説明

ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法

【課題】 ポリオレフィン樹脂中にフィラーを良好に分散させ、耐熱剛性を向上させることができるポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン樹脂(成分(A))30〜99.99重量%と、下記の混合物(成分(B))0.01〜70重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、ポリオレフィン樹脂(成分(A))と混合物(成分(B))を溶融混練する工程を有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に係るものである。
混合物(成分(B)):スプレー装置から噴霧された粉体材料(成分(B1))と、スプレー装置から噴霧された粉体材料またはノズル霧化装置から噴霧された液体材料(成分(B2))を接触させた混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に関するものである。詳細には、ポリオレフィン樹脂中にフィラーを良好に分散させ、耐熱剛性を向上させることができるポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工業部品分野における各種の成形品に用いられる素材として、例えば、自動車部品分野の成形品であるバンパー、インパネ、ファンシュラウド、グローブボックス等に用いられる素材として、また、家電製品の部品分野の成形品であるテレビケース、VTRケース、洗濯機カバー等に用いられる素材として、そして、各種のコーティングフィルムや包装材料に用いられる素材として、ポリオレフィン樹脂にフィラー成分を複合化することによって強化されたポリオレフィン樹脂組成物が、機械的強度、成形性および経済性を備えていることから、多量に使用されている。
【0003】
しかし、ポリオレフィン樹脂組成物の機械的強度の中でも、耐熱剛性についてはさらなる改良が求められていた。
例えば、特開2003−275555号公報には、固体材料を液体材料で表面改質したり、固体材料を液体材料中に均一に分散混合させる場合などに好適な、固液材料の混合方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−275555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリオレフィン樹脂中にフィラーを良好に分散させ、耐熱剛性を向上させることができるポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
ポリオレフィン樹脂(成分(A))30〜99.99重量%と、下記の混合物(成分(B))0.01〜70重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、ポリオレフィン樹脂(成分(A))と混合物(成分(B))を溶融混練する工程を有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に係るものである。
混合物(成分(B)):スプレー装置から噴霧された粉体材料(成分(B1))と、スプレー装置から噴霧された粉体材料またはノズル霧化装置から噴霧された液体材料(成分(B2))を接触させた混合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂中にフィラーを良好に分散させ、ポリオレフィン樹脂組成物の耐熱剛性を向上させることができ、ポリオレフィン樹脂中にフィラーが良好に分散し、耐熱剛性が向上したポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(成分(A))としては、エチレン重合体、プロピレン重合体、ブテン重合体等が例示される。ポリオレフィン樹脂(成分(A))としては、これらを単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0009】
成分(A)として用いられるエチレン重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が例示される。
【0010】
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとして、好ましくは炭素数4〜20のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が例示される。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が例示される。
【0011】
成分(A)として用いられるプロピレン重合体としては、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、第一セグメントとしてプロピレン単独重合体部分を有し、第二セグメントとしてエチレン−プロピレンランダム共重合体部分を有するエチレン−プロピレンブロック共重合体、第一セグメントとしてプロピレン単独重合体部分を有し、第二セグメントとしてプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体部分を有するプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が例示される。
【0012】
上記のエチレン−プロピレンブロック共重合体、または、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体は、一般に、(i)第一セグメントを製造する工程と、(ii)次いで、前記第一セグメントの存在下に第二セグメントを製造する工程とを有する方法で製造される共重合体である。
