説明

ポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】 炭酸ジエステル及び/又はジヒドロキシ化合物の定量供給を安定して行うことができ、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組成比に変動がない原料調製が可能となり、粘度平均分子量に変化が無く、末端水酸基濃度の振れが少なく、色相が良好で安定しており、耐熱性に優れて変動がないポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 原料調製槽に炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を供給し、混合物とする原料調製工程と、
前記混合物をポリカーボネートとする重縮合工程と、を含むポリカーボネートの製造方法において、
前記炭酸ジエステル及び/又は前記ジヒドロキシ化合物は、放圧管を具備したホッパーから、前記原料調製槽へ供給され、
前記ホッパーと前記原料調製槽は均圧管で結ばれており、
且つ前記ホッパー内の保有量を、前記ホッパーの有効容積の30%〜90%に維持するるポリカーボネート樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した品質のポリカーボネートを製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性等にも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、OA部品、自動車部品、建築材料等に幅広く用いられており、特に耐衝撃性や透明性等の特性を生かして、光学レンズやディスク、光ファイバー等の光学用材料や、シート等の用途に幅広く使用されており、このような用途においては、前記耐衝撃性や前記透明性に加えて、色相や熱安定性、耐加水分解性に優れたポリカーボネート樹脂の出現が特に望まれている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、ビスフェノール等のジヒドロキシ化合物と塩化カルボニルとを界面重縮合反応によりポリカーボネート樹脂を得る、いわゆる界面法が工業化されている。しかし、界面法は人体に有害な塩化カルボニルを用いなければならないこと、環境に対する負荷の高いジクロロメタン等の溶剤を必要とすること、また多量に副生する塩化ナトリウムの除去が必要なこと等の問題点が指摘されている。
【0004】
一方、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物を溶融状態でエステル交換反応し、副生するフェノール等の低分子量物を系外に取り除きながらポリカーボネート樹脂を得る、エステル交換法も実用化されている。該エステル交換法は、前述した界面法における問題点はなくポリカーボネート樹脂が製造できるという利点がある。しかし、エステル交換法ではエステル交換反応中に、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの組成比が変動すると、粘度平均分子量が変化したり、末端水酸基濃度が一定とならなかったりする。この粘度平均分子量の変化や末端水酸基濃度の変動により理由は明らかではないが、生成したポリカーボネート樹脂の色相や耐熱性、耐加水分解性も一定せず、悪化する可能性がある。
【0005】
特許文献1等には、エステル交換法において炭酸ジエステルの流量計の変動幅を一定以内に維持管理し、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物の組成比の変動を抑える方法が開示されている。
特許文献2等には、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との組成比を、原料調製槽において継続的に測定し、測定される値を予め設定された組成比と一致させるように、芳香族ジヒドロキシ化合物又は炭酸ジエステルの原料調製槽への供給量を連続的に自動制御する方法が開示されている。
【0006】
特許文献3等には原料調製槽内の圧力を負圧に維持することにより、定量検出部の精度を上げ、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組成比の変動幅を±0.5%以内の値に維持する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−128973号公報
【特許文献2】特開2000−178354号公報
【特許文献3】特開2002−256070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリカーボネート樹脂の製造において、前記の通り、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化
合物との組成比の制御が重要である。
