説明

ポリカルボキシレートを安定化するための方法

本発明は、少なくとも1つの抗酸化物質を使用することによって、高温における無機パウダーの存在下で、ポリカルボキシレート、特にポリカルボキシレートエーテルを安定化するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性硬化システム(hydraulically setting system)のための添加剤、特にコンクリート組成物のための分散剤の分野に関する。特に、本発明は、少なくとも1つの抗酸化物質を使用することによる、高温における無機パウダーの存在下で、ポリカルボキシレートを安定化するための方法に関する。さらに、本発明は、無機パウダーと一緒の保存の間、または無機パウダーの製粉の間ならびに場合により続けて保存の間に、温度で安定なポリカルボキシレートの製造およびこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレン側鎖を有するα-β-不飽和カルボン酸からなるポリマー、いわゆるポリカルボキシレートは、分散剤として、特にこれらの強い水の減少による強力な液化剤(liquefier)として、コンクリート技術において、長い間すでに使用されてきた。これらのポリマーは、櫛型ポリマー構造を有する。同じ水/セメント(w/c)値で、これらのポリマーはコンクリートの加工性を改善し、または、同じ加工性で、水の要求、およびこれによりw/c値を減少し、これらは圧縮強度および密閉性(tightness)の増加を導く。
【0003】
従来のポリカルボキシレートは、高温では条件付きでのみ安定であり、数日以内に分解し、これらの活性を発揮することができなくなる。特に、ポリカルボキシレートの活性は、高温における無機パウダー、特に水硬性バインダーの存在下で使用される場合に低下することが示されてきた。このような問題は、例えば、水硬性バインダーの保存において、または水硬性バインダーの製粉の間に発生する。
【0004】
保存の間、ほとんどの場合において、水硬性バインダーは80℃を超えて、しばしば120℃を超えて、サイロ中で保存される。さらに、ポリマーの安定化に特別な要求をする高圧がサイロ中、特に高いサイロ中に存在する。製品の混合物、例えばセメント製品の混合物の製造において特に望まれる、ポリカルボキシレートが前もってバインダーに加えられた場合、ポリカルボキシレートの活性の状態は、高温における保存の後に大きく減少する。
【0005】
ポリカルボキシレートは、部分的には、水硬性バインダー、例えばクリンカーれんが(clinker brick)の製粉の間のアジュバント(adjuvant)としても使用される。製粉の間に高温が存在するため、従来のポリカルボキシレートは、大きな範囲で分解され、これらの活性は発揮されない。
【0006】
特にポリマーの製造において、または接着剤としての使用と一緒に、ポリマーの安定化のために使用することができる安定剤が知られている。しかしながら、ポリマーの製造の間または接着剤において、ポリマーを無機パウダーの存在下で使用する場合、完全に異なる条件が存在する。無機パウダーの存在下において、ポリカルボキシレートは大きな表面積にわたって分布する。結果として、これらはより壊れやすく、より迅速に分解する。さらに、これは特に高温において、ポリカルボキシレートの安定化を困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO97/35814A1
【特許文献2】WO95/09821A2
【特許文献3】DE10015135A1
【特許文献4】EP1138697A1
【特許文献5】EP1348729A1
【特許文献6】WO2005/090416A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、ポリカルボキシレートの安定化のための方法を開発し、ポリカルボキシレートが無機パウダーの存在下で、高温の場合でさえも、安定を保つことができる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、高温における無機パウダーの存在下で、ポリカルボキシレートポリマー、特にポリカルボキシレートエーテルを安定化し、温度で安定なポリマーを製造するために好適な方法を利用可能にすることである。
【0010】
十分に驚くべきことに、これは請求項1に係る方法によって達成することができることが分かった。これは、抗酸化物質、特に少なくとも1つが置換されたフェノールを含む抗酸化物質を有するポリカルボキシレート、特にポリカルボキシレートエーテル(PCE)ポリマーを、無機パウダーの存在下で、高温においてでさえも安定化することができ、これらの活性をより長い時間維持することができることが見出された。特に、少なくとも1つが置換されたフェノールを含む抗酸化物質が、ポリマーが大量に濃縮される純粋なポリマーの混合物とは対照的に、大きな表面積にわたって無機パウダーと一緒に混合物中に分布したポリカルボキシレートを安定化させるために、特に好適であることは、特に驚くべきである。
【0011】
さらに、本発明によって使用される抗酸化物質は、数週間または数ヶ月にわたって、高温で長期間の保護を提供する。さらに、この方法で安定化されたポリマーは、製粉プロセスの間または延長された保存において高温にさらされた後、分散剤として、特に液化剤としての活性を発揮することができることが示された。
【0012】
本発明の他の有利な実施形態は、下位請求項から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリカルボキシレートポリマーが少なくとも1つの抗酸化物質と混合されることを特徴とする、高温において無機パウダーの存在下で、ポリカルボキシレート、特にポリカルボキシレートエーテル(PCE)を安定化させるための方法に関する。
