説明

ポリオレフィン製微多孔膜

【課題】 従来のポリオレフィン製微多孔膜が有する特性を低下させることなく、変形しにくく、耐破膜性、応力緩和特性に優れたポリオレフィン製微多孔膜の提供。
【解決手段】 粘度平均分子量(Mv)10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とし、気孔率10%以上55%未満、MD及びTDの引張強度が50〜300MPa、MD引張強度とTD引張強度の合計が100〜600MPa、MD及びTDの引張伸度が10〜200%、MD引張伸びとTD引張伸びの合計が20〜250%であることを特徴とする、Mv20万〜100万、分子量分布指標Mw/Mn7〜100のポリオレフィン製微多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の分離、選択透過、及び電池やコンデンサーなど電気化学反応装置の隔離材等として広く使用されているポリオレフィン製微多孔膜に関し、特にリチウムイオン電池用セパレータとして好適に使用される、ポリオレフィン製微多孔膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン製微多孔膜は、種々の物質の分離や選択透過及び隔離材等として広く用いられ、用途例として、精密ろ過膜、コンデンサー用セパレータ、電池用セパレータなど多数挙げられる。これらの用途において、ポリオレフィン製微多孔膜は、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラなどに広く使用されているリチウムイオン電池用のセパレータとして、特に好適に使用されている。その理由として、孔閉塞性及び適度な耐熱性を有していること、イオン透過性に優れること、機械強度に優れることなどが挙げられる。
機械強度は、電池捲回時のテンションに耐えうるためだけでなく、電池内においても、異物や衝撃による破膜防止のため必要とされる。例えば、本出願人は、特許文献1において、低収縮で膜強度を従来より改善したポリオレフィン製微多孔膜を提案した。
【0003】
ポリエチレンやポリプロピレンは結晶性のポリオレフィンであり、延伸により配向させることで、結晶化度を高め、強度を高めることが可能である。しかし、分子の側鎖が無い或いは短いため、絡み合いが少なく、比較的変形しやすい。そのため、ポリオレフィン製微多孔膜では、最大強度の発現に至るまでに多少の変形を伴う。よって、従来のポリオレフィン製微多孔膜では、たとえ膜強度が高く低収縮であっても、それを使用した電池において、落下などの衝撃で膜の変形によりエッジ部分が短絡する可能性が考えられた。
【0004】
また、耐熱性は、電池の異常昇温時に短絡するのを防止するため必要とされるが、ポリエチレンなどのポリオレフィンは、さほど融点が高くないため、種々の改善方法が提案されている。例えば、特許文献2では、超高分子量ポリオレフィンを原料とするフィルムを微多孔化した、100℃近辺の収縮率が低く、高温高強度で、耐破膜性の高い多孔フィルムが提案されている。しかし、融点以上の高温において、高強度である一方、応力が緩和されないため、電池に使用された場合、融点以上の高温環境下では収縮により短絡する恐れが考えられた。
【特許文献1】特開2001-81221号公報
【特許文献2】特開平11-302436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、品位、膜強度、透過性、収縮特性、フューズ特性など、従来のポリオレフィン製微多孔膜が有する特性を低下させることなく、変形しにくく、耐破膜性に優れ、応力緩和特性にも優れたポリオレフィン製微多孔膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決したものである。即ち、本発明は、下記の通りである。
(1)粘度平均分子量(Mv)10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とし、気孔率10%以上55%未満、MD及びTDの引張強度が50〜300MPa、MD引張強度とTD引張強度の合計が100〜600MPa、MD及びTDの引張伸びが10〜200%、MD引張伸びとTD引張伸びの合計が20〜250%であることを特徴とする、Mv20万〜100万、分子量分布指標Mw/Mn7〜100のポリオレフィン製微多孔膜。
(2)140℃/25℃突刺強度比が0.01〜0.25であることを特徴とする(1)に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
(3)100℃のTD収縮率が0〜10%であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
(4)粘度平均分子量(Mv)10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とする、酸化防止剤0.3〜3.0wt%を配合したポリオレフィン組成物と、流動パラフィンとを押出し機にて溶融混練し、シート状に成形し、面倍率20〜100倍で二軸延伸し、流動パラフィンを抽出し、熱固定を行うポリオレフィン製微多孔膜の製造方法において溶融混練を窒素雰囲気下、140℃以上240℃未満の最高温度で、吐出量とスクリュー回転数との比(Q/N)を0.01〜0.05で行うことにより得られる(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエチレン製微多孔膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリオレフィン製微多孔膜は、品位、膜強度、透過性、収縮特性、フューズ特性など、従来のポリオレフィン製微多孔膜が有する特性を低下させることなく、変形しにくく、耐破膜性、応力緩和特性に優れている。変形しにくく且つ高い膜強度を有することで良好な耐衝撃性が発揮でき、低収縮且つ耐破膜性に優れることで良好な耐ショート特性が発揮できる。そのため、本発明の微多孔膜を電池セパレータに使用することにより、電池安全性を改善することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の好ましい形態を中心に詳述する。Mvは、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求めることにより算出される。Mvは、GPC測定より求められる重量平均分子量Mwとほぼ同一の値を示すが、本願では平均分子量の規定としてMvを用いる。
