説明

ポリオレフィン系極細高強度繊維及び不織布

【課題】 引張り強さの高いポリオレフィン系極細高強度繊維、及び強度の優れる不織布を提供すること。
【解決手段】 本発明のポリオレフィン系極細高強度繊維は、繊維径が4μm以下、かつ引張り強さが3cN/dtex以上である。本発明の極細高強度繊維はポリプロピレンのみからなるか、ポリプロピレンとポリエチレンとからなり、ポリエチレンが繊維表面全体(両端部を除く)を占めているのが好ましい。本発明の不織布は前記のポリオレフィン系極細高強度繊維を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系極細高強度繊維及び不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維径が4μm以下の極細繊維は繊維径が小さいため、濾過材を構成する繊維として使用すると、より微細な固体を濾過することができる。このように、極細繊維の繊維径が小さければ小さい程、より濾過性能が向上すると考えられるため、濾過材を構成する繊維として、繊維径のより小さい極細繊維を使用するのが好ましい。また、この極細繊維は耐薬品性やエレクトレット性などの点で優れているポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0003】
また、前記の極細繊維を電池用セパレータを構成する繊維として使用すると、電気絶縁性に優れるとともに、電解液の保持性に優れているため好適に使用できる。この場合も極細繊維は耐電解液性に優れているポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0004】
そのため、本願出願人はポリオレフィン系樹脂の1つであるポリプロピレンからなる極細繊維を発生できる極細繊維発生可能繊維として、融点が166℃以上の高融点ポリプロピレンを島成分とする海島繊維を提案した(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−160432号公報(特許請求の範囲、段落番号0011など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような極細繊維発生可能繊維を使用すると、極細繊維同士が圧着していない状態で切断することができ、極細繊維を均一に分散させることができるため、濾過性能や電気絶縁性能等に優れる濾過材や電池用セパレータを製造できるものであった。
【0007】
近年、極細繊維を含む濾過材や電池用セパレータなどの不織布に対する更なる要求物性として、従来以上に強度の優れるものが要求されている。従来の極細繊維の引張り強さは2.7cN/dtex程度であったが、極細繊維の引張り強さが高ければ極細繊維を含む不織布の強度もより優れるものとなる、と予測されるため、引張り強さの高い極細繊維が待ち望まれていた。
【0008】
そのため、本発明は引張り強さの高いポリオレフィン系極細高強度繊維、及び強度の優れる不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは従来の極細繊維を得る方法について検討したところ、未延伸複合繊維を延伸して延伸複合繊維とした後に樹脂成分を除去することによって極細繊維を得ていることに起因することを見出した。つまり、未延伸複合繊維は少なくとも2種類の樹脂から構成されており、個々の樹脂によって好適な延伸温度が異なるが、いずれの樹脂も損傷しない条件で延伸する必要があるため、十分に延伸できないことによって、十分な引張り強さの極細繊維を得ることができないことを見出したのである。
【0010】
本発明は上記の知見に基いて、未延伸複合繊維の樹脂成分を除去して残留した樹脂成分からなる未延伸残留繊維を延伸することによって、優れた引張り強さの極細繊維を製造できることを見出したものである。
【0011】
つまり、本発明の請求項1にかかる発明は、「繊維径が4μm以下、かつ引張り強さが3cN/dtex以上のポリオレフィン系極細高強度繊維」である。このように、引張り強さが3cN/dtex以上という、従来は得られなかった強度を有するため、強度の優れる極細繊維含有不織布を製造できる。
【0012】
本発明の請求項2にかかる発明は、「ポリプロピレンからなる、請求項1記載のポリオレフィン系極細高強度繊維」である。ポリプロピレンは比較的融点が高く耐熱性に優れているため、耐熱性を必要とする極細繊維含有不織布を構成する繊維として好適に使用できる。
【0013】
本発明の請求項3にかかる発明は、「ポリプロピレンとポリエチレンとからなる、請求項1記載のポリオレフィン系極細高強度繊維」である。2種類の樹脂成分からなる場合であっても、ポリプロピレンとポリエチレンとは好適な延伸温度が近似しており、十分に延伸できるため、引張り強さが3cN/dtex以上の極細高強度繊維であることができる。
【0014】
本発明の請求項4にかかる発明は、「ポリエチレンが繊維表面に露出している、請求項3記載のポリオレフィン系極細高強度繊維」である。このポリオレフィン系極細高強度繊維はポリエチレンにより融着できるため、強度がより優れ、またポリオレフィン系極細高強度繊維が脱落しにくく、毛羽立ちにくい極細繊維含有不織布を製造できる。
