説明

ポリカルボナート重合触媒の回収方法

【課題】簡便なポリカルボナート重合触媒の回収方法を提供する。
【解決手段】エポキシド化合物と二酸化炭素とを溶液中で共重合させることによりポリカルボナートを製造する方法において該共重合に用いた溶解重合触媒を回収するための方法であって、該重合触媒は共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含み、対応してジエノフィル部位または共役ジエン部位を表面に含む不溶性粒状担体を、該重合触媒を含む溶液中に導入し、次いでディールス・アルダー(Diels-Alder)反応により該重合触媒を該不溶性粒状担体に固定化し、そして該固定化された重合触媒を該溶液から分離することを特徴とする、重合触媒の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボナート重合触媒の回収方法に関する。より詳細には、本発明は、エポキシド化合物と二酸化炭素との共重合時に溶液中に溶解していた金属錯体触媒を、ディールス・アルダー(Diels-Alder)反応を利用して不溶性粒状担体に固定化することにより分離・回収し、さらにはこれを単離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシド化合物と二酸化炭素との共重合によって得られるポリカルボナートは、二酸化炭素を合成樹脂の原料に利用する点で興味深い。また、脂肪族ポリカルボナートは、透明性を有しかつ所定温度以上に加熱すると完全に分解するため、一般成形物、フィルム、ファイバーなどの用途に使用できることに加えて、光ファイバー、光ディスクなどの光学材料、あるいはセラミックバインダー、ロストフォームキャスティングなどの熱分解性材料として利用することも可能である。さらに、脂肪族ポリカルボナートは、生体内で分解可能であるため、徐放性の薬剤カプセルなどの医用材料、生分解性樹脂の添加剤または生分解性樹脂の主成分として応用できる。
【0003】
脂肪族ポリカルボナートは、これまでに様々な触媒または触媒システムを用いることによって合成されている。例えば、特許文献1には、特定の構造式を有するコバルト錯体系触媒を好ましくは塩の形態の助触媒と組み合わせて用いてプロピレンオキシドと二酸化炭素を共重合させることにより、ポリ(プロピレンカルボナート)を製造することが記載されている。
【0004】
非特許文献1には、二酸化炭素とプロピレンオキシドとを共重合させるに際し、4級アンモニウム塩をサレンユニットに結合したコバルト錯体系触媒を使用し、当該重合ポリマー溶液をシリカゲルのパッドを通して濾過することにより、コバルト錯体をシリカ表面に捕捉させる方法が記載されている。捕捉されたコバルト錯体は、NaBFのメタノール溶液を用いてシリカゲルから溶離され、メタノール溶液として回収・再利用できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0089252号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、重合に用いたコバルト錯体を分離・回収した旨の記述はないが、重合触媒を重合溶液から液−液分離で回収する場合、一般には、重合粗生成物を良溶媒に溶かし、次いでその溶液を、触媒は溶けるがポリマーは溶けない貧溶媒中に注入してポリマーを析出させる再沈殿法が採用される。しかし、再沈殿法では、ポリマーが析出する際、貧溶媒に溶け込むべき触媒の一部を連行し、析出ポリマー中に取り込んでしまう。このように取り込まれた触媒は不純物となり、生成物ポリマーの品質を低下させてしまう。なお、液−液分離により生成物ポリマーの精製度を高める技術思想として、触媒がポリマーの良溶媒には分配されず、その貧溶媒に選択的に分配されるように設計された置換基を触媒に導入することが考えられる。しかし、そのような置換基は嵩高くなり、触媒活性の低下を招くおそれがある。
【0008】
非特許文献1に記載の錯体回収方法は、ポリマー析出前に錯体触媒を分離させるため、液−液分離法よりも精製度の高い生成物ポリマーを提供できるであろう。しかし、非特許文献1に記載の錯体回収方法は、ポリマーをシリカゲルから溶離させるために大量の溶媒を必要とする。また、シリカゲルに捕捉された触媒を溶離させるためには、4級アンモニウム部分の対カチオンをBF-に交換するなど特殊な試薬を必要とする。一般に、このように大量の溶媒や特殊な試薬を要するプロセスは、スケールアップには向かない。
【0009】
以上の種々の課題に鑑み、高い触媒活性を発揮できる均一反応系でポリマーを重合した後に、その重合触媒を均一反応系から分離・回収し、よって生成物ポリマーの精製度を高めることができる簡便な方法に対するニーズがある。また、均一反応系から分離された重合触媒をさらに単離・回収して再利用するための簡便な方法に対するニーズもある。さらに、このような触媒の分離、回収、単離、再利用が、ポリマー製造プロセスのスケールアップに適したものであることも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記課題を一挙に解決する方策としてディールス・アルダー反応を利用することに想到し、下記発明を完成させた。
[1]エポキシド化合物と二酸化炭素とを溶液中で共重合させることによりポリカルボナートを製造する方法において該共重合に用いた溶解重合触媒を回収するための方法であって、該重合触媒は共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含み、対応してジエノフィル部位または共役ジエン部位を表面に含む不溶性粒状担体を、該重合触媒を含む溶液中に導入し、次いでディールス・アルダー(Diels-Alder)反応により該重合触媒を該不溶性粒状担体に固定化し、そして該固定化された重合触媒を該溶液から分離することを特徴とする、重合触媒の回収方法。
[2]さらに、上記固定化された重合触媒を、逆ディールス・アルダー反応により上記不溶性粒状担体から単離する、[1]項に記載の方法。
