説明

ポリカーボネート多孔質体およびその製造方法

【課題】ポリカーボネートを含む多孔質体およびその製造方法を提供。
【解決手段】第1の溶媒に溶解させたポリカーボネートを含むポリマーの溶液に、第2の溶媒を加えて静置し、析出して成形体を得、前記成形体を第3の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる第1の溶媒および/または第2の溶媒を前記第3の溶媒と置換させ、ポリカーボネートを含む多孔質体を得る工程を含み、前記第1の溶媒が、ポリカーボネートに対する良溶媒であり、前記第2の溶媒が、ポリカーボネートに対する貧溶媒であり、前記第1の溶媒と第2の溶媒の体積割合(第1の溶媒/第2の溶媒)が、1〜10である製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートを含む多孔質体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続した骨格と空隙が互いに絡み合った構造を有する一塊の材料は、モノリスと呼ばれる。シリカ系多孔質体には、厚みのある成形体であるモノリスを作成する技術も知られている。高分子系多孔質体としては、ビニルポリマーのモノリスについては、重合法による合成技術が報告されているが、構造制御が容易ではないため、実用化に至っていない。
【0003】
多孔質体は分離剤、吸着剤等として多方面で多く用いられている。ポリカーボネート(以下、「PC」と呼ぶことがある)は熱可塑性プラスチックの一種であり、エンジニアリングプラスチックに分類される。ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れるため、航空機、自動車などの輸送機器、電気機器、光学機器、医療機器などに広く材料として用いられている。このポリカーボネートを原料とする多孔質体は、PCの好ましい性質をそのまま生かすことが期待されることから、有用性が期待される。
【0004】
従来、PC溶液流涎膜と液状保護層とからなる積層体を、凝固液に浸漬し、凝固液中に移動させて多孔質ポリマー膜を析出される相転換法が知られている(たとえば特許文献1)。他にも、ディップコーティング法によりPC多孔質ポリマー膜を形成する方法が知られている。また、照射法によりPC多孔質ポリマー膜を形成する方法も知られている。しかしながら、これらの方法によると、薄膜を形成することは可能であるが、厚みのある、例えばモノリスを形成することには応用できていないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−165128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、ポリカーボネートを含む多孔質体の製造方法であって、簡便な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリカーボネートを含む多孔質体の製造方法であって、
第1の溶媒に溶解させたポリマーの溶液に第2の溶媒を加えて静置し、析出して成形体を得、
前記成形体を第3の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる第1の溶媒および/または第2の溶媒を前記第3の溶媒と置換させ、ポリカーボネートを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記ポリマーはポリカーボネートを含み、
前記第1の溶媒が、ポリカーボネートに対する良溶媒であり、クロロホルム、四塩化エタン、1,1,2−三塩化エタン、1,2−二塩化エタン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサンおよび塩化メチレンから選択され、
前記第2の溶媒が、ポリカーボネートに対する貧溶媒であり、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールから選択され、
前記第1の溶媒と第2の溶媒の体積割合(第1の溶媒/第2の溶媒)が、0.1〜10である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡便な、ポリカーボネートを含む多孔質体の製造方法を提供することが可能である。また、本発明の製造方法により、ポリカーボネートを含む多孔質体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図3】図3は、実施例3で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図4】図4は、実施例4で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図5】図5は、実施例5で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図6】図6は、実施例6で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図7】図7は、実施例7で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図8】図8は、実施例8で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図9】図9は、実施例9で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図10】図10は、実施例10で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図11】図11は、実施例11で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図12】図12は、実施例12で得られたPC多孔質体のSEM写真である。
【図13】図13は、実施例14で得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真である。
【図14】図14は、実施例15で得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真である。
【図15】図15は、実施例16で得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真である。
【図16】図16は、実施例17で得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真である。
