説明

ポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】同一の製造系列の品種切替に伴う移行品量の低減、新品種の安定的運転を行うポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】分子量Maの樹脂Aを製造後、分子量Mbの樹脂Bを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物及び塩化カルボニル、又は芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ土類金属化合物及び塩化カルボニルを用いてカーボネートオリゴマーを合成するオリゴマー化工程と、カーボネートオリゴマーの重縮合反応を行う重縮合工程とを少なくとも有し、製造条件を変更後、樹脂Bのオリゴマー化工程の少なくとも滞留時間に相当する時間が経過するまで樹脂Bのカーボネートオリゴマーを重縮合工程に移送しないポリカーボネート樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、界面重縮合によるポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、機械的特性、透明性等に優れ、各種の用途に広く用いられている。このようなポリカーボネート樹脂の製造方法としては、例えば、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニル(ホスゲン)との界面重縮合による界面法が挙げられる。
界面法によりポリカーボネート樹脂を製造する具体的な態様は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を調製し、重縮合触媒であるアミン化合物の存在下で、塩化カルボニルと界面重縮合反応を行い、次いで、中和、水洗、乾燥工程を経てポリカーボネート樹脂が得られる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−310935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリカーボネート樹脂は多くの用途に使用されるため、分子量が異なる複数の品種が製造されている。また、製造設備の制約により、同一の製造系列を用いて、分子量が異なる複数の品種を製造することがある。この場合、所定の分子量のポリカーボネート樹脂の製造運転終了後、切り替えられた製造条件で新たな品種の製造運転がなされる。
このため、製造条件の切り替えによる製造運転が安定するまでに、分子量が一定しない移行品の発生が避けられないという問題がある。
また、重縮合反応終了後に行われる樹脂単離処理、乾燥処理の条件を、新たな品種に対応させて適切に設定しないと、樹脂の単離に不具合が生じたり、樹脂の乾燥が不十分となり、非定常な品質のポリカーボネート樹脂が排出されるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、同一の製造系列を用いて分子量が異なる複数の品種を製造する場合に、品種切替の際に生じる移行品の量を低減し、新たな品種の製造運転が安定的に行われるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、品種変更の際に製造装置の運転を停止することなく、製造条件変更による移行品の発生を最小限に抑えるために、カーボネートオリゴマーを合成する工程の滞留時間相当分に合成されたカーボネートオリゴマーを系外に排出する構成を採用している。
かくして本発明によれば、分子量Maを有するポリカーボネート樹脂Aを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して分子量Maとは異なる分子量Mbを有するポリカーボネート樹脂Bを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、該製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物及び塩化カルボニル、又は芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ土類金属化合物及び塩化カルボニルを用いてカーボネートオリゴマーを合成するオリゴマー化工程と、オリゴマー化工程において合成されたカーボネートオリゴマーの重縮合反応を行う重縮合工程と、を少なくとも有し、ポリカーボネート樹脂Aの製造からポリカーボネート樹脂Bの製造を行うために、製造条件を変更後、ポリカーボネート樹脂Bのオリゴマー化工程の滞留時間に少なくとも相当する時間が経過するまで、オリゴマー化工程において合成されたカーボネートオリゴマーを重縮合工程に移送しないことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
【0007】
ここで、製造条件を変更後、ポリカーボネート樹脂Bのオリゴマー化工程における滞留時間に相当する時間が経過するまで、重縮合工程における重縮合反応液の次工程への送液を停止することが好ましい。
また、本発明が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法において、重縮合工程で得られた重縮合反応液から有機溶剤を除去しポリカーボネート樹脂を固形化するための樹脂単離工程を更に有し、ポリカーボネート樹脂Bを固形化するときの温度を、ポリカーボネート樹脂Aを固形化する場合の温度条件より0.5℃/時〜1℃/時ずつ変更することが好ましい。固形化するための温度を急激に変化させることに伴う、ポリカーボネート樹脂粒状体の微粉化を抑制することができる。
【0008】
さらに、本発明が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法において、重縮合工程で得られた重縮合反応液から単離されたポリカーボネート樹脂を所定の乾燥機を使用して乾燥する乾燥工程を有し、乾燥工程において以下の(1)もしくは(2)の条件でポリカーボネート樹脂を乾燥することが好ましい。
(1)分子量Mbが分子量Maより大きい場合(分子量Ma<分子量Mb)、製造条件を変更後から24時間以内に、乾燥機の熱媒蒸気圧力をポリカーボネート樹脂Aを乾燥する場合の条件より0.05〜0.2MPa−Gの範囲で少なくとも1回変更する。
(2)分子量Mbが分子量Maより小さい場合(分子量Ma>分子量Mb)、製造条件を変更後から12時間以内に、乾燥機の熱媒蒸気圧力をポリカーボネート樹脂Aを乾燥する場合の条件より0.05〜0.1MPa−Gの範囲で変更し、さらに、熱媒蒸気圧力を変更後12時間以内に熱媒蒸気圧力を最大0.1MPa−Gの範囲で変更する。
このような範囲で乾燥条件を少しずつ変更することにより、乾燥機内でのポリカーボネート樹脂粉状体同士の付着や乾燥が不十分な粉状体の発生を最小限に抑えることができる。
【0009】
また、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法において、ポリカーボネート樹脂Aの分子量Maとポリカーボネート樹脂Bの分子量Mbとの差(|分子量Ma−分子量Mb|)が、粘度平均分子量に換算して3,000〜10,000であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なった分子量を有する複数のポリカーボネート樹脂を、品種切替の際に生じる移行品の量を低減し、同一製造系列にて安定的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
