説明

ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを用いた成形品

【課題】本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを用いた成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂5質量%〜89質量%、(B)ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体10質量%〜94質量%、および(C)変性アクリル系共重合体1質量%〜70質量%を含むポリカーボネート樹脂組成物およびこれを用いた成形品が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、剛性(toughness)、耐衝撃性、熱安定性、自己消火性、寸法安定性、および耐熱性に優れており、電機電子製品、自動車部品、レンズおよびガラスの代替素材などに適用されている。しかしながら、透明性が求められる製品に適用される場合にはガラスに比べて耐スクラッチ性が大幅に低下し、太陽光に長時間露出される場合には黄変現象が発生するなどの問題がある。
【0003】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂は、ポリカーボネート樹脂とは異なって耐候性、透明性、屈曲強度、屈曲変形率、接着性などに優れており、接着剤、照明材料、建築材料などとして用いられている。しかしながら、衝撃強度が落ちるため、衝撃を十分に確保することができる一定の厚さ以下の製品には使用に制約がある。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂とポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂をアロイ(alloy)して用いる場合、耐衝撃性と耐スクラッチ性が同時に確保されるものと期待されるが、実際の適用時には2つの樹脂間の相溶性が低く、屈折率の差が大きくて不透明であり、外観品質が劣化し、耐衝撃性および耐スクラッチ性が低下する。
【0005】
また、最近では高光沢質感のように高級にみせようとする製品開発のために主に塗装工程を経ているが、多様な段階の工程を伴わなければならず、不良率および有害揮発成分の発生率が高く、費用が上昇するなどの問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために無塗装用素材が開発されているが(例えば、特許文献1〜3参照)、耐衝撃性、耐熱性、耐スクラッチ性などの所望する物性をすべて満たす水準ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2010−0069889号明細書
【特許文献2】韓国特許登録第0899172号明細書
【特許文献3】日本特許公開第1993−186675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一側面は、耐衝撃性、耐スクラッチ性、透明性、耐熱性、流動性、および着色性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の一側面は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形品を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的(一側面)は、(A)ポリカーボネート樹脂5質量%〜89質量%、(B)ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体10質量%〜94質量%、および(C)変性アクリル系共重合体1質量%〜70質量%を含むポリカーボネート樹脂組成物により達成することができる。
【0011】
前記ポリカーボネート樹脂のメルトフローインデックス(Melt Flow Index:MFI)は、ASTM D1238に準じて310℃および荷重1.2kgfの測定条件下に、3〜120g/10minであるのが望ましい。
【0012】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体は、ポリカーボネートブロック1質量%〜99質量%およびポリシロキサンブロック1質量%〜99質量%を含んでいるのが望ましい。
【0013】
前記変性アクリル系共重合体は、芳香族または指環族アクリル系化合物と、これと共重合可能な化合物との共重合体であるのが望ましい。前記芳香族または指環族アクリル系化合物としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、2−エチルチオフェニル(メタ)アクリレート、2−エチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、3−フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4−フェニルブチル(メタ)アクリレート、2−2−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−3−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−4−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−1−メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、前記共重合可能な化合物としては、アルキルメタクリレート、アルキルアクリルレート、不飽和カルボン酸、酸無水物、ヒドロキシ基を含むアクリレート、アミド類、ニトリル類、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、スチレン類、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0014】
