説明

ポリカーボネートポリオール含有水性被覆材料

【課題】機械的特性および触質性に加えて、先行技術の被覆材料と比較して有意に高い加水分解安定性を有する被膜を生じる被覆材料を提供する。
【解決手段】I) ヒドロキシル不含ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;II) イオン的に変性された、ヒドロキシル−および/またはアミノ−含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;およびIII) 少なくとも1つの架橋剤を含む水性被覆材料であって、成分(I)および(II)が、少なくとも25wt%の1,4-ブタンジオールを合成成分として有するポリカーボネートポリオールを含有する水性被覆材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートポリオールを基剤とする水性被覆材料、その製造法、および軟触感塗料(soft feel paint)としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン-ポリ尿素分散体(PU分散体)、およびPU分散体の水性調製物は、当分野で既知である。イオン的変性PU分散体の水性調製物の重要な使用分野は、プラスチック製品の塗装分野である。
【0003】
美的および技術的要求条件は、外的影響、例えば、日光、化学的、熱的および機械的ストレスからプラスチックを保護し、特定の色および色彩効果を与え、プラスチック表面の欠陥を遮蔽し、またはプラスチック表面に良い感触(触質(tactility))を与えるために、プラスチック製品を一般に塗装することである。プラスチック製品の触質性(tactile properties)を向上させるために、軟触感塗料と称されるものが最近ますます使用されている。本発明において「軟触感効果」は、塗面の特定の触感覚(触質)を意味し;この触質は、例えばビロード様、軟質、ゴム様、温かみなどの用語を使用して表現しうる。環境への溶剤排出を避ける傾向に対応して、例えばDE-A 4406159に開示されているような、ポリウレタン化学に基づく水性軟触感塗料が最近定着しつつある。これらの塗料は、優れた軟触感効果と共に、プラスチック基材に優れた耐性および保護を示す被膜も与える。しかし、その後、これらの塗料および被膜が、不充分な加水分解安定性を有するにすぎない場合が多いことが明らかになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、前記の機械的特性および触質性に加えて、先行技術の被覆材料と比較して有意に高い加水分解安定性を有する被膜を生じる被覆材料を提供することである。
【0005】
例えば、DE-A 4406159に開示されているように、所望の軟触感特性を有するプラスチック被覆材料は、部分的に顕著な量のヒドロキシル官能基を含有しないPU分散体で構成される。
【0006】
DE-A 10122444は、加水分解安定性であり、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリオールに基づく、イオン的および/または非イオン的に親水性化されたポリウレタン-ポリ尿素(PU)分散体を開示している。種々の基材上で、一成分被覆材料において、該分散体は、加水分解に安定な防シワ性および耐引っ掻き性の被膜を生じる。しかし、軟触感塗料としてこれら分散体を使用することは記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定のポリカーボネートポリオールに基づく非官能性PUポリマーだけでなくおよび特定のポリカーボネートポリオールに基づく親水性ヒドロキシル含有PUポリマーを含む水性二成分(2K)被覆材料が、顕著な加水分解安定性を示し、それと共に所望の触質性も示すことが見出された。
【0008】
従って、本発明は、
I) ヒドロキシル不含ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;
II) イオン的に変性されたヒドロキシル−および/またはアミノ−含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;および
III) 少なくとも1つの架橋剤;
を含む水性被覆材料であって、成分(I)および(II)が少なくとも25wt%の1,4-ブタンジオールを合成成分として有するポリカーボネートポリオールを含有することを特徴とする水性被覆材料を提供する。
【0009】
非官能性PUポリマー(I)の製造法において、合成成分が、
A.1) ポリイソシアネート
A.2) 少なくとも25wt%の1,4-ブタンジオールを合成成分として有するポリカーボネートポリオールを含有する、数平均分子量Mn200〜8000g/molの高分子ポリオール;
A.3) 合計2個またはそれ以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する分子量Mn62〜400g/molの低分子量化合物;
A.4) 1個のヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物;
A.5) イソシアネート反応性のイオンまたは潜在的イオン化合物;および
A.6) イソシアネート反応性の非イオン親水性化合物;
の成分の群から選択される。
【0010】
好適な成分A.1)のポリイソシアネートは、それ自体当業者に既知の芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートであり、好ましくは≧2のNCO官能価を有し、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素および/またはカルボジイミド構造も含有してよい。それらは、個々に、または相互の任意所望混合物において、使用しうる。
【0011】
好適なポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、異性ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネートまたは任意所望異性体含有量を有するそれらの混合物、および1,4-シクロヘキシルジイソシアネートである。
【0012】
1分子当たり3個以上のNCO基を有する未変性ポリイソシアネートの例は、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)である。
【0013】
脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基だけを含有する前記の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物が好ましい。
【0014】
特に好ましいのは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネートおよびそれらの混合物である。
【0015】
成分A.2)の定義を満たすヒドロキシル含有ポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体、例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲンをジオールと反応させることによって得られる。本発明によって使用されるヒドロキシル官能性ポリカーボネートポリオールA.2)は、平均ヒドロキシル官能価1.6〜4、好ましくは1.8〜3、より好ましくは1.9〜2.3、および数平均分子量240〜8000g/mol、好ましくは500〜3000g/mol、より好ましくは750〜2500g/molを有する。ポリカーボネートポリオールは、EP-A 1404740(6〜8頁、実施例1〜6)およびEP-A 1477508(5頁、実施例3)に開示されている製造法によって製造するのが好ましい。
【0016】
好適なジオールの例は、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよびトリメチルペンタン-1,3-ジオールであり、1,4-ブタンジオールの割合は、使用されるジオール成分の少なくとも25wt%である。
【0017】
好ましくは、ジオール成分は、45〜100wt%の1,4-ブタンジオールおよび0〜55wt%の1,6-ヘキサンジオール、より好ましくは60〜100wt%の1,4-ブタンジオールおよび0〜40wt%の1,6-ヘキサンジオールを含有する。
【0018】
ヒドロキシルポリカーボネートは好ましくは直鎖状であるが、適切であれば、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの組込みの結果として分岐していてもよい。特に好ましい成分A.2)は、1.4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物に基づき、平均ヒドロキシル官能価1.9〜2.05を有する。
【0019】
一例として、分子量Mn400〜6000Da、より好ましくは600〜3000Daを有するポリエステルポリオールも、同様に高分子ポリオールA.2)として使用しうる。それらのヒドロキシル価は、一般に22〜400mg KOH/g、好ましくは50〜200mg KOH/g、より好ましくは80〜160mg KOH/gであり、それらはOH官能価1.5〜6、好ましくは1.8〜4、より好ましくは1.9〜3.3を有する。
【0020】
極めて好適な例は、ジオールおよび任意でポリオール、ならびにジカルボン酸および任意でポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンとの一般的な重縮合物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、または低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステルを使用して、ポリエステルを製造することもできる。好適なジオールの例は、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコールである。ここで挙げられる任意に使用されるポリオールの例は、トリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリトリトールである。
【0021】
好適なジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはアジピン酸を包含する。存在するならば、これらの酸の無水物も好適である。従って、本発明のために、酸無水物は「酸」という語に包含される。ポリオールの平均官能価が2より大きいことを条件として、モノカルボン酸、例えば、安息香酸およびヘキサンカルボン酸も使用できる。比較的少量で任意に使用しうるポリカルボン酸として、この場合トリメリット酸が挙げられる。
【0022】
他の好適な成分A.2)は、官能価および分子量に関する前記基準に対応する限りは、ポリウレタン化学から既知のポリラクトンおよびポリエーテルポリオールである。
【0023】
ポリマー(I)および(II)それぞれの製造に使用されるA.2)からのポリオールの総量におけるヒドロキシポリカーボネートの割合は、35〜100wt%、好ましくは45〜100wt%、より好ましくは65〜100wt%である。
【0024】
ポリウレタン樹脂の合成に使用される低分子量ポリオールA.3)は、ポリマー鎖を剛化および/または分岐させる作用を一般に有する。分子量は、好ましくは62〜200Daである。好適なポリオールは、脂肪族、脂環式および芳香族基を含有する。ここで例として挙げられるのは、1分子につき約20個までの炭素原子を有する低分子量ポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、およびトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリトリトールである。
【0025】
ジアミンまたはポリアミンおよびヒドラジドも同様にA.3)として使用でき、その例は、エチレンジアミン、1,2-および1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3-および1,4-キシリレンジアミン、α,α,α',α'-テトラメチル-1,3-および-1,4-キシリレンジアミンおよび4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジンまたはアジピンジヒドラジドである。A.3)としての好適な化合物は、基本的に、NCO基に対して種々の反応性を有する活性水素含有化合物、例えば、第一級アミノ基に加えて第二級アミノ基も含有するか、またはアミノ基(第一級または第二級)に加えてOH基も含有する化合物である。
【0026】
ポリウレタン樹脂I)およびII)は、適切であれば、単位A.4)を含有し、該単位はそれぞれの場合に鎖の末端に位置し、該末端で終わりとしてもよい。これらの単位は、一方で、NCO基への反応性のある一官能性化合物、例えばモノアミン、特にモノ第二級アミンまたはモノアルコールから誘導される。