【0014】
ポリカルボキシレートが安定化されるときに存在する無機パウダーは、特に鉱物バインダー、セメントのグループ、特にポートランドセメント(Portland cement)またはアルミニウムセメントから選択される特に水硬性バインダー、およびこれらの煙道の灰(ash)、シリカヒューム(silica fume)、スラグ、粒状の燃えかす(cinder)および石灰岩のフィラーまたは燃焼した白亜(chalk)、クリンカーれんが、潜在水硬性パウダー、不活性の微細なパウダーまたは石こうとのそれぞれの混合物であり得る。
【0015】
用語「安定化」は、特に延長された期間にわたって分解せず、これによりこれらの活性が維持されるポリカルボキシレートとして定義される。ポリカルボキシレートポリマーの安定化は、好ましくは少なくとも1週間、好ましくは少なくとも4週間、維持される。
【0016】
用語「高温」は、少なくとも40℃の温度、好ましくは80から160℃の温度として定義される。例えば、1000℃を超える燃焼プロセス後に、セメントのクリンカーれんがはたいてい約100から200℃の温度に冷却され、通常約80から150℃、特に80から120℃の温度で、例えばサイロ中で保存される。したがって、「高温」は、例えば、無機パウダーの保存の間、例えばセメントまたはセメントのクリンカーれんがの保存の間に存在する。
【0017】
「高温」は、無機パウダーの製粉の間にも発生し得る。
【0018】
本発明による方法の一実施形態において、無機パウダーを運搬する場合、特にセメントを運搬する場合、少なくとも1つの抗酸化物質が無機パウダーに適用される。好ましくは、無機パウダー、特にセメントは、貯蔵所、例えばサイロまたはトラックなどの輸送手段への運搬プロセスの間、例えば輸送チャンネルにおいて、少なくとも1つの抗酸化物質で混合され、特に被覆される。
【0019】
ポリカルボキシレートポリマーを、少なくとも1つの抗酸化物質を有する無機パウダーにポリカルボキシレートポリマーを添加する前、間、後に混合し、安定化を、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも80℃、さらにより好ましくは少なくとも100℃の温度で、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも4週間維持する工程を含む、本発明による、ポリカルボキシレート、特にポリカルボキシレートエーテル(PCE)を安定化するための方法が好ましい。
【0020】
別の実施形態において、少なくとも1つの抗酸化物質は、無機パウダーの製粉の前、特にセメントのクリンカーれんがの製粉の前に無機パウダーに加えられる。
【0021】
抗酸化物質は、ポリカルボキシレートと同時に、前にまたは後に無機パウダーに加えることができる。
【0022】
一実施形態において、抗酸化物質は、前もってポリカルボキシレートと混合され、その後この混合物を、無機パウダー、特にセメントの製造プロセスの間の所望の時間に、例えば製粉の前または保存の前の無機パウダーの運搬の間に、無機パウダーと混合するか、または無機パウダーに適用し、例えばポリカルボキシレートおよび抗酸化物質からなる混合物で被覆された無機パウダーを製造する。無機パウダーの運搬または輸送は、当業者に知られている装置、例えば輸送が空気圧および重量測定で行われる空気溝を介して行うことができる。製粉プロセスは、たいていセメントミル中、例えばボールミル中で行われる。さらに、セメント産業において知られている他のミルを使用することもできる。
【0023】
抗酸化物質をポリカルボキシレートへの重合によって組み込み、櫛型ポリマーが側鎖として抗酸化物質を含むことも可能である。これは、例えば、ポリカルボキシレートの製造において、例えばポリマー様のエステル化またはラジカル重合を介して、特にラジカル重合を介して行うことができる。
【0024】
抗酸化物質は、ポリカルボキシレートポリマーの全質量に対して、0.01から50質量%、好ましくは0.1から20質量%、特に好ましくは1から15質量%の量で好ましくは使用される。
【0025】
少なくとも1つの抗酸化物質および少なくとも1つのポリカルボキシレートポリマーを含む、ポリカルボキシレートポリマーまたは添加剤は、無機パウダーの質量、特にバインダーの質量に対して、たいてい0.001から10質量%の量で加えられる。
【0026】
抗酸化物質は、無機パウダーの質量、特にバインダーの質量に対して、0.0001から1質量%、特に好ましくは0.0001から0.01質量%の量で、好ましくは加えられる。
【0027】
しかしながら、抗酸化物質は、ポリカルボキシレートポリマーとは別に無機パウダーに加えることもできる。例えば、最初にポリカルボキシレートポリマーを無機パウダーに加え、その後抗酸化物質を無機パウダーに加えることが好適である。
【0028】
好適な抗酸化物質は、例えば、置換されたフェノール、特に立体的に阻害されたフェノールまたはヒドロキノリン、ジアリールアミンなどの立体的に阻害されたアミン、アリールアミン-ケトン縮合生成物、ジアルキルジチオカルバミン酸またはジアルキルジチオホスファイトなどの有機硫黄化合物、ホスファイトまたはホスホナイトなどの有機リン化合物、トコフェロールまたはその誘導体、没食子酸またはその誘導体、バニリン、あるいは前に挙げた抗酸化物質の塩または混合物の群から選択される。
【0029】
少なくとも1つが置換されたフェノールまたは1つが置換された芳香族アミンを含む抗酸化物質が、特に好適である。立体的に阻害されたフェノールまたはヒドロキノンあるいは立体的に阻害されたアミンが、特に好適である。
【0030】
