説明

ポリオール部分エステルおよび酸部分エステルをベースとする乳化剤を組合わせることによって入手しうる、冷間処理可能なPEGフリー液体水中油型乳化剤

【課題】ポリオール部分エステルおよび酸部分エステルをベースとする乳化剤を組合わせることによって入手しうる、冷間処理可能なPEGフリー液体水中油型乳化剤を提供する。
【解決手段】本発明は、冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル、および
Ba)中和可能な酸官能基を有する、1つまたはそれ以上の酸部分エステル、もしくは
Bb)少なくとも一部中和された酸官能基を有する、1つまたはそれ以上の酸部分エステル、および場合により
C)極性液体溶解性促進剤
からなる、PEGフリー液体乳化剤ベースを含んでいる乳化剤系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間処理可能なPEGフリー液体水中油型乳化剤の組合わせであって、ポリオール部分エステル、好ましくはソルビタンもしくはポリグリセロール部分エステル、および少なくとも一部中和された酸部分エステル、好ましくは果実酸(fruit acid)部分エステル、および場合により、単相系を得るのに必要な量の極性溶解性促進剤、好ましくは水を含んでいる組合わせに関する。本発明はまた、化粧品、製薬、および技術的配合物、特にエマルジョンの調製のためのこれらの乳化剤の使用、およびまた、本発明による乳化剤の組合わせを用いた、水中油型エマルジョンの生成および安定化方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
生態学的理由から、エマルジョン調製物の製造業者およびまた消費者の両方から、天然原料をベースとする水中油乳化剤へのかなり大きい関心がある。これらは好ましくは、ポリエチレングリコール含有基を含まない乳化剤(「PEG−フリー」乳化剤)である。この理由から、ポリアルコールの部分エステル、例えばグリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、またはメチルグリコシド、および脂肪酸、例えばラウリン酸、オレイン酸、またはイソステアリン酸が、広く用いられている。これらの乳化剤の多くは、濁っていて、分離する傾向を有する。
【0003】
挙げられたすべての乳化剤の欠点は、これらが、ペースト状〜固体のコンシステンシーを有し、したがって使用前に融解されなければならないという事実である。プロセス順序が最適化されなければならず、かつエネルギーコストが制限されなければならない時に、このことは、室温で液体であり、したがって事前の加熱を行なわずに直接加工処理されうる乳化剤と比較して、競争上のかなり大きい欠点を意味する。
【0004】
(特許文献1)は、冷間処理可能な、ポリグリセロール部分エステルとソルビタン部分エステルとの混合物について記載している。C〜C18、好ましくはC12脂肪酸とポリグリセロール−5〜ポリグリセロール−15、好ましくはポリグリセロール−10とのポリグリセロール部分エステル、およびC〜C18、好ましくはC12脂肪酸とソルビトールとのソルビタン部分エステルが、記載されている。しかしながらこれらの乳化剤は、普遍的に用いることができるわけではなく、多くの場合、貯蔵可能な−安定性エマルジョンを形成しない。
【0005】
(特許文献2)は、C12−18−ソルビタン部分エステル、C12−18−ポリグリセロール部分エステル、およびシリコーン油からなるシリコーン油の乳化用液体混合物について記載している。
【0006】
(特許文献3)は、水中油乳化剤(アルキルポリグリコシドおよび/または脂肪酸N−アルキルポリヒドロキシアルキルアミド)と油中水乳化剤(ポリオールポリヒドロキシステアレート)との混合物の、容易に汲み出すことができる(pumpable)液体水中油型乳化剤としての使用について記載している。容易に汲み出すことができる系を得るために、この乳化剤は、ポリオール、好ましくはグリセロールで希釈される。
【0007】
同じ親水性乳化剤系が、(特許文献4)および(特許文献5)において、ナノエマルジョンの調製のために、アルキルアシルグルタメートと組合わせて記載されている。
【0008】
(特許文献6)は、乳化剤およびワックス体(wax body)の水性分散液の、エマルジョンの冷間調製のための使用について記載している。しかしながら、これらの分散液の調製は、このワックスの融解温度で行なわれる。これらの分散液の貯蔵安定性については、まったく記載されていない。一般的には、これらの分散液は常に自由に調製されなければならず、このことは少なくとも、時間的利点を全体的に最小限にする。
【0009】
【特許文献1】EP−A−1250916号明細書
