説明

ポリカチオン性炭水化物のワクチンにおける免疫賦活剤としての使用

【課題】免疫賦活剤、これをミクロスフェア又はリポソームなどの粒子内に含むワクチン組成物、該免疫賦活剤を用いた治療方法及びワクチンの製造方法を提供する。
【解決手段】キトサンなどのポリカチオン性炭水化物又はその薬学的に許容しうる誘導体を免疫賦活剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活剤として使用するためのポリカチオン性炭水化物である化合物及び当該化合物を含むワクチンに関する。更に本発明は、前記の化合物を含む医薬組成物を使用した個体の治療方法及び当該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン接種の分野における主要目的は、非−非経口的(non-parenteral)免疫化療法であって、従来の皮下注射及び筋肉注射により誘発される全身性免疫に匹敵するレベルの全身性免疫の誘導を促進する免疫化療法の開発である。
鼻咽頭路及び気道の肺領域は、ペプチド性薬剤及びワクチンの全身性送達の潜在的な標的を表している。治療薬を鼻へ比較的容易に吸入又は導入することができることは、予想される患者における薬剤服用遵守の点でこれらの免疫化様式を魅力的なものとしている。更に呼吸器粘膜は、免疫化、特に侵入口としての粘膜表面に影響又は利用する病原体に対して、その他の非−非経口部位よりも特定の形態学的、生理学的及び免疫学的利点を提供する。これは、通常、病原体に対して効果的なワクチン接種は、粘膜が、局所的に産生される分泌性IgA(sIgA)アイソタイプの抗体を用いて適切に保護されることを要求するからである。ワクチンの非経口投与後、通常、粘膜表面はIgAによっては十分に保護されないが、抗原性物質の粘膜関連リンパ組織(MALT)中の免疫応答性要素への送達の成功が、免疫系の免疫アーム(mucosal arm)の強力な刺激を引き起こすことが現在明らかである。通常の粘膜免疫系(CMIS)によって、幾つかの解剖学的に不同性の粘膜表面を、単一部位におけるワクチンの粘膜投与を通して防御することが可能である。粘膜ワクチン接種は、抗原性物質の上皮下コンパートメントから全身性免疫応答性組織、例えば脾臓へのトランスロケーションによって、ある程度の全身性免疫を局所応答と協力して誘導することができるという追加の利点を提供する。
【0003】
非−非経口免疫化を支持する補給管理的(logistical)かつ免疫学的な要因にもかかわらず、抗原タンパク質の単純な粘膜適用、例えば胃腸管又は気道における適用は、ワクチン接種の点では通常無効である。上皮下コンパートメントへの不充分な吸収と組み合わせた酵素的又は化学的破壊は、粘膜投与されるワクチンが通常、ある形態のアジュバント又は送達ビヒクルを要求することを決定づけている。1つのアプローチは、抗原物質を微粒子状高分子担体、例えばポリ−DL−ラクチド(PLA)ミクロスフェア内にカプセル化することである(Vaccine 1994, 12, 5 11)。そのような手順は、不安定なワクチンの管腔による破壊(lumenal degradation)からの保護並びに粘膜性及び全身性コンパートメントへの吸収の増強に役立つ(J.H. Eldridge ら, Seminars in Hematology, (1993), 30, 16-25)。マイクロカプセル化は、可溶性の抗原分子を粒子種へ転換し、ワクチンの抗原提示細胞(APC)(Y. Tabata ら, Adv. Polym. Sci. (1990), 94, 107-141, L. Vidard ら, J. Immunol. (1996), 156, 2809-2818, N. Van Rooijen, Immunol. Today (1990) 11, 436-439) 又はリンパ濾胞中のマイクロフォールド細胞(microfold cell)(M-cell) (R.I. Walker ら, Vaccine, 12, 387, 1994, D.T. 0' Hagan ら,, Vaccine, 1989, 7, 421-424, P.G. Jenkins ら, J. Drug Targetting, 1995, 3, 79-81)への取り込みを促進することによりアジュバンタイズ(adjuvantise)であろう。
比較的調査中であるけれども、鼻腔内(i.n.)経路は、ワクチンの粘膜送達に対して魅力的なものである。鼻の上皮はアクセス可能であるが、高分子量分子に対して排他的ではない。
呼吸器上皮をカバーする粘膜ブランケット(mucus blanket)の厚さは、その他の粘膜、例えば500倍の厚さを有する腸と比較してかなり薄い。タンパク質分解性酵素の実質的に減少した濃度及び極端なpHは、消化管と比較して気道に存在する。
【0004】
更に、鼻関連リンパ組織(NALT)はリンパ上皮を有し、これは腸粘膜と同様に、選択的な抗原取り込みのためのM細胞を含んでいる(P. Brandenburg, Immunology of the Lung and Upper Respiratory Tract, (ed. Bienenstock J.) McGraw-Hill, New York, 1984, 28-95)。したがって、NALTは、抗原監視並びに粘膜性及び全身性免疫応答の点でその他のMALT、例えば腸関連リンパ組織(GALT)と類似の役割を果たしている。