【0012】
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法は、少なくともカーボネートオリゴマーを合成するオリゴマー化工程と、オリゴマー化工程で合成したカーボネートオリゴマーの重縮合反応によりポリカーボネート樹脂を得る重縮合工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0013】
(オリゴマー化工程)
オリゴマー化工程では、カーボネートオリゴマーが、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物と塩化カルボニルとを、周知の界面重縮合法又は溶液重縮合法で反応させることにより合成される。
ここで、本実施の形態において、得られるカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は5,000以下である。
【0014】
オリゴマー化工程で使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノ−ル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA、以下、「BPA」と略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
尚、本実施の形態においては、前述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、実質的にその特性を損なわない範囲で、他の脂肪族ジヒドロキシ化合物で置き換えてもよい。そのような脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0016】
(アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物)
オリゴマー化工程では、前述した芳香族ジヒドロキシ化合物は、水及びアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物と共に水相を形成する。
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物としては、通常、水酸化物が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
オリゴマー化工程において、芳香族ジヒドロキシ化合物に対するアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の割合は、通常、1.0〜1.5(当量比)、好ましくは、1.02〜1.04(当量比)である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の割合が過度に多い又は過度に少ない場合は、得られるカーボネートオリゴマーの末端基に影響し、その結果、重縮合反応が異常となる傾向がある。
尚、水相には、ハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加しても良い。
【0017】
(有機溶媒)
オリゴマー化工程では、通常、有機溶媒を使用する。有機溶媒としては、オリゴマー化工程における反応温度及び反応圧力において、塩化カルボニル及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート樹脂等の反応生成物を溶解し、水と相溶しない(または、水と溶液を形成しない)任意の不活性有機溶媒が挙げられる。
このような不活性有機溶媒として、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素;その他、ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、例えば、塩化メチレン又はクロロベンゼン等の塩素化された炭化水素が好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
【0018】
(塩化カルボニル)
オリゴマー化工程で使用する塩化カルボニル(以下、CDCと記すことがある。)は、通常、液状又はガス状で使用される。温度管理の観点から、CDCは液状であることが好ましく、反応温度において液状を保ち得る反応圧力が選択される。
オリゴマー化工程におけるCDCの好ましい使用量は、反応条件、特に、反応温度及び水相中の芳香族ジヒドロキシ化合物の金属塩の濃度によって適宜選択され、特に限定されない。通常、芳香族ジヒドロキシ化合物の1モルに対し、CDC1モル〜2モル、好ましくは1.05モル〜1.5モルである。CDCの使用量が過度に多いと、未反応CDC量が多くなり原単位が極端に悪化する傾向がある。また、CDCの使用量が過度に少ないと、クロロホーメート基量が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなる傾向がある。
【0019】
(分岐剤)
また、本実施の形態において、オリゴマー化工程では、任意の分岐剤を使用することができる。このような分岐剤としては、たとえば、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4’−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン等が挙げられる。また、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル等も使用しうる。これらの中でも、少なくとも3個のフェノール性ヒドロキシル基を有する分岐剤が好適である。分岐剤の使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分岐度に応じ適宜選択され、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、0.05モル%〜2モル%である。
【0020】
(連鎖停止剤)
本実施の形態において、オリゴマー化工程では、通常、連鎖停止剤としてモノフェノールを使用する。モノフェノールとしては、例えば、フェノール;p−t−ブチルフェノール、p−クレゾール等の炭素数1〜炭素数20のアルキルフェノール;p−クロロフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール等のハロゲン化フェノールが挙げられる。モノフェノールの使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分子量に応じ適宜選択され、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.5モル%〜10モル%(0.005倍〜0.1倍)である。
【0021】
後述するポリカーボネート樹脂の分子量は、モノフェノール等の連鎖停止剤の添加量で決定される。このため、ポリカーボネート樹脂の分子量を制御する観点から、連鎖停止剤の添加時期は、カーボネート形成性化合物の消費が終了した直後から、分子量伸長が始まる前までの間が好ましい。
カーボネート形成性化合物の共存下でモノフェノールを添加すると、モノフェノール同士の縮合物(炭酸ジフェニル類)が多く生成し、目標とする分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくい傾向がある。モノフェノールの添加時期が極端に遅れると、分子量制御が困難となり、さらに、分子量分布の低分子側に特異な肩を有する樹脂となり、成型時には垂れを生じる等の弊害が生じる傾向がある。
