説明

ポリオレフィン系多層ラップフィルムおよび食品包装用フィルム

【課題】 剛性、ヒートシールなどにおける耐熱特性に優れ、良好な機械特性を併有するポリオレフィン系多層ラップフィルムを提供する。
【解決手段】 両表面層(A)がエチレン系重合体(a)を主成分とし、両表面層に挟まれた層のうちの一つの層(B)が軟質樹脂系重合体(b1)、結晶性プロピレン系重合体(b2)、および粘着付与剤(b3)を含有する総厚みが5〜20μmの多層フィルムであり、当該多層フィルムの押込み荷重が160gf以上であり、周波数10Hzで測定した動的粘弾性における損失正接(tanδ)が0.13〜0.60であることを特徴とするポリオレフィン系多層ラップフィルム、および当該フィルムからなることを特徴とする食品包装用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムに関し、さらに詳細には、食品などの包装に好適に使用することができるポリオレフィン系多層ラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青果物、精肉、惣菜などを軽量トレーに載せてフィルムでオーバーラップする、いわゆるプリパッケージ用のラップフィルムとしては、主にポリ塩化ビニル系のものが使用されてきている。これは、包装効率がよく、包装仕上がりも綺麗であるなどの包装適性のほか、パック後のフィルムを指で押すなど変形を加えても元に戻る弾性回復力に優れ、また底部のシール性も良好であり、輸送陳列中にフィルム剥がれが発生しにくいことなどから、包装された商品の価値が低下しないという、販売者、消費者の双方に認められた品質の優位性を持っているためである。
【0003】
しかし近年、ポリ塩化ビニルのフィルムに対し焼却時に発生する塩化水素ガスや、多量に含有する可塑剤の溶出などが問題視されてきている。
【0004】
一方、塩化ビニル系ストレッチフィルムに代わる材料として、焼却時に有毒なガスを発生させることもなく、また、包装された食品中に溶出しやすい可塑剤を使用することなく製造可能なポリオレフィン系ラップフィルムが開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体であって、ガラス転移温度が−20℃以上である樹脂に、プロピレン系樹脂および石油樹脂成分を混合した混合樹脂層を少なくとも一層有する食品包装用ストレッチフィルムが開示されている。
【0006】
特許文献1には、具体的に、実施例として、スチレン20重量%、3,4−結合比率55%のポリイソプレン80重量%からなるスチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体(ガラス転移温度 −19℃)を49重量%、シクロペンタジエン系石油樹脂の水素添加誘導体(ガラス転移温度 81℃、軟化温度 125℃)を21重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含量4モル%、230℃におけるMFR=0.5g/10分)を30重量%、および防曇剤としてジグリセリンモノオレート3.0重量部を混合した組成物を中間層として厚さ11μm、その両面にEVA(酢酸ビニル含量15重量%、190℃におけるMFR=2.0g/10分)100重量部に防曇剤としてジグリセリンモノオレートを3.0重量部混練した組成物の層を各々2μmとなるように共押出インフレーション成形された、総厚み15μmのフィルムが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記の構成を有するストレッチフィルムは、トレーにフィルムを天張した際、上面からの荷重に対する剛性に劣り、プリパッケージを多段積みにより輸送した場合、下部に配置された包装体が、上部の包装体から受ける荷重によって外観上商品価値が低下してしまう場合がある。さらには、フィルムの耐熱性が劣るため、横型ピロータイプ包装機械にて包装体の底部分をヒートシールする際に、ヒートシール熱板から受ける熱による溶融によって、フィルムに穴などの外観不良が発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献2には、密度が0.900〜0.930g/cmである少なくとも1種のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体からなるヒートシール層と、密度が0.900〜0.930g/cmからなる少なくとも1種のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体と、密度が0.860〜0.890g/cmからなる少なくとも1種のエチレン−α−オレフィンブロック共重合体を含む組成物からなる層から構成される収縮包装用多層フィルムが開示されている。
【0009】
上記の構成を有するフィルムを用いた包装体に、熱風などの熱工程で収縮させることにより、押し込み荷重による押し込み痕を生じづらくさせることが可能になるが、上記のような収縮包装では、トレーなどの包装物に対してフィルムの幅に余裕を持たせる必要があり、収縮工程を要さないフィルムと比較して幅の広いフィルムを用意する必要がある。
【0010】
また、熱風を送付するためのシュリンクトンネルなどの特別な設備が必要となる。さらに、上記のフィルムを製造するためには、熱収縮機能を付与させるため延伸工程が必要となり、そのための延伸設備、さらには、電子線架橋のための電子線照射設備が必要となる。そのため、上記のフィルムおよび上記のフィルムを用いた包装体の製造コストがアップするといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−165492号公報