【0015】
本発明の請求項5にかかる発明は、「ポリエチレンが繊維表面全体(両端部を除く)を占めている、請求項3又は請求項4記載のポリオレフィン系極細高強度繊維」である。このポリオレフィン系極細高強度繊維はポリエチレンにより確実に融着できるため、強度がより優れ、またポリオレフィン系極細高強度繊維が脱落しにくく、毛羽立ちにくい極細繊維含有不織布を製造できる。
【0016】
本発明の請求項6にかかる発明は、「海島型複合繊維の海成分を除去して残留した島成分からなる、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポリオレフィン系極細高強度繊維」である。海島型複合繊維の海成分を除去することにより、繊維径が4μm以下のポリオレフィン系極細高強度繊維を製造しやすい。
【0017】
本発明の請求項7にかかる発明は、「請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポリオレフィン系極細高強度繊維を含む不織布」である。そのため、濾過性能や電気絶縁性能等に優れるばかりでなく、強度も優れている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリオレフィン系極細高強度繊維は、従来は得られなかった引張り強さを有するため、強度の優れる極細繊維含有不織布を製造できる。
【0019】
本発明の不織布は濾過性能や電気絶縁性能等に優れるばかりでなく、強度も優れている。そのため、濾過材や電池用セパレータとして好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のポリオレフィン系極細高強度繊維(以下、「PO極細高強度繊維」と表記する)は引張り強さが3cN/dtex以上の強度の優れるものである。この引張り強さが高ければ高い程、優れた強度の不織布を製造できるため、引張り強さは4cN/dtex以上であるのが好ましく、5cN/dtex以上であるのがより好ましく、6cN/dtex以上であるのが更に好ましく、7cN/dtex以上であるのが更に好ましい。なお、引張り強さの上限は特に限定するものではないが、20cN/dtex程度が現実的である。本発明における「引張り強さ」はJIS L 1015(化学繊維ステープル試験法、定速緊張形)により測定した値をいう。
【0021】
本発明のPO極細高強度繊維はポリオレフィン系樹脂から構成されているため、耐薬品性やエレクトレット性などの点で優れており、特に限定するものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、ポリ4−メチルペンテン−1等のホモポリマーや、プロピレンとα−オレフィン(例えば、エチレン、ブテン−1等)との共重合体、エチレンとブテン−1との共重合体などを挙げることができる。これらの中でもポリプロピレンは比較的融点が高く耐熱性に優れており、また、紡糸性、延伸性に優れ、前記引張り強さをもつ極細高強度繊維を製造しやすいため好適に使用できる。
【0022】
なお、PO極細高強度繊維は単一成分から構成されていても、複数成分から構成されていても良い。後者のように複数成分から構成されていると、融着性、巻縮発現性或いは分割性等の各種特性を付与できるため好適である。例えば、ポリプロピレンとポリエチレンとは好適な延伸温度が近似しており、十分に延伸できるため、引張り強さが3cN/dtex以上の極細高強度繊維であることができる。特に、ポリエチレンが繊維表面に露出していると、このポリエチレンにより融着できるため、強度がより優れ、またPO極細高強度繊維が脱落しにくく、毛羽立ちにくい極細繊維含有不織布を製造でき、好適である。このポリエチレンの繊維表面に占める露出割合(両端部を除く)は50%以上であるのが好ましいが、多ければ多いほど確実に融着でき、前記効果に優れているため、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましく、100%、つまりポリエチレンが繊維表面全体(両端部を除く)を占めているのが最も好ましい。
【0023】
本発明のPO極細高強度繊維の繊維径は、濾過性能、電気絶縁性能、液保持性、柔軟性等の各種性能に優れる不織布を製造できるように、4μm以下である。繊維径が細ければ細い程、前記性能に優れるため、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのがより好ましい。繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.1μm程度が現実的である。なお、「繊維径」はPO極細高強度繊維を走査型電子顕微鏡により2000倍の倍率で撮影した電子顕微鏡写真をもとに、ノギスで計測し、1/2000倍して算出した直径をいい、繊維断面が非円形の場合には、繊維断面積と同じ面積をもつ円の直径を繊維径とみなす。
【0024】
