以下の[1]、[2]の方法が含まれる。
[1](A)、(B)、(C)および必要により(D)を適当な有機溶媒[C3〜18、例えば脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(ジ−、トリ−、およびテトラクロロエタン、ジクロロブタン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジ−t−ブチルケトン等)、エーテル(エチル−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、ジオキサン等)]に懸濁あるいは溶解させ、これに必要により、(E)[もしくは(E)を適当な有機溶媒(上記に同じ)に溶解させた溶液]、後述の連鎖移動剤(t)、重合禁止剤(f)を加えて加熱撹拌する方法(溶液法)(ここにおける有機溶媒のうち、反応系の溶解性の観点から好ましいのは芳香族炭化水素、さらに好ましいのはトルエン、キシレンである。);
[2](A)、(B)、(C)、および必要により(D)、(E)、(t)、(f)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサー、ニーダ等を用いて溶融混練する方法(溶融法)。
【0026】
溶液法での反応温度は、(A)が有機溶媒に溶解する温度であればよく、(A)、(B)、(C)等の共重合性および生産性の観点から好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、とくに好ましくは120〜180℃である。
【0027】
また、溶融法での反応温度は、(A)が溶融する温度であればよく、(A)、(B)、(C)等の共重合性および反応生成物の分解温度の観点から好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0028】
前記連鎖移動剤(t)としては、例えば炭化水素[C6〜24、例えば芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等)、不飽和脂肪族炭化水素(1−ブテン、2−ブテン、1−および2−ペンテン、1−ヘキセン等)];ハロゲン炭化水素(C1〜24、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン);アルコール(C1〜24、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−ブタノール、アリルアルコール);チオール(C1〜24、例えばエチルチオール、プロピオチオール、1−および2−ブチルチオール、1−オクチルチオール);ケトン(C3〜24、例えばアセトン、メチルエチルケトン);アルデヒド(C2〜18、例えば2−メチル−2−プロピルアルデヒド、1−および2−ブチルアルデヒド、1−ペンチルアルデヒド);フェノール(C6〜36、例えばフェノール、o−、m−およびp−クレゾール);アミン(C3〜24、例えばジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジフェニルアミン);ジスルフィド(C2〜24、例えばジエチルジスルフィド、ジ−1−プロピルジスルフィド)が挙げられる。
(t)の使用量は、(A)、(B)、(C)等の共重合成分の合計重量に基づいて通常30%以下、(A)、(B)、(C)等の共重合性および生産性の観点から好ましくは0.1〜20%である。
【0029】
前記重合禁止剤(f)としては、カテコール(C6〜36、例えば2−メチル−2−プロピルカテコール)、キノン(C6〜24、例えばp−ベンゾキノン)、ヒドラジン(C2〜36、例えば1,3,5−トリフェニルヒドラジン)、ニトロ化合物(C3〜24、例えばニトロベンゼン)、安定化ラジカル[C5〜36、例えば1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシド(TEMPO)]が挙げられる。
(f)の使用量は、(A)、(B)、(C)等の共重合成分の合計重量に基づいて通常5%以下、生産性、(A)、(B)、(C)等の共重合成分の安定性および(A)、(B)、(C)等の反応性の観点から好ましくは0.01〜0.5%である。
【0030】
改質剤(K)のMnは、後述する成形品(以下単に成形品ということがある)の機械物性および成形性の観点から好ましくは1,500〜70,000、さらに好ましくは2,000〜60,000、とくに好ましくは2,500〜50,000である。
【0031】
(K)の酸価は、成形品の濡れ性および(K)と後述するポリオレフィン樹脂(F)との相溶性の観点から好ましくは0.5〜200mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは1〜180である。ここにおける酸価は、JIS K0070に準じて測定される値である。
【0032】
本発明の改質剤(K)は、後述するポリオレフィン樹脂(F)用の改質剤として用いられる。
【0033】
[ポリオレフィン樹脂組成物]
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、前記改質剤(K)とポリオレフィン樹脂(F)を含有してなる。
(F)には、前記(A)の製造方法として例示した重合法、または高分子量ポリオレフィン(好ましくはMn80,000〜400,000)の減成(熱的、化学的および機械的減成)法で得られるものが含まれ、例えば、前記例示のエチレン単位含有(プロピレン単位非含有)(共)重合体、プロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体、エチレン/プロピレン共重合体およびC4以上のオレフィンの(共)重合体等が含まれる。
【0034】
(F)と(K)の組合せとしては、(F)の構成単位と(K)を構成するポリオレフィン(A)の構成単位が同じか類似している場合が(F)と(K)との相溶性の観点から好ましい。例えば、(F)がプロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体である場合は、(K)を構成する(A)もプロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体である場合が好ましい。
【0035】
(F)のMnは、ポリオレフィン樹脂基材の機械物性および(K)との相溶性の観点から好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは20,000〜400,000である。
【0036】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(G)を含有させることができる。
(G)としては、着色剤(G1)、難燃剤(G2)、充填剤(G3)、滑剤(G4)、帯電防止剤(G5)、分散剤(G6)、酸化防止剤(G7)および紫外線吸収剤(G8)からなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0037】
