説明

ポリカーボネート樹脂粉状体、ペレット、及び製造方法

【課題】乾燥性に優れ、且つ嵩密度が高いポリカーボネート樹脂粉状体、残留有機溶媒が少ないペレットを提供する。
【解決手段】特定のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を含み、ポリジオルガノシロキサン成分が0.1〜20重量%である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなり、嵩密度が0.5g/cm以上で、比表面積が32m/g以上であることを特徴とする樹脂粉状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥性に優れ、且つ嵩密度が高いポリカーボネート樹脂粉状体、残留有機溶媒量が少ないポリカーボネート樹脂ペレット、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、通常二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを塩化メチレン等の有機溶媒の存在下反応させるいわゆる界面縮重合法により製造され、得られるポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液(以下、ポリカーボネート樹脂溶液と称することがある)から有機溶媒を除去して粒状体にする粉粒化工程を経た後乾燥工程に供されるが、該粒状体は乾燥性に優れ、嵩密度が高く、粒子径の揃ったものが望ましい。しかしながら、該粒状体は、通常嵩密度が高い樹脂粉状体は乾燥性に乏しく、嵩密度の低い樹脂粉状体は乾燥性に優れるため、これらを両立することは困難であった。
【0003】
特許文献1及び2には、ポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を除去して粒状体を得る方法として、例えばポリカーボネート樹脂溶液を熱水と接触させてゲル状濃縮物となした後粉砕する方法が開示されている。
これらの方法によって得られる粒状体は嵩密度が高く生産性に優れ、取り扱い易い。しかしながら、乾燥性が劣悪であり、残留有機溶媒を通常の乾燥によって充分に除去することは困難である。この残留有機溶媒を更に減少させるには高温での長時間の乾燥によらねばならず、乾燥工程が巨大化あるいは煩雑化し、それでもなお数十〜数百ppmの有機溶媒が残留する。
【0004】
また、特許文献3には、ポリカーボネート樹脂溶液を溶媒の沸点以上の温度に維持した熱水を貯留した粉砕機構を有する混錬機に供給し、これを混錬することにより脱溶媒、粉砕を同時に行うことを特徴とするポリカーボネート樹脂粒状体の製造法が開示されている。この方法によって得られる樹脂粉状体は乾燥性に優れているものの、樹脂粉状体の嵩密度が低く、取り扱い上に難点がある。また、造粒槽壁、攪拌翼等に樹脂粉状体が付着成長し、塊状の固形物を生成するトラブルを引き起こす。
【0005】
特許文献4〜6には、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、ポリカーボネート樹脂と比較して靭性や難燃性に優れることが開示されている。しかしながら、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を含有するポリカーボネートブレンド物粉状体の製造方法とその特性については、十分に検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭45−009875号公報
【特許文献2】特公平04−001767号公報
【特許文献3】特開昭60−202126号公報
【特許文献4】特開平4−202464号公報
【特許文献5】特公平7−91375号公報
【特許文献6】特開平8−81620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の如く嵩密度が高く残留する有機溶媒量が少ないポリカーボネート樹脂粉状体が求められている現状に対して、上記従来技術はかかる要求を満足しうるものとはいえなかった。本発明の目的は、かかる要求を満足するポリカーボネート樹脂粉状体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに特定のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を含有するポリカーボネート樹脂ブレンド物からなる樹脂成分の有機溶媒溶液を熱水と接触させてゲル状濃縮物となした後、粉砕することにより上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明によれば、上記課題は下記構成により解決される。
【0009】
(構成1)
(A)下記一般式[1]で表わされるポリカーボネート成分と下記一般式[3]で表わされるポリジオルガノシロキサン成分からなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%と(B)下記一般式[1]で表わされるポリカーボネート成分からなる芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とからなり、下記一般式[3]で表わされるポリジオルガノシロキサン成分が、0.1〜20重量%である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなり、嵩密度が0.5g/cm以上で、比表面積が32m/g以上であることを特徴とする樹脂粉状体。
【0010】
【化1】

(上記一般式[1]において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜18のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数3〜14のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1〜4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式[2]で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【0011】
【化2】