しかし、従来の方法では炭酸ジエステル及び/又はジヒドロキシ化合物が定量供給されているかを、検知する手法は開示されているが、定量供給する方法については記載がなく、充分ではなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂の製造方法において、とりわけ原料調製工程において、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組成比の変動幅を長期間にわたり低減することにより、安定したエステル交換反応を実現し、粘度平均分子量及び末端水酸基濃度に変動がなく、色相が良好で安定しており耐熱性が優れて変動がないポリカーボネート樹脂の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的に鑑み鋭意検討した結果、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組成比の変動の原因は、炭酸ジエステル及び/又はジヒドロキシ化合物を定量供給装置にて原料混合槽に供給する際に、定量供給装置前後の圧力差や定量供給装置内での圧力上昇等により、供給誤差や計量誤差を生じることを見出した。特に、ホッパー内に供給された炭酸ジエステル及び/又はジヒドロキシ化合物の保有量を特定範囲に維持することにより、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組成比の変動を抑え、安定したポリカーボネート樹脂を製造することが出来ることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、原料調製槽に炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を供給し、混合物とする原料調製工程と、
前記混合物をエステル交換反応によりポリカーボネートとする重縮合工程と、を含むポリカーボネートの製造方法において、
前記炭酸ジエステル及び/又は前記ジヒドロキシ化合物は、放圧管を具備したホッパーから、定量供給装置を介して、前記原料調製槽へ供給配管により定量供給され、
前記ホッパーと前記原料調製槽は均圧管で結ばれており、
前記放圧管の内径が、前記供給配管の内径に対して1/6〜1/2であり、
前記均圧管の内径が、前記供給配管の内径に対して1/5〜1/2であり、
且つ前記ホッパー内の前記炭酸ジエステル及び/又は前記ジヒドロキシ化合物の保有量を、前記ホッパーの有効容積の30%〜90%の範囲に維持することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法において、前記均圧管の一部がフレキシブルな配管であることが好ましい。
ここで、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法において、前記定量供給装置が2以上であることが好ましい。
更に、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法において、前記ホッパーの頂角θが70度以下であることが好ましい。
【0013】
更に加えて、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法において、前記定量供給装置が重量式であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炭酸ジエステル及び/又はジヒドロキシ化合物の定量供給を長期的に安定して行うことができ、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組成比に変動がない原料調製が可能となり、安定した重縮合工程によりポリカーボネート樹脂の製造が可能となる。
又、本発明の製造法により得られたポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量に変化が無く、末端水酸基濃度の振れが少なく、色相が良好で安定しており、耐熱性に優れて変動
がなく、OA部品、自動車部品、建築材料等に幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ホッパー及び定量供給装置周りを示した図。
【図2】ホッパーを示した図。
【図3】本発明に用いられる製造設備の形態の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本発明は以下に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明のポリカーボネート樹脂は、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とをエステル交換反応することにより得られたポリカーボネート樹脂である。
【0017】
(炭酸ジエステル化合物)
本発明で用いられる炭酸ジエステルとは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R及びR’は、炭素数1〜18の、炭化水素基であり、RとR’とは、同一でも異なってもよい。)
式(1)で表される炭酸ジエステルの具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート又はジフェニルカーボネート若しくはジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート等が挙げられ、好ましくはジアリールカーボネートであり、さらに好ましくはジフェニルカーボネートである。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
上記のような炭酸ジエステルと共に、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量でジカルボン酸化合物、あるいはジカルボン酸エステル化合物を使用してもよい。このようなジカルボン酸化合物あるいはジカルボン酸エステル化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が用いられる。このようなカルボン酸化合物、あるいはカルボン酸エステル化合物を炭酸ジエステルと併用した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0021】
