説明

ポリオレフィン製微多孔膜

本発明は、膜厚1〜30μm、気孔率30〜60%、透気度50〜250sec/100cc、突刺強度3.5〜20.0N/20μm、バブルポイント法により求めた最大孔径0.08〜0.20μm、最大孔径と平均孔径の比(最大孔径/平均孔径)が1.00〜1.40である、ポリオレフィン製微多孔膜を提供するものである。本発明のポリオレフィン製微多孔膜は、高い透過性能を有しつつも、高い安全性が得られる為、特に、近年の小型高容量型の非水電解液系電池用セパレーターとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過性能に優れ、高強度及び安全性に優れたポリオレフィン製微多孔膜及びその製造方法に関するものである。本発明は、特に電子部品用として、なかでも高容量、長寿命の非水電解液系セパレーターとして有用なポリオレフィン製微多孔膜及び、その製法、並びに非水電解液系電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン製微多孔膜はこれまで、精密ろ過膜や電池用セパレーター、コンデンサー用セパレーター等に使用されている。特に近年では、リチウムイオン二次電池用セパレーターとして非常に多く用いられている。現在、リチウムイオン二次電池は消費電力の上昇に伴い、高容量化、高出力化、長寿命化が求められている。
【0003】
これを受け、リチウムイオン電池用セパレーターに求められる特性は、薄膜化と高透過性能である。電池の高容量化には、電池用セパレーターを薄くし、その分、正負極の活物質を多くすることが有効である。電池の高出力化には、一気にイオンを通過することが求められる。一度に多くのイオンを透過する為には、イオンの通り道となる孔径が大きいことが有効である。
【0004】
電池の高寿命化には、充放電を繰り返した際に発生する不純物で孔詰まりを発生し難くすることが求められる。孔径が大きいセパレーターでは不純物による孔の閉塞が起こりにくく、電池容量の低下が発生し難い。この電池寿命を示す一つの指標としてはサイクル特性が挙げられる。サイクル特性とは、初期容量に対して、充放電を繰り返した際の電池容量保持率を示すものであり、サイクル特性が高ければ長寿命であるといえる。
つまりこれらのことを考えると、高透過性能のセパレーターには膜厚が薄く、且つ孔径の大きな微多孔膜が有用である。
【0005】
電池特性の向上と同時に、薄膜化に伴う安全性の低下を防ぐため、高強度、高安全性もセパレーターに求められている。本発明で言う安全性とは2つの側面がある。1つは、セパレーターのシャットダウン性能である。これは、電池内部が過熱した際にセパレーターが溶融して電極を覆う被膜となり、電流を遮断し、その被膜が安定に存在することにより電池の安全性を確保する性能である。シャットダウンに寄与する因子として、孔径分布が挙げられる。孔径分布が狭いセパレーターは、電池内部がセパレーターの融点に達した際に、孔閉塞が一斉に発生する為、シャットダウン性能に優れる。
【0006】
安全性のもう1つは、セパレーターの耐電圧である。これはセパレーターがどの程度の電圧まで短絡せずに、電極間で絶縁体として存在しうるかという、セパレーターの絶縁性能を示している。セパレーターが薄くなるに従い、電極間距離が短くなるため、セパレーターにはより高い耐電圧が求められる。セパレーターの耐電圧には、孔径が大きく寄与していると考えられる。極度に大きい孔径部分が存在すると、その孔径が原因で低い電圧での短絡が発生しやすくなる。
【0007】
つまり、高容量リチウムイオン二次電池用セパレーターとしては、膜厚に関しては薄膜化、孔径に関して言えば、高い透過性能を得る為に、適度に大きな孔径を持つことが必要である。また、高い耐電圧と、優れたシャットダウン性能を有する為には、孔径分布が狭い微多孔膜が必要である。
【0008】
また、微多孔膜の1つの製造方法として、相分離法が良く知られている。この製法は、樹脂と可塑剤を高温で混合し均一状態にした後、急冷することで樹脂相と可塑剤相で相分離を起こさせる。その後、可塑剤を抽出除去することで、可塑剤部分が連通孔となった微多孔膜を得るという製法である。
【0009】
これまで、相分離法で製造された微多孔膜において、特許文献1に代表されるように、ポリマーと可塑剤を溶融混練しフィルム状に成形した後、ポリマーと可塑剤の混合フィルムを延伸し、その後可塑剤を抽出して微多孔膜を得る技術が開示されている。しかしながら、このようなポリマーと可塑剤のみを用いる製法では強度の高い膜は得られるものの、孔径が小さく、透過性能が低いという問題があった。ポリマーと可塑剤のみを用いる製法においても、特許文献2のように孔径が大きく、孔径分布の狭い微多孔膜の要求が開示されている。しかし、この文献の技術によって製造された微多孔膜の平均貫通孔径、並びに最大孔径は粒子透過を阻止する孔径であり、本発明でいうバブルポイント法(後に詳述)で求める孔径としては小さい孔径である。その為、電池セパレーターとして用いた際、電池出力が低く、電池寿命も短いものしか得られない。
【0010】
一方、孔径が大きく、透過性に優れた微多孔膜を得る技術としては、シリカ微粒子に代表される無機微粉体をポリオレフィン樹脂、可塑剤とともに混練しフィルム状に成形した後、可塑剤、無機微粉体を抽出することで微多孔膜を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3〜6)。これらは、無機微粉体を使用することで、容易に孔径の大きな微多孔膜を得ることが出来るという利点がある。無機微粉体を使用することにより孔径の大きな微多孔膜が出来る理由は以下のように考えられる。混合溶融体中のポリマーと可塑剤が相分離する際、混合溶融体中に分散した無機微粉体を核として可塑剤相が形成される。このため、無機微粉体が存在する混合溶融体は、抽出可能相(可塑剤+無機微粉体相)のサイズを大きくすることが出来、結果的に孔径の大きな微多孔膜を製造することが出来る。
上記のことを鑑みると、高容量リチウムイオン二次電池用セパレーターに有用となる、孔径が適度に大きく、孔径分布が狭い微多孔膜を得る為には、混合溶融体中において適度な粒径で分散し、且つ粒径分布の狭い無機微粉体を用いることが効果的である。
