説明

ポリオレフィン組成物、その成形物、その製造方法、およびその製造方法に用いられるマスターバッチ

【課題】本発明の目的は、ダイ汚れの発生を可能な限り低減したポリオレフィン組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン100質量部に対して10質量部以上400質量部以下の無機フィラーを含むものであって、該無機フィラーに対して、0.5質量%以上10質量%以下の酸化カルシウムと、0.2質量%以上7質量%以下の金属石鹸とを含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンと無機フィラーとを少なくとも含むポリオレフィン組成物、その成形物、その製造方法、およびその製造方法に用いられるマスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の成形物等を製造するのに用いられるポリオレフィンと無機フィラーとを少なくとも含むポリオレフィン組成物が知られている。このような組成物においては、成形物を成形する工程においてその組成物の流動性等を改良することを目的として金属石鹸等を添加することが行なわれてきた(たとえば特許文献1)。
【0003】
近年、上記のようにして製造される成形物の用途は各種のものに及び、そのポリオレフィン組成物における無機フィラーの添加量も高低様々な範囲で選択されている。このため、従来においては認識されていなかったような様々な問題が発生している。そのような問題のひとつとして、無機フィラーの添加量が比較的高いときに発生する「ダイ汚れ」と呼ばれる問題がある。
【0004】
このダイ汚れは、上記組成物を押出成形して成形物を製造する際に発生する問題であり、押出成形機のダイ部分に塊状物(これをダイ汚れと呼ぶ)が付着することにより、製造される成形物の表面平滑性が害されるとともに、該成形物がシート状物である場合においてその2次加工時にピンホール等を発生する原因となっていた。
【0005】
このようなダイ汚れは、ポリオレフィン組成物に金属石鹸を添加させその流動性を改良するような従来の試みによっては全く解決することができず、抜本的な解決策の提供が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−178361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであってその目的とするところは、ダイ汚れの発生を可能な限り低減したポリオレフィン組成物、その成形物、その製造方法、およびその製造方法に用いられるマスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者の研究によれば、水分含有量の高い無機フィラーがポリオレフィン組成物中に含まれる場合においてダイ汚れが特に顕著に発生するという傾向が明らかとなった。そこで、本発明者はダイ汚れには水分が影響すると考え、この知見に基づき水分を吸収する吸収剤をポリオレフィン組成物に添加することについて種々研究を重ねたところ、酸化カルシウムを用いた場合に特に優れた効果(すなわちダイ汚れの抑制効果)が発現されるとの知見が得られ、この知見に基づきさらに研究を重ねることによりついに本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン100質量部に対して10質量部以上400質量部以下の無機フィラーを含むものであって、該無機フィラーに対して、0.5質量%以上10質量%以下の酸化カルシウムと、0.2質量%以上7質量%以下の金属石鹸とを含むことを特徴としている。
【0009】
ここで、上記無機フィラーはタルクであることが好ましく、上記金属石鹸は12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩であることが好ましく、上記ポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記のポリオレフィン組成物を押出成形することにより得られる成形物に係る。
【0011】
一方、本発明のポリオレフィン組成物の製造方法は、10質量%以上90質量%以下のポリオレフィンと、10質量%以上90質量%以下の無機フィラーとを含む混合物100質量部に対して、30質量%以上93質量%以下のポリオレフィンと、5質量%以上50質量%以下の酸化カルシウムと、2質量%以上20質量%以下の金属石鹸とを含むマスターバッチを1質量部以上10質量部以下の比率で添加する工程を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明のマスターバッチは、上記のポリオレフィン組成物の製造方法に用いられるものであり、30質量%以上93質量%以下のポリオレフィンと、5質量%以上50質量%以下の酸化カルシウムと、2質量%以上20質量%以下の金属石鹸とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリオレフィン組成物は、上記の構成を有することにより、ダイ汚れの発生を可能な限り低減することに成功したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<ポリオレフィン組成物>
本発明のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン100質量部に対して10質量部以上400質量部以下の無機フィラーを含むものであって、該無機フィラーに対して、0.5質量%以上10質量%以下の酸化カルシウムと、0.2質量%以上7質量%以下の金属石鹸とを含むことを特徴としている。
【0015】
