説明

ポリオレフィン系農業用フィルム

【課題】耐候性が長期間持続し、また、着色や臭気を生じないポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
【解決手段】下記式のピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する層1と、紫外線吸収剤を含有する層2を有するポリオレフィン系農業用フィルム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系農業用フィルムに関するものである。詳細には、酸性雨や農薬による酸性条件下にさらされる場合においても、耐候性が長期間持続するフィルムであり、また、着色や臭気を生じることがないポリオレフィン系農業用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系農業用フィルムは、軽く、展張作業などが容易であることから、広く農業用ハウスに利用されている。
そして、ポリオレフィン系農業用フィルムには、2年以上、耐候性が保持され、散布された農薬などによって性能が低下しないことが求められている。例えば特許文献1には、耐農薬性の改善を目的として、トリアジン骨格及び特定のピペリジン環構造を少なくとも2個以上有するヒンダードアミン化合物と紫外線吸収剤を含有するポリオレフィン系農業用フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−138035
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などに記載されたポリオレフィン系農業用フィルムは、酸性雨や農薬による酸性条件下に長期間さらされる場合において、耐候性が低下したり、フィルムに着色や臭気の問題を生じる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、耐候性が長期間持続し、また、着色や臭気を生じないポリオレフィン系農業用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、ポリオレフィン系樹脂と、下記式(1)または下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物とを含有する層1と、
ポリオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤を含有する層2とを
有するポリオレフィン系農業用フィルムである。




