説明

ポリカーボネート共重合体、その製造方法および電子写真感光体

【課題】重合後だけでなく成形後にも着色が少なく、透明性および静電気特性に優れたポリカーボネート共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート共重合体の製造方法は、下記式(1)で示されるモノマーと、下記式(2)で示されるモノマーとを用いて重縮合反応を行うポリカーボネート共重合体の製造方法であって、前記式(1)で示されるモノマー1モルに対して、酸化防止剤を0.0001〜1モル当量の割合で反応系に添加する。


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示す。)


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示し、Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、9,9−フルオレニリデン基で示されるいずれかの結合基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート共重合体、その製造方法および電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されるポリカーボネート樹脂(以下、「PC樹脂」ともいう)は、透明性が高く、優れた機械的性質を有することから、光学材料や電子材料など種々の用途に使用されている。しかし、用途の拡大に伴ってPC樹脂に対する要求性能が厳しくなり、より優れた性能を有するPC樹脂が要望されている。例えば、電子写真感光体用としては、機械的性質だけではなく、透明性や帯電−除電のサイクルの繰り返しに耐えうる安定した静電気特性などについてもより高度なものが求められる。
そこで、フェノール構造単位として、ビスフェノールAと特定のビフェノールとを混合した原料を用いて重縮合を行い、透明性を損なうことなく耐熱性に優れたポリカーボネート共重合体を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1)。また、この共重合体を電子写真感光体に適用する技術も知られている(例えば、特許文献2)。また、実質的に酸素不存在下でフルオレン系ビスフェノールを用いることで色相が良好なポリカーボネート共重合体を得る方法が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第1965051号公報
【特許文献2】特許第2531852号公報
【特許文献3】特開2005−82677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した特許文献1、2従来の技術においては、ビフェノール骨格を有するために、ビスフェノールA型PC樹脂やフルオレン系PC樹脂と比較して、重合後さらには成形後にポリカーボネート共重合体自体が着色してしまう問題があった。このような着色は、透明性を重視する光学材料では問題となる。さらに、このような着色した共重合体は静電気特性に影響を与えることも多い。特に、電子写真感光体として用いる場合は、繰り返し使用した場合の残留電位が上昇するという問題があった。また、特許文献3の技術においても、酸素不存在下でポリカーボネート共重合体を製造する場合は、気相および液相の酸素濃度を0.5質量ppm以下にする必要があり、設備対応などが必要となるため、簡便な方法ではなかった。
そこで、本発明の目的は、重合後だけでなく成形後にも着色が少なく、静電気特性にも優れたポリカーボネート共重合体、その製造方法および電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決すべく、本発明のポリカーボネート共重合体(以下、「共重合PC」ともいう)の製造方法は、下記式(1)で示されるモノマーと、下記式(2)で示されるモノマーとを用いて重縮合反応を行うポリカーボネート共重合体の製造方法であって、前記式(1)で示されるモノマー1モルに対して、酸化防止剤を0.0001〜1モル当量の割合で反応系に添加するとともに、重縮合反応時の温度を0℃以上、15℃以下とすることを特徴とする。
【0006】
【化1】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示す。)
【0007】
【化2】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示し、Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、9,9−フルオレニリデン基、下記式(2a)、(2b)、(2c)および(2d)で示されるいずれかの結合基である。)
【0008】
【化3】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す。また、R、Rは互いに結合して炭素数4〜12のシクロアルキリデン基を構成していてもよい。)
【0009】
【化4】



(式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。また、Rのうち少なくとも一つ、好ましくは3つが炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0010】
【化5】



(式中、結合位置は、0−、m−、p−のいずれでもよい。)
【0011】
【化6】



(式中、R〜R12は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは単結合またはアルキレン基からなる結合基を示す。ただし、R〜R12のうち2つが結合基であり、残りは水素または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0012】
本発明の製造方法によれば、所定のモノマーを用いて共重合PCを製造する際に、前記式(1)で示されるモノマー1モルに対して、酸化防止剤を0.0001〜0.1モル当量の割合で反応系に添加するので、副反応を抑えることができ、得られた共重合PCの初期着色を抑えることが可能となる。例えば、フレークをJIS K 7105に準拠して測定したYIを3以下に制御することが容易となる。すなわち、本発明においては、実質的に酸素が存在する条件下でも良好な特性を持った共重合PCが得られることが特徴である。
【0013】
本発明では、前記酸化防止剤がハイドロサルファイト塩であることが好ましい。
この発明によれば、酸化防止剤としてハイドロサルファイト塩を用いているので、重縮合反応時の副反応をいっそう抑制することができ、得られた共重合PCの初期着色をより効果的に抑えることが可能となる
【0014】
本発明では、重縮合反応を、酸素分圧が5065Pa以下の雰囲気下で行うことが好ましい。
この発明によれば、重縮合反応を、酸素分圧が5065Pa以下の雰囲気下で行っているので、得られる共重合PCの初期着色を抑制することが容易となる。この酸素分圧は、1013Pa以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明のポリカーボネート共重合体は、前記したいずれかの製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明のポリカーボネート共重合体は、上述した方法により製造されるため、得られた共重合PCの初期着色が非常に少ない。それ故、透明性が要求される光学材料分野に好適に使用できる。また、共重合PCに含まれる不純物も少なく、静電気特性に優れるため、例えば、電子写真感光体分野に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のポリカーボネート共重合体(共重合PC)の製造方法の一例について詳細に説明する。また、得られた共重合PCをバインダー樹脂とする電子写真感光体の一例について説明する。
【0017】
[共重合PCの製造方法]
本発明の共重合PCは、下記式(1)示されるモノマーと、下記式(2)で示されるモノマーとの混合モノマーを用いて重縮合反応を行うことで容易にフレーク状の粉体として得ることができる。
【0018】
【化7】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示す。)
【0019】
【化8】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示し、Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、9,9−フルオレニリデン基、下記式(2a)、(2b)、(2c)および(2d)で示されるいずれかの結合基である。)
【0020】
【化9】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す。また、R、Rは互いに結合して炭素数4〜12のシクロアルキリデン基を構成していてもよい。)
【0021】
【化10】