(ジヒドロキシ化合物)
本発明で用いられるジヒドロキシ化合物とは、芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物に大別される。これらジヒドロキシ化合物は前記芳香族ジヒドロキシ化合物及び前記脂肪族ジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる1種以上を単独で、又は混合して用いてもよい。
【0022】
(芳香族ジヒドロキシ化合物)
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、下記一般式(2)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、Yは単結合または、炭素数1〜15の炭化水素基、−S−、−SO−、−SO−、−C(=O)−、−O−、−OP(=O)O−、−OP(OR)O−及び−NR10−からなる群から選ばれた二価の基である。R〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜15の炭化水素基である。)
上記一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’, 5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオール、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、4,4’−(オクタヒドロ−4,7−メタノ−5H−インデン−5−イリデン)ビスフェノール等が例示される。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と称する)が好ましい。
【0025】
(脂肪族ジヒドロキシ化合物)
脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例は、下記一般式(3)で示されるジヒドロキシ化合物が好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
上記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらのジヒドロキシ化合物のう
ち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0028】
前述した一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位以外に、その性質、物性を損なわない範囲で別の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含んでもよい。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環、6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
【0029】
脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常7以下であり、好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。炭素原子数が過度に大きいと、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価になる傾向がある。炭素原子数が小さいほど、精製しやすく、入手しやすい傾向がある。
このような脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例は、例えば、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール、1,3−アダマンタンジオール等が挙げられる。特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0030】
一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と、上述した脂環式ジヒドロキシ化合物以外の他の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が含まれていても良い。
このようなその他の脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール等が挙げられる。
【0031】
(原料調製工程)
炭酸ジエステル化合物とジヒドロキシ化合物との組成比は、所望するポリカーボネート樹脂の分子量や末端水酸基量等により設定される。ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステル化合物の比率は、通常0.90モル〜1.30モル、好ましくは0.96モル〜1.20モル、さらに好ましくは1.00モル〜1.15モルの範囲で選択される。炭酸ジエステルの比率が過度に小さい場合には、得られるポリカーボネート樹脂の末端水酸基量が多くなる場合があり、ポリカーボネート樹脂の熱安定性や加水分解安定性、色相に大きな影響を及ぼす可能性がある。炭酸ジエステルの比率が過度に大きい場合には、エ