(式中、Rは炭素数60〜1000000のアルキル基を表す。
10およびR11は、互いに独立して、水素原子、OH、OR15、NR1617からなる群から選ばれるものであり、R10とR11は同じであってもよく、異なっていてもよい。
12は、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
13は、−O−、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
14は、1〜500個の炭素原子及び0〜200個のヘテロ原子を有する二価有機基であり、R12、R13及び式(2)のピペリジン環構造においてR12とR13が結合する第4級炭素原子とともに4、5、6または7員環を形成する二価有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子である。
15、R16、R17およびR18は、水素原子、または1〜500個の炭素原子および0〜200個のへテロ原子を有する有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子であり、R15、R16、R17およびR18は同じであってもよく、異なっていてもよい。)
本発明の第二は、ポリオレフィン系樹脂と、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物と、紫外線吸収剤とを含有する層Aを有するポリオレフィン系農業用フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、耐候性が長期間持続し、また、着色や臭気を生じない農業用フィルムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体、または共重合体が挙げられる。
【0010】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
α−オレフィンと共重合するα−オレフィン以外の単量体としては、多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどが挙げられる。多不飽和化合物としては、共役ジエンまたは非共役ジエンなどが挙げられる。
【0011】
α−オレフィンの単独重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
α−オレフィンの共重合体としては、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体などが挙げられる。
【0012】
これらのうち、密度が0.910〜0.935g/cmの低密度ポリエチレンや、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、及び、酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性及び価格の点から農業用フィルムとして好ましい。
【0013】
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体を使用することができる。これは、通常メタロセンポリエチレンといわれているものである。エチレンと共重合する炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。上記のメタロセンポリエチレンは例えば特開昭58−19309号公報や、特開平6−9724号公報等に記載の種々の公知の製法により得られる。
【0014】
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂は、好ましくは、以下の物性を示すものである。
メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示すものである。MFRが10g/10分以下であると、成形時にフィルムが蛇行しにくく安定して成形が可能であるという点で好ましい。MFRが0.01g/10分以上であると、成形時の樹脂圧力が増大せず、成形機に負荷がかからず、生産性がよいという点で好ましい。
【0015】
密度
JIS−K7112により測定された密度が、0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.880〜0.920g/cmの値を示すものである。密度が0.930g/cm以下であると透明性が高いという点で好ましい。密度が0.880g/cm以上であるとフィルム表面がべたつかず、ブロッキングが生じにくいという点で好ましい。
【0016】
分子量分布
ゲルパーミュレーションクロマトグラフ(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示すものである。分子量分布が3.5以下であると機械的強度が高いという点で好ましい。分子量分布が1.5以上であると、成形時にフィルムが蛇行しにくく安定して成形が可能であるという点で好ましい。
【0017】
本発明に係るポリオレフィン系農業用フィルムは、単層フィルム、又は、多層フィルムである。本発明に係るポリオレフィン系農業用フィルムが多層フィルムである場合、3層から5層が各層のバランスをとりやすい。3層フィルムを構成する層比(各層の厚みの比)は、成形性や透明性及び強度の観点から、1/0.5/1〜1/5/1の範囲が好ましく、1/2/1〜1/4/1の範囲がより好ましい。
【0018】
本発明の農業用フィルムの厚みは、フィルム強度の観点から0.01mm以上であることが好ましい。また、フィルムの中継ぎ加工性や、使用時の被覆作業性などの観点から、0.3mm以下が好ましく、0.03mm以上、0.25mm以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明に係る農業用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する層1と、ポリオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤を含有する層2とを有するポリオレフィン系農業用フィルムである。
また、本発明に係る農業用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物と、紫外線吸収剤とを含有する層Aを有するポリオレフィン系農業用フィルムである。
【0020】
上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物としては、市販のものを使用することができる。例えば、Hostavin NOW(クラリアント(株)製)などが挙げられる。また、これらの化合物は、特表2009−530428号公報に記載された方法に準拠して製造することができる。
【0021】
上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物、例えばHostavin NOW(クラリアント(株)製)は、通常の農業用フィルムに一般的に用いられるヒンダードアミン系耐候剤(上記式(1)または上記式(2)におけるR−O−の代わりに、水素原子が結合したタイプの化合物)と同様の添加方法でフィルムに着色させることなく、また臭気をもたせることなく、耐候性の持続期間を長くすることができる。
【0022】
本発明の農業用フィルムに含有される上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物の含有量は、本発明に係る農業用フィルムに含まれるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは10重量部未満、より好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.1〜4重量部である。上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物の含有量が0.01重量部以上であると、耐候性の点で好ましい。5重量部以下であると、ヒンダードアミン化合物のブリードアウトが少ないという点で好ましい。
【0023】
本発明に係るポリオレフィン系農業用フィルムが多層フィルムである場合、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物は、いずれか一層のみに含有されてもよく、複数の層に含有されてもよく、全ての層に含有されてもよい。上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物が複数の層に含有される場合は、例えば、内層、中間層、外層の任意の組み合わせの層に含有され、全ての層に含有されるか、内外層に含有されることが好ましい。
【0024】
上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する層に、その他のヒンダードアミン化合物を含有させることができる。また、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有していない層に対して、その他のヒンダードアミン化合物を用いることもでき、例えば農業用フィルムの中間層に上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有させ、その他の層には上記式(1)または上記式(2)以外のヒンダードアミン化合物を含有させることもできる。
【0025】
上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物以外に用いることができるヒンダードアミン化合物としては、例えば分子中に下記式(9)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有しかつ分子量が500以上のヒンダードアミン化合物がある。下記式(9)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有しかつ分子量が500以上のヒンダードアミン化合物のピペリジン環の数が2個以上であると、耐候性が高く、また、分子量が500以上であると成形時に揮発しにくく、耐候性が長期間持続するという点で好ましい。また、ピペリジン環の数は2〜50個であることが好ましく、また、分子量は750以上であることが好ましい。

【0026】
上記式(9)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有しかつ分子量が500以上のヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N‘−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物などが挙げられる。
【0027】
使用可能な市販のヒンダードアミン系化合物としては、TINUVIN765、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、BASFジャパン(株)製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57(以上、(株)アデカ製)、CYASORB UV−3346、CYASORB UV−3529、CYASORB UV−3581、CYASORB UV−3853などが挙げられる。これらのヒンダードアミン化合物は、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】
本発明に係る農業用フィルムは、紫外線吸収剤を含有することにより、良好な耐候性を得ることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、2−(2‘−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、ベンゾエート類、置換オキザニリド類、シアノアクリレート類、トリアジン類などが挙げられる。
2−ヒドロキシベンゾフェノン類としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5‘−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などが挙げられる。
2−(2‘−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類としては、2−(2’−ヒドロキシ−5‘−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3‘,5’―ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3‘−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−3’,5‘−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ベンゾエート類としては、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5‘−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニルー3‘、5’−ジ第三ブチル−4‘−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
置換オキザニリド類としては、2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4‘−ドデシルオキザニリドなどが挙げられる。
シアノアクリレート類としては、エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
トリアジン類としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール、2−〔4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−5−(オクチロキシ)フェノールなどが挙げられる。
好ましくは、下記式(3)で表されるベンゾフェノンや、下記式(4)で表されるベンゾトリアゾールであり、より好ましくは、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3‘−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。