本発明のPO極細高強度繊維は海島型複合繊維の海成分を除去して残留した島成分からなるのが好ましい。繊維径が4μm以下のPO極細高強度繊維を製造しやすいためである。しかしながら、繊維断面において花弁状に樹脂が配置した花弁型複合繊維や、小判状に樹脂が配置した小判型複合繊維等であっても良い。
【0025】
なお、本発明のPO極細高強度繊維の横断面形状は円形又は非円形(例えば、楕円状、長円状、T状、Y状、+状、中空状、多角形状など)であることができる。また、PO極細高強度繊維は連続した長繊維であっても、所定長さに切断された短繊維(湿式不織布構成繊維とする場合には、0.5〜20mmであるのが好ましい)であっても良い。更には、例えば、吸湿剤、艶消し剤、顔料、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染色剤、導電剤、親水化剤、脱臭剤、或いは抗菌剤などの機能性物質を含んでいても良い。
【0026】
本発明のPO極細高強度繊維は、例えば次のようにして製造することができる。
【0027】
まず、PO系極細高強度繊維となるポリオレフィン系樹脂と、このポリオレフィン系樹脂を5mass%以下しか除去できない溶媒によって95mass%以上除去できる樹脂、とを備えた未延伸複合繊維を紡糸する。例えば、ポリオレフィン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂を5mass%以下しか除去できないアルカリ水溶液の溶媒によって95mass%以上除去できるポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート系共重合体、ポリグリコール酸、グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、乳酸共重合体など)とを備えた未延伸複合繊維を紡糸する。これらの中でも、ポリ乳酸は比較的融点が低く、ポリオレフィン系樹脂と比較的近い融点をもち、未延伸複合繊維を紡糸する際にポリオレフィン系樹脂が熱による影響を受けにくく、後述の延伸により引張り強さが7cN/dtex以上のPO極細高強度繊維を製造しやすいため好適である。
【0028】
なお、未延伸複合繊維の繊維断面における樹脂の配置状態は、例えば、海島状、花弁状、小判状などを挙げることができるが、繊維径のより小さいPO極細高強度繊維を製造しやすい海島状であるのが好ましい。また、未延伸複合繊維の紡糸は常法の溶融紡糸法により実施できる。好適である海島状未延伸複合繊維を紡糸する場合には、繊維径の揃ったPO極細高強度繊維を製造しやすいように、混合紡糸法ではなく、複合紡糸法により海島状未延伸複合繊維を紡糸するのが好ましい。なお、ポリエチレンが繊維表面に露出したPO極細高強度繊維は、例えば、未延伸複合繊維の一構成樹脂成分として、ポリエチレンと他のポリオレフィン系樹脂とを混合した状態で、又は複合した状態で供給して未延伸複合繊維を紡糸する。
【0029】
次いで、未延伸複合繊維のポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を除去し、未延伸ポリオレフィン系繊維を形成する。例えば、前述のようなポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂とからなる未延伸複合繊維の場合には、アルカリ水溶液によりポリエステル系樹脂を除去し、未延伸ポリオレフィン系繊維を形成する。なお、除去方法としては、例えば、チーズ染色機を用い、穴あきボビンに未延伸複合繊維を巻き付けた状態で、アルカリ水溶液等の溶媒を循環させる方法、懸垂型のかせ染色機を用いる方法、などを挙げることができる。
【0030】
次いで、未延伸ポリオレフィン系繊維を延伸して、繊維径が4μm以下で、引張り強さが3cN/dtex以上のPO極細高強度繊維を製造できる。なお、延伸方法は、PO極細高強度繊維を形成できる方法であれば特に限定されないが、例えば、レーザーを照射しながら延伸する方法、絶対圧が2kg/cm以上の加圧飽和水蒸気雰囲気下で延伸する方法(特開平11−350283号に記載の延伸方法)などにより実施できる。なお、延伸時の温度は可塑化し変形する温度±10℃で行うのが好ましく、未延伸ポリオレフィン系繊維がポリプロピレンからなる場合には、120℃前後で延伸するのが好ましい。また、この際の延伸倍率は、本発明のPO極細高強度繊維を製造しやすいように、5倍以上の高倍率であるのが好ましく、7倍以上であるのがより好ましく、10倍以上であるのが更に好ましい。なお、未延伸ポリオレフィン系繊維がポリプロピレンとポリエチレンとを含む場合であっても、これら樹脂の可塑化変形温度が比較的近いため、105℃前後の温度で、延伸倍率5倍以上の高倍率で延伸することができる。
【0031】
本発明のPO極細高強度繊維は上述の方法により製造できるが、必要に応じて、ギロチンカッター、ロータリーカッター、押切りカッターなどを用いて、所望長さに切断する。本発明のPO極細高強度繊維は引張り強さが3cN/dtex以上と、高度に結晶配向した状態にあり、切断性に優れているため、PO極細高強度繊維同士を圧着させることなく切断できる、という副次的な効果も奏する。したがって、PO極細高強度繊維が均一に分散し、地合いの優れる不織布を製造しやすい。なお、PO極細高強度繊維を切断する場合、PO極細高強度繊維同士の圧着をより効果的に防止できるように、PO極細高強度繊維に油剤を付与した状態で切断するのが好ましい。