このような本発明のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン、無機フィラー、酸化カルシウム、および金属石鹸を含む限り、本発明の効果を示す範囲内で他の任意の成分を含むことができる。このような他の任意の成分としては、たとえば酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、造核剤、顔料、滑剤、中和剤、アンチブロッキング剤、銅害防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、強化材(ガラス繊維やカーボンファイバー等のような諸物性の向上を目的とする添加剤)、難燃剤等を挙げることができる。
【0016】
このような本発明のポリオレフィン組成物は、押出成形機のダイ汚れを低減させたものであるため、各種の押出成形に好適に用いることができる。
【0017】
<ポリオレフィン>
本発明のポリオレフィン組成物に含まれるポリオレフィンとしては、従来公知のポリオレフィンをいずれも含むことができ、特に限定されない。このようなポリオレフィンとしては、たとえば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン;αオレフィン(ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1など)とエチレンとの共重合体;ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリαオレフィン;αオレフィン(ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなど)とエチレンとの共重合体;エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−ヘキセン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などの2種以上のαオレフィンの共重合体などを含むことができる。本発明のポリオレフィン組成物は、このようなポリオレフィンを1種もしくは2種以上含むことができる。
【0018】
そして、本発明においては、このようなポリオレフィンの中でも特にポリプロピレンを含むことが好ましい。成形性がよく機械的強度に優れるからである。このようなポリプロピレンとしては、メルトフローレートが0.01〜100g/10分、より好ましくは0.1〜50g/10分であり、密度が0.88〜0.96g/cm3であるものが特に好ましい。
【0019】
<無機フィラー>
本発明のポリオレフィン組成物に含まれる無機フィラーは、ポリオレフィン100質量部に対して10質量部以上400質量部以下含まれることが好ましい。より好ましくは、その上限が200質量部、さらに好ましくは100質量部であり、その下限が15質量部、さらに好ましくは20質量部である。無機フィラーの配合量が10質量部未満では無機フィラーの添加による効果が発現されず、400質量部を超えると押出成形等が困難になることがある。
【0020】
このような無機フィラーとしては、従来公知の無機フィラーをいずれも用いることができ、特に限定されない。たとえば、炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、珪石、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、マイカ、アルミナ、硫酸バリウム、チタン、ベントナイト、ドロマイト、バライト、蛍石などをこのような無機フィラーとして例示することができる。本発明のポリオレフィン組成物は、このような無機フィラーを1種もしくは2種以上含むことができる。
【0021】
このような無機フィラーの中でも特にタルクを用いることが好ましい。成形品の外観を損なうことなく剛性の強化を行なうことができるからである。
【0022】
<酸化カルシウム>
本発明のポリオレフィン組成物は、酸化カルシウム(CaO)を含むことを最大の特徴とするものである。前述の通り、本発明者の研究によれば、高い水分含有量の無機フィラーがポリオレフィン組成物中に含まれる場合においてダイ汚れが顕著に発生するという傾向が明らかとなった。そこで、本発明者は、この知見に基づき水分を吸収する吸収剤をポリオレフィン組成物に添加することについて種々研究を重ねたところ、酸化カルシウムを用いた場合に特に優れた効果(すなわちダイ汚れの抑制効果)が発現されるとの知見が得られ、この知見に基づきさらに研究を重ねることによりついに本発明を完成させたものである。すなわち、酸化カルシウムは、ポリオレフィン組成物においてダイ汚れの原因と考えられる水分を効率よく吸収することができるという優れた効果を有しているものと考えられ、このためダイ汚れを抑制することが可能になったものと推測される。
【0023】
このような優れた効果を示す酸化カルシウムは、無機フィラーに対して0.5質量%以上10質量%以下含まれることが必要であり、より好ましくは、その上限が5質量%であり、その下限が0.5質量%である。酸化カルシウムの含有量が無機フィラーに対して0.5質量%未満では、ダイ汚れを十分に低減することができず、10質量%を超えると得られる成形物の表面外観が悪化したり機械的強度が低下する場合がある。
【0024】
<金属石鹸>
本発明のポリオレフィン組成物は、上記の酸化カルシウムとともに金属石鹸を含むことが必要である。このような金属石鹸の作用効果は、未だ十分には解明されていないものの恐らく酸化カルシウムの拡散性を高めることにより酸化カルシウムの添加効果を助長させる働きを有するのではないかと考えられる。
【0025】
このような効果を示す金属石鹸は、無機フィラーに対して0.2質量%以上7質量%以下含まれることが必要であり、より好ましくは、その上限が3質量%であり、その下限が0.3質量%である。金属石鹸の含有量が無機フィラーに対して0.2質量%未満では、上記のような効果を示すことができず、7質量%を超えると金属石鹸が成形物の表面に析出し表面外観を悪化させる場合がある。
【0026】
