説明

ポリオレフィン系樹脂発泡シート、吸音材、及び自動車用部品、並びにポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法

【課題】
重量と厚みの増加を抑制しながらも、高周波領域を含む広領域の騒音に対する吸音性を高めたポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供する。
【解決手段】
連通性気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
少なくとも一方の面から他方の面に向かって、前記気泡の気泡径が変化する部分を有するポリオレフィン系樹脂発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡シート、該発泡シートを用いた吸音材、該吸音材を用いた自動車部品に関する。また、本発明は、前記発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌等の自動車分野における吸音材として発泡体が広く使用され、このような発泡体としては、例えば、ウレタン系樹脂からなるウレタン発泡体、合成ゴムまたは天然ゴムからなるゴム発泡体、ポリオレフィン系からなる熱可塑性樹脂発泡体等が挙げられる。
【0003】
近年、これらの吸音材には、環境配慮に対する要求からリサイクル性が強く求められている。特に自動車分野では、ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂のようなポリオレフィン系樹脂が、リサイクル性に加え、耐熱性、機械的強度及び成形性にも優れる材料として多用されている。
【0004】
しかし、このような吸音材の多くは、気泡径の分布が狭く、ほぼ均一な気泡径に調整されたものであり、吸音性が十分とはいえない。例えばポリプロピレン樹脂を含む厚さ4mmの吸音材は、気泡径を均一にすると、電気自動車の高周波騒音に対して十分な吸音性が得られない。
このような状況下において、より広い周波数における吸音性を高めるために、吸音材を積層する積層構造が広く利用されているが、吸音材の重量の増加、厚みの増大が避けがたい。
【0005】
また、特許文献1には、スキン層と、低発泡層、高発泡層の少なくとも3種類の層をこの順に含有する発泡成形体が記載されるが、この技術はクッション性、衝撃吸収性、曲げ方向の剛性の改善を課題としており、吸音性を向上させることを課題とするものではない。
【0006】
また、近年、樹脂性発泡シートは、自動車の走行時における空気抵抗を低減するための外装部材として用いることも検討されており、耐寒衝撃性の向上も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−59224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、重量と厚みの増加を抑制しながらも、高周波領域を含む広領域の騒音に対する吸音性を高めたポリオレフィン系樹脂発泡シート、当該発泡シートを用いてなる吸音材、当該吸音材を用いてなる自動車部品を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記発泡シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は以下の手段によって達成された。
すなわち本発明は、
<1>連通性気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、少なくとも一方の面から他方の面に向かって、前記気泡の気泡径が変化する部分を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<2>前記発泡シートが単一層からなることを特徴とする<1>に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<3>垂直入射法吸音率が、測定周波数5〜7kHzの吸音率0.6以上であることを特徴とする請求項<1>または<2>に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<4>前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートが高密度ポリエチレンを含むことを特徴とする、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<5>前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートが繊維状物を含むことを特徴とする、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<6>ポリオレフィン系樹脂発泡シートの連続気泡率が50%以上であることを特徴とする、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<7>前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの見掛け密度が180kg/m以上600kg/m以下であることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート、
<8><1>〜<7>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートを用いてなる吸音材、
<9><8>に記載の吸音材を用いてなる自動車部品、
<10>連通性気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法であって、長手方向に連続的に一方の面から中央部に向かって気泡径が大きくなる発泡シート前駆体を形成し、該シート前駆体の長手方向に沿って、厚さ方向に対して垂直に切断することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、少なくとも一方の面から他方の面に向かって、連通性気泡の気泡径が変化する部分を有する。これにより、一方の面から入射した音波をシート内部で効率的に拡散して熱エネルギーに変換することができ、より広い周波数範囲で良好な吸音性を示す。
本発明の吸音材は、より広い周波数範囲において良好な吸音性を示す。
本発明の自動車部品は、車両からでる高周波騒音を効果的に吸収し、エンジン作動時等の騒音をより抑えることができる。