立体的に阻害されたフェノールの例は、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ(t-ブチル)-4-メチルフェノール(ブチルヒドロキシトルエン、BHT)、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール(ブチルヒドロキシアニソール、BHA)、ペントラエリトリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート](Irganox(登録商標) 1010)、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、オルト-tert-ブチルフェノール、C4〜C22アルコールの3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼン-プロピオン酸エステル、4,4’-ブチリデン-ビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-メチリデン-ビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、C4〜C22アルコールの3,5-ビス(1,1-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル-プロピオン酸エステル、2,2’-メチレン-ビス-(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)、1,1-ビス-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-ブタン、2,2’-メチレン-ビス-[4-メチル-6-(1-メチルシクロヘキシル)フェノール]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ桂皮酸アミド)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3-トリス-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-ブタン、1,3,5-トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン、エチレングリコール-ビス[3,3-ビス(3’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ジ-(3-t-ブチル-4’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-ジシクロペンタジエン、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、1,3,5-トリ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン(Irganox(登録商標) 1330)、1,3,5-トリス-(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-イソシアヌレート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオン酸エステル、5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル-プロピオン酸エステル、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオン酸アミド、3,5-ジ-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロピオン酸エステル、1,6-ヘキサンジオール-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス-3-(t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオネート、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-フェニル)-プロパン、2,2’-チオ-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)-メチル)フェノール(Irganox(登録商標) 1520)、4,4’-チオ-ビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネートである。
【0031】
2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-シクロヘキシル-フェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス-3-(t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオネート、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパンおよびテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン、またはCiba Spezialitatenchemie社のIrganox(登録商標)の商標名で市販されている抗酸化物質、特に2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)-メチル)フェノール(Irganox(登録商標) 1520)、ペンタエリトリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート](Irganox(登録商標) 1010)、または1,3,5-トリ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン(Irganox(登録商標) 1330)が好ましい。