【特許文献2】特開昭60−262827号公報
【特許文献3】EP−B−0853494号明細書
【特許文献4】DE−A−10334225号明細書
【特許文献5】DE−A−10346515号明細書
【特許文献6】DE−A−19837841号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術に記載された冷間処理可能なPEG−フリー乳化剤系は、大部分は中程度のエマルジョン安定化しかもたらさず、このことは、乳化されることになる系に応じて、普遍的に用いられているこれらの系への障害となる制限につながる。
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は、室温で液体であり、したがって非常に良好なエマルジョン安定性を有するエマルジョンの冷間調製に用いることができ、これらの系のかなり幅広くなる可能性がある用途を生じるPEG−フリー水中油乳化剤を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、それ自体では不適切な乳化剤活性を有する水中油乳化剤、または油中水乳化剤のどちらかであるPEG−フリー液体ポリオール部分エステルは、少なくとも一部中和された酸官能基を有する乳化剤を少量添加することによって、高性能の冷間加工可能な水中油乳化剤に転化することができることが、今や発見された。
【0013】
これらの新しい型の冷間加工可能なPEG−フリー乳化剤の性能は、非常に様々な化粧品油を乳化するためのこれらの広い適用可能性から、および安定エマルジョンを形成するために必要とされる低い乳化剤濃度(総エマルジョンを基準にして、1〜3重量%)において明白である。
【0014】
ここで、少なくとも一部中和された酸官能基を有する添加乳化剤の必要量を、場合により、単相の好ましくは透明系が形成されるように、極性溶解性促進剤(最も単純な場合は水)を添加することによって、液体乳化剤ベース中に組み込むことができる。ソルビタンエステル70〜90重量%、親水性ポリグリセロールエステル8〜20重量%、および中和クエン酸部分エステル2〜10重量%からなる混合物が、特に適切であることが証明されている。ここで、3つの乳化剤成分すべてにおいて用いられる疎水性基がラウリン酸であるならば、最良の結果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明はこのようにして、冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル、および
Ba)中和可能な酸官能基を有する、1つまたはそれ以上の酸部分エステル、もしくは
Bb)少なくとも一部中和された酸官能基を有する、1つまたはそれ以上の酸部分エステル、および場合により
C)極性液体溶解性促進剤
からなる、PEGフリー液体乳化剤ベースを含んでいる乳化剤系を提供する。
【0016】
ポリオール部分エステルからなる液体ベース成分(A)はここで、
A1)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸の、ソルビトールでのエステル化によって好ましくは調製可能なソルビタンもしくはソルビトール部分エステル、
A2)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸の、グリセロール、ポリグリセロール、またはこれら2つの混合物でのエステル化によって好ましくは調製可能なグリセロールおよびポリグリセロール部分エステル、
A3)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸の、単糖類もしくは多糖類でのエステル化によって好ましくは調製可能な炭水化物エステル、好ましくはグリコシド、またはスクロースエステル、
A4)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化アルコールもしくはアルキルハライドと、単糖類もしくは多糖類との反応によって好ましくは調製可能な(アルキルポリ)グリコシド
の群の少なくとも1つから好ましくは選択された、1つまたはそれ以上の乳化剤を含んでいてもよい。
【0017】
通常、液体ポリオール部分エステル成分(A)の大部分は、ソルビタンエステルからなり、これには、好ましくは親水性ポリグリセロールエステルが、0〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、特に好ましくは8〜20重量%の量で混合されている。
【0018】
ここで、疎水性成分として10〜16炭素原子の鎖長を有する脂肪酸基を含んでいる、ソルビタンおよびポリグリセロール部分エステルをベースとする組合わせが、好ましいとされる。