(式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。また、Rのうち少なくとも一つ、好ましくは3つが炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0022】
【化11】



(式中、結合位置は、0−、m−、p−のいずれでもよい。)
【0023】
【化12】



(式中、R〜R12は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは単結合またはアルキレン基からなる結合基を示す。ただし、R〜R12のうち2つが結合基であり、残りは水素または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0024】
なお、R、R、R、Rに相当する置換基は一つのベンゼン環に複数結合していてもよく、結合する置換基は同じでも異なっていてもよい。
前記した式(1)で示されるモノマー(ビフェノール類)としては、例えば、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5−トリメチル−4,4’−ビフェノール、3−プロピル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ジフェニル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ジブチル−4,4’−ビフェノール等が挙げられる。中でも、4,4’−ビフェノールが着色の少ない共重合PCを与えるという点で好ましい。また、電子写真感光体用の共重合PCとして適用した場合には、耐久性も向上する。これらは1種
単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、前記式(2)で示されるモノマーとしては、例えば、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,7−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、末端フェノールポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピル)−ジメチルシロキシ−ポリジメチルシロキサン、およびα−トリメチルシロキシ−ω−ビス{3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピルジメチルシロキシ}−メチルシロキシ−2−ジメチルシリルエチル−ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらのビスフェノール化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、三価以上のフェノールを用いて分岐構造を持たせてもよい。
【0026】
これらのビスフェノール化合物の中で、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、末端フェノールポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシロキシ−ω−ビス{3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピルジメチルシロキシ}−メチルシロキシ−2−ジメチルシリルエチル−ポリジメチルシロキサン、およびα,ω−ビス(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピル)−ジメチルシロキシ−ポリジメチルシロキサンが好ましい。
さらに好ましくは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンである。
このようなビスフェノール化合物をモノマーとして製造された共重合PCを電子写真感光体に適用すると、クリーニング工程などにおいて他の部材との摩擦によっても摩耗しにくくなり、結果として耐久性が向上するため好ましい。
【0027】
本発明の共重合PCは、前記式(1)のモノマーと前記式(2)のモノマーとを用いて界面重縮合等の重縮合反応を行うことで容易に得られる。
例えば、ホスゲンをはじめとする各種のジハロゲン化カルボニル、あるいはクロロフォルノート化合物等のハロホルメート類、炭酸エステル化合物などを用いて、酸結合剤の存在下に界面重縮合を行うことで好適に炭酸エステル結合を形成することができる。あるいは、エステル交換反応を採用してもよい。これらの反応は、必要に応じて末端停止剤および/または分岐剤の存在下で行われる。
【0028】
前記末端停止剤としては、一価のカルボン酸とその誘導体や、一価のフェノールを用いることができる。例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロキシルフェニル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、1−(P−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸、1,1,1,3,3,3−テトラフロロ−2−プロパノール、あるいは、下記式で示されるアルコールなどが好適に用いられる。
H(CFCHOH
(nは、1〜12の整数)
F(CFCHOH
(mは、1〜12の整数)
これら末端停止剤の添加割合は、共重合組成比として、0.05〜30モル%、さらに好ましくは0.1〜10モル%であり、この割合が30モル%を超えると機械的強度の低下を招くことがあり、0.05モル%未満であると成形性の低下を招くことがある。
【0029】
また、分岐剤の具体例としては、フロログリシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロモイサチンなどが挙げられる。
これら分岐剤の添加量は、共重合組成比で30モル%以下、好ましくは5モル%以下であり、これが30モル%を超えると成形性の低下を招くことがある。
【0030】
界面重縮合を行う場合、酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、ピリジンなどの有機塩基、あるいはこれらの混合物を用いることができる。この酸結合剤の使用割合も反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、原料の二価フェノールの水酸基1モル当たり、1当量もしくはそれより過剰量、好ましくは1〜10当量の酸結合剤を使用すればよい。
【0031】
ここで用いる溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、塩化メチレン、クロロホルム、1.1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、アセトフェノンなどが好適なものとして挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、互いに混ざり合わない2種の溶媒を用いて界面重縮合反応を行ってもよい。
【0032】
また、前記触媒としては、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリンなどの三級アミン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの四級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどの四級ホスホニウム塩などが好適である。
【0033】
この共重合PCの製造法は、具体的には様々な態様で実施可能であり、例えば二価フェノール(前記式(1)のビフェノール類および/または前記式(3)のビスフェノール類)とホスゲンなどを反応させて、ポリカーボネートオリゴマーを製造し、ついでこのポリカーボネートオリゴマーに、上記の二価フェノールを、前記溶媒および酸結合剤のアルカリ水溶液の混合液の存在下に反応させる方法を採用してもよい。また、前記の二価フェノールとホスゲンを、前記溶媒とアルカリ水溶液との混合液中で反応させる方法を採用してもよい。通常は、前者の、予めポリカーボネートオリゴマーを製造する方法が効率的であることから好ましい。
【0034】
ポリカーボネートオリゴマーを製造するには、まず、アルカリ水溶液に二価フェノールを溶解し、二価フェノールのアルカリ水溶液を調製する。ついで、このアルカリ水溶液と塩化メチレンなどの有機溶媒との混合液に、ホスゲンを導入して反応させ、二価フェノールのポリカーボネートオリゴマーを合成する。ついで、反応溶液を水相と有機相とに分離し、ポリカーボネートオリゴマーを含む有機相を得る。この際、アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、0.1〜5規定の範囲が好ましく、また有機相と水相との容積比は、10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5の範囲である。
反応温度は、冷却下に通常0〜70℃、好ましくは5〜65℃であり、反応時間は15分間〜4時間、好ましくは30分間〜3時間程度である。このようにして得られるポリカーボネートオリゴマーの平均分子量は2000以下、重合度は,通常20以下、好ましくは2〜10量体のものである。
【0035】
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーを含む有機相に、前記二価フェノールを加えて反応させる。反応温度は、好ましくは0〜20℃、特に好ましくは5〜15℃である。特に反応温度を20℃以下とすることで、生成する共重合PCの着色(YIの上昇)を抑制することができる。
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行ない得る。反応時間は、反応温度等によって左右されるが、通常0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜2時間程度である。
また、重縮合反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素分圧を5065Pa(0.05気圧)以下とすることで、得られる共重合PCの着色(YIの上昇)を抑制することができる。この酸素分圧は、1013Pa(0.01気圧)以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明では、前記式(1)で示されるビフェノール類1モルに対して、酸化防止剤を0.0001〜1モル当量の割合で反応系に添加する。ここで、モル当量とは、酸化防止機能を発揮する構造単位が一分子中に複数存在する場合には、各機能を発揮する構造単位をそれぞれ1モルとすることを意味する。例えば、一分子中にヒンダードフェノールが2つ結合したタイプの2官能型酸化防止剤1モルは、2モル当量である。酸化防止剤の添加量としては、0.0002〜0.5モル当量がより好ましく、0.001〜0.1モル当量がさらに好ましく、0.002〜0.05モル当量が最も好ましい。
このような酸化防止剤としては、還元性を有する酸化防止剤、例えば、亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイト塩(ハイドロサルファイトナトリウム、ハイドロサルファイトカリウム)などがあるが特にハイドロサルファイト塩が好ましい。ハイドロサルファイト塩を添加することにより、得られる共重合PCの着色(YIの上昇)を抑制することができる。また、ハイドロサルファイト塩の添加により、モノマーの酸化を防止したり、酸化されたモノマーを還元して反応性を回復させることができ、重合の効率化に寄与する。
この反応にあたって、二価フェノールは、有機溶媒溶液および/またはアルカリ水溶液として添加するのが望ましい。その添加順序については、特に制限はない。なお、触媒、末端停止剤および分岐剤などは、上記の製造法において、必要に応じ、ポリカーボネートオリゴマーの製造時、その後の高分子量化の反応時のいずれか、またはその両方において添加して用いることができる。
【0037】
また、この共重合PCには、本発明の目的達成を阻害しない範囲で、前記式(1)および前記式(2)以外の構造単位を有するポリカーボネート単位や、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン構造を有する単位を含有しているものであってもよい。
また、モノマーとして使用される二価フェノールのうちビフェノール類には通常、微量の不純物が含まれており、そのうち、トリヒドロキシビフェニル類(フェノール性水酸基が一分子中に3つ存在するビフェニル化合物)の含有量を300質量ppm以下に管理することで共重合PCのYIを3以下に制御することが容易となる。結果的に、この共重合PC(フレーク状粉体)から成形されるペレットや成形体もほとんど着色することがなくなる。
また、静電気特性を悪化させるトリヒドロキシビフェニル類の含有量が少ないことは、電子写真感光体に用いられる成形体の原料としても有用である。ビフェノール類中のトリヒドロキシビフェニル類の含有量は、好ましくは、150質量ppm以下であり、より好ましくは20質量ppm以下であり、最も好ましくは10質量ppm以下である。
さらにまた、共重合PCのYIを3以下に制御するには、ビフェノール類中の3−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルの含有量を370質量ppm以下、好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは30質量ppm以下とすることも有効である。
【0038】
このような不純物の含有量を低減するには、ビフェノール類の合成時に原料からカテコールなどの二価フェノールを高精度で除去する方法や、得られたビフェノール類をアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)やケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)で再結晶する方法、あるいは、カラムによる分離などの方法がある。特に、得られたビフェノール類を再結晶する方法は、工業規模で高純度品を得ることができるため好ましい。
【0039】
なお、得られる共重合PCの還元粘度[ηsp/C](粘度平均分子量と相関のある値)
を前記の範囲にするには、例えば、前記反応条件の選択、分岐剤や分子量調節剤の使用量の調節など各種の方法によってなすことができる。また、場合により、得られた共重合PCに適宜物理的処理(混合、分画など)および/または化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所定の還元粘度[η/C]の共重合PCとして取得することもできる。
なお、得られた反応生成物(粗生成物)は、公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のものを共重合PCとして回収することができる。
【0040】
[共重合PCの構造]
前記した製造方法によれば、以下のようなモノマー単位を有する共重合PCが得られる。特に、下記式(3)で示されるモノマー単位0.1〜50モル%と、下記式(4)で示されるモノマー単位とを含んで構成され、該共重合PCのYI(フレーク状粉体をJIS K 7105に準拠して測定)が3以下であるものが好ましい。
【0041】
【化13】