【特許文献2】特開2009−298119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、剛性、ヒートシールなどにおける耐熱特性に優れ、良好な機械特性を併有するポリオレフィン系多層ラップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成を有する多層フィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、両表面層(A)がエチレン系重合体(a)を主成分とし、両表面層に挟まれた層のうちの一つの層(B)が軟質樹脂系重合体(b1)、結晶性プロピレン系重合体(b2)、および粘着付与剤(b3)を含有する総厚みが5〜20μmの多層フィルムであり、当該多層フィルムの押込み荷重が160gf以上であり、周波数10Hzで測定した動的粘弾性における損失正接(tanδ)が0.13〜0.60であることを特徴とするポリオレフィン系多層ラップフィルム、および当該フィルムからなることを特徴とする食品包装用フィルムに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、剛性に優れ、ヒートシールなどにおける耐熱特性、良好な機械特性を併有するポリオレフィン系多層ラップフィルム、および食品包装用フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明のフィルムの特性を評価する、ピンが取り付けられた押込み荷重測定器具の概略説明図である。
【図2】図2は、本発明のラップフィルムをピンで押込む工程の概略説名図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、「主成分として構成される」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上100質量%以下、好ましくは85質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下を占めることを意味する。
【0018】
本発明のラップフィルムは、表面層(A)、中間層(B)が、表面層(A)/中間層(B)/表面層(A)の順に積層されることを必須とし、表面層(A)と中間層(B)との間に別の層を有していてもよい。さらに両表面層(A)はエチレン系重合体(a)を主成分として構成され、中間層(B)は軟質樹脂系重合体(b1)、結晶性プロピレン系重合体(b2)、粘着付与剤(b3)を主成分として構成された多層フィルムであり、前記多層フィルムの押込み荷重が160gf以上、動的粘弾性測定にて、周波数10Hzでの損失正接(tanδ)が0.13〜0.60である。
【0019】
表面層(A)の主成分として用いられる樹脂は、中間層(B)の主成分として用いられる樹脂を考慮して適宜選択することができるが、本発明のラップフィルムの使用時において、表面層(A)と中間層(B)との間で層間剥離の現象が起きないような構成であれば特に制限されるものではない。
【0020】
表面層(A)に用いられる樹脂としては、溶融押出温度が180〜300℃であることから、その範囲で溶融押出可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。具体的に熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、環状オレフィン系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、スチレン系重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独あるいは2種以上の混合樹脂成分として用いることができる。
【0021】
本発明では、低温シール性(底シール性)、自己粘着性、インフレーション成形性を鑑みて、表面層(A)に主成分として含有される樹脂として、エチレン系重合体(a)を使用する。
【0022】
エチレン系重合体(a)としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを主成分とする共重合体、例えば、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンなどの不飽和化合物からなる群から選ばれる、1種または2種以上のコモノマーから構成される共重合体または多元共重合体、あるいは、それらの混合組成物などが挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は、通常50重量%を超えるものである。
【0023】
これらのエチレン系重合体(a)の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。
【0024】
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、エチレン系重合体(A)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に0.5〜8g/10分、中でも特に1〜6g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
【0026】
ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、表面粘着性を付与することができる。その一方、25質量%以下であれば、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0027】
中間層(B)は、軟質樹脂系重合体(b1)、結晶性プロピレン系重合体(b2)および粘着付与剤(b3)を主成分として含有する層である。
【0028】
軟質樹脂系重合体(b1)としては、本発明のラップフィルムに柔軟性を付与し、前記結晶性プロピレン系重合体(b2)および前記粘着付与剤(b3)と相溶する樹脂ならば、特に制限されるものではない。
【0029】
具体的に軟質樹脂系重合体(b1)としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等の炭素数2〜10のα−オレフィン、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン等のビニル芳香族化合物、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2エチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン等の非共役ジエンから選ばれる1種または2種以上のコモノマーから構成される非晶性もしくは低結晶性共重合体または多元共重合体、あるいはそれらの混合樹脂成分が挙げられる。