【0027】
イオン性および潜在的イオン性の親水性化合物A.5)は、少なくとも1個のイソシアネート反応基および少なくとも一官能性を有するあらゆる化合物、例えば、-COOY、-SO3Y、-PO(OY)2(Yは、例えば、H、NH4+、金属陽イオン)、-NR2、-NR3+(Rは、H、アルキル、アリール)であり、該化合物は、水性媒体との相互作用の際に、pH依存性解離平衡になり、そのようにして、陰電荷、陽電荷または中性電荷を得ることができる。好ましいイソシアネート反応基は、ヒドロキシル基またはアミノ基である。
【0028】
成分A.5)の定義を満たす好適なイオン性または潜在的イオン性の親水性化合物の例を下記に示す:モノ-およびジヒドロキシカルボン酸、モノ-およびジアミノカルボン酸、モノ-およびジヒドロキシスルホン酸、モノ-およびジアミノスルホン酸、ならびにモノ-およびジヒドロキシホスホン酸またはモノ-およびジアミノホスホン酸およびそれらの塩、例えば、ジメチルロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバル酸、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸または-ブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、マレイン酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5-ジアミノ安息香酸;脂肪族ジアミン、例えば、エチレンジアミン(EDA)またはイソホロンジアミン、IPDAとアクリル酸との付加化合物(EP-A 0916647、実施例1)およびそのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩;重亜硫酸ナトリウムとブタ-2-エン-1,4-ジオールとの付加化合物、ポリエーテルスルホネート、2-ブテンジオールとNaHSO3とのプロポキシル化付加化合物(例えば、DE-A 2446440(5〜9頁、式I〜III)に開示)、および陽イオン基に変換できる単位、例えばN-メチルジエタノールアミンのようなアミンに基づく単位を親水性合成成分として含有する化合物。さらに、例えばWO-A 01/88006に開示されているようなシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)も、成分A.5)の定義を満たす化合物として使用することができる。
【0029】
成分(I)を合成するために、好ましい化合物A.5)は、カルボキシル基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有する化合物である。特に好ましいイオン化合物A.5)は、カルボキシル基および/またはスルホネート基を、イオンまたは潜在的イオン基として含有する化合物、例えば、N-(2-アミノエチル)-β-アラニンの塩、2-(2-アミノエチルアミノ)-エタンスルホン酸の塩、またはIPDIとアクリル酸との付加化合物の塩(EP-A 0916647、実施例1)、およびジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0030】
成分A.6)の定義を満たす好適な非イオン的親水性化合物は、例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、エチレンオキシドから誘導される単位30〜100wt%の割合を含有する。
【0031】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、直鎖状のポリエチレンオキシドポリエーテル、または混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかであり、該アルキレンオキシド単位の少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%は、エチレンオキシド単位から成る。好ましい非イオン化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含有する一官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0032】
PUポリマー(I)のために、成分A.5)およびA.6)の定義を満たすイオンおよび非イオン親水化剤の組合せを使用するのが好ましい。特に好ましい組合せは、非イオンおよび陰イオン親水化剤の組合せである。
【0033】
成分A.1)5〜45wt%、成分A.2)50〜90wt%、成分A.3)および成分A.4)の合計1〜30wt%、成分A.5)0〜12wt%、成分A.6)0〜15wt%を使用するのが好ましく、成分A.5)およびA.6)の合計は0.1〜27wt%であり、全成分の合計は100wt%である。
【0034】
成分A.1)10〜40wt%、成分A.2)55〜85wt%、成分A.3)および成分A.4)の合計1〜25wt%、成分A.5)0〜10wt%、成分A.6)0〜10wt%を使用するのが特に好ましく、成分A.5)およびA.6)の合計は0.1〜20wt%であり、全成分の合計は100wt%である。
【0035】
成分A.1)15〜40wt%、成分A.2)60〜85wt%、成分A.3)および成分A.4)の合計1〜20wt%、成分A.5)0〜8wt%、成分A.6)0〜10wt%を使用するのが極めて好ましく、成分A.5)およびA.6)の合計は0.1〜18wt%であり、全成分の合計は100wt%である。
【0036】
本発明の被覆材料は、水性PU分散体(I)の形態で使用されるPUポリマー(I)を含む。
【0037】
水性PU分散体(I)の製造法は、均質相において1段階またはそれ以上で行うことができ、多段階反応の場合は、部分的に分散相において行うことができる。A.1)〜A.6)の完全なまたは部分的な重付加後に、分散、乳化または溶解段階が存在する。これに続いて、分散相において、さらに重付加または改質(変性)を行ってもよい。
【0038】
水性PU分散体(I)は、あらゆる先行技術法、例えば、プレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法を使用して製造しうる。好ましくは、アセトン法を使用してPU分散体(I)を製造する。
【0039】