ステル交換反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂が得られない場合があり、ポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量が多くなり、臭気の原因となる可能性がある。
【0032】
次に図1乃至図3を用いて本発明の詳細について説明する。なお、前記図1乃至図3ではジヒドロキシ化合物はビスフェノールA(以下BPAと称することがある)、炭酸ジエステルはジフェニルカーボネート(以下DPCと称することがある)とし、BPAをBPAホッパーから定量供給装置を介して供給配管により原料調製槽へ定量供給した図である。
【0033】
BPAは、例えばBPAサイロに貯蔵され、配管によりBPAホッパーへ受け入れる。本発明において、BPAホッパー内のBPA保有量は、BPAホッパーの有効容積の30%〜90%、好ましくは30%〜80%、更に好ましくは、30%〜70%に維持される。該保有量が過度に小さい場合にはBPAの原料調製槽への定量供給に変動が生じる場合があり、原料調製槽において、DPCとBPAとの組成比に変動が生じる可能性がある。一方で、該保有量が過度に大きい場合には、BPAの原料調製槽への供給不良が生じる可能性があり、原料調製槽において、DPCとBPAとの組成比に変動が生じる場合がある。なお、本発明におけるホッパーの有効容積とは、例えばBPAサイロから前記BPAを配管を介してホッパーに受け入れる際に、ホッパー内に設置された受入口内径の上端から、前記BPAをホッパーから定量供給装置へ排出するホッパー内に設置された排出口内径下端までの容積である。
【0034】
加えて、本発明においては、BPAホッパーは放圧管を具備しており、放圧管の内径は、供給配管の内径に対して、1/6〜1/2、好ましくは1/6〜1/3、更に好ましくは1/6〜1/4である。BPAホッパーに放圧管が具備されていない場合や放圧管の内径が過度に小さい場合には、BPAホッパー内の圧力と、供給配管や原料調製槽の圧力とに差が生じる可能性があり、BPAの原料調製槽への定量供給に変動が生じる場合がある。又、BPAサイロからBPAホッパーへBPAの受入があった場合、BPAホッパーが加圧となり、BPAホッパーが破損する可能性がある。前記放圧管の内径が過度に大きい場合には、プラントレイアウト上、及び経済的に好ましくない。前記BPAホッパー内の放圧管の接続位置は、通常、BPAホッパー内に設置された前記受入口よりも高い位置であり、BPAホッパーの頭頂部近辺が好ましい。
【0035】
更に、本発明においては、前記ホッパーと前記原料調製槽は均圧管で結ばれており、前記均圧管の内径は、供給配管の内径に対して1/5〜1/2、好ましくは1/5〜1/3、更に好ましくは1/5〜1/4である。前記均圧管がない場合や前記均圧管の内径が過度に小さい場合は、前記BPAホッパーの圧力と原料調製槽の圧力とに差が生じる可能性があり、BPAの原料調製槽への定量供給に変動が生じる場合がある。前記均圧管の内径が過度に大きい場合には、プラントレイアウト上、及び経済的に好ましくない。前記均圧管の接続位置はBPAホッパーにあっては通常、BPAホッパー内に設置された前記受入口よりも高い位置が好ましく、次いで前記均圧管の他端の接続位置である原料調製槽にあっては原料調製槽の頂部もしくは供給配管が好ましい。
【0036】
更に、本発明においては均圧管の少なくとも一部がフレキシブルな配管であることが好ましい。前記均圧管が固定配管の場合、定量供給装置等に振動が発生した場合、供給配管等の変形や破損する可能性がある。
定量供給装置2より排出された、BPAは原料調製槽において、別途供給されるDPCとともに、所定のDPCとBPAとの組成比にて混合物が形成される。
【0037】
前記、定量供給装置から原料調製槽へとBPAを供給する供給配管の内径は、通常2
7.6mm〜492.2mm、好ましくは、52.9mm〜492.2mm、特に好ましくは105.3〜390.6mmである。前記供給配管の内径が過度に小さい場合には、BPAが該供給配管内に閉塞し易くなり、定量的に供給できなくなる可能性がある。一方、該供給配管の内径が過度に大きい場合には、該供給配管内にBPAが残留する可能性がある。
【0038】
また、本発明において定量供給装置は2以上であることが好ましい。定量供給装置が一つであると、生産速度が増加した場合に対応できない可能性がある。
また、本発明において前記BPAホッパーの円錐角θは通常70度以下であり、好ましくは50度以下、さらに好ましくは30度以下である。前記円錐角θが過度に大きい場合、BPAホッパー内でBPAが流動しにくくなり、滞留し、スケーリングを起こすため好ましくない。なお、本発明において円錐角θとは、ホッパーの傾斜面が為す角であり、図2に示すとおりBPAホッパーの傾斜面が鉛直方法に対して為す角をそれぞれθ、θとすると、円錐角θはθとθの和である。
【0039】
前記BPAホッパーにおける最狭部の直径Dは、通常100mm〜2,000mm、好ましくは100mm〜1,000mm、更に好ましくは200mm〜800mmである。Dが過度に小さいと閉塞しやすくなり、BPAの供給不良を起こし、定量供給性を損なう可能性があるため好ましくない。一方、最狭部の直径が過度に大きいと、BPAホッパー内の粉体の量が減少した際に、BPAホッパーの中心部とBPAホッパーの辺縁部で、粉体の厚みに偏りが生じやすく、結果として定量供給性を損なう可能性があるため好ましくない。
【0040】
