説明

ポリカーボネートジオールの製造方法

【課題】ジフェニルカーボネートとジヒドロキシ化合物とから得られるポリカーボネートジオールであって、従来品よりもより一層着色が低減されたポリカーボネートジオールを、原料の精製処理等を行うことなく、簡易な工程で工業的、経済的に有利に製造する。
【解決手段】ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートをエステル交換触媒の存在下で重縮合反応する工程を含むポリカーボネートジオールの製造方法であって、該ポリカーボネートジオールは、分子鎖中に、下記式(A)で表される繰り返し単位を有し、該重縮合反応における最高温度が190℃未満であることを特徴とするポリカーボネートジオールの製造方法。


(上記式(A)において、lは2〜20の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネートジオールの製造方法に係り、詳しくは、着色が低減されたポリカーボネートジオールを工業的に有利に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートジオールを製造する方法としては、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とをエステル交換反応させる方法が知られており、この方法に使用される炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネートなどが挙げられるが、反応性の点ではジフェニルカーボネートが優れる。例えば、ジメチルカーボネートを用いて1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールを重縮合した場合は、反応性の低いネオペンチルグリコールを導入する事が難しいが、ジフェニルカーボネートを用いるとネオペンチルグリコールを容易に導入する事ができる。
【0003】
ポリカーボネートジオールは、ポリウレタンやウレタンアクリレートの原料として使用されるが、原料のポリカーボネートジオールが着色していると、このポリカーボネートジオールから製造されるポリウレタン等も着色したものとなり、商品価値が低下するため、ポリカーボネートジオールに対しても着色の低減が望まれている。
【0004】
従来、ポリカーボネートジオールの着色を低減したものとして、ジフェニルカーボネートと1,6−ヘキサンジオールからなるAPHA値(溶融色)25のポリカーボネートジオールが示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ジフェニルカーボネートと1,6−ヘキサンジオールからなるAPHA値15のポリカーボネートジオールが示されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、ジフェニルカーボネートと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるAPHA値100のポリカーボネートジオールが示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−95854号公報
【特許文献2】特開2000−95855号公報
【特許文献3】特開昭64−1726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従前知られた技術では、例えば特許文献1に記載された技術では、着色低減の程度は未だ十分とは言えなかった。また、特許文献2に記載された技術では、反応に用いる1,6−ヘキサンジオールには、予め水素添加精製処理を施したものが必要であり、このような原料の精製処理を行うことは、工程が複雑になり、工業的に不利であり、経済性の点でも劣るものであった。更に、特許文献3に記載された技術では、用いたジフェニルカーボネートは予め活性白土を用いた吸着処理により精製したものであり、やはり、工程が複雑になり、工業的に不利であり、更には経済性の点でも劣るものであった。
【0009】
本発明は、ジフェニルカーボネートとジヒドロキシ化合物とから得られるポリカーボネートジオールであって、従来品よりもより一層着色が低減されたポリカーボネートジオールを、原料の精製処理等を行うことなく、簡易な工程で、工業的、経済的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートをエステル交換触媒の存在下に重縮合反応させてポリカーボネートジオールを製造する際に、重縮合反応における最高温度を制御することにより、得られるポリカーボネートジオールの着色が低減されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[9]に存する。
【0012】
[1] ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートをエステル交換触媒の存在下で重縮合反応する工程を含むポリカーボネートジオールの製造方法であって、該ポリカーボネートジオールは、分子鎖中に、下記式(A)で表される繰り返し単位を有し、該重縮合反応における最高温度が190℃未満であることを特徴とするポリカーボネートジオールの製造方法。
【0013】
【化1】

【0014】
(上記式(A)において、lは2〜20の整数を表す。)
【0015】
[2] 本発明のポリカーボネートジオールは、分子鎖中に、前記式(A)で表される繰り返し単位とは異なる構造である、下記式(B)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする[1]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0016】
【化2】

【0017】
(上記式(B)において、Xはそれぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0018】
[3] 前記式(B)で表される繰り返し単位が、下記式(C)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする[2]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0019】
【化3】