(式(3)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)

(式(4)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシル基を表す。R、Rは互いに独立して炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシル基を表す。)
これらの紫外線吸収剤は、単独で又は二種以上で用いられる。
【0029】
本発明に係る農業用フィルムに含まれる紫外線吸収剤の含有量は、本発明に係る農業用フィルムに含まれるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し5重量部以下、好ましくは0.001〜3重量部、更に好ましくは0.005〜1重量部である。紫外線吸収剤の5重量部以下であると、紫外線吸収剤がブリードアウトしにくく、農業用フィルムの透明性が低下しないという点で好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.001重量部以上であると、耐候性改良効果が高いという点で好ましい。
【0030】
ポリオレフィン系農業用フィルムが多層フィルムである場合、紫外線吸収剤は、いずれか一層のみに含有されてもよく、複数の層に含有されてもよく、全ての層に含有されてもよい。紫外線吸収剤が複数の層に含有される場合は、例えば、内層、中間層、外層の任意の組み合わせの層に含有され、全ての層に含有されるか、内外層に含有されることが好ましい。
また、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有していない層に紫外線吸収剤を含有してもよいし、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する層に紫外線吸収剤を含有してもよい。本発明では、ポリオレフィン系樹脂と、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物と、紫外線吸収剤とを含有する層を、層Aと称することがある。
【0031】
本発明に係る農業用フィルムは、赤外線吸収剤を含有することにより、良好な保温性を付与することができる。赤外線吸収剤は、保温剤として有効なMg、Al、Si及びLiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類等)を使用できる。また、層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物も使用できる。
【0032】
本発明に用いられる保温材として有効な無機化合物としては、例えばハイドロタルサイト類化合物や、複合水酸化物などが挙げられる。
ハイドロタルサイト類化合物の具体例としては、下記式(5)で表されるハイドロタルサイト類化合物などが挙げられ、天然ハイドロタルサイトや商品名:DHT-4A(協和化学工業製)、マグクリスタ(協和化学工業製)のような合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO (5)
複合水酸化物としては、リチウムアルミニウム複合水酸化物などが挙げられる。
【0033】
また、上記無機化合物は、その表面をステアリン酸のような高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のような高級脂肪金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のような有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0034】
上記無機化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。その平均粒子径は好ましくは、0.05〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。無機化合物の平均粒子径が0.05μm以上であると、ブツ(無機化合物の2次凝集物)が生成しにくく、農業用フィルムの外観がよく、また、ポリオレフィン系樹脂と無機化合物の混練時の粉立ちが少なく、ハンドリング性に優れるという点で好ましい。無機化合物の平均粒子径が15μm以下であると、農業用フィルムの透明性が高く、また、農業用フィルムの成形時に押出機のブレーカースクリーン部で目詰まりが生じにくく、生産性が高いという点で好ましい。
【0035】
本発明に用いられる層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物とは、複合水酸化物層をホスト層とし、多量体酸素酸イオンや各種アニオンおよび水などからなるゲスト層がホスト層と交互に積層する構造を有しているものが挙げられる。例えば、下記式(6)または(7)で表される化合物が挙げられる。