(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子,炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示す。)
【0042】
【化14】


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示し、Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、9,9−フルオレニリデン基、前記式(2a)、(2b)、(2c)および(2d)で示されるいずれかの結合基である。)
【0043】
ここで、R、R、R、Rに相当する置換基は一つのベンゼン環に複数結合していてもよく、結合する置換基は同じでも異なっていてもよい。
前記した構造の共重合PCによれば、前記式(3)で示されるモノマー単位が0.1〜50モル%であり、該ポリカーボネート共重合体のYI(フレーク状粉体をJIS K 7105に準拠して測定)が3以下であるので、射出成形等により成形品とした場合であっても着色がほとんどない。従って、耐熱性の他に無色透明であることも重視される光学材料用途に好適である。また、フレーク状粉体のYIが3以下であることは、同時に静電気特性を悪化させる不純物の量が少ないことも意味するので、電子写真感光体に用いられる成形体の原料としても有用である。
【0044】
ただし、前記式(3)で示されるモノマー単位が0.1モル%未満であると、ビフェノール骨格による改質効果が得られず、耐熱性が不足したり、湿式成形時の塗工液が白化(ゲル化)する。また、電子写真感光体用の成形体(バインダー樹脂)として用いた場合に、電荷輸送層の結晶化の防止や耐刷寿命の向上の達成がやや困難となる。一方、このモノマー単位の割合が50モル%を越えた場合には、共重合PCの一部(ビフェノール骨格)に結晶化が起こりやすくなり透明性が悪化するので電子写真感光体用バインダー樹脂としては不適当なものとなる。例えば、透過光量が低下すると電子写真感光体の感度が低下する。また、ヘイズが大きいと、画像ぼけが発生して好ましくない。
前記式(3)で示されるモノマー単位の好ましい範囲は、1〜40モル%であり、より好ましくは、5〜30モル%である。
【0045】
また、本発明の共重合PCは、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の
20℃における還元粘度[ηsp/C]は、0.2〜5.0dl/gの範囲にあることが好ましい。還元粘度[ηsp/C]が0.2dl/g未満では、共重合PCの機械的強度が低い。特に、この共重合PCを、例えば電子写真感光体用成形体のバインダー樹脂とした場合にバインダー層の表面硬度が不足し、感光体が摩耗して耐刷寿命が短くなり、実用上不利となる。一方、還元粘度[ηsp/C]が5.0dl/gを越えると、共重合PCの溶液粘度が上昇し、溶液塗工法による場合の感光体製造が困難になる。
なお、本発明の共重合PCは、本発明の目的に支障のない範囲で、前記以外の他のモノマー単位を有していてもよく、また、他のポリカーボネート成分や添加物を適宜添加配合して使用することもできる。
【0046】
[電子写真感光体の構成]
以下に、前記した共重合PCからなる成形体を用いた電子写真感光体について説明する。
電子写真感光体は、上述の共重合PCを感光層中のバインダー樹脂として利用する限り、公知の種々の形式の電子写真感光体はもとより、どのようなものとしてもよいが、感光層が、少なくとも1層の電荷発生層と少なくとも1層の電荷輸送層を有する有機電子写真感光体、または、一層に電荷発生物質と電荷輸送物質を有する有機電子写真感光体とすることが好ましい。
【0047】
共重合PCは、感光層中のどの部分にも使用してもよいが、本発明の共重合PCの効果を十分に発揮するためには、電荷輸送層中において電荷移動物質のバインダー樹脂として使用するか、単一の感光層のバインダー樹脂として使用するか、表面保護層として使用することが望ましい。電荷輸送層を2層有する多層型の電子写真感光体の場合には、そのいずれかの電荷輸送層に使用することが好ましい。
このような電子写真感光体において、前記した本発明の共重合PCは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、所望に応じて本発明の目的を阻害しない範囲で、他のポリカーボネート等のバインダー樹脂成分を含有させてもよい。さらに、酸化防止剤等の添加物を含有させてもよい。
【0048】
また、前記した電子写真感光体は、感光層を導電性基板上に有するものである。感光層が電荷発生層と電荷輸送層とを有する場合、電荷発生層上に電荷輸送層が積層されていてもよく、また電荷輸送層上に電荷発生層が積層されていてもよい。また、一層中に電荷発生物質と電荷輸送物質を同時に含むものであってもよい。さらにまた、必要に応じて表面層に導電性又は絶縁性の保護膜が形成されていてもよい。さらに、各層間の接着性を向上させるための接着層あるいは電荷のブロッキングの役目を果すブロッキング層等の中間層などが形成されているものであってもよい。
【0049】
電子写真感光体に用いられる導電性基板材料としては、公知のものなど各種のものを使用することができ、具体的には、アルミニウムやニッケル、クロム、パラジウム、チタン、モリブデン、インジウム、金、白金、銀、銅、亜鉛、真鍮、ステンレス鋼、酸化鉛、酸化錫、酸化インジウム、ITO(インジウムチンオキサイド:錫ドープ酸化インジウム)もしくはグラファイトからなる板やドラム、シート、ならびに蒸着、スパッタリング、塗布などによりコーティングするなどして導電処理したガラス、布、紙もしくはプラスチックのフィルム、シートおよびシームレスシーベルト、ならびに電極酸化等により金属酸化処理した金属ドラムなどを使用することができる。
【0050】
前記電荷発生層は少なくとも電荷発生材料を有するものであり、この電荷発生層はその下地となる基板上に真空蒸着、スパッタ法等により電荷発生材料の層を形成せしめるか、又はその下地となる基板上に電荷発生材料をバインダー樹脂を用いて結着してなる層を形成せしめることによって得ることができる。バインダー樹脂を用いる電荷発生層の形成方法としては公知の方法等各種の方法を使用することができるが、通常、例えば、電荷発生材料をバインダー樹脂と共に適当な溶媒により分散若しくは溶解した塗工液を、所定の下地となる基板上に塗布し、乾燥せしめ湿式成形体として得る方法が好適である。
【0051】
前記電荷発生層における電荷発生材料としては、公知の各種のものを使用することができる。具体的な化合物としては、非晶質セレンや、三方晶セレン等のセレン単体、セレン−テルル等のセレン合金、As2Se3等のセレン化合物もしくはセレン含有組成物、酸化亜鉛、CdS−Se等の周期律表第12族および第16族元素からなる無機材料、酸化チタン等の酸化物系半導体、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、τ型無金属フタロシアニン、χ型無金属フタロシアニン等の無金属フタロシアニン顔料、α型銅フタロシアニン、β型銅フタロシアニン、γ型銅フタロシアニン、ε型銅フタロシアニン、X型銅フタロシアニン、A型チタニルフタロシアニン、B型チタニルフタロシアニン、C型チタニルフタロシアニン、D型チタニルフタロシアニン、E型チタニルフタロシアニン、F型チタニルフタロシアニン、G型チタニルフタロシアニン、H型チタニルフタロシアニン、K型チタニルフタロシアニン、L型チタニルフタロシアニン、M型チタニルフタロシアニン、N型チタニルフタロシアニン、Y型チタニルフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、X線回折図におけるブラック角2θが27.3±0.2度に強い回折ピークを示すチタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン顔料、シアニン染料、アントラセン顔料、ビスアゾ顔料、ピレン顔料、多環キノン顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、ピリリウム染料、スクェアリウム顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料、アゾ顔料、チオインジゴ顔料、キノリン顔料、レーキ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、アズレニウム染料、トリアリールメタン染料、キサンチン染料、チアジン染料、チアピリリウム染料、ポリビニルカルバゾール、ビスベンゾイミダゾール顔料などが挙げられる。これら化合物は、1種を単独であるいは2種以上のものを混合して、電荷発生物質として用いることができる。これら電荷発生物質の中でも、好適なものとしては、特開平11−172003号公報に具体的に記載のものが挙げられる。
【0052】
前記電荷輸送層は、下地となる基板上に、電荷輸送物質をバインダー樹脂で結着してなる層を形成することによって得ることができる。
前記した電荷発生層や電荷輸送層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知の各種のものを使用できる。具体的には、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ブチラール樹脂、ポリエステル、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、メタクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−スチレン共重合体、大豆油変性アルキッド樹脂、ニトロ化ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポイソプレン、ポリチオカーボネート、ポリアリレート、ポリハロアリレート、ポリアリルエーテル、ポリビニルアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるし、また、2種以上を混合して用いることもできる。なお、電荷発生層や電荷輸送層におけるバインダー樹脂としては、前記した共重合PCを使用することが好適である。
