説明

ポリオレフィン用易剥離性接着剤及びその構造物

【目的】ポリオレフィンを被着面とする容器、シート等の構成物に対し易剥離性を有する接着剤及びその構造物を提供する。
【解決手段】JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜15wt%の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)40〜77wt%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)10〜40wt%、GPC法による数平均分子量が1,000〜10,000のポリエチレンワックス、またはブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sであるエチレン−酢酸ビニル共重合のいずれかから選択される低分子量ポリエチレン系ワックス(C)3〜30wt%からなることを特徴とするポリオレフィン用易剥離性接着剤及びその構造物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を被着面とする容器、シート等の構成物に対し易剥離性を有する接着剤及びその構造物に関する。更に詳しくは、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)40〜77wt%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)10〜40wt%、低分子量ポリエチレン系ワックス(C)3〜30wt%からなることを特徴とするポリオレフィン用易剥離性接着剤及びその構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業廃棄物の問題から食品用容器は、ポリスチレンやポリ塩化ビニル製から燃焼時に有害ガスを発生しないポリエチレンやポリプロピレン製に替わりつつある。特にポリプロピレンやポリエチレンを使用した容器またはポリエチレンを紙に積層した容器が使用されてきている。例えば、プリンやゼリー用に射出成形又は、シート成形後に真空又は圧空成形されたポリプロピレン製容器、紙にポリエチレンを押出しラミネーションし、カップ状にしたヨーグルト用容器やマヨネーズ、ケチャップ等用のポリエチレンを主成分とする多層容器、点滴ボトルなどのポリエチレン製容器等が挙げられる。
【0003】
前述の容器には、輸送時には破袋すること無く安全な取扱いが可能で、しかも開封時には女性や子供でも開けられるような易剥離性を有した接着剤が必要である。そのための接着剤として、例えば、1)ポリエチレンに対し基本的に接着しにくい樹脂(例えば、ポリプロピレン)にポリエチレンと接着可能な樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)を混合した組成物、2)エチレン−酢酸ビニル共重合体に粘着付与剤及び低分子量ワックス等を混合したいわゆるホットメルト組成物、3)上記ホットメルトタイプを押出し可能にした高分子量タイプのホットメルト組成物、4)低密度ポリエチレンに高分子量ポリブテンをブレンドした組成物(例えば、特許文献1参照)、5)ポリエチレン系樹脂、結晶性のポリブテン樹脂、低分子量ワックスからなるポリエチレン用易剥離性接着剤(例えば、特許文献2参照)等が挙げられる。また発明者ら、6)ポリエチレン製容器に対する易剥離性樹脂組成物及びその構造物について出願している。(特許文献3参照)
【特許文献1】特開平1−315443号公報
【特許文献2】特開2003−129018号公報
【特許文献3】特開2007−112955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記組成物ではポリプロピレン製容器には接着せず、またポリエチレン製容器に対しても種々問題点が有り易剥離性接着剤としては満足できるものではなかった。すなわち、1)の組成物は互いに相溶し難い樹脂を混合させるため加工性が劣り、また紙カップ容器をシールする場合に必要な段差を埋めるのに十分な柔軟性が無く、液漏れを防止するのには適していない。また、接着強度が高くなると接着剤が筋状に破壊するいわゆる糸引き現象が起こり、剥離後の外観が悪くなる。2)の組成物は紙カップ容器の段差を埋めるのに十分な流動性とシール強度を持っているが、加工時には特別なコーターが必要であり、また耐熱性が劣るためヒートシール時に容器内部に接着剤が混入する危険性がある。3)の組成物は耐熱性に優れているものの、ポリエチレンとの接着強度が高く、易剥離性とならない。ヒートシール温度が低い程接着強度は低くなる事から、使用温度を限定してシールする方法が考えられるが、温度依存性が高いため接着強度のバラツキが大きく、製品として品質に問題が有る。4)の組成物において、低密度ポリエチレンのJIS K6922−1に準拠して測定したメルトマスフローレイト(以下、MFR)が20g/10分以下では、本発明の目的の一つであるポリエチレンがラミネーションされた紙容器またはシートに対して剥離強度が高すぎて紙が破壊するいわゆる紙剥けが発生してしまう。剥離性を維持しようとして低密度ポリエチレンのMFRを20〜70g/10分にすると溶融張力が低く、押出ラミネーション加工性に劣るものとなってしまう。5)の接着剤では、紙容器の内面に積層されているポリエチレン層の厚みが40μm以上である場合は問題無く使用できるものの、紙容器の内面に積層されているポリエチレン層が、例えば30μm程度に薄くなるとポリエチレン層のフィルム強度が弱くなり破壊しやすくなるため、紙剥け現象が発生しやすくなる欠点があった。またポリブテンは一般的に高価であるため配合物も高価になる欠点があった。本発明者が提案している6)についてはポリエチレン製容器に対しては有効であるものの、ポリプロピレン製容器に対しての接着性はなく、またポリエチレン製容器に対するシール温度が120℃以下の温度での低温接着性が劣る。
【0005】