【0032】
本発明の不織布は上述のようなPO極細高強度繊維を含んでいる。そのため、濾過性能や電気絶縁性能等に優れているばかりでなく、強度も優れている。本発明の不織布はどのような不織布であっても良いが、湿式不織布であると地合いが優れているため好適である。特に、本発明のPO極細高強度繊維は切断しても圧着しにくく、スラリー中で均一に分散できるため、地合いの優れる湿式不織布であることができる。なお、PO極細高強度繊維が融点差のある2種類以上のポリオレフィン系樹脂から構成されている場合には、PO極細高強度繊維は融着して不織布の強度を高めるとともに脱落したり、毛羽立ったりしないようにするのが好ましい。
【0033】
本発明の不織布においては、PO極細高強度繊維が存在していることによる性能、例えば、濾過性能、電気絶縁性能等に優れるように、5mass%以上含まれているのが好ましく、10mass%以上含まれているのがより好ましく、20mass%以上含まれているのが更に好ましい。
【0034】
このPO極細高強度繊維以外の繊維は不織布の使用用途によって異なり、特に限定するものではないが、例えば、濾過材や電池用セパレータとして使用する場合には、PO極細高強度繊維以外のポリオレフィン系繊維を含んでいることができる。より具体的には、繊維径が4μmを超え、かつ引張り強さが3cN/dtex以上のポリオレフィン系太高強度繊維、繊維径が4μm以下、かつ引張り強さが3cN/dtex未満のポリオレフィン系極細低強度繊維、繊維径が4μmを超え、かつ引張り強さが3cN/dtex未満のポリオレフィン系太低強度繊維、繊維径が4μmを超え、かつ引張り強さが3cN/dtex以上のポリオレフィン系太高強度融着繊維、繊維径が4μm以下、かつ引張り強さが3cN/dtex未満のポリオレフィン系極細低強度融着繊維、繊維径が4μmを超え、かつ引張り強さが3cN/dtex未満のポリオレフィン系太低強度融着繊維、などを挙げることができる。
【0035】
本発明の不織布は常法により製造することができ、好適である湿式不織布は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、上述のようなPO極細高強度短繊維を用意する。次いで、このPO極細高強度繊維(必要により他の繊維も)を常法の湿式法(例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型長網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式など)により繊維ウエブを形成する。そして、この繊維ウエブを、(1)水流などの流体流によって絡合したり、(2)PO極細高強度短繊維及び/又は混合した融着性を有する繊維を融着したり、(3)バインダーを塗布又は散布して接着して、湿式不織布を製造することができる。
【0036】
本発明の不織布は濾過性能や電気絶縁性能等に優れるばかりでなく、強度も優れているため、気体又は液体の濾過材や電池用セパレータとして使用できるばかりでなく、PO極細高強度繊維が均一に分散した地合いの優れるものであることができるため、各種クリーニングシートとしても使用することができる。なお、本発明の不織布が各種用途に適合するように、エレクトレット化処理、親水化処理などを実施することができる。
【0037】
以下に、本発明の実施例を記載するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
海島型複合繊維を紡糸できる常法の複合紡糸装置(25島の海島型複合繊維を紡糸可能)を使用し、海成分としてポリ−L−乳酸を、島成分としてポリプロピレンを、ギアポンプ比75:25、温度240℃の条件下で押し出し、繊度4.6dtexの海島型未延伸複合繊維を紡糸した。
【0039】
次いで、この海島型未延伸複合繊維をチーズ染色機を用いて、糸巻き状のまま温度70℃、1M−水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、60分間水酸化ナトリウム水溶液を循環させることにより、海成分であるポリ−L−乳酸を除去して、繊維径が4μmの未延伸ポリプロピレン極細繊維を得た。
【0040】
次いで、この未延伸ポリプロピレン極細繊維を、絶対圧が4.2kg/cm2の加圧飽和水蒸気(温度:120℃)を充填した容器内へ導入し、延伸倍率6倍で延伸して、ポリプロピレン極細高強度繊維(繊維径:1.8μm、横断面形状:円形)を得た。このポリプロピレン極細高強度繊維は引張り強さが4.5cN/dtexの強度の優れるものであった。また、このポリプロピレン極細高強度繊維に油剤を付与した後に、ギロチンカッターで3mm長に切断したところ、極細高強度繊維同士が圧着することなく切断することができた。
【0041】
(実施例2)