ポリカチオン性炭水化物、例えばキトサン及びこれらのタンパク質の種々の誘導体又は複合体は、活性な薬剤の、障壁、例えば粘膜をこえての送達を増加させるための吸収増強剤として、医薬組成物中で使用されてきた。しかしながら、本件出願人は、これらの化合物は、ワクチン組成物の内容物中で使用したときにアジュバントとして作用し、送達される抗原作用物質に対する免疫応答の上昇を生じることを見出した。応答レベルの上昇は、吸収増強効果の結果として期待されるよりもかなり長期間持続する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明にしたがい、免疫賦活剤として使用するためのポリカチオン性炭水化物又は薬学的許容しうるその誘導体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、第1日及び第67日に、10Lfの鼻腔送達したマイクロカプセル化ジフテリア毒素及び遊離ジフテリア毒素に対するマウスの血清免疫応答を示している。第一のカラムはキトサンを用いないミクロスフェアについての結果を示している。第二のカラムはキトサンを用いたミクロスフェアの結果を示している。第三のカラムは遊離のジフテリア毒素単独で用いた場合の結果を示している。
【図2】図2は、本発明の組成物中にペスト菌の1μg V及び5μg F1抗原を単一鼻腔内適用した後の特定の血清抗体応答を示している。
【図3】図3は、キトサンの存在下又は非存在下における、遊離マイクロカプセル化BSAの筋肉内注射後86日までの特定の血清抗体応答を示している。
【図4】図4は、キトサン誘導体でカチオン性に修飾したナノパーティクルの表面に吸収させた鼻腔送達ジフテリア毒素に対する血清免疫応答を示している。
【図5】図5は、本発明における使用のために生成した粒子についての光子相関分光法(PCS)の結果を示している。図5は、数平均直径(dn)及び容量平均直径(dv)が共に約150nmであることを示している。
【図6】図6は、筋肉内(i.m.)経路で適用した種々の製剤中のジフテリア毒素(DT)に対する免疫応答を示している。P101はプルロニック101であり、P121はICI Ltd, UKから入手可能なブロックコポリマーである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用するとき用語「免疫賦活剤」とは、宿主動物の免疫系を刺激するアジュバントであって、投与されて、これにより、宿主動物へ投与された防御抗原により生じる防御効果を防御抗原の単独投与による効果と比較して増加させるものを意味する。
表現「ポリカチオン性炭水化物」には、一般式CX(H2O)Yで示される繰り返し単位を有する高分子化合物が含まれる。これらには、複数のカチオン性官能基又は基、例えばアミノ基又はアミド基(これらは、例えば四級アンモニウム化合物などのカチオンを容易に形成する点で、自然状態ではカチオン性である)が含まれるだろう。
ポリカチオン性炭水化物の特定の例には、免疫賦活剤キチン誘導体、例えばキトサン又は化学的に修飾された形態、例えば可溶性形態、カチオン性ポリペプチド、カチオン性ポリアミノ酸及び四級アンモニウム化合物又はこれらの混合物が含まれる。
【0008】
ポリカチオン性炭水化物の水溶性誘導体の特定の例は、水溶性キチン誘導体、例えばアルキル化キトサン誘導体及びこれらの塩である。
これらの化学製品の例には、トリメチルキトサンクロライド、カルボキシメチルキトサン、N−カルボキシメチルキトサン及びポリエチレングリコールキトサンが含まれる。N−トリメチルキトサンクロライド(TMC)は、粘膜膜をこえるペプチド治療法の強力な吸収増強剤として言及されている(Kotze, A. F. ら. Pharm Res. (1997) -14:1197-1202)。キトサンとは対照的に、TMCは、全ての胃腸管pH環境において水溶性である。更に、TMCはタイトジャンクション(tight junctions)を一時的に開口する能力を有する。重要なパラメーターはトリメチルかの程度であると考えられる。
本発明に使用されるキトサン誘導体のその他の例には、キトサンクロライド及びキトサングルタメートが含まれる。
動物、特に哺乳類における防御的免疫応答を引き起こすことができ、本発明の免疫賦活剤との組合せの使用により有益である、生物学的に活性な薬剤は、当該技術分野において周知である。これらには、抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドをコードし、「ネイキッドDNA(naked DNA)ワクチン」として知られる核酸配列が含まれる。生ワクチン、例えばDNA又はRNAウイルスワクチンも、本発明の免疫賦活剤との組合せで使用することができるだろう。
本明細書で使用する表現「ポリペプチド」は、タンパク質又はこれらのエピトープ断片(epitopic fragment)を含んでいる。
適切なポリペプチドは、サブユニットワクチン、例えば破傷風毒素、ジフテリア毒素及び炭疽菌(Bacillus anthracis)防御抗原(PA)である。
生物学的に活性な薬剤の特定の例は、ペスト菌(Yersinia pestis)に対する防御免疫応答を引き起こすことができるものである。適切にはその薬剤はサブユニットワクチンであり、例えばWO 96/28551に記載されているものである。これに記載され、特許請求されているワクチンは、ペスト菌のV抗原若しくはその免疫学的に活性な断片又は変異体及びペスト菌のF1抗原若しくはその生物学的に活性な断片又はこれらの変異体の組合せを含んでいる。
【0009】
本明細書で使用するとき、用語「断片」とは、少なくとも1つの抗原決定基を含む基本配列の一部を意味する。これらは、欠失変異体であってもよい。配列の1以上のエピトープ領域を互いに結合してもよい。
