説明

ポリオール組成物およびその用途

【課題】相分離が起こりにくく、ポリウレタンフォームの原料として好適に使用可能な、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを含有するポリオール組成物を提供すること。
【解決手段】ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび相溶化剤を含有するポリオール組成物であって、前記相溶化剤の水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、前記相溶化剤のHLB値が、前記ポリエステルポリオールのHLB値と、前記ポリエーテルポリオールのHLB値とのうち、低い方のHLB値よりも0.3以上低く、前記相溶化剤を、組成物100質量%あたり、0.1〜10質量%含有することを特徴とするポリオール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物およびその用途に関する。詳しくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび特定の相溶化剤を含有するポリオール組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを含むポリオール組成物は、ポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂の原料として広く用いられている。
しかしながら、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとは、通常相分離が起こりやすい。そこで、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを含有するポリオール組成物は通常、使用前に攪拌・混合し、強制的に混合された状態で用いられている。しかしながら、攪拌・混合が不充分であると、製品の物性が低下する原因となり、このような攪拌・混合を行うことは、工業的にも煩雑である。
【0003】
そのため、ポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとの相分離が起こりにくい、すなわち貯蔵安定性に優れるポリオール組成物が求められている。
ところで、近年の環境負荷低減の観点から、石油資源から得られた材料の代替として、植物資源から得られる材料が普及しつつある。植物資源は、空気中のCO2を取込みながら光合成により生長する植物から得られた資源であり、使用後の燃焼処理によりCO2が大気中に排出されても結果的に大気中のCO2量は増加しない、いわゆるカーボンニュートラルに対応した資源である。
【0004】
植物資源を用いたウレタン樹脂として、石油系ポリオールの一部を、例えば、ヒマシ油などの植物油に由来する植物油系ポリオールなどに代替した樹脂が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかしながら、一般に植物油系ポリオールと、石油系ポリオールとは相分離が起こりやすい。そのため、これらのポリオールを含むポリオール組成物をウレタン樹脂の原料として用いる場合、使用前に充分に攪拌・混合し、強制的に混合された状態で用いることが必要である。攪拌・混合が充分でない組成物や、攪拌・混合後、速やかに使用されず、相分離が起きた組成物を用いた場合には、ウレタン樹脂の物性をコントロールすることが難しく、例えばポリウレタンフォームにおいては、発泡の度合や硬度、引張強度、伸び、引裂強度などの物性をコントロールすることが難しかった。
【0006】
このような状況のもと、特許文献3には、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの混和に、特定のポリエステル−ポリエーテルブロックポリマーを用いることが開示されている。しかしながら、ポリエステル−ポリエーテルブロックポリマーは相溶性を良くするためには、20%程度添加する必要があり、物性に悪影響を及ぼすことが懸念される。特許文献3はポリエステル−ポリエーテルブロックポリマーを用いて、軟質発泡体を調製することが可能であることが開示しているものの、その物性についてはなんら開示していない。
【0007】
また、特許文献4には、植物油由来ポリオールと石油系ポリオールとの相分離が起こらないポリオール組成物が開示されている。該組成物は、約17を超えるHLB値を有する特定の非イオン性乳化剤が含まれており、該乳化剤により相分離を防止している。
【0008】
前記非イオン性乳化剤は、官能基数が1であるため、該乳化剤を含むポリオール組成物を原料として、ポリウレタンフォームを製造した場合には、発泡が上手くいかず、所望の物性を有するフォームを得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2787601号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/118995号パンフレット
【特許文献3】特表2003−511532号公報
【特許文献4】特開2007−277560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、相分離が起こりにくく、ポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂の原料として好適に使用可能な、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを含有するポリオール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究した。その結果、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールのHLB値に対し、特定のHLB値を有する相溶化剤を用いることによって上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のポリオール組成物は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび相溶化剤を含有するポリオール組成物であって、
前記相溶化剤の水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、
前記相溶化剤のHLB値が、前記ポリエステルポリオールのHLB値と、前記ポリエーテルポリオールのHLB値とのうち、低い方のHLB値よりも0.3以上低く、
前記相溶化剤を、組成物100質量%あたり、0.1〜10質量%含有することを特徴とする。
【0013】
前記相溶化剤の平均官能基数が、2〜4であることが好ましい。
前記相溶化剤の重量平均分子量が、1000〜12000であることが好ましい。
前記相溶化剤が、ブタジエン由来の骨格、イソプレン由来の骨格およびダイマー酸由来の骨格から選択される少なくとも一種の骨格を有する相溶化剤を含むことが好ましい。
【0014】
前記ポリエステルポリオールが、カルボン酸と、多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
前記カルボン酸が、炭素数10〜22のカルボン酸を含むことが好ましい。
【0015】
前記カルボン酸が、ヒドロキシル基含有脂肪酸を含むことが好ましい。
前記ヒドロキシル基含有脂肪酸が、ヒマシ油から得られるヒマシ油脂肪酸を含むことが好ましく、前記ヒドロキシル基含有脂肪酸100モル%中、前記ヒマシ油脂肪酸が50モル%以上であることが特に好ましい。
【0016】
本発明のポリウレタン用組成物は、前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有する。
本発明のポリウレタンフォーム用組成物は、前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有する。
【0017】
本発明のポリウレタンフォームは、前記ポリウレタンフォーム用組成物を反応させてなる。
本発明の軟質ポリウレタンフォーム用組成物は、前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有する。
【0018】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、前記軟質ポリウレタンフォーム用組成物を反応させてなる。
本発明のシートクッションは、前記軟質ポリウレタンフォームからなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリオール組成物は、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの相分離が起こりにくく、貯蔵安定性に優れるため、ポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂の原料として好適に使用可能である。
【0020】