前記変性アクリル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5,000g/mol〜50,000g/molであるのが望ましく、より好ましくは10,000g/mol〜40,000g/molであるのが望ましい。
【0015】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体と前記変性アクリル系共重合体は、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体:変性アクリル系共重合体=12:88〜99:1の重量比で混合されているのが望ましい。
【0016】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、カーボンブラックをさらに含んでもよい。
【0017】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、無機物添加剤、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、混和剤、安定剤、滑剤、静電気防止剤、調色剤、防染制、耐候剤、着色剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、難燃剤、充填材、核形成剤、接着調剤、粘着剤、またはこれらの組み合わせの添加剤をさらに含んでもよい。
【0018】
本発明の他の目的(一側面)は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造された成形品により達成することができる。
【0019】
その他の本発明の目的(側面)の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0020】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性、耐スクラッチ性、透明性、耐熱性、流動性、および着色性に優れた物性バランスを有することにより、無塗装工程への適用が可能であり、電機電子部品や自動車部品などの成形品に有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】FDI(Falling Dart Impact)測定後の実施例11に係る試片の「延性変形(Ductile)」状態を示す写真である。
【図2】FDI測定後の比較例5に係る試片の「脆性破壊(Brittle)」状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義のみされる。
【0023】
本明細書において特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の両者とも可能であることを意味する。
【0024】
本明細書において特別な言及がない限り、「置換」とは化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C30アリール基、C6〜C30アリールオキシ基、C3〜C30シクロアルキル基、C3〜C30シクロアルケニル基、C3〜C30シクロアルキニル基、またはこれらの組み合わせの置換基に置換されたものを意味する。
【0025】
ここで、アミノ基は、−NR’R”(ここでR’、R”は、相互に独立して、水素原子またはC1〜C20アルキル基を表す。)で表されるものである。アミノ基(−NR’R”)としては、−NH、アルキルアミノ基、(ヘテロ)アリールアミノ基などが挙げられる。アルキルアミノ基の具体的な例としては、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基などのC1〜C20、好ましくはC1〜C10のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。(ヘテロ)アリールアミノ基の具体的な例としては、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基などのC6〜C30、好ましくはC6〜C20のアリールアミノ基や、ジ(2−チエニル)アミノ基、ジ(2−フリル)アミノ基などのC3〜C30で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールアミノ基、フェニル(2−チエニル)アミノ基などのC3〜C30のアリールヘテロアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0026】
アルキル基の具体的な例としては、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などの通常C1〜C20、好ましくはC1〜C10の直鎖または分岐状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0027】
アルケニル基の具体的な例としては、ビニル基、エテニル基、プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ヘキセニル基、ブテニル基、ブタ−1−エン−1−イル基、ブタ−1−エン−2−イル基、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル基、ブタ−2−エン−1−イル基、ブタ−2−エン−2−イル基、ブタ−1,3−ジエン−1−イル基、ブタ−1,3−ジエン−2−イル基、オクテニル基などの通常C2〜C20、好ましくはC1〜C10の直鎖または分岐状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0028】