表現「変異体」とは、核酸配列であって、当該配列内の1以上のアミノ酸が別のアミノ酸に置換されている点で、当該変異体が由来する塩基配列とは異なる核酸配列を意味する。広範に類似の特性を有する異なるアミノ酸で置換されている場合、そのアミノ酸置換は「保存的」であるとみなされる。非保存的置換では、あるアミノ酸が異なる種類のアミノ酸で置換されている。大まかに述べると、ポリペプチドの生物学的活性を変化させることことなしに非保存的置換を行うことはほとんど可能ではないだろう。適切な変異体は、塩基配列に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%及び特に好ましくは90%相同であろう。本例における相同性は、例えばKtuple:2、ギャップペナルティー(gap penalty):4、ギャップ長さペナルティー:12、標準PAMスコアリング(scoring)マトリックスを用いたLipman-Pearsonアルゴリズムを使用して判断することができる(Lipman, D.J. 及び Pearson, W.R., Rapid and Sensitive Protein Similarity Searches, Science, 1985, vol. 227, 1435-1441)。
以前に本発明者等は、鼻腔内(IN)経路は、組替えサブユニットワクチン(疾病の原因生物:ペスト菌由来のF1及びV)の非経口投与に対して、高度に効果的な非観血的代替物であることを証明した(Eyles, J. E. ら. Vaccine (1998) 16:698-707; J. Drug Targeting Nasal delivery of vaccines) 1996 Alpar & Almeida)。画分1(F1)サブユニット(分子量15.5kDa)は、細菌を取り囲む被膜に由来する。溶液中、F1は、疎水性のために、高分子量(>200000kDa)の多量体複合体へ凝集する傾向にある(Voronisov, E. D. ら Biomed. Sci. (1990) 1:391-396 及び Miller, J. ら FEMS Immun. Med. Micro. (1998) 21:213-231)。V抗原(分子量37kDa)は、37℃で細菌により分泌されるタンパク質である(Leary, S. E. C. ら. Infect. Immun. (1995) 63:2854-2858)。Vは、組織サイトカインレベルの調節を通して局所的抗炎症作用を発揮する病原性因子である(Nakajima, R. 及び R. R. Brubaker Infect. Immun. (1993) 61:23-31)。F1及びVは共に防御的であり、組み合わせて「相乗効果」として証明されている(Williamson, E. D. ら. Vaccine (1996) 14:1613-1619)。疫病についての伝統的に死菌させた全細胞ワクチンは、一過性の局所及び全身性副作用の不満足な発生を有するが、より重要なことに、風媒性飛沫により伝達する疾患の肺炎形態から個体を保護できないだろう(Perry, R. D. 及び J. D. Fetherston. Clin. Microbiol. Rev. (1997) 10:35-66)。組み合わせたF1及びVの筋肉内注射(Williamson, E. D. ら. Vaccine (1997) 15:1079-1084)又はF1及びVを同時にカプセル化した微粒子の鼻腔内投与(Eyles, J. E. ら. Vaccine (1998) 16:698-707)は、ペスト菌による致死的な吸入性攻撃から実験動物を防御することができる。
【0010】
これらの実験後、F1及びVに対する高い血清IgG力価形態の全身性免疫は防御に対して決定的であることが観察された。最近の研究において、本件出願人は、3つの異なるTMC誘導体(クウォーターナイゼーション(quaternization)の増加するレベル:20、40及び60%)を含む種々の化合物の存在下及び非存在下でF1(5μg)及びV(1μg)を鼻腔滴下し、これらの処置により生じた体液性免疫応答とキトサン自体の同時投与により誘起された体液性免疫とを比較した。結果は、誘導体化の程度が高くなる程、免疫応答が上昇することを示している。したがって、TMC60は最も好ましい形態である。
更なる側面において、本発明は、病原体に対して動物を防御する方法であって、前記動物の免疫系を刺激して前記病原体に対して防御的である応答を生じさせることができる防御的薬剤(protective agent)を前記動物へ投与する工程を含み、免疫賦活薬がポリカチオン性炭水化物を含んでいることを特徴とする方法を提供する。
適切な動物は、ヒトを含む哺乳類である。
アジュバント又は免疫賦活薬は、前記の防御的薬剤と同時に、適切には組み合わせた製剤で投与されるだろう。代替として、別々に投与してもよい。特定の投与条件の選択は、防御的薬剤の性質、治療する状態、動物の年齢及び大きさなどの因子に依存して変化するだろう。
しかしながら、好ましくは本発明の免疫賦活薬は、防御的薬剤と共に単一の医薬組成物で動物へ投与されるだろう。
適切には、組成物は薬学的に許容しうる担体又は希釈剤を更に含んでいるだろう。これらは、当該技術分野において既知の固体又は液体担体であろう。担体又は希釈剤は、防御的薬剤の特定の性質及び使用する特定のポリカチオン性炭水化物に依存して変化するだろう。これらには薬学的に許容する溶媒、例えば、防御的薬剤及びポリカチオン性炭水化物を溶解する水が含まれるだろう。このタイプの製剤は、防御的薬剤自体が水溶性であるときに特に適している。
このタイプの溶液形態の組成物は、適切には、0.1〜30%(w/v)、好ましくは1〜20%(w/v)のポリカチオン性炭水化物を、その溶解性に依存して含んでいる。
【0011】
組成物は、非経口投与、例えば筋肉内(i.m.)投与に適切に適合し、動物の粘膜表面への投与に適切であろう。