そこで、本発明は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下EVAと称すことがある)からなる容器又はシート、ポリエチレンをラミネーションした紙容器、ポリプロピレン、ポリエチレン又はEVAを被着面とした多層容器又は多層シート等の構成物に対して、押出しラミネーション加工が可能で、内容物を保護するのに十分なヒートシール強度と低温シール性を持ちながら易剥離性をもちかつ安価な接着剤及びその構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、結晶性ポリプロピレン系樹脂及び低分子量ポリエチレン系ワックスを特定量配合したポリオレフィン用易剥離性接着剤が、加工性に優れ、かつ少なくとも一面がポリプロピレンまたはポリエチレンあるいはEVAである被着面に対して易剥離性接着剤として優れていることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜15wt%の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)40〜77wt%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)10〜40wt%、GPC法による数平均分子量が1,000〜10,000のポリエチレンワックス、またはブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sであるエチレン−酢酸ビニル共重合のいずれかから選択される低分子量ポリエチレン系ワックス(C)3〜30wt%からなることを特徴とするポリオレフィン用易剥離性接着剤及びその構造物に関するものである。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明において用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)は、公知の製造方法により得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であって、JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜15wt%の範囲である。酢酸ビニル含有量が3%未満では、ポリプロピレンとの接着性がなくまた低温シール性が得られない。酢酸ビニル含有量が15%を超える配合では低温接着性は良好であるものの、ポリエチレンとの接着性が高くなりすぎ易剥離性がなくなり、またポリプロピレン製容器に対しては耐熱性が劣る蓋材となってしまう。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)のJIS K6924−1に準拠して測定したMFRは、特に制限はないが、押出加工の安定性を維持する点から10〜50g/10分が好ましい。
【0010】
そして、具体的なEVA樹脂(A)としては、例えば東ソー(株)製のEVA(商品名:ウルトラセン)を使用することができる。
【0011】
本発明において用いられる結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとエチレンとの共重合体からなる結晶性のポリマーであれば特に制限はなく、その中でもプロピレンとエチレンのランダム共重合体であることが好ましい。また、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)のJIS K7210に準拠して測定したMFRは、特に制限はないが、剥離時の糸引き現象防止の点から1〜30g/10分であることが好ましく、特に0.5〜10g/10分であることが好ましい。
【0012】
そして、具体的な結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)としては、例えば日本ポリプロ(株)製の結晶性ポリプロピレン系樹脂(商品名:ノバテックPP)を使用することができる。
【0013】
本発明において用いられる低分子量ポリエチレン系ワックス(C)は、低分子量ポリエチレンワックス又は低分子量EVAワックスである。(C)が低分子量ポリエチレンワックスの場合、GPC法による数平均分子量が1,000〜10,000のポリエチレンワックスであり、該低分子量ポリエチレンワックスは、エチレンの重合によって得られる重合型と、分子量の高いポリエチレンを熱分解することによって得られる分解型のどちらでも使用できる。また(C)が低分子量EVAワックスの場合、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sである。ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50mPa・s未満では粘度が低すぎるため配合物の成形安定性が劣るので好ましくなく、1,000mPa・sを超えると剥離時の糸引き現象が発生しやすくなる。ポリプロピレンとの接着性を向上及び低温接着性を向上するには低分子量ポリエチレン系ワックスは、低分子量EVAワックスであることが好ましい。
【0014】
そして、具体的な低分子量ポリエチレンワックス(C)としては、例えば三洋化成工業(株)製の低分子量ポリエチレンワックス(商品名:サンワックス)を使用することができる。また、具体的な低分子量EVAワックスとしては東ソー(株)製のEVAワックス(商品名:特殊ウルトラセン)を使用することができる。
【0015】
本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤では、押出ラミ加工性に優れる接着剤となることから、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)と低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合物のJIS K6924−1に準拠して測定したMFR(A+C)は、結晶性ポリプロピレンの分散性を制御し糸引き現象防止の点から40〜400g/10分であることが好ましく、特に、50〜300g/10分であることが好ましい。また、JIS K6922−1に準拠して測定した全配合物(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)+結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)+低分子量ポリエチレン系ワックス(C))のMFR(A+B+C)は、押出加工の安定性を維持する点から10〜60g/10分であることが好ましい。
【0016】