【0020】
(上記式(C)において、mは0又は1、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはハロゲン原子又はこれらを含む置換基を有していてもよい。Yはそれぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0021】
[4] 前記式(C)において、m=0であり、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であることを特徴とする[3]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0022】
[5] 前記式(B)で表される繰り返し単位が、前記式(B)におけるXが、下記式(D)である繰り返し単位を含むことを特徴とする[2]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0023】
【化4】

【0024】
[6] 前記重縮合反応における最低圧力が1.33kPa未満であることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0025】
[7] 前記エステル交換触媒が、周期表1族金属元素を含む化合物及び/又は周期表2族金属元素を含む化合物であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0026】
[8] 前記エステル交換触媒が、周期表第2族金属元素を含む化合物であることを特徴とする[7]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0027】
[9] 本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量が300〜5000であることを特徴とする[1]ないし[8]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、原料ジヒドロキシ化合物の水素添加精製処理や、ジフェニルカーボネートの吸着処理といった煩雑な前処理や複雑な工程及び装置を必要とすることなく、重縮合反応における最高温度を制御するのみで、既存の設備にて、着色の問題のない白色度の高いポリカーボネートジオールを工業的かつ経済的に有利に製造することができる。
【0029】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法により製造されたポリカーボネートジオールは、その低着色性により、これを原料として着色の問題のない、商品価値の高いポリウレタンやウレタンアクリレート等の製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されず適宜変形して実施することができる。
【0031】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法は、ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートをエステル交換触媒の存在下で重縮合反応する工程を含むポリカーボネートジオールの製造方法であって、該ポリカーボネートジオールは、分子鎖中に、下記式(A)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(A)」と称す場合がある。)を有し、該重縮合反応における最高温度が190℃未満であることを特徴とする。
【0032】
【化5】

【0033】
(上記式(A)において、lは2〜20の整数を表す。)
【0034】
本発明により製造されるポリカーボネートジオール(以下、「本発明のポリカーボネートジオール」と称す。)は、更に、上記繰り返し単位(A)とは異なる構造である、下記式(B)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(B)」と称す場合がある。)を有していてもよい。
【0035】
【化6】

【0036】
(上記式(B)において、Xはそれぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0037】
繰り返し単位(B)としては、例えば下記式(C)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C)」と称す場合がある。)が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
(上記式(C)において、mは0又は1、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはハロゲン原子又はこれらを含む置換基を有していてもよい。Yはそれぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0040】
また、繰り返し単位(B)としては、前記式(B)におけるXが、下記式(D)である繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(D)」と称す場合がある。)も好適なものとして挙げられる。
【0041】
【化8】