粘膜表面への投与は、経口適用、肺適用、例えば気管内投与、又は、特に鼻腔内適用により達成されるだろう。特に、本発明の組成物は鼻腔内径路で投与される。
しかしながら、多数の適用に対しては、防御的薬剤及びポリカチオン性炭水化物免疫賦活剤を高分子物質中でマイクロカプセル化すること、すなわち担体は粒状担体、例えばミクロスフィア又は微粒子(マイクロカプセルとしても知られる)、ナノカプセル又はリポソームであることが好ましいことが見出された。
好ましい態様において、免疫賦活剤として作用することができるポリカチオン性炭水化物は医薬組成物の形態で提供され、前記医薬組成物は、
(i)投与される動物において免疫応答を引き起こすことができる生物学的に活性な薬剤、
(ii)粒子を形成することができる第一の物質及び、
(iii)前記ポリカチオン性炭水化物を含む粒子、
を含んでいる。
粒子は、粘膜表面への投与に適合した組成物へ適切に組み込まれる。更に粒子は、非経口経路、例えばi.m.注射を使用した投与に適切な組成物へ組み込まれてもよい。
適切には、粒子には、微粒子又はミクロスフェア又はリポソームが含まれる。
本発明の組成物に使用される第一の物質は、ミクロスフェア又はリポソームの形成に適している。リポソーム形成は、当該技術分野で理解されるように脂質及び/又は界面活性剤タイプの分子の使用を要求する。
しかしながら、好ましくは本発明の組成物はミクロスフェアを含んでいる。この場合、第一の物質はポリマーを含んでいる。低、中又は高分子のポリマーであってもよい。低分子量ポリマーの例は、0.1〜10kDa、より好ましくは1〜5kDa、典型的には約2〜3kDaの分子量を有するポリマーである。
【0012】
筋肉内投与用の破傷風ワクチンのカプセル化における高分子量ポリマーの使用が記載されている(Vaccine 1994, 12, 4, 299-306)。鼻腔内適用されるマイクロカプセル化ヒマ毒素ワクチンの製剤化も記載されている(Vaccine 1994, 14, 11 1031)。しかしながら、この場合、高分子量ポリマーマイクロカプセル(94kDa)は、低分子量(72kDa)のコポリマーから製造したマイクロカプセルよりも効果が低い。
本発明の組成物において第一の物質として使用するポリマー物質は、94kDaをこえる高分子量、例えば100kDaをこえる高分子量を有している。
本発明の組成物における使用に特に適切な第一のポリマー物質は、ポリ−(L−ラクチド)又はPLAを含んでいるが、当業者に既知のその他の高分子量ポリマー物質、例えばポリ(乳酸/グリコール酸)PGLA、ポリシアンアクリレート(polycyanacrylate)、ポリアンヒドライド(polyanhydride)又はポリカプロタクトン(polycaprotactone)を使用してよい。
適切には、ポリカチオン性炭水化物は、組成物中に0.1%〜10%(w/w)の量で存在している。前記の粒子組成物における使用に適切なポリカチオン性炭水化物の特定の例には、キチン誘導体、例えばキトサン、カチオン性ポリペプチド、カチオン性ポリアミノ酸及び四級アンモニウム化合物又はこれらの混合物が含まれる。
更に組成物は、エマルジョンを安定ささせる薬剤、例えばポリビニルアルコール又はメチルセルロースを適宜含んでいてもよい。
組成物は、適切には直径0.1μm〜10μmの平均サイズであろう。
適宜、ワクチン組成物は、投与される生物学的に活性な物質に対する免疫応答を増強させるための追加の慣習的アジュバントを更に含んでいてもよい。
適切なアジュバントには、薬学的に許容しうるアジュバント、例えばフロイントの不完全アジュバント、アルミニウム化合物、及び、好ましくは粘膜応答を上方制御することが知られているアジュバント、例えばコレラ毒素(CT)の無毒性五量体BサブユニットであるCTBが含まれる。
【0013】
更なるアジュバントが、英国特許出願第9906694.6 及び 9906696.1に由来する同日の同時係属している国際出願に記載され、かつ、特許が請求されている。特に、これらの化合物は、
A)ポリアミノ酸、
B)ビタミン又はビタミン誘導体、
C)カチオン性プルロニック(cationic pluronic)、
D)クラスレート(clathrate)、
E)錯化剤、
F)セトリミド、
G)S−層タンパク質(S-layer protein)又は、
H)メチル−グルカミン(methyl-glucamine)、
である。
本明細書で使用するとき、表現「カチオン性プルロニック」には、カチオンを含むプルロニック及びカチオン部分に結合するように処理されたプルロニック(カチオン化プルロニック)が含まれる。
適切な生物剤(i)には、薬剤及び治療分子、例えばワクチン、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、駆虫剤並びに治療及びワクチンに使用するオリゴヌクレオチドが含まれる。
しかしながら、好ましい態様において、生物学的に活性な薬剤は、投与する動物において免疫応答、特に好ましくは防御性免疫応答を引き起こすことができる薬剤である。したがって、組成物は、オリゴヌクレオチド又はその他の核酸配列に依存するものを含むワクチンとして適切に使用される。この場合、化合物A〜Hの免疫賦活特性を使用する。
適切には、前記のアジュバント化学製品は水溶性である。適切には、組成物は、非−非経口投与、例えば粘膜表面への投与、又は皮膚への局所適用に適している。特に好ましい組成物は、粘膜表面への投与に適している。
【0014】
代替として、組成物は、非経口投与、例えば筋肉内(i.m.)投与に適している。
粘膜表面への投与は、経口適用、肺適用、例えば気管内投与、特に鼻腔内適用により行われるだろう。特に、本発明の組成物は、鼻腔内径路により投与される。