【0019】
ここで、ソルビタンラウレートとポリグリセロールラウレートとの組合わせが、特に非常に好ましいとされる。
【0020】
ベース成分(B)(これは中和可能であるか、または少なくとも一部中和された酸官能基を有する)は、
B1)場合によりヒドロキシル基を含有するジ−もしくはポリカルボキシレート、硫酸化、スルホン化、もしくはリン酸化カルボキシレート、マロネート、マレート、スクシネート、スルホスクシネート、シトレート、タルトレートであって、これらの酸基が、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化アルコールで部分的にエステル化されているもの、
B2)場合によりヒドロキシル基を含有するジ−もしくはポリカルボキシレート、硫酸化もしくはスルホン化もしくはリン酸化カルボキシレート、マロネート、マレート、スクシネート、スルホスクシネート、シトレート、タルトレートであって、これらの酸基が、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸を有する、好ましくはグリセロール、ポリグリセロール、および/またはソルビトールのポリオール、ポリオール部分エステルで部分的にエステル化されているもの、
B3)ポリオール、好ましくはグリセロール、ポリグリセロール、およびソルビトールであって、2〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化モノ−、ジ−、もしくはポリカルボン酸で部分的にエステル化されているもの、ただし、この分子中に中和可能な遊離酸基が存在するという条件があるもの、
B4)ヒドロキシ−官能性モノ−、ジ−、もしくはポリカルボン酸であって、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸と少なくとも一部反応させられたヒドロキシル基を有するもの、
B5)N−アシルアミノ酸、例えばサルコシネート、グルタメート、アスパルテートであって、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化基を含んでいるもの、
B6)カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、もしくはホスフェートであって、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化基を含んでいるもの
の群の少なくとも1つから好ましくは選択された、1つまたはそれ以上の乳化剤を含んでいてもよい。
【0021】
型(B)の乳化剤は、乳化剤配合物中に、好ましくは少なくとも一部中和された形態(Bb)で存在する。これらは有利には、既に(一部)中和された成分として用いられる。所望であれば、この中和工程は、しかしながら、適切なその後の工程段階で行なわれてもよく、この場合好ましくは、塩基が中和のために用いられ、これは、一価または二価カチオン性対イオン有するアニオン活性乳化剤をもたらす。特に好ましい対イオンは、ここではナトリウムおよびカリウムである。
【0022】
型(B)の乳化剤は、ポリオール部分エステルからなる液体乳化剤ベースを基準にして、多くとも20重量%、好ましくは≦10重量%、特に好ましくは≦5重量%の量で用いられる。
【0023】
各々10〜16炭素原子を含有する疎水性基を有する、中和されたクエン酸部分エステルを用いることが、ここでは好ましいとされる。
【0024】
ここで、クエン酸とラウリルアルコールとの部分エステル、またはクエン酸とグリセロールモノ−もしくはジラウレートとの部分エステルが、特に非常に好ましいとされる。
【0025】
用いられた本発明による単相の、できるだけ透明な冷間処理可能な水中油乳化剤系を生成するために用いられる液体極性溶解性促進剤は好ましくは、総乳化剤系の多くても20重量%、好ましくは多くても10重量%の総量における水、グリコール、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、アルコールであってもよい。必要とされる極性溶解性促進剤の量は本質的に、乳化剤の型および乳化剤比に応じ、手作業実験を通して容易に確認することができる。一般的には、溶解性促進剤の2〜10重量%の量で十分である。
【0026】
本発明はさらに、化粧品、皮膚用、または製薬調製物の調製のための、本発明による水中油乳化剤系の使用も提供する。これらの調製物は好ましくは、場合により分散固体もまた含んでいてもよいエマルジョンである。
【0027】
本発明はさらに、家庭用および工業用、特に硬質表面、皮革、またはテキスタイル用の手入れおよび洗浄用組成物の調製のための、本発明による水中油乳化剤系の使用も提供する。これらの調製物は好ましくは、場合により分散固体もまた含んでいてもよいエマルジョンである。