【図17】図17は、実施例18で得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真である。
【図18】図18は、実施例19で得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真である。
【図19(a)】図19(a)は、PC粉末のDSCである。
【図19(b)】図19(b)は、実施例2で得られたPC多孔質体のDSCである。
【図19(c)】図19(c)は、実施例5で得られたPC多孔質体のDSCである。
【図20(a)】図20(a)は、実施例14〜16において得られたPC/PHBH多孔質体のDSCである。
【図20(b)】図20(b)は、実施例17〜19において得られたPC/PHBH多孔質体のDSCである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の多孔質体の形状は限定されないが、例えば、膜状、立方体状、直方体状、円柱状、卵形状等が挙げられる。また、この多孔質体の縦横高さの3つの方向のうち、最も短いものを便宜的に厚みと呼ぶ。本発明の多孔質体の厚みは限定されないが、例えば10μm以上であり、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは1mm以上である。
【0011】
本発明においてポリカーボネートとは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるポリカーボネートを意味する。前記二価フェノールは、下記一般式
【化1】

【0012】
[式中、Rは炭素数1〜15の二価の脂肪族基、脂環族基、フェニル置換脂肪族基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−又は−CO−であり、Xはアルキル基又はハロゲン原子であり、m及びnは0、1又は2である。]で表されるものであり、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]が好ましく使用され、その他の二価フェノールとしては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等、更には2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きハロゲン化ビスフェノール類等があげられる。これらは単独で使用しても又は二種以上併用してもよい。カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等があげられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメート等があげられる。また、例えば三官能以上の多官能性芳香族化合物を二価フェノール及びカーボネート前駆体と反応させた分岐ポリカーボネートであってもよく、二種以上のポリカーボネートの混合物であってもよい。本発明において、ポリカーボネートの分子量は限定されないが、数平均分子量が、例えば、5千〜50万であり、好ましくは1万〜10万であり、より好ましくは1万〜5万である。
【0013】
本発明における製造方法で用いるポリマー溶液は、従来公知の方法により、ポリマーを第1の溶媒に溶解させて得ることができる。例えば、ポリマーを水に溶解させる際、物理的刺激を与えて行ってもよい。その物理的刺激としては、例えば、攪拌、振とう、超音波処理等が挙げられる。
【0014】
前記ポリマーは、ポリカーボネートを含む。前記ポリマーは、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)を更に含んでもよい。PHBHとしては、モノマー単位の3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸とのモル比(3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒドロキシヘキサン酸)が、例えば92/8〜80/20である。また、PHBHを得るための重合方法は特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合等のいずれかの方法を用いてもよい。PHBHの重量平均分子量は、耐衝撃性や引張特性の面から、例えば2万〜30万であり、3万〜25万が好ましく、4万〜20万がより好ましい。また、PHBHの数平均分子量は、例えば2万〜30万であり、3万〜25万が好ましく、4万〜20万がより好ましい。PHBHを更に含む場合、ポリカーボネートと、PHBHの重量比(ポリカーボネート/PHBH)は、例えば1.0〜9.9であり、好ましくは1.5〜9.5であり、より好ましくは2〜9である。
【0015】
第1の溶媒に溶解させたポリマーの溶液に第2の溶媒を加えて静置する。前記第1の溶媒としては、ポリカーボネートに対する良溶媒であり、クロロホルム、四塩化エタン、1,1,2−三塩化エタン、1,2−二塩化エタン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサンおよび塩化メチレンから選択される。前記第1の溶媒としては、ジクロロメタンおよびクロロホルムが好ましい。前記第2の溶媒としては、ポリカーボネートに対する貧溶媒であり、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびブタノールから選択される。前記第2の溶媒としては、シクロヘキサンが好ましい。前記第1の溶媒と第2の溶媒の体積割合(第1の溶媒/第2の溶媒)は、1〜10であり、好ましくは0.2〜8であり、より好ましくは0.3〜6である。
【0016】
本発明の製造方法においては、前記ポリマー溶液におけるポリマーの濃度は、例えば、10〜300mg/ml、好ましくは30〜250mg/ml、より好ましくは50〜200mg/mlである。
【0017】
本発明における製造方法においては、次に、前記ポリマー溶液を静置して析出した成形体を得る。静置時間は、好ましくは10秒〜48時間であり、より好ましくは30秒〜24時間である。
【0018】
本発明における製造方法においては、次に、前記成形体を第3の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる第1の溶媒および/または前記第2の溶媒を前記第3の溶媒と置換させ、ポリカーボネートを含む多孔質体を得る。
【0019】