前記カテゴリー(A)のアジュバント化学品の例には、ポリアミノ酸、例えばポリオルニチン、例えば分子量5〜150kDaのものが含まれる。
前記カテゴリー(B)のアジュバント化学品の例には、ビタミン又はビタミン誘導体、例えばビタミンE又はビタミン誘導体、例えばビタミンE又は誘導体、例えばビタミンE TPGS(d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)が含まれる。
前記カテゴリー(C)の特定のカチオン性プルロニックは、正に荷電した、特にNH2+基を有するブロックコポリマー又は界面活性剤である。これらは商業的に入手可能であり、例えばICI Ltd (UK)より商品名P101及びP121として販売されている。
前記カテゴリー(D)のクラスレートの例には、特定のシクロデキストリン及びその誘導体、例えばジメチルβシクロデキストリンが含まれる。
前記カテゴリー(E)の適切な錯化剤は、胆汁塩、特に脂肪酸、例えばデオキシコール酸と共に複合体を形成するものである。
カテゴリー(F)のセトリミドの例は、防腐剤として使用される四級アンモニウム化合物である。
特に本発明の組成物は、前記のカチオン性プルロニックを更に含んでいてもよい。これらは粒子内若しくは投薬混合物の成分として又はその両方で含まれていてもよい。特に好ましい態様において、カチオン性プルロニックは、微粒子及び特にナノスフェアに形成され、次いでポリカチオン性炭水化物、例えばキトサンで被覆される。次いで、生物学的に活性な物質を被覆粒子へ吸収させる。
これらは、その他の既知の組成物成分、例えば着色剤及び防腐剤及び特にセトリミドを含んでいてもよい。これらは、適切には、0.1〜0.7%(w/v)の量で存在する。
【0015】
特定の態様において、組成物中で使用されるミクロスフェア又はリポソームは、S−層タンパク質、特に生物学的に活性な薬剤が防御的免疫応答を生じさせる細菌に由来するS−層タンパク質を更に含んでいてもよい。これらはミクロスフェア又はリポソームの全体に分配されるが、好ましく表面上に被覆される。リポソームの安定性は、前記の被覆により増加させることができることが示されている(Sleyr ら, Crystalline bacterial cell surface proteins. Biotechnology Intelligence Unit, 1996, R.G. Landes Company and Academic Press Inc.)。S−層タンパク質は、ほとんどの細菌の表面上で見出され、S−層として知られる規則的な二次元アレイを形成する。単離したS−層タンパク質は、懸濁液中及び構造体、例えばリポソームの表面上に、エントロピー駆動(entropy driven)の単分子アレイを形成することができる。
前記の粒子組成物は、鼻腔内適用に特に適している。これらは、例えば凍結乾燥により適宜保存された微粒子自体を含んでいてもよく、又は、微粒子を薬学的に許容しうる担体又は賦形剤と組み合わせてもよい。適切な担体の例には、当業者に理解される固体又は液体担体が含まれる。
更に本発明は、薬学的治療ワクチンを製造する方法であって、ポリカチオン性炭水化物、例えばキトサンの存在下、前記の生物学的に活性な薬剤を、高分子量、特に100kDa以上の分子量を有する第一のポリマー物質中でカプセル化する工程を含む方法を提供する。ポリカチオン性炭水化物は、微粒子内又は表面上に組み込まれ、好ましくは表面上を含む微粒子の全体に分配されるだろう。
幾つかのケース、特にポリカチオン性炭水化物が不溶性の場合、前もって形成した粒子の表面に吸収させることが好ましいだろう。生物学的に活性な薬剤(例えば防御抗原)を、形成した粒子へロードすることもできる。
リポソームを形成する方法は、当該技術分野において周知である。これらの方法には、当該技術分野において周知の脱水脂質フィルムの水性媒体への分散、エマルジョン技術及び凍結乾燥法が含まれる。
【0016】
本発明の微粒子は、二重エマルジョン溶媒蒸発法を使用して適切に製造される。要約すると、生物学的に活性な薬剤(適切には凍結乾燥状態にある)を、第一のポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)及びポリカチオン性炭水化物、例えばキトサンの水性溶液中に懸濁する。有機溶媒、例えばジクロロメタン中の高分子量ポリマーの溶液を、激しく攪拌しながら添加する。得られたエマルジョンを、適宜ポリカチオン性炭水化物を含み、二次水性層へ激しく攪拌しながら滴下する。添加後、有機溶媒を蒸発させ、得られたミクロスフェアを分離する。
好ましい生物学的に活性な薬剤及び第一の物質及びポリカチオン性炭水化物は前記の通りである。
組成物は、活性な薬剤の適切な容量単位を適切に含んでいるだろう。これは、使用する活性な薬剤の性質、患者の性質、治療する状態及びその他の臨床的因子に依存して変化するだろう。しかしながら、一般的に、本発明の組成物は約2〜10wt%の活性成分を含むだろう。
本発明の組成物を含む微粒子において、第一の物質、特に高分子量ポリマーの組成物中での量は、組成物の70〜99wt%のオーダーであり、適切にはポリマー成分の90〜99wt%が第一のポリマーであろう。ポリカチオン性炭水化物、例えばキトサン又はキトサンとその他の正に荷電した物質分子との混合物は、組成物の0.1〜10wt%のオーダーであろう。
使用において、経鼻投与に適切な投与量は0.05gのオーダーであろう。
したがって、更なる側面において、本発明は、哺乳類を感染に対して防御する方法であって、前記ワクチン組成物を、哺乳類の粘膜表面、特に鼻の表面に投与する工程を含む方法を提供する。