【0011】
特許文献3は無機微粉体を用いて作成した微多孔膜の開示がある。しかし、この微多孔膜は無機微粉体を抽出しない上、延伸を実施していない為、膜厚が厚く、突刺強度が低い微多孔膜しか得られていない。また、特許文献4では、分散性の良好な疎水性シリカを用いて均一な孔径を持つ微多孔膜の製造方法が開示されている。しかし、ここで開示されている微多孔膜はろ過膜を念頭においた技術である。その為、開示された微多孔膜の膜厚は厚く、突刺強度も低いため、本発明で課題としている電子部品用、なかでも高容量の非水電解液系セパレーターに有用な微多孔膜ではない。
【0012】
また、特許文献5では、無機微粉体を抽出後、延伸を行うことにより、大きな孔径をもち、透過性能に優れた微多孔膜の開示がなされている。しかし、ここで開示されている技術では、分散粒径分布の狭い無機微粉体が使用されていない。また、得られた微多孔膜の孔径分布も広いために、耐電圧が低く、突刺強度も弱い為に、薄膜化した際に安全性に劣る。
【0013】
特許文献6では、孔径分布が狭い微多孔膜の開示がなされている。しかし、ここで開示されている技術でも、分散粒径分布の狭い無機微粉体が使用されていない。得られた微多孔膜は、膜厚が厚く、気孔率が高く、突刺強度が弱い微多孔膜である。更に、開示されている微多孔膜の孔径分布は本発明に比べて十分狭いものではない。その為、本発明で課題とする高容量の非水電解液系セパレーターに有用な微多孔膜ではない。
【0014】
以上のように、セパレーターが薄くなった際に、高い透過性能を持ちつつ、高強度、高安全性を備えた電子部品用微多孔膜、及びその微多孔膜を製造する方法、並びにこれらの特徴をもつセパレーターを用いることにより高容量、長寿命、且つ安全性に優れた非水電解液系電池はこれまで得られていない。
【特許文献1】特許3347835号明細書
【特許文献2】特許2657430号明細書
【特許文献3】特公昭58−19689公報
【特許文献4】特許2835365号明細書
【特許文献5】特開2002−88188号公報
【特許文献6】特許3121047号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、透過性能に優れ、強度及び安全性に優れたポリオレフィン製微多孔膜を提供することである。本発明の他の目的は、電子部品用、なかでも高容量、長寿命の非水電解液系電池用セパレーターとして有用なポリオレフィン製微多孔膜とその製造方法を提供することである。本発明の更なる他の目的は、非水電解液系電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意研究した結果、適度な大きさの孔径を持ちつつも、孔径分布が狭く、突刺強度の高いポリオレフィン製微多孔膜が、セパレーターとして高い透過性能を持ち、且つ安全性に優れた微多孔膜であり、特に電子部品用として、なかでも高容量の非水電解液系セパレーターとして有用であることを見出した。また、これらの特徴をもつセパレーターを用いることにより高容量、長寿命、且つ安全性に優れた非水電解液系電池が得られることを見出した。
更に、粒径分布が狭くかつ適当な粒径に分散する無機微粉体を用いることが、高い透過性能と高い強度を保ち、高い安全性を有するポリオレフィン製微多孔膜を製造する方法において不可欠な要素であることを見出し本発明に至った。
【0017】
すなわち本発明の構成は、以下の通りである。
(1) 膜厚1〜30μm、気孔率30〜60%、透気度50〜250sec/100cc、突刺強度3.5〜20.0N/20μm、バブルポイント法により求めた最大孔径0.08〜0.20μm、最大孔径と平均孔径の比(最大孔径/平均孔径)が1.00〜1.40である、ポリオレフィン製微多孔膜。
(2) 電子部品用である上記(1)に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
上記(1)に記載のポリオレフィン製微多孔膜を含むポリオレフィン製非水電解液系電池用セパレーター。
(4) 上記(3)のポリオレフィン製微多孔膜をセパレーターとして用いることを特徴とする非水電解液系電池。
(5) ポリオレフィン樹脂、可塑剤及び無機微粉体を混練・加熱溶融しながらシート状に成型した後、可塑剤、無機微粉体をそれぞれ抽出除去し、少なくとも一軸方向に延伸してポリオレフィン製微多孔膜を製造する方法であって、使用する無機微粉体の分散平均粒径が0.01〜5μmであり、95vol%分散累積粒径と5vol%分散累積粒径の比が1.0〜10.0である、上記方法。
(6) 無機微粉体がシリカ微粉体である上記(5)に記載の方法。
(7) 無機微粉体が乾式法で作成したシリカ微粉体である上記(5)に記載の方法。
(8) ポリオレフィン樹脂、可塑剤及び無機微粉体を混練・加熱溶融しながらシート状に成型した後、可塑剤、無機微粉体をそれぞれ抽出除去し、少なくとも一軸方向に延伸することによってポリオレフィン製微多孔膜を得ることを含む非水電解液系電池用セパレーターを製造する方法であって、該非水電解液系電池用セパレーターは、使用する無機微粉体の分散平均粒径が0.01〜5μmであり、95vol%分散累積粒径と5vol%分散累積粒径の比が1.0〜10.0であるポリオレフィン製微多孔膜を含んでいる、上記方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、透過性能に優れ、強度及び安全性に優れた、微多孔膜を提供することができる。また、特に電子部品用の微多孔膜、なかでも高容量、長寿命の非水電解液系電池用セパレーターとして有用なポリオレフィン製非水電解液系電池用セパレータ-を提供することができる。特に従来のものに比べて薄膜化した場合においても上記効果を発揮することが出来る。更に、この微多孔膜をセパレーターとして用いることにより、高容量、長寿命、且つ安全性に優れた非水電解液系電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、詳細に説明する。
本発明の微多孔膜の膜厚は1〜30μmであり、好ましくは1〜27μm、より好ましくは1〜25μm、更に好ましくは1〜22μm、最も好ましくは1〜20μmである。膜厚が1μmより薄いと機械的強度とシャットダウン時の安全性が劣り、30μmを越えると透過性能が低くなり、高容量電池向けのセパレーターとして劣る。