【0030】
本発明では、前記結晶性プロピレン系重合体(b2)や粘着付与剤(b3)と相溶し、本発明のラップフィルムに所望の粘弾性を付与することが可能な樹脂を市場から入手しやすいことから、軟質樹脂系重合体(b1)としてスチレン系熱可塑性エラストマー(b1−a)を好ましく使用できる。
【0031】
スチレン系熱可塑性エラストマー(b1−a)としては、スチレン、あるいはα−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体であることが好ましい。ここで、共役ジエン部分を構成する共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、これらは共重合体中に単独または2種以上が混合された重合されていてもよい。
【0032】
これらスチレン系熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)の水素添加物、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)の水素添加物、スチレン−イソプレンランダム共重合体(SIR)の水素添加物の中か選ばれる少なくとも1種が成形加工時の熱安定性に優れ、劣化物の発生、および臭いの発生を抑制する点で好適に使用できる。これらスチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物の水素添加割合は、二重結合の80%以上、さらには95%以上に水素が添加されていることが好ましい。
【0033】
また、これらスチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。スチレン系熱可塑性エラストマー(b1−a)のスチレン含有量が1質量%以上、40質量%以下であれば、本発明のラップフィルムに所望の動的粘弾性挙動を付与できる点、かつ成形時の熱安定性を得ることができる点から好ましい。
【0034】
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、(株)クラレ製の商品名「ハイブラー7311」、「セプトン2063」、旭化成(株)製の商品名「タフテックH1221」、JSR(株)製の商品名「ダイナロン1320P」等を例示することができる。
【0035】
本発明のラップフィルムに用いる結晶性プロピレン系重合体(b2)としては、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)の値が30J/g以上のプロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと「共重合可能な他の単量体」とのランダム共重合体やブロック共重合体などを挙げることができる。共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数2、4〜10のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が挙げられるが、これらの二種以上が共重合されていてもよい。中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が、比較的低コストで調達できる点で好ましい。
【0036】
ここで、結晶化熱量(ΔHc)は、用いる結晶性プロピレン系重合体(b2)の分子量、エチレン含有量(共重合比)、ランダム度(エチレン成分の共重合体中の分散性)や立体規則性などに依存する。一般的に、結晶化熱量が大きいほど、当該ピーク温度も上昇する傾向にあるため、耐熱性に優れると言える。前記結晶性プロピレン系重合体(b2)の示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が30J/g以上であれば、前記結晶性プロピレン系重合体(b2)のペレット保管安定性のほか、本発明のラップフィルムの中間層を構成する樹脂組成物の強度や耐熱性を高めることができる。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は150J/g以下である。このような観点から結晶化熱量(ΔHc)としては、30〜140J/g、好ましくは40〜130J/g、さらに好ましくは50〜120J/gであることが望ましい。
【0037】
示差走査熱量計(DSC)により測定した結晶化熱量は、装置としてパーキンエルマー(株)社製Pyris1を用い、試料約10mgをアルミパンに詰め、−10℃で1分間保持したのち200℃まで昇温し、200℃で再度1分間保持した後、−10℃まで降温したときの結晶化曲線を測定し、結晶化曲線がベースラインから立ち上がる点と、結晶化曲線の0℃の点を直線で結び、この直線と結晶化曲線で囲まれる部分の総面積から結晶化熱量を求めた。
【0038】
また、前記結晶性プロピレン系重合体(b2)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合、そのエチレン含有量は、5質量%未満であることが好ましく、4.5質量%以下であるのがさらに好ましく、特に4質量%以下であるのがより好ましい。
【0039】
結晶性プロピレン系重合体(b2)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.2N)が、0.2g/10分以上、好ましくは、0.5〜18g/10分であり、1〜15g/10分であるのがより好ましい。
【0040】
結晶性プロピレン系重合体(b2)としては、例えば日本ポリプロ社製「ノバテックPP」「WINTEC」、住友化学社製「ノーブレン」、プライムポリマー社製「プライムポリプロ」「プライムTPO」、ダウ・ケミカル社製「DOW」等を挙げることができる。
【0041】
中間層(B)に含有される前記結晶性プロピレン系重合体(b2)の質量%は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下であり、通常40質量%以上、好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。結晶性プロピレン系重合体(b2)の含有率が、80質量%以下であるならば、本発明フィルムに良好な透明性や、包装体のシワ発生防止など良好な機械特性が得ることができ、40質量%以上ならば、良好な耐熱性やフィルムカット性を得ることができる。