(上記一般式[2]においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜14のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1〜10の整数、hは4〜7の整数である。)]
【0012】
【化3】

(上記一般式[3]において、R、R、R、R、R及びRはメチル基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは30以上、200未満の自然数である。XはC〜Cの二価脂肪族基である。)
【0013】
(構成2)
平均粒径が0.4mm〜2.0mmであることを特徴とする、前記1記載の樹脂粉状体。
(構成3)
(A)前記一般式[1]で表されるポリカーボネート成分と前記一般式[3]で表されるポリジオルガノシロキサン成分からなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%と(B)芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とからなり、前記一般式[3]で表されるポリジオルガノシロキサン成分が0.1〜20重量%である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を有機溶媒溶液とした状態で、熱水と接触させてゲル状濃縮物となした後、粉砕することを特長とする樹脂粉状体の製造方法。
(構成4)
樹脂粉状体の嵩密度が0.5g/cm以上で、比表面積が32m/g以上である前記3記載の樹脂粉状体の製造方法。
(構成5)
前記1記載の樹脂粉状体を溶融押出し成形してなる樹脂ペレット。
(構成6)
(A)前記一般式[1]で表されるポリカーボネート成分と前記一般式[3]で表されるポリジオルガノシロキサン成分からなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%と(B)芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とからなり、塩素含有量が50ppm以下である樹脂ペレット。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂粉状体は、特定のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を含有するポリカーボネート樹脂ブレンド物の有機溶媒溶液を熱水と接触させてゲル状濃縮物となした後、粉砕する製造方法によるものであり、嵩密度が高く、且つ比表面積が大きいため、乾燥性に優れ、残留する有機溶媒量が少ない。その結果、その奏する工業的効果は格別なものである。殊に、そのポリジオルガノシロキサン成分の重量比、ポリジオルガノシロキサン重合度を各々特定範囲内とすることにより、かかる特性が有効に発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細について説明する。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂とは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0016】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
【0017】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トをA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0018】
(B)ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、一般式[4]で表される二価フェノール(I)と一般式[5]で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の界面重縮合反応により製造される。
【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
一般式[4]で表される二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、および1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0022】
なかでも、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’−スルホニルジフェノール、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
一般式[5]で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)としては、例えば次に示すような化合物が好適に用いられる。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式[5]において、R、R、R、R、R及びRはメチル基である。メチル基以外の置換基の場合は、粉状体の乾燥性が低いため好ましくない。ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、オレフィン性の不飽和炭素−炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、2−アリルフェノール、イソプロペニルフェノール、2−メトキシ−4−アリルフェノールを所定の重合度を有するポリシロキサン鎖の末端に、ハイドロシリレーション反応させることにより容易に製造される。なかでも、(2−アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、(2−メトキシ−4−アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンが好ましく、殊に(2−アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサン、および(2−メトキシ−4−アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。