特に、本発明のポリオール組成物は上記2種のポリオールの相溶性が向上しているため、攪拌・混合が不充分であることに起因するポリウレタンフォームの物性の低下が起こりにくい。このため、本発明のポリオール組成物を原料として製造されるポリウレタンフォームは、硬度、伸び率、引張強度および引裂強度といった機械的特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のポリオール組成物およびその用途について、その好適な態様も含めて詳細に説明する。本発明のポリオール組成物は、ポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂の原料として好適に用いられる。
【0022】
〔ポリオール組成物〕
本発明のポリオール組成物は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび特定の相溶化剤(以下、単に「相溶化剤」ともいう。)を特定範囲で含有することを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明のポリオール組成物は、その使用目的(例えば、ポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂の原料)に応じて、上記2種以外の他のポリオール、触媒、架橋剤、発泡剤、整泡剤、添加剤などを含有してもよい。なお、本発明において「ポリオール」とは、上記ポリエステルポリール、ポリエーテルポリオールおよび他のポリオールを包含する概念である。
【0024】
《相溶化剤》
相溶化剤の水酸基価は、20〜120mgKOH/g、好ましくは25〜110mgKOH/g、特に好ましくは30〜100mgKOH/gである。また、相溶化剤の平均官能基数は、2〜4であることが好ましい。
【0025】
相溶化剤のHLB値は、後述するポリエステルポリオールのHLB値と、後述するポリエーテルポリオールのHLB値とのうち、低い方のHLB値よりも好ましくは0.3以上低く、より好ましくは0.5以上低い。ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのHLB値に対して、上記関係のHLB値を有する相溶化剤を用いることによって、これら2種のポリオールの相溶性が向上するため好ましい。
【0026】
また、相溶化剤のHLB値は、通常は0〜3、好ましくは0.3〜2.5、特に好ましくは0.5〜2.2である。このようなHLB値を有する相溶化剤を用いることによって、ポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとの相溶性が向上する。
【0027】
なお、HLB値とは、物質の親水性、疎水性の程度を表すものであり、数値が低いほど疎水性であることを表し、数値が高いほど親水性が高いことを表す指標である。本発明におけるHLB値は、甲田善生、外2名著、「有機概念図‐基礎と応用‐」、初版、三共出版、(昭和59年5月10日)、p.11〜17、88〜91に記載された方法により求められる値である。すなわち該刊行物に記載の方法により求められる無機性と有機性との比(I/O)を10倍したものを、本発明におけるHLB値とする。
【0028】
相溶化剤の数平均分子量(Mn)は、1000〜12000であることが好ましく、1000〜6000であることが好ましい。なお、相溶化剤のMnは後述する実施例に記載の条件下で測定される。
【0029】
本発明において、相溶化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリオール組成物は、該組成物100質量%あたり、相溶化剤を0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは1〜3質量%含有する。相溶化剤の含有量が前記範囲にあると、相溶性が良い状態を維持しつつ、ポリウレタン樹脂の物性を保持することができるため好ましい。
【0030】
相溶化剤としては、共役ジエン由来の骨格およびダイマー酸由来の骨格から選択される少なくとも一種の骨格を有する相溶化剤が好ましい。共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、ダイマー酸は、オレイン酸やリシノレイン酸などの高級不飽和脂肪酸の二量化反応によって得られ、通常は不飽和結合を分子中に有するが、水素添加をして不飽和度を下げたものも使用できる。ダイマー酸は、二量化反応の過程で生成される直鎖分岐状構造、脂環構造、芳香環構造等を有するが、これらの構造は特に限定されない。
【0031】
これらの相溶化剤の中では、ブタジエン由来の骨格、イソプレン由来の骨格およびダイマー酸由来の骨格から選択される少なくとも一種の骨格を有する相溶化剤が特に好ましい。ブタジエン由来の骨格やイソプレン由来の骨格を有する相溶化剤としては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールおよびこれらの水添ポリオールなどが挙げられる。ダイマー酸由来の骨格を有する相溶化剤としては、ダイマー酸と多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
また、ダイマー酸と縮合される多価アルコールとしては特に限定されず、例えば下記《ポリエステルポリオール》の欄に例示した多価アルコールを用いることができる。
【0032】
《ポリエステルポリオール》
ポリエステルポリオールとしては、ウレタン樹脂の製造に用いられる従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボン酸と多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオール、カルボン酸エステルと多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオール、カルボン酸とカルボン酸エステルとの混合物と多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンジオール、多価アルコールにヒドロキシカルボン酸を縮合して得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0033】
<カルボン酸>
カルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ヘンイコサン二酸などの低分子量ジカルボン酸;ヒドロキシル基含有脂肪酸などが挙げられる。これらのカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記カルボン酸の中でも、炭素数6〜22のカルボン酸が好ましく、10〜20のカルボン酸がより好ましい。炭素数が前記範囲内のカルボン酸を用いるとポリウレタン樹脂を調製するためのポリエステルポリオールとして好ましい物性を発現するため好ましい。
【0035】
上記カルボン酸の中では、ヒドロキシル基含有脂肪酸が好ましい。カルボン酸としてヒドロキシル基含有脂肪酸を用いる場合には、該脂肪酸の縮合により得られた縮合物と多価アルコールとを縮合させてもよいし、該脂肪酸と多価アルコールとを縮合させた後、さらにヒドロキシル基含有脂肪酸を縮合させてもよい。
【0036】
ヒドロキシル基含有脂肪酸としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシウンデカン酸、セレブロン酸などが挙げられる。
【0037】
ヒドロキシル基含有脂肪酸は、カルボン酸100モル%に対して、好ましくは85〜100モル%以上、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%の範囲で用いられる。ヒドロキシル基含有脂肪酸の使用量が前記範囲にあると、カルボン酸と多価アルコールとを縮合させてポリエステルポリオールを得る際、水酸基を含まないカルボン酸により、分子鎖末端の水酸基がキャップされる割合が低いため、反発弾性に優れたポリウレタンフォームを製造することができる。
【0038】
ヒドロキシル基含有脂肪酸の中では、環境負荷低減に寄与できることから、植物油もしくは動物油由来のヒドロキシ基含有脂肪酸が好ましい。植物油としては、ヒマシ油、大豆油、パーム油、ごま油、菜種油、ヤシ油などが挙げられ、動物油としては、牛脂、豚脂などが挙げられる。これらの油の中で、大豆油、パーム油、ごま油、菜種油、ヤシ油等の植物油および牛脂、豚脂等の動物油から、ヒドロキシル基含有脂肪酸を得るためには、前記油を加水分解して得られる不飽和脂肪酸に、空気酸化、エポキシ化、ヒドロホルミル化などの方法により水酸基を付加する必要がある。一方、ヒマシ油から、ヒドロキシル基含有脂肪酸を得る際は、ヒマシ油を加水分解することにより得られる。ヒドロキシル基含有脂肪酸としては、簡便な工程で得られるヒマシ油由来のヒドロキシル基含有脂肪酸が好ましい。
【0039】
ヒマシ油由来のヒドロキシル基含有脂肪酸としては、ヒマシ油由来のリシノレイン酸および12−ヒドロキシステアリン酸がより好ましく;ポリエステルポリオールの製造時にその粘度が低くなる点で、ヒマシ油由来のリシノレイン酸が特に好ましい。なお、ヒマシ油から得られる、ヒマシ油由来のヒドロキシル基含有脂肪酸を「ヒマシ油脂肪酸」ともいう。
【0040】
ヒマシ油脂肪酸は、ヒドロキシル基含有脂肪酸100モル%に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%の範囲で用いられる。ヒマシ油脂肪酸の使用量が前記範囲にあると、より環境負荷低減に寄与できる。
【0041】