前記第3の溶媒は、水、低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサンおよびアセトニトリルからなる群から選択される1以上が好ましく、水、アセトンがより好ましい。前記低級アルコールとしては、炭素数1〜6を有する低級アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノールが挙げられる。
【0020】
前記溶媒と置換させた後、得られた成形体を乾燥して多孔質体を得てもよい。前記乾燥は、例えば0℃〜90℃、好ましくは10℃〜80℃で行う。また、前記乾燥は、例えば減圧〜常圧、好ましくは減圧で行う。
【0021】
本発明の多孔質体は、前記のようにポリマーを含み、前記ポリマーはポリカーボネートを含む。また、本発明の多孔質体は、前記ポリマーを含み、孔径は、例えば0.1μm〜15μmであり、骨格径は、例えば0.05μm〜2μmである。また、本発明の多孔質体の比表面積は、例えば、20〜300m2/gであり、好ましくは30〜200m2/gである。なお、比表面積は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。従って、このような多孔質体は、例えばフィルター、吸着材等として、用いることができる。
【0022】
本発明において、キレート基を有する官能基で修飾された多孔質体は、前記多孔質体を、キレート基を有する官能基を含む化合物で修飾することにより得られる。前記多孔質体を、キレート基を有する官能基を含む化合物で修飾する工程は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0023】
まず、前記多孔質体に、前記キレート基を有する官能基を含む化合物を含む溶液を加え、任意に加熱(例えば、20〜90℃、好ましくは30〜80℃で)しながら2〜24時間、振とうする。前記化合物の溶液用の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ピロリドン等が挙げられる。この後、前記多孔質体を、水等の溶媒で洗浄し、得られた多孔質体を減圧下で常温で乾燥させる。このようにして、前記多孔質体を、キレート基を有する官能基を含む化合物で修飾する工程を行うことができる。
【0024】
本発明の製造方法において、前記キレート基を有する官能基を含む化合物は、アミンから選択されるのが好ましい。前記アミンとしては、アルキルアミン、分岐状または直鎖状ポリエチレンイミン[例えば、式H2N(CH2CH2NH)nHで表されるポリエチレンアミン(例えば、エチレンジアミン(n=1)、ジエチレントリアミン(n=2)、トリエチレンテトラミン(n=3))]、複素環式アミン(例えばピペラジン)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられる。
【0025】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を用いる。
PC:ポリカーボネート
PEI:ポリエチレンイミン
PHBH:3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体
SEM:走査電子顕微鏡
Tm:融点
【0026】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
SEM:日立S−3000N(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
イオンスパッタ:日立E−1010
DSC:EXSTAR6000 DSC6229(SII製)
BET:マイクロメリティックス トライスター3000(島津製作所)
本明細書において孔径および骨格径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から測定した孔径および骨格径の最小値および最大値を記載した。
【実施例1】
【0027】
5ccのサンプル管にPC(数平均分子量16,100、アルドリッチ社製、ビスフェノールAとホスゲンから得た)を入れ、クロロホルムを180mg/mLとなるように加えて室温で溶解させた。その溶液へ、シクロヘキサンを添加して、クロロホルム/シクロヘキサンの体積比が1:1であり、かつ、最終的なPCポリマー濃度が90mg/mlのPC溶液を調製した。このPC溶液の入ったサンプル管を20℃で24時間静置した。この冷却時の間に相分離が起こり、円柱状の成形体が得られた。24時間中にエタノールを3回交換して混合溶媒中のクロロホルムおよびシクロヘキサンをエタノールに置換した。その後24時間25℃で減圧乾燥を行い、エタノールを除去してPC多孔質体を得た(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状)。
【0028】
<SEM観察>
15.0mAの放電電流で150sスパッタリングを行った後、15.0kVから25.0kVの印加電圧でSEM観察を行った。
【0029】
得られたPC多孔質体のSEM写真を図1に示す。図1に示すように、PC多孔質体は、孔径が0.58〜9.3μm、骨格径が0.35〜0.93μmの多孔質体であることが確認できた。
【実施例2】
【0030】
最終的なPCポリマー濃度を、120mg/mlに変更した以外は、実施例1と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.35〜2.91μm、骨格径は0.14〜0.58μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図2に示す。
【実施例3】
【0031】
最終的なPCポリマー濃度を、150mg/mlに変更した以外は、実施例1と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.23〜1.4μm、骨格径は0.09〜0.47μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図3に示す。
【実施例4】
【0032】
PC(数平均分子量16,100、アルドリッチ社製、ビスフェノールAとホスゲンから得た)を、PC(数平均分子量22,500、アルドリッチ社製、ビスフェノールAとホスゲンから得た)に変更した以外は、実施例1と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.93〜9.88μm、骨格径は0.23〜0.7μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図4に示す。