【0020】
気孔率は30〜60%であり、好ましくは35〜55%である。気孔率が30%より低いと透過性能が劣り、60%を越えると機械的強度とシャットダウン時の安全性が劣る。
透気度は50〜250秒/100ccであり、好ましくは50〜200秒/100ccであり、更に好ましくは50〜150秒/100ccである。透気度が50秒/100ccよりも低いとシャットダウン時の安全性に劣り、250秒/100ccを越えると透過性能が劣る。
突刺強度は20μm換算で3.5〜20.0Nであり、好ましくは4.0〜20.0Nである。20μm換算の突刺強度が3.5Nよりも小さいと、膜強度が低く、膜が破れやすく、安全性が劣る。
【0021】
バブルポイント法により求める最大孔径は0.08〜0.20μmであり、好ましくは0.09〜0.20μmであり、更に好ましくは0.10〜0.20μmであり、最も好ましくは0.10〜0.15μmである。最大孔径が0.08μmよりも小さいと透過性能が劣り、0.20μmよりも大きいとシャットダウン時の安全性と、耐電圧に劣る。
平均孔径と最大孔径の比は1.00〜1.40である。孔径比が1.40よりも大きいと、孔径分布が広く、孔径が不均一であり、シャットダウン時の安全性確保と耐電圧が劣る。
【0022】
更に、本発明の微多孔膜のシャットダウン間温度は7℃以下が好ましく、更に好ましくは5℃以下であり、最も好ましくは4℃以下である。シャットダウン時の安全性確保の観点からシャットダウンが開始してから電流の遮断が完全に行われるまでの温度は5℃以下が好ましい。そして、膜が溶融し始めてからシャットダウンが行われるまでの温度差が少なく、時間が短いほうが安全性に優れる。
【0023】
透過性能を表す指標として、透気度とポリマー率(=100−気孔率)の比(すなわち、透気度/ポリマー率)を用いることが出来る。この数値が低い微多孔膜はポリマーが多く含まれていても高い透過性能を持ち、透過性能と安全性に優れたセパレーターとして有用である。
透気度とポリマー率の比は、透過性能と安全性を考えると、2.5以下が好ましく、更に好ましくは2.3以下であり、最も好ましくは2.0以下である。
耐電圧は高電圧時の短絡の抑制を考えると、20μm換算で0.8KV以上が好ましく、更に好ましくは1.0KV以上であり、最も好ましくは1.2KV以上である。
【0024】
本発明の微多孔膜製造方法の一例を下記の(a)〜(e)に示す。
(a)ポリオレフィン樹脂、可塑剤、無機微粉体及び添加剤をヘンシェルミキサー等で混合造粒する工程;
(b)(a)工程で作成した混合物を、先端にTダイスを装着した押出機中で溶融混練する工程;
(c)(b)工程で得た混練物を、Tダイスから押出し、両側から加熱ロールで圧延後、冷却しシート状に成形する工程;
(d)シート状の成形物から可塑剤と無機微粉体を抽出除去、並びに乾燥する工程;
(e)シート状の成型物を少なくとも一方向に延伸、並びに熱処理をする工程。
【0025】
上記(a)工程において、本発明の製造方法に用いる無機微粉体とは、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンクレー、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、珪藻土類などが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、数種類を混合しても良い。本発明に好ましい無機微粉体はシリカであり、特に好ましくは乾式法にて作成したシリカである。
【0026】
無機微粉体の分散平均粒径は0.01〜5μmであり、好ましくは0.05〜3μmであり、更に好ましくは0.1〜1μmである。シリカに代表される無機微粒子は凝集力が強く、通常凝集体を形成している。その為、一次粒子(凝集体を形成していない微粒子一つの大きさ)の状態では存在しにくい。本発明で言う分散平均粒径は、一次粒径とは異なり、無機微粒子の凝集状態、分散状態を示す。微粒子混合系において重要なのは微粒子の分散状態である。分散平均粒径が0.01μmよりも小さいと、微多孔膜を製造する時に用いた際、細かく分散しすぎる。その結果、得られる微多孔膜の透過性が不十分である。一方、分散平均粒径が5μmよりも大きいと、微多孔膜を製造する時に用いた際、無機微粒子が膜中に大きな状態として存在する。その結果、膜構造が不均一となり、高い強度と高い安全性を持った微多孔膜が得られない。
【0027】
無機微粉体の95vol%分散累積粒径と5vol%分散累積粒径の比(すなわち、前者の数値/後者の数値)は1.0〜10.0であり、好ましくは1.0〜7.0であり、更に好ましくは、1.0〜5.0である。5vol%分散累積粒径とは、使用する無機微粉体全体に占める、小粒径側から積算した体積分率の累計が5%に達する粒子径である。同様に、95vol%分散累積粒径とは、使用する無機微粉体全体に占める小粒径側から積算した体積分率が95%に達する粒子径である。この分散累積粒径比は、分散平均粒径測定時の無機微粒子の分布状態を示す。無機微粉体の分散累積粒径比が10.0を超えると、膜中での無機粒子の分散が不均一な為、膜構造が不均一となり、高い強度と安全性を持った微多孔膜が得られない。
【0028】
無機微粉体の代表例として、以下にシリカ微粉体の製造方法を示す。シリカ微粉体の合成方法としては、一般的にその特徴から製法が大きく3つに分けられる。1000℃以上の高温下で生成させる乾式法;珪酸ソーダと鉱酸および塩類を水溶液中で反応させる湿式法;珪酸ソーダを鉱酸と反応させてシリカゲルを生成させた後、ゲル中の水を有機溶媒で置換して得られたオルガノゲルを加圧加熱処理して作成するエアロゲル法がある。
【0029】
乾式法の中では、気化させた四塩化珪素を空気中で燃焼させて、非常に微細なシリカ粒子を得る燃焼法が多く用いられている。この他にも、珪砂とコークスを加熱して得られるSiO蒸気を空気中で酸化させて燃焼法よりも大きな粒子を得る加熱法がある。
湿式法の中では、珪酸ソーダと鉱酸の反応時にpHをアルカリ性にしてシリカ粒子の成長速度を上げてフロック状に凝集させることで、生成したシリカを沈降させる沈降法と、反応時にpHを酸性にしてシリカ粒子の成長を抑えた状態でシリカを凝集させ、シリカ凝集体と反応液をゲル状にするゲル法がある。