【0028】
非常に安定化されたエマルジョンは、本発明による乳化剤の組合わせがエマルジョンの油相または水相へ直接添加された時、および非イオン性乳化剤成分(A)が油相において用いられた時のどちらも、冷間調製の間に得ることができ、一部中和された乳化剤成分(B)が、それとは別個に水相において直接用いられることが発見された。
【0029】
したがって本発明はさらに、水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル(A)からなる、PEG−フリー液体乳化剤ベース、および
B)1つまたはそれ以上の中和可能な酸官能基を有する酸部分エステル(Ba)、および場合により
C)極性溶解性促進剤、および
D)酸基Ba)の少なくとも一部中和に十分な量の塩基
の、請求項1〜10のいずれか一項に記載の本発明による乳化剤の組合わせを用いて、
全体のエマルジョンの油相および水相が、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、慣例的な方法で均質化される方法も提供する。
【0030】
したがって本発明はさらに、水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル(A)からなる、PEG−フリー液体乳化剤ベース、および
B)少なくとも一部中和された酸官能基(Bb)を有する1つまたはそれ以上の乳化剤、および場合により
C)極性溶解性促進剤、
の、請求項1〜10のいずれか一項に記載の本発明による乳化剤の組合わせを用いて、
油相および水相が、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、慣例的な方法で均質化される方法も提供する。
【0031】
本発明はまたさらに、本発明による乳化剤の組合わせを用いた、水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、非イオン性乳化剤成分(A)が、油相へ添加され、一部中和された乳化剤成分(Bb)が、別個に水相へ添加され、これら2つの相が、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、通常の方法で均質化される方法も提供する。
【0032】
同様に、乳化剤成分(B)を、乳化剤成分(A)とともに、またはこれとは別個に、非中和形態において、水相または油相中に初めに導入し、均質化工程に先立って一部中和を直接実施するだけであることが可能であることも発見された。
【0033】
本発明はこのようにしてさらに、水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、乳化剤成分(B)が、非中和形態において、乳化剤成分(A)とともに、またはこれとは別個に、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、水相または油相中に初めに導入され、乳化剤成分(B)の一部中和は、通常の方法で実施された均質化工程に先立って直接実施されるだけである方法も提供する。
【0034】
通常の方法における冷間調製とは、エマルジョンが、これらの成分の、ほかの場合なら必要とされる追加加熱をともなわずに、周囲温度で生成されうることを意味する。
【0035】
このために、本発明による乳化剤は、これらの周囲温度において液体の汲み出し可能な系の形態にある必要がある。周囲温度とは、ここでは約10〜50℃の範囲内の温度を意味すると理解されるが、好ましくは約15〜35℃の範囲内の中央ヨーロッパの室温である。同様に加熱もまた可能であるが、これは加工処理の点で利点を生じない。
【0036】
皮膚および毛髪の手入れおよび洗浄のための化粧品配合物の冷間調製のための、本発明による水中油乳化剤の使用が好ましいとされる。
【0037】
これらは例えば、スキンケア用クリームまたはローション、皮膚および毛髪の洗浄および手入れ用の界面活性剤をベースとする製品、サンスクリーン製品、装飾用化粧品の分野の顔料含有製品(例えば、メイクアップ、まぶた/まつげカラリング用製品)、毛髪コンディショニング用製品、ネイルケア製品、または制汗剤/デオドラントであってもよい。
【0038】
これらの配合物において、本発明による水中油乳化剤は、先行技術として当業者に公知の助剤および添加剤、例えば油およびワックス、補助界面活性剤(cosurfactant)および補助乳化剤、コンシステンシー調節剤、例えばポリマーをベースとした増粘剤、UV光保護フィルター、自己日焼け(self−tanning)剤、酸化防止剤、ヒドロトロープ、デオドラントおよび制汗剤活性成分、活性成分、染料、防腐剤、および香料とともに用いることができる。