本発明のポリオレフィン製微多孔膜は、Mv10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とする。
PEAのMvは、品位、耐破膜性及び収縮特性の観点より10万以上であり、12万以上が好ましく、15万以上が更に好ましい。また、フューズ特性及び応力緩和特性の観点より、40万未満であり、35万以下が好ましく、30万以下が更に好ましい。
【0009】
PEBのMvは、膜強度及び耐変形性、耐破膜性の観点より40万以上であり、60万以上が好ましく、100万以上がより好ましく、150万以上が更に好ましい。また、品位の観点より1000万以下であり、700万以下が好ましく、500万以下がさらに好ましい。なお、Mv300万以上の場合は、品位の観点より、粒径100μm以下のパウダー品を用いることも可能である。
【0010】
PEA、PEB共に、それぞれ1種類以上を用いることができる。また、いずれのポリエチレンも、ホモポリマー、コポリマーいずれも使用可能であるが、PEBは耐破膜性の観点よりホモポリマーであることが好ましく、PEAはホモポリマー、コポリマーいずれも好ましい。コポリマーのポリエチレンを選択する場合、収縮特性、耐破膜性の観点より、コモノマーの含量は2モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0.6モル%以下であることが更に好ましい。コモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、及び1-エイコセンなどのα―オレフィンコモノマーや、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及び2-メチル-1.4,5.8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィンコモノマーや、一般式CH2=CHR(式中Rは炭素数6〜20のアリール基)で表わされるスチレン、ビニルシクロヘキサン等の化合物や、1,3-ブタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン及びシクロヘキサジエンなど炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンなどが挙げられるが、α―オレフィンコモノマーであることが好ましい。
【0011】
PEA及びPEBの触媒に特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、フィリップス系触媒、メタロセン触媒などが挙げられる。
また、重合形態により単段重合品、二段重合以上の多段重合品に分けられるが、いずれも使用可能である。よって、PEA及びPEBの分子量分布指標Mw/Mnについては特に制限は無い。
全PEAの全膜構成材料に占める割合は、フューズ特性、応力緩和特性、製膜性の観点より、10wt%以上が好ましく、20wt%以上がより好ましく、40wt%以上がさらに好ましく、60wt%以上がもっとも好ましい。また、90wt%以下が好ましく、80wt%以下がさらに好ましい。
【0012】
全PEBの全膜構成材料に占める割合は、膜強度及び耐変形性、耐破膜性の観点より、10wt%以上が好ましく、20wt%以上がより好ましい。また、60wt%以下が好ましく、40wt%以下がさらに好ましい。
PEAとPEB以外のポリオレフィンも併用可能であり、例えば、PEA、PEB以外のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンコポリマー、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体やエチレン・ノルボルネン共重合体などの環状オレフィンコポリマーなどが挙げられる。
【0013】
次に、本発明のポリオレフィン製微多孔膜の特性について説明する。
Mvは、膜強度、耐変形性、収縮特性、及び耐破膜性の観点より20万以上であり、30万以上が好ましく、40万以上がより好ましく、45万以上がさらに好ましい。また、フューズ特性、応力緩和特性、製膜性の観点より100万以下であり、85万以下が好ましく、70万以下がさらに好ましい。
Mw/Mnは、7以上であり、9以上がより好ましい。また、100以下であり、80以下が好ましく、60以下がより好ましく、40以下が更に好ましく、30以下がもっとも好ましい。
厚みは、膜強度及び耐変形性の観点より3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、透過性の観点より100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0014】
気孔率は、透過性の観点から10%以上であり、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上が更に好ましい。また、膜強度、収縮特性の観点から55%未満であり、50%未満が好ましく、45%以下が更に好ましい。
透気度は、1sec以上が好ましく、50sec以上がさらに好ましい。また、透過性の観点から2000sec以下が好ましく、1000sec以下がより好ましく、800sec以下が更に好ましい。
突刺強度は、2.0〜20.0N/20μmが好ましく、3.0〜20.0N/20μmがより好ましく、4.0〜20.0N/20μmが更に好ましく、5.0〜20.0N/20μmがもっとも好ましい。