アルキニル基の具体的な例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル基などの通常C2〜C20、好ましくはC1〜C10の直鎖または分岐状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0029】
アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの通常C1〜C20、好ましくはC1〜C10の直鎖、分岐状または環状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0030】
エステル基の具体的な例としては、ギ酸メチル基、ギ酸エチル基、ギ酸プロピル基、ギ酸イソブチル基、ギ酸n−アミル基、ギ酸イソアミル基、酢酸メチル基、酢酸エチル基、酢酸イソプロピル基、酢酸ブチル基、酢酸n−アミル基、酢酸イソアミル基、プロピオン酸メチル基、プロピオン酸エチル基、プロピオン酸プロピル基、プロピオン酸イソプロピル基、プロピオン酸ブチル基、プロピオン酸イソブチル基、プロピオン酸n−アミル基、プロピオン酸イソアミル基)などの通常C2〜C20、好ましくはC2〜C10のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0031】
アリール基の具体的な例としては、フェニル基、o−、m−、p−トリル基、1−および2−ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基、テトラヒドロナフチル基、インダン基、ビフェニル基などの通常C6〜C30、好ましくはC6〜C20のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0032】
アルコキシ基の具体的な例としては、フェニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ナフチルオキシ基、ジフェニルオキシ基などの通常C6〜C30、好ましくはC6〜C20の直鎖、分岐状または環状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0033】
シクロアルキル基の具体的な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、テトラデカヒドロアントラニル基などの通常C3〜C30、好ましくはC3〜C20の環状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0034】
シクロアルケニル基の具体的な例としては、シクロヘキセニル基、シクロプロパ−1−エン−1−イル基、シクロプロパ−2−エン−1−イル基、シクロブタ−1−エン−1−イル基、シクロブタ−1−エン−3−イル基、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル基などの通常C3〜C30、好ましくはC3〜C20の環状のものが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0035】
シクロアルキニル基の具体的な例としては、シクロヘキシニル基などの通常C3〜C30、好ましくはC3〜C20の環状のものが挙げられる。
【0036】
一実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体、および(C)変性アクリル系共重合体を含む。
【0037】
以下、一実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物に含まれる各成分について具体的に詳察する。
【0038】
(A)ポリカーボネート樹脂
前記ポリカーボネート樹脂は、下記の化学式(1)で表示されるジフェノール類とホスゲン、ハロゲン酸エステル、炭酸エステル、またはこれらの組み合わせと反応させて製造されたものなどを用いることができる。
【0039】
【化1】

【0040】
(前記化学式(1)において、
Aは、単一結合(単結合)、置換または非置換されたC1〜C30直鎖状または分枝状のアルキレン基、置換または非置換されたC2〜C5アルケニレン基、置換または非置換されたC2〜C5アルキリデン基、置換または非置換されたC1〜C30直鎖状または分枝状のハロアルキレン基、置換または非置換されたC5〜C6シクロアルキレン基、置換または非置換されたC5〜C6シクロアルケニレン基、置換または非置換されたC5〜C10シクロアルキリデン基、置換または非置換されたC6〜C30アリーレン基、置換または非置換されたC1〜C20直鎖状または分枝状のアルコキシレン基、ハロゲン酸エステル基、炭酸エステル基、CO、S、またはSOであり、
それぞれのRおよびRは、互いに同一であるか相違しており、置換または非置換されたC1〜C30アルキル基、または置換または非置換されたC6〜C30アリール基であり、
およびnは、それぞれ0〜4の整数である。)。
【0041】
前記化学式(1)で表示されるジフェノール類は、2種類以上が組み合わされてポリカーボネート樹脂の反復単位を構成してもよい。前記ジフェノール類の具体的な例としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノール−A」ともいう)、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどが挙げられる。前記ジフェノール類のうちで好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、または1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを用いるのが望ましい。また、これらのうちでさらに好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いるのが望ましい。