〔{Mgy12+y21−xAl(OH)x+・〔(A')z1・(B)z2・bHO〕x− (6)
(式(6)中、M2+はCa、Ni及びZnからなる群から選ばれる1種以上の2価金属イオンを表す。A'はケイ素系、リン系、ホウ素系多量体酸素酸イオンからなる群から選ばれる1種以上の多量体酸素酸イオンを表す。BはA'以外の1種以上のアニオンを表し、x、y1、y2、z1、z2、bは下記条件を満足する数を表す。
0<x≦0.5、y1+y2=1、y1≦1、y2<1、0<z1、0≦z2、
0≦b<2)

〔{Liy12+y2}Al(OH)x+・〔(A')z1・(B)z2・bHO〕x− (7)
(式(7)中、G2+はMg、Ca、Ni及びZnからなる群から選ばれる1種以上の2価金属イオンを表す。A'はケイ素系、リン系、ホウ素系多量体酸素酸イオンからなる群から選ばれる1種以上であることを表す。BはA'以外の1種以上のアニオンを表し、x、y1、y2、z1、z2、bは下記条件を満足する数を表す。
0<y1≦1、0≦y2≦1、0.5≦(y1+y2)≦1、x=y1+2y2、
0<z1、0≦z2、0≦b<5)

式(6)で表される複合水酸化物としては、例えば、商品名マグクリスタ(協和化学工業社製)等が挙げられる。
また、式(7)で表される複合水酸化物としては、例えば、商品名フジレイン(富士化学工業社製)等が挙げられる。
なお、式(6)、式(7)の複合水酸化物は、WO 00/32515号公報、WO 97/00828号公報に記載の方法により製造することができる。
【0036】
その他使用できる赤外線吸収剤としては、例えば、金属酸化物、水酸化物、炭酸塩類、硫酸塩類、リン酸塩、珪酸塩類、アルミン酸塩類、アルミノ珪酸塩類、粘度鉱物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合炭酸塩化合物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合珪酸塩化合物、複数種アニオンを含有する金属複合水酸化物塩などが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタンなどが挙げられる。
水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
炭酸塩類としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
硫酸塩類としては、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。
リン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム(例えば、特開平8−67774号公報に開示されたH型リン酸ジルコニウム)などが挙げられる。
珪酸塩類としては、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸チタンなどが挙げられる。
アルミン酸塩類としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムなどが挙げられる。
アルミノ珪酸塩類としては、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウムなどが挙げられる。
粘度鉱物としては、カオリン、クレー、タルクなどが挙げられる。
これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
【0037】
ポリオレフィン系農業用フィルムが多層フィルムである場合、赤外線吸収剤は、いずれか一層のみに含有されてもよく、複数の層に含有されてもよい。赤外線吸収剤は、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有していない層に含有されてもよいし、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する層に含有されてもよい。また、赤外線吸収剤は、紫外線吸収剤を含有していない層に含有されてもよいし、紫外線吸収剤を含有する層に含有されてもよい。同一の層に、ポリオレフィン系樹脂と、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物と、紫外線吸収剤と、赤外線吸収剤とを含有してもよい。
【0038】
本発明に係る農業用フィルムは、エチレンに基づく単量体単位と下記式(8)で表される環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位とを有するエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を含有することにより、長期耐候性、耐ブリードアウト性に優れるものとなる。上記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、一般的に農業用フィルムに用いられるヒンダードアミン化合物と比較して、長期耐候性を向上させる耐候剤としての効果を奏するものである。