【0053】
この電荷輸送層の形成方法としては、公知の各種の方式を使用することができるが、通常、電荷輸送物質を本発明で得られた共重合PCとともに適当な溶媒に分散若しくは溶解した塗工液を、所定の下地となる基板上に塗布し、乾燥して湿式成形体として得る方法が好適である。電荷輸送層形成に用いられる電荷輸送物質と共重合PCとの配合割合は、好ましくは質量比で20:80〜80:20、さらに好ましくは30:70〜70:30である。
この電荷輸送層において、本発明の共重合PCは1種単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、他のバインダー樹脂を本発明の共重合PCと併用することも可能である。
【0054】
このようにして形成される電荷輸送層の厚さは、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜30μmである。この厚さが5μm未満であると初期電位が低くなるおそれがあり、100μmを超えると電子写真特性の低下を招くおそれがある。
本発明の共重合PCと共に使用できる電荷輸送物質としては、公知の各種の化合物を使用することができる。このような化合物としては、カルバゾール化合物、インドール化合物、イミダゾール化合物、オキサゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、アニリン化合物、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、スチルベン化合物、フルオレノン化合物、ブタジエン化合物、キノン化合物、キノジメタン化合物、チアゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾロン化合物、イミダゾリジン化合物、ビスイミダゾリジン化合物、オキサゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンズイミダゾール化合物、キナゾリン化合物、ベンゾフラン化合物、アクリジン化合物、フェナジン化合物、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビニルフェニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール樹脂、あるいはこれらの構造を主鎖や側鎖に有する重合体などが好適に用いられる。これら化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これら電荷輸送物質の中でも、特開平11−172003公報において具体的に例示されている化合物が特に好適に用いられる。
なお、この電子写真感光体においては、電荷発生層か電荷輸送層の少なくともいずれかに本発明の共重合PCをバインダー樹脂として用いる。
【0055】
本発明の共重合PCを用いた電子写真感光体においては、前記導電性基板と感光層との間に、通常使用されるような下引き層を設けることができる。この下引き層としては、酸化チタンや酸化アルミニウム、ジルコニア、チタン酸、ジルコン酸、ランタン鉛、チタンブラック、シリカ、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化珪素などの微粒子、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、カゼイン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂などの成分を使用することができる。また、この下引き層に用いる樹脂として、前記バインダー樹脂を用いてもよいし、本発明の共重合PCを用いてもよい。これら微粒子や樹脂は単独または種々混合して用いることができる。これらの混合物として用いる場合には、無機質微粒子と樹脂を併用すると、平滑性のよい皮膜が形成されることから好適である。
【0056】
この下引き層の厚みは、0.01〜10μm、好ましくは0.1〜7μmである。この厚みが0.01μm未満であると、下引き層を均一に形成することが困難であり、また10μmを超えると電子写真特性が低下することがある。また、前記導電性基体と感光層との間には、通常使用されるような公知のブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、前記のバインダー樹脂と同種の樹脂を用いることができる。また本発明のポリカーボネート樹脂を用いてもよい。このブロッキング層の厚みは、0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μmである。この厚みが0.01μm未満であると、ブロッキング層を均一に形成することが困難であり、また20μmを超えると電子写真特性が低下することがある。
【0057】
さらに、本発明の共重合PCを用いた電子写真感光体には、感光層の上に、保護層を積層してもよい。この保護層には、前記のバインダー樹脂と同種の樹脂を用いることができる。また、本発明のポリカーボネート樹脂を用いることが特に好ましい。この保護層の厚みは、0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μmである。そして、この保護層には、前記電荷発生物質、電荷輸送物質、添加剤、金属やその酸化物、窒化物、塩、合金、カーボンブラック、有機導電性化合物などの導電性材料を含有していてもよい。
【0058】
さらに、この電子写真感光体の性能向上のために、前記電荷発生層および電荷輸送層には、結合剤、可塑剤、硬化触媒、流動性付与剤、ピンホール制御剤、分光感度増感剤(増感染料)を添加してもよい。また、繰返し使用に対しての残留電位の増加、帯電電位の低下、感度の低下を防止する目的で種々の化学物質、酸化防止剤、界面活性剤、カール防止剤、レベリング剤などの添加剤を添加することができる。
【0059】
前記結合剤としては、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソブレン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリクロロプレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱および/または光硬化性樹脂も使用できる。いずれにしても、電気絶縁性で通常の状態で皮膜を形成し得る樹脂であり、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限はない。
前記可塑剤の具体例としては、ビフェニル、塩化ビフェニル、o−ターフェニル、ハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタレン、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、トリフェニルフォスフェート、ジイソブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ラウリル酸ブチル、メチルフタリールエチルグリコレート、ジメチルグリコールフタレート、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フルオロ炭化水素などが挙げられる。
【0060】
前記硬化触媒の具体例としては、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが挙げられ、流動性付与剤としては、モダフロー、アクロナール4Fなどが挙げられ、ピンホール制御剤としては、ベンゾイン、ジメチルフタレートが挙げられる。これら可塑剤や硬化触媒、流動付与剤、ピンホール制御剤は、前記電荷輸送物質に対して、5質量%以下で用いることが好ましい。
【0061】
また、分光感度増感剤としては、増感染料を用いる場合には,例えばメチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー、ビクトリアブルーなどのトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ、フラペオシンなどのアクリジン染料、メチレンブルー、メチレングリーンなどのチアジン染料、カプリブルー、メルドラブルーなどのオキサジン染料、シアニン染料、メロシアニン染料、スチリル染料、ピリリュウム塩染料、チオピリリュウム塩染料などが適している。
【0062】