【0032】
立体的に阻害されたヒドロキノンの例は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキノンである。
【0033】
立体的に阻害された芳香族アミンおよびアリールアミン-ケトン縮合生成物の例は、N,N’-ビス-(1,4-ジメチル-ペンチル)-p-フェニレン-ジアミン、N,N’-ジフェニル-フェニレンジアミン、4-(p-トルエン-スルホンアミド)-ジフェニルアミン、4-n-ブチルアミノフェノール、4,4’-ジ-t-オクチルジフェニルアミン、4,4’-ジ-(アルファ,アルファ-ジメチルベンジル)-ジフェニルアミン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミンおよび/またはフェニル-2-アミノナフタレンである。
【0034】
有機硫黄化合物の例は、2,2’-チオ-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)-メチル)フェノール(Irganox(登録商標) 1520)、4,4’-チオ-ビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ジ-ラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジ-ステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、亜ジチオン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸またはその誘導体、例えばヒドロキシメタンスルフィネート-ジハイドレートナトリウム(Rongalite(登録商標) C)である。
【0035】
有機リン化合物の例は、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-ホスホン酸-ジオクタデシルエステル、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス-(ノニルフェニル)-ホスファイト、テトラキス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル-4,4’-ビフェニレン-ジホスホナイト、トリス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスファイト、ネオペンチルグリコールトリエチレングリコールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリラウリルホスファイト、Na-ヒポホスファイトまたはトリフェニルホスファイトである。
【0036】
好ましい実施形態において、抗酸化物質は、置換されたフェノール、特に立体的に阻害されたフェノール、例えばCiba社のIrganox(登録商標)の名称で入手可能なものである。好ましくは、置換されたフェノールは、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビスフェノールA、ビスフェノールF、サリチル酸、ヒドロキノン、バニリン、ビフェニルジオール、例えば4,4’-ビフェニルジオールまたは2,2’-ビフェニルジオール、ガレートおよびフェノールの重縮合物からなる群から選択される。
【0037】
本明細書において、用語「ポリカルボキシレート」は、カルボキシ基を有するポリマーとして定義される。特に、本発明は、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリカルボキシレートエーテル(PCE)の櫛型ポリマーを扱う。
【0038】
特に好適なポリカルボキシレートは、炭化水素基を含む少なくとも1つの主鎖と、少なくとも1つの酸基、特にカルボン酸基またはその塩を含む少なくとも1つの側鎖と、および少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を含む少なくとも1つの側鎖とを含み、ポリオキシアルキレン基は結合部分を介して主鎖と結合しており、これには少なくとも1つのエステル、エーテル、アミドおよび/またはイミド基、好ましくは少なくとも1つのエステルまたはアミド基、さらにより好ましくは少なくとも1つのエステルおよびアミド基が含まれる。カルボン酸基およびポリオキシアルキレン基に加えて、他の官能基または非官能基が主鎖に結合し得る。
【0039】
結合部分は、少なくとも1つのエステル、エーテル、アミドまたはイミド基、好ましくはエステルまたはアミド基を含み、好ましくは-COO-、-CO-NH-、-R-COO-および-R-CO-NH-(ここで、Rはお互い独立にC1〜C6アルキレン基を表す)からなる群から選択される。ポリカルボキシレートは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を含み、様々な結合部分を介して主鎖に結合している、様々な側鎖を含むことができる。例えば、ポリカルボキシレートは、エステル、エーテル、アミドまたはイミド基あるいはこれらの混合物を介して主鎖に結合した側鎖を含むことができる。したがって、ポリカルボキシレートにおいて、エステル、エーテル、アミドまたはイミドの結合部分は、混合された形態で存在し得る。少なくとも1つのポリオキシアルケン基を含む側鎖の部分がエステル基を介して主鎖に結合し、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を含む側鎖の別の部分がアミド基を介して主鎖に結合したポリオキシカルボキシレートが好ましい。