【0039】
上記式(8)中、R及びRは、互いに独立して水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。好ましくは、R及びRはそれぞれメチル基であり、Rは水素原子である。
【0040】
式(8)で表されるビニル化合物は、例えば特公昭47−8539号、特開昭48−65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
【0041】
上記式(8)で表されるビニル化合物としては、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
【0042】
上記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、当該エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体に含まれるエチレンに基づく単量体単位の含有量と環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位の含有量の和を100モル%とするときに、環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位の含有量が0.0005〜0.85モル%、より好ましくは0.001〜0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物)の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物の濃度は0.0005モル%以上で光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を以下であると安価であり好ましい。
【0043】
また、上記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、該共重合体中に環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位が2個以上連続せず、孤立して存在する割合がの総量に対して83%以上、好ましくは90%以上であるものが好ましい。
【0044】
環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位の存在確認は、特開平4−80215号公報に記載されている通り、次のようにして行われる。13C−NMR(例えば日本電子製JNM−GSX270 Spectrometer)にて、公知の方法(例えば、化学同人発行「機器分析のてびき(1)」53〜56頁(1985)参照)に従い、文献記載のポリアクリル酸エチル(朝倉書店発行「高分子分析ハンドブック」969頁(1985)参照)及びエチレン−アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(Eur.Poly.J.25巻、4号、411〜418頁(1989)参照)の化学シフトを用いて、TMS基準における32.9ppmのピークを孤立した環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位の分岐点からα位にあるメチレン基によるものとし、35.7ppmのピークを連続した二つの環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位の分岐点に挟まれたメチレン基によるものと帰属した。これら二つのシグナルを用いて、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体において環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位が孤立して存在する割合を、下記計算式によって算出することができる。
【0045】
エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体中で環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位が孤立して存在する割合=32.9ppmのピーク面積/(32.9ppmのピーク面積+35.7ppmのピーク面積)
【0046】
上記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFR(JIS−K6760(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)は、0.1〜200g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1〜5g/10分である。エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFRが0.1g/10分以上であると、本発明に係る農業用フィルムにフィッシュアイやブツなどの可視欠点が発生しにくいという点で好ましい。エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFRが200g/10分以下であると、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のブリードが発生しにくく、本発明に係る農業用フィルムの強度が低下しないという点で好ましい。
【0047】
さらに、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、GPCを用い、単分散ポリスチレンにて検量線を作成し決定した、重量平均分子量と数平均分子量との比をもって表示されるMw/Mn(Q値)は3〜120の範囲にあることが好ましく、より好ましい範囲は5〜20である。
【0048】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物中におけるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し2〜10重量部、好ましくは2〜6重量部である。エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量が2重量部以上であると耐候性に優れるという点で好ましい。エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量が10重量部以下であると、安価であるという点で好ましい。
【0049】
本発明に係るポリオレフィン系農業用フィルムが多層フィルムである場合、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、いずれか一層のみに含有されてもよく、複数の層に含有されてもよく、全層に含有されてもよい。エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体が複数の層に含有される場合は、例えば、内層、中間層、外層の任意の組み合わせの層に含有される。
エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有していない層に含有されてもよいし、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する層に含有されてもよい。
エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、紫外線吸収剤を含有していない層に含有されてもよいし、紫外線吸収剤を含有する層に含有されてもよい。
エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、赤外線吸収剤を含有していない層に含有されてもよいし、赤外線吸収剤を含有する層に含有されてもよい。
また、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を、例えば最内層と最外層に含有させ、その他の層には式(1)または式(2)以外のヒンダードアミン化合物を含有させることもできるし、同一の層にエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体と式(1)または式(2)以外のヒンダードアミン化合物を含有させることもできる。
【0050】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムとしては、例えば、上記式(1)または上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物とを含有する層1と、
ポリオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤とを含有する層2と、
ポリオレフィン系樹脂と、エチレンに基づく単量体単位と下記式(8)で表される環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位とを有するエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体とを含有する層3と
を有し、
当該フィルムに含まれるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、紫外線吸収剤を2重量部以下含有するポリオレフィン系農業用フィルムが挙げられる。
【0051】
また、本発明のポリオレフィン系農業用フィルム中には、通常合成樹脂に使用される各種添加剤を併用することができる。それらの添加剤としては、例えば、金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩及び過塩基性有機酸塩、エポキシ化合物、β-ジケトン化合物、多価アルコール、ハロゲン酸素酸塩、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、防霧剤、充填剤などが挙げられる。
【0052】
上記防曇剤については、多価アルコールと高級脂肪酸類とからなる多価アルコール部分エステル系化合物のものが好適である。多価アルコール部分エステル系化合物としては、例えば、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。
このような防曇剤としては、非イオン系界面活性剤、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンとアルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステルなどのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジウム塩などやそれらの異性体を含むものなどが挙げられる。
【0053】
上記防霧剤としては、例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤の具体例としては、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤が挙げられる。上記の各種添加剤は、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどが挙げられる。
【0054】
本発明に係る農業用フィルムに含まれる上記パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.001〜10重量部、更に好ましくは0.01〜5重量部である。含フッ素化合物の含有量が0.001〜10重量部であると、優れた防霧性を発揮するという点で好ましい。
【0055】
また、充填剤としては、フィルムのべたつきを抑制するために、あるいは保温性をさらに高めるために、例えばシリカ、タルク、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、導電性酸化亜鉛、リン酸リチウムなどが用いられる。これらの充填剤は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、およびホスファイト系酸化防止剤などが挙げられる。
【0057】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4‘−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2‘―メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2‘−エチリデンビス(4.6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、n−オクタデシル3−(3‘,5’−ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル〕メタン等が挙げられる。
【0058】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジアルキルチオジプロピオネート類やポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。
ジアルキルチオジプロピオネート類としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリルなどが挙げられる。
ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類としては、ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0059】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4‘−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)(オクチル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4‘―ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、2,2−メチレンビス(4.6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0060】
着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0061】
アンチブロッキング剤としては、珪藻土、合成シリカ、タルク、マイカ、ゼオライト等が挙げられる。これらアンチブロッキング剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、通常0.01〜0.5重量%の範囲が好ましい。
【0062】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、更に下記の成分を、必要に応じて含有させることができる。その他安定剤、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、造核剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、蛍光剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤などを挙げることができる。
【0063】
本発明の農業用フィルムに、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルムに成形するには、例えば、溶融押出成形法(Tダイ法、インフレーション法、ブロー成形法を含む)、カレンダー成形法、ロール成形法、溶融流延成形法、加圧成形法、ペースト成形法、粉体成形法等の方法を好適に使用することができる。
【0064】
本発明の農業用フィルムの好ましい実施形態の例は、その一方の表面を構成する防曇性被膜の層を有するフィルムである。かかる防曇性被膜としては、無機酸化物ゾルのコーティング膜や、無機酸化物と有機化合物からなるコーティング膜が挙げられる。無機酸化物ゾルとしては、例えば、コロイダルシリカやアルミナゾルが挙げられ、有機化合物としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの高分子樹脂バインダーや、界面活性剤が挙げられる。防曇性被膜は、農業用フィルムの片面上に形成されていてもよいし、農業用フィルムの両面のそれぞれの上に形成されていてもよい。また、防曇性被膜は単層膜でも2層以上の多層膜でもよい。農業用フィルム上に防曇性被膜を積層する方法は、塗布による方法でもよいし、予め作製した防曇性被膜を農業用フィルムに積層する方法でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るポリオレフィン系農業用フィルムは、温室の被覆フィルムなどの農業用フィルムとして利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と、下記式(1)または下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物とを含有する層1と、
ポリオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤を含有する層2とを
有するポリオレフィン系農業用フィルム。