なお、ヒマシ油脂肪酸を精製するにあたっては、蒸留、抽出および晶析などの公知の方法を用いることができる。ヒマシ油脂肪酸の蒸留にあたっては、ヒマシ油脂肪酸が200℃程度で熱分解すること、あるいは分子内脱水する副反応が起こることから、薄膜蒸発器を用いて180℃以下の温度で蒸留を行うことが好ましい。薄膜蒸留装置としては特に限定されないが、回転薄膜式蒸留装置・流下薄膜式蒸留装置などが用いられ、特に分子蒸留と呼ばれる高真空下での回転薄膜式蒸留装置が蒸発効率の観点から好ましい。
【0042】
ヒマシ油脂肪酸の抽出については、一般的な溶媒による抽出法が用いられる。使用する溶媒については特に制限はないが、ヒマシ油脂肪酸の溶解度・抽出後の溶媒除去のし易さなどの観点から、ヘキサンなどが用いられる。ヒマシ油脂肪酸とヘキサンとを任意の割合で混合して任意の温度下で静置分液し、ヘキサン相とヒマシ油脂肪酸相とを分離し、ヒマシ油脂肪酸に一部溶解するヘキサンを除去することにより高純度のヒマシ油脂肪酸を得ることができる。
【0043】
このように、ヒマシ油脂肪酸を用いてポリエステルポリオールを製造することで、より環境負荷低減に寄与できる。また、前記ポリエステルポリオールを用いることで、硬度、伸び率、引張強度および引裂強度といった機械的特性に優れたポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂を得ることができる。
【0044】
なお、本発明のポリオール組成物中におけるヒドロキシル基含有脂肪酸の割合は、JIS K1557−1の方法により測定されるヒドロキシル基含有脂肪酸の水酸基価A、JIS K1557−5の方法により測定されるヒドロキシル基含有脂肪酸の酸価Bの比A/Bにより決定される。
【0045】
また、ポリエステルポリオールとして、カルボン酸エステルと多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオールを用いる場合には、前記カルボン酸をエステル化したカルボン酸エステルが用いられる。
【0046】
カルボン酸エステルとしては、前記ヒドロキシル基含有脂肪酸をエステル化したヒドロキシル基含有脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
ヒドロキシ基含有脂肪酸エステルとしては、乳酸エステル、グリコール酸エステル、2−ヒドロキシ酪酸エステル、3−ヒドロキシ酪酸エステル、γ−ヒドロキシ酪酸エステル;リシノレイン酸メチル、リシノレイン酸エチル、リシノレイン酸プロピル、リシノレイン酸ブチルなどのリシノレイン酸エステル;12−ヒドロキシステアリン酸メチル、12−ヒドロキシステアリン酸エチル、12−ヒドロキシステアリン酸プロピル、12−ヒドロキシステアリン酸ブチルなどの12−ヒドロキシステアリン酸エステル;セレブロン酸メチル、セレブロン酸エチル、セレブロン酸プロピル、セレブロン酸ブチルなどのセレブロン酸エステル;ヒドロキシウンデカン酸メチル、ヒドロキシウンデカン酸エチル、ヒドロキシウンデカン酸プロピル、ヒドロキシウンデカン酸ブチルなどのヒドロキシウンデカン酸エステルなどが挙げられる。
【0047】
これらの中では、ヒマシ油由来の、リシノレイン酸メチル、リシノレイン酸エチル、リシノレイン酸プロピル、リシノレイン酸ブチルなどのリシノレイン酸エステル;12−ヒドロキシステアリン酸メチル、12−ヒドロキシステアリン酸エチル、12−ヒドロキシステアリン酸プロピル、12−ヒドロキシステアリン酸ブチルなどの12−ヒドロキシステアリン酸エステルが好ましく;ポリエステルポリオールの製造時にその粘度が低くなる点で、ヒマシ油由来のリシノレイン酸エステルが特に好ましい。
【0048】
なお、エステル化については、一般的なエステル化であれば特に制限はなく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどと、ヒドロキシル基含有脂肪酸とのエステル化が挙げられる。このようなエステル化は、アルカリ触媒存在下で行うなど、公知の方法を用いることができる。
ヒマシ油脂肪酸エステルは、ヒマシ油脂肪酸をエステル化して得ることができ、またアルコールを用いてヒマシ油をエステル交換して得ることもできる。
【0049】
<多価アルコール>
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの炭素数2〜10の2価アルコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの脂環族2価アルコール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの芳香族二価アルコール;トリメチロールプロパン、グリセリンなどの炭素数2〜10の3価アルコール;ヒドロキシル基数が4〜8の多価アルコールなどが挙げられる。また、これらの多価アルコールの有するヒドロキシル基の一部または全部にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどを付加した多価アルコールのアルキレンオキシド付加物も使用することができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ヒドロキシル基数が4〜8の多価アルコールとしては、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコシドなどの4価アルコール;ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール;グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、シュークロースなどの糖類およびその誘導体;ヒドロキシル基数が7〜8のフェノール類などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ポリウレタンフォームの架橋度を高め、その機械的特性を確保するため、多価アルコールの平均ヒドロキシル基数は3.5以上8以下であることが好ましい。平均ヒドロキシル基数が8を超えると、ポリエステルポリオールの粘度が上昇し、ポリウレタンフォーム製造時に、発泡機でのその使用が困難となる。
【0052】
カルボン酸としてヒマシ油脂肪酸を用いる場合にあっては、ヒマシ油脂肪酸(i)と
平均ヒドロキシル基数が3.5以上8以下である多価アルコール(ii)との質量比((i)/(ii))は、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜70、さらに好ましくは5〜50である。質量比が前記範囲を下回ると、所望のポリウレタンフォーム、特に軟質ポリウレタンフォームを製造可能なポリエステルポリオールを設計することが困難になる傾向にあり、また、前記範囲を上回ると、環境負荷低減の効果が小さくなる傾向にある。
【0053】
<ポリエステルポリオールの物性>
ポリエステルポリオールのHLB値は、通常は2.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.5、特に好ましくは2.5〜4である。
【0054】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは15〜100mgKOH/g、より好ましくは25〜80mgKOH/g、さらに好ましくは25〜60mgKOH/gである。水酸基価が15mgKOH/g以上であれば、ポリウレタンフォーム製造時の硬化が短時間で進むため好ましく、100mgKOH/g以下であれば、軟質ポリウレタンフォームとして適当な反発弾性および硬度を示すため好ましい。
【0055】
ポリエステルポリオールの酸価は、好ましくは0〜3mgKOH/g、より好ましくは0〜2mgKOH/gである。酸価が前記範囲を上回ると、ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含む組成物のウレタン化反応を行う際に、反応性が低下し、反応速度が低下することがある。酸価はJIS K−1557−5記載の方法により測定される。
【0056】
ポリエステルポリオールの25℃での粘度は、好ましくは20000mPa・s以下、より好ましくは15000mPa・s以下、さらに好ましくは10000mPa・s以下である。その下限値は、通常は500mPa・s程度である。粘度は円錐平板型回転粘度計(E型粘度計)を用い、25℃で測定される。
【0057】
なお、本発明においてヒマシ油脂肪酸から合成されるポリエステルポリオールを用いて得られるポリウレタンフォームは、該フォーム中の植物(ヒマシ油)由来成分の含量を非常に高くすることができるため、より環境負荷低減に寄与できる。カーボンニュートラルの概念を用いると、植物(ヒマシ油)由来成分を用いることにより、これを用いて調製されるポリエステルポリオールやポリウレタンフォームを燃やした場合の二酸化炭素排出量を低減することができる。なお、ポリマーがバイオマス原料を利用していることは、ASTM D6866に規定されているように質量数14の炭素の含有量、質量数12および質量数13の炭素の含有量を測定し、質量数14の炭素含有割合(14C濃度)を求めることにより判別することができる。
【0058】