【0042】
前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が好ましくは10,000g/mol〜200,000g/molであるものを用いるのが望ましく、より好ましくは15,000g/mol〜80,000g/molであるものを用いるのが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記ポリカーボネート樹脂は、2種類以上のジフェノール類から製造された共重合体の混合物であってもよい。また、前記ポリカーボネート樹脂は、線型ポリカーボネート樹脂、分枝型(branched)ポリカーボネート樹脂、ポルリエステルカーボネート共重合体樹脂などを用いてもよい。
【0044】
前記線型ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール−A系統ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。前記分枝型ポリカーボネート樹脂としては、トリメリット酸無水物、トリメリット酸などのような多官能性芳香族化合物をジフェノール類およびカーボネートと反応させて製造したものが挙げられる。前記多官能性芳香族化合物は、分枝型ポリカーボネート樹脂の総量に対して0.05〜2モル%で含まれているのが望ましい。前記ポルリエステルカーボネート共重合体樹脂としては、二官能性カルボン酸をジフェノール類およびカーボネートと反応させて製造したものが挙げられる。このとき、前記カーボネートとしては、ジフェニルカーボネートなどのようなジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。
【0045】
前記ポリカーボネート樹脂のメルトフローインデックス(Melt Flow Index:MFI)は、ASTM D1238に準じて310℃および荷重1.2kgfの測定条件下に、3〜120g/10minであるのが望ましい。
【0046】
前記ポリカーボネート樹脂は、前記ポリカーボネート樹脂組成物の総量に対して5質量%〜89質量%で含まれているのが望ましく、より好ましくは10質量%〜80質量%で含まれているのが望ましい。ポリカーボネート樹脂が前記含有量の範囲内に含まれる場合、衝撃強度、耐熱性、および加工性の物性バランスに優れる。
【0047】
(B)ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体は、ポリカーボネートブロックおよびポリシロキサンブロックを含む。
【0048】
前記ポリカーボネートブロックは、上述したポリカーボネート樹脂(A)から誘導された構造単位を含む。
【0049】
前記ポリシロキサンブロックは、下記の化学式(2)で表示される構造単位を含む。
【0050】
【化2】

【0051】
(前記化学式(2)において、
およびRは、互いに同一であるか相違しており、水素原子、置換または非置換されたC1〜C20アルキル基、置換または非置換されたC2〜C20アルケニル基、置換または非置換されたC2〜C20アルキニル基、置換または非置換されたC1〜C20アルコキシ基、置換または非置換されたC3〜C30シクロアルキル基、置換または非置換されたC3〜C30シクロアルケニル基、置換または非置換されたC3〜C30シクロアルキニル基、置換または非置換されたC6〜C30アリール基、置換または非置換されたC6〜C30アリールオキシ基、またはNRR’(ここで、RおよびR’は互いに同一であるか相違しており、水素原子、または置換または非置換されたC1〜C20アルキル基である)であり、
2≦m<10,000である。)。
【0052】
前記化学式(2)において、mは2≦m<10,000の範囲を有し、好ましくは2≦m≦1,000の範囲を有しているのが望ましい。前記範囲を有する場合には耐衝撃性に優れて適当な粘度が維持され、押出加工に有利である。
【0053】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体は、前記ポリカーボネートブロック1質量%〜99質量%と前記ポリシロキサンブロック1質量%〜99質量%を含んでいるのが望ましく、より好ましくは前記ポリカーボネートブロック40質量%〜80質量%と前記ポリシロキサンブロック20質量%〜60質量%を含んでいるのが望ましい。前記ポリカーボネートブロックと前記ポリシロキサンブロックが前記含有量の比率で含まれる場合には耐衝撃性に優れる。
【0054】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体の重量平均分子量は、10,000g/mol〜30,000g/molであるのが望ましく、より好ましくは15,000g/mol〜22,000g/molであるのが望ましい。前記範囲内の重量平均分子量を有する場合には耐衝撃性に優れる。
【0055】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体は、後述する変性アクリル系共重合体の使用によって低下するポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性を補強することができる。
【0056】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体は、前記ポリカーボネート樹脂組成物の総量に対して10質量%〜94質量%で含まれているのが望ましく、より好ましくは15質量%〜90質量%で含まれているのが望ましい。ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体が前記含有量の範囲内に含まれる場合には、衝撃強度、耐熱性、および加工性の物性バランスに優れる。