島成分として、ポリプロピレンを芯(55mass%)とし、ポリエチレンを鞘(45mass%)に複合した状態で供給したこと以外は実施例1と同様にして、繊維径が4μmの未延伸ポリプロピレン−ポリエチレン極細繊維を得た。
【0042】
次いで、この未延伸ポリプロピレン−ポリエチレン極細繊維を、絶対圧が4.2kg/cm2の加圧飽和水蒸気(温度:105℃)を充填した容器内へ導入し、延伸倍率5倍で延伸して、ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘型極細高強度繊維(繊維径:2μm、横断面形状:円形)を得た。このポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘型極細高強度繊維は引張り強さが3.5cN/dtexの強度の優れるものであった。また、このポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘型極細高強度繊維に油剤を付与した後に、ギロチンカッターで3mm長に切断したところ、芯鞘型極細高強度繊維同士が圧着することなく切断することができた。
【0043】
(実施例3)
海成分としてポリエチレンテレフタレートを使用したこと、及び紡糸温度(押し出し温度)を300℃としたこと以外は実施例1と同様にして、海島型未延伸複合繊維の紡糸、ポリエチレンテレフタレートの除去、及び未延伸ポリプロピレン極細繊維の延伸を実施して、ポリプロピレン極細高強度繊維(繊維径:1.8μm、横断面形状:円形)を得た。このポリプロピレン極細高強度繊維は引張り強さが3.8cN/dtexの強度の優れるものであった。また、このポリプロピレン極細高強度繊維に油剤を付与した後に、ギロチンカッターで3mm長に切断したところ、極細高強度繊維同士が圧着することなく切断することができた。
【0044】
(比較例1)
海島型複合繊維を紡糸できる常法の複合紡糸装置(25島の海島型複合繊維を紡糸可能)を使用し、海成分としてポリエチレンテレフタレートを、島成分としてポリプロピレンを、ギアポンプ比75:25、温度300℃の条件下で押し出し、繊度4.6dtexの海島型未延伸複合繊維を紡糸した。
【0045】
次いで、この海島型未延伸複合繊維を、温度90℃の熱水浴へ供給し、延伸倍率4倍で延伸して、海島型延伸複合繊維を得た。
【0046】
次いで、この海島型延伸複合繊維をチーズ染色機を用いて、糸巻き状のまま温度98℃、1M−水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、60分間水酸化ナトリウム水溶液を循環させることにより、海成分であるポリエチレンテレフタレートを除去して、ポリプロピレン極細繊維(繊維径:2μm、横断面形状:円形)を得た。このポリプロピレン極細繊維は引張り強さが2.5cN/dtexの強度の劣るものであった。また、このポリプロピレン極細繊維に油剤を付与した後に、ギロチンカッターで3mm長に切断したところ、一部極細高強度繊維同士が圧着していた。
【0047】
(比較例2)
芯鞘型複合繊維を紡糸できる常法の複合紡糸装置を使用し、芯成分としてポリプロピレンを、鞘成分としてポリエチレンを、温度255℃の条件下で押し出し、繊度5.56dtexの芯鞘型未延伸複合繊維を紡糸した。
【0048】
次いで、この芯鞘型未延伸複合繊維を、温度80℃の熱風で予備延伸(3倍延伸)した後、絶対圧が4.2kg/cmの加圧飽和水蒸気(温度:123℃)を充填した容器内へ導入し、延伸倍率2.33倍で延伸して、芯鞘型延伸複合繊維(繊維径:10.5μm、引張り強さ:7cN/dtex、横断面形状:円形)を得た。この芯鞘型延伸複合繊維は強度的には優れるものの、繊維径の大きい、太いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が4μm以下、かつ引張り強さが3cN/dtex以上のポリオレフィン系極細高強度繊維。
【請求項2】
ポリプロピレンからなる、請求項1記載のポリオレフィン系極細高強度繊維。
【請求項3】
ポリプロピレンとポリエチレンとからなる、請求項1記載のポリオレフィン系極細高強度繊維。
【請求項4】
ポリエチレンが繊維表面に露出している、請求項3記載のポリオレフィン系極細高強度繊維。
【請求項5】
ポリエチレンが繊維表面全体(両端部を除く)を占めている、請求項3又は請求項4記載のポリオレフィン系極細高強度繊維。
【請求項6】
海島型複合繊維の海成分を除去して残留した島成分からなる、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポリオレフィン系極細高強度繊維。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポリオレフィン系極細高強度繊維を含む不織布。

【公開番号】特開2006−28689(P2006−28689A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211151(P2004−211151)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】