アセトン法によるPU分散体(I)の製造において、第一級または第二級アミノ基を含有すべきでない成分A.2)〜A.6)、および官能基としてイソシアネートを有するポリウレタンプレポリマーの製造用のポリイソシアネート成分A.1)を、一般に、全てまたは部分的に初期装入物として導入し、水混和性であるがイソシアネート基に不活性の溶媒で任意に希釈し、50〜120℃の温度に加熱する。イソシアネート付加反応を促進するために、ポルウレタン化学において既知の触媒を使用することができる。ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0040】
好適な溶媒は、一般的な脂肪族ケト官能性溶媒、例えばアセトンまたはブタノンであり、該溶媒は、製造の初期だけでなく、所望であれば後に少しずつ添加することもできる。アセトンおよびブタノンが好ましい。
【0041】
次に、反応の初期に添加されなかったA.1)〜A.6)の任意成分を計量供給する。
【0042】
ポリウレタンプレポリマーの製造の場合、イソシアネート基対イソシアネート反応基のモル比は、1.0〜3.5、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.1〜2.5である。
【0043】
プレポリマーを生成する成分A.1)〜A.6)の反応は、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に行う。このようにして、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーが、塊状または溶液状態で得られる。
【0044】
ポリウレタンプレポリマーの製造に続いてまたは並行して、出発分子においてまだ行われていない場合に、陰イオン的および/または陽イオン的分散基からの部分的または完全な塩形成を行う。陰イオン基の場合、第三級アミンのような塩基、例えば、各アルキル基に1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するトリアルキルアミンを使用してこれを行う。その例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。アルキル基は、例えば、ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合のように、ヒドロキシル基も有しうる。使用しうる中和剤は、無機塩基、例えば、アンモニアまたは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであってもよい。好ましいのは、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。
【0045】
塩基のモル量は、陰イオン基のモル量の50%〜100%、好ましくは70%〜100%である。陽イオン基の場合、硫酸ジメチルまたはコハク酸を使用する。エーテル基を含有する非イオン的に親水化された化合物A.6)を使用する場合だけは、中和工程を省く。中和は、中和剤を既に含有している分散水を使用して、分散と同時に行ってもよい。
【0046】
次に、さらなる工程段階において、得られたプレポリマーを、まだ溶解していないかまたは部分的にしか溶解していないならば、アセトンまたはブタノンのような脂肪族ケトンによって溶解させる。
【0047】
次に、可能なNH2-および/またはNH-官能成分を、残留イソシアネート基と反応させる。この鎖延長/停止は、溶媒中で分散前に、分散中に、または水中で分散後に行ってよい。鎖延長は、好ましくは、分散前に水中で行う。
【0048】
A.5)の定義を満たしNH2またはNH基を含有する化合物を使用して鎖延長を行う場合、好ましくは分散前に、プレポリマーの鎖延長を行う。
【0049】
鎖延長度、言い換えれば、(鎖延長に使用される化合物のNCO-反応基)/(プロポリマーの遊離NCO基)の当量比は、40%〜150%、好ましくは70%〜120%、より好ましくは80%〜120%である。
【0050】
本発明の方法において、アミン成分[A.3)、A.4)、A.5)]は、個々にまたは混合物として、水-または溶媒-希釈形態で使用してよく、任意の添加順序が基本的に可能である。
【0051】
水または有機溶媒を希釈剤として使用する場合、希釈剤含有量は好ましくは70〜95wt%である。
【0052】
プレポリマーからのPU分散体(I)の製造は、鎖延長後に行われる。その目的のために、溶解し鎖延長したポリウレタンポリマーを、所望であれば、強撹拌のような強剪断によって分散水に導入するか、または逆に、分散水をプレポリマー溶液に撹拌する。分散水をプレポリマー溶液に添加することが好ましい。
【0053】
分散工程後、分散液にまだ存在する溶媒は蒸留によって一般に除去される。実際に、分散中の除去も可能である。
【0054】
中和度および存在するイオン基の量に依存して、分散液が実質的に溶液の外観を呈する程度に分散液を極めて微細にすることができるが、極めて粗い配合物も可能であり、しかも同様に充分に安定である。
【0055】
PU分散体(I)の固形分は、25%〜65%、好ましくは30%〜60%、より好ましくは40%〜60%である。
【0056】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)は、成分A.1)5〜45wt%、成分A.2)50〜94.5wt%、成分A.3)0〜15wt%、成分A.5)0.5〜12wt%、成分A.6)0〜15wt%を含有し、全成分の合計は100wt%である。
【0057】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)は、好ましくは、成分A.1)7.5〜35wt%、成分A.2)60〜90wt%、成分A.3)0〜10wt%、成分A.5)2.5〜7.5wt%、成分A.6)0〜12.5wt%を含有し、全成分の合計は100wt%である。
【0058】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)は、極めて好ましくは、成分A.1)10〜25wt%、成分A.2)65〜85wt%、成分A.3)1.5〜5wt%、成分A.5)3〜7wt%、成分A.6)0〜10wt%を含有し、全成分の合計は100wt%である。
【0059】
好適な成分A.3)は、OH-官能性の化合物だけである。成分A.4)は、ポリマー(II)の合成に使用されない。