[3]上記重合触媒が、下記一般式(I)または(II)で表される金属錯体である、[1]項または[2]項に記載の方法。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Mは、コバルト、クロムおよびアルミニウムからなる群より選ばれる中心金属であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるか、あるいは2個のR1および/または2個のR2が互いに結合して、置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;R3、R4およびR5で表される基のうち少なくとも1つが、共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含有する基であり、残りのR3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR4とR5が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
[4]上記不溶性粒状担体が架橋ポリスチレンビーズである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]上記共役ジエン部位がフラン環を構成する、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]上記ジエノフィル部位がマレイミド環を構成する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]エポキシド化合物と二酸化炭素とを溶液中で共重合させることによりポリカルボナートを製造する方法であって、該共重合に用いる重合触媒は共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含み、対応してジエノフィル部位または共役ジエン部位を表面に含む不溶性粒状担体を、該共重合後の該重合触媒を含む溶液中に導入し、次いでディールス・アルダー反応により該重合触媒を該不溶性粒状担体に固定化し、そして該固定化された重合触媒を該溶液から除去することを特徴とする、ポリカルボナートの製造方法。
[8]上記重合触媒が、[2]に記載の方法により単離された触媒である、[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によりディールス・アルダー反応を利用したことにより、高い触媒活性を発揮できる均一反応系でポリカルボナートを重合した後、ポリカルボナートの再沈殿前に重合触媒を均一反応系から分離・回収することができるので、生成物ポリマーの精製度を高めることができる。さらに、分離された重合触媒は、単に加熱するだけで容易に単離・回収され、再利用することができる。本発明による触媒の分離、回収、単離、再利用は、大量の溶媒や特殊な試薬を使用することがなく、ポリマー製造プロセスのスケールアップに非常に適している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述したように、本発明の特徴は、エポキシド化合物と二酸化炭素とを均一反応系で共重合させてポリカルボナートを合成した後に、その反応液中に不溶性粒状担体を導入し、反応液中に溶解している重合触媒を、ディールス・アルダー反応を利用して不溶性粒状担体に固定化することにある。ディールス・アルダー反応自体は、代表的な[4+2]環状付加反応で、種々の共役ジエンと親ジエン(ジエノフィル)からシクロヘキセン骨格が形成されるものとして周知である。ディールス・アルダー反応は熱可逆性の平衡反応であり、低温において付加反応が起こり、高温において脱離反応(逆ディールス・アルダー反応)が起こる。本発明は、このディールス・アルダー反応の熱可逆性を最大限利用することにより、エポキシド化合物と二酸化炭素からポリカルボナートを合成するに際し、ポリマー合成時には高い触媒活性を発揮できる均一反応系が採用でき、触媒回収時には室温混合、濾過等の極めて簡便な操作が採用でき、よって生成物ポリマー中の残留触媒(不純物)を容易に削減でき、さらには回収後の担体を単に加熱することにより、触媒を容易に担体から脱離させて再利用可能ならしめるという、ポリカルボナートの製造プロセスにおいて極めて有利な複合的な効果を奏するものである。
【0016】
本発明によると、重合触媒と不溶性粒状担体の間でディールス・アルダー反応を起こさせるため、重合触媒が共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含み、対応して不溶性粒状担体がジエノフィル部位または共役ジエン部位を含む。重合触媒と不溶性粒状担体のどちらに共役ジエン部位またはジエノフィル部位を付与するかは、用いる重合触媒の種類によって、その合成のし易さや、重合反応への影響等を考慮しながら適宜決定すればよい。重合触媒に結合される共役ジエン部位またはジエノフィル部位は、エポキシド化合物と二酸化炭素との所期の共重合反応に対する触媒活性を損なわないものであれば、任意の部位を採用することができる。一般に、触媒活性への悪影響を小さくするため、重合触媒に結合される共役ジエン部位またはジエノフィル部位は嵩高くないことが好ましい。また、重合触媒の不溶性粒状担体への固定化効率を高めるため、各重合触媒または各不溶性粒状担体に2以上の共役ジエン部位またはジエノフィル部位を付加してもよい。
【0017】
共役ジエン部位の具体例として、フラン環基の他、下記の基が挙げられる。
【化3】

【0018】
共役ジエンは、ディールス・アルダー反応に際して環状遷移状態をとるため、s-cis配座をとりやすいことが好ましい。例えば、共役ジエンを環状にして束縛することで強制的にs-cis配座をとらせることにより、ディールス・アルダー反応の反応性が向上する。また、ディールス・アルダー反応の反応性を高めるため、共役ジエンに電子供与性置換基を付加することも好ましい。特に好ましい共役ジエンはフラン環基である。
【0019】
ジエノフィル部位の具体例として、マレイミド環基の他、下記の基が挙げられる。
【化4】

【0020】
ジエノフィル部位には、ディールス・アルダー反応の反応性を高めるため、カルボニル基やシアノ基などの電子求引性の置換基を付加することが好ましい。特に好ましいジエノフィル部位はマレイミド環基である。
【0021】