【0039】
好ましい活性成分は、ここでは特に、トコフェロール、トコフェロールアセテート、トコフェロールパルミテート、アスコルビン酸、デオキシリボ核酸、コエンザイムQ10、レチノールおよびレチニル誘導体、ビスアボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、ヒアルロン酸、クレアチン(およびクレアチン誘導体)、グアニジン(およびグアニジン誘導体)、セラミド、フィトスフィンゴシン(およびフィトスフィンゴシン誘導体)、スフィンゴシン(およびスフィンゴシン誘導体)、シュードセラミド、精油、ペプチド、タンパク質水解物、植物抽出物、およびビタミン複合体である。
【0040】
特に好ましい冷間調製水中油型エマルジョンは、特に公知のポリマー増粘剤、例えば多糖類、特にキサンタンガム、グアールおよびグアール誘導体、アガーアガー(agar agar)、アルギネートおよびチロース、セルロースおよびセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、同様にアルキル変性糖誘導体、例えばセチルヒドロキシエチルセルロースを添加することによって安定化されてもよい。同様にポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンに加えて、アルキル変性されていてもよいカルボマー(架橋ポリアクリレート)、同様に、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、もしくはアクリルアミドプロパンスルホン酸などの成分から構成されていてもよいポリアクリルアミドまたはコポリマーを用いることが、特に好ましいとされる。
【0041】
少量の中和果実酸部分エステルを添加することによって、広く使用可能な冷間加工可能な水中油乳化剤を、弱活性〜不活性水中油乳化剤系から生成することが可能であることは、公知の先行技術から推論することはできないであろう。
【0042】
作業例(working example)は、乳化剤、例えば安定水中油型エマルジョンを生成するには不適切であることが知られている乳化活性を有するソルビタンモノ/ジ/トリエステル(INCI:ソルビタンラウレート)が、中和クエン酸部分エステルとの組合わせを通して、良好な安定化潜在能力を有する冷間処理可能なPEG−フリー乳化剤に転化することができることを証明している。同様に、水中油型エマルジョンを生成するのに適していない、ソルビタンエステルとポリグリセロール部分エステルとの乳化剤混合物は同様に、中和クエン酸部分エステルとの組合わせを通して、非常に効果的な冷間処理可能なPEG−フリー乳化剤に転化することができることも証明されている。
【0043】
ポリオール部分エステルと、特に、食品部門からその良好な生物分解性が知られているクエン酸部分エステルとの本発明による組合わせは、生態学的観点からも有利な乳化剤混合物を入手可能にし、これは広い用途多様性を有する。さらには、エマルジョンの冷間調製のための本発明による使用は、エネルギーに関して資源に富んだ研究方法を確保する。
【0044】
本発明の実施に関連する、この経済的および生態学的に極めて有利な中心的態様において、その非常に大きい利点は、冷間処理可能なPEG−フリー水中油型エマルジョンの調製および安定化において非常に明白である。
〔実施例〕
【0045】
作業例:
次のエマルジョン例は、本発明の主題を、これらの実施例に限定することなく、より詳細に例証するのに役立つ。すべての実施例における濃度データは、重量%として示される。
【0046】
これらのエマルジョンは、油相および水相が室温で組合わされるように調製した。ついで均質化を実施した。これらのエマルジョンのpHは、5.5〜6に調節した。
【0047】
用いられた安定剤は、キサンタンガムとカルボマーとの慣例的な組合わせであり、これらは、油性分散液の形態で油相へ添加した。
【0048】
これらの実施例のために、ローション様コンシステンシーを有する配合物を選択した。
【0049】
特に、これらの実施例は、酸基を含有する一部中和された乳化剤成分(B)の本発明による量を含んでいる、冷間処理可能な乳化剤混合物の使用が、どのようにして良好〜非常に良好な安定性を有する水中油型エマルジョンを得ることを可能にするかを示している。
【0050】
比較例は、本発明による乳化剤成分(B)の添加が省かれ、液体ベース成分(A)のみが用いられるならば、安定エマルジョンは得られないということを示している。
【0051】
このようにして、これらの実施例は、この出願の技術的教示を例証しており、これは、どのようにして、2つの乳化剤成分(これら自体は、エマルジョンの冷間調製に適していない)の本発明による組合わせを通して、非常に効果的な、用途の広い、冷間加工可能な水中油乳化剤を得ることができるかを例証している。