乾燥性に優れ、且つ嵩密度が高い粉状体を安定して製造するためにヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のジオルガノシロキサン重合度(p+q)は30〜200が適切である。かかる好適な範囲の下限以上においては、粉状体の比表面積が大きくなるため乾燥性が良好である。かかる好適な範囲の上限以下においては、ゲル状濃縮物が安定して発生するため粉状体を安定して製造することができる。さらに、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン樹脂の全重量に占めるポリジオルガノシロキサン成分の重量比は0.5〜20重量%が適切である。かかるポリジオルガノシロキサン成分の重量比は好ましくは1.0〜15重量%、さらに好ましくは2.0〜10重量%である。かかる好適な範囲の下限以上においては、粉状体の比表面積が大きくなるため乾燥性が良好である。かかる好適な範囲の上限以下においては、ゲル状濃縮物が安定して発生するため粉状体を安定して製造することができる。かかるポリジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン成分重量比は、H−NMR測定により算出することが可能である。
【0026】
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
また、上記二価フェノール(I)、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)以外の他のコモノマーを共重合樹脂の全重量に対して10重量%以下の範囲で併用することもできる。
【0027】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび/または末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調製する。クロロホルメート形成性化合物としてはホスゲンが好適である。
【0028】
二価フェノール(I)からのクロロホルメート化合物を生成するにあたり、二価フェノール(I)の全量を一度にクロロホルメート化合物としてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。
【0029】
このクロロホルメート化合物生成反応の方法は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。更に、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、およびハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよく、添加することが好ましい。
【0030】
クロロホルメート形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、好適なクロロホルメート形成性化合物であるホスゲンを使用する場合、ガス化したホスゲンを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
【0031】
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。
【0032】
酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、二価フェノール(I)のクロロホルメート化合物の形成に使用する二価フェノール(I)1モルあたり(通常1モルは2当量に相当)、2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
【0033】
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレンの如き炭化水素溶媒、並びに、塩化メチレンおよびクロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレンの如きハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
【0034】
クロロホルメート化合物の生成反応における圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、もしくは減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は−20〜50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、反応に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2〜10時間で行われる。
クロロホルメート化合物の生成反応におけるpH範囲は、公知の界面反応条件が利用でき、pHは通常10以上に調製される。
【0035】
このようにして二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調整した後、該混合溶液を攪拌しながら一般式[5]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を加え、該ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該クロロホーメート化合物とを界面重縮合させることにより、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得る。
また、均一分散性を高めるため、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、溶媒と混合して溶液状態で、末端クロロホルメート化合物を含有する混合溶液中に投入することが望ましい。
【0036】