【0057】
(C)変性アクリル系共重合体
前記変性アクリル系共重合体は、芳香族または指環族アクリル系化合物と、これ(芳香族または指環族アクリル系化合物)と共重合可能な化合物との共重合体である。
【0058】
前記芳香族または指環族アクリル系化合物は、(メタ)アクリレート化合物に芳香族化合物または指環族化合物が置換されたものをいう。前記芳香族化合物としては、置換または非置換されたC6〜C30アリール化合物、または置換または非置換されたC6〜C30アリールオキシ化合物が挙げられる。前記指環族化合物としては、置換または非置換されたC3〜C30シクロアルキル化合物、置換または非置換されたC3〜C30シクロアルケニル化合物、または置換または非置換されたC3〜C30シクロアルキニル化合物が挙げられる。
【0059】
前記芳香族または指環族アクリル系化合物の具体的な例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、2−エチルチオフェニル(メタ)アクリレート、2−エチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、3−フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4−フェニルブチル(メタ)アクリレート、2−2−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−3−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−4−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−1−メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)クリルレート、2−(4−メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうちで好ましくは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを用いるのが望ましい。但し、前記芳香族または指環族アクリル系化合物としては、必ずしもこれらの具体例に制限されるものではない。
【0060】
前記変性アクリル系共重合体は、前記化合物のような芳香族または指環族アクリル系化合物を含むことによって着色性が良好で優れた外観品質を得ることができ、一般アクリル系共重合体と対比して屈折率が増加し、ポリカーボネート樹脂とのブレンド時に優れた相溶性を得ることができる。したがって、前記ポリカーボネート樹脂組成物の着色性および透明性だけでなく、耐スクラッチ性が向上する。
【0061】
前記芳香族または指環族アクリル系化合物と共重合可能な化合物は、単一官能不飽和化合物であり、その具体的な例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのようなアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのようなアルキルアクリレート;アクリル酸、メタクリル酸などのような不飽和カルボン酸;無水マレイン酸などのような酸無水物;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、モノグリセロールアークリールレートなどのようなヒドロキシ基を含有するアクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのようなアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのようなニトリル類;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレンなどのようなスチレン類;またはこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうちで好ましくはアルキルメタクリレートまたはアルキルアクリレートを用いるのが望ましい。但し、前記芳香族または指環族アクリル系化合物と共重合可能な化合物としては、必ずしもこれらの具体例に制限されるものではない。
【0062】
前記変性アクリル系共重合体の具体的な例としては、メチルメタクリレートおよびフェニルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。
【0063】
前記変性アクリル系共重合体は、前記芳香族または指環族アクリル系化合物20質量%〜99.9質量%と、これ(芳香族または指環族アクリル系化合物)と共重合可能な化合物0.1質量%〜80質量%とで共重合がなされているのが望ましく、より好ましくは前記芳香族または指環族アクリル系化合物40質量%〜80質量%と、これと共重合可能な化合物20質量%〜60質量%とで共重合がなされているのが望ましい。前記芳香族または指環族アクリル系化合物と、これと共重合可能な化合物とが前記含有量の比率で共重合される場合には、変性アクリル系共重合体の平均屈折率が1.495以上に維持される。
【0064】
前記変性アクリル系共重合体は、通常の塊状重合、乳化重合、または懸濁重合方法によって重合されているのが望ましい。
【0065】
前記変性アクリル系共重合体は、通常のアクリル系重合体に比べて高い屈折率を有する。すなわち、前記変性アクリル系共重合体は、前記ポリカーボネート樹脂と同じ屈折率を有しているのが望ましく、具体的には1.495〜1.59の屈折率を有しているのが望ましく、より好ましくは1.51〜1.59の屈折率を有しているのが望ましい。変性アクリル系共重合体が増加した屈折率、すなわち前記屈折率の範囲を有する場合には、前記ポリカーボネート樹脂とのブレンド時に優れた相溶性を有することができる。具体的に、前記変性アクリル系共重合体を前記ポリカーボネート樹脂とブレンドする場合、前記変性アクリル系共重合体の増加した屈折率と向上した相溶性によって前記ポリカーボネート樹脂と適切に混練し、これによって従来の混合物において屈折率の差によって発生する透明性および着色性の低下を減少させることができる。したがって、ポリカーボネート樹脂の着色性および透明性だけではなく、耐スクラッチ性を向上することができる。