本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤の組成は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂体(A)40〜77wt%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)10〜40wt%、低分子量ポリエチレン系ワックス(C)は3〜30wt%である。これらの配合量の中でも、特に低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合量は、10〜20wt%であることが好ましい。
【0017】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)の配合量が40wt%未満では加工性が劣りまた剥離時に糸引き現象(接着剤が糸状に伸びて剥離する)が発生する。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)の配合量が77wt%を超えた配合では被着体であるポリエチレンとの接着性強度が高くなりすぎてしまう。また、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)の配合量が10wt%未満ではポリエチレン成分が多くなり、被着体であるポリエチレンとの接着強度が高くなり、すなわち被着体である紙容器の内貼りとして使用されているポリエチレンフィルムとの接着強度が高くなり紙の繊維を破壊しながら剥離(材質破壊)してしまう。また、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)の配合量が40wt%を超えると接着強度は低下するものの配合物の押出安定性が劣るようになる。さらに、低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合量が30wt%を超えると、全配合物の溶融張力が低くなるため押出ラミ加工性が低下してしまう。また、低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合量が3wt%未満の場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)の分散性が低下すること及び剥離時に糸引き現象が発生しやすくなってしまう。
【0018】
本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤には、通常のポリオレフィン樹脂に配合される添加剤、すなわち酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を、本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤の性能を阻害しない限り必要量添加することができる。
【0019】
本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤の調製は、特に制限はなく、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)、低分子量ポリエチレン系ワックス(C)及び必要に応じて、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を所定量ドライブレンドし、単軸または二軸押出機で溶融混練しながら直径2〜3mm程度のストランド状に押出し、冷却固化した後、回転刃でカットすることによりペレット状のポリオレフィン用易剥離性接着剤を得ることができる。
【0020】
本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤は、被着体に対して、ラミネーション加工が可能で、内容物を保護するのに十分なヒートシール強度と低温シール性を持ちながら易剥離性をもちかつ安価な接着剤となる。
【0021】
本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤の構造物としては、特に制限はなく、例えばポリオレフィン用易剥離性接着剤を少なくとも片面に有する構造物が挙げられる。そして、ポリエチレン用易剥離本発明の接着剤の被着体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン又はEVAであれば特に制限はなく、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、EVAで代表されるエチレン−不飽和カルボンエステル共重合体等が挙げられる。その中でもポリエチレン、ポリプロピレン、EVAが被着体であることが好ましい。
【0022】
本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤の構造物の製造方法は、特に制限はなく、例えばペレット化された本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤を用い、通常ポリエチレン系樹脂の成形に用いられる方法、すなわちキャスト成形またはインフレーション成形によって単層フィルム化した後、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−不飽和カルボンエステル共重合体等の被着体と共押出しすることにより構造物を製造する方法を用いることができる。
【0023】
本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤の構造物は、ポリエチレン用易剥離性接着剤を少なくとも片面に有し、さらに包装材料として求められる印刷性、光沢性、剛性などを付与するために基材を有していても良い。そして、該基材としては特に制限はなく、例えばポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム、紙、アルミ箔等が挙げられる。なお、基材を貼り合わせる際には、ポリエステル系接着剤等の接着剤を介して貼り合わせることが好ましい。
【0024】