【0052】
本発明による乳化剤系の汎用性を証明するために、用いられる油を選ぶ時、高い極性を有するエモリエント(カプリル/カプリントリグリセリド)および非常に低い極性を有するエモリエント(過鉱物油(paraffinum perliquidum))に、主に頼った。いくつかの場合、中程度の極性を有するエモリエント(エチルヘキシルパルミテート)も用いた。
【0053】
エマルジョンの安定性を評価する時、不安定とは、このような系が、貯蔵時間/貯蔵条件(室温および45℃で3ヶ月;室温と−15℃との間の3回の凍結−解凍サイクル)の間、水または油の分離を示したという意味である。
【0054】
非常に良好な安定性はここでは、これらのエマルジョンが、どんな型の不安定性も、例えば相分離の兆候、粘度変化、または分散度も示さないことを意味する。
【0055】
良好な安定性を有するエマルジョンについて、同じことが当てはまる。ただし、低温テストによれば、これらのエマルジョンの白色の漸減が観察されるが、どの場合も、水または油の分離はないという制限をともなう。
【0056】
配合物例において用いられた乳化剤系の説明(1乳化剤系あたりの総パーセンテージは、各々100まで加算される)。
【0057】
乳化剤1:
乳化剤成分A:85%ソルビタンラウレート1)
8%ポリグリセリル−4ラウレート2)
乳化剤成分B:3%カリウムジグリセリルモノラウレートシトレート
極性溶解性促進剤:4%水
【0058】
比較乳化剤1:
全部が乳化剤成分Aのみ(100%まで、すなわち91.4%ソルビタンラウレートおよび8.6%ポリグリセリル−4ラウレート)。
カリウムジグリセリルモノラウレートシトレートは、クエン酸とグリセリルモノラウレートとのジエステルのカリウム塩である。
1)テゴ(TEGO)(登録商標)SML(デグッサ(Degussa))
2)テゴ(登録商標)ケア(Care)PL4(デグッサ)
【0059】
乳化剤2:
乳化剤成分A:85%ソルビタンラウレート1)
8%ポリグリセリル−4ラウレート2)
乳化剤成分B:3%カリウムジグリセリルモノステアレートシトレート
極性溶解性促進剤:4%水
カリウムジグリセリルモノステアレートシトレートは、クエン酸とグリセリルモノステアレートとのジエステルのカリウム塩である。
【0060】
乳化剤3:
乳化剤成分A:85%ソルビタンラウレート1)
8%ポリグリセリル−4ラウレート2)
乳化剤成分B:3%カリウムジラウリルシトレート
極性溶解性促進剤:4%水
カリウムジラウリルシトレートは、クエン酸とラウリルアルコールとのジエステルのカリウム塩である。
【0061】
乳化剤4:
乳化剤成分A:80%ソルビタンラウレート1)
14%ポリグリセリル−10ラウレート2)
乳化剤成分B:2%カリウムジグリセリルモノラウレートシトレート
極性溶解性促進剤:4%水
【0062】
比較乳化剤2:
全部が乳化剤成分Aのみ(100%まで、すなわち85%ソルビタンラウレートおよび15%ポリグリセリル−10ラウレート)。
【0063】
乳化剤5:
乳化剤成分A:95%ソルビタンラウレート1)
乳化剤成分B:3%カリウムジグリセリルモノラウレートシトレート
極性溶解性促進剤:2%水
【0064】
比較乳化剤3:
全部が乳化剤成分Aのみ(すなわち100%のソルビタンラウレート)。
【0065】
乳化剤6:
乳化剤成分A:98%ポリグリセリル−4ラウレート1)
乳化剤成分B:0.3%カリウムジグリセリルモノラウレートシトレート
0.2%ナトリウムラウリルスルフェート
極性溶解性促進剤:1.5%水
【0066】
乳化剤7:
乳化剤成分A:80%ソルビタンラウレート
12%ポリグリセリル−4ラウレート
乳化剤成分B:3%カリウムラウリルスルフェート
極性溶解性促進剤:5%水
【0067】
乳化剤8:
乳化剤成分A:64%ソルビタンオレエート3)
28%ポリグリセリル−4カプレート4)
乳化剤成分B:3%カリウムジグリセリルモノステアレートシトレート
極性溶解性促進剤:5%水
1)テゴ(登録商標)SMOV(デグッサ)
2)テゴソフト(登録商標)PC41(デグッサ)
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル、および
Ba)中和可能な酸官能基を有する、1つまたはそれ以上の酸部分エステル、もしくは
Bb)少なくとも一部中和された酸官能基を有する、1つまたはそれ以上の酸部分エステル、および場合により
C)極性液体溶解性促進剤
からなる、PEGフリー液体乳化剤ベースを含んでいる乳化剤系。
【請求項2】
単相である、請求項1に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項3】