【0066】
前記変性アクリル系共重合体の重量平均分子量は、5,000g/mol〜100,000g/molであるのが望ましく、好ましくは5,000g/mol〜50,000g/molであるのが望ましく、より好ましくは10,000g/mol〜40,000g/molであるのが望ましい。前記変性アクリル系共重合体が前記範囲の重量平均分子量を有する場合、コンパウンド(compounding)時に炭化または分解が発生せず、前記ポリカーボネート樹脂との優れた相溶性を有し、優れた透明性を確保することができる。
【0067】
前記変性アクリル系共重合体は、前記ポリカーボネート樹脂組成物の総量に対して1質量%〜70質量%で含まれているのが望ましく、より好ましくは4質量%〜50質量%で含まれているのが望ましい。変性アクリル系共重合体が前記含有量の範囲内に含まれる場合には、相溶性、耐衝撃性、および耐スクラッチ性が優れる。
【0068】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体(B)と前記変性アクリル系共重合体(C)は、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体(B):変性アクリル系共重合体(C)=12:88〜99:1の重量比で混合されているのが望ましく、より好ましくは15:85〜90:10の重量比で混合されているのが望ましい。前記重量比の範囲で混合される場合には、耐衝撃性、耐スクラッチ性、透明性、耐熱性、流動性、および着色性に優れた物性バランスを得ることができる。
【0069】
(D)その他の添加剤
一実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、無機物添加剤、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、混和剤、安定剤、滑剤、静電気防止剤、調色剤、防染剤、耐候剤、着色剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、難燃剤、充填剤、核形成剤、接着調剤、粘着剤、またはこれらの組み合わせの添加剤をさらに含んでもよい。
【0070】
前記酸化防止剤としては、フェノール型、ホスファート(phosphite)型、チオエーテル型、またはアミン型酸化防止剤を用いてもよく、前記離型剤としては、フッ素含有重合体、シリコンオイル、ステアリン酸(stearic acid)の金属塩、モンタン酸(montanic acid)の金属塩、モンタン酸エステルワックス、またはポリエチレンワックスを用いてもよい。また、前記耐候剤としてはベンゾフェノン型またはアミン型耐候剤を用いてもよく、前記着色剤としては染料または顔料を用いてもよい。また、前記紫外線遮断剤としては二酸化チタニウム(TiO)またはカーボンブラックを用いてもよく、前記充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、シリカ、マイカ、アルミナ、粘土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはガラスビーズを用いてもよく、前記核形成剤としてはタルクまたはクレイを用いてもよい。
【0071】
前記カーボンブラックは、導電性カーボンブラックであり、その種類に特別に制限はなく、例えば、黒鉛化カーボン、ファーネス(furnace)ブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0072】
前記添加剤は、前記ポリカーボネート樹脂組成物の物性を阻害しない範囲内で適切に含まれていればよく、好ましくは前記ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して40重量部以下で含まれているのが望ましく、より好ましくは0.1〜30重量部で含まれているのが望ましい。
【0073】
上述したポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂組成物を製造する公知の方法によって製造することができる。例えば、一実施形態に係る構成成分とその他の添加剤を同時に混合した後に、押出機内で溶融押出してペレット形態で製造してもよい。
【0074】
また他の一実施形態によれば、上述したポリカーボネート樹脂組成物を成形して製造した成形品を提供する。すなわち、前記ポリカーボネート樹脂組成物を用いて射出成形、ブロー成形、押出成形、熱成形などの多様な工程によって成形品を製造することができる。特に、耐衝撃性、耐スクラッチ性、透明性、および耐熱性がすべて求められる電機電子部品や自動車部品などの成形品に有効に適用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0076】
一実施例に係るポリカーボネート樹脂組成物の製造に用いられる各構成成分は次のとおりである。
【0077】
(A)ポリカーボネート樹脂
(A−1)MFI(310℃、荷重1.2kgf)が8g/10minであるチェイル インダストリーズ インコーポレイテッド社のINFINOポリカーボネートを用いた。このポリカーボネート樹脂(A−1)の繰り返し構造単位は、下記式に示す通りである。
【0078】
【化3】

【0079】
また、上記ポリカーボネート樹脂(A−1)の重量平均分子量は、28,500±2,000g/mol(26,500〜30,500g/mol)である。
【0080】