基材を貼り合わせる方法としては、例えばドライラミネーションまたはサンドイッチラミネーション、押出ラミネーションにより、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸または未延伸フィルムと積層することができる。より具体的には、例えば二軸延伸された15μm厚みのポリアミドフィルムと予め30μm厚みにキャスト成形された本発明の構造体フィルムをポリエステル系接着剤(大日精化工業(株)製 商品名:セイカボンドE263等)でドライラミネーションする方法;12μm厚みのポリエステルフィルムとアルミ蒸着された12μmのポリエステルフィルムを貼り合わせたフィルムに、イソシアネート系アンカーコート剤(日本曹達(株)製 商品名:チタボンドT120等)を塗布した面と、30μmの本発明の構造体フィルムを、低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名:ペトロセン213等)を押し出すことによりサンドイッチラミネーションする方法等が挙げられる。
【0025】
なお、押出しラミネーションを行なう場合は、ポリエステルフィルムやポリアミドフィルム等のプラスチックフィルムや紙またはアルミ箔などの基材に予めアンカーコート剤(以下、AC剤)を塗布したり、加工時にオゾン処理をする事により、各種プラスチックフィルム、アルミ箔等と積層することが好ましい。アルミ箔と接着性の良い樹脂(例えば、エチレンとアクリル酸の共重合体などアルミ箔へ押出ラミネーションをしたときの剥離強度が2N/15mm以上となる樹脂)と共押出ラミネーションを行なうことにより、AC剤を使用しなくてもアルミ箔に積層することも可能である。
【0026】
また、ポリエチレン樹脂を予めラミネーションしてある基材に対しては、ダイレクトに押出ラミネーションすることも可能である。ここでいうポリエチレン樹脂とは、本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤と接着が可能であり、実際に蓋材として使用し容器から剥離するときに層間剥離しないような接着強度が出るものであれば特に制限は無く、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンーメタアクリル酸共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、等が挙げられる。具体的なポリエチレン樹脂を予めラミネーションしてある基材に対するダイレクトに押出ラミネーションする方法としては、例えば二軸延伸された12μm厚みのポリエステルフィルムに、イソシアネート系アンカーコート剤(日本曹達(株)製 商品名:チタボンドT120等)を使用して予め低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名:ペトロセン213等)をラミネーション加工し、その上に本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤を25μm押出ラミネーションする方法が挙げられる。
【0027】
本発明のポリエチレン用易剥離性接着剤の構造体は、例えば蓋材、より好ましくはポリプロピレン製、ポリエチレン製又はEVA製容器蓋材として用いることができる。構造体を接着する対象物としては、例えば射出成形されたポリプロピレン製容器や、板紙に低密度ポリエチレンをラミネーションされた構成物を製罐することにより得られるラミネーション容器が挙げられ、より具体的には、例えばヨーグルトやカップ麺用の紙カップ等、ポリエチレンの単層ブロー容器である洗剤容器、輸液バッグ等、多層ブロー容器であるケチャップやマヨネーズ用容器等が挙げられる。
【0028】
また、本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤を接着する被着体は、少なくとも被着面がポリプロピレン、ポリエチレンまたはEVAであればよく、構成中に塩化ビニリデンやエチレン−ビニルアルコール共重合体あるいはアルミ等のバリアー性のある包装資材が使用されている容器またはシートでも構わない。
【発明の効果】
【0029】
以上述べたとおり、本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤は押出し成形が可能で、ポリオレフィン系樹脂でありながらポリプロピレン、ポリエチレン及びEVAとの易剥離性接着剤として使用可能であり、少なくとも一面がポリプロピレン、ポリエチレン又はEVAである容器、シート等に対する接着剤として有用である。
【0030】
本発明のポリオレフィン用易剥離性接着剤の構造物は、被接着面となるポリプロピレン又はポリエチレンと低温で接着し且つ剥離形態は凝集剥離となるため、シール温度に影響されない安定した接着性能を有する事ができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、断りのない限り用いた試薬等は市販品を用いた。以下に、実施例に用いた測定法を示す。
【0032】
〜メルトマスフローレイト(MFR)〜
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)と低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合物のMFR(A+C)及び全配合物(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)+結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)+低分子量ポリエチレンワックス(C))のMFR(A+B+C)は、JIS K6922−1に準拠して測定した。
【0033】
また、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)のMFRはJIS K7210に準拠して測定した。
【0034】
〜低分子量ポリエチレンワックスの数平均分子量測定〜
GPCにより測定した。
【0035】
装置:東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HT
カラム:TSK−GEL GMHHR−H(20)HT×3本
濃度:1.0mg/ml
カラム温度:140℃
〜低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合ワックスの粘度測定〜
ブルックフィールド粘度計を用い測定した。
【0036】
装置名:BROOKFIELD DIGITAL VISCOMETER
装置製造会社:ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ社
形式:RVTDV−II
測定温度:180℃