本発明によると、エポキシド化合物と二酸化炭素とを共重合させて得られたポリカルボナートおよび溶解重合触媒を含む重合溶液に、ジエノフィル部位または共役ジエン部位を含む不溶性粒状担体を導入する。不溶性粒状担体は、重合溶液への分散性が良好であり、溶解重合触媒の固定化、および固定化された重合触媒の重合溶液からの固−液分離を効率よく行えるものであれば、任意の粒状担体を用いることができる。不溶性粒状担体の大きさは、触媒固定化反応の効率を考慮すると小さい方がよいが、その後の固−液分離の容易性を考慮すると小さ過ぎない方がよい。したがって、触媒の分離・回収プロセスの全体効率を向上させるため、不溶性粒状担体は乾燥状態での平均粒径が5〜500μm、特に50〜200μmの範囲内にあることが好ましい。不溶性粒状担体は、予めジエノフィル部位または共役ジエン部位を導入するための官能基を有するものが好ましい。このような官能基を有する不溶性粒状担体としては、公知のものを用いることができ、特に、Wangレジンとして知られている官能基含有架橋ポリスチレンビーズを好適に使用することができる。
【0022】
本発明によると、重合触媒を含む溶液中に不溶性粒状担体を導入した後、ディールス・アルダー反応により重合触媒を不溶性粒状担体に固定化する。上述したように、ディールス・アルダー反応は低温において付加反応が優勢となり、よって重合触媒が不溶性粒状担体に固定化される。付加反応が優勢となる温度は、用いる共役ジエンとジエノフィルの具体的な組合せにもよるが、一般に−20〜100℃の範囲内にある。したがって、本発明による重合触媒の不溶性粒状担体への固定化は、室温において、単に不溶性粒状担体を重合溶液に導入して混合するだけで実施可能であり、特別な熱管理を要しないので、非常に簡便である。触媒の固定化に要する時間は、ディールス・アルダー反応の反応性にもよるが、一般に1〜24時間である。なお、不溶性粒状担体の重合溶液中への導入量は、回収すべき触媒の濃度や、ディールス・アルダー反応に関与するジエノフィル部位または共役ジエン部位の量によって、当業者であれば適宜決定できる事項である。
【0023】
本発明によると、不溶性粒状担体に固定化された重合触媒を、濾過、遠心分離等により重合溶液から固液分離する。濾液には生成物ポリマーが含まれ、これを常用手法により濃縮し、あるいは必要に応じて再沈殿させて、純度の高い生成物ポリマーを得ることができる。
【0024】
不溶性粒状担体に固定化された触媒は、逆ディールス・アルダー反応を利用することで容易に不溶性粒状担体から単離することができる。すなわち、触媒を固定化した不溶性粒状担体を、触媒の良溶媒に分散させ、この分散液を単に加熱することにより触媒を不溶性粒状担体から脱離させることができる。加熱温度は逆ディールス・アルダー反応が優勢になる温度にすればよく、一般には100℃以上である。加熱温度の上限は、用いた溶媒の沸点、触媒や不溶性粒状担体の耐熱性等、実用上の要件から決められる。触媒の脱離に要する時間は、逆ディールス・アルダー反応の反応性にもよるが、一般に1〜24時間である。逆ディールス・アルダー反応終了後、分散液を熱時濾過し、その濾液を濃縮することにより触媒を単離することができる。
【0025】
本発明によりエポキシド化合物と二酸化炭素とを共重合させることによりポリカルボナートを製造するための重合触媒は、下記一般式(I)または(II)で表される金属錯体であることが好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
式(I)または(II)において、Mは、コバルト、クロムおよびアルミニウムからなる群より選ばれる中心金属であり、特にコバルトであることが好ましい。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される。あるいは2個のR1および/または2個のR2が互いに結合して、置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。
【0029】
1およびR2の置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
1およびR2の置換または非置換のアリール基としては、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0031】
1およびR2の置換または非置換のヘテロアリール基としては、炭素数5〜20の置換または非置換のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基などの置換または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0032】
2個のR1および/または2個のR2が互いに結合して、置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。このような飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香族環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環などが挙げられる。この場合、環を構成する炭素数が4〜10の置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成することが好ましい。例えば、R1とR2が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0033】
3、R4およびR5で表される基のうち少なくとも1つは、上述した共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含有する基である。残りのR3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR4とR5が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。
【0034】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0035】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルケニル基としては、炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基、例えば、ビニル基、2−プロペニル基などが挙げられる。アルケニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