【0042】
<繰り返し単位(A)>
前記式(A)において、lは2〜20の整数であるが、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜6である。
【0043】
繰り返し単位(A)を与える原料ジヒドロキシ化合物(以下、「(A)成分」と称す場合がある。)としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール等の直鎖状の末端ジヒドロキシ化合物等を挙げることができる。これらのジヒドロキシ化合物は単独で(A)成分として用いても、又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明のポリカーボネートジオールが分子鎖中に繰り返し単位(A)を有することにより、熱安定性と重合反応性とのバランスに優れ、重縮合反応における最高温度を190℃未満とすることにより、ポリカーボネートジオールの着色を効果的に制御することができる。
【0045】
<繰り返し単位(B)>
前記式(B)において、Xは好ましくはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜15の2価の基であり、直鎖又は分岐鎖の鎖状基、環状基、いずれの構造が含まれていてもよい。
ただし、Xは、式(A)における−(CH−とは異なる基である。
【0046】
Xを構成する元素としての炭素数は好ましくは10以下であり、6以下であることがより好ましい。
X中に含まれていてもよいヘテロ原子は、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等であり、化学的な安定性から好ましくは酸素原子である。
【0047】
Xの基の具体例としては、繰り返し単位(B)を与える原料ジヒドロキシ化合物(以下、「(B)成分」と称す場合がある。)として以下に例示した化合物を用いた場合に生成する基が挙げられ、好ましくは下記例示の化合物のうち好ましい化合物を反応して得られる基が挙げられる。
【0048】
(B)成分としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールなどのエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;ビスヒドロキシエチルチオエーテルなどのチオエーテルジオール類;2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖を有するジオール類;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジオール類;ジエタノールアミン、N−メチルージエタノールアミン等の含窒素ジオール類;ビス(ヒドロキシエチル)スルヒド等の含硫黄ジオール類等を挙げることができる。これらのジヒドロキシ化合物は単独で(B)成分として用いても、又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0049】
<繰り返し単位(C)>
繰り返し単位(B)は、前記繰り返し単位(C)であることが好ましい。
【0050】
式(C)において、R及びRはそれぞれ独立に異なる基であっても、同じ基であってもよい。R,Rの炭素数が多すぎると重縮合反応性が低下するなどの問題が生ずるので、炭素数は15以下であり、10以下であることが好ましい。
【0051】
,Rのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基等が好ましい。
【0052】
,Rのアルケニル基としては、例えば、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、特にエチレン基、プロペニル基等が好ましい。
,Rのアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられる。中でも、エチニル基、プロピニル基等が好ましい。
,Rのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基が挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等が好ましい。
【0053】
,Rのアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基にさらに置換していてもよい置換基としては、例えば、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子等が挙げられる。中でも、ニトロ基、ハロゲン原子等が好ましい。
【0054】
置換基としてのハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
【0055】
,Rは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であることが、重合反応性が高く、原料の入手がしやすいことから好ましい。
【0056】
Yを構成する元素としての炭素数は、15以下であり、10以下であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子が入っていてもよい。
【0057】
Yの基の具体例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCH(CH)CH−、下記式(E)で表される基等が挙げられる。中でも、−CH−、−CHCH−及び下記式(E)で表される基等がより好ましい。
【0058】
【化9】