(A−2)MFI(310℃、荷重1.2kgf)が19g/10minであるチェイル インダストリーズ インコーポレイテッド社のINFINOポリカーボネートを用いた。このポリカーボネート樹脂(A−2)の繰り返し構造単位は、下記式に示す通りである。
【0081】
【化4】

【0082】
また、上記ポリカーボネート樹脂(A−2)の重量平均分子量は、23,000±2,000g/mol(21,000〜25,000g/mol)である。
【0083】
(A’)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂
チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド社のSD−0150を用いた。
【0084】
(B)ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体
IDEMITSU社(出光興産株式会社)のTarflonを用いた。このポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体(B)の重量平均分子量は、23,000±2,000g/mol(21,000〜25,000g/mol)である。このポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体(B)の特定構造(ポリカーボネートブロックとポリシロキサンブロックの各ブロックの繰り返し構造単位)は、下記式に示す通りである。
【0085】
【化5】

【0086】
また、ポリカーボネートブロック及びポリシロキサンブロックの混合重量比は、3:97である。
【0087】
(C)変性アクリル系共重合体
(C−1)重量平均分子量が20,000g/molであり、メチルメタクリレート65重量%およびフェニルメタクリレート35重量%を通常の懸濁重合法によって重合して製造された共重合体を用いた。
【0088】
(C−2)重量平均分子量が40,000g/molであり、メチルメタクリレート65重量%およびフェニルメタクリレート35重量%を通常の懸濁重合法によって重合して製造された共重合体を用いた。
【0089】
(C’)ポリメチルメタクリレート
重量平均分子量90,000g/molであるLGMMA社のL−84(登録商標)を用いた。
【0090】
(D)添加剤
カーボンブラックであり、コリアカーボンブラック社のHi−BLACKを用いた。
【0091】
(E)ゴム
MITSUBISHI RAYON COMPANY(三菱レイヨン株式会社)のメタブレン(商品名)のブタジエン系ゴム(衝撃強度改質剤MBS)タイプの品番C−223Aを用いた。
【0092】
実施例1〜14および比較例1〜8
上述した構成成分を用い、下記表1〜3に示す組成によって各実施例1〜14および比較例1〜8に係るポリカーボネート樹脂組成物を製造した。
【0093】
その製造方法としては、下記表1〜3に示す組成によって各成分を混合して45φ(直径45mmの)二軸押出機で押出した後、1,000℃の除湿乾燥機で4時間乾燥して押出物をペレット形態で製造した。
【0094】
(試験例)
前記製造されたペレットを80℃で4時間乾燥した後、6oz(重量オンス)の射出能力がある射出成形機を用いてシリンダ温度210〜230℃、金型温度100℃、および成形サイクルの時間を30秒に設定し、ASTMダンベル(dumb−bell)試験片で射出成形して物性試片を製造した。前記製造された物性試片は下記の方法によって物性を測定し、その結果を下記表1〜3に示した。
【0095】
1)透過率:2.5T試片を用いてASTM D1003に準じて測定した。
【0096】
2)ヘーズ(Haze):2.5T試片を用いてASTM D1003に準じて測定した。
【0097】
3)鉛筆硬度:23℃、相対湿度50%で48時間放置した後、JIS K5401規格によって鉛筆硬度を測定した。JIS K5401を基準にして23℃で500gの荷重で厚さ3mm、長さ10cm、幅10cmの試片を製造した後、試片表面に5回ずつ加えて擦れ程度を肉眼で観察した。試片表面に鉛筆擦れ表示が2回以上発生したときの鉛筆硬度等級を下記のように分類した。
【0098】
(鉛筆硬度等級)
6B−5B−4B−3B−2B−B−HB−F−H−2H−3H−4H−5H−6H
Softer Harder
4)BSP(Ball type Scratch Profile)幅:Cheil methodに準じて直径0.7mmの先端が円球形状のタングステンカーバイドスタイラス(stylus)を用いて1kgf荷重を付与し、75mm/minの速度で試片にスクラッチを付与した後、表面粗度測定器(surfacepro filer)を用いて照度観測およびスクラッチ幅(scratch width)を測定した。
【0099】
5)FDI(Falling Dart Impact):低温(−30℃)FDI破壊エネルギーとしてASTM D5420に準じて測定し、3.2Tの厚さの正方形の試片に7kgf荷重、1mの高さで錘を落として試片の性状を確認し、破壊時の吸収エネルギーを測定した。
【0100】
6)Unnotched−IZOD衝撃強度:試片厚さ1/8”であり、Unnotched−IZODをASTM D256に準じて測定した。
【0101】
7)熱変形温度:ASTM D648に準じて18.56kgf荷重で測定した。
【0102】
8)MFI(Melt Flow Index):ASTM D1238に準じて250℃、10kgfの荷重で測定した。
【0103】
9)着色性:Cheil methodに準じて射出から製造されたカラーチップ試片を肉眼で確認した。
【0104】
着色性の評価基準は下記の通りである。
【0105】
◎:肉眼で観察した結果、非常に優秀(良好)である。
【0106】
〇:肉眼で観察した結果、優秀(良好)である。
【0107】