【0015】
MD(機械方向)の引張強度は、50MPa以上であり、100MPa以上が好ましく、130MPa以上が更に好ましい。また、収縮特性の観点より300MPa以下であり、250MPa以下が好ましく、200MPa以下が更に好ましい。
TD(機械方向に対し垂直方向)の引張強度は、50MPa以上であり、70MPa以上が好ましく、85MPa以上がより好ましく、100MPa以上が更に好ましい。また、収縮特性の観点より300MPa以下であり、250MPa以下が好ましく、200MPa以下がより好ましく、150MPa以下が更に好ましい。
MD引張強度とTD引張強度の合計は、100MPa以上であり、170MPa以上が好ましく、230MPa以上がより好ましく、250MPa以上が更に好ましい。また、収縮特性の観点より600MPa以下であり、500MPa以下が好ましく、400MPa以下がより好ましく、350MPa以下が更に好ましい。
【0016】
電池捲回時のテンションに耐えうるため、また、電池内において異物や衝撃による破膜防止のため、突刺強度や引張強度は、収縮特性の許す限り、高いことが好ましい。
MD引張伸びは、10〜200%であり、10〜150%が好ましく、10〜120%がより好ましく、10〜90%が更に好ましい。
TD引張伸びは、10〜200%であり、10〜180%が好ましく、10〜160%がより好ましく、10〜140%が更に好ましい。
MD引張伸びとTD引張伸びの合計は、20〜250%であり、20〜230%が好ましく、20〜210%が更に好ましい。
【0017】
本発明のポリオレフィン製微多孔膜はMD引張伸びとTD引張伸びの合計が小さく、変形しにくいことを特徴とする。
140℃/25℃突刺強度比(140℃突刺強度と25℃突刺強度との比)は、室温での高強度と溶融時の応力緩和特性の観点より、0.01〜0.25であることが好ましく、0.01〜0.22であることがより好ましく、0.01〜0.20であることが更に好ましい。
MD及びTDの収縮率(100℃)は、耐熱性の観点より、0〜10%であることが好ましく、0〜8%であることが更に好ましい。
【0018】
フューズ温度は、電池昇温時の安全性の観点から、20℃/minの高速昇温条件下において、152℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、148℃以下が更に好ましい。また、電池の使用環境を想定して、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上が更に好ましい。ショート温度は、電池昇温時の安全性及び耐熱性の観点から、20℃/minの高速昇温条件下において、150℃より高いことが好ましく、153℃より高いことがより好ましく、155℃以上が更に好ましい。
TD熱収縮力は、応力緩和特性など耐熱性の観点から、150℃において、破膜することなく、150kPa以下が好ましく、120kPa以下がさらに好ましい。
【0019】
次に、本発明の微多孔膜の製造方法を好ましいを中心に例を説明する。
本発明の微多孔膜は、粘度平均分子量(Mv)10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とするポリオレフィン組成物と酸化防止剤と可塑剤を溶融混練し、シート状に成形し、延伸と可塑剤抽出を実施した後に、熱固定することによって得ることができる。
酸化防止剤の濃度は、溶融混練される全混合物中に占める重量割合として、PEBの劣化を特に防止する観点より、0.3wt%以上が好ましく、0.4wt%以上がより好ましく0.5wt%以上が更に好ましい。また、経済性の観点より、3.0wt%以下が好ましく、2.0wt%以下が更に好ましい。
【0020】
酸化防止剤としては、1次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤が好ましく、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。なお、2次酸化防止剤も併用して使用可能であり、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレン-ジフォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、ジラウリル-チオ-ジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
【0021】
可塑剤は、ポリオレフィン材料と混合した際に、その融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒が好ましく、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート、ジヘプチルフタレートなどが挙げられるが、流動パラフィンがより好ましい。
可塑剤の溶融混練される全混合物中に占める重量割合は、製膜性の観点から20wt%以上が好ましく、25wt%以上が更に好ましい。また、製膜性の観点から80wt%以下が好ましく、70wt%以下が更に好ましい。
ポリオレフィン以外のポリマーやその他の有機材料についても、製膜性を損なうことなく、本発明の効果を損なわない範囲で配合することが可能である。
【0022】
さらに、必要に応じて、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料などの公知の添加剤も、製膜性を損なうことなく、本発明の効果を損なわない範囲で混合して使用することが出来る。
溶融混練の方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、一軸押出し機、二軸押出し機等のスクリュー押出し機、ニーダー、バンバリーミキサー等により溶融混練させる方法が挙げられる。溶融混練する方法としては、連続運転可能であることと本発明の効果発現の観点より、押出し機で行うことが好ましく、二軸押出し機で行うことがより好ましい。可塑剤は、上記ヘンシェルミキサー等で原料ポリマーと混合しても良く、また、溶融混練時に押出し機に直接フィードしても良い。