【実施例5】
【0033】
最終的なPCポリマー濃度を、120mg/mlに変更した以外は、実施例4と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.23〜3.72μm、骨格径は0.12〜0.41μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図5に示す。
【実施例6】
【0034】
最終的なPCポリマー濃度を、150mg/mlに変更した以外は、実施例4と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.17〜1.74μm、骨格径は0.09〜0.17μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図6に示す。
【実施例7】
【0035】
PC溶液の入ったサンプル管の静置温度を20℃から40℃へ変更した以外は、実施例2と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.35〜4.07μm、骨格径は0.35〜0.71μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図7に示す。
【実施例8】
【0036】
PC溶液の入ったサンプル管の静置温度を20℃から40℃へ変更した以外は、実施例5と同一にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.35〜4.65μm、骨格径は0.23〜0.58μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図7に示す。
【実施例9】
【0037】
クロロホルム/シクロヘキサンの体積比を1:1から0.75:1へ変更した以外は、実施例2と同様にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.41〜5.58μm、骨格径は0.2〜0.7μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図9に示す。
【実施例10】
【0038】
クロロホルム/シクロヘキサンの体積比を1:1から0.5:1へ変更した以外は、実施例2と同様にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.47〜6.98μm、骨格径は0.22〜0.81μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図10に示す。
【実施例11】
【0039】
クロロホルム/シクロヘキサンの体積比を1:1から0.75:1へ変更した以外は、実施例5と同様にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.33〜4.65μm、骨格径は0.19〜0.67μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図11に示す。
【実施例12】
【0040】
クロロホルム/シクロヘキサンの体積比を1:1から0.5:1へ変更した以外は、実施例5と同様にしてPC多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.35〜5.23μm、骨格径は0.22〜0.93μm)を得た。得られたPC多孔質体のSEM写真を図12に示す。
【実施例13】
【0041】
サンプル管に質量比で分岐状ポリエチレンイミン(PEI、Mw=10,000、和光純薬工業株式会社製)5mg/ml、10mg/mlまたは20mg/mlのエタノール溶液10mlと実施例2で得たPC多孔質体(0.3g)を加え、バイオシェイカーによって3日間、室温で攪拌した。生成物を100mLの水で3時間溶媒置換し、溶媒置換後の水を廃棄して新たな水に入れ替えるという操作を2回行った後、24時間の常温減圧乾燥を行ってPEI化されたPC多孔質体を得た。
【0042】
PEI化されたPC多孔質体においては、PEIの濃度が高くなるに従い、IR分析において3300cm-1付近のピーク強度が高くなっていた。また、原料のPC多孔質体は非常に疎水性であるが、PEI化されたPC多孔質体は、親水性の性質を示した。これらの結果から、PEI化されたPC多孔質体が得られることを確認した。
【実施例14】
【0043】
5ccのサンプル管にPC(数平均分子量16,100、アルドリッチ社製、270mg)およびPHBH(数平均分子量:48,00、重量平均分子量:51,400、3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒドロキシヘキサン酸のモル比は89/11、株式会社カネカ製、30mg)を入れ、クロロホルムを250mg/mLとなるように加えて室温で溶解させた。その溶液へ、シクロヘキサンを添加して、クロロホルム/シクロヘキサンの体積比が1:1であり、かつ、最終的なPCおよびPHBHの合計濃度が125mg/mlのPCおよびPHBH溶液を調製した。このPCおよびPHBH溶液の入ったサンプル管を20℃で24時間静置した。この冷却時の間に相分離が起こり、円柱状の成形体が得られた。24時間中にエタノールを3回交換して混合溶媒中のクロロホルムおよびシクロヘキサンをエタノールに置換した。その後24時間25℃で減圧乾燥を行い、エタノールを除去してPC/PHBH多孔質体を得た(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.24〜1.86μm、骨格径は0.23〜0.5μm)。得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真を図13に示す。
【実施例15】
【0044】
PC270mgとPHBH30mgの代わりに、PC240mgおよびPHBH60mgを用いた以外は、実施例14と同一にしてPC/PHBH多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.21〜1.74μm、骨格径は0.21〜0.53μm)を得た。得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真を図14に示す。
【実施例16】
【0045】