BPAサイロから前記BPAホッパーにBPAを供給する配管の鉛直方向に対する角度は、通常35度以下、好ましくは30度以下である。前記角度が大きい場合には、前記配管途中でBPAが滞留し、配管の閉塞を生じたり、BPAホッパーへ所定量受け入れられなかったりする可能性がある。
本発明において前記定量供給装置の形式は特に限定されないが、通常スクリュー式のような容量式やべルト式、ロスインウェイト式等の重量式を用いることができる。この中でも定量精度の点から、重量を計量する重量式であることが好ましく、中でもロスインウェイト式が特に好ましい。
【0041】
本発明における原料調製工程は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、原料調製槽において、炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物の混合物を調製する。尚、前記混合物は溶融混合物とするのが好ましい。溶融混合物とする手法は、炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物をそれぞれ固体の状態で原料調製槽に供給し、混合物とした後に、加熱し、混合物を溶融する方法、炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物のいずれか一方を溶融状態のまま原料調製槽に供給し、残りの一方を原料調製槽に供給し、溶融混合物とする手法がある。一般的に溶融混合物の調製時間が短いことから後者が好ましい。又、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物の融点が低いほうを溶融状態で原料調製槽に供給し、もう一方の融点が高いほうを固体状態で原料調製槽に供給し、溶融混合物とするのが一般的である。
更に、本原料調製工程は連続式であることが好ましい。
【0042】
(エステル交換触媒)
本発明におけるエステル交換反応はエステル交換触媒の存在下または非存在下で行われる。
エステル交換触媒を用いる場合は、通常、エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際に用いられる触媒が選択され、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基
性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
【0043】
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モル、更に好ましくは1×10−7〜1×10−4モルの範囲で用いられる。
【0044】
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。
アルカリ金属化合物の具体例として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。また、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム等の無機セシウム塩、酢酸セシウム、ステアリン酸セシウム等の有機酸セシウム塩、セシウムメチレート、セシウムエチレート等のセシウムアルコラート、セシウムフェノレート、ビスフェノールAのジセシウム塩等のフェノール類のセシウム塩等が挙げられる。
【0045】
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
前記エステル交換触媒は、先の原料調製工程にて添加してもよく、重縮合工程にて添加してもよい。また、その添加形態は、前記エステル交換触媒をそのまま添加しても、水などの溶剤に溶解し、溶液として添加してもよい。
【0046】
(重縮合工程)
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応は次のように行うことが出来る。
エステル交換反応は、通常2段以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で、エステル交換触媒の存在下または非存在下で行われる。各段の具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧ないし減圧、平均滞留時間:5分〜150分である。
【0047】
そして、多段方式の各反応器においては、重縮合反応の進行と共に副生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物等をより効果的に系外に除去するため、上記の反応条件内において、段階的により高温、より高真空に設定し、最終的には2Torr(266.6Pa)以下の減圧とする。これにより、モノヒドロキシ化合物などの副生成物を除去しながら重縮合反応を行うことが出来る。なお、得られるポリカーボネートの色相などの品質低下を防止するため、上記の範囲内で出来るだけ低温かつ短滞留時間の設定が好ましい。
【0048】
重縮合反応は、バッチ式または連続的に行うことが出来るが、得られるポリカーボネート樹脂の安定性などを考慮すると、連続式が好ましい。エステル交換法ポリカーボネート中の触媒の失活剤としては、当該触媒を中和する化合物、例えば、イオウ含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体を使用することが出来る。触媒を中和する化合物の使用量は、当該触媒がアルカリ金属を含有する場合には、アルカリ金属に対し、通常0.5当量〜10当量、好ましくは1当量〜5当量の範囲である。又、ポリカーボネートに対する使用割合は、通常1ppm〜100ppm、好ましくは1ppm〜20ppmの範囲であ