【0023】
原料ポリマーに酸化防止剤を所定の濃度で混合した後、窒素雰囲気に置換し、窒素雰囲気を維持した状態で溶融混練を行うことが好ましい。溶融混練時に観測される最高温度は、分散性の観点より、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、180℃以上が更に好ましい。また本発明の効果発現の観点より、240℃未満が好ましく、230℃未満がさらに好ましい。溶融混練時の二軸押出し機の吐出量(Q;kg/h)とスクリュー回転数(N;rpm)との比Q/Nは0.01〜0.05であることが好ましい。上記の溶融混練条件で、ポリマーの劣化は防止されつつ、高速回転で溶融混練される。これにより、PEBの持つ超高分子量成分は分子切断されることなく他の分子量成分に均一に分散され、超高分子量成分に絡み合いを持たせることが可能となる。超高分子量成分が絡み合っていることで変形しにくく、また分散された適度な低分子量成分を持つため応力緩和特性及びフューズ特性に優れ、且つ高強度、低熱収縮で耐破膜性に優れた本発明のポリオレフィン製微多孔膜が得られたと考えられる。なお、得られた溶融物は、さらなる膜品位向上のためスクリーンを通過させても良い。
【0024】
次にシート状に成形する方法としては、溶融物を圧縮冷却により固化させる方法が挙げられる。冷却方法として、冷風や冷却水等の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法等が挙げられるが、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法が、厚み制御が優れる点で好ましい。
延伸と可塑剤抽出については、それらの順序及び回数について制限はないが、延伸→可塑剤抽出の序列であることが好ましい。
【0025】
延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンターの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターやインフレーション成形による同時二軸延伸などが挙げられるが、高強度且つ耐変形性の観点より、同時二軸延伸であることが好ましく、同時二軸テンターによる同時二軸延伸が更に好ましい。延伸による面倍率は、高強度且つ耐変形性の観点より、20倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましく、40倍以上が更に好ましい。また、経済性と安定性の観点より100倍以下が好ましい。延伸温度は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、115℃以上が更に好ましい。また135℃以下が好ましく、130℃以下が更に好ましい。
【0026】
可塑剤抽出における、抽出溶媒としては、膜を構成するポリオレフィンに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤に対しては良溶媒であり、沸点が膜を構成するポリオレフィンの融点よりも低いものが望ましい。このような抽出溶媒としては、n-ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等の有機溶媒が考えられる。この中から適宜選択し、単独もしくは混合して用いられることが好ましい。これらの抽出溶媒に膜を浸漬させることにより可塑剤を抽出することができる。その後、充分に乾燥させる。
【0027】
熱固定は、テンターやロール延伸機等にて、所定の温度雰囲気で、所定の緩和操作を行うことで実施される。なお、緩和の前に、気孔率調整等のため低倍率の延伸を行っても良い。その場合の延伸倍率は1.0〜3.0倍が好ましく、1.0〜2.0が更に好ましい。また、延伸時の温度は、100℃以上が好ましく、110℃以上が更に好ましい。また135℃以下が好ましく、130℃以下が更に好ましい。緩和操作とは、膜のMD及び/或いはTDへの縮小操作のことである。緩和前のMD或いはTDの寸法に対して、熱収縮率の観点より、1.0倍以下が好ましく、0.95倍以下がより好ましく、0.9倍以下が更に好ましい。また、しわ発生防止の観点より、0.6倍以上であることが好ましい。緩和時の温度は、熱収縮率の観点より、100℃以上が好ましく、110℃以上が更に好ましい。また、気孔率及び透過性の観点より、140℃以下が好ましく、135℃以下が更に好ましい。
【0028】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤塗布、化学的改質などの表面処理を必要に応じ施すことが出来る。
本発明で用いた各種物性は、以下の試験方法に基づいて測定した。
(1)粘度平均分子量Mv
ASTM-D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求める。ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=6.77×10-4Mv0.67
ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10-4Mv0.80
【0029】
(2)分子量分布指標Mw/Mn
ゲルパ-ミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)の測定より算出した。装置はWaters社製のALC/GPC-150-C-plus型(商標)を用い、東ソー(株)製のGMH6-HT(商標)の30cmのカラム2本とGMH6-HTL(商標)の30cmのカラム2本を直列接続して使用し、オルトジクロロベンゼンを移動相溶媒として、試料濃度0.05wt%で140℃にて測定を行った。なお、標準物質として市販の分子量既知の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成し、求められた各試料のポリスチレン換算の分子量分布データに、0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗じることにより、ポリエチレン換算の分子量分布データを取得した。これより、各試料の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を算出することで、分子量分布指標Mw/Mnを得た。