【0030】
本発明では、ここに挙げた製法で作成したシリカを用いることができるが、シリカ微粉体の分散性を考えると乾式法で合成したシリカが好ましい。これは、乾式シリカは湿式シリカに比べて粒子同士の凝集力が弱いことに起因して、(a)のミキシング工程や(b)の押出機による溶融混錬で高い分散性を示す為である。
【0031】
また、乾式シリカに比べて凝集力の強い湿式シリカでも、合成後に粉砕、分級をすることにより、分散平均粒径が小さく、且つ、粒径の均一なものを得ることが出来る。湿式法で作成したシリカにおいても、この粉砕、分級をしたシリカを用いることは好ましい。
更に、合成したシリカの表面に疎水化処理を行った表面疎水性シリカも知られている。しかし、膜中での分散、製造時のハンドリング、シリカの価格を考えると親水性シリカが好ましい。シリカ微粉体の吸油量は、ポリオレフィン樹脂と可塑剤と分散を考えると好ましくは100〜400ml/100gであり、更に好ましくは150〜300ml/100gである。
【0032】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂は、一種のポリオレフィンからなっても、数種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物であってもよい。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらを2種類以上ブレンドして用いても良い。高い透過性を実現する為にはポリエチレンを単独で用いることが好ましい。
【0033】
本発明にて使用されるポリエチレンの種類としては、密度が0.94g/cmを越えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。膜強度を高くするためには、高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンの使用が好ましく、それらを単独で使用しても、或いは混合物として使用してもよい。
【0034】
また、高い強度を実現するためには、極限粘度[η]が5〜20dl/g程度の超高分子量ポリエチレンを5〜90wt%加えることが好ましく、成形性を考えると10〜80wt%加えることが更に好ましい。また、高い透過性能を得るためには、高密度ポリエチレンを10〜95wt%加えることが好ましい。
また、分子量分布に関していえば、メタロセン触媒を用いて作成した分子量分布が狭いポリエチレンや、2段重合により作成した分子量分布の広いポリエチレンを用いることも出来る。
【0035】
本発明で使用されるポリプロピレンの種類としては、プロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマーが挙げられる。使用する全ポリプロピレンにおけるエチレン含量は0〜3モル%とすることが好ましく、全てプロピレンホモポリマーであることが更に好ましい。使用するポリプロピレンの[η]は1〜25dl/gであることが好ましく、2〜7dl/gであることが更に好ましい。
【0036】
本発明に用いられる可塑剤はフタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジブチルのようなフタル酸エステルやアジピン酸エステルやグリセリン酸エステル等の有機酸エステル類;リン酸トリオクチル等のリン酸エステル類;流動パラフィン;固形ワックス;ミネラルオイル等が挙げられる。ポリエチレンとの相溶性を考慮するとフタル酸エステルが好ましい。尚、これらを単独で使用しても或いは混合物として使用してもよい。
【0037】
本発明の製造方法におけるポリオレフィン樹脂、可塑剤、無機微粉体の混合比については、ポリオレフィン樹脂は、微多孔膜の強度を高くする為に、上記三成分の合計重量に対して10〜50wt%が好ましく、20〜40wt%が更に好ましい。可塑剤は、成形性を良くし、微多孔膜の孔径を適正化する為に30〜70wt%か好ましく、40〜60wt%が更に好ましい。無機微粉体は、孔径を適正化し、膜の強度を高くする為に5〜40wt%が好ましく、10〜30wt%が更に好ましい。
【0038】
なお、ポリオレフィン、無機微粉体、可塑剤の他に本発明を大きく阻害しない範囲で必要に応じて酸化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤を添加することができる。
これらポリオレフィン、無機微粉体、可塑剤の三成分の混合には、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、プロシェアミキサー、リボンブレンダー等の配合機を用いた通常の混合法で充分である。
【0039】
(b)工程では、混合物は押出機、ニーダー等の溶融混練装置により混練される。得られる混練物は、Tダイスを用いた溶融成形によりシート状に成形される。この場合、ギアーポンプを介して成形するのが、寸法安定性の面で好ましく、特にギアーポンプ前圧力を一定に制御して成形するのが、寸法安定性の面で好ましい。
【0040】
(c)工程では、冷却方法としては、エアーにて冷却する方法、Tダイス吐出樹脂温度より20〜120℃低く温調したロールにて接触させて冷却する方法、 Tダイス吐出樹脂温度より20〜120℃低いカレンダーロールにて圧延成形してシート状に成形しながら冷却する方法をとることができる。Tダイス吐出樹脂温度より20〜120℃低いカレンダーロールにて圧延成形してシート状に成形しながら冷却する方法をとるのが膜厚み均一性の面で好ましい。この場合において、ロールを使用する際、Tダイスとロールのシートとの接点の距離は5〜500mmの範囲にて成形するのが好ましい。ダイス吐出温度は通常の熱電対温度計にて端子をダイスに触れないようにし、吐出樹脂に接触させることにより測定することができる。
【0041】