(式中、Rは炭素数60〜1000000のアルキル基を表す。
10およびR11は、互いに独立して、水素原子、OH、OR15、NR1617からなる群から選ばれるものであり、R10とR11は同じであってもよく、異なっていてもよい。
12は、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
13は、−O−、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
14は、1〜500個の炭素原子及び0〜200個のヘテロ原子を有する二価有機基であり、R12、R13及び式(2)のピペリジン環構造においてR12とR13が結合する第4級炭素原子とともに4、5、6または7員環を形成する二価有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子である。
15、R16、R17およびR18は、水素原子、または1〜500個の炭素原子および0〜200個のへテロ原子を有する有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子であり、R15、R16、R17およびR18は同じであってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂と、下記式(1)または下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物と、紫外線吸収剤とを含有する層Aを有するポリオレフィン系農業用フィルム。



(式中、Rは炭素数60〜1000000のアルキル基を表す。
10およびR11は、互いに独立して、水素原子、OH、OR15、NR1617からなる群から選ばれるものであり、R10とR11は同じであってもよく、異なっていてもよい。
12は、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
13は、−O−、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
14は、1〜500個の炭素原子及び0〜200個のヘテロ原子を有する二価有機基であり、R12、R13及び式(2)のピペリジン環構造においてR12とR13が結合する第4級炭素原子とともに4、5、6または7員環を形成する二価有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子である。
15、R16、R17およびR18は、水素原子、または1〜500個の炭素原子および0〜200個のへテロ原子を有する有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子であり、R15、R16、R17およびR18は同じであってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記紫外線吸収剤が下記式(3)で表されるベンゾフェノン型紫外線吸収剤である請求項1または請求項2に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。


(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記紫外線吸収剤が下記式(4)で表されるベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤である請求項1または請求項2に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。


(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシル基を表す。R、Rは互いに独立して炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシル基を表す。)
【請求項5】
前記ポリオレフィン系農業用フィルムの少なくとも一層に、下記式(5)で表されるハイドロタルサイト類化合物、もしくは下記式(6)または下記式(7)で表される多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物である赤外線吸収剤を含有する請求項1乃至4のいずれかの項に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O (5)
〔{Mgy12+y21−xAl(OH)x+・〔(A')z1・(B)z2・bHO〕x− (6)
(式中、M2+はCa、Ni及びZnからなる群から選ばれる1種以上の2価金属イオンを表す。A'はケイ素系、リン系、ホウ素系多量体酸素酸イオンからなる群から選ばれる1種以上の多量体酸素酸イオンを表す。BはA'以外の1種以上のアニオンを表し、x、y1、y2、z1、z2、bは下記条件を満足する数を表す。
0<x≦0.5、y1+y2=1、y1≦1、y2<1、0<z1、0≦z2、
0≦b<2)
〔{Liy12+y2}Al(OH)x+・〔(A')z1・(B)z2・bHO〕x− (7)
(式中、G2+はMg、Ca、Ni及びZnからなる群から選ばれる1種以上の2価金属イオンを表す。A'はケイ素系、リン系、ホウ素系多量体酸素酸イオンからなる群から選ばれる1種以上であることを表す。BはA'以外の1種以上のアニオンを表し、x、y1、y2、z1、z2、bは下記条件を満足する数を表す。
0<y1≦1、0≦y2≦1、0.5≦(y1+y2)≦1、x=y1+2y2、
0<z1、0≦z2、0≦b<5)
【請求項6】
前記ポリオレフィン系農業用フィルムの少なくとも一層に、エチレンに基づく単量体単位と下記式(8)で表される環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位とを有するエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を含有する請求項1乃至5のいずれかの項に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。

(式中、R及びRは、互いに独立して水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項7】
前記ポリオレフィン系農業用フィルムが、下記式(1)または下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物とを含有する層1と、
ポリオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤とを含有する層2と、
ポリオレフィン系樹脂と、エチレンに基づく単量体単位と下記式(8)で表される環状アミノビニル化合物に基づく単量体単位とを有するエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体とを含有する層3と
を有し、
当該フィルムに含まれるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、紫外線吸収剤を2重量部以下含有するポリオレフィン系農業用フィルム。




(式中、Rは炭素数60〜1000000のアルキル基を表す。
10およびR11は、互いに独立して、水素原子、OH、OR15、NR1617からなる群から選ばれるものであり、R10とR11は同じであってもよく、異なっていてもよい。
12は、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
13は、−O−、−CH−、−CO−、−NR18−からなる群から選ばれるものである。
14は、1〜500個の炭素原子及び0〜200個のヘテロ原子を有する二価有機基であり、R12、R13及び式(2)のピペリジン環構造においてR12とR13が結合する第4級炭素原子とともに4、5、6または7員環を形成する二価有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子である。
15、R16、R17およびR18は、水素原子、または1〜500個の炭素原子および0〜200個のへテロ原子を有する有機基であり、上記へテロ原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンからなる群から選ばれる原子であり、R15、R16、R17およびR18は同じであってもよく、異なっていてもよい。)


(式中、R及びRは、互いに独立して水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)

【公開番号】特開2012−44988(P2012−44988A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166770(P2011−166770)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】