具体的には、ASTM(米国標準検査法)D6866(Standard Test Method for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis)に記載されているように、サンプルを燃焼してCO2とし、正確に定量したCO2ガスをAMS(Accelerated Mass Spectrometry)装置に入れて質量数14の炭素の含有量、質量数12および質量数13の炭素の含有量を測定し、大気中や石油化学品中に存在する質量数14の炭素の存在率と比較することにより判別できる。
【0059】
また、サンプルを燃焼し、得られたCO2をCO2吸収剤で吸収し、液体シンチレーションカウンターにより質量数14の炭素量を測定するか、得られたCO2をベンゼンに変換し、液体シンチレーションカウンターにより質量数14の炭素量を測定し、石油由来のものと比較することにより判別することもできる。
【0060】
石油由来の原料だけでポリエステルポリオールが合成される場合、質量数14の炭素は観測されず、植物由来の原料を用いると質量数14の炭素が観測される。二酸化炭素排出量を減ずる効果を得るには、ポリウレタンフォーム中の14C濃度の値が10pMC(Percent Modern Carbon)以上であればよく、好ましくは20pMC以上、さらに好ましくは30pMCであればよい。
【0061】
《ポリエーテルポリオール》
ポリエーテルポリオールとしては、ウレタン樹脂の製造に用いられる従来公知のものを用いることができる。例えば上記《ポリエステルポリオール》の欄に例示した多価アルコール、エチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリアルキレンオキサイド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコールなど);テトラヒドロフランの開環重合によって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0062】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの炭素数2〜12のアルキレンオキサイドが挙げられる。これらの中では、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイドおよびスチレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが特に好ましい。
【0063】
アルキレンオキサイドは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、アルキレンオキサイドを併用する場合には、複数のアルキレンオキサイドを同時に付加重合させる方法、順次に付加重合させる方法、または順次に付加重合させる方法を繰り返して行う方法などを採用することができる。
【0064】
ポリエーテルポリオールのHLB値は、通常は4.0〜20.0、好ましくは4.5〜10.0、特に好ましくは5.0〜7.0である。
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは15〜100mgKOH/g、さらに好ましくは15〜60mgKOH/gである。
ポリエーテルポリオールの粘度は好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下である。
【0065】
《他のポリオール》
本発明のポリオール組成物は、上記ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオール以外に、他のポリオールを含有してもよい。他のポリオールとしては、低分子量多価アルコール、ポリカーボネートジオール、ポリオールの変性物などが挙げられる。
【0066】
<低分子量多価アルコール>
低分子量多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサシジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,2ヘジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,2−ビスヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,3−ビスヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,4−ビスヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,2−ビスヒドロキシエトキシカルボニルシクロヘキサン、1,3−ビスヒドロキシエトキシカルボニルシクロヘキサン、1,4−ビスヒドロキシエトキシカルボニルシクロヘキサン、2,5−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンなどの2価アルコール;
グリセリン、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−ジオール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオールなどの3価アルコール;
ペンタエリスリトール、グルコース、シュークロース、フルクトース、ソルビトール、1,2,3,4−シクロヘキサンテトロール、1,2,4,5−シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサンペントール(クエルシトール)、シクロヘキサンヘキソール(イノシトール)、キシリトールなどの4価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
【0067】
<ポリカーボネートジオール>
ポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジカーボネートとの縮合により得られるポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0068】
<ポリオールの変性物>
本発明では、ポリオールをそのまま使用してもよいが、ポリマー分散ポリオール(以下「ポリマーポリオール」ともいう。)などのポリオールの変性物を使用してもよい。このようなポリマーポリオールは、軟質ポリウレタンフォームの原料として好適である。
【0069】
ポリマーポリオールは、ポリオール中で、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤を用いて、エチレン性不飽和化合物を重合して得られたポリマー微粒子が、該ポリオール中に分散したものである。なお、ポリマー微粒子は、エチレン性不飽和化合物の重合体からなるポリマー微粒子でもよいが、重合時にエチレン性不飽和化合物の少なくとも一部が分散媒であるポリオールにグラフト化したポリマー微粒子であることが好ましい。
【0070】
エチレン性不飽和化合物としては、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド、(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのエチレン性不飽和化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリマーポリオールを製造する際、エチレン性不飽和化合物とともに、分散安定化剤や連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0071】
ポリマーポリオールは、ポリオール全成分100質量%に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜30質量%の範囲で含まれる。ポリマーポリオールの含有量が前記範囲を上回ると、環境負荷低減に寄与できないことがある。
【0072】
《触媒》
本発明のポリオール組成物は、触媒を含有してもよい。触媒としては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に用いられる従来公知の触媒が使用でき、具体的にはトリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、モルフォリン類などの脂肪族アミン類;オクタン酸スズ、ジブチルチンジラウレートなどの有機錫化合物などが挙げられる。これらの触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
なお、前記触媒としては、市販品を用いることができ、例えば1−イソブチル−2−メチルイミダゾールは、商品名R−9000として活材ケミカル(株)から市販されている。
触媒を使用する場合は、本発明のポリオール組成物において、ポリオール全成分100質量部に対して、該触媒は0.1〜10質量部の範囲で含まれることが好ましい。
【0074】
《架橋剤》
本発明のポリオール組成物は、さらに架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、従来公知の架橋剤を用いることができるが、水酸基価が200〜1800mgKOH/gである化合物が好ましく用いられる。
【0075】
水酸基価が200〜1800mgKOH/gである架橋剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。また、水酸基価が200〜1800mgKOH/gであるポリオキシアルキレンポリオール(例えば、三井化学ポリウレタン(株)製、アクトコールKL−210:官能基数4のポリオキシアルキレンポリオール、OHV=840mgKOH/g)も架橋剤として用いることができる。