【0059】
繰り返し単位(C)を与える具体的な原料ジヒドロキシ化合物(以下、「(C)成分」と称す場合がある。)の例としては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどの2,2−ジアルキル置換1,3−プロパンジオール類;2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,9,9−テトラメチル−1,10−デカンジオールなどのテトラアルキル置換アルキレンジオール類;3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状基を含むジオール類;2,2−ジフェニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジビニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジオール、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)チオエーテル、2,2,4,4−テトラメチル−3−シアノ−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は単独で(C)成分として用いても、又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0060】
<繰り返し単位(D)>
繰り返し単位(B)は、前記繰り返し単位(D)であってもよく、繰り返し単位(D)を与える具体的な原料ジヒドロキシ化合物(以下、「(D)成分」と称す場合がある。)の例は、イソソルビド、及びその立体異性体であるイソマンニド、イソイディッド等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でもソルビトールの脱水反応で容易に得られ、工業的な量で市販もされているイソソルビドが好ましい。
【0061】
<繰り返し単位(A)〜(D)の組み合わせ>
本発明のポリカーボネートジオールは、分子鎖が繰り返し単位(A)のみで構成されるものであってもよく、繰り返し単位(A)のみで構成されるポリカーボネートジオールは、色調と熱安定性の点で優れている。
【0062】
また、本発明のポリカーボネートジオールは、分子鎖中に繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とを含むものであってもよい。
本発明のポリカーボネートジオールが繰り返し単位(B)を含む場合、繰り返し単位(A),(B)は、それぞれ、本発明のポリカーボネートジオールにおいて連続していてもよいし、一定の間隔で存在していてもよいし、偏在していてもよい。
本発明のポリカーボネートジオールが、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とを有する場合、本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の割合は、ハンドンリング性の観点から、通常、モル比で(A)/(B)=99/1〜1/99であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましく、70/30〜30/70であることが更に好ましく、60/40〜40/60であることが特に好ましい。
【0063】
本発明のポリカーボネートジオールは、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)として繰り返し単位(C)を含むことが好ましい。
この場合、成分(C)と成分(A)の組み合わせの具体例としては、成分(C)としては、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールが好ましく、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールがより好ましい。
成分(C)と組み合わせる成分(A)の中では、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールが原料ジヒドロキシ化合物の入手性及び得られるポリカーボネートジオールの物性が優れている点でより好ましい。
【0064】
成分(A)と成分(C)の組み合わせから得られるポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造すると、その溶液粘度が低くハンドリング性に優れ、また得られるウレタン樹脂がより柔軟になるという特徴を発現する。
【0065】
本発明のポリカーボネートジオールが、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(C)とを有する場合、本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(C)の割合は、通常、モル比で(A)/(C)=99/1〜1/99であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましく、70/30〜30/70であることが更に好ましく、60/40〜40/60であることが特に好ましい。
【0066】
ポリカーボネートジオールにおける繰り返し単位(C)の構造の割合を上記下限以上とすることによりその効果を十分得ることができる。また、前記上限以下とすることにより、重縮合反応時のハンドリング性が向上する。
【0067】
また、本発明のポリカーボネートジオールは、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)として特に繰り返し単位(D)を含むものであってもよい。
【0068】
繰り返し単位(D)の構造上の第1の特徴は、フラン環が2個縮環したフレキシビリティの小さな剛直な構造である点にあり、このため、繰り返し単位(D)を有するポリカーボネートジオールは、この繰り返し単位(D)の部分において剛直性が発現される。
また、繰り返し単位(D)の第2の特徴は、カーボネート基が、メチレン基等の自由回転可能な基を介することなく、直接縮環フラン環に結合しているため、この部分においても自由度が低く、極めてリジッドな構造となっている点にある。また、第3の特徴として、密度高く親水性のフラン環が2個配置されていることにあり、このため、水分子等の極性基との親和性があり、親水性が高いという特性を有する。
【0069】
本発明のポリカーボネートジオールが繰り返し単位(A)と繰り返し単位(D)とを含む場合、本発明のポリカーボネートジオール中の繰り返し単位(A)の含有量は、ポリカーボネートジオールの規則性を乱し、融点及び粘度を低下させることでのハンドリング性良化の観点から、80質量%以下で存在することが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。一方、繰り返し単位(D)の含有量は、前述した剛直性、親水性等の観点から10質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
分子鎖中に上記範囲で繰り返し単位(D)と繰り返し単位(A)等の他の繰り返し単位とを含むことにより、前述した剛直性、親水性等によりもたらされる効果に加えて、ポリカーボネートジオールの規則性が乱されるため融点及び粘度が低下しハンドリング性が良くなるという効果が得られる。
【0070】