る。
【0049】
本発明が適用される製法により得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、特に制限されないが、通常は10,000以上、好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上、最も好ましくは23,000以上である。これはとりわけ高分子量であるほど、重合条件が厳しくなり、分子量を到達させるために、前記炭酸ジエステルと前記ジヒドロキシ化合物との組成比に変動をなくすることが必要となるためである。なお、上記の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計を用いて、溶媒として塩化メチレンを使用し、温度20℃にて測定することにより得られた極限粘度[η]を用いて、以下の式(1)より求めた値を意味する。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 式(1)
前記重合工程より排出されるポリカーボネート樹脂は、押出機等で残存する原料の脱揮除去や、熱安定剤や離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の公知の添加剤を添加し混錬することも可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られたポリカーボネートの分析は、下記の測定方法により行った。
(1)末端水酸基濃度
四塩化チタン/酢酸法(Makromol. Chem. 88 215(1965))
に従い、次のように実施した。
【0051】
製造されたポリカーボネート樹脂を8時間毎にサンプリングした。サンプリングされたポリカーボネート樹脂0.2gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解し、塩化メチレン溶
液とした。前記塩化メチレン溶液に、酢酸の塩化メチレン溶液(濃度:5容量%)を5mL、四塩化チタン溶液(塩化メチレン90mL、酢酸の塩化メチレン溶液(濃度:5容量
%)10mL、四塩化チタン2.5mL、及びメタノール2mLを混合した溶液)を10mL、更に塩化メチレンを添加し、総容量が25mLの測定溶液を調製した。
前記測定溶液を分光光度計を用いて、波長546nmにて吸光度を測定し、予め標準物質として、ビスフェノールA(BPA)を用いて検量線を作成することにより末端水酸基濃度を求めた。
【0052】
(2)原料組成分析
原料調製槽12aに具備されたサンプリング口より8時間毎に混合物を採取した。採取した混合物を重アセトンに溶解後、日本電子(株)製NMR(AL−400)を用いて、パルス幅6.8μ秒、パルス間隔30秒の条件で1H−NMRを測定し、ビスフェノール
Aのメチル基の水素に基づくシグナル(1.8ppm付近)の面積強度を6としたときの、芳香族基の水素(6.4〜7.8ppm)によるシグナルの面積強度(Xとする)からジフェニルカーボネート(DPC)とビスフェノールA(BPA)のモル比を下記式(2)で求めた。
DPC/BPA=(X−8)/10 式(2)
【0053】
(3)粘度平均分子量
製造されたポリカーボネート樹脂を8時間毎にサンプリングした。サンプリングしたポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し、濃度C=6g/Lの塩化メチレン溶液とした。該塩化メチレン溶液をウベローデ粘度計を用いて、相対粘度(ηrel)を測定し、下記式(3)乃至式(5)より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
ηsp=ηrel−1 式(3)
[η]=(ηsp×10/C)/(ηsp×0.28+1) 式(4)
Mv=51400×[η]1.205 式(5)
【0054】
(4)色相
製造されたポリカーボネート樹脂を8時間毎にサンプリングした。サンプリングしたポリカーボネート樹脂を、射出成型機J100SS−2((株)日本製鋼所製)により、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦100mm、横100mmのプレートを射出成形した。この射出成形プレートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)で、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、黄色度の指標であるYI値を下記式(6)より計算した。このYI値が小さいほど、色相が良好であることを示す。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z) 式(6)
【0055】
(5)滞留熱安定性評価
製造されたポリカーボネート樹脂を8時間毎にサンプリングした。サンプリングしたポリカーボネート樹脂を、射出成型機J100SS−2((株)日本製鋼所製)により、バレル温度350℃、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦100mm、横100mmのプレートを30秒サイクルで20枚射出成形(以下、連続ショットと称することがある)した。更に前記バレル温度、前記金型温度の条件下にて、前記プレートを10分サイクルで7枚射出成形した。これらのプレートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)を用いて、前記カラーテスターにより、YIを算出し、下記式(7)より滞留熱安定性の指標である、ΔYIを算出した。このΔYIの値が小さいほど、滞留熱安定性に優れることを示す。