界面重縮合反応を行うにあたり、酸結合剤を反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜追加してもよい。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。具体的には、使用するヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)、又は上記の如く二価フェノール(I)の一部を後添加モノマーとしてこの反応段階に添加する場合には、後添加分の二価フェノール(I)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との合計モル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより過剰量のアルカリを用いることが好ましい。
【0037】
二価フェノール(I)のオリゴマーとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との界面重縮合反応は、上記混合液を激しく攪拌することにより行われる。
かかる重縮合反応においては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。末端停止剤としては一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、トリブロモフェノールなどの他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ヒドロキシフェニルアルキル酸エステル、アルキルエーテルフェノールなどが例示される。その使用量は用いる全ての二価フェノール系化合物100モルに対して、100〜0.5モル、好ましくは50〜2モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
【0038】
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などの触媒を添加することができ、添加することが好ましい。特に好適にはトリエチルミンが利用される。
かかる重合反応の反応時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは50分以上であり、製造効率の点からその上限は好ましくは2時間以下、より好ましくは1.5時間以下である。
【0039】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート共重合樹脂とすることができる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0040】
かかる分岐化ポリカーボネート共重合樹脂の製造方法は、クロロホルメート化合物の生成反応時にその混合溶液中に分岐化剤が含まれる方法であっても、該生成反応終了後の界面重縮合反応時に分岐化剤が添加される方法であってもよい。分岐化剤由来のカーボネート構成単位の割合は、該共重合樹脂を構成するカーボネート構成単位全量中、好ましくは0.005〜1.5モル%、より好ましくは0.01〜1.2モル%、特に好ましくは0.05〜1.0モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0041】
重縮合反応における系内の圧力は、減圧、常圧、もしくは加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は−20〜50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5〜10時間で行われる。
場合により、得られたポリカーボネート共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート共重合樹脂として取得することもできる。
【0042】
(C)樹脂粉状体製造方法
本発明の樹脂粉状体製造方法を具体的に説明すると、予め加温された熱水中に十分な攪拌のもとにポリカーボネート樹脂溶液を少しずつ投入することにより、溶剤を揮散せしめゲル状に濃縮する。本発明のゲル状濃縮物とは、高粘度の高固形分濃度樹脂溶液濃縮物である。この際、ポリカーボネート樹脂溶液が濃縮されゲル状濃縮物となる濃度は使用する溶剤により種々異なり、例えば塩化メチレンでは約26%以上、モノクロロベンゼンでは約5%以上である。ゲル状濃縮物のポリカーボネート樹脂濃度は、例えば塩化メチレンでは26〜60%が好ましい。26%よりも高濃度であれば、熱交換面の皮膜形成が抑制され短時間でゲル状濃縮物を形成させることができる。60%よりも低濃度であれば、粉砕可能な塊状となる。最も好ましい状態はポリカーボネート樹脂溶液を添加している間は常にゲル状濃縮物状態を保持するように注加量を調節することによって達せられる。このようにすれば、注加終了後直ちにゲル状濃縮物全体が粘着性の低い脆い状態となる。この状態となった後、直ちに加温を中止して冷却すると、通常の方法によって容易に且つ任意の粒度に粉砕し得るゲル状濃縮物を得ることができる。内部熱水温度は40℃から70℃の範囲に調節することが好ましく、より好ましくは45℃から65℃、さらに好ましくは50℃から60℃の範囲に調節することが好ましい。かかる好適な範囲の上限以下では溶剤の急激な揮散が抑制されるためゲル状濃縮物の濃度を好適な範囲に調製し易い。かかる好適な範囲の下限以上においては、ゲル状濃縮物を形成するために十分な溶剤揮散速度となるので生産性に優れる。冷却方式としては熱交換面を介して外部から冷却してもよいが、例えば濃縮、粉砕をニーダー(混練機)内で行う場合は、更に冷却速度を早めるために、ニーダー(混練機)内に冷水を加えると好ましい結果が得られる。冷水の注入はゲル状濃縮物の冷却を早めるとともに、ニーダー(混練機)内の水量調節による粒度分布の調整にも有効な手段である。
【0043】
ポリカーボネート樹脂溶液の樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%からなり、樹脂成分全体に占めるポリジオルガノシロキサン成分の重量比が0.1〜20重量%である。かかるポリジオルガノシロキサン成分量は、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂をブレンドして調整してもよいし、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂だけで調整してもよい。樹脂成分全体に占めるポリジオルガノシロキサン成分の重量比は好ましくは0.2〜15重量%、より好ましくは0.4〜10重量%である。かかる好適な範囲の下限以上においては、粉状体の比表面積が大きくなるため乾燥性が良好である。かかる好適な範囲の上限以下においては、ゲル状濃縮物が安定して発生するため粉状体を安定して製造することができる。かかるポリジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン成分重量比は、H−NMR測定により算出することが可能である。
