説明

ポリオレフィン系の高絶縁耐力(HDS)ナノコンポジット、そのための組成物、および関連方法

本発明は、(a)1又はそれ以上の電気導体あるいは1又はそれ以上の電気導体のコア、および(b)絶縁層によって取り囲まれた各導体又はコアを有するケーブルである。絶縁層はポリオレフィンおよび3次元かご型構造ナノ粒子を含む組成物から調製される。好ましいポリオレフィンはポリエチレンポリマーであり、好ましいナノ粒子は多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、多面体オリゴマーシリケート(POS)又は多面体オリゴマーシロキサンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力ケーブル絶縁層に関する。特に、本絶縁層は低電圧から高電圧の電線およびケーブル用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
低電圧から高電圧の電線およびケーブル適用のためには、誘電体は誘電の損失が少なく、かつ導電率が非常に低くあるべきである。さらに、絶縁材料として用いられる場合、誘電体は非常に高い絶縁破壊耐量(electrical breakdown withstand capability)を有さねばならない。また、絶縁材料は特定の物理的、化学的および機械的な特性要件を満たす必要がある。
【0003】
従って、電力ケーブルおよび付属品のポリマー系絶縁層が、優れた誘電特性、物理特性、化学的特性および機械的特性を有することに継続的な必要性がある。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、1又はそれ以上の電気導体あるいは1又はそれ以上の電気導体を有するコアを含み、各導体又はコアが絶縁層によって取り囲まれているケーブルである。絶縁層はポリオレフィンならびに三次元かご構造のナノ粒子(a 3-dimensional, cage-structured nanoparticle)を含む組成物から調製される。好ましいポリオレフィンはポリエチレンポリマーであり、好ましいナノ粒子は多面体オリゴマーシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxanes)(POSS)、多面体オリゴマーシリケート(polyhedral oligomeric silicates)(POS)又は多面体オリゴマーシロキサン(polyhedral oligomeric siloxanes)である。
【0005】
本明細書において「三次元かご構造の」とは、多面体構造(a polyhedral structure)を有する分子を意味する。
【0006】
本明細書において「誘電損失」とは、平行板型ソリッドセルテスターにより60ヘルツで、ASTM D150に従って計測される誘電正接(dissipation factor)を意味する。例えば、本発明において使用され、室温で測定されるように、架橋ポリエチレン複合系には0.001以下、ツリー遅延剤架橋ポリエチレン複合系(tree retardant crosslinked polyethylene composites system)には0.005以下、エチレン/プロピレンゴム複合系には0.02以下の誘電正接をナノコンポジットが達成した場合、そのナノコンポジットは低い誘電損失を実証すると提示される。
【0007】
本明細書において「耐絶縁破壊」とは、平行面電極を含む交流破壊テスターによりASTM D149に従って計測される、コンポジットの電流(AC)電圧破壊強度を変えることを意味する。本明細書において、ナノコンポジットが室温で少なくとも0.9kV/ミル(mil)に達する場合、そのナノコンポジットは非常に高い絶縁破壊能を有すると提示され得る。
【0008】
本明細書において「導電率」とは、ICEA S68−516に従って計測される絶縁抵抗を意味する。本明細書において、ナノコンポジットが15.6℃で1000フィートに対して20,000MΩ以上を達する場合、ナノコンポジットは非常に低い導電率を有すると提示され得る。
【0009】
本明細書において「ナノ粒子」とは、平均直径が約1000ナノメートル未満の粒子を意味する。適した粒径を説明するために本明細書では「直径」という用語が使用されるが、本発明に用いられるナノ粒子は実質上球形である必要はないと理解されるべきである。従って、「直径」の定義は、ナノ粒子には、その粒子を二等分するために理論上描かれ得る最長の線の平均の長さが約1000ナノメートル未満であるように適用され得る。
【0010】
本発明のケーブルは1又はそれ以上の電気導体あるいは1又はそれ以上の電気導体のコアを含み、各導体又はコアがポリオレフィンおよび三次元かご構造のナノ粒子を含む組成物から調製される絶縁層によって取り囲まれている。
【0011】
本発明で有用なポリオレフィンは約0.1g/10分〜約50g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。メルトインデックスはASTM D−1238、条件Eの下で測定され、190℃および2160gで測定される。
【0012】
適したポリオレフィンとしては、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリブテン、ポリブテンコポリマー、ならびに高度に短鎖分枝したα−オレフィン/エチレンコポリマーが挙げられる。
【0013】
ポリエチレンポリマーは、その用語が本明細書において用いられる場合、エチレンのホモポリマーおよびコポリマーならびに3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜8個の炭素原子を有する1又はそれ以上のα−オレフィンの小さいほうの割合(minor proportion)、場合により、ジエンあるいはそのようなコポリマーの混合物又はブレンドを含む。エチレン以外の、コモノマーに起因するポリエチレンコポリマーの部分は、コポリマーの重量に基づいて約1〜約49重量%であってよく、約15〜約40重量%の範囲にあることが好ましい。α−オレフィンの例はプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンである。ジエンの適した例としては、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、又はジシクロペンタジエンが挙げられる。