(d)工程では、膜中の可塑剤と無機微粉体を溶剤によって抽出を行う。可塑剤の抽出に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等を使用することができる。これらは単独あるいは混合して用いることも出来る。可塑剤抽出の後、無機微粉体抽出を行うが、無機微粉体の抽出に用いられる溶剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ水溶液を使用することができる。
【0042】
(e)工程では、上記の抽出済み膜は少なくとも一軸方向に延伸される。一軸方向に延伸する際は、ロール延伸でも、テンターを用いた延伸でも可能である。延伸倍率は高強度と薄膜化を考えると二軸延伸が好ましい。延伸倍率は高強度と薄膜化を考えると面倍率で6倍以上が好ましく、更に好ましくは8倍以上である。二軸延伸する場合は、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもどちらでも構わない。孔径が大きく、高透過性の微多孔膜を得る為には逐次二軸延伸が好ましい。その際、一枚膜で延伸も出来るし、複数枚重ねて延伸することも出来る。高強度の観点から、二枚以上重ねて延伸することが好ましい。また、さらに、延伸に続いて、または後に、熱固定あるいは熱緩和等の熱処理を行っても良い。
【0043】
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
実施例において示される試験方法は次の通りである。
(1) 無機微粉体分散平均粒径 (μm)
島津製作所(株)製レーザー回折/散乱式粒度分布測定器を用いて下記条件で測定した。測定で求めたメディアン径を平均分散粒径とした。
測定溶媒 : 工業用アルコール
日本アルコール販売(株)製 エキネンF−8
組成 ・・・ エタノール86.4%、メタノール7.3%、水分6.3%
分散条件 : 200rpmで攪拌しながら40Wの超音波を10分の照射後に測定
シリカ屈折率設定値 : 実数部…1.40、虚数部…0
測定温度 : 25℃
【0044】
(2) 分散累積粒径比
(1)の装置で測定した値を用い、下記の式により計算した。
分散累積粒径比 = 95vol%分散累積粒径 / 5vol%分散累積粒径
(3) 吸油量(ml/100g)
JIS K5101−1991に準拠し、DOPを用いて測定した。
(4) 膜厚(μm)
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEACOCK No.25)にて測定した。一つのサンプルにおいて複数点測定し、それらの平均値を膜厚とした。
【0045】
(5) 気孔率(%)
20cm角のサンプルをとり、その体積と質量から次式を用いて計算した。
気孔率(%)=〔{体積(cm)−(質量(g)/ポリエチレンの密度(g/cm))}/体積(cm)〕×100(%)
(6) 透気度(秒/0.1dm
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定した。
(7) 突き刺し強度(N)
カトーテック製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/secの条件で突き刺し試験を行い、最大突き刺し荷重(N)を測定した。測定値に20(μm)/膜厚(μm)を乗じることによって20μm換算突き刺し強度とした。
【0046】
(8) 最大孔径 (バブルポイント法) (μm)
ASTM E−128−61に準拠し、エタノール中でのバブルポイントにより算出した。
(9) 平均孔径(ハーフドライ法) (μm)
ASTM F−316−86に準拠し、エタノールを使用して測定した。
(10) 孔径比
(8)、(9)で測定した最大孔径と平均孔径を用い以下の式で孔径比を測定した。
孔径比 = 最大孔径(μm)/平均孔径(μm)
【0047】
(11) 電気抵抗(Ωcm2
安藤電気製LCRメーターAG−43と図1に示したセルを用いて1kHzの交流にて測定し、次式で算出した。
電気抵抗(Ωcm2)=(膜が存在するときの抵抗値−膜が存在しないときの抵抗値)×0.785
なお、電解液:プロピレンカーボネートとジエトキシエタンの混合溶液(50/50容量%)中に過塩素酸リチウム1mol/リットルを溶解したもの、電極:白金黒電極、極板面積:0.785cm2、極間距離:3mmの条件で測定した。
【0048】
(12) シャットダウン間温度 (℃)
図1に示すように、厚さ10μmのニッケル箔を2枚(A、B)用意し、一方のニッケル箔Aをスライドガラス上に、縦10mm、横10mmの正方形部分を残してテフロンテープでマスキングすると共に固定する。
図2に示すように、熱電対を繋いだセラミックスプレート上に、別のニッケル箔Bを載せ、この上に規定の電解液で3時間浸漬させた測定試料の微多孔膜を置き、その上からニッケル箔を貼りつけたスライドガラスを載せ、更にシリコンゴムを載せる。
これをホットプレート上にセットした後、油圧プレス機にて1.5MPaの圧力をかけた状態で、15℃/minの速度で昇温した。この際のインピーダンス変化を交流1V、1kHzの条件下で測定した。
【0049】
この測定によりシャットダウン速度を以下のように求めた。横軸に温度、縦軸にLog(インピーダンス)のグラフを作成し、インピーダンス100Ωの所で曲線に対して接線を引き、この接線が1Ωと交わる点と1000Ωと交わる点を用いてシャットダウン間温度を求めた。
シャットダウン間温度(℃)=(接線が1000Ωと交わる温度(℃)−接線が1Ωと交わる温度(℃))
なお、規定の電解液の組成比は以下の通りである。
溶媒の組成比(体積比):炭酸プロピレン/炭酸エチレン/δ−ブチルラクトン=1/1/2
電解液の組成比:上記溶媒にてLiBFを1mol/リットルの濃度になるように溶かし、0.5重量%になるようにトリオクチルフォスフェイトを加えた。
【0050】
(13) 極限粘度(dl/g)
原料のポリオレフィン及び膜の極限粘度[η]の測定は、ASTM D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求めることによって得られる。
(14) 微多孔膜耐電圧(KV)