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)として酢酸ビニル含有量が7%、MFRが25g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(東ソー(株)製 商品名:ウルトラセンUE526)45wt%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)としてMFRが6.5g/10分の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製 商品名:ノバテックPPFW4BT)35wt%、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合ワックス(C)としてブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が240mPa・sである樹脂(東ソー(株)製 商品名:特殊ウルトラセン7A55A)を20wt%を配合した。さらに、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合ワックス(C)の合計100重量部に対して、滑剤としてエルカ酸アミド0.1重量部(日本精化工業(株)製 商品名:ニュートロンS)、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガノックス1010、以下、Ir1010と記す)0.05重量部を添加し、ドライブレンドした後、50ミリの二軸押出機で樹脂温度180℃で溶融混練し、直径2mmのストランド状に押出し、冷却固化した後、回転刃でカットし、ペレット状のポリオレフィン用易剥離性接着剤を得た。この配合物中のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)と低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合によるMFR(A+C)は、本配合と同比率となるように混合物を溶融混練、固化したものを別途に作成しMFRを測定した結果、200g/10分であった。同様に別途合成した全配合物のMFR(A+B+C)は49g/10分であった。
【0037】
予め二軸延伸されたポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:東洋紡エステルフィルム。以下、PET)(12μm)にイソシアネート系アンカーコート剤(日本曹達(株)製 商品名:チタボンドT120)を使用し、低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名:ペトロセン213)を押出しラミネーターを用いて樹脂温度310℃で25μm積層し、更にエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15%、メルトフローレイト15g/10分)を20μm押出ラミ加工し3層フィルムを得た(PET/PE/EVA)。
【0038】
この3層フィルムのEVA面にペレット状のポリオレフィン用易剥離性接着剤を25μm厚みとなるように樹脂温度230℃で押出ラミネーション加工し、構造物を得た。この構造物を、内面に40μm厚みの低密度ポリエチレンが積層された紙カップ容器(フランジ部外径100mm、以下PE紙カップと称す)の開口部に蓋材として、構造物の接着剤面が接触する様に重ねヒートシール機(サニーパック(株)製)で加熱接着させた。ヒートシール条件は、温度160℃、圧力30kg/カップ、時間0.8秒とした。室温で冷却後、本発明の構造体を紙カップ容器から90度の角度で剥し、イマダ(株)製のプッシュプルゲージを使用し剥離強度を測定した。同時に剥離時の糸引き(接着剤が糸状に伸びて剥離する)現象の有無、及び材質破壊(紙カップのポリエチレンが紙から剥離する)現象の発生の有無を確認した。前記記載の紙カップの胴部分を用い、100℃〜180℃までの剥離強度を測定。剥離強度の比較として、160度の剥離強度を用いた。また低温ヒートシール性の評価は、110℃における剥離強度により判定した。ヒートシール条件は圧力0.2MPa、時間0.8秒とした。更にポリプロピレン製容器との接着性も、PE紙カップとの剥離強度評価と同様にカップシールし、剥離強度を測定した。ヒートシール条件は、温度180℃、圧力30kg/カップ、時間1.0秒とした。また押出ラミネーション加工時の加工安定性についても評価を行なった。なお、加工安定性は、押出ラミネーション加工時の溶融膜が蛇行したり、または相溶性不良による均一膜ができないものを不良とし、それ以外を良好とした。
【0039】
これらの結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
実施例1で使用したエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を、酢酸ビニル含有量が10%、MFRが9g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(東ソー(株)製 商品名:ウルトラセンUE541)にした以外は実施例1と同様に、ポリオレフィン用易剥離性接着剤、構造物を得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。なお、MFR(A+C)は110g/10分、MFR(A+B+C)は30g/10分であった。
【0041】
実施例3
実施例1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を50wt%に、結晶性ポリプロピレン(B)を35wt%に、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体ワックス(C)の代わりにGPCによる数平均分子量が2,600の低分子量ワックス(三洋化成工業(株)製 商品名:サンワックス151−P)15wt%を配合した以外は実施例1と同様に、ポリオレフィン用易剥離性接着剤、構造物を得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。なお、MFR(A+C)は160g/10分、MFR(A+B+C)は38g/10分であった。
【0042】
比較例1