【0014】
ポリエチレンポリマーの密度は約0.850g〜約0.950g/cm3の範囲であってよい。また、ポリエチレンポリマーの融解温度は少なくとも約115℃であってよい。好ましくは、融解温度は約115℃よりも高い。より好ましくは、融解温度は約120℃よりも高い。
【0015】
ポリエチレンポリマーを調製するための典型的な触媒系としては、マグネシウム/チタンに基づく触媒系、バナジウムに基づく触媒系、クロムに基づく触媒系およびその他の遷移金属触媒系が挙げられる。これらの触媒系の多くはチーグラー・ナッタ触媒系またはフィリップス触媒系と称される場合が多い。有用な触媒系としては、シリカ−アルミナ担体上のクロムまたは酸化モリブデンを用いる触媒が挙げられる。
【0016】
有用な触媒系は多様な触媒系の組み合わせを含み得る(例えば、メタロセン触媒系と一緒のチーグラー・ナッタ触媒系)。これらの組み合わされた触媒系は多段式反応過程(multi-stage reactive processes)において最も有用である。
【0017】
好ましくは、ポリオレフィンは高圧反応装置中でのフリーラジカル重合により調製されたポリエチレンである。
【0018】
三次元かご構造のナノ粒子は組成物全体の約0.1重量%〜約40重量%の間の量で、絶縁層を調製するための組成物の中に存在することが好ましい。有用な三次元かご構造のナノ粒子の例は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、多面体オリゴマーシリケート(POS)、多面体オリゴマーシロキサン、および無機/有機ナノコンポジットを構成するのに有用なその他のナノ粒子である。その他の有用な三次元かご構造のナノ粒子としては、ポリオレフィンとナノ粒子の間に高い界面相互作用をもたらすナノ粒子が挙げられる。
【0019】
三次元かご構造のナノ粒子は反応性官能基、非反応性官能基または反応性および非反応性の両方の官能基を有し得る。ナノ粒子がPOSS、POS又は多面体−オリゴマー−シロキサンナノ粒子である場合、官能基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、エポキシ基、シラン基、又はビニル基であってよい。官能基は絶縁組成物中で、またはポリオレフィンを含む、組成物中の特定の成分とともに、ナノ粒子を相溶化するために有用であり得る。その他の官能基は組成物中でのグラフトまたは他の化学反応の実施に有用であり得る。
【0020】
絶縁組成物は、その他のナノ粒子、抗酸化物質、硬化剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、固着滑り防止剤、触媒、安定剤、スコーチ防止剤、水ツリー遅延剤(water-tree retarders)、電気ツリー遅延剤(electrical-tree retarders)、着色剤、腐蝕防止剤、滑剤、難燃剤、および核剤をさらに含んでよい。これらの付加的成分は0.1重量%〜約10重量%の間の量で存在し得ることが好ましい。さらなるナノ粒子の例としては、シリカ粒子あるいは金属酸化物が挙げられる。適した金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ならびに酸化アルミニウムが挙げられる。
【0021】
絶縁層を調製するための組成物は架橋性あるいは熱可塑性であってよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィンと
(b)三次元かご構造のナノ粒子(a 3-dimensional, cage-structured nanoparticle)
を含む絶縁組成物。
【請求項2】
ポリオレフィンが、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリブテン、ポリブテンコポリマー、および高度に短鎖分枝したα−オレフィン/エチレンコポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の絶縁組成物。
【請求項3】
三次元かご構造のナノ粒子が、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、多面体オリゴマーシリケート(POS)および多面体オリゴマーシロキサンからなる群より選択される、請求項1に記載の絶縁組成物。
【請求項4】
三次元かご構造のナノ粒子が、組成物全体の約0.1重量%〜約40重量%の間の量で存在する、請求項3に記載の絶縁組成物。
【請求項5】
1又はそれ以上の電気導体あるいは1又はそれ以上の電気導体を有するコアを含む電気ケーブルであって、各導体または又はコアが、
(a)ポリオレフィンと
(b)三次元かご構造のナノ粒子
を含む組成物から調製された絶縁層によって取り囲まれている、電気ケーブル。
【請求項6】
ポリオレフィンが、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリブテン、ポリブテンコポリマー、および高度に短鎖分枝したα−オレフィン/エチレンコポリマーからなる群より選択される、請求項5に記載の電気ケーブル。
【請求項7】
三次元かご構造のナノ粒子が多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、多面体オリゴマーシリケート(POS)および多面体オリゴマーシロキサンからなる群より選択される、請求項5に記載の電気ケーブル。

【公表番号】特表2009−528401(P2009−528401A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556469(P2008−556469)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/005018
【国際公開番号】WO2007/100794
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】