3、R4およびR5のアリール基としては、炭素数6〜10の置換または非置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0037】
3、R4およびR5の置換または非置換のヘテロアリール基としては、炭素数5〜10の置換または非置換のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基などの置換または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0038】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、アダマンチルオキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0039】
3、R4およびR5のアシル基としては、炭素数1〜20のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基などの脂肪族アシル基、ベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリメトキシベンゾイル基、2,6−ジイソプロポキシベンゾイル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、9−アントリルカルボニル基などのアリールアシル基などが挙げられる。アシル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0040】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20の置換または非置換のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
3、R4およびR5の置換または非置換のアリールオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20の置換または非置換のアリールオキシカルボニル基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニル基が挙げられる。アリールオキシカルボニル基は、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、スルホ基、ホルミル基、などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
3、R4およびR5の置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基などが挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0043】
隣り合う炭素原子上のR4とR5は、互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0044】
Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。アニオン性配位子Zはエポキシド化合物のエポキシド炭素に対して求核性を有する場合がある。Zの具体例として、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、プロピオナート、シクロヘキシルカルボキシラートなどの脂肪族カルボキシラート;ベンゾアート、p−メチルベンゾアート、3,5−ジクロロベンゾアート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、4−tert−ブチルベンゾアート、ペンタフルオロベンゾアート、ナフタレンカルボキシラートなどの芳香族カルボキシラート;メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシドなどのアルコキシド;フェノキシド、o−ニトロフェノキシド、p−ニトロフェノキシド、m−ニトロフェノキシド、2,4−ジニトロフェノキシド、3,5−ジニトロフェノキシド、3,5−ジフルオロフェノキシド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシド、1−ナフトキシド、2−ナフトキシドなどのアリールオキシドなどが挙げられる。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
【0045】
上記金属錯体に助触媒をさらに組み合わせた触媒システムを用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合を行うこともできる。助触媒をさらに用いることにより、共重合の反応速度を高める、および/または共重合体の交互規則性を高める、および/または副生成物である環状カルボナートの生成を抑制することができる。
【0046】
上記金属錯体と組み合わせることが可能な助触媒の一例は、リンおよび/または窒素を含むカチオンと対アニオンとからなる塩である。そのような助触媒として、[R104N]+、[R104P]+、[R103P=N=PR103+(式中、R10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)および式(VII):
【0047】
【化7】

【0048】
(式中、R10は、上記説明したとおりであり、R11は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩を使用できる。
【0049】
10およびR11の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの、直鎖または分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。R10およびR11は、上記カチオン([R104N]+、[R104P]+、[R103P=N=PR103+、式(VII)のイミダゾリウム)が全体として共重合反応に有利な立体的効果を発揮する、すなわち適切な嵩高さを有するように、選択して組み合わせることができる。