着色剤(G1)としては顔料および染料が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト等);有機顔料(アゾレーキ系等)が挙げられる。
【0038】
染料としては、アゾ系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0039】
難燃剤(G2)としては、有機難燃剤〔含窒素化合物[尿素化合物、グアニジン化合物等の塩等]、含硫黄化合物[硫酸エステル、スルファミン酸、およびそれらの塩、エステル、アミド等]、含珪素化合物[ポリオルガノシロキサン等]、含リン系[リン酸エステル等]等〕;無機難燃剤〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニム等〕等が挙げられる。
【0040】
充填剤(G3)としては、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、硫酸塩(硫酸アルミニウム等)、亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、珪酸塩(珪酸アルミニウム等)、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ、ゼオライト、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0041】
滑剤(G4)としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0042】
帯電防止剤(G5)としては、下記および米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
(1)非イオン性界面活性剤
アルキレンオキシド(以下AOと略記)付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)および高級脂肪酸(C8〜24)等]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(AO付加物およびポリアルキレングリコールの高級脂肪酸モノ−およびジ−エステル);多価アルコール(C3〜60)の高級脂肪酸(C8〜24)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(ツイーン型ノニオニックス等);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;およびポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコールおよびポリアミン(C2〜10)のポリオキシプロピレン誘導体(プルロニック型およびテトロニック型ノニオニックス)];多価アルコール(上記)型ノニオニックス(例えば多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールアルキル(C3〜60)エーテル、および脂肪酸アルカノールアミド);並びに、アミンオキシド型ノニオニックス[例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3)アミンオキシド]。
【0043】
(2)カチオン性界面活性剤
第4級アンモニウム塩型カチオニックス[テトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100)アルキル(C8〜18)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8〜18)ジメチルアンモニウム塩等];トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80)(ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等);アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩(セチルピリジニウム塩等);(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100)(ポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩等);およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)および有機酸(下記)の塩が含まれる];並びにアミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン〔例えば高級脂肪族アミン(C12〜60)、脂肪族アミン(メチルアミン、ジエチルアミン等)のポリオキシアルキレン誘導体[エチレンオキシド(以下EOと略記)付加物等]、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(ステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン等)〕の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩および有機酸(C2〜22)塩。
【0044】
(3)アニオン性界面活性剤
高級脂肪酸(上記)塩(ラウリル酸ナトリウム等)、エーテルカルボン酸[EO(1〜10モル)付加物のカルボキシメチル化物等]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート等)、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステルおよび硫酸化オレフィン;スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α−オレフィン(C12〜18)スルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン(イゲポンT型等)等];並びにリン酸エステル塩等(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート等)。
【0045】
(4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス[アミノ酸型アンフォテリックス(ラウリルアミノプロピオン酸(塩)等)、およびベタイン型アンフォテリックス(アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等)等];硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス[ラウリルアミンの硫酸エステル(塩)、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル(塩)等];スルホン酸(塩)型アンフォテリックス[ペンタデシルスルホタウリン、イミダゾリンスルホン酸(塩)等];並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス等[グリセリンラウリル酸エステルのリン酸エステル(塩)等]。