感光層には、感度の向上、残留電位の減少、反復使用時の疲労低減などの目的で、電子受容性物質を添加することができる。その具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、3−ニトロ無水フタル酸、4−ニトロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、p−ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、2,3−ジクロロベンゾキノン、ジクロロジシアノパラベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4’−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)アクリル酸エチル、9−アントラセニルメチルマロンジニトリル、1−シアノ−(p−ニトロフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデン−(ジシアノメチレンマロノニトリル)、ポリニトロ−9−フルオレニリデン−(ジシアノメチレンマロノジニトリル)、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの電子親和力の大きい化合物が好ましい。これら化合物は電荷発生層、電荷輸送層のいずれに加えてもよく、その配合割合は、電荷発生物質または電荷輸送物質の量を100質量部としたときに、0.01〜200質量部、好ましくは0.1〜50質量部である。
【0063】
また、表面性の改良のため、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体、フッ素系グラフトポリマーを用いてもよい。これら表面改質剤の配合割合は、前記バインダー樹脂に対して、0.1〜60質量%、好ましくは5〜40質量%である。この配合割合が0.1質量%より少ないと、表面耐久性、表面エネルギー低下などの表面改質が充分でなく、60質量%より多いと、電子写真特性の低下を招くことがある。
【0064】
電荷発生層、電荷輸送層に添加する酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、スルフィド系酸化防止剤、有機リン酸系酸化防止剤などラジカル補足性、ラジカル連鎖禁止作用、及び/又は過酸化物分解作用を有するものが好ましい。これら酸化防止剤の配合割合は、前記電荷輸送物質に対して、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
このような酸化防止剤の具体例としては、特開平11ー172003号公報の明細書に記載された化学式([化94]〜[化101])の化合物が好適である。
これら酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい、そして、これらは前記感光層のほか、表面保護層や下引き層、ブロッキング層に添加してもよい。
このような酸化防止剤を添加することにより、ラジカルを補足し、電荷発生層や電荷輸送層の劣化を防ぐことができる。
【0065】
前記電荷発生層、電荷輸送層の形成の際に使用する前記溶媒の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル、四塩化炭素、四臭化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を混合溶媒として使用してもよい。
【0066】
単層型電子写真感光体の感光層は、前記の電荷発生物質、電荷輸送物質、添加剤を用いて、本発明のバインダー樹脂(共重合PC)を適用することで容易に形成することができる。また、電荷輸送物質としては前述したホール輸送性物質および/または電子輸送物質を添加することが好ましい。電子輸送物質としては、特開2005−139339号公報に例示されるものが好ましく適用できる。
【0067】
各層の塗布は公知のものなど各種の塗布装置を用いて行なうことができ、具体的には、例えば、アプリケータ、スプレーコーター、ベーコーター、チップコーター、ロールコーター、ディップコーター、ドクタブレード等を用いて行なうことができる。
電子写真感光体における感光層の厚さは、5〜100μm、好ましくは8〜50μmであり、これが5μm未満であると初期電位が低くなりやすく、100μmを超えると電子写真特性が低下することがある。電子写真感光体の製造に用いられる電荷発生物質:バインダー樹脂の比率は、質量比で1:99〜30:70、好ましくは3:97〜15:85である。また、電荷輸送物質:バインダー樹脂の比率は、質量比で10:90〜80:20、好ましくは30:70〜70:30である。
【0068】
このようにして得られる電子写真感光体は、本発明の共重合PCを用いるため、感光層作製時に塗工液が白化(ゲル化)することがない。また、感光層中に本発明の共重合PCからなる成形体(バインダー樹脂)を有しているため、耐久性に優れるとともに繰り返し使用時の残留電位の上昇幅が小さいという優れた静電気特性を有しており、長期間にわたって優れた電子写真特性を維持する感光体であり、複写機(モノクロ、マルチカラー、フルカラー;アナログ、デジタル)プリンター(レーザー、LED、液晶シャッター)、ファクシミリ、製版機、およびこれら複数の機能を有する機器などの各種の電子写真分野に好適に用いられる。
【0069】
なお、電子写真感光体を使用するにあたっては、帯電には、コロナ放電(コロトロン、スコロトロン)、接触帯電(帯電ロール、帯電ブラシ)などが用いられる。また、露光には、ハロゲンランプや蛍光ランプ、レーザー(半導体、He−Ne)、LED、感光体内部露光方式のいずれを採用してもよい。現像には、カスケード現像、二成分磁気ブラシ現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像などの乾式現像方式や湿式現像方式が用いられる。転写には、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法や、圧力転写法、粘着転写法が用いられる。定着には、熱ローラ定着、ラジアントフラッシュ定着、オープン定着、圧力定着などが用いられる。さらに、クリーニング・除電には、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーおよびクリーナーを省略したものなどが用いられる。また、トナー用の樹脂としては、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、環状炭化水素の重合体などが適用できる。トナーの形状は、球形でも不定形でもよく、一定の形状(回転楕円体状、ポテト状等)に制御したものでも適用できる。トナーは、粉砕型、懸濁重合トナー、乳化重合トナー、ケミカル造粒トナー、あるいはエステル伸長トナーのいずれでもよい。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実施例及び比較例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形及び応用が可能である。
具体的には、所定のビスフェノール化合物モノマーとビフェノール化合物モノマーとを用いて重縮合反応を行って共重合PCを製造し、さらにこれを用いて電子写真感光体を製造した後各種の評価を行った。
【0071】
[実施例1]
(共重合PCの製造)
2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)74gを6%
濃度の水酸化ナトリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン250mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で15分
間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜4であり、分子末端にクロロホルメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を450mlとした。
次に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(トリヒドロキシビフェニル含有量:321質量ppm、3−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル含有量:49質量ppm)24gを8質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液150ml(酸化防止剤として、ハイドロサルファイトナトリウム Naを100mg(0.57ミリモル、原料のビフェノール1モルに対して0.0044モル)添加)に溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール3.0gを加えた(ビフェノール水溶液)。
【0072】
前記したオリゴマー溶液に、ビフェノール水溶液を加えて混合し、この混合液を激しく撹拌しながら触媒として7質量%濃度のトリエチルアミン水溶液を2ml加え、28℃に保った状態で撹拌を続けながら界面重縮合反応を1.5時間行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットルで1回、水1リットルで2回の順で洗浄してポリマー溶液を得た。
次に、撹拌羽根を装着したバッフル付き容器を別途用意し、これにメタノール2リットルを投入した。容器中のメタノールを撹拌羽根で十分撹拌しながら、前記したポリマー溶液のうち1リットルを、粒子が形成される速度でゆっくり滴下し、再沈によるフレーク化処理を行った。滴下終了後、撹拌速度を十分保ちながらさらに10分間撹拌した後、さらにメタノールを2リットル追加投入し、撹拌をさらに5分間継続した。得られたフレークを濾過・乾燥して評価用の共重合PC(PC−1)とした。
【0073】
(共重合PCの評価)
PC−1について、その状態(粉体)のままでYIの測定を行った(JIS K 7105に準拠)。
次に、PC−1を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.82dl/gであった。なお、PC−1の化学構造をH−NMRにより分析したところ、下記式(5)で示される共重合PCであることが確認された。
【0074】
【化15】