【0050】
上記塩を構成するカチオンとして、[R104N]+、[R103P=N=PR103+、または式(VII)のイミダゾリウムを使用することが好ましく、[R103P=N=PR103+を使用することがより好ましい。
【0051】
四級アンモニウム[R104N]+の具体例として、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリシクロヘキシルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウムなどが挙げられる。
【0052】
四級ホスホニウム[R104P]+の具体例として、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラシクロヘキシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラ(メトキシフェニル)ホスホニウムなどが挙げられる。
【0053】
ビス(ホスホラニリデン)アンモニウム[R103P=N=PR103+の具体例として、ビス(トリブチルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(エチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(n−ブチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(ジメチルフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリトリルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリナフチルホスホラニリデン)アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムが好ましい。
【0054】
式(VII)のイミダゾリウムの具体例として、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
【0055】
上記塩を構成するアニオンとして、Zについて上述したものを挙げることができ、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
【0056】
上記カチオンおよびアニオンからなる塩として、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾアート(PPNOBzF5)、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロリドなどが挙げられ、PPNF、PPNClおよびPPNOBzF5が好ましい。
【0057】
上記の金属錯体を用いたポリカルボナートの合成に使用するエポキシド化合物として、式(VIII):
【0058】
【化8】

【0059】
(式中、R12およびR13は、同一でも異なっていてもよく、H、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のアリール基であるか、またはR12とR13が互いに結合して置換もしくは非置換の環を形成してもよい。)で表されるものが使用できる。
【0060】
12およびR13のアルキル基として、炭素数1〜10の直鎖または分岐の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−メチル−1−エチル−n−ペンチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1−エチル−1,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−2,2−ジメチル−n−プロピル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられ、メチル基であることが好ましい。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0061】
12およびR13の置換または非置換のアリール基として、置換または非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基などが挙げられ、フェニル基であることが好ましい。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの別のアリール基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0062】
12とR13は、互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の、置換または非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R12とR13が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0063】
そのようなエポキシド化合物として、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、3−フェニルプロピレンオキシド、3,3,3−トリフルオロプロピレンオキシドなどが挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、またはそれらの組み合わせが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの組み合わせがより好ましい。
【0064】
エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合は、加圧可能な公知の重合反応装置、例えばオートクレーブを用いて行うことができる。共重合の反応温度は、一般に約0℃以上、約120℃以下とすることができ、約10℃以上、約80℃以下であることが好ましく、約20℃以上、約45℃以下であることがより好ましい。一般に、共重合を低温で行うと環状カルボナートの生成を抑制でき、高温で行うと反応速度が増加してTOFおよび/またはTONを向上させることができる。
【0065】