【0044】
本発明の樹脂粉状体の嵩密度は、は0.5g/cm以上であり、好ましくは0.55g/cm以上、より好ましくは0.6g/cm以上である。かかる好適な範囲の下限以上においては、乾燥工程、押出し工程に供されるにあたり、ハンドリングし易く、生産性が良好である。かかる好適な範囲の上限は、実質的に好ましくは0.75g/cm以下、より好ましくは0.7g/cm以下である。
【0045】
本発明の樹脂粉状体の比表面積は32m/g以上であり、好ましくは33m/g以上である。かかる好適な範囲の下限以上においては、樹脂粉状体の乾燥性が高く、乾燥後の残留有機溶剤量が極めて少なくなる。かかる好適な範囲の上限は、実質的に好ましくは50m/g以下、より好ましくは40m/g以下である。
【0046】
本発明の樹脂粉状体の平均粒径は好ましくは0.4〜2.0mmの範囲であり、より好ましくは0.4〜1.0mmの範囲であり、さらに好ましくは0.45〜0.8mmの範囲である。上記範囲内の平均粒径であると、乾燥工程や押出し工程に供するにあたりハンドリング性に優れ、生産性が向上するため好ましい。
【0047】
本発明の実施にあたり、設備的には加温装置、並びに強力な攪拌装置及び溶媒の回収装置を具備し、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を定量的に注入することが出来るものであれば、如何なる形状のものでも用いることが出来る。従ってこの用件を具備することにより、一方より連続的に溶液を注入し、他方より粉状体を連続的に出すことも可能である。更にこの粉状体を連続的に脱溶剤、乾燥することにより一連の工程を連続化し得るので工業上優れた利点がある。
【0048】
斯様にして得られたポリカーボネート樹脂粉状体は、脱液する必要はなく連続的及び/又は回分的に脱有機溶媒・乾燥することが可能である。脱有機溶媒・乾燥は乾燥工程のみによって行ってもよく、乾燥には任意の装置を単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。必要に応じて残留有機溶媒の沸点以上の液体等と混合し蒸留する方法及び水蒸気と接触させる方法等任意の脱有機溶媒処理を行った後乾燥してもよい。また、貧溶媒や非溶媒等で抽出や添加処理を行ってもよい。得られたポリカーボネート樹脂粉状体の残留有機溶媒量が多く粉状体が崩れ易い場合は、剪断応力のかからない装置例えば熱風循環型乾燥機、スチームチューブドライヤー、パウヒーター、ホッパードライヤー等を用いて乾燥するか又はこれらの装置で予め乾燥した後更にパドルドライヤー、マルチフィンドライヤー等の乾燥装置を用いて乾燥するのが好ましい。かくして得られたポリカーボネート樹脂粉状体には必要に応じて安定剤、添加剤、充填剤等を加えてもよい。
【0049】
本発明を何らかの理論により限定するものではないが、本発明のポリカーボネート樹脂粉状体が、嵩密度が高く、極めて乾燥性に優れる理由を以下のように推察する。低分子間力のポリジメチルシロキサン成分の存在により、ポリカーボネート樹脂ブレンド物の有機溶媒溶液がゲル状濃縮物を経て粉状体へ変態する際に嵩密度が低下しない程度に微発泡し、粉状体の実効比表面積が大きくなるため、効率的に粉状体が乾燥されると考えられる。且つポリジメチルシロキサン成分は低分子間力で分子運動性が高いため、残留溶剤が樹脂に吸着しにくく拡散しやすいと考えられる。その結果、熱風乾燥による残留溶剤の放出が容易となると考えられる。
【0050】
(D)樹脂ペレット製造方法
本発明の樹脂粉状体は、溶融押出し成形によりペレット状に成形される。また、本発明の樹脂粉状体は通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種の難燃剤、強化充填材、添加剤を配合してペレット状に成形される。混合方法としては、特に限定されず、例えば、リボンブレンダ、タンブルミキサ、ヘンシェルミキサなどの混合機や、オープンローラ、ニーダ、バンバリーミキサ、押出機などの混練機による混合手段などを用いた溶融混練による方法が利用できる。これらの混合方法は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。この溶融混錬成形としては、単軸押出し機、二軸押出し機の如き押出し成形機、特にベント式押出し成形機の使用が好ましい。溶融混錬の際の加熱温度は、通常240〜320℃の範囲で適宜選択される。
【0051】
本発明の樹脂ペレットは、残留有機溶剤が極めて少ない樹脂粉状体から成形さえるため、当然にその残留有機溶剤量が少ない。かかる残留有機溶剤由来の塩素原子量は50ppm以下であり、より好ましくは25ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。かかる塩素原子量の下限は実質的に0.01ppmである。かかる好ましい範囲の上限以下においては、金型や貯蔵タンクの腐食が抑制され、成形品からの有機溶媒溶出による健康上のリスクが低減される。
【実施例】
【0052】
本発明について実施例および比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。特記しない限り、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法に従った。
【0053】
(1)粘度平均分子量
ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を用いて20℃でオストワルド粘度計により比粘度(ηsp)を測定し、次式により計算した。
ηsp/C=[η]+K[η]
[η]=1.23×10−40.83
(式中、Cは濃度で0.7、Kは定数で0.45である)