【0060】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)は、成分A.5)の定義によって純粋にイオン性の親水化を特徴とするのが好ましい。本発明の被覆材料は、イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)を含む、それは、製造の過程で水性形態に変換され、従って分散液として存在するか、またはイソシアネート基に不活性の任意で水溶性の溶媒中に溶液として存在する。
【0061】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)は、一般的な先行技術法によって製造できる。ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)は、特に、製造のタイプおよび親水化のタイプにおいて、PUポリマー(I)と異なる。それらは、少なくとも部分的に中和されていてよいカルボン酸基および/またはスルホン酸基、好ましくはカルボン酸基を、親水基として含有する。従って、PUポリマー(II)の製造のために、成分A.5)として好ましいのは、カルボキシルおよび/またはカルボキシレート基を有する化合物である。特に好ましいイオン化合物A.5)は、ジヒドロキシカルボン酸であり、特に好ましいのはα,α-ジメチロールアルカン酸、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸またはジヒドロキシコハク酸である。
【0062】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)を製造するために、一般に、先ず、成分A.2)、A.3)、A.5)および任意でA.6)を、任意で好適な触媒と共に、必要であれば適切な溶媒中で、容器に導入する。この混合物に、0℃〜140℃、好ましくは70℃〜135℃、より好ましくは90℃〜130℃で、ポリイソシアネート成分A.1)を添加し、次に、それらの成分を、反応生成物がイソシアネート不含になるまで反応させる。使用される成分A.1)〜A.6)の量は、ヒドロキシル基の各当量に対して、0.45〜0.95、好ましくは0.55〜0.90、より好ましくは0.65〜0.85当量(eq)のイソシアネート基が存在するように算出される。
【0063】
イオン的に変性されたヒドロキシル含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素(II)の製造は、好ましくは、有機溶媒を添加せずに行う。
【0064】
プレポリマーに組み込まれる酸基は、少なくとも部分的に中和されている。これは、プレポリマーの製造中または製造後、かつ水への分散中または分散後に、好適な中和剤(PU分散体(I)に関して記載したものを参照)の添加によって行うことができる。好適な中和剤の例は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチルジイソプロピルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。中和剤は、一般に、プレポリマーの酸基に対するモル比0.3:1〜1.3:1、好ましくは0.6:1〜1.1:1で使用される。
【0065】
次に、ヒドロキシル官能性ポリウレタンを、水の添加または水への導入によって、水性分散体に変換する。
【0066】
前記の手順によって得られるPUポリマー(II)の樹脂は、数平均分子量Mn1000〜30,000Da、好ましくは1500〜10,000Da、酸価10〜80mg KOH/g、好ましくは15〜40mgKOH/g、およびヒドロキシル基分0.5〜6wt%、好ましくは1.0〜4wt%を有する。
【0067】
PU分散体(I)および(II)は、PU分散体に関して既知のあらゆる添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤および/または他の助剤および添加剤ならびに充填剤をさらに含んで成ってよい。
【0068】
架橋剤(III)も本発明の被覆材料に存在する。架橋剤の選択に依存して、一成分塗料および二成分塗料の両方を製造することができる。本発明における一成分塗料は、顕著な程度または次の適用に有害な程度に架橋反応を起こさずに、結合剤成分および架橋剤成分を一緒に保存することができる被覆組成物を意味する。本発明における二成分塗料は、結合剤成分および架橋剤成分を、それらの高反応性故に、別々の容器に保存する必要がある被覆組成物を意味する。2つの成分が一般に付加的活性化なしに反応する場合、2つの成分を適用のすぐ前に混合する。好適な架橋剤III)の例は、ブロック化または非ブロック化ポリイソシアネート架橋剤、アミド−およびアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂およびケトン樹脂、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、ユリア樹脂、カルバメート樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂またはアニリン樹脂である。ポリイソシアネートが好ましい。
【0069】
架橋剤成分(III)として、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートは、それを使用した場合に得られる水性ポリウレタン塗料が特に優れた塗料特性を示すので、特に好ましい。好適な架橋剤(III)の例は、ウレトジオン基、ビウレット基、イソシアヌレート基またはイミノオキサジアジンジオン基を含有し、ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンまたはビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタンから形成されるポリイソシアネートなどの塗料用ポリイソシアネートを包含する。
【0070】
本発明は、本発明の被覆材料を含む二成分塗料も提供する。
本明細書に開示するPUポリマー(I)および(II)は一般に充分に親水性であり、それによって、成分(III)からの疎水性架橋剤の分散性さえも確実にされる。しかし、必要であれば、当業者に既知であるような外部乳化剤を添加することもできる。
【0071】
しかし、さらに、成分(III)において、例えば、カルボキシレート、スルホネートおよび/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基での変性によって得られるような水-溶解性または分散性ポリイソシアネートを使用することもできる。
【0072】
基本的に、成分(III)において、前記種類の種々の架橋剤樹脂の混合物を使用することも当然可能である。
【0073】