【0030】
(3)α―オレフィンコモノマー含量(モル%)
13C-NMRスペクトルにおいて、コモノマー単位由来のシグナル強度の積分値のモル換算量(A)を、(A)と主モノマー単位由来のシグナル強度の積分値のモル換算量(B)との和で除して得られた値に100を乗じることにより、求めた。
例えば、コモノマーとしてプロピレンを用いたコポリマーポリエチレンの場合、下記の構造モデル
【0031】
【化1】

【0032】
において、I1、I1’、I2、I3、Iα、Iβ、Iγ、Im、及びIMをそれぞれ対応する炭素に由来する13C-NMRスペクトルのシグナル強度とすると、
コモノマー含量(モル%)=(A)/((A)+(B))×100
ここで、
(A)=(I1’+Im+Iα/2)/3、
(B)=(I1+I2+I3+IM+Iα/2+Iβ+Iγ)/2
となるので、末端の炭素由来のシグナル強度I1、I2、及びI3を無視して上式を整理すると、Im=I1’=Iα/2=Iβ/2=Iγ/2であるので、
コモノマー含量(モル%)=Im/(Im+(IM+5Im)/2)×100
となる。
【0033】
(4)膜厚(μm)
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて室温23℃で測定した。
(5)気孔率(%)
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm3 )と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm3 )より、次式を用いて計算した。
気孔率=(体積-質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度は0.95と一定にして計算した。
(6)透気度(sec)
JIS P-8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計、G-B2(商標)により測定した。
【0034】
(7)引張強度(MPa)及び引張伸び(%)
JIS K7127に準拠し、島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG-A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について測定した。また、サンプルはチャック間距離を50mmとし、サンプルの両端部(各25mm)の片面にセロハンテープ(日東電工包装システム(株)製、商品名:N.29) を貼ったものを用いた。さらに、試験中のサンプル滑りを防止するために、引張試験機のチャック内側に厚み1mmのフッ素ゴムを貼り付けた。
【0035】
引張伸び(%)は、破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(50mm)で除して100を乗じることにより求めた。引張強度(MPa)は、破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除すことで求めた。また、MDとTDの値を合計することにより、MD引張伸びとTD引張伸びの合計(%)及びMD引張強度とTD引張強度の合計(MPa)を求めた。なお、測定は、温度;23±2℃、チャック圧0.30MPa、引張速度;200mm/minで行った。
【0036】
(8)突刺強度(N/20μm)
カトーテック製のハンディー圧縮試験器、KES-G5(商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として生の突刺強度(N)を得た。これに20(μm)/膜厚(μm)を乗じることにより20μm膜厚換算突刺強度(N/20μm)を算出した。
【0037】
(9)突刺強度比
微多孔膜を内径13mm、外径25mmのステンレス製ワッシャー2枚で挟み、固定して、140℃の信越化学工業(株)製シリコンオイル、KF-96-10CS(商標)に60秒間浸漬する。破膜しなかったものについて、カトーテック(株)製ハンディー圧縮試験器、KES-G5(商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として140℃突刺強度(N)を得た。これに20(μm)/元の膜厚(μm)を乗じることにより20μm膜厚換算140℃突刺強度(N/20μm)を算出し、さらに(7)で得られた突刺強度(N/20μm)を除することで突刺強度比を求めた。
【0038】
(10)熱収縮率(%)
12cm×12cm角の試料を微多孔膜から切り取り、MD、TDに10cm間隔で四つ印を付け、紙ではさみ、100℃のオーブン中に60分間静置する。オーブンから取り出し冷却した後、MD、TDの印間の長さ(cm)を測定し、以下の式にてMD及びTDの熱収縮率を算出した。
MD熱収縮率(%)=(10-加熱後のMDの長さ)/10×100
TD熱収縮率(%)=(10-加熱後のTDの長さ)/10×100
【0039】
(11)フューズ温度(℃)及びショート温度(℃)
厚さ10μmのニッケル箔を2枚(A,B)用意し、一方のニッケル箔Aをスライドガラス上に、縦10mm、横10mmの正方形部分を残してテフロン(登録商標)テープでマスキングすると共に固定する。
熱電対を繋いだセラミックスプレート上に、別のニッケル箔Bを載せ、この上に、規定の電解液に3時間浸漬させ充分に電解液を含浸させた測定試料の微多孔膜を置き、その上からニッケル箔Aを貼りつけたスライドガラスを載せ、更にシリコンゴムを載せる。