共重合時の二酸化炭素の分圧は、一般に約0.1MPa以上、約10MPa以下とすることができ、約5MPa以下であることが好ましく、約2MPa以下であることがより好ましい。窒素、アルゴンなどの不活性ガスが二酸化炭素と一緒に反応雰囲気中に存在してもよい。
【0066】
エポキシド化合物と触媒である金属錯体のモル比は、一般にエポキシド化合物:金属錯体=約1000:1以上、約2000:1以上、または約4000:1以上であり、触媒の利用効率などの観点からは、約10000:1以上、または約20000:1以上であることが好ましい。必要に応じて使用される助触媒の量は、金属錯体1モルに対して、一般に約0.1〜約10モルとすることができ、約0.5〜約5モルであることが好ましく、約0.8〜約1.2モルであることがより好ましい。
【0067】
共重合は無溶媒で行ってもよく、必要に応じて溶媒を使用して行ってもよい。使用可能な溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、プロピレンカルボナート、ジメチルカルボナートなどのカルボナート系溶媒およびそれらの組み合わせを用いることができ、ジクロロメタン、トルエン、ジメチルホルムアミドおよび1,2−ジメトキシエタンが好ましく、ジクロロメタンおよび1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。溶媒を使用する場合、その量は、エポキシド化合物1質量部に対して、一般に約0.1〜約100質量部とすることができ、約0.2〜約50質量部であることが好ましく、約0.5〜約20質量部であることがより好ましい。
【0068】
所望量のエポキシド化合物が重合した後、公知の後処理を行うことができる。例えば、安息香酸などのカルボン酸、塩酸、メタノール、塩酸/メタノール混合物などを反応停止剤として反応混合物に投入し、必要に応じて昇温および/または攪拌して反応を終了することができる。重合終了後、本発明により重合触媒を不溶性粒状担体に固定化し、重合溶液から分離させる。次いで、重合触媒を除去した重合溶液に含まれる生成物ポリマーを、単に濃縮するだけで精製されたポリマーが得られる。得られたポリマーは、必要に応じて、例えば、貧溶媒としてメタノール、ヘキサンなどを用いて再沈殿させてもよく、また、カラムクロマトグラフィーなどの周知の手段を用いてさらに精製してもよい。
【実施例】
【0069】
本発明の具体的態様の一つを下記の実施例で説明する。本実施例では、重合触媒としてコバルト−ケトイミナト錯体にフラン環(共役ジエン部位)を結合させたものを用い、不溶性粒状担体として架橋ポリスチレン(PS)ビーズにマレイミド環(ジエノフィル部位)を結合させたものを用いた。共役ジエン部位を含む重合触媒とジエノフィル部位を含む不溶性粒状担体との間のディールス・アルダー反応による付加・脱離の概要を下記に示す。なお、本発明は下記具体的態様に限定されるものではない。
【0070】
【化9】

【0071】
本実施例で得られた化合物のH-NMRスペクトルの測定は、JEOL社製JNM-ECP500(500 MHz)またはJNM-ECS400(400 MHz)を用いて行なった。ポリカルボナートの分子量測定は、ジーエルサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーシステム(DG660B・PU713・UV702・RI704・CO631A)とSHODEX社製KF-804Fカラム2本を用いてテトラヒドロフラン又はクロロホルムを溶出液として(40℃、1.0 mL/分)、ポリスチレン標準を基準に換算して測定し、さらに解析ソフトウェア(Scientific Software社製EZChrom Elite)で処理して求めた。
【0072】
(1)触媒の調製
以下の合成例に溶媒として使用したトルエン、塩化メチレン、ヘキサンは、関東化学株式会社から入手した脱水グレードの試薬を、GlsassContour社製溶媒精製装置で精製したものを使用した。メタノール、ジメチルアセトアミドについては、脱水グレードの試薬を関東化学株式会社から入手したものをそのまま使用した。フルフリルアルコール、酸化亜鉛は関東化学株式会社から入手したものを、安息香酸銀、水素化ナトリウム(60%油分散体)、Wangレジン(1%架橋体,100〜200メッシュ、0.9mmol‐Br/g)はAldrich社から入手したものを、それぞれそのまま使用した。以下の合成において原料に用いられるtrans‐N,N’‐ビス(2‐エトキシカルボニル‐3‐オキソブチリデン)‐1,2‐シクロヘキサンジアミナトコバルト(III )ヨージド(コバルト錯体1)(特開2006‐89493号公報)、N‐ヒドロキシエチルマレイミド(Macromolecules 2008,41,719)は文献に従って調製したものを使用した。
【0073】
合成例A:コバルト錯体の合成
A−1:コバルト錯体2の合成
【化10】

【0074】
Ar雰囲気下、コバルト錯体1(5.0mmol、2.89g)を塩化メチレン250mLに溶解させ、安息香酸銀(5.5mmol、1.26g)を加え、暗所下、室温で12時間撹拌した。生じた沈殿を濾過で除去した後、濾液を濃縮し、残留物を塩化メチレン、次いでヘキサンを用いて再沈殿させて、緑色固体のコバルト錯体2を2.54g得た(収率89%)。コバルト錯体2のH-NMRスペクトルを以下に示す。
H NMR(DMSO-d6, 500 MHz):δ 7.98(m,2H),7.73(s,2H),7.33(m,2H),7.18(m,1H),4.16(q,4H),3.57(m,2H),2.85(s,6H),1.91(br,2H),1.72(br,2H),1.50(br,2H),1.27(m,8H)ppm
【0075】
A−2:コバルト錯体3の合成
コバルト錯体2(4.0mmol、2.29g)、フルフリルアルコール(40mmol、3.47mL)をトルエン200mLに溶解させ、酸化亜鉛(0.4mmol、0.033g)を加え120℃で12時間還流した。酸化亜鉛を濾過で除去した後、濾液を濃縮し、残留物を塩化メチレン、次いでヘキサンを用いて再沈殿させて、緑色粉末のコバルト錯体3を2.43g得た(収率90%)。コバルト錯体3のH-NMRスペクトルを以下に示す。