実施例1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を35wt%、結晶性ポリプロピレン(B)を45wt%にした以外は実施例1と同様に、ポリオレフィン用易剥離性接着剤を得ようとしたが、押出ラミネーション加工時に押出不良となり、安定したポリオレフィン用易剥離性接着構成物は得られなかった。結果を表2に示す。なお、MFR(A+C)は220g/10分で、MFR(A+B+C)は40g/10分であった。
【0043】
比較例2
実施例1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を低密度ポリエチレン(MFRが23g/10分、東ソー(株)製 商品名:ペトロセンPE208)にし、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体ワックス(C)を低分子量ポリエチレンワックス(前述151−P)にした以外は実施例1と同様に、ポリオレフィン用易剥離性接着剤を得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。押出ラミ加工時成形性は良好で、糸引き現象もなく良好であったものの、PE紙カップとの低温ヒートシール性発生及びPPカップとの接着性は劣っていた。結果を表2に示す。なお、MFR(A+C)は34g/10分、MFR(A+B+C)は120g/10分であった。
【0044】
比較例3
実施例1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を65wt%にし、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(C)を無添加とした以外は実施例1と同様に、ポリオレフィン用易剥離性接着剤を得た。PE紙カップとの接着性評価時に糸引き、材質破壊が発生した。結果を表2に示す。なお、MFR(A+C)は25g/10分、MFR(A+B+C)は12g/10分であった。
【0045】
比較例4
実施例1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を75wt%にし、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)を5wt%とした以外は実施例1と同様に、ポリエチレン用易剥離性接着剤を得、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。押出しラミネーショント加工時の成膜安定性が悪くサンプル作成はできなかった。結果を表2に示す。なお、配合物中の低密度ポリエチレンと低分子量ポリエチレンワックスの配合によるMFR(A+C)は110g/10分であった。MFR(A+B+C)は90g/10分であった。
【0046】
比較例5
実施例1に記載の低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体ワックスの代わりに、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が86,000mPa・sである樹脂(東ソー(株)製 商品名:ウルトラセンUE720)を使用した以外は実施例1と同様にポリオレフィン用易剥離性接着剤を得た。紙カップとの接着性評価時に糸引き、材質破壊が発生した。結果を表2に示す。なお、MFR(A+C)は44g/10分、MFR(A+B+C)は17g/10分であった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜15wt%の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)40〜77wt%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)10〜40wt%、GPC法による数平均分子量が1,000〜10,000のポリエチレンワックス、またはブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sであるエチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかから選択される低分子量ポリエチレン系ワックス(C)3〜30wt%からなることを特徴とするポリオレフィン用易剥離性接着剤。
【請求項2】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(A)と低分子量ポリエチレン系ワックス(C)の配合物((A)+(C))のJIS K6922−1に準拠して測定したメルトマスフローレイト(以下、MFR(A+C))が40〜400g/10分であり、かつJIS K6922−1に準拠して測定した全配合物((A)+(B)+(C))のメルトマスフローレイト(以下、MFR(A+B+C))が10〜60g/10分であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン用易剥離性接着剤。
【請求項3】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(A)が、JIS K6922−1に準拠して測定したメルトマスフローレイトが10〜50g/10分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン用易剥離性接着剤。
【請求項4】
結晶性ポリプロピレン系樹脂(B)がプロピレンとエチレンのランダム共重合体であり、かつJIS K7210に準拠して測定したメルトマスフローレイトが0.5〜10g/10分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン用易剥離性接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン用易剥離性接着剤を、少なくとも片面に有する構造物。
【請求項6】
構造物が、蓋材であることを特徴とする請求項5に記載の構造物。
【請求項7】
蓋材が、ポリプロピレン製容器、ポリエチレン製容器又はエチレン−酢酸ビニル共重合体製容器の蓋材であることを特徴とする請求項6に記載の構造物。

【公開番号】特開2009−35646(P2009−35646A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201803(P2007−201803)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】