液体ベース成分(A)として、
A1)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸の、ソルビトールでのエステル化によって好ましくは調製可能なソルビタンもしくはソルビトール部分エステル、
A2)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸の、グリセロール、ポリグリセロール、またはこれら2つの混合物でのエステル化によって好ましくは調製可能なグリセロールおよびポリグリセロール部分エステル、
A3)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸の、単糖類もしくは多糖類でのエステル化によって好ましくは調製可能な炭水化物エステル、好ましくはグリコシド、またはスクロースエステル、
A4)6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化アルコールもしくはアルキルハライドと、単糖類もしくは多糖類との反応によって好ましくは調製可能な(アルキルポリ)グリコシド
の群の少なくとも1つから選択された1つまたはそれ以上の乳化剤を含んでいる請求項1または2に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項4】
乳化剤成分(B)として、
B1)場合によりヒドロキシル基を含有するジ−もしくはポリカルボキシレート、硫酸化もしくはスルホン化カルボキシレート、マロネート、マレート、スクシネート、スルホスクシネート、シトレート、タルトレートであって、これらの酸基が、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化アルコールで部分的にエステル化されているもの、
B2)場合によりヒドロキシル基を含有するジ−もしくはポリカルボキシレート、硫酸化もしくはスルホン化もしくはリン酸化カルボキシレート、マロネート、マレート、スクシネート、スルホスクシネート、シトレート、タルトレートであって、これらの酸基が、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸を有する、好ましくはグリセロール、ポリグリセロール、および/またはソルビトールのポリオール、ポリオール部分エステルで部分的にエステル化されているもの、
B3)ポリオール、好ましくはグリセロール、ポリグリセロール、およびソルビトールであって、2〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化モノ−、ジ−、もしくはポリカルボン酸で部分的にエステル化されているもの、ただし、この分子中に中和可能な遊離酸基が存在するという条件があるもの、
B4)ヒドロキシ−官能性モノ−、ジ−、もしくはポリカルボン酸であって、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化カルボン酸と少なくとも一部反応させられたヒドロキシル基を有するもの、
B5)N−アシルアミノ酸、例えばサルコシネート、グルタメート、アスパルテートであって、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化基を含んでいるもの、
B6)カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、もしくはホスフェートであって、6〜22炭素原子の鎖長を有する、脂肪族もしくは芳香族の線状もしくは分岐の、場合により不飽和および/またはヒドロキシ−官能基化基を含んでいるもの
の群の少なくとも1つから選択された1つまたはそれ以上の乳化剤を含んでいる請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項5】
液体乳化剤成分(A)として、ソルビタンエステルおよびポリグリセロールエステルを含んでいる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項6】
液体乳化剤成分(A)として、ソルビタンラウレートおよびポリグリセロールラウレートを含んでいる、請求項5に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項7】
乳化剤成分として、
(Ba)中和可能な酸官能基を有するクエン酸部分エステル、もしくは
(Bb)少なくとも一部中和された酸官能基、好ましくはナトリウムおよび/またはカリウム塩を有するクエン酸部分エステル
を含んでいる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項8】