本発明の製造方法によれば、より広い周波数範囲に対する吸音性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の発泡シートの切断面を示す図である。
【図2】実施例1の発泡シートで吸音データを測定した結果を示す図である。
【図3】比較例1の発泡シートの切断面を示す図である。
【図4】比較例1の発泡シートで吸音データを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施の形態を、適宜、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、連通性気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、少なくとも一方の面から他方の面に向かって前記気泡の気泡径が変化する部分を有することを特徴とする。
ここで、変化する部分とは、シートの厚さ方向において、気泡径が一方の面から他方の面に向かって大きくなったり、小さくなったりして、気泡径が変化する部分を有することを言う。気泡径としては特に限定するものではないが、具体的には200μmから600μm程度の範囲内で変化することが好ましい。より好ましくは前記シートの厚み方向に連続的に気泡径が変化するものであり、より好ましくは、前記シートの厚み方向に略傾斜的に気泡径を小さく(又は大きく)するものである。
【0013】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート(以下、単に、「本発明の発泡シート」という。)は、連通性気泡を有し、かつ、気泡径が変化する部分を有する構成により、例えば、本発明の発泡シートを自動車部品に用いた場合には、エンジン等から発生する騒音を入射面(一方の面)からシート内部にひきこみ、低周波音域については気泡内で適宜拡散させることができるとともに、前記入射面から他方の面(出射面)に向かって音の伝達路が迷路のように長く形成されていることから、高周波音域についてもシート内部で効率的に拡散させながら熱エネルギーに変換することができる。その結果として広い周波数範囲における吸音効率を上げることができる。
入射面から他方の面(出射面)にかけて気泡の大きさを連続的に変化させることで、上記の高周波音域の吸音効果をより向上させることができる。
【0014】
また、好ましくは、本発明の発泡シートは同一材料からなる単一層で構成されていることが好ましい。この構成により、従来の積層シートに比べて、吸音材の重量およびコストを低減することができるとともに、成形性も格段に向上する。本発明の発泡シートは単一層からなる構成でも優れた吸音性を示す。
本発明の発泡シートの表層には、スキン層を少なくとも一方に設けることが、材料内部での音の拡散と遮断の観点より好ましい。音の入射面とは反対側の面(出射面)をスキン層とすることがより好ましい。
【0015】
本発明の発泡シートは、測定周波数5〜7kHzにおける垂直入射法吸音率が0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.75以上がさらに好ましい。
例えば、電気自動車はモーター音やインバーター音の騒音が6kHz付近にあり、本発明の発泡シートを所望の形状に成形して自動車用のダッシュインシュレーターに適用すれば、吸音性が高く剛性のある吸音材とすることができる。
ここで、垂直入射法吸音率は、JIS A 1405に基づき測定される数値である。
【0016】
本発明において「連通性気泡を有する」とは、接合部で互いに連通した、いわゆる連続気泡を有することをいう。当該連続気泡の比率(連続気泡率)は、好ましくは50〜90%、より好ましくは60〜80%である。
連続気泡率が低すぎると、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの吸音性が低下するおそれがあり、高すぎるとポリオレフィン系樹脂発泡シートの圧縮時における成形性や剛性が低下するおそれがある。
【0017】
また、連続気泡率が上記好ましい範囲では、ポリオレフィン系樹脂発泡シートが多孔質になることで、入射音波の固体伝搬音および空気伝搬音の伝播路の迷路度が高まり、吸音性を向上させることができる。
【0018】
本発明の発泡シートの見掛け密度は600kg/m以下あることが好ましく、180〜450kg/mがより好ましい。当該見掛け密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される値である。
見掛け密度が高すぎると吸音性が低下するおそれがある。逆に低すぎると成形性が低下するおそれがある。つまり、見掛け密度を上記好ましい範囲内とすることで、成形性と吸音性とをより高いレベルで両立させることができる。
【0019】
本発明の発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げることができ、これらを単独もしくは組み合わせて使用することができる。これらの中でもリサイクル性や成形性、耐熱性、実用化された実績などの観点からポリプロピレン樹脂が好適に用いられる。また、良好な耐寒衝撃性を得る観点からは、高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。本発明の発泡シートが高密ポリエチレンを含む場合において、その含有量は75〜99.9質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。
【0020】
また、本発明の発泡シートはプロピレン‐エチレンブロック共重合体を含むことが好ましく、このようなブロック共重合体を含むことにより得られる発泡シートの発泡性が向上し、押出時の溶融温度が比較的低いので広い温度範囲にわたって樹脂組成物の発泡に適した粘弾性が出現し、その結果良好な発泡組織が容易に形成することができる。
前記ブロック共重合体は、メルトインデックスが1.9以下を有することが好ましい。
本発明の発泡シート中、当該ブロック共重体の含有量は、15〜70質量%であることが好ましい。
【0021】
本発明の発泡シートには、本発明の作用効果を著しく損なわない範囲であれば、上記ポリオレフィン系樹脂、及び後述の熱可塑性エラストマー以外の他の熱可塑性樹脂を添加することができる。ここでいう「他の熱可塑性樹脂」とは、ハロゲンを含まない樹脂として、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリテートといった芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ビニル重合性モノマー及び含窒素ビニルモノマーを有する共重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂は、一種類でも良く、複数種含まれていても良い。所望の物性に合わせて種類、量は選択することができる。