【0040】
ポリオキシアルキレン基は、ポリマー化されたエポキシドを含有する化合物、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブチレンオキシドまたはフェニルエチレンオキシドに基づいている。ポリオキシアルキレン基を含む側鎖は、好ましくは、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基またはオキシエチレンとオキシプロピレン基との混合物を含む、またはからなる。
【0041】
一実施形態において、ポリカルボキシレートは、好ましくは、
a) 式(I)の少なくとも1つの酸単位A; および
【化1】

b) 式(II)の少なくとも1つの構造単位B;
【化2】

ならびに場合により、
c) 少なくとも1つのさらなる構造単位C
を含む。
【0042】
この場合において、お互い独立に、R1およびR2は、H、COOM、CH2COOMまたは1から5個の炭素原子を有するアルキル基、特にHまたはCH3を表し; R3は、お互い独立に、H、CH3、COOMまたはCH2COOM、特にHを表し; R4は、お互い独立に、カルボン酸の基、特にCOOMを表し; またはR3はR4と環を形成して-CO-O-CO-を作ることができる。
【0043】
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属または他の二価もしくは三価の金属原子、アンモニウム、アルキル-アンモニウムあるいはこれらの混合物、特にH、Na、Ca/2、Mg/2、NH4または有機アンモニウムを意味する。当業者には、多価のイオンと一緒に別の対イオンが存在しなければならない、つまりポリマーPの同じまたは異なる分子のカルボキシレートであり得ることは明らかである。アンモニウム化合物は、特にテトラアルキルアンモニウムまたは他にはHR3N+であり、ここでRはアルキル基、特にC1〜C6-アルキル基、好ましくはエチルまたはブチルを表す。アンモニウムイオンは、特にカルボキシル基の、商業的に入手可能な第三級アミンとの中性化によって得られる。
【0044】
R5は、お互い独立に、式(III)の基を表す。
-(CH2)x-R7-(R8O)y-R9 (III)
【0045】
この場合において、R7は、お互い独立に、エステルまたはアミドの結合部分、好ましくは-COO-または-CO-NH-を表す。R8は、C2〜C6アルキレン基、好ましくはC2〜C4アルキレン基、または任意の順番でC2、C3および/もしくはC4アルキレン基の混合物を表し; ならびにR9は、H、C1〜C12アルキルまたはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールまたはアラルキル基、あるいは置換されたまたは置換されていないアリール基、あるいは場合によりヘテロ原子を含む1から30個のC原子を有する一価の有機基を表す。
【0046】
R6は、お互い独立に、H、CH3、COOMまたはCH2COOM、あるいはR5で定義した置換基、好ましくはHを表す。
【0047】
値xは、お互い独立に、0または1の値を有し; yは、お互い独立に、3〜250、好ましくは10から120の値を表す。
【0048】
好適な酸単位Aの例は、アクリル酸、メタクリル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタクトン酸(glutactonic acid)、フマル酸、マレイン酸、マレアミン酸(maleaminic acid)、イタコン酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、またはこれらの誘導体もしくは類似体、例えばマレイン酸とスルファニル酸からなるマレイン酸のセミアミド(semiamide)、特にN-(4-スルホフェニル)マレイン酸アミドからの重合によって生成される単位である。モノカルボン酸が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸単位またはこれらの塩の重合によって生成される単位が、酸単位Aとして特に好適である。明細書全体において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方またはこれらの混合物として定義される。
【0049】
好ましくは、式(I)の少なくとも1つの酸単位Aは、部分的にまたは完全に中性化される。酸単位は、遊離酸としてまたは塩あるいは部分的な塩として存在し、ここで用語「塩」は、本明細書および以下において、塩基との中性化によって得られる従来の塩に加え、金属イオンと配位子としてのカルボキシレートまたはカルボキシル基との間の錯体化学化合物も含む。
【0050】
さらなる構造単位Cは、別のエーテル、エステル、アミドまたはイミド単位、好ましくはアミドまたはエステル単位を含み得る。例えば、さらなる構造単位Cは、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸エステル、ホスホン酸、カルボニルアミドメチルプロパンスルホン酸およびそのアルカリまたはアルカリ土類塩、ポリ(オキシアルキレン)オキシカルボニル、ポリ(オキシアルキレン)アミノカルボニル、ポリ(オキシアルキレン)オキシアルキル、ポリ(オキシアルキレン)オキシ、ヒドロキシエチルオキシカルボニル、アセトキシ、フェニルまたはN-ピロリドニル基を含み得る。さらなる構造単位Cは、好ましくは、ポリオキシアルキレン基、好ましくはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基またはそれらの混合物を含む。例えば、構造単位Cは、アルキルアルコール、特にC6〜C20アルキルアルコールとモノ-またはジカルボン酸の反応によって生成されたエステル単位であり得る。