直径4cmのアルミニウム製電極で微多孔膜を挟み15gの荷重をかけ、これを菊水電子工業製の耐電圧測定機(TOS9201)に繋いで測定を実施した。測定条件は、交流電圧(60Hz)を1.0KV/secの速度でかけていき、短絡した電圧値を微多孔膜の耐電圧測定値とする。この測定値に20(μm)/膜厚(μm)を乗じることによって20μm換算耐電圧値とした。
【0051】
(電池評価)
電池評価を実施する為に、電極、電解液を以下に示すように作製した。
正極の作成
正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物LiCoO2を100重量部、導電剤としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.5重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.5重量部をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。この時、正極の活物質塗布量は250g/m、活物質嵩密度は3.00g/cmとなるようにする。これを電池幅に合わせて切断し、帯状にする。
【0052】
負極の作成
負極活物質として、グラファイト化したメソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)90重量部とリン片状グラファイト10重量部、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4重量部とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.8重量部を精製水中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の両面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m、活物質嵩密度は1.35g/cmとなるようにする。これを電池幅に合わせて切断し、帯状にする。
非水電解液の作製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて調製する。
【0053】
(15) 電池耐電圧(KV)
評価する微多孔膜セパレーター、帯状正極、及び帯状負極を帯状負極、セパレーター、帯状正極、セパレーターの順に重ねて渦巻状に複数回捲回することで電極板積層体を作製する。この電極板積層体を平面状にプレス後、アルミニウム製容器に収納し、アルミニウム製リードを正極集電体から導出して電池蓋に、ニッケル製リードを負極集電体から導出して容器底に溶接し、電池捲回体を作製した。
この電池捲回体を(14)と同様の条件で耐電圧を測定し、電池耐電圧とした。
【0054】
(16) サイクル特性
(15)で作製した電池捲回体に、前述した非水電解液を注入し封口し、リチウムイオン電池を作製する。
この電池を温度25℃の条件下で、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行い、充電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行う。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する500サイクル後の容量の割合(容量保持率)をサイクル特性として表した。
【0055】
[実施例1]
乾式法で作成した分散平均粒径0.25μm、95vol%分散累積粒径0.45μm、5vol%分散累積粒径0.15μm、分散累積粒径比3.0、吸油量240ml/100g、1次粒径12nmのシリカ微粉体A(表1参照)を20wt%、[η]7.0dl/gの超高分子量ポリエチレンを19.2wt%、[η]2.8dl/gの高密度ポリエチレンを12.8wt%、フタル酸ジオクチル(DOP)を48wt%混合して造粒した。その後、Tダイスを装着した二軸押出機にて混練・押出し厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物から塩化メチレンにてDOPを、水酸化ナトリウムにて微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。該微多孔膜を2枚重ねて110℃に加熱のもと、縦方向に4.5倍延伸した後、130℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。図3、4に、この膜のシャットダウン間温度を測定したチャートを示す。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0056】
[実施例2]
実施例1と同様に作成した微粉シリカ抽出膜を2枚重ねて115℃に加熱のもと、縦方向に5.0倍延伸した後、133℃に加熱のもと、横方向に2.2倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
[実施例3]
実施例1と同様に作成した微粉シリカ抽出膜を2枚重ねて117℃に加熱のもと、縦方向に6.0倍延伸した後、135℃に加熱のもと、横方向に2.5倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0057】
[実施例4]
実施例1で用いたシリカ微粉体Aを20.6wt%、[η]11.5dl/gの超高分子量ポリエチレン10.2wt%、[η]1.8dl/gの高密度ポリエチレン10.2wt%、[η]が1.8dl/gの直鎖状低密度ポリエチレン13.6wt%、DOP45.4wt%を混合して造粒した。その後、Tダイを装着した二軸押出機にて混練・押出し厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物から塩化メチレンにてDOPを、水酸化ナトリウムにて微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。該微多孔膜を2枚重ねて115℃に加熱のもと、縦方向に4.5倍延伸した後、120℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0058】
[実施例5]