本発明は、PUポリマー(I)およびPUポリマー(II)を水に分散させ、架橋剤(III)と混合することを特徴とする、本発明の水性被覆材料の製造法も提供する。
【0074】
[架橋剤(III)]/[架橋剤に反応性の成分(II)の化合物]の比率は、[(II)からの架橋剤に反応性を有する基(例えばOH基)]/[架橋剤の反応基(イソシアネート基の場合のNCO基)]の比率が0.5:1.0〜3.5:1.0、好ましくは1.0:1.0〜3.0:1.0、より好ましくは1.0:1.0〜2.5:1.0となるように選択される。
【0075】
成分(I)および(II)の混合物は、成分(II)を、好ましくは5〜95wt%(固体樹脂に対して)、より好ましくは25〜75wt%(固体樹脂に対して)で含有し、(I)の量は、(I)および(II)の合計量が100wt%(固体樹脂に対して)になるように選択される。
【0076】
一般的な塗料用助剤および添加剤として、下記のような当業者に既知の物質が本発明の被覆材料に存在してよい:脱泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、艶消剤、触媒、皮張り防止剤、沈降防止剤および/または乳化剤、ならびに所望の軟触感効果を高める添加剤。添加剤/助剤を本発明の被覆材料に添加するかまたはそれらに導入する製造の間の時点は、重要でない。
【0077】
本発明の水性被覆材料は、皮膜の表面品質/耐性に関して厳しい条件が要求される水性塗料および被覆系が使用されるあらゆる使用分野、例えば下記の分野に好適である:鉱物建材表面の被覆;木材および木材を基材とする材料の塗装および封止;金属表面の被覆(金属被覆);アスファルトまたはビチューメンの被覆材の被膜および塗装;種々のプラスチック表面の塗装および封止(プラスチック被覆);および高光沢ワニス。
【0078】
しかし、本発明の被覆材料の好ましい用途は、極めて優れた触質性と共に優れた加水分解耐性を確実にする軟触感効果塗料の製造である。そのような被覆材料は、室温〜130℃の温度で一般に硬化を行うプラスチックまたは木材の塗装に使用するのが好ましい。非ブロック化ポリイソシアネートを架橋剤とする二成分技術は、前記の範囲の比較的低い硬化温度の使用を可能にする。
従って、本発明は、本発明の被覆材料を含む軟触感塗料も提供する。
【0079】
本発明の水性被覆材料は、単一塗り塗料において、または多重塗り系のクリアコートまたはトップコート皮膜(最上皮膜)において、一般に使用される。
【0080】
被膜は、一成分、または適切であれば二成分吹き付けユニットを使用して、種々の吹き付け法、例えば、空気圧吹き付け法、無気吹き付け法または静電吹き付け法によって形成できる。本発明の結合剤分散体を含む塗料および被覆材料は、他の方法、例えば、はけ塗り、ロール塗りまたはナイフ塗布によっても適用できる。
【0081】
本発明は、クリアコートまたはトップコートである最上被膜が、本発明の被覆材料を含有する軟感触塗料を含むことを特徴とする多重塗り系も提供する。
【0082】
本発明およびその好ましい実施態様は、以下のとおりである。
(1)水性被覆材料であって、
I) ヒドロキシル不含ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;
II) イオン的に変性された、ヒドロキシル−および/またはアミノ−含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;および
III) 少なくとも1つの架橋剤;
を含み、成分(I)および(II)が、少なくとも25wt%の1,4-ブタンジオールを合成成分として有するポリカーボネートポリオールを含有する水性被覆材料。
(2)ポリカーボネートポリオールが、45〜100wt%の1,4-ブタンジオールおよび0〜55wt%の1,6-ヘキサンジオールを合成成分として含有する前記(1)項に記載の水性被覆材料。
(3)ポリカーボネートポリオールが、60〜100wt%の1,4-ブタンジオールおよび0〜40wt%の1,6-ヘキサンジオールを合成成分として含有する前記(1)項に記載の水性被覆材料。
(4)ポリカーボネートポリオールが、平均ヒドロキシル官能価1.6〜4を有する前記(1)項に記載の水性被覆材料。
(5)ポリカーボネートポリオールが、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物を合成成分として含有し、平均ヒドロキシル官能価1.9〜2.05を有する前記(1)項に記載の水性被覆材料。
(6)成分(II)が、ポリエステルウレタンおよびポリカーボネートポリオールに基づくポリウレタンポリマーである前記(1)項に記載の水性被覆材料。
(7)架橋剤(III)が、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートであり、脂肪族または脂環式イソシアネートから誘導される前記(1)項に記載の水性被覆材料。
(8)前記(1)項に記載の被覆材料を含む二成分塗料。
(9)前記(1)項に記載の被覆材料を含む、鉱物建材表面、金属表面、またはアスファルトもしくはビチューメンの被覆上の被膜、木材および木材を基材とする材料またはプラスチック表面用の塗料およびシーラント、または高光沢ワニス。
(10)前記(1)項に記載の被覆材料を含む、プラスチック基材または木材基材上の軟触感塗料。
(11)前記(1)項に記載の被覆材料を含む軟触感塗料。
(12)透明塗りまたは上塗り皮膜である最上被膜、および前記(11)項に記載の軟触感塗料を有する多重塗り系。
【0083】
特に指定しなければ、全てのパーセントは重量によるパーセントを意味するものと理解される。
【0084】
使用される物質および略語:
ジアミノスルホネート: NH2-CH2CH2-NH-CH2CH2-SO3Na(水中45%);
Desmophen(登録商標)3600: プロピレンオキシドに基づく二官能性ポリエーテル、数平均分子量2000g/mol、OH価56mg KOH/g(Bayer AG, Leverkusen, DE);
Polyether LB 25: エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく一官能性ポリエーテル、数平均分子量2250g/mol、OH価25mg KOH/g(Bayer AG, Leverkusen, DE);
BYK(登録商標)348: 湿潤剤(BYK-Chemie, Wesel, DE);
Tego-Wet(登録商標)KL 245: 流動添加剤、水中50%(Tegochemie, Essen, DE);