本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖を構成する繰り返し単位(A)と繰り返し単位(D)の割合(以下「(A)/(D)比」と称す場合がある。)は、通常、モル比で繰り返し単位(A)/繰り返し単位(D)=99/1〜1/99である。分子鎖中に繰り返し単位(A)を上記下限以上導入することによりポリカーボネートジオールの規則性が乱されるため融点及び粘度が低下しハンドリング性が改良されるという効果が得られる。前述した剛直性、親水性等の本発明の効果をもたらすのは主として繰り返し単位(D)の部分であり、本発明のポリカーボネートジオール中の繰り返し単位(D)の割合が少なすぎるとその効果が十分得られない場合がある。(A)/(D)比は90/10〜10/90であることが好ましく、さらには、80/20〜20/80であることがより好ましく、70/30〜30/70であることがさらに好ましい。
【0071】
<エステル交換触媒>
エステル交換触媒として利用できる金属は、一般にエステル交換能があるとされている金属であれば制限なく用いることができる。
【0072】
触媒金属の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表1族金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族金属;チタン、ジルコニウム等の周期表4族金属;ハフニウム等の周期表5族金属;コバルト等の周期表9族金属;亜鉛等の周期表12族金属;アルミニウム等の周期表13族金属;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表14族金属;アンチモン、ビスマス等の周期表15族金属;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等ランタナイド系金属等が挙げられる。これらのうち、エステル交換反応速度を高めるという観点から、周期表1族金属、周期表2族金属、周期表4族金属、周期表5族金属、周期表9族金属、周期表12金属、周期表13族金属、周期表14族金属が好ましく、周期表1族金属、周期表2族金属がより好ましく、周期表2族金属がさらに好ましい。周期表1族金属の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムが好ましく、リチウム、ナトリウムがより好ましく、ナトリウムがさらに好ましい。周期表2族金属の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましく、カルシウム、マグネシウムがより好ましく、マグネシウムがさらに好ましい。これらの金属は金属の単体として使用される場合と、水酸化物や塩等の金属化合物として使用される場合がある。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩等の燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、さらにメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
【0073】
これらのうち、好ましくは、周期表1族金属、周期表2族金属、周期表4族金属、周期表5族金属、周期表9族金属、周期表12金属、周期表13族金属、周期表14族金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは周期表1族金属又は周期表2族金属の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、さらに好ましくは周期表2族金属の酢酸塩が用いられる。
【0074】
これらの金属、及び金属化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
エステル交換触媒の周期表1族金属元素を含む化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、フェニルリン酸二ナトリウム;ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二セシウム塩、二リチウム塩;フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩;等が挙げられる。
【0076】
周期表2族金属元素を含む化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0077】
周期表4族金属、12族金属、14族金属元素を含む化合物の例としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド;四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物;酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛の塩;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド等のスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウム化合物;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
【0078】
<原料等の使用割合>
本発明において、重縮合反応に供するジフェニルカーボネートの量は、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対するモル比で下限が好ましくは、0.50、より好ましくは0.70、さらに好ましくは0.80、よりさらに好ましくは0.90、特に好ましくは0.95、最も好ましくは0.98であり、上限は通常1.20、好ましくは1.15、より好ましくは1.10である。ジフェニルカーボネートの使用量が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加する、又は、分子量が所定の範囲とならず目的とするポリカーボネートジオールを製造できない場合があり、上記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
【0079】
エステル交換触媒の使用量は、得られるポリカーボネートジオール中に残存しても性能に影響の生じない量であることが好ましい。
【0080】
エステル交換触媒の使用量は、原料ジヒドロキシ化合物の重量に対する金属の重量比としての上限を、500ppmとすることが好ましく、100ppmとすることがより好ましく、50ppmとすることがさらに好ましい。一方、下限は十分な重合活性が得られる量、すなわち、0.01ppmとすることが好ましく、0.1ppmとすることがより好ましく、1ppmとすることが更に好ましい。
【0081】
<反応温度>
重縮合反応の際の反応温度は、最高温度190℃未満において、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することが出来る。通常反応温度の下限は70℃であることが好ましく、100℃であることがより好ましく、130℃であることが更に好ましい。