【0040】
これをホットプレート上にセットし、油圧プレス機にて1.5MPaの圧力をかけた状態で、20℃/minの速度で昇温する。このときのインピーダンス変化をLCRメーターにて交流1V,1kHzの条件下で測定する。この測定において、インピーダンスが1000Ωに達した時点の温度をフューズ温度とし、その後インピーダンスが1000Ωを下回った時点の温度をショート温度とする。
【0041】
なお、規定の電解液の組成比は以下の通りである。
溶媒の組成比(体積比):炭酸プロピレン/炭酸エチレン/δ-ブチルラクトン=1/1/2
溶質の組成比:上記溶媒にてLiBF4を1mol/リットルの濃度になるように溶解させる。
【0042】
(12)衝撃試験
a.正極の作製
LiCoO2を92.2wt%、リン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3wt%、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2wt%をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗付し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。このとき、正極の活物質塗付量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにする。これを幅57mmの帯状に切断した。
【0043】
b.負極の作製
人造グラファイト96.9wt%、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4wt%とスチレン-ブタジエン共重合体ラテックス1.7wt%を精製水中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗付し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。このとき、負極の活物質塗付量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにする。これを幅57mmの帯状に切断した。
【0044】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて調製する。
【0045】
d.電池組立
セパレータとして幅58mmの帯状に切断した微多孔膜を、また上記で得られた帯状正極及び帯状負極を用いて、帯状負極,セパレータ,帯状正極,セパレータの順に重ねて渦巻状に捲回することで円筒型積層体を作製する。この円筒型積層体をステンレス金属製容器に収納し、負極集電体から導出したニッケル製リードを容器底に接続し、正極集電体から導出したアルミニウム製リードを容器蓋端子部に接続する。さらに、この容器内に前記の非水電解液を注入し、封口する。こうして作製されるリチウムイオン電池は、直径18mm,高さ65mmの大きさで、電池容量が1500mAhとなるよう設計されている。
【0046】
e.評価
上記のようにして組み立てた円筒型リチウムイオン電池を1.9mの高さからコンクリート床に繰り返し10回落下させた。その後、電池を解体し、セパレータの状態を観察した。
【0047】
(13)熱収縮力(kPa)
(株)島津製作所製のTMA50(商標)を用いて測定した。TDに幅3mmに切り出したサンプルを、チャック間距離が10mmとなるようにチャックに固定し、専用プローブにセットする。初期荷重を1.0gとし、30℃より10℃/minの速度にてプローブを200℃まで昇温させ、そのとき発生する収縮荷重(g)を測定した。150℃時の荷重(g)から下記式を用いて収縮力を算出した。
熱収縮力(kPa)=(150℃収縮荷重/(3×t))×100×9.807×10
t:サンプル厚み(μm)
【実施例】
【0048】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
Mvが28万のホモポリマーのポリエチレンを70wt%と、Mvが200万のホモポリマーのポリエチレンを30wt%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99wt%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1wt%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0049】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が68wt%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度220℃であり、スクリュー回転数280rpm、吐出量10kg/h、Q/N0.036で行った。この時、熱伝対で測定した実温度の最高値は225℃であった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1440μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.4倍、設定温度122℃である。
【0050】
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、TDテンターに導き、小延伸及び熱固定を行った。延伸部の倍率は、TDテンター導入時の膜幅に対し1.2倍であり、熱固定部条件は、温度は128℃で、倍率はTDテンターによる延伸後の膜幅に対し0.89倍で行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られず、また破膜も生じていなかった。
【0051】
[実施例2]