【0042】
本発明のフィルムに用いる粘着付与剤(b3)としては、天然樹脂や合成樹脂からなる常温で粘着性を有する樹脂であればよく、天然樹脂ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、ロジンのペンタエリスリトール・エステルおよびロジンのグリセリン・エステルなどのロジン系樹脂;テルペン・フェノール樹脂、テルペン樹脂(α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂および水素添加テルペン樹脂などのテルペン系樹脂;芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素共重合体および水素添加炭化水素樹脂などの石油系炭化水素樹脂;フェノール・ホルムアルデヒド樹脂およびキシレン・ホルムアルデヒド樹脂などのフェノール系樹脂;クロマン・インデン樹脂などのクロマン樹脂;等が挙げられる。
【0043】
これらの中でもロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂が、前記スチレン系熱可塑性樹脂(b1)との相溶性が良好であるため好適に使用できる。このような粘着付与剤の具体例としては、三井化学(株)の商品名「ハイレッツ」、「ペトロジン」、荒川化学工業(株)の商品名「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)の商品名「クリアロン」、出光石油化学(株)の商品名「アイマーブ」、イーストマンケミカル(株)の商品名「エスコレッツ」等を例示することができる。
【0044】
中間層(B)に含有される前記粘着付与剤(b3)の質量%は、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、通常5質量%以上、好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上である。粘着付与剤(b3)の含有率が、30質量%以下であるならば、本発明のラップフィルムからの前記粘着付与剤の過度のブリードを防止することができ、本発明のラップフィルムの製造加工時に、前記中間層(B)の配合を押出機にて安定して押出加工することが可能になる。また、5質量%以上であるならば、本発明のフィルムに良好な剛性や透明性を付与させることができる。
【0045】
本発明のフィルムの表面層および/または中間層には、本発明の主旨を超えない範囲で例えば、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や防曇剤、帯電防止剤、滑り性、自己粘着性等の性能を付与するために、次のような各種添加剤を樹脂層に適宜配合することができる。ここで、各種添加剤としては例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪酸アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキルエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイル等から選ばれた化合物の少なくとも一種を、各層を構成する樹脂成分100質量%に対して、0.1〜12質量部、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
【0046】
本発明のラップフィルムの、押込み荷重強度は、160gf以上、好ましくは170gf以上、さらに好ましくは180gf以上である。押込み荷重強度が160gf以上ならば、本発明のフィルムに良好な剛性を付与することができ、プリパッケージを多段積みした場合などに、下部に配置された包装体が、上部の包装体から受ける荷重によって、トレーに天張されたフィルムに歪みが生じ外観上商品価値が低下することを防止できる。
【0047】
本発明において押込み荷重を測定する場合、図1に記載の器具を用いる。図1に記載の器具は、それぞれ縦30mm、横180mmの上板1、下板2が、2本の鉄棒3にて縦幅180mmになるように固定され、前記下板に先端が半径10mmの半球形状のピン4が取り付けられた、総重量500gの器具である。図2に記載されているとおり、直径40mmの円形試料フィルムをフィルム固定治具5に固定し、図1の器具の上板1を引張試験機上側チャック部6で挟み固定する。前記引張試験機上側チャック部6を温度23℃、引張速度200mm/分の条件で図1の器具を吊り上げ、図1の器具に固定された半球形状のピン4で前記試料フィルムの中央部を押込み、前記試料フィルムが5mm変位するまでの最大荷重を、本発明のラップフィルムの押込み荷重とする。
【0048】
本発明のフィルムの、10Hzにおける動的粘弾性を測定した場合に、0℃〜30℃における損失正接(tanδ)の値は、0.13以上、好ましくは0.14以上、さらに好ましくは0.15以上、かつ0.60以下、好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.40以下である。損失正接の値が0.13以上ならば、プラスチックトレーを本発明のフィルムで包装する際のストレッチ工程において、十分な伸びが発現し、シワのない綺麗な包装体を製造することができる。また、前記損失正接の値が0.60以下ならば、本フィルムの塑性的な挙動が押さえられ、フィルムカット時の反発によるトレー底への折り込み不良を抑制することができる。
【0049】
示差走査熱量計(DSC)により本発明のストレッチフィルムの全融解熱量を測定した場合に、全融解熱量に対し120℃以上の融解熱量の割合が通常20%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは23%以上である。全融解熱量に対し120℃以上の融解熱量の割合が20%以上ならば、前記フィルムの柔軟性が付与され、フィルムの耐破れ性を向上させることができる。また、前記融解熱量の割合が20%以上ならば、前記フィルムに良好な耐熱性が付与され、ヒートシール熱板の過度の熱量により完全に溶融していまい、ヒートシール部分に穴が開いてしまうなどの外観不良の発生を防止できる。