反応温度の上限(最高温度)は、190℃未満であり、即ち、本発明では重縮合反応の全工程を通じて反応温度を190℃未満とする。反応温度は、180℃以下であることが好ましく、170℃以下であることが更に好ましく、165℃以下であることが特に好ましく、160℃以下であることが最も好ましい。最高温度を前記の値とすることにより、得られるポリカーボネートジオールの着色、エーテル構造の生成、原料であるジヒドロキシ化合物や副生する環状カーボネート類などの軽沸成分の濃度上昇、などの品質上の問題が生じるのを防ぐことができる。また軽沸成分の濃度を一定量以下に保つことにより、後述する精製工程にて、精製工程における留出物がコンデンサーで固化、閉塞することを防止することができ、運転上のトラブル防止の観点からも上記温度範囲が好ましい。
【0082】
<反応中のフェノール量>
ポリカーボネートジオールは通常重縮合反応中の溶液に含まれるフェノールの含有量(以下、「重合反応成分に含有されるフェノール濃度」と称す場合がある。)を45質量%以下にすることが好ましく、30質量%以下にすることがより好ましく、20質量%以下にすることが更に好ましい。
【0083】
特に、エステル交換反応の全工程を通じて重合反応成分に含有されるフェノール濃度を上記上限以下に維持することが好ましい。重合反応成分に含有されるフェノール濃度を上記上限以下にすることにより、重縮合反応時の高温条件下においてフェノールの量を制限することができ、着色しにくくなる。
なお、フェノール類の含有量を上記上限値以下とする方法としては、例えば、反応初期から減圧下で反応を行い、生成したフェノールを留去することなどが挙げられる。
【0084】
また、重合反応成分に含有されるフェノール濃度は、例えば、反応器から反応溶液の一部を一定時間おきに抜き取り、それをNMR、GPC及びLCで定量することにより測定することができる。
【0085】
<反応圧力>
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成する軽沸成分を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には、減圧条件を採用して軽沸成分を留去しながら反応することが好ましい。
【0086】
又は、反応の途中から徐々に圧力を下げて生成する軽沸成分を留去しながら反応させていくことも可能である。特に反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したモノアルコール、フェノール及び環状カーボネートなどを留去することができるので好ましい。
【0087】
この際の反応終了時の反応圧力は、上限が通常1.33kPa未満であり、0.67kPa未満であることが好ましく、0.53kPa以下であることがより好ましく、0.40kPa以下であることが更に好ましい。即ち、重縮合反応における最低圧力は通常、1.33kPa未満であり、0.67kPa未満であることが好ましく、特に0.53kPa以下であることが好ましく、とりわけ0.40〜0.013kPaであることが好ましい。この圧力が上記上限以上であると、反応性が低下して反応時間が長くなり、得られるポリカーボネートジオールの色調が低下する恐れがある。ただし、この圧力が低過ぎると副生フェノールの留去速度が速いため、重合速度が速くなり、分子量制御が困難になる恐れがあるので、通常0.013kPa以上とする。
【0088】
これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ、窒素、アルゴン及びヘリウムなどの不活性ガスを流通しながら該反応を行うこともできる。
【0089】
重縮合反応の際に低沸のジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期はジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応のジフェニルカーボネートの留去を防ぐことができるので好ましい。
さらにこれら原料の留去を防ぐ意味で、反応器に還流管をつけて、ジフェニルカーボネートとジヒドロキシ化合物を還流させながら反応を行うことも可能であり、この場合、仕込んだ原料が失われず試剤の量比を正確に合わせることが出来るので好ましい。
【0090】
<反応方式>
重縮合反応は、バッチ式又は連続式に行うことができるが、本発明では製品の安定性等から連続式で行うことが好ましい。使用する装置は、槽型、管型及び塔型のいずれの形式であってもよく、各種の攪拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧又は減圧下で行われるのが好ましい。
【0091】
<反応時間>
重縮合反応は、生成するポリカーボネートジオールの分子量を測定しながら、目的の分子量となったところで終了する。重縮合反応に必要な反応時間は、使用するジヒドロキシ化合物及びエステル交換触媒の種類により大きく異なるので、一概に規定することは出来ないが、通常50時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることが更に好ましい。
【0092】
<触媒の失活>
重縮合反応の際にエステル交換触媒を用いると、通常得られたポリカーボネートジオールにはエステル交換触媒が残存する。これらエステル交換触媒が残存すると、ウレタン化反応を行う際に反応の制御が出来なくなる場合がある。
【0093】
この残存触媒の影響を抑制するために、使用したエステル交換触媒とほぼ等モルの公知の失活剤、例えばリン系化合物を添加してもよい。さらには添加後、好ましくは60〜150℃、より好ましくは90〜120℃の温度で処理すると、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
【0094】
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸、並びにリン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル及び亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0095】
前記リン系化合物の使用量は、前述したように、使用したエステル交換触媒とほぼ等モルであることが好ましく、具体的には、使用したエステル交換触媒1モルに対して上限が5モルであることが好ましく、2モルであることがより好ましい。また、下限が0.8モルであることが好ましく、1.0モルであることがより好ましい。
【0096】
リン系化合物の量を前記下限以上とすることにより、前記反応生成物中のエステル交換触媒の失活が十分となり、得られるポリカーボネートジオールを、例えば、ポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができる。また、リン系化合物の量を前記上限以下とすることにより、得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
【0097】
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加温処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、上限が通常150℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましく、100℃であることが更に好ましく、下限は通常50℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、70℃であることが更に好ましい。
【0098】