実施例1で用いたシリカ微粉体Aを20.6wt%、[η]11.5dl/gの超高分子量ポリエチレン3.4wt%、[η]7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン6.8wt%、[η]3.8dl/gの低密度ポリエチレン10.2wt%、[η]が1.8dl/gの直鎖状低密度ポリエチレン13.6wt%、DOP45.4wt%を混合して造粒した。その後、Tダイを装着した二軸押出機にて混練・押出し厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物から塩化メチレンにてDOPを、水酸化ナトリウムにて微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。該微多孔膜を2枚重ねて115℃に加熱のもと、縦方向に5.0倍延伸した後、120℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0059】
[実施例6]
実施例5と同様に作成した微粉シリカ抽出膜を2枚重ねて115℃に加熱のもと、縦方向に5.5倍延伸した後、122℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0060】
[実施例7]
実施例1で用いたシリカ微粉体Aを20.6wt%、[η]5.5dl/gの超高分子量ポリエチレン10.2wt%、[η]3.8dl/gの低密度ポリエチレン10.2wt%、[η]が1.8dl/gの直鎖状低密度ポリエチレン13.6wt%、DOP45.4wt%を混合して造粒した。その後、Tダイを装着した二軸押出機にて混練・押出し厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物から塩化メチレンにてDOPを、水酸化ナトリウムにて微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。該微多孔膜を2枚重ねて115℃に加熱のもと、縦方向に5.0倍延伸した後、120℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0061】
[実施例8]
乾式法で作成した分散平均粒径0.30μm、95vol%分散累積粒径0.50μm、5vol%分散累積粒径0.13μm、分散累積粒径比3.8、吸油量220ml/100g、1次粒径20nmのシリカ微粉体B(表1参照)を用いた以外は、実施例5と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0062】
[実施例9]
乾式法で作成し、表面をジメチルシクロロシランで疎水化した疎水性シリカであり、分散平均粒径0・27μm、95vol%分散累積粒径0.55μm、5vol%分散累積粒径0.16μm、分散累積粒径比3.4、吸油量280ml/100g、1次粒径12nmのシリカ微粉体C(表1参照)を20wt%、[η]7.0dl/gの超高分子量ポリエチレンを19.2wt%、[η]2.8dl/gの高密度ポリエチレンを12.8wt%、フタル酸ジオクチル(DOP)を48wt%、ヘンシェルミキサーで混合した。その後、二軸押出機にて混錬・押出した後、冷却を行いペレタイザーにてペレット原料とした。
この原料を実施例1と同様にTダイを装着した二軸押出機にて混練・押出し厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物から塩化メチレンにてDOPを、水酸化ナトリウムにて微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。該微多孔膜を2枚重ねて110℃に加熱のもと、縦方向に4.5倍延伸した後、130℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0063】
[実施例10]
湿式法で作成し、粉砕、分級をかけた分散平均粒径0.60μm、95vol%分散累積粒径0.85μm、5vol%分散累積粒径0.42μm、分散累積粒径比2.0、吸油量200ml/100g、1次粒径15nmのシリカ微粉体D(表1参照)を用いた以外は、実施例1と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0064】
[実施例11]
湿式法で作成し、粉砕、分級をかけた分散平均粒径0.80μm、95vol%分散累積粒径2.38μm、5vol%分散累積粒径0.49μm、分散累積粒径比4.9、吸油量200ml/100g、1次粒径15nmのシリカ微粉体E(表1参照)を用いた以外は、実施例5と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0065】
[実施例12]
実施例11と同様に作成した微粉シリカ抽出膜を2枚重ねて115℃に加熱のもと、縦方向に5.5倍延伸した後、122℃に加熱のもと、横方向に2.0倍延伸した。得られた膜の物性を表2に記載した。
[実施例13]
実施例11で用いたシリカ微粉体Eを用い、実施例7と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0066】
[実施例14]
湿式法で作成し、粉砕、分級をかけた分散平均粒径1.70μm、95vol%分散累積粒径4.32μm、5vol%分散累積粒径0.64μm、分散累積粒径比6.8、吸油量200ml/100g、1次粒径15nmのシリカ微粉体F(表1参照)を用いた以外は、実施例5と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0067】
[比較例1]
湿式法で作成した、分散平均粒径7.10μm、95vol%分散累積粒径10.10μm、5vol%分散累積粒径2.5μm、分散累積粒径比4.0、吸油量190ml/100g、1次粒径20nmのシリカ微粉体G(表1参照)を用いた以外は、実施例1と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。図3、5に、この膜のシャットダウン間温度を測定したチャートを示す。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0068】
[比較例2]