【0075】
また、PC−1のフレークを50mmφ短軸押出機により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmで溶融押出を行ってペレット化した。このペレットを120℃で5時間乾燥処理した後、20×50×3mmの金型(S55C鏡面#1000)を使用して射出成形を行い、物性測定用の試験片(20×50×3mm)を作成した。この試験片(射出成形品)についてYI(JIS K 7105に準拠)および全光線透過率の測定を行った(いずれもJIS K 7105に準拠)。これらの評価結果は、以下の基準で判断した。
射出成形品のYI:2以下を◎、4以下を○、4を越えるものを×とした。
全光線透過率 :89%以上を○、89%未満を×とした。
【0076】
(電子写真感光体の製造)
導電性基体としてアルミニウム金属を蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その表面に、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層して積層型感光層を形成する電子写真感光体を製造した。具体的には、電荷発生層と電荷輸送層を以下のようにして形成した。
電荷発生物質としてオキソチタニウムフタロシアニン0.5質量部を用い、バインダー樹脂としてブチラール樹脂0.5質量部を用いた。これらを溶媒の塩化メチレン19質量部に加え、ボールミルにて分散し、この分散液をバーコーターにより、上記導電性基体フィルム表面に塗工し、乾燥させることにより、膜厚約0.5μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として、下記式(6)で示される化合物(CTM−1)0.5gと、PC−1のフレーク0.5gとを10mlのテトラヒドロフランに分散し、塗工液を調製した。この塗工液をアプリケータにより上記の電荷発生層の上に塗布して乾燥し、膜厚約20μmの電荷輸送層を形成した。
【0077】
【化16】