【0013】
上記のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体に用いられるα−オレフィンとして、好ましくは炭素数が4〜20のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が例示される。
【0014】
上記のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体等が例示され、上記のプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体としては、ブロピレン−1−ブテンブロック共重合体等が例示される。
【0015】
本発明で用いられる混合物(成分(B))は、スプレー装置から噴霧された粉体材料(成分(B1))と、スプレー装置から噴霧された粉体材料またはノズル霧化装置から噴霧された液体材料(成分(B2))を接触させた混合物である。
【0016】
スプレー装置から噴霧された粉体材料(成分(B1)または成分(B2))としては、粉体フィラー、粉体樹脂等が例示される。粉体フィラーや粉体樹脂は、単独で用いても良く、少なくとも2種類を併用しても良い。
【0017】
上記の粉体フィラーとしては、金属粉、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、窒化アルミニウム、炭素ケイ素、木材繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ等が例示される。好ましくは、タルク、クレー、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維である。
【0018】
上記の粉体樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂の変性物等が例示される。
上記のポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(成分(A))として例示されたエチレン重合体、プロピレン重合体、ブテン重合体等が例示される。
【0019】
また、ポリオレフィン樹脂の変性物とは、公知の変性方法によってポリオレフィン樹脂を変性した変性物であり、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、フマール酸変性ポリオレフィン樹脂、無水イタコン酸変性ポリオレフィン樹脂、イタコン酸変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリオレフィン樹脂、2−ヒドロキシエチルメタクリレート変性ポリオレフィン樹脂等が例示される。
ポリオレフィン樹脂を変性する公知の変性方法としては、例えば、溶融混練法、溶液法、電子線照射法等が例示される。
【0020】
上記の粉体の平均粒子径は、スプレー装置の目詰まりを防止するという観点から、通常、10mm以下であり、好ましくは5mm以下である。
スプレー装置として、好ましくは、凝集体をできるだけ解離させることができ、一次粒子もしくはそれに近い状態で噴霧できるスプレー装置である。
【0021】
ノズル霧化装置から噴霧された液体材料(成分(B2))としては、フィラーのスラリー、エマルジョン、ラテックス、有機溶媒、無機溶媒、硬化剤、硬化促進剤、表面改質剤、カップリング剤、界面活性剤、着色剤等が例示され、好ましくは、カップリング剤、表面改質剤、フィラーのスラリー、エマルジョン、ラテックスである。
カップリング剤としてはシランカップリング剤等が例示され、表面改質剤としてはオレイン酸等の脂肪酸が例示される。
【0022】
ノズル霧化装置として、好ましくは、凝集体をできるだけ解離させることができ、一次粒子もしくはそれに近い状態で噴霧できるスプレー装置である。
ノズル霧化装置から噴霧された液体材料の平均粒子径として、好ましくは100μm以下である。
【0023】
本発明で用いられる混合物(成分(B))は、成分(B1)と成分(B2)が噴霧された後、接触した混合物である。
成分(B1)と成分(B2)の混合比率は、通常、成分(B1)100重量部に対して、成分(B2)が0.01重量部〜1000重量部であり、好ましくは0.05重量部〜500重量部である。
【0024】
混合物(成分(B))として、好ましくは成分(B1)と成分(B2)を衝撃粉砕装置によって接触させた混合物である。
衝撃粉砕装置としては、旋回流粉体衝突型ジェットミル装置、粉体衝突型カウンタージェットミル装置等が例示される。
成分(B1)と成分(B2)を衝撃粉砕装置に供給する方法として、好ましくは、成分(B1)と(B2)を連続的に接触させることができるとともに装置の構成を簡易にすることができるという観点から、そのまま成分(B1)と(B2)を衝撃粉砕装置に供給する方法である。
【0025】
本発明で用いられる混合物(成分(B))として、より好ましくは、成分(B1)と成分(B2)を衝撃粉砕装置によって接触させた後に、さらにメカノケミカル処理が施された混合物である。
上記のメカノケミカル処理が施された混合物を用いることによって、次のようなメカノケミカル的な効果、例えば、
(1)粉体材料と液体材料の濡れ性や密着性を向上させる効果、
(2)粉体材料と単に部分的に接触した状態にある粒滴状の液体材料を薄延化し、粉体材料表面を液体材料で被覆する効果、
(3)粉体材料表面に付着もしくは粉体材料表面を被覆している液体材料を、粉体材料内部に浸透含浸させる効果
等を得ることができ、混合物(成分(B))の安定性を向上させ、表面改質効果を高めることができる。
【0026】