このような金属石鹸としては、従来公知の金属石鹸をいずれも用いることができる。とりわけ、高級脂肪酸もしくは脂肪族オキシカルボン酸と、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、錫、鉛等の金属との塩(金属塩)等が挙げられる。高級脂肪酸としては、炭素数8〜20の鎖状モノカルボン酸が好ましい。また、脂肪族オキシカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸の側鎖にアルコール性水酸基を有するものが挙げられ、乳酸、クエン酸、ヒドロキシステアリン酸等が好ましい。
【0027】
金属石鹸の好ましい例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリル乳酸カルシウム、ラウリル乳酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等が挙げられる。本発明のポリオレフィン組成物は、このような金属石鹸を1種もしくは2種以上含むことができる。
【0028】
本発明においては、このような金属石鹸の中でも、特に12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩を採用することが好ましい。酸化カルシウムとの相乗効果に優れ、特にダイ汚れを顕著に低減することができるからである。
【0029】
<成形物>
本発明の成形物は、上記で説明したポリオレフィン組成物を押出成形することにより得られるものである。その成形物の形状は、特に限定されるものではないが、たとえばシート、フィルム、ストランド、異形押出成形体等を挙げることができる。また、本発明の成形物は、たとえばコート紙(紙にポリオレフィン組成物を塗布した積層物)等他の素材との複合物であっても良い。
【0030】
<ポリオレフィン組成物の製造方法>
上記のような本発明のポリオレフィン組成物は、たとえば10質量%以上90質量%以下のポリオレフィンと、10質量%以上90質量%以下の無機フィラーとを含む混合物100質量部に対して、30質量%以上93質量%以下のポリオレフィンと、5質量%以上50質量%以下の酸化カルシウムと、2質量%以上20質量%以下の金属石鹸とを含むマスターバッチを1質量部以上10質量部以下の比率で添加する工程を含む製造方法により製造することができる。
【0031】
ここで、ポリオレフィンと無機フィラーとを含む上記の混合物において、ポリオレフィンの含有量は用途に応じて上記の範囲内において任意に選択することができる。なお、このような混合物と上記マスターバッチとの配合比率、および上記マスターバッチの組成の詳細については後述する。
【0032】
このような本発明のポリオレフィン組成物の具体的な製造条件としては、従来公知の条件をいずれも採用することができ特に限定されるものではないが、たとえば二軸押出機を用いて、120〜300℃で混練することにより加熱溶融状態にある上記混合物に対して上記マスターバッチを添加することによりこれらをさらに混練し、その後該押出機から押出すことにより製造することができる。
【0033】
なお、ポリオレフィンと無機フィラーとを含む上記の混合物は、ポリオレフィンと高濃度の無機フィラーとを含む無機フィラー含有マスターバッチを別個独立して準備し、これとポリオレフィンとを溶融混練することにより構成したものであっても差し支えない。なお、無機フィラー含有マスターバッチとポリオレフィンとの溶融混練は、後述の酸化カルシウムと金属石鹸とを含むマスターバッチ(便宜上「酸化カルシウム含有マスターバッチ」と記すこともある)の溶融混練と同時に行なわれるものであってもよいし、無機フィラー含有マスターバッチとポリオレフィンとの溶融混練後にそのような酸化カルシウム含有マスターバッチを溶融混練させるものであってもよい。
【0034】
<酸化カルシウム含有マスターバッチ>
本発明の酸化カルシウム含有マスターバッチは、上記のポリオレフィン組成物の製造方法に用いられるものであり、30質量%以上93質量%以下のポリオレフィンと、5質量%以上50質量%以下の酸化カルシウムと、2質量%以上20質量%以下の金属石鹸とを含むものである。このような酸化カルシウム含有マスターバッチにおいて、より好ましくはポリオレフィンの含有量は70質量%以上80質量%以下であり、酸化カルシウムの含有量はより好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、金属石鹸の含有量はより好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0035】
なお、このような酸化カルシウム含有マスターバッチは、酸化カルシウムと金属石鹸とをポリオレフィンに添加することにより製造されるものであってもよいし、高濃度の酸化カルシウムとポリオレフィンとを含むマスターバッチを予め準備し、このマスターバッチと金属石鹸とをポリオレフィンに添加することにより製造されるものであってもよい。後者の場合、高濃度の酸化カルシウムを含むマスターバッチに含まれるポリオレフィンは、それが添加されるポリオレフィンと同一もしくは同種のポリオレフィンであることが好ましいが、互いに異なるポリオレフィンであっても差し支えない。
【0036】
また、このような酸化カルシウム含有マスターバッチは、ポリオレフィンと無機フィラーとを含む上記の混合物100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下の比率で添加されることが好ましい。酸化カルシウム含有マスターバッチの添加比率が1質量部未満の場合、ダイ汚れの抑制効果が得られないことがあり、10質量部を超えると得られる成形物の表面外観が悪化したり機械的強度が低下することがある。
【0037】
なお、このような酸化カルシウム含有マスターバッチに含まれるポリオレフィンは、ポリオレフィンと無機フィラーとを含む上記の混合物に含まれるポリオレフィンと同一もしくは同種のポリオレフィンであることが好ましいが、互いに異なるポリオレフィンであっても差し支えない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<実施例1〜3および比較例1〜5>