【0078】
(電子写真感光体の評価)
得られた電子写真感光体について、静電気帯電試験装置EPA−8100(川口電機製作所製)を用いて電子写真特性を評価した。具体的には、スタティックモードで−6kVのコロナ放電を行い、初期表面電位(VO)、光照射(10Lux)5秒後の残留電位(初期残留電位 V)、半減露光量(初期感度、E1/2)を測定した。また、市販のプリンター(京セラ製 FS−600)を改造して感光体の表面電位を測定可能とした上で、前記感光体をドラム上に装着し、帯電特性の評価を行った。具体的には、高温・高湿下(35℃、85%RH)において、トナーおよび紙を通さない条件で、24時間繰り返し運転前後の帯電特性(繰返し残留電位上昇(ΔV))の評価を行った。
前記した各項目は、以下のような評価基準により判断した。
初期表面電位(V):−700V以下を○、この値を越えたものを×とした。
初期残留電位(V):−40V以上(絶対値としては40V以下の値)を○、この値を下回ったもの(絶対値が40Vを越えるもの)を×とした。
初期感度(E1/2) :0.85Lux・sec以下を○、この値を越えたものを×とした。
繰返し残留電位上昇(ΔV):繰り返しによる残留電位の絶対値の上昇幅が40V以内を○、その値を越えたものを×とした。
【0079】
[実施例2]
実施例1の共重合PCの製造において、重縮合反応時の温度を15℃とした以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−2)を製造した。PC−2を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.82dl/gであった。また、PC−2の化学構造をH−NMRにより分析したところ、PC−1と同一の構造であることが確認された。
PC−2および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0080】
[実施例3]
実施例1の共重合PCの製造において、重縮合反応を行う前に、反応容器を窒素ガスで置換し、酸素分圧を5000Paとした後に、重縮合反応を行った。それ以外は実施例1と同様にして共重合PC(PC−3)を製造した。
PC−3を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.82dl/gであった。また、PC−3の化学構造をH−NMRにより分析したところ、PC−1と同一の構造であることが確認された。
PC−3および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0081】
[実施例4]
実施例1の共重合PCの製造において、共重合モノマー用のビフェニル化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(アセトン再結晶処理品、トリヒドロキシビフェニル含有量:8質量ppm、3−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル含有量:23質量ppm)24gを用い、重縮合反応時の温度を15℃とした以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−4)を製造した。PC−4を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.83dl/gであった。また、PC−4の化学構造をH−NMRにより分析したところ、PC−1と同一の構造であることが確認された。
PC−4および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0082】
[実施例5]
実施例1の共重合PCの製造において、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)74gを1,1−ビス(4−ビドロキシフェニル)シクロヘキサン87gに変更し、6質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液550mlを1.5規定の水酸化カリウム水溶液550mlに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−5)を製造した。PC−5を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.83dl/gであった。また、PC−5の化学構造をH−NMRにより分析したところ、下記式(7)で示される共重合PCであることが確認された。PC−5および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0083】
【化17】