【0022】
本発明の発泡シートには、必要に応じて気泡を微細化するための気泡核剤を添加してもよい。気泡核剤としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機微粒子、加熱分解型の有機系気泡核剤、熱可塑性エラストマー、溶融型結晶化核剤等を用いることができるが、これらに限られるものではない。
本発明の発泡シートにおいて、気泡核剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましい。
【0023】
本発明の発泡シートには気泡核剤のほかに、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、必要に応じて、発泡剤、結晶化促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤、熱安定剤、加工助剤、衝撃改質剤、充填剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0024】
発泡剤としては、分解してガスを発生する固体化合物、加熱すると気化する液体、加圧下で樹脂に溶解させ得る不活性な気体などに分類されるが、このいずれを用いることができる。このうち固体化合物としては、例えばアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また気化する液体としては、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサンのような飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素、塩化メチル、フロンのようなハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルのようなエーテル化合物などが挙げられる。さらに不活性な気体としては、例えば二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、代替フロンなどが挙げられる。樹脂への溶解性、気泡の微細化のしやすさを考慮すると、二酸化炭素(炭酸ガス)がより好ましい。
【0025】
本発明の発泡シートは繊維状物を含むことが好ましい。当該繊維状物を配合することにより、軽量化と耐寒衝撃性を向上させることができる。しかも当該繊維状物は発泡性に影響しない。
当該繊維状物としては、例えば、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース系半合成繊維、セルロース系再生繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、フッ素繊維、炭素繊維、ポリカーボネート繊維、ガラス繊維、エポキシ繊維、フェノール繊維及びメラミン繊維、等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも高い発泡率と高い剛性を維持するために、ガラス繊維が特に好ましい。更に、より高い発泡率を維持するために、発泡シート中の繊維状物の含有率は15%以下とすることが好ましい。
【0026】
上述のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法は、押出発泡成形法を用いることができる。例えば押出発泡ダイスの先端の中心から水平方向に、上記ポリオレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)以下の温度に調整された一組(2本)の冷却ロールからなる成形用ロールダイを設置し、ポリオレフィン系樹脂の流体を該成形用ロールダイの間を通過させて、ロールダイのリップで圧潰することなく長手方向に連続的に押出発泡成形し、次いで二本の冷却ロールで押出成形品を冷却してポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート前駆体を生成する。このシート前駆体は、圧潰することなく冷却されるので、シート前駆体の一方の面から中央部に向かって連通性気泡の気泡径が大きくなる構造となる。この前駆体を長手方向に沿って所望の長さ及び厚さ、例えば4mm厚さの1000×1000になるように長手方向に沿って、厚さ方向に垂直にスライスすることで、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造することができる。
また、押出成形したシートをあらかじめ作成し、このシートに架橋と発泡を同時に行うことで、シート前駆体を生成してもよい。
上記Tgは、示差走査型熱量分析装置(島津製作所製、DSC−60)を用いて、−50℃〜200℃まで昇温速度5℃/分で測定した値であり、JIS K 7121「プラスチックの転移温度測定方法」の、補外ガラス転移開始温度をTgとした。
【0027】
上記発泡シートの切断方法は、バンドナイフ方式でもカンナ方式でも良く、例えば、バンドナイフ方式とは、ベルト状の刃物を輪にしたバンドナイフを用い、回転させたバンドナイフに発泡シートを送ることでシート表面に対して平行に切断することで、スライスする工程を言う。
【0028】
上述の発泡シートは、軽量かつ吸音性に優れるため、所望の形状に成形して自動車、特に電気自動車の吸音材、例えばダッシュパネルの運転室側面に位置するダッシュインシュレーターに適用して、エンジンルームの騒音が運転室に伝播を抑制することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ製 ノバテックPP FY6H:メルトインデックス1.9)のペレットをホッパーに供給し、幅1360mmのシート用口金を使用し、外径40mmの成形ロールダイをリップの先端と冷却ロールがシートに接触する線との距離を6.0mmに配設して押出発泡成形したところ、厚さ5mm、幅1375mmの発泡シート前駆体を得た。得られた前駆体は発泡倍率が3倍であった。この前駆体の片方の端部から1mmの厚さだけスライスして表皮を除去して、ポリオレフィン系樹脂発泡シート(大きさ1000×1000×厚さ4mm)を製造した。この発泡シートのスライス面に気泡を露出させたものを図1に示す。図1では、図中左側の端部にスキン層があり、図中右側の端部にスライス面がある。白い樹脂で区画された領域が気泡であり、この図の左側で気泡の気泡径が小さく、右側に移動するにつれて気泡径が変化して大きくなる連続気泡構造を有し、全く波状のないフラットなシートであった。これのスライスした面(図1の右側)の垂直入射吸音率を測定したところ、図2に示す吸音率が得られ、特に5〜7kHzを含む高音域で吸音率が0.6を超える特性を示した。また、この発泡シートは、連通率が63%、見かけ密度が300kg/mであった。