ΔYI=[10分サイクルで成形した7枚のプレートのYIの最大値]−[連続ショットで成形した30枚のプレートのYIの平均値] 式(7)
【0056】
(実施例1)
図3に示す製造設備により、BPA、DPCを原料としてポリカーボネート樹脂を製造した。まず、BPAサイロ5にBPAを、DPC貯槽10に溶融DPCを貯蔵した。BPAサイロ5に貯蔵したBPAを移送配管を介してBPAホッパー7a及び7bにそれぞれ受け入れた。それぞれのホッパー内のBPA保有量はそれぞれのBPAホッパーの有効容積の30%〜65%の範囲に維持した。なお、定量供給装置8a及び8bは、ロスインウェイト式であり、それぞれ図1に示されるとおり、BPAホッパー1と定量供給装置2の出口とを結ぶ均圧管並びにBPAホッパー1の頂部に設けられた放圧管が具備されており、途中に図1に示されるとおり、フレキシブルな配管4が設置されている。均圧管と放圧管の配管の内径はそれぞれ、定量供給装置8a及び8bと原料調製槽12aとを結ぶ供給配管の内径305mmに対して、均圧管の内径は81mm(約1/4)であり、放圧管の内径は68mm(約1/5)であった。なお、前記BPAホッパーの円錐角θは10度であった。また、前記BPAホッパーの大きさは、最狭部の直径Dが500mmであり、高さHが1380mmである(H=1.38D)。加えて、BPAの受入口はBPAホッパー内にあり、上部から50mmの位置であった。
【0057】
原料DPCのBPA1モルに対する比率は1.04モルとなるように、原料調製槽12aに、定量供給装置8aまたは8bを介してBPAを、送液ポンプ10aを介して溶融DPCをそれぞれ供給した。なお、定量供給装置8a及び8bは、原料調製槽12a内のDPCのBPA1モルに対する比率を一定に保ちながら連続的に供給できるように交互に運用した。
【0058】
原料調製槽12a及び原料調製槽12bにて調製された混合物は、送液ポンプ11bを介して原料フィルター13を通過し、攪拌翼を具備した第1竪型重合槽14aに50kg/時間にて供給した。加えて、炭酸セシウム水溶液をBPA1モルに対して、炭酸セシウ
ムとして0.75μモルとなるように、第1竪型重合槽14aへ供給した。第1竪型重合槽14aから、第2竪型重合槽14b、第3竪型重合槽14c、第4竪型重合槽14d、第5横型重合槽16にて、下記に示されるような反応条件にて、重合反応を進め、副生されるフェノールは適宜溜出ラインより排出した。
(第1竪型攪拌反応器14a):220℃、常圧
(第2竪型攪拌反応器14b):220℃、13.3kPa
(第3竪型攪拌反応器14c):240℃、2kPa
(第4竪型攪拌反応器14d):270℃、67Pa
(第5横型攪拌反応器16):280℃、67Pa
第5横型重合槽より排出されたポリカーボネート樹脂は、送液ポンプ(図示せず)により冷却固化されることなくそのままベント式二軸押出機(図示せず)へと供給され、触媒失活剤としてp−トルエンスルホン酸ブチルを7.5ppmを前記ベント式二軸押出機内に添加混合し、脱揮押出し、前記ベント式二軸押出機よりストランド状に抜き出し、水にて冷却し、ペレタイザー(図示せず)にてチップ状のポリカーボネート樹脂とした。
【0059】
前記条件にて1週間連続してポリカーボネート樹脂を製造したが、その間のDPCのBPA1モルに対する比率は1.038モル〜1.042モルであり、粘度平均分子量は22,800〜23,200であり、末端水酸基濃度は580ppm〜620ppm、YIは1.2〜1.3、ΔYI=0.2〜0.5であった。
【0060】
(実施例2)
BPAホッパー7a及び7b内のBPA保有量をホッパーの有効容積に対して30〜43%の範囲に維持した以外は、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂を製造したが、その間のDPCのBPA1モルに対する比率は1.038モル〜1.042モルであり、粘度平均分子量は22,800〜23,200であり、末端水酸基濃度は580ppm〜620ppm、YIは1.2〜1.3、ΔYI=0.2〜0.5であった。
【0061】
(実施例3)
BPAホッパー7a及び7b内のBPA保有量をホッパーの有効容積に対して35〜74%の範囲に維持した以外は、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂を製造したが、その間のDPCのBPA1モルに対する比率は1.037モル〜1.043モルであり、粘度平均分子量は22,700〜23,300であり、末端水酸基濃度は575ppm〜625ppm、YIは1.2〜1.3、ΔYI=0.2〜0.6であった。
【0062】
(比較例1)
BPAホッパー7a及び7b内のBPA保有量をホッパーの有効容積に対して17〜35%の範囲に維持した以外は、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂を製造したが、その間、時折BPAの原料調製槽への供給に振れが生じ、DPCのBPA1モルに対する比率は1.03モル〜1.05モルとなり、粘度平均分子量は22,500〜23,500であり、末端水酸基濃度は400ppm〜800ppm、YIは1.2〜1.5、ΔYI=0.2〜1.0であった。
【0063】
(比較例2)