【0046】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0047】
分散剤(G6)としては、Mn1,000〜20,000のポリマー、例えばビニル樹脂{ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン[酸化ポリエチレン(ポリエチレンをオゾン等で酸化し、カルボキシル基、カルボニル基および/または水酸基等を導入したもの)等]、および上記ポリオレフィン以外のビニル樹脂〔ポリハロゲン化ビニル[ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル等]、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[ポリ(メタ)アクリル酸メチル等]およびスチレン樹脂[ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂等〕等};ポリエステル樹脂[ポリエチレンテレフタレート等]、ポリアミド樹脂[6,6−ナイロン、12−ナイロン等]、ポリエーテル樹脂[ポリエーテルサルフォン等]、ポリカーボネート樹脂[ビスフェノールAとホスゲンの重縮合物等]、およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤(G7)としては、ヒンダードフェノール化合物[p−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4,−メチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)等];
【0049】
含イオウ化合物[N,N’−ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート等];
【0050】
含リン化合物[2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等]等が挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤(G8)としては、サリチレート化合物[フェニルサリチレート等];ベンゾフェノン化合物[2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0052】
ポリオレフィン樹脂組成物中の(G)全体の含有量は、該組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、各(G)の機能発現および工業上の観点から好ましくは0.05〜10%、さらに好ましくは0.1〜5%である。
該組成物の全重量に基づく各添加剤の使用量は、(G1)は通常5%以下、好ましくは0.1〜3%;(G2)は通常8%以下、好ましくは1〜3%;(G3)は通常5%以下、好ましくは0.1〜1%;(G4)は通常8%以下、好ましくは1〜5%;(G5)は通常8%以下、好ましくは1〜3%;(E6)は通常1%以下、好ましくは0.1〜0.5%;(G7)は通常2%以下、好ましくは0.05〜0.5%;(G8)は通常2%以下、好ましくは0.05〜0.5%である。
【0053】
上記(G1)〜(G8)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量の他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0054】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法としては、
(1)前記(F)、(K)および必要により(G)を一括混合してポリオレフィン樹脂組成物とする方法(一括法);
(2)(F)の一部、(K)の全量、および必要により(G)の一部もしくは全量を混合して高濃度の(K)を含有するマスターバッチポリオレフィン樹脂組成物を一旦作成し、その後残りの(F)および必要により(G)の残りを加えて混合してポリオレフィン樹脂組成物とする方法(マスターバッチ法)が含まれる。
(K)の混合効率の観点から好ましいのは(2)の方法である。
【0055】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物中の(K)と(F)の重量比は、後述する成形品の濡れ性および機械物性の観点から好ましくは10/90〜40/60、さらに好ましくは15/85〜35/65、とくに好ましくは20/80〜30/70である。
【0056】
前記のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法における具体的な混合方法としては、
(i)混合する各成分を、例えば粉体混合機〔「ヘンシェルミキサー」[商品名「ヘンシェルミキサーFM150L/B」、三井鉱山(株)製]、「ナウターミキサー」[商品名「ナウターミキサーDBX3000RX」、ホソカワミクロン(株)製]、「バンバリーミキサー」[商品名「MIXTRON BB−16MIXER」、神戸製鋼(株)製]等〕で混合した後、溶融混練装置[バッチ混練機、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機等)等]を使用して通常120〜220℃で0.5〜30分間混練する方法;
(ii)混合する各成分をあらかじめ粉体混合することなく、上記と同様の溶融混練装置を使用して同様の条件で直接混練する方法が挙げられる。
これらの方法のうち混合効率の観点から(i)の方法が好ましい。
【0057】
[成形品]
本発明の成形品は、前記ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる。
成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。成形品の形態としては、板状、シート状、フィルム、繊維(不織布等も含む)等が挙げられる。
【0058】
本発明の成形品は、優れた機械的強度を有すると共に、良好な塗装性および印刷性を有し、成形品に塗装および/または印刷を施すことにより成形物品が得られる。
該成形品を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられる。
塗装膜厚(乾燥膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常10〜50μmである。
【0059】