加熱処理の温度を上記下限以上とすることにより、エステル交換触媒の失活に時間がかかることがなく効率的であり、また失活の程度も十分となる。一方、上記上限以下とすることにより、得られたポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間であることが好ましい。
【0099】
<精製>
前記のポリカーボネートジオール生成物は、該生成物中のポリマー末端に水酸基を有さない不純物、フェノール、原料ジヒドロキシ化合物、ジフェニルカーボネート、副生する軽沸の環状カーボネート及び添加した触媒などを除去する目的で精製することができる。
その際の精製は、軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては、減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留など特にその形態に制限はなく、任意の方法を採用することが可能であるが、中でも薄膜蒸留が効果的である。
【0100】
薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度は、上限が250℃であることが好ましく、200℃であることが好ましい。また、下限が120℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留時の温度の下限を前記の値とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分となる。また、上限を250℃とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
【0101】
薄膜蒸留時の圧力は、上限が500Paであることが好ましく、150Paであることがより好ましく、50Paであることが更に好ましい。薄膜蒸留時の圧力を上記上限値以下とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分に得られる。
また、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度は、上限が250℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。また、下限が80℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
【0102】
薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度を上記下限以上とすることにより、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの流動性が低下するのを防ぐことができる。一方、上記上限以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
また、水溶性の不純物を除くために、水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液などで洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
【0103】
<分子量・分子量分布>
本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)の下限は通常300であり、好ましくは500、さらに好ましくは700、特に好ましくは1,000である。一方、上限は通常5,000であり、好ましくは4,000、さらに好ましくは3,000である。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が上記下限未満では、ポリウレタンとした際に硬度が十分に得られない。一方、上記上限超過では粘度が上がり、ポリウレタン化の際のハンドリングに支障がでてくる。
【0104】
本発明のポリカーボネートジオールの分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、下限は通常1.5であり、好ましくは2.0である。上限は通常3.5であり、好ましくは3.0である。
【0105】
分子量分布が上記範囲を超える場合、このポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンの物性が、低温で硬くなる、伸びが悪くなる等、悪化する傾向があり、分子量分布が上記範囲未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除く等の高度な精製操作が必要になる場合がある。
【0106】
ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量であり、通常知られる方法により測定すればよいが、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定で求めることができる。
Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定が困難な場合には、例えば、ポリカーボネートジオールのOH価による算出も可能である。また、H−NMRにて測定することも可能である。より具体的にはポリカーボネートジオールをCDCl(重クロロホルム)に溶解して400MHzにてH−NMRを測定し、その積分値より算出することができる。
・GPCによる数平均分子量の測定
GPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)を用いて、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準サンプルとしてポリスチレン、カラムとしてTSK gel superH1000+H2000+H3000を使用して、送液速度0.5cm/分、カラムオーブン温度40℃にて、数平均分子量を測定する。
・OH価による数平均分子量の算出
JIS K1557−1(2007)に記載のアセチル化法により算出する。
【0107】
<APHA値>
本発明のポリカーボネートジオールの色は、得られるポリウレタンの色目に影響を与えない範囲が好ましく、着色の程度をハーゼン色数(JIS K0071−1に準拠)で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)は特に限定されないが、100以下が好ましく、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。
【0108】
本発明の製造法により得られるポリカーボネートジオールは極めて色調に優れるため、ポリウレタン、ウレタンアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリレート、アリルエーテル、グリシジルエーテル等の原料等の、通常ポリオールが使用される用途全般において好適に使用することができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
以下において、各物性値の評価方法は下記の通りである。
【0111】
[評価方法]
<数平均分子量>
数平均分子量(Mn)は、生成物をCDClに溶解して400MHzにてH−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、その積分値より算出した。
【0112】
<溶融色(APHA値)>