【0022】
オリゴマー化工程では、二相界面縮合法を採用した場合、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物水溶液又はアルカリ土類金属化合物水溶液と塩化カルボニルとの接触に先立ち、芳香族ジヒドロキシ化合物を含む有機相とアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む水相と、水と任意に混合しない有機相とを接触させ、乳濁液を形成させることが特に好ましい。
このような乳濁液を形成する手段としては、例えば、所定の撹拌翼を有する撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波乳化機等の動的ミキサー、静的ミキサー等の混合機を使用するのが好ましい。乳濁液は、通常、0.01μm〜10μmの液滴径を有し、乳化安定性を有する。
乳濁液の乳化状態は、通常、ウェーバー数又はP/q(単位容積当たりの付加動力値)で表される。ウェーバー数としては、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、最も好ましくは35,000以上である。また、上限としては1,000,000以下程度で十分である。また、P/qとしては、好ましくは200kg・m/リットル以上、さらに好ましくは500kg・m/リットル以上、最も好ましくは1,000kg・m/リットル以上である。
【0023】
乳濁液と塩化カルボニル(CDC)との接触は、前述した乳化条件よりも弱い混合条件下で行うのがCDCの有機相への溶解を抑制する意味で好ましい。ウェーバー数としては、10,000未満、好ましくは5,000未満、さらに好ましくは2,000未満である。また、P/qとしては、200kg・m/リットル未満、好ましくは100kg・m/リットル未満、さらに好ましくは50kg・m/リットル未満である。CDCの接触は、管型反応器や槽型反応器にCDCを導入することによって達成することができる。
【0024】
ここで、本実施の形態において使用されるべき有機溶媒は、反応温度及び反応圧力において、塩化カルボニル(CDC)及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート等の反応生成物を溶解するが、水を溶解しない(水と均一溶液をつくらない)任意の不活性有機溶媒を含んでいることが重要である。代表的な不活性有機溶媒には、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素;その他ニトロベンゼン、アセトフェノン等の置換芳香族炭化水素が含まれる。中でも、ハロゲン化された炭化水素、例えば、塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として、使用することができる。
【0025】
(縮合触媒)
オリゴマー化反応は、縮合触媒の存在下で行うことができる。縮合触媒の添加時期は、CDCを消費した後が好ましい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮合触媒の中から、任意に選択することができる。例えば、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、N−エチルピペリジンが好ましい。
【0026】
オリゴマー化工程における反応温度は、通常、80℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは10℃〜50℃の範囲である。反応時間は反応温度によって適宜選択され、通常、0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が過度に高いと、副反応の制御ができず、CDC原単位が悪化する傾向がある。反応温度が過度に低いと、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大し、コストアップとなる傾向がある。
【0027】
有機相中のカーボネートオリゴマー濃度は、得られるカーボネートオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10重量%〜40重量%程度である。有機相の割合は芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液又はアルカリ土類金属塩水溶液を含む水相に対し、0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。
【0028】
(重縮合工程)
次に、重縮合工程について説明する。重縮合工程では、前述したオリゴマー化工程で合成したカーボネートオリゴマーを用いた界面重縮合反応が行われる。得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、通常、12,000〜60,000、好ましくは、14,000〜30,000である。
重縮合工程の好ましい態様としては、先ず、カーボネートオリゴマーを含む有機相と水相とを分離し、分離した有機相に必要に応じて不活性有機溶媒を追加し、カーボネートオリゴマーの濃度を調整する。この場合、重縮合反応によって得られる有機相中のポリカーボネート樹脂の濃度が5重量%〜30重量%となるように不活性有機溶媒の量を調整する。
次に、新たに水及びアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む水溶液を加え、さらに、重縮合条件を整えるために、好ましくは重縮合触媒を添加し、界面重縮合法に従い重縮合反応を行う。重縮合反応における有機相と水相との割合は、容積比で有機相:水相=1:(0.2〜1)程度が好ましい。
【0029】
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物としては、前述したオリゴマー化工程において使用するものと同様な化合物が挙げられる。中でも、工業的に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の使用量は、重縮合反応中、反応系が常にアルカリ性に保たれる量以上であればよく、重縮合反応の開始時に、全量を一括して添加してもよく、また、重縮合反応中に適宜分割して添加してもよい。
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の使用量が過度に多いと、副反応である加水分解反応が進む傾向がある。そのため、重縮合反応終了後における水相に含まれるアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の濃度が0.05N以上、好ましくは0.05N〜0.3N程度となるようにするのが好ましい。
【0030】
重縮合工程における重縮合反応の温度は、通常、常温付近である、反応時間は0.5時間〜5時間、好ましくは1時間〜3時間程度である。重縮合反応終了後は、常法によって酸洗浄及び水洗浄を行うことにより不純物を除去した後、有機溶媒を除去することにより粒状体のポリカーボネート樹脂を分離する。
ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から固体のポリカーボネート樹脂を得る方法(固形化)としては、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から有機溶媒をニーダー等で蒸発させる方法(ニーダー法)、溶媒と非溶媒とを混合してポリカーボネート樹脂を沈殿させる方法、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を撹拌翼を有する造粒槽に供給し水中懸濁状態を保ちながら加熱して有機溶媒を蒸発させポリカーボネート樹脂粒状体を得る方法(造粒法)が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂を固形化する方法として、乾燥性、溶融押出によるペレット化等の加工性の点から造粒法がより好ましい。以下、造粒法について説明する。
【0031】
(造粒法)
造粒法では、所定の攪拌翼を備えた造粒槽中に、ポリマー溶液導入管からポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を連続的に供給し、また、補給水導入管から補給水を供給し、水中懸濁状態が形成される。そして、有機溶媒溶液から有機溶媒を蒸発させ、ポリカーボネート樹脂粒状体を含む水スラリーが導出管から連続的に抜き出される。
ここで、造粒法で使用する造粒槽としては、2段以上の撹拌翼を有するものが好ましい。撹拌翼が1段の場合は、造粒槽の下部壁面にブロック状固形物が発生したり、水スラリーの表面の流動状態が悪くなりブロック状の凝集物が発生したりして、安定運転が困難となる傾向がある。
【0032】
供給されるポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液の造粒槽における供給位置としては、上段に位置する撹拌翼の下端又は下端を含む水平面と、下段に位置する撹拌翼の上端又は上端を含む水平面の間の水中が好ましい。具体的には、上記二つの水平面の間隔をhとした場合、上記二つの水平面からそれぞれ0.1h以上離れた位置を選ぶのがよく、好ましくは0.2h以上、更に好ましくは二つの水平面の中間部付近に供給するのがよい。
撹拌翼が3段以上有る場合には各撹拌翼の間の水中にポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を分割して供給してもよい。
【0033】
また、造粒槽におけるポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液の供給位置は、造粒槽の半径方向として、槽半径をdとした場合、造粒槽の中心より0.3d〜0.9dの位置、好ましくは0.4d〜0.8dの位置である。0.9d〜1dの部分では岩板状固化物が生成し易くなり、また0〜0.3dの部分では、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から発生する有機溶媒の蒸気が造粒槽内に均一に分散されにくくなり撹拌軸部分で突沸状態となる傾向がある。
尚、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を造粒槽内の気相部に供給すると、液面上でポリカーボネート樹脂がフイルム状になったり粗大凝集物の発生の原因となったりして好ましくない。
【0034】
造粒槽中で有機溶媒を蒸発させる際の温度は、有機溶媒と水との共沸点以上、水の沸点以下の範囲から適宜選択される。造粒槽における温度が過度に低いと、有機溶媒の蒸発が遅くなり造粒能力が低下し、造粒槽内にポリカーボネート樹脂のブロックが生成する傾向がある。造粒槽における温度が過度に高いと、得られるポリカーボネート樹脂粒状体の嵩密度が小さくなる傾向がある。
【0035】
造粒槽におけるポリカーボネート樹脂粒状体の存在量は、造粒槽に導入されるポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液の量、補給水の量、および造粒槽から抜き出すポリカーボネート樹脂粒状体含有水スラリーの量を調節し、所定の範囲内の一定値に保つことが好ましい。具体的には、造粒槽における撹拌および水スラリーの取り扱いの観点から、通常、造粒槽中の水スラリーに対して5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜45重量%、更に好ましくは15重量%〜40重量%程度の範囲である。
【0036】
造粒法においては、造粒槽から導出管を介して抜き出されたポリカーボネート樹脂粒状体を含む水スラリーの一部が湿式粉砕機に導入される。そして、湿式粉砕機により、水スラリー中のポリカーボネート樹脂粒状体は、粒径0.1mm〜4mm、好ましくは0.2mm〜2mm程度になるように粉砕処理され(湿式粉砕処理)、再び循環水スラリー導入管を通して造粒槽に循環される。
【0037】
湿式粉砕処理した水スラリーを造粒槽に循環させる量は、造粒槽から抜き出した水スラリーの50重量%〜99.5重量%、好ましくは70重量%〜98重量%程度である。造粒槽に循環させる湿式粉砕処理した水スラリー量が過度に少ないと、造粒槽で形成されるポリカーボネート樹脂粒状体の粒径が段々大きくなるとともに不揃いになり、そのため、所望の製品が得られなくなるとか、連続運転が不能となる傾向がある。また、造粒槽に循環させる湿式粉砕処理した水スラリー量が過度に多い場合は、製品の取得量が減少する傾向がある。
【0038】
尚、湿式粉砕処理に使用する湿式粉砕機としては、液体中の固体を粉砕できる形式のものであれば特に限定されない。中でも、粉砕とともに水スラリーの移送作用を併せ有するものが好ましく、例えば、撹拌翼が高速回転する形式のものが好適である。前者の形式の市販品としては、例えば、特殊機化工業株式会社製パイプラインホモミキサー(登録商標)又はホモミックラインミル(登録商標)等が挙げられる。後者の形式の市販品としては、例えば、小松ゼノア株式会社製ディスインテグレーター(登録商標)等が挙げられる。
【0039】
造粒槽に循環された循環水スラリー中の湿式粉砕処理物は、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から生成したポリカーボネート樹脂粒状体と合体し、これらを含む水スラリーとして造粒槽から導出管により連続的に抜き出される。
造粒槽から抜き出されたポリカーボネート樹脂粒状体含有水スラリーは、その後、傾斜、濾過、遠心分離等の手段によってポリカーボネート樹脂粒状体と水とが分離され、分離されたポリカーボネート樹脂粒状体は所定の乾燥手段により乾燥される。
【0040】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法における製造フロー)
次に、図面に基づき、所定の製造装置を用いた界面法によるポリカーボネート樹脂の製造方法における製造フローについて説明する。
図1は、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法におけるブロックフローの一例を示す図である。図1のブロックフローに示すように、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法では、界面重縮合反応に使用する原料を調製する原調工程(ステップ101)と、原調工程で調製された原料によりカーボネートオリゴマーを合成するオリゴマー化工程(ステップ102)とにより、重縮合反応の前駆体が準備される。
【0041】
次に、オリゴマー化工程で得られたオリゴマー化反応液から水相と有機相とを分離する水相分離(ステップ103)と、水相と分離されたカーボネートオリゴマーを含む有機相を貯槽するオリゴマー貯槽(ステップ104)とを経て、貯槽したカーボネートオリゴマーによる重縮合反応を行う重縮合工程(ステップ105)に進む。
続いて、重縮合反応により得られたポリカーボネート樹脂を含む重縮合反応液を洗浄する洗浄工程(ステップ106)と、重縮合反応液からポリカーボネート樹脂粒状体を単離に固形化する樹脂単離工程(ステップ107)と、単離されたポリカーボネート樹脂を乾燥する乾燥工程(ステップ108)を経て、ポリカーボネート樹脂粒状体(PC粒状体)が製造される(ステップ109)。