本件出願人は、組み合わせたサブユニットワクチンの鼻腔内(i.n.)投与により、ペスト菌の吸入攻撃から実験動物を防御することができることを実証した。
これらのサブユニットのアジュバンダイゼーション(adjuvantisation)は、サブユニットのマイクロカプセル化であるので免疫応答の増強において有利である。本発明の組成物において利用される高分子量ポリマーは、特に鼻腔内送達に十分に適したものであろう。
しかしながら、代替として、本発明の免疫賦活剤を筋肉内(i.m.)用製剤として投与してもよく、これは長期間の有益な作用が注目される。
本発明は、添付図面を参照した実施例により詳述されるだろう。
【実施例】
【0017】
実施例1
ジフテリア毒素のマイクロカプセル化
分子量100kDaのポリ−L−ラクチド(Polysciences Inc. USA)を、改変した二重エマルジョン溶媒蒸発法(Y. Ogawa ら, Chem. Pharm. Bull., 36 (1988) 1095-1103)において使用した。要約すると、ジフテリア毒素を含む0.75%(w/v)キトサン溶液の1.5mlを、5mlのHPLCグレードのジクロロメタン(DCM)中に溶解した200mlの100K PLAポリマーと共に、Silversonホモジナイザー(Silverson, UK)を用いて1分間激しく混合した。得られた一次エマルジョンを、0.5(w/v)キトサンを含む二次水相(75ml)へ一滴ずつ添加し、Silversonホモジナイザーを用いて5分間ホモジナイズした。この二次相を、ジクロロメタンが蒸発するまで一晩かけて穏やかに攪拌した。ミクロスフェアを遠心分離により取り出し、二重蒸留水で3回洗浄し、次いで凍結乾燥した。
【0018】
実施例2
免疫化の研究
Balb/c雌マウス(25g、6週齢)を、鼻腔内投与手順のために、酸素(300cm3-1)及び亜酸化窒素(100cm3-1)中の3%ハロメタン(RMB Animal Health Ltd., UK)の吸入ガス混合物を使用して軽く麻酔した。マウス群に以下のいずれかの処置を施した。
(1)キトサンを含まないことを除き実施例1の記載されるようにして調製したミクロスフェア、
(2)実施例1の記載されるようにして調製したミクロスフェア、及び、
(3)遊離のジフテリア毒素溶液
それぞれを、マイクロピペットを使用して50μlのPBS中で投与した。各マウス群に、第1日及び第67日に、マイクロカプセル化ジフテリア毒素又は遊離のジフテリア毒素の10Lf単位を与えた。血清免疫応答をモニターした。実験第14、28、95及び151日に、尾静脈血液サンプルをすべての動物から採取した。血清サンプル中のIgG及びIgA抗体アイソタイプの滴定は、ELISAを用いて達成した。要約すると、個々の血清サンプルを、ジフテリア毒素であらかじめ被覆したマイクロタイタープレートに等分した。血清抗体の結合は、マウスIgG(Sigma A4416)及びAgA(Sigma A4789)に対するペルオキシダーゼ標識二次抗体を用いて検出した。抗体の力価は、滴定した未処置の血清の最大吸光度(OD)よりも大きい吸光度を与える血清の最大希釈として推定した。これにより、各群についての平均力価±標準偏差(SD)を導いた。
結果を図1に示す。151日間のスケジュールの全体を通して、キトサンの非存在下でマイクロカプセル化抗原を投与したマウス(群1)は、遊離ワクチンで処置した動物(群3)と比較して、ジフテリア毒素に対する実質的に上昇した血清IgG力価を維持した。しかしながら、群2の動物のジフテリア毒素に対するIgG力価レベルは一貫して高く、このことは微粒子中のキトサンの存在が毒素に対する免疫応答を増強することを示している。
【0019】
実施例3
鼻腔内投与したサブユニットワクチンに対する免疫応答を増強するための、吸収増強剤の使用
5匹(n=5)のBALB/cマウスからなる5つの群を、混合したF1(5μg)及びV(1μg)で鼻腔内免疫した。5つの処理群に、(1)リン酸緩衝食塩水(pH7.4)、(2)0.2%(w/v)キトサンHCl、(3)0.2%(w/v)TMC60(4)0.2%(w/v)TMC40又は(5)0.2%(w/v)TMC20のいずれかと共にサブユニットを与えた。更なる動物群は対照として働いた。
マウスを、鼻腔内(i.n.)投薬手順のために、酸素(300cm3-1)及び亜酸化窒素(100cm3-1)中の3%(v/v)ハロメタン(RMB Animal Health Ltd., UK)の吸入ガス混合物を使用して軽く麻酔した。各マウスに、容量15μlの液体を、マイクロピペットを用いて投与した。尾静脈血液サンプルを第14日に採取し、間接的ELISAプロトコル(Eyles, J. E. ら. Vaccine (1998) 16:698-707)を用いて抗V及び抗FI IgG抗体の存在について分析した。
結果(図2)は、TMC60又はTMC40との同時投与は、リン酸緩衝食塩水又はキトサンHCl中のF1及びVの鼻腔内(i.n.)滴下により生じた体液性応答をこえて増強することを示している。TMC20はVに対する力価を改善しなかった。しかしながら、F1に対する免疫作用は、更に置換したキトサン誘導体(TMC40及び60)の免疫作用と比較可能であった。
【0020】
実施例4
免疫賦活剤の筋肉内投与
ウシ血清アルブミン(BSA)を組み込んだミクロスフェアを、キトサンの存在下又は非存在下、二重エマルジョン法(ジクロロメタン/水)を用いて、2kD、50kD又は100kD(又はこれらの組合せ)の分子量を有するポリ−L−乳酸から調製した。これらの調製物を、容量50μlの滅菌PBS中、単一筋肉内投与量で投与した(研究の第0日、15μg BSA当量、典型的には1mgミクロスフェア)。血液サンプルを、その後の多数の時点でマウスから採取し、血清を抗BSA IgGレベルについてELISAにより分析した。