架橋剤を使用する場合は、本発明のポリオール組成物において、ポリオール全成分100質量部に対して、該架橋剤は0.5〜10質量部の範囲で含まれることが好ましい。
【0076】
《発泡剤》
本発明のポリオール組成物は、その使用目的がポリウレタンフォームの原料である場合には、さらに発泡剤を含有することが好ましい。発泡剤としては、液化炭酸ガスなどの物理発泡剤も使用可能であるが、水を使用することが最も好ましい。
【0077】
発泡剤として水を使用する場合は、本発明のポリオール組成物において、ポリオール全成分100質量部に対して、水は好ましくは1.3〜6.0質量部、より好ましくは1.8〜5.0質量部、特に好ましくは2.0〜4.0質量部の範囲で含まれる。発泡剤としての水の量が前記範囲であることによって、発泡が安定かつ有効に行われる。
【0078】
また、発泡剤として、地球環境保護の目的で開発されたヒドロキシフルオロカーボン類(HFC−245faなど)、炭化水素類(シクロペンタンなど)、炭酸ガス、液化炭酸ガスなどの物理発泡剤を、水と併用することができる。これらの物理発泡剤の中では、環境負荷低減の面から、炭酸ガスおよび液化炭酸ガスが好ましい。
【0079】
《整泡剤》
本発明のポリオール組成物は、その使用目的がポリウレタンフォームの原料である場合には、さらに整泡剤を含有することが好ましい。整泡剤としては、従来公知の整泡剤が使用でき、通常は有機ケイ素系界面活性剤を使用することが好ましい。
【0080】
有機ケイ素系界面活性剤としては、FV−1013−16(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、SRX−274C、SF−2969、SF−2961、SF−2962、L−5309、L−3601、L−5307、L−3600、L−5366、SZ−1325、SZ−1328、Y−10366(GE東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0081】
整泡剤を使用する場合は、本発明のポリオール組成物において、ポリオール全成分100質量部に対して、整泡剤は好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部の範囲で含まれる。
【0082】
《添加剤》
本発明のポリオール組成物には、上記成分に加えて、鎖延長剤、連通化剤、難燃剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤などのポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂を製造する際に一般的に用いられる添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
【0083】
添加剤としては、松平信孝、前田哲郎共編「ポリウレタン」第8刷槙書店(1964)の134〜137頁、松尾仁、国井宣明、田辺清士共編「機能性ポリウレタン」第1刷株式会社シーエムシー(1989年)54〜68頁などに記載の添加剤が挙げられる。
【0084】
《ポリオール組成物の調製》
本発明のポリオール組成物において、ポリエステルポリオールは、該組成物100質量%あたり、好ましくは15〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%の範囲で含まれる。また、ポリエーテルポリオールは、該組成物100質量%あたり、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜75質量%の範囲で含まれる。これら2種のポリオールの含有量が前記範囲にあると、相溶化剤による相溶効果が良好に発現され、ポリオール組成物の相分離を防止することができる。
【0085】
また、他のポリオールを使用する場合は、本発明のポリオール組成物100質量%あたり、ポリオール全成分が、好ましくは40〜99質量%、より好ましくは70〜98質量%の範囲で含まれるよう、他のポリオールを使用することが望ましい。
【0086】
本発明のポリオール組成物は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび相溶化剤と、任意成分である他のポリオール、触媒、架橋剤、発泡剤、整泡剤、添加剤などとを、所定の組成比となるよう従来公知の方法により混合して調製される。
【0087】
〔ポリウレタン用組成物、ポリウレタンフォーム用組成物〕
本発明のポリウレタン用組成物またはポリウレタンフォーム用組成物は、上述のポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有する。さらに、本発明のポリウレタン用組成物またはポリウレタンフォーム用組成物は、その使用目的(例えば、ポリウレタンフォームなどのウレタン樹脂の原料)に応じて、上述した、他のポリオール、触媒、架橋剤、発泡剤、整泡剤、添加剤などを含有してもよい。
【0088】
本発明のポリウレタン用組成物は、非発泡型のポリウレタン樹脂を得るための組成物であってもよいが、発泡型のポリウレタン樹脂であるポリウレタンフォームを得るための組成物、すなわちポリウレタンフォーム用組成物であることが好ましい。
【0089】
特に、本発明のポリウレタンフォーム用組成物は、適度な反発弾性、伸び率および成形を有する軟質ポリウレタンフォームの原料として好適に用いられる、軟質ポリウレタンフォーム用組成物であることが好ましい。
【0090】
《ポリイソシアネート》
ポリイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造に用いられる従来公知のものを用いることができ、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する、芳香族系、脂肪族系または脂環族系イソシアネートなどが挙げられる。
【0091】
芳香族系イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(例えば、2,4体:2,6体=80:20(質量比)の混合物(TDI−80/20)、2,4体:2,6体=65:35(質量比)の混合物(TDI−65/35))、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、ポリメリックMDI、トルイレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0092】
脂肪族系イソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0093】
脂環族系イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0094】
さらに、上記ポリイソシアネートのウレタン変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体などの変性イソシアネートを挙げることもできる。
【0095】
これらのポリイソシアネートは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタンフォームを得る際に用いるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)および/またはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。
【0096】
TDIとしては、異性体を単独で、または混合物として使用することができる。すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)100%品、トリレンジイソシアネートの異性体混合物(例えば、2,4体:2,6体=80:20(質量比)の混合物(TDI−80/20)、2,4体:2,6体=65:35(質量比)の混合物(TDI−65/35))、およびこれらの混合物、さらに、多官能性のタールを含有する粗TDI(たとえば、三井化学ポリウレタン(株)製TDI−TRC)も使用できる。
【0097】
MDIとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)を主成分とするもの、3核体以上の多核体を含有するポリメリックMDI(たとえば、三井化学ポリウレタン(株)製コスモネートシリーズ)が好適に使用できる。
【0098】
また、ポリイソシアネートとしては、TDIとポリメリックMDIの混合物(たとえば、三井化学ポリウレタン(株)製コスモネートTM−20)なども好適に使用できる。
また、ポリイソシアネートとして、ヌレート変性ポリイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネート、プレポリマー変性ポリイソシアネート(ポリイソシアネートと上記ポリオールとから得られる、イソシアネート基を分子末端に有するプレポリマー)、ウレトジオン変性ポリイソシアネート等の変性ポリイソシアネートを用いることもできる。
【0099】
これらのポリイソシアネートは、1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