【0051】
ポリカルボキシレートは、A、Bおよび場合によりCのそれぞれの構造単位の様々な構造単位の組合せを有することができる。例えば、いくつかの構造単位Aは、ポリカルボキシレートにおいて混合された形態、したがって、例えば、アクリル酸単位とメタクリル酸単位の混合物で存在することができ; あるいは、いくつかの異なるエステルおよび/またはアミド単位BはポリマーPにおいて混合された形態、したがって、例えば、異なる置換基R8を有するいくつかのエステル単位Bで存在することができる。例えば、エステルおよびアミド単位の共通の使用、または異なるポリオキシアルキレン基、特にポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンの共通の使用、あるいはポリオキシアルキレン基、特に異なる分子量を有するポリオキシエチレンの共通の使用が好ましい。
【0052】
特に好ましい実施形態において、ポリカルボキシレートは、少なくとも1つのエステル単位および少なくとも1つのアミド単位を含む。
【0053】
好ましい実施形態において、ポリカルボキシレートは、それぞれの場合において、ポリカルボキシレート中のA、BおよびCの構造単位の全モル量に対して、10から90mol%、好ましくは20から80mol%の式(I)の酸単位A、10から90mol%、好ましくは20から80mol%の式(II)の構造単位B、および場合により0から30mol%の構造単位Cを含む。
【0054】
ポリカルボキシレート中の個々の構造単位A、BおよびCの順番は、交互、スタティック(static)、ブロックバイブロック(block-by-block)またはランダムであり得る。
【0055】
ポリカルボキシレートは、好ましくは、8000〜200000g/mol、好ましくは15000〜100000g/mol、特に好ましくは25000〜80000g/molの範囲の分子量MWを有する。
【0056】
本発明の用語において、「分子量」または「モル質量」は、モル平均質量MWとして定義される。
【0057】
ポリカルボキシレートは、様々な方法で生成され得る。基本的に2つの方法が使用される。第一の方法において、ポリマーは、ポリカルボキシレートおよびそれぞれのアルコールならびに/またはアミンからのいわゆるポリマー様反応(polymer-like reaction)で生成される。第二の方法において、ポリマーは、ラジカル重合によって、それぞれの不飽和カルボン酸-、およびエステル-ならびに/またはアミド-官能基モノマーから生成される。
【0058】
特に好ましいポリマーは、第一の方法によるポリマー様反応後に生成される。この場合において、潜在または遊離カルボキシル基を含むポリマーは、カルボキシル基の部分的なアミド化もしくはエステル化をもたらす条件下で、アミンまたはヒドロキシル官能基を含む1つまたは複数の化合物と反応する。ポリマー様反応は、非常に異なる特性を有する非常に異なる櫛型ポリマーが、α-、β-不飽和酸、特にモノ-またはジカルボン酸、特にポリ(メタ)アクリル酸からなる商業的に入手可能なポリマーから、量、種類およびアルコールとアミンの比を変化させることによって、単純にかつ確実に得られるという、主な利点を有する。このようなポリマー様反応は、例えば、WO97/35814A1、WO95/09821A2、DE10015135A1、EP1138697A1、EP1348729A1、同様にWO2005/090416A1に記載されている。ポリマー様反応の詳細は、例えば、EP1138697B1の7頁20行目から8頁50行目、同様にその実施例、またはEP1061089B1の4頁54行目から5頁38行目、同様にその実施例において開示されている。ポリカルボキシレートは、EP1348729A1の3頁から5頁、同様にその実施例に記載された通り、固体の凝集状態で得ることができる。
【0059】
第二の生成方法において、ポリカルボキシレートは、不飽和モノ-またはジカルボン酸の、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、アリルエーテルまたはビニルエーテルとのラジカル重合を介して生成される。完成した櫛型ポリマーにおけるカルボン酸は、それらの遊離酸、または完全にもしくは部分的にそれらの塩の形態で存在し得る。ラジカル重合の経路は、最も一般的な方法である; しかしながら、これは、特定の化合物の場合において、対応するモノマーの商業的な入手可能性によって妨げられ、プロセスの高価なモニタリングを必要とする。
【0060】
ポリカルボキシレートは、液体および固体の形態の両方で、単独または分散剤、特に液化剤の成分としての両方で、使用することができる。
【0061】
したがって、ポリカルボキシレートは、単純なポリカルボキシレートとして、またはいくつかのポリカルボキシレートの混合物として使用することができる。しかしながら、1つまたは複数のポリカルボキシレートを、他の分散剤または分散剤の混合物と一緒に使用することもできる。
【0062】
ポリカルボキシレートまたはポリカルボキシレートを含む混合物は、本発明による使用のために、さらなる成分を含むことができる。さらなる成分の例は、溶媒または他の液化剤、例えばリグノスルホネート、スルホン酸化されたナフタレンホルムアルデヒドの縮合物、スルホン酸化されたメラミン-ホルムアルデヒドの縮合物またはポリカルボキシレートエーテル(PCE)などの添加剤、促進剤、難燃剤、収縮阻害剤、消泡剤、または発泡剤である。
【0063】
ポリカルボキシレートが液体の形態で使用される場合、溶媒が、好ましくは反応に使用される。好ましい溶媒は、例えば、アルコール、特にエタノールまたはイソプロパノール、および水であり、ここで、水が最も好ましい溶媒である。ポリカルボキシレートのタイプによって、分散体または溶液が生成される。溶液が好ましい。