乳化剤ベース(A)を基準にして、多くても20重量%の量で乳化剤成分(B)を含んでいる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項9】
乳化剤系(A)および/または(B)の疎水性エステル基が、ラウリン酸またはラウリンアルコール基である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項10】
同時使用された液体極性溶解性促進剤(C)が、水、グリコール、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、アルコールの群から選択された少なくとも1つの化合物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系。
【請求項11】
水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル(A)からなる、PEG−フリー液体乳化剤ベース、および
B)1つまたはそれ以上の中和可能な酸官能基を有する酸部分エステル(Ba)、および場合により
C)極性溶解性促進剤、および
D)酸基Ba)の少なくとも一部中和に十分な量の塩基
の、請求項1〜10のいずれか一項に記載の本発明による乳化剤の組合わせを用いて、
全体のエマルジョンの油相および水相が、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、慣例的な方法で均質化される方法。
【請求項12】
水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、
A)1つまたはそれ以上のポリオール部分エステル(A)からなる、PEG−フリー液体乳化剤ベース、および
B)少なくとも一部中和された酸官能基(Bb)を有する、1つまたはそれ以上の乳化剤、および場合により
C)極性溶解性促進剤、
の、請求項1〜10のいずれか一項に記載の本発明による乳化剤の組合わせを用いて、
油相および水相が、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、慣例的な方法で均質化される方法。
【請求項13】
水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、非中和乳化剤成分(Ba)が、乳化剤成分(A)とともに、またはこれとは別個に、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、水相または油相中に初めに導入され、乳化剤成分(Ba)の一部中和は、通常の方法で実施された均質化工程に先立って直接実施されるだけである方法。
【請求項14】
水中油型エマルジョンの冷間調製方法であって、非イオン性乳化剤成分(A)が、油相へ添加され、少なくとも一部中和された乳化剤成分(Bb)が、別個に水相へ添加され、これら2つの相が、場合により助剤および添加剤の同時使用をともなって、通常の方法で均質化される方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の乳化剤系を含んでいる、水中油型エマルジョン。
【請求項16】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法によって調製可能な水中油型エマルジョン。
【請求項17】
場合により分散固体を含んでいる、化粧品、皮膚用、または製薬調製物の生成のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系の使用。
【請求項18】
家庭用および工業用の、場合により分散固体を含んでいる、手入れおよび洗浄用組成物の生成のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の冷間処理可能な液体水中油型乳化剤系の使用。
【請求項19】
化粧品、皮膚用、または製薬用途のための、場合により分散固体も含んでいる、請求項15または16に記載の水中油型エマルジョンの使用。
【請求項20】
家庭用および工業用の手入れおよび洗浄用組成物における、場合により分散固体も含んでいる、請求項15または16に記載の水中油型エマルジョンの使用。

【公開番号】特開2007−119460(P2007−119460A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287706(P2006−287706)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(500442021)ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】