ここでメカノケミカルについて説明する。メカノケミカルとは、一般に固体物質等に加えられた機械的エネルギー(例えば、せん断、ずりせん断、圧縮、衝撃、摩砕、粉砕、曲げ延伸等の力)によって、固体物質表面に物理化学的変化を誘起させ、その周囲に存在する固体物質、液体物質、または気体物質に化学的変化をもたらし、物理化学的状態に変化を与える現象や、固体物質と、液体物質または気体物質との物理化学的変化を直接誘起または促進することによって、物理化学的状態に変化を与える現象として知られるものである。
【0027】
本発明で用いられる混合物(成分(B))を製造する方法において、成分(B1)と成分(B2)を接触させた後に、施されるメカノケミカル処理とは、成分(B1)と成分(B2)を接触させた混合物に、上記のような種々の形態(例えば、せん断、ずりせん断、圧縮、衝撃、摩砕、粉砕、曲げ延伸等)で機械的エネルギーを加える処理であって、成分(B1)と成分(B2)を接触させた混合物の安定性や流動性を向上させるものである。
【0028】
メカノケミカル処理の具体的方法としては、
(1)石臼もしくはこれと類似の機能を有する摩砕装置等によって、混合物にずりせん断を与える方法、
(2)強い圧縮と摩擦作用を有する圧密装置により混合物を処理する方法
等が挙げられる。
【0029】
メカノケミカル処理の方法として、好ましくは、所定のクリアランスをもって相対して設置された内子と外子との間に形成された空間に混合物を供給し、該空間において前記内子と外子との相対的な回転運動によって処理を行なう方法である。
【0030】
メカノケミカル処理を行なう装置に混合物を供給する方法として、好ましくは、連続的に混合、処理を行なうことができるとともに装置の構成を簡易にすることができるという観点から、混合物をそのままメカノケミカル処理を行なう装置に供給する方法である。
【0031】
本発明の製造方法で製造されるポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(成分(A))30〜99.99重量%と、前述の混合物(成分(B))0.01〜70重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物であり、好ましくは、ポリオレフィン樹脂(成分(A))50〜99.9重量%と、前述の混合物(成分(B))0.1〜50重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物である。
前述の混合物(成分(B))が0.01重量%より少ない場合、耐熱剛性が得られ難くなり、成分(B)が70重量%を超えた場合、成分(B)の分散不良が起こりやすくなる。
【0032】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法は、ポリオレフィン樹脂(成分(A))と混合物(成分(B))を溶融混練する工程を有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法である。
溶融混練する工程で用いられる溶融混練機としては、公知の溶融混練機が例示され、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、二軸押出機等が例示される。
【0033】
上記の溶融混練する工程として、好ましくは、フィラーを良好に分散させ、ポリオレフィン樹脂組成物の耐熱剛性を向上させるという観点から、一軸押出機または二軸押出機によって溶融混練する工程で、より好ましくは二軸押出機によって溶融混練する工程である。
二軸押出機は通常、原料供給口、ベント口、ジャケットを備えたバレル、バレルの内部に配置され、同方向、異方向に回転する二本のスクリュー、および押出機先端に取り付けられたダイ、スクリーンメッシュから構成される。さらに、二軸押出機には、スクリュー途中に設置された複数枚のニーディングディスクによって構成される少なくとも一つの溶融混練部(ニーディング部)が含まれる。
【0034】
一つの溶融混練部(ニーディング部)を構成するニーディングディスクの枚数は、フィラーを良好に分散させるという観点や、せん断によって発生する大きな発熱でポリオレフィン樹脂組成物が分解することを防止するという観点から、好ましくは3〜200枚であり、より好ましくは5〜50枚である。
一つの溶融混練部(ニーディング部)を1ユニットとして、せん断によって発生する大きな発熱でポリオレフィン樹脂が分解することを防止するという観点から、好ましくは1〜20ユニット、更に好ましくは1〜15ユニットである。
【0035】
スクリーンメッシュは、混練効果を大きくしてフィラーを良好に分散させるという観点や、せん断によって発生する大きな発熱でポリオレフィン樹脂組成物が分解することを防止するという観点から、好ましくは10〜500メッシュであり、より好ましくは20〜200メッシュである。
【0036】
押出機の溶融混練部(シリンダー部)の温度は、フィラーを良好に分散させ、ポリオレフィン樹脂組成物の耐熱剛性を向上させるという観点や、製造されるポリオレフィン組成物の分解を防止するという観点から、通常50〜300℃であり、好ましくは80〜280℃である。
溶融混練時間は、分散不良や、製造されるポリオレフィン組成物の分解を防止するという観点から、全体として、通常0.1〜30分であり、好ましくは0.5〜15分である。
【0037】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法においては、必要に応じて、一般にポリオレフィン組成物に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤等を添加することも可能である。
【0038】
本発明の製造方法で製造されるポリオレフィン樹脂組成物の用途としては、射出成形用材料、押出成形用材料、プレス成形用材料、ブロー成形用材料、フィルム成形用材料等が挙げられる。