まず、以下の表1に記載した処方の7種のマスターバッチ(MB1〜MB7)を製造した。すなわち、表1に記載の原料を表1に記載の配合量(表1中の原料の欄に記載されている数値は「質量部」を示す)で同方向回転2条2軸押出機(口径:35mm(直径)、L/D(長さ/口径比):32)に充填し、シリンダー温度230℃、吐出量15〜20kg/h、回転数300rpmの条件下で上記7種のマスターバッチを製造した。
【0040】
続いて、このようにして製造されたマスターバッチを用いて以下の表2に記載した処方の8種のポリオレフィン組成物(実施例1〜3および比較例1〜5)を調製するとともに、これらをそれぞれ押出成形することにより成形物であるシートを得た。すなわち、押出成形機としてTダイフィルム加工機(口径:30mm単軸押出機、Tダイ使用:コートハンガー式、リップ幅:200mm、リップ間隙:0.8mm)を用い、シリンダー温度230℃、押出機回転数:50rpm、引取速度:7m/minの条件下でシートを押出成形した。シートの厚みは40〜50μmであった。
【0041】
なお、たとえば表2に記載の実施例1のポリオレフィン組成物は、無機フィラーとしてタルクを高濃度で含む無機フィラー含有マスターバッチ(「タルクMB」)50質量部、ポリオレフィンであるポリプロピレン(「PP1」)50質量部、およびポリオレフィンと酸化カルシウムと金属石鹸とを含むマスターバッチ(表1記載の「MB1」)2質量部からなり(これらが上記のTダイフィルム加工機に充填されることになる)、表1および表3に記載の原料組成から算出するとその組成は、ポリオレフィン100質量部に対して無機フィラーを52.6質量部含み、この無機フィラーに対して酸化カルシウムを0.85質量%含み、金属石鹸を0.51質量%含むものである。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
なお、表3は表1および表2に用いられている記号を説明するものである。
<評価試験>
上記の実施例1〜3および比較例1〜5のそれぞれのポリオレフィン組成物を用いて、ダイ汚れの発生を確認した。具体的には、これら8種のポリオレフィン組成物を一定間隔を空けて順次連続的に上記のTダイフィルム加工機に投入し、上記でシートを作製したのと同じ条件でこのTダイフィルム加工機を運転することにより「ダイ汚れ」を評価した。
【0046】
すなわち、まず上記のTダイフィルム加工機に対して上記表3に記載されている「PP1」を1kg投入し、その後実施例1のポリオレフィン組成物6kgを約1時間かけて投入する。そしてその投入が終了した時点で、ダイリップのダイ汚れを観察するとともにそのダイ汚れを採集して秤量する。
【0047】
続いて、再度「PP1」を1kg投入した後、実施例2のポリオレフィン組成物6kgを約1時間かけて投入する。そしてその投入が終了した時点で、ダイリップのダイ汚れを同様に観察するとともにそのダイ汚れを採集して秤量する。以下この操作を順次繰り返し、比較例5のポリオレフィン組成物まで順番にダイ汚れの観察と秤量とを行なった。その結果を、以下の表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
表4中、「観察」の欄の符号は以下の内容を示し、「秤量」の欄の数値(mg)は発生したダイ汚れを採集しそれを秤量した結果を示す。
A:ダイ汚れがほとんど観察されない。
B:少量のダイ汚れが観察される。
C:ダイ汚れが観察される。
D:顕著なダイ汚れが観察される。
【0050】
表4より明らかなように、本発明の実施例のポリオレフィン組成物は、比較例のポリオレフィン組成物に比し、ダイ汚れが低減されていた。したがって、本発明の構成のポリオレフィン組成物がダイ汚れを低減するという優れた効果を有していることが確認された。
【0051】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0052】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン100質量部に対して10質量部以上400質量部以下の無機フィラーを含むポリオレフィン組成物であって、
前記無機フィラーに対して、0.5質量%以上10質量%以下の酸化カルシウムと、0.2質量%以上7質量%以下の金属石鹸とを含むことを特徴とするポリオレフィン組成物。
【請求項2】
前記無機フィラーは、タルクである請求項1記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記金属石鹸は、12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩である請求項1または2記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン組成物を押出成形することにより得られる成形物。
【請求項6】
10質量%以上90質量%以下のポリオレフィンと、10質量%以上90質量%以下の無機フィラーとを含む混合物100質量部に対して、30質量%以上93質量%以下のポリオレフィンと、5質量%以上50質量%以下の酸化カルシウムと、2質量%以上20質量%以下の金属石鹸とを含むマスターバッチを1質量部以上10質量部以下の比率で添加する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のポリオレフィン組成物の製造方法に用いられる、30質量%以上93質量%以下のポリオレフィンと、5質量%以上50質量%以下の酸化カルシウムと、2質量%以上20質量%以下の金属石鹸とを含むマスターバッチ。

【公開番号】特開2009−270017(P2009−270017A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122227(P2008−122227)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591229440)住化カラー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】