非発泡型のポリウレタン樹脂を得る際に用いるポリイソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「4,4’−MDI」ともいう。)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI:以下「HMDI」ともいう。)、パラフェニレンジイソシアネート(以下「PPDI」ともいう。)、ナフタレンジイソシアネート(以下「NDI」ともいう。)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」ともいう。)、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」ともいう。)、ノルボルナンジイソシアネート(以下「NBDI」ともいう。)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびこれらのウレタン変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体が好ましく;4,4’−MDI、HMDI、PPDI、NDIなどの有機ジイソシアネート、およびこれらのウレタン変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体が特に好ましい。
【0100】
本発明では、NCOインデックスが、好ましくは0.70〜1.30、より好ましくは0.80〜1.20、さらに好ましくは0.90〜1.10、特に好ましくは0.94〜1.08となるように、上述のポリオール組成物とポリイソシアネートと任意成分とを混合することが望ましい。NCOインデックスが前記範囲であると、クッション材として適度な硬度および機械強度を有し、しかも適度な反発弾性、伸び率および成形性を有するポリウレタンフォームを得ることができる。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数を、ポリオールの水酸基、架橋剤などのアミノ基および水などのイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除した値を意味する。例えば、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基とが化学量論的に等しい場合、そのNCOインデックスは1.0となる。
【0101】
《ポリウレタン用組成物、ポリウレタンフォーム用組成物の調製》
本発明のポリウレタン用組成物またはポリウレタンフォーム用組成物は、上記ポリオール組成物と、ポリイソシアネートと、任意成分である他のポリオール、触媒、架橋剤、発泡剤、整泡剤、添加剤などとを、所定の組成比となるよう従来公知の方法により混合して調製される。なお、本発明のポリウレタンフォーム用組成物は、特に軟質ポリウレタンフォームを得るための組成物、すなわち軟質ポリウレタンフォーム用組成物として好適である。
【0102】
なお、他のポリオール、触媒、架橋剤、発泡剤、整泡剤、添加剤などは、上記ポリオール組成物に予め配合されている場合もある。このため、これら他の成分を新たに配合する場合には、ポリウレタン用組成物またはポリウレタンフォーム用組成物における、ポリオール全成分に対するこれら他の成分の含有量が、〔ポリオール組成物〕の欄に記載した範囲となるようにすればよい。
【0103】
〔ポリウレタン(ウレタン樹脂)〕
本発明のポリウレタン(ウレタン樹脂)は、従来公知の製造方法に従って製造することができる。具体的には、上記ポリオール組成物からなるレジンプレミックスを調製した後、このレジンプレミックスとポリイソシアネートと任意成分とを混合してポリウレタン用組成物を得て、該組成物を反応させることによりポリウレタンを得ることができる。
【0104】
別の方法としては、予めポリオール組成物の一部とポリイソシアネートとを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーを製造し、該プレポリマーと残りのポリオール組成物とを反応させることによりポリウレタンを得ることもできる。また、予めポリオール組成物とポリイソシアネートの一部とを反応させたヒドロキシル基末端プレポリマーを製造し、該プレポリマーと残りのポリイソシアネートとを反応させることによりポリウレタンを得ることもできる。
【0105】
このようにして得られたポリウレタンは、カッターやペレタイザーなどを用いて粉砕、細粒化した後、押出機などを用いてペレットなどの所望の形状に成形することもできる。
なお、非発泡型のポリウレタンを製造する際には、ポリオールの加熱減圧脱水処理を充分に行ない、水分量を低下させておくことが好ましい。例えば、ポリオール組成物あるいはポリウレタン用組成物における水分量は、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、特に好ましくは0.02質量%以下である。
【0106】
〔ポリウレタンフォーム〕
本発明のポリウレタンフォームは、従来公知の製造方法に従って製造することができる。具体的には、スラブフォーム法、ホットキュアモールドフォーム法、コールドキュアモールドフォーム法のいずれも採用できる。自動車などの車両用シートパッドを製造する場合は、コールドキュアモールドフォーム法が好ましい。
【0107】
コールドキュアモールドフォーム法によりポリウレタンフォームを製造する方法としては、例えば、上記ポリオール組成物からなるレジンプレミックスを調製した後、このレジンプレミックスとポリイソシアネートと任意成分とを、高圧発泡機または低圧発泡機を用いて、所定のNCOインデックスとなるように混合する。あるいは、所定のNCOインデックスとなるように調製されたポリウレタンフォーム用組成物を、高圧発泡機または低圧発泡機を用いて、混練する。この混合物あるいは混練物を金型に注入して反応および発泡・硬化させて、一定形状のポリウレタンフォームを得ることができる。
【0108】
特に、本発明の軟質ポリウレタンフォーム用組成物を用いることで、適度な反発弾性、伸び率および成形を有する軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
硬化時間は通常は30秒〜30分であり、金型温度は通常は室温から80℃程度であり、硬化温度は室温から150℃程度であることが好ましく、さらに硬化後に、本発明の目的を損なわない範囲で80〜180℃の範囲で硬化物を加熱してもよい。
【0109】
レジンプレミックスは、通常は高圧発泡機または低圧発泡機でポリイソシアネートと混合されるが、有機錫化合物のように加水分解性を示す化合物を触媒として使用し、かつ発泡剤が水である場合、これらの接触を避けるため、水と有機錫化合物とを異なる経路で発泡機に注入して発泡機の混合ヘッドで混合することが好ましい。使用するレジンプレミックスの粘度は、発泡機での混合性、フォームの成形性などの観点から3000mPa・s以下であることが好ましい。
【0110】
このようにして、相溶性が向上した本発明のポリオール組成物を用いることで、硬度、伸び率、引張強度および引裂強度といった機械的特性に優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0111】
ポリウレタンフォームのこれら機械的特性の好適範囲は、一般的にその用途によって異なるが、本発明のポリウレタンフォーム、特に軟質ポリウレタンフォームは、シートクッションやシートパッドなどのクッション材として好適に使用することができる。特に、本発明の(軟質)ポリウレタンフォームは、高反発弾性が要求される、自動車などの車両用シートクッション、車両用シートバックなどの用途に好ましく用いられる。
【0112】
例えば、一般的にコア密度が40〜75kg/m3の範囲にある自動車などの車両用シートクッション用途では、適度な硬度範囲は、25%ILDで、好ましくは150〜400N/314cm2、より好ましくは200〜300N/314cm2である。
【0113】
また、本発明のポリウレタンフォームの伸び率は、好ましくは50〜200%、より好ましくは60〜150%であり;引張強度は、好ましくは60〜300kPa、より好ましくは70〜200kPaであり;引裂強度は、好ましくは3.0〜8.0N/cm、より好ましくは4.0〜7.0N/cmである。
【0114】
なお、これらの物性値は下記実施例に記載の条件下で測定される。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。実施例および比較例における分析、測定は下記の方法に従って行った。
【0116】
(1)コア密度(表3中、コア密度を「DCO」と略記する。)
JIS K−6400記載の見掛け密度の測定方法に準拠して測定を実施した。本発明では、ポリウレタンフォームサンプルから表皮を取り去り、直方体フォームサンプルを調製してコア密度を測定した。
【0117】
(2)フォームの硬度(表3中、フォームの硬度を「25%ILD」と略記する。)
JIS K−6400記載のA法に準拠して測定を実施した。ただし、厚さ100mmのポリウレタンフォームについて測定した。
【0118】
(3)伸び率
JIS K−6400記載の方法により測定を実施した。
(4)引張強度
JIS K−6400(1997)記載の方法により測定を実施した。
【0119】
(5)引裂き強度
JIS K−6400(1997)記載の方法により測定を実施した。