【0042】
さらに、本実施の形態では、同一の製造装置を使用し、分子量Maのポリカーボネート樹脂Aから分子量Maとは異なる分子量Mbのポリカーボネート樹脂Bへと品種を変更する際、以下の操作がなされる。
即ち、品種を変更するために重縮合条件が変更された後、合成されたカーボネートオリゴマーは、オリゴマー化工程における滞留時間に相当する時間が経過するまで、製造装置とは別に設けた貯槽に送液され(ステップ110)、重縮合工程(ステップ105)に供給されない。
オリゴマー化工程における滞留時間に相当する時間が経過後、合成されたカーボネートオリゴマーの製造装置とは別に設けた貯槽への送液が停止される。そして、合成されたカーボネートオリゴマーは、次工程であるオリゴマー貯槽(ステップ104)を経て、重縮合工程(ステップ105)に供給される。
【0043】
(原調工程)
原調工程(ステップ101)では、原調タンクに、ビスフェノールA(以下、「BPA」と記すことがある。)等の芳香族ジヒドロキシ化合物と、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)及び脱塩水(DMW)、さらに必要に応じてハイドロサルファイト(HS)等の還元剤を含むBPAアルカリ水溶液等の原料が調製される。
【0044】
(オリゴマー化工程)
次に、オリゴマー化工程(ステップ102)では、原調工程で調製されたBPAアルカリ水溶液は、所定の反応器において、塩化カルボニル(COCl)及び塩化メチレン(CHCl)等の有機溶媒の存在下で、BPAのホスゲン化反応が行われる。
続いて、BPAのホスゲン化反応が行われた混合液に、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒と、p−t−ブチルフェノール(pTBP)等の連鎖停止剤が添加され、BPAのオリゴマー化反応が行われる
次に、BPAのオリゴマー化反応液は、さらにオリゴマー化反応が進められた後、所定の静置分離槽に導入され、カーボネートオリゴマーを含有する有機相と水相とが分離され(ステップ103)、分離された有機相は、重縮合工程に供給される。
ここで、BPAのホスゲン化反応が行われる反応器にBPAアルカリ水溶液が供給されてから静置分離槽に入るまでのオリゴマー化工程における滞留時間は、通常、120分、好ましくは、30分〜60分である。
【0045】
(重縮合工程)
次に、重縮合工程(ステップ105)の前に、先ず、静置分離槽で水相と分離されたカーボネートオリゴマーを含有する有機相は、撹拌機を有するオリゴマー貯槽に移送される(ステップ104)。オリゴマー貯槽には、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒がさらに添加される。
続いて、オリゴマー貯槽内で撹拌された有機相は所定の重縮合反応槽に導入され、続いて、重縮合反応槽に、脱塩水(DMW)、塩化メチレン(CHCl)等の有機溶媒及び水酸化ナトリウム水溶液が供給され、撹拌混合されてカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる(ステップ105)。
【0046】
重縮合反応槽中の重縮合反応液は、その後、複数の重縮合反応槽に連続的に順次導入され、カーボネートオリゴマーの重縮合反応が完結される。
ここで、重縮合工程において、連続的にカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる重縮合反応槽における滞留時間は、通常、12時間以下、好ましくは、0.5時間〜5時間である。
【0047】
(洗浄工程)
次に、洗浄工程(ステップ106)では、複数の重縮合反応槽における重縮合反応が完結した後、重縮合反応液は、公知の方法により、アルカリ洗浄装置によるアルカリ洗浄、酸洗浄装置による酸洗浄及び水洗浄装置による水洗浄が行われる。
尚、洗浄工程の全滞留時間は、通常、12時間以下、好ましくは、0.5時間〜6時間である。
【0048】
(樹脂単離工程)
樹脂単離工程(ステップ107)では、先ず、洗浄工程において洗浄されたポリカーボネート樹脂を含む有機溶媒溶液は、所定の固形分濃度に濃縮された濃縮液として調製される。濃縮液におけるポリカーボネート樹脂の固形分濃度は、通常、5重量%〜35重量%、好ましくは、10重量%〜30重量%である。
次に、濃縮液は、所定の造粒槽に連続的に供給され、所定の温度の脱塩水(DMW)と撹拌混合される。そして、水中で懸濁状態を保ちながら有機溶媒を所定の温度(固形化温度)で蒸発させる造粒処理が行われ、ポリカーボネート樹脂粒状体を含む水スラリーが形成される。
ここで、脱塩水(DMW)の温度は、通常、37℃〜67℃、好ましくは、40℃〜50℃である。また、造粒槽内で行われる造粒処理によりポリカーボネート樹脂の固形化温度は、通常、37℃〜67℃、好ましくは、40℃〜50℃である。
造粒槽から連続的に排出されるポリカーボネート樹脂粉状体を含む水スラリーは、その後、所定の分離器に連続的に導入され、水スラリーから水が分離される。
【0049】
(乾燥工程)
乾燥工程(ステップ108)では、分離器において、水スラリーから水が分離されたポリカーボネート樹脂粉状体が、所定の乾燥機に連続的に供給され、所定の滞留時間で滞留させた後、連続的に抜き出される。乾燥機としては、例えば流動床型乾燥機が挙げられる。尚、複数の流動床型乾燥機を直列につなぎ、連続的に乾燥処理を行ってもよい。
ここで、乾燥機は、通常、熱媒ジャケット等の加熱手段を有し、例えば、水蒸気にて、通常、0.1MPa−G〜1.0MPa−G、好ましくは、0.2MPa−G〜0.6MPa−Gに保持されている。これにより、乾燥機の中を流通する窒素(N)の温度は、通常、100℃〜200℃、好ましくは、120℃〜180℃に保持されている。
【0050】
(品種変更後のポリカーボネート樹脂の製造方法)
次に、前述した工程に基づくポリカーボネート樹脂の製造運転後、同一の製造装置を使用し、分子量Maのポリカーボネート樹脂Aから分子量Maとは異なる分子量Mbのポリカーボネート樹脂Bへと品種を変更する際、以下の操作がなされる。
ここで、本実施の形態において、ポリカーボネート樹脂Aの分子量Maとポリカーボネート樹脂Bの分子量Mbとの差(|分子量Ma−分子量Mb|)は、通常、粘度平均分子量に換算して3,000〜10,000であり、好ましくは、5,000〜10,000である。
先ず、分子量Maとは異なる分子量Mbのポリカーボネート樹脂Bを製造するために、製造条件が変更される。本実施の形態では、製造条件としてポリカーボネート樹脂の重縮合条件が変更される。具体的には、例えば、オリゴマー化工程において、カーボネートオリゴマーの合成反応に使用するp−t−ブチルフェノール等の連鎖停止剤の添加量が変更されたり、オリゴマー化工程の生産レートが変更されたりする。
【0051】
(カーボネートオリゴマーの貯槽)
次に、連鎖停止剤の添加量等の重縮合条件が変更された後、前述したオリゴマー化工程の静置分離槽において水相と分離したカーボネートオリゴマーを含む有機相の重縮合工程への供給が遮断される。続いて、カーボネートオリゴマーを含む有機相は、重縮合反応槽とは別の系列として設置した所定の貯槽に送液される(ステップ110)。
【0052】
カーボネートオリゴマーを含む有機相の重縮合工程への供給が遮断される時間は、カーボネートオリゴマーが合成されるオリゴマー化工程の滞留時間と同一の時間であり、通常、120分以下、好ましくは、30分〜60分である。