【0084】
[実施例6]
実施例1の共重合PCの製造において、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)74gを1,1−ビス(4−ビドロキシフェニル)エタン69gに変更し、6質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液550mlを1.5規定の水酸化カリウム水溶液550mlに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−6)を製造した。PC−6を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.83dl/gであった。また、PC−6の化学構造をH−NMRにより分析したところ、下記式(8)で示される共重合PCであることが確認された。PC−6および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0085】
【化18】

【0086】
[実施例7]
実施例1の共重合PCの製造において、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)74gを2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)ブタン79gに変更し、6質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液550mlを1.5規定の水酸化カリウム水溶液550mlに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−7)を製造した。PC−7を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.82dl/gであった。また、PC−7の化学構造をH−NMRにより分析したところ、下記式(9)で示される共重合PCであることが確認された。PC−7および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0087】
【化19】

【0088】
[実施例8]
実施例1の共重合PCの製造において、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)74gを2,2−ビス(3−メチル−4−ビドロキシフェニル)プロパン83gに変更し、6質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液550mlを1.5規定の水酸化カリウム水溶液550mlに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−8)を製造した。PC−8を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.82dl/gであった。また、PC−8の化学構造をH−NMRにより分析したところ、下記式(10)で示される共重合PCであることが確認された。PC−8および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0089】
【化20】

【0090】
[比較例1]
共重合モノマー用のビフェニル化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(トリヒドロキシビフェニル含有量:321質量ppm、3−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル含有量:49質量ppm)24gを用いた以外は、実施例1と同様にして共重合PC(PC−9)を製造した。PC−9を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を作成し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.82dl/gであった。また、PC−9の化学構造をH−NMRにより分析したところ、PC−1と同一の構造であることが確認された。
PC−9および、この共重合PCから実施例1と同様にして製造された電子写真感光体について、実施例1と同様の評価を行った。
【0091】
[評価結果]
表1に、実施例1〜8および比較例1の評価結果を示す。
【0092】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のポリカーボネート共重合体は、光学用途あるいは、電子写真感光体等の電子材料分野に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるモノマーと、下記式(2)で示されるモノマーとを用いて重縮合反応を行うポリカーボネート共重合体の製造方法であって、
前記式(1)で示されるモノマー1モルに対して、酸化防止剤を0.0001〜1モル当量の割合で反応系に添加するとともに、
重縮合反応時の温度を0℃以上、15℃以下とすることを特徴とするポリカーボネート共重合体の製造方法。
【化1】


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示す。)
【化2】


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を示し、Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、9,9−フルオレニリデン基、下記式(2a)、(2b)、(2c)および(2d)で示されるいずれかの結合基である。)
【化3】


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す。また、R、Rは互いに結合して炭素数4〜12のシクロアルキリデン基を構成していてもよい。)
【化4】


(式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。また、Rのうち少なくとも一つ、好ましくは3つが炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化5】


(式中、結合位置は、0−、m−、p−のいずれでもよい。)
【化6】


(式中、R〜R12は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは単結合またはアルキレン基からなる結合基を示す。ただし、R〜R12のうち2つが結合基であり、残りは水素または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法において、
前記酸化防止剤がハイドロサルファイト塩であることを特徴とするポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法において、
重縮合反応を、酸素分圧が5065Pa以下の雰囲気下で行うことを特徴とするポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法により製造されたことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
請求項4に記載のポリカーボネート共重合体を含むことを特徴とする電子写真感光体。

【公開番号】特開2010−159422(P2010−159422A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27645(P2010−27645)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【分割の表示】特願2007−271672(P2007−271672)の分割
【原出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】