H NMR(DMSO-d6, 500 MHz):δ 7.98(m,2H),7.73(s,2H),7.61(d,2H),7.32(m,2H),7.18(m,1H),6.43(d,2H),6.30(d,2H)4.34(s,4H),3.61(m,2H),2.85(s,3H),2.75(s,3H),1.91(br,2H),1.74(br,2H),1.46(br,2H),1.27(m,2H)ppm
【0076】
合成例B:マレイミド含有樹脂の合成
【化11】

【0077】
Ar雰囲気下、ヘキサンで洗浄して油分を取り除いた水素化ナトリウム(30mmol、0.72g)をN,N‐ジメチルアセトアミド60mLに懸濁させ、そこにN‐ヒドロキシエチルマレイミド(15mmol、2.11g)を1時間かけて加えた後、さらに1時間撹拌した。沈殿物を濾過後、N,N‐ジメチルアセトアミドで膨潤させたWangレジン3.33g(Br3mmolに相当)を濾液に加え、室温で2日間撹拌した。濾過後、濾紙上の樹脂を、順に水、N,N‐ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、トルエン、THF、メタノールで洗浄し、室温で真空乾燥して薄茶色粉末を3.43g得た(マレイミド部位導入量0.5mmol/g)。
【0078】
(2)重合反応の実施
以下の重合実験に使用したプロピレンオキシド(PO)は、東京化成工業から入手した試薬を水素化カルシウム、水酸化カリウムで脱水後、アルゴン雰囲気下で蒸留して得られたものであり、エチレンオキシド(EO)はエアウォーター株式会社から入手したものをそのまま使用した。THF、DMFは関東化学株式会社から、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)はAldrich社から、安息香酸は東京化成工業株式会社から、それぞれ購入したものをそのまま用いた。ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)は、文献(Org.Let.,2006,8,4401)に従って合成した。
【0079】
各金属錯体の触媒活性は金属1mol当たり、1時間当たりのエポキシドのポリマーへの転化量(mol)(TOF)、または、触媒(共触媒含む)1g当たりのポリマーの収量(g)(TON)によって評価した。
選択性は、反応溶液のH NMRスペクトルの積分値から算出した。
【0080】
実施例1
内容積50mLのステンレス製オートクレーブにコバルト錯体3(7.1μmol、5.8mg)、PPNCl(7.1μmol、4.1mg)を入れ、Ar雰囲気に置換した後、PO(14.2mmol、1.0mL)、二酸化炭素2.0MPaを導入し、40℃で2時間反応させた。反応混合物のH NMRを測定した後、内容物をTHFに溶解させ、そこにマレイミド含有Wangレジン1.0g、安息香酸(0.07mmol、8.5mg)を加え室温で12時間撹拌した。樹脂を濾過後、濾液を濃縮したところ白色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、環状カーボネートを除去したところ白色固体を0.21g得た。
ポリカルボナート:環状カルボナート:ポリエーテル=92:8:0、収率:14.2%、TOF:142h−1、TON:21g/g−cat、M=10300、M/M=1.09
【0081】
実施例2
内容積50mLのステンレス製オートクレーブにコバルト錯体3(35.5μmol、29mg)、PPNCl(35.5μmol、20mg)を入れ、Ar雰囲気に置換した後、PO(142mmol、10mL)、二酸化炭素2.0MPaを導入し、35℃で24時間反応させた。反応混合物のH NMRを測定した後、内容物をTHFに溶解させ、そこにマレイミド含有Wangレジン3.0g、安息香酸(0.35mmol、43mg)を加え室温で12時間撹拌した。樹脂を濾過後、濾液を濃縮したところ白色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、環状カーボネートを除去したところ白色固体1.62g得た。
ポリカルボナート:環状カルボナート:ポリエーテル=93:7:0、収率:55%、TOF:92h−1、TON:163g/g−cat、M=60300、M/M=1.31
【0082】
実施例3
内容積50mLのステンレス製オートクレーブにコバルト錯体3(7.1μmol,5.8mg)、PPNF(7.1μmol,4.0mg)を入れ、Ar雰囲気に置換した後、EO(71mmol,4.0mL)、二酸化炭素2.0MPaを導入し、40℃で24時間反応させた。反応混合物のH NMRを測定した後、内容物をDMFに溶解させ、そこにマレイミド含有Wangレジン2.0g、安息香酸(0.14mmol、17mg)を加え室温で12時間撹拌した。樹脂を濾過後、濾液を濃縮したところ白色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、環状カーボネートを除去したところ白色固体を2.85g得た。
ポリカルボナート:環状カルボナート:ポリエーテル=80:20:0、収率:40.2%、TOF:167h−1、TON:290g/g−cat、M=20000、M/M=1.22
【0083】
実施例4
内容積50mLのステンレス製オートクレーブにコバルト錯体3(17.7μmol、15mg)、PPNF(17.7μmol、10mg)を入れ、Ar雰囲気に置換した後、EO(177mmol、8.8mL)、二酸化炭素2.0MPaを導入し、25℃で12時間反応させた。反応混合物のH NMRを測定した後、内容物をDMFに溶解させ、そこにマレイミド含有Wangレジン3.0g、安息香酸(0.18mmol、21mg)を加え室温で12時間撹拌した。樹脂を濾過後、濾液を濃縮したところ白色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、環状カーボネートを除去したところ白色固体1.43g得た。
ポリカルボナート:環状カルボナート:ポリエーテル=95:5:0、収率:9.2%、TOF:76h−1、TON:57g/g−cat、M=8800、M/M=1.12
【0084】
【表1】

【0085】
(3)触媒のリサイクル
実施例5