ここで、オリゴマー化工程の滞留時間は、前述したように、原調工程において調製された原料(BPAアルカリ水溶液)が、BPAのホスゲン化反応が行われる反応器に供給され、オリゴマー化反応を経て、静置分離槽に入るまでの時間である。
また、カーボネートオリゴマーを含む有機相の重縮合工程への供給が遮断され、再び供給が開始される間は、重縮合工程における重縮合反応槽中の反応液は、そのままの状態で待機し、次工程への送液を中断している。
【0053】
オリゴマー化工程における滞留時間に相当する時間が経過後、前述した重縮合反応槽とは別の系列として設置した所定の貯槽への、カーボネートオリゴマーを含む有機相の送液が停止される。そして、カーボネートオリゴマーを含む有機相は、再び、重縮合反応槽へと供給され、重縮合反応が行われる。
重縮合反応槽における重縮合反応が完結した後、重縮合反応液は、前述した製造工程と同様に、アルカリ洗浄、酸洗浄及び水洗浄が行われ、樹脂単離工程、乾燥工程を経て、分子量Mbのポリカーボネート樹脂Bが粒状体で得られる。
【0054】
ここで、樹脂単離工程におけるポリカーボネート樹脂の固形化温度、乾燥工程における乾燥温度等は、分子量Mbのポリカーボネート樹脂Bに適した条件に適宜変更される。
このとき、樹脂単離工程において、ポリカーボネート樹脂を含む有機溶媒溶液からポリカーボネート樹脂を単離するための固形化温度は、新たな品種のポリカーボネート樹脂に対応し、毎時0.5℃〜1℃ずつ変更することが好ましい。固形化温度を新たな品種のポリカーボネート樹脂に対応して急激に変化させると、ポリカーボネート樹脂粒状体の嵩密度が低下し微粉が多くなる傾向がある。
【0055】
本実施の形態において、分子量Maとは異なる分子量Mbを有するポリカーボネート樹脂Bを乾燥する際に、乾燥工程において以下の(1)もしくは(2)の条件でポリカーボネート樹脂Bを乾燥することが好ましい。
(1)分子量Mbが分子量Maより大きい場合(分子量Ma<分子量Mb)、製造条件を変更後(本実施の形態では、連鎖停止剤の添加量等の重縮合条件が変更された後)から24時間以内に、乾燥機の熱媒蒸気圧力をポリカーボネート樹脂Aを乾燥する場合の条件より0.05〜0.2MPa−Gの範囲で少なくとも1回変更する。その後、必要に応じて、乾燥機の熱媒蒸気圧力を変更し、さらに乾燥を続けてもよい。
(2)分子量Mbが分子量Maより小さい場合(分子量Ma>分子量Mb)、製造条件を変更後(本実施の形態では、連鎖停止剤の添加量等の重縮合条件が変更された後)から12時間以内に、乾燥機の熱媒蒸気圧力をポリカーボネート樹脂Aを乾燥する場合の条件より0.05〜0.1MPa−Gの範囲で変更し、さらに、熱媒蒸気圧力を変更後12時間以内に熱媒蒸気圧力を最大0.1MPa−Gの範囲で変更する。
このような範囲で乾燥条件を少しずつ変更することにより、品種が異なるポリカーボネート樹脂を製造する際の移行品の量を最小限に抑えることができる。
乾燥条件を新たな品種のポリカーボネート樹脂に対応して急激に変化させると、乾燥機内で、ポリカーボネート樹脂粉状体同士の付着が生じ、乾燥が不十分な粉状体や、品質が悪化した粉状体の排出が増大する傾向がある。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、以下の方法により求めた。
【0057】
(粘度平均分子量(Mv))
ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し、濃度(C)6.00g/Lの溶液を調製した。次に、ウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で、溶媒(塩化メチレン)の流下時間(t)と、試料溶液の流下時間(t)を測定し、極限粘度[η]を求めた。
【0058】
続いて、これらの測定値に基づき、以下の式(i)〜(vi)に従って、粘度平均分子量(Mv)を算出した。
(i)ηsp=(t/t)−1
(ii)C=6.00(g/L)
(iii)a=0.28×ηsp+1
(iv)b=10×(ηsp/C)
(v)[η]=b/a
(vi)Mv=51,400×[η]exp1.205
【0059】
(実施例1)
所定のポリカーボネート樹脂製造装置を用い、以下の工程に従い、界面法によりポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した。
(原調工程)
初めに、原調タンクに、ビスフェノールA(以下、「BPA」と記す。)100重量部、25重量%水酸化ナトリウム水溶液145重量部、脱塩水496重量部及びハイドロサルファイト0.11重量部を含むBPAアルカリ水溶液を調製した。
【0060】
(オリゴマー化工程)
次に、所定の反応器aにおいて、原調工程で調製したBPAアルカリ水溶液17,176kg/hrと、塩化メチレン7,684kg/hr及び塩化カルボニル1,075kg/hrの混合液を調製した。
続いて、調製した混合液に、16.7重量%トリエチルアミン水溶液4.8l/hr並びに24重量%p−t−ブチルフェノール塩化メチレン溶液249.3kg/hrを添加し撹拌混合した後、静置分離槽に導入し、水相とカーボネートオリゴマーを含有する有機相とに分離した。尚、反応器aの入口から静置分離槽に入るまでのオリゴマー化工程における滞留時間は30分である。
【0061】
(重縮合工程)
静置分離槽において水相と分離されたカーボネートオリゴマーを含有する有機相を他の撹拌槽に移送し、さらに16.7重量%トリエチルアミン水溶液を添加した。続いて、このトリエチルアミンが添加されたカーボネートオリゴマーを含有する有機相11,040kg/hrと、脱塩水3,096kg/hr、塩化メチレン6,150kg/hr及び25重量%水酸化ナトリウム水溶液550kg/hrとを重縮合反応槽に導入し、続いて、複数の重縮合反応槽に順次導入して重縮合反応を完結させた。なお、重縮合工程における滞留時間は2時間である。
【0062】
(洗浄工程)
重縮合反応により得られたポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を含む混合液を、従来より公知の方法により、アルカリ洗浄、酸洗浄及び水洗浄を行った。尚、洗浄工程の全滞留時間は3時間である。
【0063】
(樹脂単離工程)
洗浄されたポリカーボネート樹脂を含む塩化メチレン溶液を、所定の濃縮器を用い、塩化メチレン溶液中のポリカーボネート樹脂の固形分濃度が20重量%となるように濃縮した。次に、得られた濃縮液13,752kg/hrを、造粒槽に連続的に供給するとともに、補給水として予め45℃に加温した脱塩水を造粒槽に導入した。そして、造粒槽において濃縮液と脱塩水とを撹拌混合することにより、水中で懸濁状態を保ちながら内温47℃にて塩化メチレンを蒸発させ、ポリカーボネート樹脂粒状体を形成した。続いて、造粒槽から連続的に排出されるポリカーボネート樹脂粉状体を含む水スラリーを分離器に導入し、水スラリーから水を分離した。
【0064】
(乾燥工程)
水が分離されたポリカーボネート樹脂粉状体を、直列に接続した2基の乾燥機(第1乾燥機、第2乾燥機)を使用して乾燥した。先ず、ポリカーボネート樹脂粉状体を第1乾燥機に連続的に供給し、平均滞留時間7時間かけて乾燥させた後、連続的に抜き出し、さらに、第2乾燥機に連続的に供給し、平均滞留時間4時間かけて乾燥させ、乾燥したポリカーボネート樹脂粉状体を連続的に排出した。ここで、2基の乾燥機(第1乾燥機,第2乾燥機)は、両機共に熱媒として導入した水蒸気を0.52MPa−Gに保持することにより、両機内に流通する窒素(N)温度を158℃とした。