PC270mgとPHBH30mgの代わりに、PC210mgおよびPHBH90mgを用いた以外は、実施例14と同一にしてPC/PHBH多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.19〜1.63μm、骨格径は0.12〜0.35μm)を得た。得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真を図15に示す。
【実施例17】
【0046】
PC(数平均分子量16,100、アルドリッチ社製、270mg)の代わりに、PC(数平均分子量22,500、アルドリッチ社製、270mg)を用いた以外は、実施例14と同一にしてPC/PHBH多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.33〜2.91μm、骨格径は0.23〜0.7μm)を得た。得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真を図16に示す。
【実施例18】
【0047】
PC270mgとPHBH30mgの代わりに、PC240mgおよびPHBH60mgを用いた以外は、実施例17と同一にしてPC/PHBH多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.28〜2.79μm、骨格径は0.21〜0.64μm)を得た。得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真を図17に示す。
【実施例19】
【0048】
PC270mgとPHBH30mgの代わりに、PC210mgおよびPHBH90mgを用いた以外は、実施例17と同一にしてPC/PHBH多孔質体(寸法:直径14mm、厚み13mmの略円柱状、孔径は0.26〜1.98μm、骨格径は0.14〜0.47μm)を得た。得られたPC/PHBH多孔質体のSEM写真を図18に示す。
【0049】
<DSC測定>
PC粉末のDSCを図19(a)に、実施例2で得られたPC多孔質体のDSCを図19(b)に、実施例5で得られたPC多孔質体のDSCを図19(c)に示す。図19から、PCは多孔質体を形成すると、融解ピークが観測され、結晶化が促進されることが確認できた。
【0050】
実施例14〜16において得られたPC/PHBH多孔質体のDSCを図20(a)に、実施例17〜19において得られたPC/PHBH多孔質体のDSCを図20(b)に示す。図20から、230℃付近にPC多孔質体とPC/PHBH多孔質体の両方に融解ピークが確認できた。このことから、PC/PHBH多孔質体の結晶化が促進されていることが確認できた。
【0051】
実施例2および5において得られたPC多孔質体と、実施例14〜19において得られたPC/PHBH多孔質体のDSCから得られた、各多孔質体のTm値を以下の表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
<BET比表面積測定>
実施例2、14、15および16において得られた孔質体について、サンプル脱ガス装置を用い、窒素気流下60℃で40分間脱気した後、BET3点法による比表面積測定を行った。得られた結果を以下の表2に示す。
【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の方法により得られたポリカーボネート多孔質体は、フィルター、吸着材等への利用も期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを含む多孔質体の製造方法であって、
第1の溶媒に溶解させたポリマーの溶液に第2の溶媒を加えて静置し、析出して成形体を得、
前記成形体を第3の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる第1の溶媒および/または第2の溶媒を前記第3の溶媒と置換させ、ポリカーボネートを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記ポリマーはポリカーボネートを含み、
前記第1の溶媒が、ポリカーボネートに対する良溶媒であり、クロロホルム、四塩化エタン、1,1,2−三塩化エタン、1,2−二塩化エタン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサンおよび塩化メチレンから選択され、
前記第2の溶媒が、ポリカーボネートに対する貧溶媒であり、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールから選択され、
前記第1の溶媒と第2の溶媒の体積割合(第1の溶媒/第2の溶媒)が、1〜10である製造方法。
【請求項2】
前記第1の溶媒が、クロロホルムまたはジクロロメタンである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネート溶液におけるポリカーボネートの濃度が、10〜300mg/mlである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリマーは、さらに3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ポリカーボネートと、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体の重量比(ポリカーボネート/共重合体)が、1.0〜9.9である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
孔径0.1〜15μmの連続孔を有し、孔の骨格径が0.05〜2μmであり、厚みが1mm以上であるポリカーボネートを含む多孔質体。

【図19(a)】
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【図19(b)】
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【図19(c)】
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【図20(a)】
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【図20(b)】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−107948(P2013−107948A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252239(P2011−252239)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】