特に、本発明の製造方法で製造されるポリオレフィン樹脂組成物の用途として、好ましくは、耐熱剛性が必要とされる用途であり、例えば自動車用材料や家電用材料が挙げられる。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の実施例および比較例によって説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における物性値の測定は、次の方法に従って行なった。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−7210に準拠して測定した。測定温度は230℃で加重は2.16kgで測定を行なった。
【0040】
(2)加熱変形温度(HDT、単位:℃)
JIS K 7191に規定された方法に従って測定を行なった。ファイバーストレスは0.45MPaで測定を行なった。加熱変形温度(HDT)が高いほど、耐熱剛性に優れることを示す。
【0041】
(3)BET比表面積(単位:m2/g)
窒素吸着法によって測定した。
【0042】
実施例1
成分(B1)の粉体材料としてMFRが20g/10分であり、第一セグメントとしてのプロピレン単独重合体部分の含有量が80重量%であり、第二セグメントとしてのエチレン−プロピレンランダム共重合体部分の含有量が20重量%(エチレン−プロピレンブロック共重合体の量を100重量%とする)であるエチレン−プロピレンブロック共重合体(A)を用い、成分(B2)の粉体材料としてBET比表面積が130m2/gである水酸化アルミニウムを用いた。スプレー装置として株式会社アトマックス製ノズルを用いた。上記の成分(B1)と成分(B2)を特開2003−275555号公報に開示されている混合装置を用いて混合し、サイクロンで回収して混合物を得た。混合比率はエチレン−プロピレンブロック共重合体100重量部に対して水酸化アルミニウム4.7重量部であった。得られた混合物の組成物を表1に示した。
【0043】
上記のエチレン−プロピレンブロック共重合体(A)55.4重量%に、上記の混合物44.6重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、商品名スミライザーGA80 0.05重量部(酸化防止剤)、トリスプロパノールアミンを1%含有したビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(酸化防止剤)0.1重量部を添加して十分に混合し、スクリュー径が15mmの2軸押出機で溶融混練を行なった。
なお、スクリーンメッシュは40メッシュ、ニーディングディスクの枚数が10枚である一つの溶融混練部(ニーディング部)が2ユニット、ニーディングディスクの枚数が15枚である一つの溶融混練部(ニーディング部)が1ユニットから構成されるスクリューを用いた。得られたポリオレフィン樹脂組成物を東洋機械金属株式会社製PLASTAR TU−15射出成形機を用いてテストピースを得た。得られたテストピースの加熱変形温度(HDT)を測定した。結果を表2に示した。
【0044】
比較例1
実施例1で用いたエチレン−プロピレンブロック共重合体(A)と水酸化アルミニウム(成分(B2))を株式会社テクノベル製2軸混練機KZW15−45MGで溶融混練を行なった。後は実施例1と同じ方法で射出成形してテストピースを得、得られたテストピースの加熱変形温度(HDT)を測定を行なった。結果を表2に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
本発明の製造方法によって製造された実施例1のポリオレフィン樹脂組成物は、加熱変形温度(HDT)が高く、耐熱剛性に優れるものであることが分かる。
これに対して、本発明の製造方法ではない方法によって製造された比較例1のポリオレフィン樹脂組成物は、加熱変形温度(HDT)が大きく低下しており、耐熱剛性が不充分なものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(成分(A))30〜99.99重量%と、下記の混合物(成分(B))0.01〜70重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、ポリオレフィン樹脂(成分(A))と混合物(成分(B))を溶融混練する工程を有するポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
混合物(成分(B)):スプレー装置から噴霧された粉体材料(成分(B1))と、スプレー装置から噴霧された粉体材料またはノズル霧化装置から噴霧された液体材料(成分(B2))を接触させた混合物。
【請求項2】
混合物(成分(B))に用いられる成分(B2)がノズル霧化装置から噴霧された液体材料であって、該液体材料の平均粒子径が100μm以下である請求項1記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
混合物(成分(B))が、成分(B1)と成分(B2)を衝撃粉砕装置によって接触させた混合物である請求項1または2記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
混合物(成分(B))が、成分(B1)と成分(B2)を接触させた後に、さらにメカノケミカル処理が施された混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
溶融混練する工程が一軸押出機または二軸押出機によって溶融混練する工程である請求項1〜4いずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−1957(P2006−1957A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176515(P2004−176515)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】