【0050】
示差走査熱量計(DSC)により測定した融解熱量、120℃以上の融解熱量割合は、装置としてパーキンエルマー(株)社製Pyris1を用い、試料約10mgをアルミパンに詰め、−10℃で1分間保持したのち200℃まで昇温して融解曲線を測定し、融解曲線がベースラインに戻る点と、融解曲線の0℃の点を直線で結び、この直線と融解曲線で囲まれる部分の総面積から融解熱量を求め、総面積を120℃で2分割し、総面積に対する120℃以上の部分の面積割合を120℃以上の融解熱量割合とする。
【0051】
本発明のフィルムの総厚みとしては、20μm以下、好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下であり、5μm以上、好ましくは7μm以上、さらに好ましくは9μm以上である。総厚みが20μm以下ならば、前記フィルムに柔軟性を付与することができ、優れたカット性を維持することが可能である。また、5μm以上ならば、耐ピンホール性が向上し、前記フィルムを取り扱い時に穴が開いてしまうなどの問題が発生することを防止できる。
【0052】
本発明のフィルムの各層厚みに関しては、所定の動的粘弾性挙動、押込み荷重強度、示差走査熱量計(DSC)による熱的挙動を示す範囲で、適宜調整することができるが、本発明のフィルムの製膜安定性、表面層の粘着性を考慮した場合、厚み比の割合としては表裏層10〜65%、中間層35〜90%であることが好ましく、表裏層20〜60%、中間層80〜40%であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明のフィルムは、例えば押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形またはTダイ成形によりフィルム状に成形することにより製造することができる。
【0054】
積層フィルムとする場合は、複数の押出機を用いて多層ダイにより共押出するのが好ましい。実用的には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましく、その際のブローアップ比(チューブ径/ダイ径)は3以上が好ましく、特に4〜7の範囲が好適である。その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
【0055】
さらに、得られたフィルムを樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5倍程度に延伸、またはフィルムの縦横方向に1.2〜5倍程度に二軸延伸してもよい。これにより、カット性の改良や熱収縮性の付与などを行うことができる。
【0056】
本発明のフィルムは、各種物質に対する包装体として用いることができ、その用途が特に限定されるものではないが、例えば、青果物、鮮魚、精肉など吸湿や乾燥などの変敗の影響を受けやすい食品を収納するための食品包装体として好適に使用することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。
【0058】
(1)押込み荷重強度
図1に記載の器具を用いて図2のようにフィルムを固定し、先端が半径10mmの半球形状をしたピンを、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ AGS−H)に装着し、200mm/分の速度で前記試料フィルムが5mm変位するまで押し込み、その最大荷重を測定した。
【0059】
(2)損失正接(tanδ)
試料を縦4mm、横60mmに切り出し、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−60℃から測定し、得られたデータから損失正接(tanδ)の値を求めた。
【0060】
(3)融解熱量、融解熱量割合
装置としてパーキンエルマー(株)社製Pyris1を用い、試料約10mgをアルミパンに詰め、−10℃で1分間保持したのち200℃まで昇温して融解曲線を測定し、融解曲線がベースラインに戻る点と、融解曲線の0℃の点を直線で結び、この直線と融解曲線で囲まれる部分の総面積から融解熱量を求め、総面積を120℃で2分割し、総面積に対する120℃以上の部分の面積割合を120℃以上の融解熱量割合とした。
【0061】
(4)段積みテスト
40gのタオルに水を含ませて300gとした疑似食品を発泡ポリスチレントレー(長さ250mm、幅180mm、高さ25mm)に入れ、ハンドラッパーにて手包装し、包装体を5個作製する。その包装体を5段重ねにし、10℃で5時間保管する。保管後の最下段の包装体の天張部の状態を下記の基準で評価した。
○:全く変形が見られない、もしくは天張部にやや弛みが見られるものの合格レベル
△:天頂部における弛みが目立ち、パック品の商品的価値の劣化が生じる
×:天頂部に大きな弛みが発生し、パック品の商品的価値がない
【0062】
(5)耐熱性
横ピロー型包装機(トレーラッパー)(大森機械工業(株)・Strech wrapper STN−7500)に付属の熱シール用熱板にフィルム1枚を2秒間接触させ、フィルムに穴が開かない最高熱板温度を測定し、耐熱温度とした。
【0063】
(6)包装シワ
幅350mmのストレッチ包装用フィルムを用い、横ピロー型包装機(トレーラッパー)(大森機械工業(株)・Strech wrapper STN−7500)により発泡ポリスチレントレー(長さ200mm、幅150mm、高さ30mm)を包装し、包装体の外観を確認し、下記の基準で評価した。
○:通常の使用条件で全くシワが発生しない、もしくはわずかにシワがあるが全く問題ない範囲である
△:シワが天頂部面積の30%以上に発生し、調整しても取れない
×:ほぼ全面にわたりシワが発生する
【0064】
(7)カット性および底折り込み安定性
幅350mmのストレッチ包装用フィルムを用い、横ピロー型包装機(トレーラッパー)(大森機械工業(株)・Strech wrapper STN−7500)により発泡ポリスチレントレー(長さ200mm、幅150mm、高さ30mm)を包装し、包装体の底部分の状態を確認し、下記の基準で評価した。
○:問題なく綺麗な断面でフィルムをカットできることにより、綺麗に折りたたむことが可能である