結果を図3に示す。図中、以下のキーを適用した。

M=筋肉内
F=遊離BSA
E5=質量比1:1の2kD PLA:100kD PLAから構成されるミクロスフェアへカプセル封入したBSA
LC=低分子量キトサン
驚くべきことに、キトサンの存在下の遊離抗原+マイクロカプセル化BSAは、遊離の抗原とこれらの成分のいずれか1つと遊離抗原との組合せ又は単独投与された遊離抗原を含むその他の投与よりもインビボで良好に機能することが見出された。
【0021】
実施例5
キトサンを用いた表面修飾
500mgのPDLA(124kD)をジクロロメタン(DCM)中に溶解した。この溶液に、プローブ−超音波処理(probe-sonicated)の間、2.5%(w/v)ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液を添加した。得られた一次エマルジョンを、ホモジナイズ(Silverson SL-2 ホモジナイザー)下、1.5%(w/v)PVAのコールド(colled)水溶液20mlに添加して二次エマルジョンを形成した。更に水10mlを得られたエマルジョンに添加し、製剤を一晩攪拌した。粒子を洗浄し、蒸留水を用いた15000rpmで3×20分の遠心分離により集め、最後に凍結乾燥した。
粒子のバッチ4つを前記と同様にして調製した。これらのうちの3つを、N−カルボキシメチルキトサン(Canada)、キトサンクロライド又はキトサングルタメート(Pronovo, Norway)のいずれかによって、関連するキトサン10mgを1mlの水に懸濁した粒子90mgへ添加することにより修飾した。この混合物を浴槽ソニケーター中に5分間置き、その後1時間振盪し、最後に凍結乾燥した。第四のバッチは未修飾のまま残した。
100Lfのジフテリア毒素を含む塩溶液(0.5ml)を10mgの粒子へ添加した。得られた懸濁液を一晩振盪して、抗原の粒子表面への吸収を可能にした。インキュベーション後、前記と同様にして蒸留水を用いた遠心分離により粒子を洗浄した。全てのケースにおいて、抗原のロードは0.5%(w/w)の範囲内になるように決定し、これは、一般的に50〜60%のカプセル化効率を与えた。
粒子を十分に特徴付けたところ、全てのバッチについて平均粒径は約340nmであることが見出された。
Balb/cマウス群(各群につきn=5)に、4つの調製したばかりの懸濁液を、マウス一匹につき5Lf単位のDTに相当する投与量である20μlの投与容量で鼻腔内投与した。動物には定期的に給餌し、ELISAを行って抗DT特異的IgGの力価の血清レベルを決定した。
第28日に集めた血液についての結果を図4に示す。
【0022】
実施例6
筋肉内送達したジフテリア毒素(DT)に対する免疫応答
プルロニック/キトサンナノパーティクルの8つの製剤を、単純な超音波処理法により調製した。脱アセチル化高分子量キトサンをFlukaより得た。3つのプロセス変量は、使用したプルロニックのタイプ(ICI Limited, UKより入手したP101、P121)、添加したプルロニックの容積(2mlの水につき75μl又は200μl)及びキトサンの添加又は省略であった。要約すると、2mlの二重蒸留水に、少量(75μl又は200μl)の適切なプルロニック液体(P101又はP121)を添加した。混合物を1分間ボルテックスし、更に1分間超音波処理した。プルロニック粒子をキトサンで被覆するために、0.1%(w/v)高分子量キトサンの2%(w/v)氷酢酸溶液100μlを、各製剤の100μlに添加した。最後に、12μlのDT水溶液(4450lf単位/ml)を添加することにより、ジフテリア毒素(DT)を、被覆した又は被覆していない粒子200μlに吸収させた。この調製物は、平均粒径が一般的に100〜600nmである、水中コロイド分散液であった。典型的な光子相関分光法(PCS)のプリントアウトを図5に示す。
調製した粒子製剤の特徴付けの後、4又は5群の雌Balb/cマウスに50μlの単一投与量を筋肉内投与した。各動物に対する総多義的(equivocal)投与量はDT 5Lf単位であった。投与媒体中のプルロニックの最終濃度は5%(v/v)であり、キトサンは0.05%(w/v)であった。動物に定期的に給餌し、ELISAを行って抗DT特異的IgGの力価の血清レベルを決定した。
平均の血清抗DT IgG力価を図6に示す。これらの結果から、プルロニック手順は、単独又はキトサンとの組合せのいずれかにおいて免疫応答を引き起こすことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫賦活剤として使用するための、ポリカチオン性炭水化物又はその薬学的に許容しうる誘導体。
【請求項2】
キチン誘導体、カチオン性ポリペプチド、カチオン性ポリアミノ酸、四級アンモニウム化合物又はこれらの混合物を含む免疫賦活剤である、請求項1に記載のポリカチオン性炭水化物。
【請求項3】
キチン誘導体を含む、請求項1又は2に記載のポリカチオン性炭水化物。
【請求項4】
キチン誘導体がキトサンである、請求項3に記載のポリカチオン性炭水化物。
【請求項5】
ポリカチオン性炭水化物が水溶性キチン誘導体である、請求項3又は4に記載のポリカチオン性炭水化物。
【請求項6】
水溶性キチン誘導体が、アルキル化キトサン誘導体又はその塩である、請求項5に記載のポリカチオン性炭水化物。
【請求項7】
アルキル化キトサン誘導体がトリメチルキトサンである、請求項6に記載のポリカチオン性炭水化物。
【請求項8】