得られた粉状体のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は21,000であった。
【0065】
(ポリカーボネート樹脂の分子量の変更)
ポリカーボネート樹脂製造装置における前述した工程に基づくポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した後、同一の製造装置を使用し、連続的に粘度平均分子量(Mv)を増大させたポリカーボネート樹脂を製造するために、以下の操作を行った。
先ず、製造条件の変更操作として、オリゴマー化工程の生産レートを、上記粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の生産に対し、80%に減少させ、同時に、p−t−ブチルフェノール(連鎖停止剤)の供給量を122.2kg/hr(前述の供給量249.3kg/hr)に減少させる変更を行った。
次に、p−t−ブチルフェノールの供給量を減少させる変更を行った後、静置分離槽において水相と分離したカーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液を、ポリカーボネート樹脂の製造系列とは別に設置した貯槽bへ、前述したオリゴマー化工程の滞留時間と同一の時間である30分間で連続的に送液した。
【0066】
30分間経過後、静置分離槽からカーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液の貯槽bへの送液を停止した。次いで、再び、複数の重縮合反応槽を備える重縮合工程へ、カーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液の送液を開始し、上記粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造と同様な操作により、カーボネートオリゴマーの重縮合反応、洗浄、樹脂単離を順次行った。
尚、オリゴマー化工程においてカーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液を貯槽bへ送液した30分間は、重縮合工程における重縮合反応槽の撹拌器を回転したままの状態で待機していた。
【0067】
次いで、樹脂単離工程において単離されたポリカーボネート樹脂粉状体を乾燥する乾燥工程において、オリゴマー化工程の連鎖停止剤の供給量を変更したときから7時間後に、第1乾燥機の窒素温度が153℃(前述の温度158℃)となるように、蒸気圧力を0.44MPa−G(前述の圧力0.52MPa−G)と変更した。同様に、第2乾燥機の窒素温度が153℃(前述の温度158℃)となるように、蒸気圧力を0.43MPa−G(前述の圧力0.52MPa−G)に変更し、ポリカーボネート樹脂粉状体を乾燥した。
このようにして得られた粉状体のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は30,000であった。得られたポリカーボネート樹脂粒状体は、嵩密度が大きく、さらに、粒子の付着凝集及びブロック状固形物の発生が無く、経時安定性に優れていることを確認した。
【0068】
(実施例2)
実施例1と同様の操作により、所定のポリカーボネート樹脂製造装置を用い、粘度平均分子量(Mv)21,000、且つ粉状体のポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した。
1週間の製造運転後、同一の製造装置を使用し連続的に粘度平均分子量(Mv)を減少させたポリカーボネート樹脂を製造するため、オリゴマー化工程の生産レートを、上記粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の生産に対し、90%に減少させ、同時に、p−t−ブチルフェノールの供給量を325.9kg/hr(前述の供給量249.3kg/hr)に増大させる変更を行った。
【0069】
次に、p−t−ブチルフェノールの供給量を増大させる変更を行った後、静置分離槽において水相と分離したカーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液を、ポリカーボネート樹脂の製造系列とは別に設置した貯槽bへ、前述したオリゴマー化工程の滞留時間と同一の時間である30分間で連続的に送液した。
【0070】
30分間経過後、静置分離槽からカーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液の貯槽bへの送液を停止した。次いで、再び、重縮合反応槽を備える重縮合工程へ、カーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液の送液を開始し、上記粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造と同様な操作を行い、カーボネートオリゴマーの重縮合反応、洗浄、樹脂単離を順次行った。
尚、オリゴマー化工程においてカーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液を貯槽bへ送液した30分間は、重縮合工程における重縮合反応槽の撹拌器を回転したままの状態で待機していた。
【0071】
次いで、オリゴマー化工程の連鎖停止剤の供給量を変更したときから8時間後に、樹脂単離工程におけるジャケット付造粒槽21の温度を47℃から毎時0.5℃〜1℃ずつ昇温し、5時間かけて51.6℃とした。
同様に、オリゴマー化工程における連鎖停止剤の供給量を変更したときから2時間経過後に、乾燥工程に於いて、第1乾燥機の蒸気圧力を0.42MPa−G(前述の圧力0.52MPa−G)と変更した。また、第2乾燥機の蒸気圧力は、オリゴマー化工程における連鎖停止剤の供給量を変更後3時間後に、0.42MPa−G(前述の圧力0.52MPa−G)と変更した。
【0072】
続いて、乾燥工程に於いて、第1乾燥機の蒸気圧力を0.42MPa−Gに変更したときから6時間経過後に、さらに、0.36MPa−Gに変更し、第1乾燥機内の窒素温度を142℃とした。また、第2乾燥機の蒸気圧力は、第2乾燥機の蒸気圧力を0.42MPa−Gに変更したときから12時間経過後に、さらに、0.36MPa−Gに変更し、第2乾燥機内の窒素温度を142℃とした。
尚、オリゴマー化工程における生産レートは、連鎖停止剤の供給量を変更したときから13時間経過後に、変更前の100%生産レートに戻している。
【0073】
このようにして得られた粉状体のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は15,000であった。得られたポリカーボネート樹脂粉状体は、嵩密度が大きく、さらに粒子の付着凝集及びブロック状固形物の発生が無く、経時安定性に優れていることを確認した。
また、粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造から、粘度平均分子量(Mv)15,000のポリカーボネート樹脂の製造に移行させる際の移行品の量を最小限に抑えることができた。
【0074】
(比較例1)
実施例1と同様な条件で粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した。
その後、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更し、粘度平均分子量(Mv)30,000のポリカーボネート樹脂を製造した。その際に、カーボネートオリゴマーを含む塩化メチレン溶液を、ポリカーボネート樹脂の製造系列とは別に設置した貯槽bへ移送しなかったこと以外は、実施例1と同様に粘度平均分子量(Mv)30,000のポリカーボネート樹脂を製造した。