Mvが20万で、プロピレン含量0.4モル%のコポリマーのポリエチレンを75wt%と、Mvが300万のホモポリマーのポリエチレンを25wt%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99.4wt%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.6wt%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0052】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が65wt%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度220℃であり、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/h、Q/N0.050で行った。この時、熱伝対で測定した実温度の最高値は224℃であった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1900μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、実施例1と同様である。
【0053】
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、TDテンターに導き、小延伸及び熱固定を行った。延伸部の倍率は、TDテンター導入時の膜幅に対し1.6倍であり、熱固定部条件は、温度は120℃で、倍率はTDテンターによる延伸後の膜幅に対し0.75倍で行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られず、また破膜も生じていなかった。
【0054】
[実施例3]
Mvが20万で、1-ブテン含量0.3モル%のコポリマーのポリエチレンを75wt%と、Mvが300万のホモポリマーのポリエチレンを25wt%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99.4wt%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.6wt%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0055】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が65wt%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、実施例1と同様である。この時、熱伝対で測定した実温度の最高値は225℃であった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1210μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、実施例1と同様である。
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、TDテンターに導き、実施例2と同様の条件で小延伸及び熱固定を行った。 得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られず、また破膜も生じていなかった。
【0056】
[実施例4]
Mvが28万のホモポリマーのポリエチレンを50wt%と、Mvが70万のホモポリマーのポリエチレンを50wt%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99wt%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1wt%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0057】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が62wt%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、実施例1と同様である。この時、熱伝対で測定した実温度の最高値は225℃であった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1210μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、実施例1と同様である。
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、TDテンターに導き、実施例1と同様の条件で小延伸及び熱固定を行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られず、また破膜も生じていなかった。
【0058】
[実施例5]
流動パラフィン量比70%、ゲルシートの厚み700μm、同時二軸テンターの設定温度121℃、TDテンターにおける延伸部の倍率を、TDテンター導入時の膜幅に対し1.3倍、熱固定部の倍率を、TDテンター延伸後の膜幅に対し 0.79倍として行った以外は、実施例1と同様に行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られず、また破膜も生じていなかった。
【0059】
[比較例1]
Mvが28万のホモポリマーのポリエチレンを70wt%と、Mvが200万のホモポリマーのポリエチレンを30wt%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99.8wt%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.2wt%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換をすることなく、二軸押出機へフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0060】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が65wt%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃であり、スクリュー回転数100rpm、吐出量10kg/h、Q/N0.100で行った。この時、熱伝対で測定した実温度の最高値は220℃であった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み750μmのゲルシートを得た。