【0054】
(2)ポリジオルガノシロキサン成分含有量
日本電子株式会社製 JNM−AL400を用い、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の1H−NMRスペクトルを測定し、二価フェノール(I)由来のピークの積分比とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)由来のピークの積分比を比較することにより算出した。
【0055】
(3)塩素含有量
塩素・硫黄分析装置(三菱化成アナリテック(株)製 TOX−2100H)により、ASTM D5808に準拠して測定した。
【0056】
(4)平均粒径
日本粉体工業協会編「造粒便覧」1編、2章、2・4項の粒度測定法に準拠し、試料を、13.2mm、8.0mm、4.75mm、2.8mm、1.7mm、1.0mm、0.71mm、0.5mm、0.3mm、0.18mmの目開きを持つ篩を使用して、篩い分けた後、重量を基準とした累積粒度分布グラフを作成し、累積重量が50%になるところの粒径を求め、これを平均粒径とした。
【0057】
(5)嵩密度
100cmの金属製円筒容器にポリカーボネート樹脂試料を、ロートを用いて投入し、余剰分をすり落として秤量し、内容物の重量W(g)を求め、次式により算出した。
嵩密度(g/cm)=W/100
【0058】
(6)比表面積
MICROMERITICS社製 オートポアIII9420を用い、水銀圧入法により細孔半径が約0.0018〜100μmの細孔分布と、累積細孔容積を測定し、全細孔比表面積(細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した全細孔の比表面積)を測定した。測定は、サンプルを120℃で4時間乾燥した後に実施した。細孔径は、Washburnの式を用いて算出した。
Washburnの式:PD=−4σcosθ
P:圧力,σ:水銀の表面張力 480dynes/cm,D:細孔直径,θ:水銀と試料との接触角 140°
【0059】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1記載の配合割合からなる樹脂成分を15wt%塩化メチレン溶液とし、下記の製造方法で粉状体を作成した。ジャケット付ニーダー(混練機)に水5部を入れ、ジャケットに90℃以上の熱水を通して機内の水温を60℃とし、上記ポリカーボネート樹脂溶液100部を連続的に注加した。ニーダー(混練機)は44rpmで攪拌し、内部温水を50℃に保ちつつ溶液注加を終了した。このとき、注加速度をゲル状濃縮物(固形分濃度26〜60wt%の塩化メチレン溶液濃縮物)が形成され維持される様に調整した。注加終了後、ニーダー(混練機)内部の雰囲気温度を約50℃に維持しながら混錬して、脱溶媒と粉砕を行った。
得られたポリカーボネート樹脂粉状体の水スラリーを、蒸留槽に導入し熱水中95℃で30分間攪拌した後、遠心脱水機により粉状体を分離し、140℃で6時間熱風乾燥を行った。乾燥後の粒状体の塩素含有量、平均粒径、嵩密度、比表面積を測定した。乾燥後の粉状体をベント式二軸押出機(テクノベル(株)製, KZW15−25MG)によって溶融押出し成形してペレットを得た。押出条件は、吐出量2.5kg/h、スクリュー回転数250rpmであり、押出温度は第1供給口からダイス部分まで260℃とした。得られたペレットの塩素含有量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0060】
(比較例5)
表1記載の配合割合からなる樹脂成分を10wt%塩化メチレン溶液とし、下記の製造方法で粉状体を作成した。ジャケット付ニーダー(混練機)に水30部を入れ、ジャケットに90℃以上の熱水を通して機内の水温を60℃とし、上記ポリカーボネート樹脂溶液200部を連続的に注加した。ニーダー(混練機)は60rpmで攪拌し、内部温水を50℃に保ちつつ溶液注加を終了した。このとき、注加速度をゲル状濃縮物が形成されず、粉状体が水に分散するように調整した。注加終了後、熱水を排出し、ニーダー(混練機)内部の雰囲気温度を約50℃に維持しながら混錬して、脱溶媒と粉砕を行った。
得られたポリカーボネート樹脂粉状体の水スラリーを、蒸留槽に導入し熱水中95℃で30分間攪拌した後、遠心脱水機により粉状体を分離し、140℃で6時間熱風乾燥を行った。乾燥後の粒状体の塩化メチレン含有量、平均粒径、嵩密度、比表面積を測定した。乾燥後の粉状体をベント式二軸押出機(テクノベル(株)製, KZW15−25MG)によって溶融押出し成形してペレットを得た。押出条件は、吐出量2.5kg/h、スクリュー回転数250rpmであり、押出温度は第1供給口からダイス部分まで260℃とした。得られたペレットの塩素含有量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
表1に記載の使用した原材料等は以下の通りである。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
PC−1:ビスフェノールA及び末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WX(商品名)、粘度平均分子量 19,700)
(B)ポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
PC−2:製造例1で製造されたポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
PC−3:製造例2で製造されたポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
PC−4:製造例3で製造されたポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
PC−5:製造例4で製造されたポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
PC−6:製造例5で製造されたポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂
【0062】
【表1】