その結果、粘度平均分子量(Mv)30,000のポリカーボネート樹脂の製造運転において、重縮合工程で得られるポリカーボネートの分子量の変動幅が増大し、実施例1の場合と比較して、移行品が1.5倍増大した。
【0075】
(比較例2)
実施例1と同様な条件で粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した。
その後、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更し、粘度平均分子量(Mv)30,000のポリカーボネート樹脂を製造する際に、乾燥工程において、第1乾燥機の加熱窒素の温度及び圧力と、第2乾燥機の加熱窒素の温度及び圧力とを、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更した後直ちに(オリゴマー化工程の条件変更と同時に)変更した以外は、実施例1と同様に粘度平均分子量(Mv)30,000のポリカーボネート樹脂を製造した。
その結果、粘度平均分子量(Mv)30,000のポリカーボネート樹脂の製造運転において、第1乾燥機内及び第2乾燥機内で、ポリカーボネート樹脂粉状体同士の付着が生じた。その結果、乾燥が不十分な粉状体や、品質が悪化した粉状体の排出が半日間続き、移行品が増大した。
【0076】
(比較例3)
実施例1と同様な条件で粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した。
その後、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更し、粘度平均分子量(Mv)15,000のポリカーボネート樹脂を製造した。その際に、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更したときから8時間後に、樹脂単離工程における造粒槽の温度を、47℃から一気に51.6℃へと昇温し、これ以外は、実施例2と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂粉状体を製造した。
その結果、粘度平均分子量(Mv)15,000のポリカーボネート樹脂の製造運転で得られたポリカーボネート樹脂は、嵩密度が低く微粉が多く観察された。また、このような微粉が多いポリカーボネート樹脂粉状体は、通常品と明らかに異なり、乾燥工程より半日間排出され続けた。
【0077】
(比較例4)
実施例1と同様な条件で粘度平均分子量(Mv)21,000のポリカーボネート樹脂の製造運転を1週間実施した。
その後、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更し、粘度平均分子量(Mv)15,000のポリカーボネート樹脂を製造した。その際に、オリゴマー化工程の生産レート及び連鎖停止剤の供給量を変更した後直ちに(オリゴマー化工程の条件変更と同時に)、乾燥工程に於いて、第1乾燥機及び第2乾燥機の蒸気圧力を0.36MPa−Gに変更し、第1乾燥機及び第2乾燥機内の窒素温度を142℃とした以外は、実施例2と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂粉状体を製造した。
その結果、粘度平均分子量(Mv)15,000のポリカーボネート樹脂の製造運転で得られたポリカーボネート樹脂は、第1乾燥機及び第2乾燥機内でポリカーボネート樹脂粉状体同士の付着が生じた。その結果、乾燥が不十分な粉状体や、品質が悪化した粉状体の排出が続いた。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法におけるブロックフローの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量Maを有するポリカーボネート樹脂Aを製造後、製造条件を変更し、同一の製造設備を使用して分子量Maとは異なる分子量Mbを有するポリカーボネート樹脂Bを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
該製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物及び塩化カルボニル、又は芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ土類金属化合物及び塩化カルボニルを用いてカーボネートオリゴマーを合成するオリゴマー化工程と、
前記オリゴマー化工程において合成されたカーボネートオリゴマーの重縮合反応を行う重縮合工程と、を少なくとも有し、
前記ポリカーボネート樹脂Aの製造から前記ポリカーボネート樹脂Bの製造を行うために、製造条件を変更後、ポリカーボネート樹脂Bのオリゴマー化工程の滞留時間に少なくとも相当する時間が経過するまで、当該オリゴマー化工程において合成されたカーボネートオリゴマーを重縮合工程に移送しないことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
製造条件を変更後、ポリカーボネート樹脂Bのオリゴマー化工程における滞留時間に相当する時間が経過するまで、重縮合工程における重縮合反応液の次工程への送液を停止することを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂の製造方法において、重縮合工程で得られた重縮合反応液から有機溶剤を除去しポリカーボネート樹脂を固形化するための樹脂単離工程を更に有し、ポリカーボネート樹脂Bを固形化するときの温度を、ポリカーボネート樹脂Aを固形化する場合の温度条件より0.5℃/時〜1℃/時ずつ変更することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂の製造方法において、重縮合工程で得られた重縮合反応液から単離されたポリカーボネート樹脂を所定の乾燥機を使用して乾燥する乾燥工程を有し、当該乾燥工程において以下の(1)もしくは(2)の条件でポリカーボネート樹脂を乾燥することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
(1)分子量Mbが分子量Maより大きい場合(分子量Ma<分子量Mb)、製造条件を変更後から24時間以内に、乾燥機の熱媒蒸気圧力をポリカーボネート樹脂Aを乾燥する場合の条件より0.05〜0.2MPa−Gの範囲で少なくとも1回変更する。
(2)分子量Mbが分子量Maより小さい場合(分子量Ma>分子量Mb)、製造条件を変更後から12時間以内に、乾燥機の熱媒蒸気圧力をポリカーボネート樹脂Aを乾燥する場合の条件より0.05〜0.1MPa−Gの範囲で変更し、さらに、熱媒蒸気圧力を変更後12時間以内に熱媒蒸気圧力を最大0.1MPa−Gの範囲で変更する。
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂Aの分子量Maとポリカーボネート樹脂Bの分子量Mbとの差(|分子量Ma−分子量Mb|)が、粘度平均分子量に換算して3,000〜10,000であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−249546(P2009−249546A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100711(P2008−100711)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】