Aquacer(登録商標)535: ワックスエマルジョン(BYK-Chemie, Wesel, DE);
Defoamer DNE: 脱泡剤(K. Obermayer, Bad Berleburg, DE);
Sillitin(登録商標)Z 86: 充填剤(Hoffmann & Soehne, Neuburg, DE);
Talkum(登録商標)IT extra: 艶消剤(Norwegian Talc, Frankfurt, DE);
Bayferrox(登録商標)318 M: 着色顔料(黒)(Bayer AG, Leverkusen, DE);
OK 412: 艶消剤(Degussa, Frankfurt, DE);
Bayhydur(登録商標)3100: イソシアネート分17.4%を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づく親水性脂肪族ポリイソシアネート(Bayer AG, Leverkusen, DE);
MPA: 1-メトキシ-2-プロピルアセテート。
【0085】
固形分は、DIN-EN ISO 3251に従って測定した。
【0086】
NCO分は、特に記載しなければ、DIN-EN ISO 11909に従って容量的に測定した。
【実施例1】
【0087】
ポリエステルポリオール
攪拌機、加熱装置、および冷却器付き水分離器を取り付けた15Lの反応器に、無水フタル酸1281g、アジピン酸5058g、ヘキサン-1,6-ジオール6387gおよびネオペンチルグリコール675gを装入し、この初期装入材料を窒素下に1時間にわたって140℃に加熱した。さらに9時間にわたって220℃に加熱し、酸価3未満に達するまでその温度で縮合させた。このようにして得たポリエステルポリオールは、粘度54秒(23℃における、メトキシプロピルアセテート中のポリエステルの80%濃度溶液のDIN 4カップからの流出時間として測定)、OH価160mg KOH/gを有していた。
【実施例2】
【0088】
1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオールの製造
1,4-ブタンジオール1223gおよび1,6-ヘキサンジオール535gを、フラスコに入れ、100℃に加熱した。最後に、窒素約2L/時をジオール混合物に導入し、20mbarの真空を適用し、含水率が≦0.1%になるまで混合物を脱水した(約2時間)。
【0089】
次に、イッテルビウム(III)アセチルアセトネート0.44gを添加し、ジオール混合物を110℃に加熱した。次に、炭酸ジメチル2297gを約20分間にわたって添加し、反応混合物を還流下に24時間置いた。最後に、温度を150℃に上げ、生じた留出物を除去した。次に、180℃にさらに昇温し、次に、さらなる蒸留段階に付した。
【0090】
反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに下げた。次に、油浴温度を2時間にわたって130℃から180℃に上げ、この間、オーバーヘッド蒸留温度は60℃を超えなかった。温度が180℃に達した後、その温度で6時間維持した。
【0091】
次に、反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに下げた。次に、油浴温度を2時間にわたって130℃から180℃に上げ、この間、オーバーヘッド蒸留温度は60℃を超えなかった。温度が180℃に達した後、その温度で6時間維持した。反応混合物を室温に冷却し、生成物特性を決定した。
【0092】
生成物は、ヒドロキシル価57.3mg KOH/g、23℃における粘度115 Pasを有するポリカーボネートジオールである。
【実施例3】
【0093】
1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオールの製造
1,4-ブタンジオール1239gおよび1,6-ヘキサンジオール542gを、フラスコに入れ、油浴で100℃に加熱した。最後に、窒素約2L/時をジオール混合物に導入し、20mbarの真空を適用し、含水率が≦0.1%になるまで混合物を脱水した(約2時間)。
【0094】
次に、イッテルビウム(III)アセチルアセトネート0.44gを添加し、ジオール混合物を110℃に加熱した。次に、炭酸ジメチル2180gを約20分間にわたって添加し、反応混合物を還流下に24時間置いた。最後に、温度を150℃に上げ、生じた留出物を除去した。次に、180℃にさらに昇温し、次に、さらなる蒸留段階に付した。
【0095】
反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに下げた。次に、油浴温度を2時間にわたって130℃から180℃に上げ、この間、オーバーヘッド蒸留温度は60℃を超えなかった。温度が180℃に達した後、その温度で6時間維持した。
【0096】
次に、反応混合物を130℃に冷却し、圧力を10mbarに下げた。次に、油浴温度を2時間にわたって130℃から180℃に上げ、この間、オーバーヘッド蒸留温度は60℃を超えなかった。温度が180℃に達した後、その温度で6時間維持した。次に、反応混合物を室温に冷却し、生成物特性を決定した。
【0097】
生成物は、ヒドロキシル価113.4mg KOH/g、23℃における粘度13600mPasを有するポリカーボネートジオールである。
【実施例4】
【0098】
(成分Iについての比較)
Bayhydrol(登録商標)PR 240: 固形分40%および平均粒径100〜300nmを有するポリエステルに基づく陰イオン的親水性化PU分散体(Bayer AG, Leverkusen, DE)。
【実施例5】
【0099】
(成分Iについての比較)
Bayhydrol(登録商標)PR 340: ジオール合成成分として1,6-ヘキサンジオールだけを含有し、固形分50%および平均粒径100〜300nmを有するポリカーボネートジオールに基づく陰イオン的親水性化PU分散体(Bayer AG, Leverkusen, DE)。
【実施例6】
【0100】
非官能性PU分散体(成分I)(本発明)
Desmophen(登録商標)3600 64.0g、実施例2の生成物 196.8g、Polyether LB 25 10.9gを、75℃に加熱する。次に、75℃で5分間にわたって、ヘキサメチレンジイソシアネート48.7gを添加し、混合物を100℃に加熱し、理論NCO値に達するまで100℃で撹拌する。生成されたプレポリマーをアセトン568.1gで50℃において溶解し、次に、ヒドラジン水化物1.2g、ジアミノスルホネート7.70g、1,2-ジアミノエタン2.20gおよび水82.3gの溶液を、5分間にわたって添加する。次に、30分間撹拌する。水408.4gの添加によって、分散を行う。真空蒸留によって溶媒を除去した後、固形分40.0%の貯蔵安定性分散体を得る。