【0063】
製造例1:PC−2の製造方法
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21592部、48.5%水酸化ナトリウム水溶液3675部を入れ、一般式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)3880部、およびハイドロサルファイト7.6部を溶解した後、塩化メチレン14565部を加え、撹拌下20〜30℃でホスゲン1900部を60分要して吹き込んだ。48.5%水酸化ナトリウム水溶液1131部、p−tert−ブチルフェノール108部を塩化メチレン800部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら一般式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X−22−1821)430部を塩化メチレン1600部に溶解した溶液を加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン4.3部を加えて温度26〜31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発させ、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合樹脂のパウダーを得た。
【0064】
【化7】

【0065】
製造例2:PC−3の製造方法
一般式[5]で表される二価フェノール(II)を215部用いた以外は製造例1と同様にした。
【0066】
製造例3:PC−4の製造方法
一般式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X−22−1822E)を215部用いた以外は製造例1と同様にした。
【0067】
【化8】

【0068】
製造例4:PC−5の製造方法
一般式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X−22−1875)を215部用いた以外は製造例1と同様にした。
【0069】
【化9】

【0070】
製造例5:PC−6の製造方法
一般式[5]で表される二価フェノール(II)として下記構造のポリジオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製 X−22−1827)を215部用いた以外は製造例1と同様にした。
【0071】
【化10】

【0072】
本発明の樹脂粉状体、及び樹脂ペレットは、嵩密度が高く、極めて乾燥性に優れており、乾燥後の残留有機溶媒量が少ない。嵩密度が高いため乾燥工程、押出し工程における効率的な生産が可能になり、残留有機溶媒量が少ないため金型や貯蔵タンクの腐食が抑制され、成形品からの有機溶媒溶出による健康上のリスクが低減される。したがって、その奏する工業的効果は極めて多大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]で表わされるポリカーボネート成分と下記一般式[3]で表わされるポリジオルガノシロキサン成分からなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%と(B)下記一般式[1]で表わされるポリカーボネート成分からなる芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とからなり、下記一般式[3]で表わされるポリジオルガノシロキサン成分が、0.1〜20重量%である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなり、嵩密度が0.5g/cm以上で、比表面積が32m/g以上であることを特徴とする樹脂粉状体。
【化1】

(上記一般式[1]において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜18のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数3〜14のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1〜4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式[2]で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【化2】

(上記一般式[2]においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜14のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1〜10の整数、hは4〜7の整数である。)]
【化3】

(上記一般式[3]において、R、R、R、R、R及びRはメチル基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは30以上、200未満の自然数である。XはC〜Cの二価脂肪族基である。)
【請求項2】
平均粒径が0.4mm〜2.0mmであることを特徴とする、請求項1記載の樹脂粉状体。
【請求項3】
(A)前記一般式[1]で表されるポリカーボネート成分と前記一般式[3]で表されるポリジオルガノシロキサン成分からなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%と(B)芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とからなり、前記一般式[3]で表されるポリジオルガノシロキサン成分が0.1〜20重量%である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を有機溶媒溶液とした状態で、熱水と接触させてゲル状濃縮物となした後、粉砕することを特長とする樹脂粉状体の製造方法。
【請求項4】
樹脂粉状体の嵩密度が0.5g/cm以上で、比表面積が32m/g以上である請求項3記載の樹脂粉状体の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の樹脂粉状体を溶融押出し成形してなる樹脂ペレット。
【請求項6】
(A)前記一般式[1]で表されるポリカーボネート成分と前記一般式[3]で表されるポリジオルガノシロキサン成分からなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂10〜100重量%と(B)芳香族ポリカーボネート樹脂0〜90重量%とからなり、塩素含有量が50ppm以下である樹脂ペレット。

【公開番号】特開2012−236955(P2012−236955A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108590(P2011−108590)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】