△:フィルムカット時にやや反発が起こり、底面がごわついている
×:フィルムカット時の反発が大きくフィルムが折り込めない
【0065】
実施例1:
両表面層(A)を形成する樹脂組成物については、(a)成分であるエチレン系重合体としてのEVA(酢酸ビニル含有量15質量%、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2.0g/10分)97質量部と、防曇剤としてのジグリセリンオレート3質量部とを溶融混練した。 他方、中間層(B)を形成する樹脂組成物については、(b1−a)成分であるスチレン系熱可塑性エラストマーとしてのスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量:12重量% (株)クラレ製、商品名「ハイブラー7311」)と、(b2)成分であるプロピレン系重合体として、プロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量3%、結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量80J/g、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)と、(b3)成分である粘着付与剤としての水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(b1−a)/(b2)/(b3)=15/65/20となるように溶融混練し、これらの溶融混練樹脂を環状三層ダイ190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、各層の平均厚さが各々3.5μm/7μm/3.5μmの、総厚み14μmの3層フィルム(サンプル)を得た。
【0066】
実施例2:
実施例1において、中間層(B)を形成する樹脂組成物について、(b1−a)成分であるスチレン系熱可塑性エラストマーとしてのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量:12重量% (株)旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「タフテックH1221」)と、(b2)成分であるプロピレン系重合体として、プロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量3%、結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量80J/g、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)と、(b3)成分である粘着付与剤としての水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(b1−a)/(b2)/(b3)=23/57/20となるように溶融混練るように変更した以外は実施例1と同様にして、総厚みが14μmの多層フィルムを得た。
【0067】
比較例1:
実施例1において、中間層(B)を形成する樹脂組成物について、(b1−a)成分であるスチレン系熱可塑性エラストマーとしてのスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量:12重量% (株)クラレ製、商品名「ハイブラー7311」)と、(b2)成分であるプロピレン系重合体として、プロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量3%、結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量80J/g、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)と、(b3)成分である粘着付与剤としての水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(b1−a)/(b2)/(b3)=50/30/20となるように溶融混練るように変更した以外は実施例1と同様にして、総厚みが14μmの多層フィルムを得た。
【0068】
比較例2:
実施例1において、中間層(B)を形成する樹脂組成物について、(b2)成分であるプロピレン系重合体として、プロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量3%、結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量80J/g、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)と、(b3)成分である粘着付与剤としての水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(b2)/(b3)=80/20となるように溶融混練るように変更した以外は実施例1と同様にして、総厚みが14μmの多層フィルムを得た。
【0069】
比較例3:
実施例1において、中間層(B)を形成する樹脂組成物について、(b1−a)成分であるスチレン系熱可塑性エラストマーとしてのスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含量:12重量% (株)クラレ製、商品名「ハイブラー7311」)と、(b2)成分であるプロピレン系重合体として、プロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量3%、結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量80J/g、結晶化ピーク温度115.9℃、メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)3g/10分)と、(b3)成分である粘着付与剤としての水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(b1−a)/(b2)/(b3)=70/10/20となるように溶融混練るように変更した以外は実施例1と同様にして、総厚みが14μmの多層フィルムを得た。