【0064】
水性溶液または分散体は、さらなる成分を含むことができる。この例は、溶媒または建築化学において一般的な添加剤、特に界面活性剤、熱および光に対する安定化剤、染料、消泡剤、促進剤、難燃剤ならびに発泡剤である。
【0065】
ポリカルボキシレートは、固体の凝集状態で存在することができる。本発明の用語において、固体の凝集状態におけるポリマーは、室温で固体の凝集状態で存在するポリマーとして定義され、例えば、パウダー、スケール(scale)、ペレット、粒状(granulate)またはプレート(plate)であり、この形態で容易に輸送でき、保存することができる。
【0066】
少なくとも1つの抗酸化物質は、ポリマー混合物、特にポリマー溶液の成分であることができるか、または固体または液体の形態でポリカルボキシレートもしくは無機パウダーに別に加えられることができるか、あるいはポリカルボキシレートおよび無機パウダーと一緒に製粉されることができる。
【0067】
別の態様において、本発明は、高温における無機パウダーの存在下で、温度で安定なポリカルボキシレートポリマーの製造のための少なくとも1つの抗酸化物質の使用に関する。
【0068】
高温における無機パウダーの存在下でも安定な、温度で安定なポリカルボキシレートポリマーを製造するために、ポリカルボキシレートポリマーは、ポリマーを加える前、間、後に、少なくとも1つの抗酸化物質と一緒に無機パウダーと混合される。
【0069】
抗酸化物質は、好ましくは、ポリカルボキシレートと一緒に無機パウダーに加えられる。この加えることは、特に好ましくは、製粉プロセスの前または無機パウダーの貯蔵所への運搬の間に行われる。
【0070】
抗酸化物質が、高温における無機パウダー、特にセメントの存在下で使用されるポリカルボキシレート、特にポリカルボキシレートエーテルを安定化させるために特に好適であることが示された。特に置換されたフェノールまたは置換された芳香族アミンが、大きな表面積にわたって無機パウダー中に分布しているポリカルボキシレートを安定化させるために、特に好適であることは驚くべきことである。無機パウダーの存在下で、特定の条件、例えば上記で挙げた高温、同様に大きな表面積の存在において存在し、ポリカルボキシレートの可能な安定化を妨げる。通常、ポリカルボキシレートはこれらの条件下で分解し、知られている安定化剤はポリオキシカルボキシレートを安定化するために好適ではない。本発明によって使用される抗酸化物質により、ポリカルボキシレートの安定化が、特に厳しい条件下、例えばポリカルボキシレートが製粉プロセスの前にセメントに加えられ、その後セメントサイロ内の保存の間に高温および高圧にさらされる場合にも、達成されることができることが示された。
【0071】
ほとんどの場合において知られている安定化剤は、短い期間のみにわたって存在する特定の条件下での安定化に好適である一方、安定化活性が延長された期間、好ましくは少なくとも1週間、特に好ましくは少なくとも4週間にわたって維持されることも、驚くべきことである。
【実施例】
【0072】
本発明を、ここで実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0073】
1. 使用した抗酸化物質
【0074】
【表1】

【0075】
2. モルタル試験
本発明によるポリマーの有効性を、モルタル内で試験した。
【0076】
最初の工程において、ポートランドセメント(Swiss CEM I 42.5R)をポリカルボキシレート-抗酸化物質の混合物で被覆した。この目的のために、セメントを、好ましくは空気溝を含む運搬装置中にファネル(funnel)を介して投入した。圧縮された空気の助けを借りて、セメントに対して0.3質量%のポリカルボキシレートの液化剤の水性溶液(例えばSika(登録商標) ViscoCrete(登録商標) 3082、Sika Schweitz AGから入手可能)および表2に示した量(ポリカルボキシレート液化剤の水性溶液に対して)の抗酸化物質を含む水性溶液を、空気溝の領域にスプレーし、これによりセメントに塗布した。被覆されたセメントを、さらに輸送用コンテナーまたは保存装置に輸送し、室温または90℃で、表2に示した期間保存した。
【0077】
保存後、以下のモルタル混合物を生成した。
【0078】
【表2】

【0079】
ポリカルボキシレートおよび抗酸化物質で被覆された、砂、フィラー、およびセメントを、Hobartミキサー中で1分間、乾燥形態で混合した。30秒以内に、計量水(batching water)を加え、さらに2.5分間混合した。湿潤形態における全混合時間は、3分間だった。水/セメント値(w/c値)は0.46だった。有効性を決定するために、0、30および60分後のモルタルの広がりの程度(ABM)(表2)をEN 1015-3に従って決定した。
【0080】
本発明による抗酸化物質の有効性を決定するために、セメントを様々な抗酸化物質(表2参照)で被覆した。例1から9は本発明による実施例を表し、例10から17は比較例を表す。
【0081】
【表3】

【0082】
表2における結果は、本発明による抗酸化物質が、高温(90℃)において、ポリカルボキシレートを安定化するために好適であることを示す。室温(RT)において、ポリカルボキシレートは、延長された保存時間(35日)後にその活性を維持することができ、優れた広がりの程度を有する良好な液化特性を示している。しかしながら、ポリカルボキシレートを高温(90℃)で保存した場合、本発明による抗酸化物質を有する実施例と抗酸化物質を有さない比較例との間に、明らかな差異が見られる。
【0083】