BPAホッパー7a及び7b内のBPA保有量をホッパーの有効容積に対して13〜30%の範囲に維持した以外は、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂を製造したが、その間、時折BPAの原料調製槽への供給に振れが生じ、DPCのBPA1モルに対する比率は1.025モル〜1.055モルとなり、粘度平均分子量は22,400〜23,600であり、末端水酸基濃度は3
00ppm〜900ppm、YIは1.2〜1.8、ΔYI=0.2〜1.5であった。
【0064】
(比較例3)
BPAホッパー7a及び7b内のBPA保有量をホッパーの有効容積に対して43〜100%の範囲に維持した以外は、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂を製造を試みたが、供給配管が3回閉塞したため、間欠的にポリカーボネート樹脂を製造した。時折BPAの原料調製槽への供給に振れが生じ、DPCのBPA1モルに対する比率は1.025モル〜1.055モルとなり、粘度平均分子量は22,400〜23,600であり、末端水酸基濃度は300ppm〜900ppm、YIは1.2〜1.8、ΔYI=0.2〜1.5であった。
【0065】
(比較例4)
BPAホッパー7a及び7bに均圧管を設置しなかったこと以外は実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を試みたが、定量供給装置8a及び8bよりBPAの供給がうまく行われず、製造を断念した。
【0066】
(比較例5)
BPAホッパー7a及び7bに放圧管を設置しなかったこと以外は実施例1と同様に製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂の製造を実施したが、時折BPAの原料調製槽への供給に振れが生じ、DPCのBPA1モルに対する比率は1.025モル〜1.055モルとなり、粘度平均分子量は22,400〜23,600であり、末端水酸基濃度は300ppm〜900ppm、YIは1.2〜1.8、ΔYI=0.2〜1.5であった。
【0067】
(比較例6)
BPAホッパー7a及び7bに設置された均圧管の内径が42mm(供給配管の内径の約1/7)であったこと以外は実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を試みた。ポリカーボネート樹脂の製造開始1週間後に均圧管内にBPAの微粉が付着し閉塞が起こったため、運転を中止した。
【0068】
(比較例7)
BPAホッパー7a及び7bに設置された放圧管の内径が42mm(供給配管の内径の約1/7)であったこと以外は実施例1と同様にポリカーボネート樹脂の製造を行った。1週間連続的にポリカーボネート樹脂の製造を実施したが、時折BPAの原料調製槽への供給に振れが生じ、DPCのBPA1モルに対する比率は1.02モル〜1.06モルとなり、粘度平均分子量は22,100〜23,900であり、末端水酸基濃度は200ppm〜1,000ppm、YIは1.2〜2.0、ΔYI=0.2〜2.0であった。
【符号の説明】
【0069】
1 BPAホッパー
2 定量供給装置
3 動力モーター
4 フレキシブルな配管
5 BPAサイロ
6a,6b 均圧管
7a、7b BPAホッパー
8a、8b 定量供給装置(動力モーター含む)
9a,9b 供給配管
10 DPC貯槽
11a、11b、15a、15b 送液ポンプ
12a、12b 原料調製槽
13 原料フィルター
14a、14b、14c、14d 竪型重合槽
16 横型重合槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料調製槽に炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を供給し、混合物とする原料調製工程と、
前記混合物をエステル交換反応によりポリカーボネートとする重縮合工程と、を含むポリカーボネートの製造方法において、
前記炭酸ジエステル及び/又は前記ジヒドロキシ化合物は、放圧管を具備したホッパーから、定量供給装置を介して、前記原料調製槽へ供給配管により定量供給され、
前記ホッパーと前記原料調製槽は均圧管で結ばれており、
前記放圧管の内径が、前記供給配管の内径に対して1/6〜1/2であり、
前記均圧管の内径が、前記供給配管の内径に対して1/5〜1/2であり、
且つ前記ホッパー内の前記炭酸ジエステル及び/又は前記ジヒドロキシ化合物の保有量を、前記ホッパーの有効容積の30%〜90%の範囲に維持することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記均圧管の一部がフレキシブルな配管であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記定量供給装置が2以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ホッパーの円錐角θが70度以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記定量供給装置が重量式であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−79936(P2011−79936A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232690(P2009−232690)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】