【0061】
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率5.0倍、TD倍率5.0倍、設定温度120℃である。
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、TDテンターに導き、実施例1と同様の条件で小延伸及び熱固定を行った。 得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡を生じていた。破膜は生じていなかった。
【0062】
[比較例2]
Mvが28万のホモポリマーのポリエチレンを30wt%と、Mvが200万のホモポリマーのポリエチレンを70wt%とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99wt%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1wt%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
【0063】
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が71wt%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度240℃であり、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/h、Q/N0.050で行った。この時、熱伝対で測定した実温度の最高値は262℃であった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1400μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.4倍、設定温度127℃である。
【0064】
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、TDテンターに導き、小延伸及び熱固定を行った。延伸部の倍率は、TDテンター導入時の膜幅に対し1.2倍であり、熱固定部条件は、温度は133℃で、倍率はTDテンターによる延伸後の膜幅に対し0.83倍で行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られず、また破膜も生じていなかった。
【0065】
[比較例3]
TDテンターでの小延伸及び熱固定を、延伸部の倍率は、TDテンター導入時の膜幅に対し1.0倍、熱固定部条件は、温度は100℃で、倍率はTDテンターによる延伸後の膜幅に対し1.0倍で行った以外は、実施例1と同様の条件により微多孔膜を得た。
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。なお、衝撃試験では、セパレータの変形によるエッジ短絡は見られなかったが、大きく破膜していた。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、物質の分離や選択透過及び隔離材等に用いられている微多孔膜として、特にリチウムイオン電池などのセパレーターとして好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量(Mv)10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とし、気孔率10%以上55%未満、MD及びTDの引張強度が50〜300MPa、MD引張強度とTD引張強度の合計が100〜600MPa、MD及びTDの引張伸びが10〜200%、MD引張伸びとTD引張伸びの合計が20〜250%であることを特徴とする、Mv20万〜100万、分子量分布指標Mw/Mn7〜100のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項2】
140℃/25℃突刺強度比が0.01〜0.25であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項3】
100℃のTD収縮率が0〜10%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項4】
粘度平均分子量(Mv)10万以上40万未満のポリエチレン(PEA)とMv40万以上1000万以下のポリエチレン(PEB)を必須成分とする、酸化防止剤0.3〜3.0wt%を配合したポリオレフィン組成物と、流動パラフィンとを押出し機にて溶融混練し、シート状に成形し、面倍率20〜100倍で二軸延伸し、流動パラフィンを抽出し、熱固定を行うポリオレフィン製微多孔膜の製造方法において溶融混練を窒素雰囲気下、140℃以上240℃未満の最高温度で、吐出量とスクリュー回転数との比(Q/N)を0.01〜0.05で行うことにより得られる請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン製微多孔膜。

【公開番号】特開2006−124652(P2006−124652A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259070(P2005−259070)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】