また、該成形品または成形品に塗装を施した上にさらに印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷等が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【実施例】
【0060】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0061】
製造例1
反応容器に、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(P1)[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を窒素雰囲気下に仕込み、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら360℃で80分間熱減成を行い、ポリオレフィン熱減成物(A−1)を得た。(A−1)は、炭素1,000個当たりの分子末端二重結合数は10.8個、Mnは2,000であった。
【0062】
製造例2
製造例1において、熱減成時間を80分間から100分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン熱減成物(A−2)を得た。(A−2)は、炭素1,000個当たりの分子末端二重結合数は18個、Mnは1,200であった。
【0063】
製造例3
製造例1において、熱減成時間を80分間から20分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン熱減成物(A−3)を得た。(A−3)は、炭素1,000個当たりの分子末端二重結合数は0.3個、Mnは45,000であった。
【0064】
製造例4
製造例1において、ポリオレフィン(P1)100部に代えて、プロピレン80モル%、1−ブテン20モル%を構成単位とするポリオレフィン(P2)[商品名「タフマーXM−5080」、三井化学(株)製、Mn90,000、以下同じ。]100部を用いたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン熱減成物(A−4)を得た。(A−4)は、炭素1,000個当たりの分子末端二重結合数は10.8個、Mnは2,000であった。
【0065】
比較製造例1
製造例1において、熱減成時間を80分間から120分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン熱減成物(比A−1)を得た。(比A−1)は、炭素1,000個当たりの分子末端二重結合数は36個、Mnは600であった。
【0066】
比較製造例2
製造例1において、熱減成時間を80分間から10分間に変えたこと以外は製造例1と同様に行い、ポリオレフィン熱減成物(比A−2)を得た。(比A−2)は、炭素1,000個当たりの分子末端二重結合数は0.05個、Mnは65,000であった。
【0067】
実施例1
反応容器に(A−1)100部、無水マレイン酸30部、スチレン(C−1)17.3部、およびキシレン100部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に130℃まで加熱昇温して均一に溶解させた。ここにジクミルパーオキサイド[商品名「パークミルD」、日油(株)製]0.5部をキシレン10部に溶解させた溶液を10分間で滴下した後、キシレン還流下3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去してポリオレフィン樹脂用改質剤(K−1)を得た。(K−1)は、酸価は110、Mnは7,000であった。
【0068】
実施例2
実施例1において、(A−1)100部、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、(A−2)100部、無水マレイン酸82部、(C−1)57.6部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−2)を得た。(K−2)は、酸価は196、Mnは9,000であった。
【0069】
実施例3
実施例1において、(A−1)100部、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、(A−3)100部、無水マレイン酸1部、(C−1)2部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−3)を得た。(K−3)は、酸価は6、Mnは45,000であった。
【0070】
実施例4
実施例1において、(A−1)100部に代えて、(A−4)100部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−4)を得た。(K−4)は、酸価は110、Mnは7,000であった。
【0071】
実施例5
実施例1において、(C−1)17.3部に代えて、p−メチルスチレン(C−2)19.6部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−5)を得た。(K−5)は、酸価は105、Mnは7,100であった。
【0072】
実施例6
実施例1において、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、無水マレイン酸82部、(C−1)0.9部を用い、さらに1−デセン[商品名「リニアレン10」、出光興産(株)製、以下同じ。](D−1)57.6部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−6)を得た。(K−6)は、酸価は196、Mnは10,000であった。
【0073】
実施例7
実施例1において、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、無水マレイン酸24部、(C−1)18.5部を使用し、さらに(D−1)0.9部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−7)を得た。(K−7)は、酸価は95、Mnは5,000であった。
【0074】
実施例8
実施例1において、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、無水マレイン酸24部、(C−1)18.5部を使用し、さらに1−ヘキセン[商品名「リニアレン6」、出光興産(株)製](D−2)0.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−8)を得た。(K−8)は、酸価は95、Mnは5,000であった。
【0075】
実施例9