実施例2で濾別したWangレジンをトルエン50mLに分散させ、120℃で12時間還流した。熱時濾過をし、濾紙上の樹脂を熱トルエンで洗浄後、濾液を濃縮した。残留物の重さより触媒回収率を求めたところ55%であった。これを塩化メチレン20mLに溶解させ、安息香酸(19μmol、2.4mg)を加え、12時間反応させた。揮発分を減圧留去し、残留物をオートクレーブに移し、PPNCl(19μmol、11.2mg)を加えAr雰囲気に置換した後、PO(76mmol、5.3mL)を加え、実施例2と同じ方法で重合を行なったところ、白色固体1.36gを得た。
ポリカルボナート:環状カルボナート:ポリエーテル=71:29:0、収率:20%、TOF:33h−1、TON:55g/g−cat、M=31800、M/M=1.13
【0086】
実施例6
実施例4で濾別したWangレジンをトルエン50mLに分散させ、120℃で12時間還流した。熱時濾過をし、濾紙上の樹脂を熱トルエンで洗浄後、濾液を濃縮した。残留物の重さより触媒回収率を求めたところ77%であった。これを塩化メチレン20mLに溶解させ、安息香酸(13.6μmol,1.7mg)を加え、12時間反応させた。揮発分を減圧留去し、残留物をオートクレーブに移し、PPNF(13.6μmol,7.6mg)を加えAr雰囲気に置換した後、EO(136mmol,6.7mL)を加え、実施例4と同じ方法で重合を行なったところ、白色固体0.83gを得た。
ポリカルボナート:環状カルボナート:ポリエーテル=84:26:0、収率:7.0%、TOF:58h−1、TON:42g/g−cat、M=9400、M/M=1.11
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
表1のデータは、共役ジエン部位としてフラン環を含むコバルト−ケトイミナト錯体が、エポキシド化合物と二酸化炭素とを高い触媒活性および高い選択性で共重合させたことを示している。表2のデータは、ジエノフィル部位としてマレイミド環を含む不溶性粒状架橋ポリスチレンビーズを用いたディールス・アルダー反応により、ポリカルボナート中の残留触媒が顕著に減少すると同時に、高い回収率で触媒が回収されたことを示している。さらに表3のデータは、回収された触媒が再利用可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、二酸化炭素を炭素源として利用したポリカルボナートを工業的に製造するプロセスに非常に有用である。特に、本発明は、ポリカルボナート重合時には均一反応系による高い触媒活性を担保しつつ、後処理において高いポリマー精製度と、触媒の分離、回収、再利用とを、製造プロセスのスケールアップに適した極めて簡便な方法で両立することができる。本発明によって得られるポリカルボナートは、光学材料、熱分解性材料、医用材料、生分解性樹脂等の様々な用途・分野で利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシド化合物と二酸化炭素とを溶液中で共重合させることによりポリカルボナートを製造する方法において該共重合に用いた溶解重合触媒を回収するための方法であって、該重合触媒は共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含み、対応してジエノフィル部位または共役ジエン部位を表面に含む不溶性粒状担体を、該重合触媒を含む溶液中に導入し、次いでディールス・アルダー(Diels-Alder)反応により該重合触媒を該不溶性粒状担体に固定化し、そして該固定化された重合触媒を該溶液から分離することを特徴とする、重合触媒の回収方法。
【請求項2】
さらに、前記固定化された重合触媒を、逆ディールス・アルダー反応により前記不溶性粒状担体から単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合触媒が、下記一般式(I)または(II)で表される金属錯体である、請求項1または2に記載の方法。
【化1】

【化2】

(式中、Mは、コバルト、クロムおよびアルミニウムからなる群より選ばれる中心金属であり、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるか、あるいは2個のR1および/または2個のR2が互いに結合して、置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;R3、R4およびR5で表される基のうち少なくとも1つが、共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含有する基であり、残りのR3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR4とR5が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
【請求項4】
前記不溶性粒状担体が架橋ポリスチレンビーズである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記共役ジエン部位がフラン環を構成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジエノフィル部位がマレイミド環を構成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
エポキシド化合物と二酸化炭素とを溶液中で共重合させることによりポリカルボナートを製造する方法であって、該共重合に用いる重合触媒は共役ジエン部位またはジエノフィル部位を含み、対応してジエノフィル部位または共役ジエン部位を表面に含む不溶性粒状担体を、該共重合後の該重合触媒を含む溶液中に導入し、次いでディールス・アルダー反応により該重合触媒を該不溶性粒状担体に固定化し、そして該固定化された重合触媒を該溶液から除去することを特徴とする、ポリカルボナートの製造方法。
【請求項8】
前記重合触媒が、請求項2に記載の方法により単離された触媒である、請求項7に記載の方法。

【公開番号】特開2011−195634(P2011−195634A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61295(P2010−61295)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】