キシダ化学社製色度標準液(1000度)を希釈して作成した液と、ポリカーボネートジオールを、内径20mmの比色管に入れて比較することにより求めた。
【0113】
<共重合組成比の分析>
生成物をCDClに溶解して400MHzH−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、その積分値より算出した。
【0114】
[実施例1、比較例1]
攪拌機、留出液トラップ及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、表1に記載の種類と配合量のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル及びエステル交換触媒を入れ、窒素置換した後、内温を表2に記載の最高温度まで昇温して内容物を加熱溶解させ、60分間反応させた。
【0115】
その後、120分間かけて圧力を表2に記載の最低圧力まで下げつつフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させて除きながら反応を行なった。次に、内温を表2に記載の最高温度とし、圧力を表2に記載の最低圧力として180分間、次いで内温130℃で300分間窒素にてバブリングしフェノールを留去しながら反応した。
【0116】
得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量及び共重合組成比とAPHA値を表2に示す。
【0117】
[実施例2〜8、比較例2〜4]
攪拌機、留出液トラップ及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、表1に記載の種類と配合量のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル及びエステル交換触媒を入れ、窒素置換した後、内温を130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。その後、5分間で圧力を5.3kPaまで下げ、内温130℃、圧力5.3kPaで280分間、フェノール(比較例4ではメタノール)を留出させて除きながら反応を行った。そして、240分間かけて圧力を表2に記載の最低圧力まで下げた後、60分間かけて内温を表2に記載の最高温度まで上げ、さらに表2に記載の最高温度、表2に記載の最低圧力にて30分間、フェノール(比較例4ではメタノール)及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させて除きながら反応を行った。
【0118】
得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量及びジヒドロキシ化合物の共重合組成比とAPHA値を表2に示す。
なお、比較例4においては、炭酸ジエステルとしてジメチルカーボネートを用いたため、ネオペンチルグリコールが導入されなかった。
【0119】
なお、表1中、原料の略号、及び原料の製造メーカーは次の通りである。ジヒドロキシ化合物はいずれも水素添加精製していないものを用いた。
16HD:1,6−ヘキサンジオール(実施例3以外;宇部興産社製、実施例3;天賦化工社製)
NPG:ネオペンチルグリコール(三菱瓦斯化学社製)
ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製)
Mg(OAc)・4HO:酢酸マグネシウム4水和物(関東化学社製)
Ca(OAc)・HO:酢酸カルシウム1水和物(和光純薬工業社製)
Na(OAc):酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製)
DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学社製)
DMC:ジメチルカーボネート(東京化成工業社製)
リン酸二水素カリウム(和光純薬工業社製)
テトラブチルチタネート(東京化成工業社製)
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
表1,2より、本発明によれば、未精製の原料から着色の少ないポリカーボネートジオールを製造することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートをエステル交換触媒の存在下で重縮合反応する工程を含むポリカーボネートジオールの製造方法であって、該ポリカーボネートジオールは、分子鎖中に、下記式(A)で表される繰り返し単位を有し、該重縮合反応における最高温度が190℃未満であることを特徴とするポリカーボネートジオールの製造方法。
【化1】

(上記式(A)において、lは2〜20の整数を表す。)
【請求項2】
本発明のポリカーボネートジオールは、分子鎖中に、前記式(A)で表される繰り返し単位とは異なる構造である、下記式(B)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【化2】

(上記式(B)において、Xはそれぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【請求項3】
前記式(B)で表される繰り返し単位が、下記式(C)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【化3】

(上記式(C)において、mは0又は1、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはハロゲン原子又はこれらを含む置換基を有していてもよい。Yはそれぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【請求項4】
前記式(C)において、m=0であり、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項5】
前記式(B)で表される繰り返し単位が、前記式(B)におけるXが、下記式(D)である繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【化4】

【請求項6】
前記重縮合反応における最低圧力が1.33kPa未満であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項7】
前記エステル交換触媒が、周期表1族金属元素を含む化合物及び/又は周期表2族金属元素を含む化合物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項8】
前記エステル交換触媒が、周期表第2族金属元素を含む化合物であることを特徴とする請求項7に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項9】
本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量が300〜5000であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。

【公開番号】特開2013−18978(P2013−18978A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135910(P2012−135910)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】