実施例1において、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、アクリル酸[商品名「アクリル酸」、日本触媒(株)製]17.6部、(C−1)18.5部を使用し、さらに1−オクタデセン[商品名「リニアレン18」、出光興産(株)製、C18のα−オレフィン](D−3)2.7部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(K−9)を得た。(K−9)は、酸価は95、Mnは5,000であった。
【0076】
比較例1
実施例1において、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、無水マレイン酸11部を使用し、(C−1)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に行いポリオレフィン樹脂用改質剤(比K−1)を得た。(比K−1)は、酸価は50、Mnは2,500であった。
【0077】
比較例2
実施例1において、(A−1)100部、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、(比A−1)100部、無水マレイン酸40部、(C−1)55部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(比K−2)を得た。(比K−2)は、酸価は117、Mnは1,000であった。
【0078】
比較例3
実施例1において、(A−1)100部、無水マレイン酸30部、(C−1)17.3部に代えて、(比A−2)100部、無水マレイン酸5.5部、(C−1)5.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂用改質剤(比K−3)を得た。(比K−3)は、酸価は28、Mnは67,000であった。
【0079】
実施例10〜20、比較例4〜12
(K−1)〜(K−9)、(比K−1)〜(比K−3)、(A−1)および下記の市販のものを、表1の配合組成(部)に従って、それぞれヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得た。
(比K−4):市販の低分子量改質剤[脂肪族エステル系非イオン界面活性剤、商品名「
ケミスタット1100」、三洋化成工業(株)製]
(F−1) :市販のポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロ
マー(株)製]
(F−2) :市販のポリエチレン[商品名「ノバテックHJ362N」、日本ポリエチ
レン(株)製、Mn350,000]
(F−3) :市販のエチレン/プロピレン共重合体[商品名「サンアロマーPB522
A」、サンアロマー(株)製、Mn300,000]
【0080】
各樹脂組成物について射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株
)]を用い、シリンダー温度240℃、金型温度60℃で成形して所定の試験片を作成後
、後述の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0081】
<評価方法>
1.耐衝撃性(単位:J/m)
アイゾット衝撃値をASTM D256に準拠して測定した。
2.引張弾性率(単位:MPa)
JIS K7161に準拠して測定した。
3.濡れ性(単位:mN/m)
濡れ張力をJIS K6768に準拠して、試験用混合液[エチレングリコールモノエ
チルエーテル/ホルムアミド=100/0〜0/100(容量比)]を用いて測定した。
濡れ張力が大であるほど水に対する濡れ性が良好であることを示す。
4.濡れ性の持続性(単位:mN/m)
試験片を50℃に調整した循風恒温器[商品名「DN410H」、ヤマト科学(株)製]
中に30日間静置した後、上記3.と同様に濡れ張力を測定した。
【0082】
【表1】

【0083】
表1の結果から、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、成形性に優れ、該組成物を成形してなる成形品は比較のものに比べ機械的強度、水に対する濡れ性および該濡れ性の持続性がいずれも優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポリオレフィン樹脂用改質剤は、成形品の機械的強度を低下させることなく水に対する濡れ性を付与することに優れ、該改質剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品は、濡れ性と機械的強度とのバランスに優れ、また該濡れ性の持続性にも優れることから、電気・電子機器用、包装材料用、搬送材用、生活資材用および建材用等の分野に適用することができる。また、該成形品はカルボキシル基を有する改質剤を含有するため、アンモニウムイオン、金属イオン等の捕捉能にも優れることから、該性能の発揮が期待される用途(電池用セパレータ等)にも適用可能である等、幅広い分野に適用することができ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル開始剤(E)の存在下で、数平均分子量800〜50,000のポリオレフィン(A)、不飽和ジカルボン酸(無水物)(B)およびスチレンもしくはスチレン誘導体(C)を共重合させてなるポリオレフィン樹脂用改質剤(K)。
【請求項2】
さらに、炭素数6〜36のα−オレフィン(D)を加えて共重合させてなる請求項1記載の改質剤。
【請求項3】
(A)が、分子末端に炭素1,000個当たり0.1〜20個の不飽和結合を有する請求項1または2記載の改質剤。
【請求項4】
(A)が、数平均分子量30,000〜400,000のポリオレフィンを熱減成してなる請求項1〜3のいずれか記載の改質剤。
【請求項5】
(A)、(B)および(C)の合計重量に基づく含有量が、(A)が30〜98%、(B)が0.03〜40%、(C)が0.6〜65%である請求項1〜4のいずれか記載の改質剤。
【請求項6】
(A)、(B)および(C)の合計重量に基づく(D)の含有量が、65%以下である請求項2〜5のいずれか記載の改質剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の改質剤(K)とポリオレフィン樹脂(F)を含有してなるポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】
(K)と(F)の重量比が、10/90〜40/60である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
請求項7または8記載の組成物を成形してなる成形品。
【請求項10】
請求項9記載の成形品に塗装および/または印刷を施してなる成形物品。

【公開番号】特開2012−144691(P2012−144691A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121994(P2011−121994)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】