(6)相溶性
実施例、比較例で得られたレジンプレミックスを、試験管に移し、室温が23℃である室内の水平な場所に2週間静置した後の分離状態を肉眼で確認した。分離がまったく確認できない状態を相溶性良好(○)、少しでも分離が確認された場合を相溶性不良(×)と評価した。
【0120】
(7)水酸基価(OHV)
JIS K−1557−1記載の方法により測定を実施した。
(8)HLB値
HLB値は、甲田善生、外2名著、「有機概念図‐基礎と応用‐」、初版、三共出版、(昭和59年5月10日)、p.11〜17、88〜91に記載された方法により求めた。
【0121】
具体的には、表1に記された置換基の有機性値・無機性値をもとに、各物質の有機性値の和(O)および無機性値の和(I)を求め、各物質のI/Oを算出し、I/Oの10倍をHLB値(HLB値=I/O×10)として求めた。
【0122】
なお、2種以上の物質を混合したもののHLB値を求める場合には、各々の成分のHLB値に各々の含有割合(wt%)を乗じたものの総和を100で除することにより、混合系のHLB値を求めることができる。
【0123】
【表1】

以下具体的な化合物におけるHLB値の求め方の例を示す。
【0124】
(リシノレイン酸のHLB値の求め方)
リシノレイン酸の構造は、以下の式(A)で表わされる。
【0125】
【化1】

前記式(A)より、リシノレイン酸は、C(炭素原子)を18個有し、−COOH(カルボン酸)を1個、−OH(水酸基)を1個、Iso分岐を1個、二重結合を1個有する。
【0126】
表1より、それぞれの有機性値/無機性値は、C:(20/0)、−COOH:(0/150)、−OH:(0/100)、Iso分岐:(−10/0)、二重結合:(0/2)である。
【0127】
よって、リシノレイン酸の有機性値(O)は、20×18+(−10)×1=350であり、無機性値は(I)は、150×1+100×1+2×1=252であり、HLB値は、I/O×10=252/350×10=7.20である。
【0128】
(グリセリンにプロピレンオキシドを60モル付加することにより、得られた分子量3572のポリエーテルポリオールのHLB値の求め方)
グリセリンにプロピレンオキシドを60モル付加することにより、得られた分子量3572のポリエーテルポリオールの平均的な構造は、以下の式(B)で表わされる。
【0129】
【化2】

前記式(B)より、グリセリンにプロピレンオキシドを60モル付加することにより、得られた分子量3572のポリエーテルポリオールは、C(炭素原子)を183個有し、−O−(エーテル結合)を60個(3+(20−1)×3)、−OH(水酸基)を3個、Iso分岐を60個有する。
【0130】
表1より、それぞれの有機性値/無機性値は、C:(20/0)、−O−:(0/20)、−OH:(0/100)、Iso分岐:(−10/0)である。
よって、グリセリンにプロピレンオキシドを60モル付加することにより、得られた分子量3572のポリエーテルポリオールの有機性値(O)は、20×183+(−10)×60=3060であり、無機性値は(I)は、20×60+100×3=1500であり、HLB値は、I/O×10=1500/3060×10=4.90である。
【0131】
(ソルビトールにリシノレイン酸を24モル付加することにより、得られた分子量7341のポリエステルポリオールのHLB値の求め方)
ソルビトールにリシノレイン酸を24モル付加することにより、得られた分子量7341のポリエステルポリオールの平均的な構造は、以下の式(C)で表わされる。
【0132】
【化3】

前記式(C)より、ソルビトールにリシノレイン酸を24モル付加することにより、得られた分子量7341のポリエステルポリオールは、C(炭素原子)を438個有し、−COOφ(エステル結合)を24個(6+(4−1)×6)、−OH(水酸基)を6個、Iso分岐を24個、二重結合を24個有する。
【0133】
表1より、それぞれの有機性値/無機性値は、C:(20/0)、−COOφ:(0/60)、−OH:(0/100)、Iso分岐:(−10/0)、二重結合:(0/2)である。
【0134】
よって、ソルビトールにリシノレイン酸を24モル付加することにより、得られた分子量7341のポリエステルポリオールの有機性値(O)は、20×438+(−10)×24=8520であり、無機性値は(I)は、60×24+100×6+2×24=2088であり、HLB値は、I/O×10=2088/8520×10=2.45である。
【0135】
(1,3−ブタジエンを縮合したポリブタジエン(ブタジエン繰り返し単位40個)の末端に水酸基を付加して、得られる分子量2194のポリブタジエンポリオールのHLB値の求め方)
1,3−ブタジエンを縮合したポリブタジエン(ブタジエン繰り返し単位40個)の末端に水酸基を付加して、得られる分子量2194のポリブタジエンポリオールの平均的な構造は、以下の式(D)で表わされる。
【0136】
【化4】

前記式(D)より、1,3−ブタジエンを縮合したポリブタジエン(ブタジエン繰り返し単位40個)の末端に水酸基を付加して、得られる分子量2194のポリブタジエンポリオールは、C(炭素原子)を160個有し、−OH(水酸基)を2個、二重結合を40個有する。
【0137】
表1より、それぞれの有機性値/無機性値は、C:(20/0)、−OH:(0/100)、二重結合:(0/2)である。
よって、1,3−ブタジエンを縮合したポリブタジエン(ブタジエン繰り返し単位40個)の末端に水酸基を付加して、得られる分子量2194のポリブタジエンポリオールの有機性値(O)は、20×160=3200であり、無機性値は(I)は、100×2+2×40=280であり、HLB値は、I/O×10=280/3200×10=0.857である。
なお、実施例、比較例で用いた相溶化剤、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールのHLB値は上記例示と同様の方法で求めた。
【0138】
(9)数平均分子量(Mn)
数平均分子量を測定しようとする物質を0.05g程度精秤し、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す)を加えて10mLにメスアップした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)HLC−8020(東ソー(株)製)を用いて以下の条件で測定した。
溶離液:THF
溶離液流量:0.8ml/min
溶離液温度:40℃
カラム温度:40℃
カラム:東ソー(株)製TSKgel G−3000H、G−2000H、
G−1000Hを直列につないで使用
検出器:RI
標準試料:ポリエチレングリコール
【0139】
(10)酸価
JIS K−1557−5記載の方法により測定を実施した。
【0140】
(11)粘度(mPa・s/25℃)
円錐平板型回転粘度計(E型粘度計)を用い、25℃での粘度を測定した。
(12)ヒマシ油脂肪酸の純度測定
ヒマシ油脂肪酸の純度は、JIS K1557−1の方法により測定されるヒマシ油脂肪酸の水酸基価A、JIS K1557−5の方法により測定されるヒマシ油脂肪酸の酸価Bの比A/Bにより求めた。
【0141】
(13)植物由来成分含有率
植物由来成分含有率は、ポリウレタンフォーム中に含まれる植物に由来する成分の割合として求めた。一例として、植物から得られた原料を用いて製造されるヒドロキシカルボン酸と、植物に由来する多価アルコールとから得られるポリエステルポリオールを60部、植物から得られる成分を含まないポリエーテルポリオール40部、植物から得られる成分を含まない架橋剤、触媒、整泡剤などの総計が10部、植物から得られる成分を含まないイソシアネート40部を用いて樹脂を調製する場合、その植物由来成分含有率は40%となる。
【0142】
<ヒマシ油脂肪酸の精製>
(精製例1)
ヒマシ油を加水分解することにより得られたヒマシ油脂肪酸(伊藤製油(株)製:商品名CO−FA、純度:86%)を、蒸発表面の面積が0.03m2の分子蒸留装置(柴田科学(株)製)を用いて低沸成分である水酸基不含成分を除去し、高純度ヒマシ油脂肪酸を得た。このときの蒸発条件は装入速度200g/h、蒸発表面温度160℃、圧力15Pa、ワイパー回転数300rpmであった。その時得られた高純度ヒマシ油脂肪酸の酸価は180.7mgKOH/g、水酸基価は172.9mgKOH/gであり、これらより求めた高純度ヒマシ油脂肪酸(1)の純度は95.7%であった。なお、高純度ヒマシ油脂肪酸(1)は、リシノレイン酸であることが確認された。
【0143】
<ポリエステルポリオールの合成>
〔合成例1〕ポリエステルポリオールA−1
ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油(株)製:商品名CO−FA、純度(リシノレイン酸含有量):86%)を4218g、SOR−400(三井化学ポリウレタン(株)製、ソルビトールにプロピレンオキシドを付加したポリオール、水酸基価400mgKOH/g、平均官能基数:6)を547g、温度計・撹拌装置・生成する水を分離させる装置を具備した2Lのガラス製フラスコに仕込み、窒素気流下、180℃時間で縮合反応を実施した。酸価が10mgKOH/g以下になった時点で触媒としてオルトチタン酸テトラブチル(試薬東京化成(株)製)を0.5g添加し引き続き180℃にて縮合反応を実施し46時間縮合反応を行った。得られたポリエステルポリオールA−1の水酸基価(OHV)は53mgKOH/g、平均官能基数(計算値)は4.3、粘度は2700mPa・s/25℃、HLB値は2.70であった。