【0031】
(実施例2)
実施例1において、ポリプロピレン樹脂に代えて高密ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HY540、日本ポリプロピレン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして発泡シートを得た。得られた発泡シートは、連通率が56%、見かけ密度が320kg/mであった。この発泡シートのスライスした面の垂直入射吸音率を測定したところ、実施例1と同様の結果が得られ、5〜7kHzにおける吸音率は0.6を超えていた。また、耐寒衝撃性試験では、−30℃の試験片に対して、鉛直上方50cmの位置から質量1kgの鉄球を落下させて衝撃を与える試験を実施した。その結果、該衝撃によっても試験片には割れなどの著しい損傷が認められなかった。
【0032】
(実施例3)
実施例1において、ポリプロピレン樹脂に代えて、ポリプロピレン樹脂100質量部に対してガラス繊維(商品名:チョップドストランド DS 2200−13P、3B社製)を1質量部配合したものを用いた以外は実施例1と同様にして発泡シートを得た。得られた発泡シートは、連通率が56%、見かけ密度が300kg/mであった。この発泡シートのスライスした面の垂直入射吸音率を測定したところ、実施例1と同様の結果が得られ、5〜7kHzにおける吸音率は0.6を超えていた。また、耐寒衝撃性試験では、−30℃の試験片に対して、鉛直上方50cmの位置から質量1kgの鉄球を落下させて衝撃を与える試験を実施した。その結果、該衝撃によっても試験片には割れなどの著しい損傷が認められなかった。
【0033】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ製 ノバテックPP FY6H:メルトインデックス1.9)のペレットを実施例1と同じ装置のホッパーに供給し、幅1360mmのシート用口金を使用し、外径300mmの成形ロールダイをリップの先端と冷却ロールがシートに接触する線との距離を100mmに配設して発泡シートを押出発泡成形したところ、厚さ5mm、幅1375mmの発泡シート前駆体を得た。得られた前駆体は発泡倍率が3倍であった。この前駆体を片方の端部から1mmだけスライスして表皮を除去して、ポリオレフィン系樹脂発泡シート(大きさ1000×1000×厚さ4mm)を製造した。この発泡シートのスライス面に気泡を露出させたものを図3に示す。図3では全体にわたって均一な気泡の連続気泡構造を有し、全く波状のないフラットなシートであった。これのスライスした面の垂直入射吸音率を測定したところ、図4に示す吸音率が得られ、吸音性が0.4を超える特性は示さなかった。また、発泡シートは、連通率が25%、見かけ密度が300kg/mであった。
【0034】
なお、以下の測定方法によって、物性を評価した。
(垂直入射法吸音率)
垂直入射法吸音率は、JIS A 1405に基づき、垂直入射吸音率にて測定を行った。吸音性能は、対象とするシート状サンプルをダンベル社製打ち抜き機により直径29mmの円柱状の試料を準備し、小野測器社製のマルチチャンネル分析システムSR−4100(解析はDS−2100)B管を用い、2マイクロフォン法により、各試料について500Hz〜6.4kHzでの吸音率を測定した。
【0035】
(連続気泡率)
連続気泡率(連通率)は、ASTM D−2856−87に記載の方法に準じて空気比較式比重計1000型(東京サイエンス株式会社製)の装置を用いて測定した値で下式により特定した。
連続気泡率(%)=(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積×100
[見掛け体積は発泡シートの外形寸法から算出した。]
【0036】
(耐寒衝撃性試験)
−30℃の試験片に対して、鉛直上方50cmの位置から質量1kgの鉄球を落下させて衝撃を与える試験を実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通性気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
少なくとも一方の面から他方の面に向かって、前記気泡の気泡径が変化する部分を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記発泡シートが単一層からなることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
垂直入射法吸音率が、測定周波数5〜7kHzの吸音率0.6以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートが高密度ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートが繊維状物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂発泡シートの連続気泡率が50%以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの見掛け密度が180kg/m以上600kg/m以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートを用いてなる吸音材。
【請求項9】
請求項8に記載の吸音材を用いてなる自動車部品。
【請求項10】
連通性気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
長手方向に連続的に一方の面から中央部に向かって気泡径が大きくなる発泡シート前駆体を形成し、
該シート前駆体の長手方向に沿って、厚さ方向に対して垂直に切断することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−82915(P2013−82915A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215170(P2012−215170)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】