【実施例7】
【0101】
先行技術のヒドロキシ官能性PU分散体(比較)
Bayhydrol(登録商標)XP 2429: ジオール成分として1,6-ヘキサンジオールだけに基づくポリカーボネートジオールを使用して製造し、固形分55%を有する、先行技術の脂肪族ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリウレタン分散体(Bayer AG, Leverkusen, DE)。
【実施例8】
【0102】
ヒドロキシ官能性PU分散体(成分II)
冷却、加熱および撹拌装置を取り付けた6Lの反応器に、実施例1のポリエステルポリオール1170gを窒素雰囲気下に添加し、次に、実施例2のポリカーボネートジオール1140g、トリメチロールプロパン90g、ジメチロールプロピオン酸120gおよび錫(II)オクトエート3.8gと共に、130℃に加熱し、混合物を30分間均質化した。次に、それを80℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート480gを勢いよく撹拌しながら添加し、発熱を使用して温度を140℃に上げ、NCO基が検出されなくなるまで混合物をその温度に維持した。
【0103】
次に、このようにして得たポリウレタンを90℃〜100℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン(中和度60%)47gを添加し、混合物を15分間均質化し、脱塩水2270gで分散させた。このようにして得た水性ポリウレタン樹脂分散体は、OH価(100%形態)1.4%、酸価(100%形態)16.8、平均粒径110nm、粘度約2020mPas(23℃;D=40s-1)、固形分51.2wt%を有していた。
【実施例9】
【0104】
ヒドロキシ官能性PU分散体(成分II)
冷却、加熱および撹拌装置を取り付けた6Lの反応器に、実施例1のポリエステルポリオール1170gを窒素雰囲気下に添加し、次に、実施例3のポリカーボネートジオール1140g、トリメチロールプロパン90g、ジメチロールプロピオン酸120g、N-メチルピロリドン125gおよび錫(II)オクトエート3.8gと共に、130℃に加熱し、混合物を30分間均質化した。次に、それを80℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート480gを勢いよく撹拌しながら添加し、発熱を使用して温度を140℃に上げ、NCO基が検出されなくなるまで混合物をその温度に維持した。
【0105】
次に、このようにして得たポリウレタンを90℃〜100℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン(中和度50%)39gを添加し、混合物を15分間均質化し、脱塩水2270gで分散させた。このようにして得た水性ポリウレタン樹脂分散体は、OH価(100%形態)1.4%、酸価(100%形態)16.3、平均粒径150nm、粘度約1680mPas(23℃;D=40s-1)、固形分55.9wt%を有していた。
【0106】
工業的適用セクション
実施例1〜9の生成物を使用して、下記の性能試験を、軟触感被覆物の製造において実施する。
【0107】
先の分散後に、実験室用振とう機を使用する分散によって、貯蔵塗料を調製する。ミルベース(millbase)の温度は40℃を超えるべきでない。次に、OK 412で10分間撹拌する。架橋後、塗料系を流動時間(DIN ISO 2431、5mmノズル)約30秒に調節し、Bayblend(登録商標)T 65に従来法で吹き付ける。乾燥皮膜層厚みは、30〜40μmである。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

鉛筆硬度試験:
鉛筆硬度法は、塗膜硬度を測定する試験である。種々の硬度(6B〜7H)の鉛筆を使用して、塗布された試料において室温で下記のように試験する:鉛筆の先端を水平に研いで、平面円形領域を与える。次に、45°の角度で鉛筆を被験塗膜に押しつけ、その間、適用する力をできるだけ一定に維持すべきである。鉛筆硬度値は、塗膜表面が最初に損傷を示した際に測定する。
2 DIN EN ISO 2409による測定(0=最高値、5=最低値)。
3 皮膜軟化試験(指の爪試験):
皮膜軟化を、皮膜爪試験によって測定する。指の爪試験による軟化の評価は、下記の通りである:引っ掻き不可能=0(最高値);基材まで引っ掻き可能=5(最低値)
【0111】
実施例10〜17の全ての被膜は、同等の硬度および優れた感触を有する。しかし、表3の結果が示すように、本発明の被膜(実施例16、17)に対して、比較例は、90℃および90%相対湿度における加水分解下で72時間後に、かなりの皮膜軟化を示し(加水分解による分解(表3のP硬度/軟化の欄を比較))、一方、本発明実施例16、17の被膜は軟化を全く示さず、即ち、有意に高い加水分解安定性を有する。
【0112】
本発明を例示目的で前記に詳しく説明したが、そのような説明は、例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図および範囲を逸脱せずに当業者によってそれらに変更を加えうるものと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I) ヒドロキシル不含ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;
II) イオン的に変性された、ヒドロキシル−および/またはアミノ−含有ポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素;および
III) 少なくとも1つの架橋剤;
を含む水性被覆材料であって、成分(I)および(II)が、少なくとも25wt%の1,4-ブタンジオールを合成成分として有するポリカーボネートポリオールを含有する水性被覆材料。

【公開番号】特開2007−2248(P2007−2248A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172389(P2006−172389)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】