本発明による抗酸化物質を有する実施例は、3または4週間後(ここでは、21または35日後)でも、200mmを超える所望の広がりの程度を有し、ポリカルボキシレートは90℃の高温で分解しないが、活性を維持することができることが確認された。
【0084】
比較安定剤V-1またはV-2を有する比較例は、90℃における保存の21日後に、低い値を有する。抗酸化物質または安定化剤を有さない比較例において、広がりの程度は数日後に所望の200mmを下回り、したがってポリカルボキシレートは、90℃における保存の間に分解するため、その完全な活性を発揮できないことが示された。
【0085】
もちろん、本発明は示され記載された実施形態に限定されない。上記で挙げた本発明の特徴は、それぞれに示された組合せだけでなく、他の変更、組合せおよび代替でも、または独立した方法において、本発明の範囲から外れることなく、使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボキシレートポリマーが少なくとも1つの抗酸化物質と混合されることを特徴とする、高温における無機パウダーの存在下で、ポリカルボキシレートを安定化するための方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が、置換されたフェノール、特に立体的に阻害されたフェノールまたはヒドロキノン、ジアリールアミンなどの立体的に阻害された芳香族アミン、アリールアミン-ケトン縮合生成物、ジアルキルジチオカルバミン酸またはジアルキルジチオホスファイトなどの有機硫黄化合物、ホスファイトまたはホスホナイトなどの有機リン化合物、トコフェロールまたはその誘導体、没食子酸またはその誘導体、バニリン、あるいは前に挙げた抗酸化物質の塩または混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が置換されたフェノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記置換されたフェノールが、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、サリチル酸、ヒドロキノン、バニリン、ビフェニルジオール、ガレートおよびフェノールの重縮合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリカルボキシレートポリマーが、少なくとも1つの酸単位、ポリオキシアルキレン基を含む少なくとも1つの単位、および場合によって少なくとも1つのさらなる単位を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリカルボキシレートポリマーが、ポリカルボン酸のエステル化および場合によってアミド化のポリマー様反応の方法によって得られるまたは生成されることができる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記無機パウダーが、鉱物バインダー、セメントのグループ、特にポートランドセメントまたはアルミニウムセメントから選択される特に水硬性バインダー、およびこれらの煙道の灰、シリカヒューム、スラグ、粒状の燃えかすならびに石灰岩のフィラーまたは燃焼した白亜、潜在水硬性パウダー、不活性の微細なパウダー、あるいは石こうとのそれぞれの混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記高温が少なくとも40℃、好ましくは少なくとも80℃である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗酸化物質が、ポリカルボキシレートポリマーの全質量に対して、0.01から50質量%、好ましくは0.1から15質量%の量で使用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記高温が、温度で安定化されたポリカルボキシレートで被覆された無機パウダーの保存の間に発生する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が、無機パウダーが運搬される場合、特にセメントが運搬される場合に、無機パウダーに適用される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記高温が、無機パウダーの製粉の間および場合によって続けて貯蔵の間に発生する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリカルボキシレートポリマーの安定化が、少なくとも1週間、好ましくは4週間維持される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
高温における無機パウダーの存在下で、温度で安定なポリカルボキシレートの製造のための、少なくとも1つの抗酸化物質の使用。
【請求項15】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、サリチル酸、ヒドロキノン、バニリン、ビフェニルジオール、ガレートおよびフェノールの重縮合物からなる群から選択される置換されたフェノールである、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2012−502132(P2012−502132A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525564(P2011−525564)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061482
【国際公開番号】WO2010/026226
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】