湿式法で作成した、分散平均粒径2.08μm、95vol%分散累積粒径6.40μm、5vol%分散累積粒径0.48μm、分散累積粒径比13.3、吸油量220ml/100g、1次粒径15nmのシリカ微粉体H(東ソー・シリカ製:Nipsil N-41)(表1参照)を用いた以外は、実施例1と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0069】
[比較例3]
湿式法で作成した分散平均粒径0.71μm、95vol%分散累積粒径14.14μm、5vol%分散累積粒径0.49μm、分散累積粒径比28.9、吸油量240ml/100g、1次粒径20nmのシリカ微粉体I(東ソー・シリカ製:Nipsil LP)(表1参照)を用いた以外は、実施例5と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0070】
[比較例4]
湿式法で作成した分散平均粒径5.32μm、95vol%分散累積粒径16.26μm、5vol%分散累積粒径0.49μm、分散累積粒径比33.2、吸油量240ml/100g、1次粒径16nmのシリカ微粉体J(東ソー・シリカ製:Nipsil VN)(表1参照)を用いた以外は、実施例5と同じように微多孔膜を作成した。得られた膜の物性を表2に記載した。
【0071】
[比較例5]
[η]13.1dl/gの超高分子量ポリエチレンを60wt%、[η]2.8dl/gの高密度ポリエチレン40wt%をタンブラーブレンダーでドライブレンドした。得られたポリエチレン混合物45wt%と流動パラフィン55wt%を、Tダイを装着した二軸押出機にて混練・押出し、厚み1850μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、115℃の加熱のもと倍率7×7倍で同時二軸延伸を行った。次に、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し微多孔膜とした。得られた微多孔膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0072】
[比較例6]
[η]7.0dl/gの超高分子量ポリエチレン2wt%、[η]3.6dl/gの高密度ポリエチレン13wt%と流動パラフィン85wt%を混合し、オートクレーブに充填して200℃で90分間攪拌し、ポリマー溶液を得た。これを比較例3と同様に、同時二軸延伸の倍率5×5にし、流動パラフィンを抽出した膜を得た。これを更に、95℃の加熱のもと横方向に倍率1.5倍の延伸を行った。得られた微多孔膜の物性を表2に記載した。また、この膜を用いて電池評価を行った。電池評価の結果も表2に記載した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の薄膜且つ、透過性能に優れ、高強度及び安全性に優れたポリオレフィン製微多孔膜は、電子部品用として、なかでも非水電解液系電池セパレーターとして好ましく用いられる。特に薄膜化が求められる高容量の非水電解液系セパレーターとして好適である。また、この微多孔膜をセパレーターとして用いることにより、高容量、長寿命、且つ安全性に優れた非水電解液系電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ヒューズ温度、ショート温度を測定する際に使用するニッケル箔付きスライドガラスを示す平面図。
【図2】ヒューズ温度、ショート温度測定装置の概略図。
【図3】実施例1及び比較例1のインピーダンスの推移を表すグラフ。
【図4】実施例1のインピーダンス拡大図。
【図5】比較例1のインピーダンス拡大図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚1〜30μm、気孔率30〜60%、透気度50〜250sec/100cc、突刺強度3.5〜20.0N/20μm、バブルポイント法により求めた最大孔径0.08〜0.20μm、最大孔径と平均孔径の比(最大孔径/平均孔径)が1.00〜1.40である、ポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項2】
電子部品用である請求項1記載のポリオレフィン製多孔膜。
【請求項3】
請求項1記載のポリオレフィン製微多孔膜を含むポリオレフィン製非水電解液系電池用セパレーター。
【請求項4】
請求項3記載のポリオレフィン製微多孔膜をセパレーターとして用いることを特徴とする非水電解液系電池。
【請求項5】
ポリオレフィン樹脂、可塑剤及び無機微粉体を混練・加熱溶融しながらシート状に成型した後、可塑剤、無機微粉体をそれぞれ抽出除去し、少なくとも一軸方向に延伸してポリオレフィン製微多孔膜を製造する方法であって、使用する無機微粉体の分散平均粒径が0.01〜5μmであり、95vol%分散累積粒径と5vol%分散累積粒径の比が1.0〜10.0である、上記方法。
【請求項6】
無機微粉体がシリカ微粉体である請求項5記載の方法。
【請求項7】
無機微粉体が乾式法で作成したシリカ微粉体である請求項5記載の方法。
【請求項8】
ポリオレフィン樹脂、可塑剤及び無機微粉体を混練・加熱溶融しながらシート状に成型した後、可塑剤、無機微粉体をそれぞれ抽出除去し、少なくとも一軸方向に延伸することによってポリオレフィン製微多孔膜を得ることを含む非水電解液系電池用セパレーターを製造する方法であって、該非水電解液系電池用セパレーターは、使用する無機微粉体の分散平均粒径が0.01〜5μmであり、95vol%分散累積粒径と5vol%分散累積粒径の比が1.0〜10.0であるポリオレフィン製微多孔膜を含んでいる、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/061599
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516487(P2005−516487)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019039
【国際出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】