動物の防御的免疫応答を引き起こすことができる生物学的に活性な薬剤、及び、請求項1〜7のいずれかに記載のポリカチオン性炭水化物を含む医薬組成物。
【請求項9】
更に希釈剤又は担体を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(i)投与される動物において免疫応答を引き起こすことができる生物学的に活性な薬剤、(ii)粒子を形成することができる第一の物質及び(iii)請求項1〜6のいずれかに記載のポリカチオン性炭水化物を含む粒子を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
粒子がミクロスフェア、微粒子又はリポソームを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
粒子が微粒子を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
第一の物質が、100kDa以上の分子量を有する高分子物質である、請求項10〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
第一の物質がポリ−(L−ラクチド)を含む、請求項10〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
第一の物質:ポリカチオン性炭水化物の比が99:1〜9:1(w/w)である、請求項10〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
生物学的に活性な薬剤が、破傷風、ジフテリア又はペストに対する防御的免疫応答を引き起こすことができる、請求項8〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
生物学的に活性な薬剤が、ペスト菌のV抗原又はその免疫学的に活性な断片、及び、ペスト菌のF1抗原又はその免疫学的に活性な断片の組合せを含んでいる、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
鼻腔内適用に適合している、請求項8〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
非経口投与に適合している、請求項8〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
更に、
A)ポリアミノ酸、
B)ビタミン又はビタミン誘導体、
C)カチオン性プルロニック、
D)クラスレート、
E)錯化剤、
F)セトリミド、
G)S−層タンパク質、又は、
H)メチル−グルカミン、
から選ばれる化合物を含んでいる、請求項8〜19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
更にカチオン性プルロニックを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項22】
キトサンで表面修飾されているカチオン性プルロニックのナノスフィアを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
医薬組成物の製造方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載のポリカチオン性炭水化物の存在下、生物学的に活性な薬剤を、第一の物質中でカプセル化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
医薬組成物の製造方法であって、ミクロスフィアを形成する工程、該ミクロスフィア上に請求項1〜6のいずれかに記載のポリカチオン性炭水化物の層を堆積させる工程、及び、その後、生物学的に活性な薬剤を吸収させる工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
動物を病原体から防御する方法であって、該動物の免疫系を刺激して該病原体に対して防御的な応答を引き起こすことができる防御的薬剤、及び、ポリカチオン性炭水化物を含む免疫賦活剤を、該動物に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
動物の免疫系を刺激して病原体に対して防御的な応答を引き起こすことができる防御的薬剤、及び、ポリカチオン性炭水化物を含む免疫賦活剤を、非経口的又は粘膜表面に適用する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
防御的薬剤及び免疫賦活剤を粘膜表面に適用する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
粘膜表面が鼻腔内表面である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
予防的又は治療的処置における使用のためのワクチンの製造における、ポリカチオン性炭水化物又はその薬学的に許容しうる誘導体の免疫賦活剤としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31186(P2012−31186A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204971(P2011−204971)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2000−606266(P2000−606266)の分割
【原出願日】平成12年3月23日(2000.3.23)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】