【0144】
〔合成例2〕ポリエステルポリオールA−2
精製例1で得られた高純度ヒマシ油脂肪酸(1)とヒマシ油脂肪酸(伊藤製油(株)製:商品名CO−FA、純度:86%)を純度95.0%になる様にあらかじめ混合した高純度ヒマシ油脂肪酸を1944g、SOR−400(三井化学ポリウレタン(株)製、ソルビトールにプロピレンオキシドを付加したポリオール、水酸基価400mgKOH/g)を78g、PE−450(三井化学ポリウレタン(株)製、ペンタエリスリトールにプロピレンオキシドを付加したポリオール、水酸基価450mgKOH/g)を97g(以上、多価アルコールの平均官能基数:4.6)、温度計・撹拌装置・生成する水を分離させる装置を具備した2Lのガラス製フラスコに仕込み、窒素気流下、180℃で縮合反応を実施した。酸価が10mgKOH/g以下になった時点で触媒としてオルトチタン酸テトラブチル(試薬東京化成(株)製)を0.2g添加し引き続き180℃にて縮合反応を実施し45時間縮合反応を行った。得られたポリエステルポリオールA−2の水酸基価(OHV)は49.0mgKOH/g、平均官能基数(計算値)は4.4、粘度は4300mPa・s/25℃、HLB値は2.622であった。
【0145】
<低モノオールポリオールの合成>
〔合成例3〕:ポリエーテルポリオール(B−1)
グリセリン1モルに対してテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド0.01モルを加え、100℃で6時間減圧脱水した後、プロピレンオキシドを反応温度80℃、最大反応圧力3.8kg/cm2で付加重合させた。次いで、エチレンオキシドを反応温度100℃、最大反応圧力3.8kg/cm2で付加重合させてポリエーテルポリオール(B−1)を得た。このポリオール(B−1)の総不飽和度は0.025meq/g、水酸基価は24mgKOH/g、末端オキシエチレン基含有率は15質量%、HLB値は5.50であった。
【0146】
<ポリマーポリオールの合成>
〔合成例4〕:ポリマーポリオール(PB−1)
温度計、攪拌装置、圧力計および送液装置を備えた1リットル容器の耐圧オートクレーブに、合成例3で得られた水酸基価24mgKOH/gのポリエーテルポリオール(B−1)を満液状態になるまで仕込み、攪拌しながら、120℃に昇温した。これに、ポリエーテルポリオール(B−1)、ラジカル重合開始剤、アクリロニトリルおよび分散安定化剤の混合液を連続装入し、反応温度120℃、反応圧力400kPa、滞留時間50分の条件で、アクリロニトリルをグラフト重合させ、排出口より初留を除いた後、連続的に反応液を得た。なお、原料の使用量は以下のとおりである。
ポリエーテルポリオール(B−1):7200g(オートクレーブ仕込み量と混合液中の使用量との合計)
ラジカル重合開始剤:50g
アクリロニトリル:1800g
【0147】
また、ラジカル重合開始剤は、以下のものを使用した。
ラジカル重合開始剤:2、2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)
得られた反応液を120℃、655Pa以下の条件で3時間の加熱減圧処理を行なって、未反応のアクリロニトリルおよびラジカル重合開始剤の分解物等を除去し、水酸基価19mgKOH/gのポリマーポリオール(PB−1)を得た。このポリマーポリオール(PB−1)のビニルポリマー含量は、20質量%(アクリロニトリルの総使用量が、ポリエーテルポリオール(B−1)、アクリロニトリルの総使用量100質量%に対して20質量%)であった。
【0148】
〔相溶化剤〕
実施例および比較例で用いた相溶化剤を表2に示す。
【0149】
【表2】

なお、相溶化剤の各物性は表3に示す。
【0150】
[実施例1]
ポリエステルポリオール(A−2)58部と、ポリエーテルポリオール(B−1)42部と、相溶化剤1:R−15HT(出光興産(株)製)2.5部と、架橋剤:アクトコールKL−210(三井化学ポリウレタン(株)製)2部と、整泡剤2:FV−1013−16(東レ・ダウコーニング(株)社製)0.7部と、水:2.3部と、触媒:R−9000(活材ケミカル(株)製)1.2部とを混合し、レジンプレミックスを調製した(表3参照)。このレジンプレミックスの相溶性に関する評価結果を表3に示す。
【0151】
NCOインデックスが1.00となるよう、上記レジンプレミックスとポリイソシアネート(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名コスモネートTM−20)32部とを混合し、直ちに予め60℃に調整した内寸300mm×300mm×100mmの金型へ注入し、蓋を閉めて発泡させた。金型を60℃に保ったまま8分間硬化反応を進めた後、金型より軟質ポリウレタンフォームを取り出し、上記物性(1)〜(5)を測定した。測定結果を表3に示す。
【0152】
[実施例2〜17、比較例1〜2]
実施例1において、表3記載の組成でレジンプレミックスを調製したこと以外は実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した。軟質ポリウレタンフォームの上記物性(1)〜(5)の測定結果を表3に示す。
【0153】
【表3】

表3中、各成分は下記のとおり。
架橋剤:アクトコールKL−210(三井化学ポリウレタン(株)製)
整泡剤1:Y−10366(GE東芝シリコーン(株)製)
整泡剤2:FV−1013−16(東レ・ダウコーニング(株)製)
触媒:R−9000(活材ケミカル(株)製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび相溶化剤を含有するポリオール組成物であって、
前記相溶化剤の水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、
前記相溶化剤のHLB値が、前記ポリエステルポリオールのHLB値と、前記ポリエーテルポリオールのHLB値とのうち、低い方のHLB値よりも0.3以上低く、
前記相溶化剤を、組成物100質量%あたり、0.1〜10質量%含有することを特徴とするポリオール組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤の平均官能基数が、2〜4であることを特徴とする請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記相溶化剤の重量平均分子量が、1000〜12000であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記相溶化剤が、ブタジエン由来の骨格、イソプレン由来の骨格およびダイマー酸由来の骨格から選択される少なくとも一種の骨格を有する相溶化剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオールが、カルボン酸と、多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルポリオールを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸が、炭素数10〜22のカルボン酸を含むことを特徴とする請求項5に記載のポリオール組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸が、ヒドロキシル基含有脂肪酸を含むことを特徴とする請求項5または6に記載のポリオール組成物。
【請求項8】
前記ヒドロキシル基含有脂肪酸が、ヒマシ油から得られるヒマシ油脂肪酸を含むことを特徴とする請求項7に記載のポリオール組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシル基含有脂肪酸100モル%中、前記ヒマシ油脂肪酸が50モル%以上であることを特徴とする請求項8に記載のポリオール組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有するポリウレタン用組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有するポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のポリウレタンフォーム用組成物を反応させてなるポリウレタンフォーム。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有する軟質ポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の軟質ポリウレタンフォーム用組成物を反応させてなる軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項15】
請求項14に記載の軟質ポリウレタンフォームからなるシートクッション。

【公開番号】特開2010−202761(P2010−202761A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49583(P2009−49583)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】