【0070】
比較例4:
実施例1において、各層の平均厚さを各々15μm/30μm/15μmに変更した以外は実施例1と同様にして、総厚みが60μmの多層フィルムを得た。
【0071】
以上得られたフィルムについての特性、性能の測定結果を下記表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1より、本発明のフィルムを用いた包装体は、剛性、耐熱性、包装適正のすべての特性に問題がなく、実用的であることが確認できた(実施例1〜2)。これに対して、本発明で規定する範囲外の押込み荷重強度を有するフィルムを用いた場合、段積みテストにおいて最下段の包装体の天張部に弛みが発生してしまうなど剛性が不十分であったり(比較例1、3)、本発明で規定する範囲外の動的粘弾性特性(損失正接)を有するフィルムを用いた場合には、包装体仕上がり時にシワが発生したり、フィルムのカット時の切れが悪くなって、包装適正が不十分であった(比較例2および3)。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のフィルムは、例えば、食品包装用フィルムとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 上板
2 下板
3 鉄棒
4 ピン
5 フィルム固定治具
6 引張試験機上側チャック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両表面層(A)がエチレン系重合体(a)を主成分とし、両表面層に挟まれた層のうちの一つの層(B)が軟質樹脂系重合体(b1)、結晶性プロピレン系重合体(b2)、および粘着付与剤(b3)を含有する総厚みが5〜20μmの多層フィルムであり、当該多層フィルムの押込み荷重が160gf以上であり、周波数10Hzで測定した動的粘弾性における損失正接(tanδ)が0.13〜0.60であることを特徴とするポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項2】
示差走査熱量計(DSC)にて昇温速度10℃/分で測定した、120℃以上の融解熱量の割合が多層フィルムの全溶解熱量に対して20%以上である請求項1に記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項3】
軟質樹脂系重合体(b1)が、スチレン系熱可塑性エラストマー(b1−a)である請求項1または2に記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項4】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b1−a)が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)の水素添加物、およびスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS)の水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項5】
スチレン系熱可塑性エラストマー(b1−a)中のスチレン含有量が1〜40重量%である請求項3または4に記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項6】
結晶性プロピレン系重合体(b2)を、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定した時の結晶化熱量(ΔHc)が30J/g以上である請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項7】
結晶性プロピレン系重合体(b2)が、ホモプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、およびプロピレン−エチレンブロック共重合体の中から選ばれる1種または2種以上の混合成分からなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項8】
粘着付与剤(b3)が、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、および石油系炭化水素樹脂の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項9】
中間層(B)が、結晶化プロピレン系重合体(b2)を40〜80重量%、粘着付与剤(b3)を5〜30重量%を含有する請求項1〜8のいずかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項10】
エチレン系重合体(a)が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル、およびエチレン−メタクリル酸エチル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜9のいずかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項11】
エチレン系重合体(a)が、酢酸ビニル単位含有量が5〜25重量%であり、メルトフローレート(JIS K 7210 190℃ 荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として構成される請求項1〜10のいずれかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリオレフィン系多層ラップフィルムからなることを特徴とする食品包装用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−52551(P2013−52551A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191150(P2011−191150)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】