×:肉眼で観察した結果、低下している(不良である)。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
図1は、FDI測定後の実施例11に係る試片の「延性変形(Ductile)」状態を示す写真であり、図2はFDI測定後の比較例5に係る試片の「脆性破壊(Brittle)」状態を示す写真である。このとき、図1および図2の写真は100mm×100mmの試片を撮影した写真である。
【0112】
図1および図2を参照すれば、試片に衝撃が加わるときに「延性変形(Ductile)」状態と「脆性破壊(Brittle)」状態とに分かれることが分かり、これから成形品の耐衝撃性を比較することができる。
【0113】
前記表1〜3を参照しながら、一実施形態によってポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体、および変性アクリル系共重合体を用いた実施例1〜14の場合、変性アクリル系共重合体を用いない比較例1および4、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体を用いない比較例2、3、および5、変性アクリル系共重合体とポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体すべてを用いない比較例6および7、そして変性アクリル系共重合体の代わりにポリメチルメタクリレートを用いた比較例8の場合と比較し、透明性、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性、流動性、および着色性に優れた物性バランスを示すことを確認することができる。
【0114】
また、表1において、一定の含有量のポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体を用いながら変性アクリル系共重合体を多様な含有量で用いた実施例1〜5から、変性アクリル系共重合体の含有量の増加によって耐スクラッチ性が改善されることを確認することができる。
【0115】
また、表1、表2および表3において、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体を用いない比較例2、3および5は、耐衝撃性が著しく低下することを確認することができ、変性アクリル系共重合体を用いない比較例1および4は、耐スクラッチ性が著しく低下することを確認することができる。
【0116】
また、表3は、カーボンブラックを用いてカラーが入っている状態における外観の比較を示している。実施例11〜14の場合、優れた着色性によって優れた外観品質を示すが、耐衝撃性の向上のためにそれぞれゴムおよびABS樹脂を用いた比較例6および7とポリメチルメタクリレートを用いた比較例8の場合、外観品質が実施例よりも低くなることを確認することができる。
【0117】
さらに、表3において、粘度が異なるポリカーボネート樹脂2種を混合して用いた実施例12は、透明性、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性などの物性に影響をほとんど与えないことを確認することができ、これから成形品の粘度調節が可能であることが分かる。
【0118】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施できるということを理解することができるであろう。したがって、上述した実施形態はすべての面において例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂5質量%〜89質量%;
(B)ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体10質量%〜94質量%;および
(C)変性アクリル系共重合体1質量%〜70質量%
を含む、ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂のメルトフローインデックス(Melt Flow Index:MFI)は、3〜120g/10minであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体は、ポリカーボネートブロック1〜99質量%およびポリシロキサンブロック1〜99質量%を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記変性アクリル系共重合体は、芳香族または指環族アクリル系化合物と、これと共重合可能な化合物との共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族または指環族アクリル系化合物は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、2−エチルチオフェニル(メタ)アクリレート、2−エチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、3−フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4−フェニルブチル(メタ)アクリレート、2−2−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−3−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−4−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−1−メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせであり、
前記共重合可能な化合物は、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、不飽和カルボン酸、酸無水物、ヒドロキシ基を含有するアクリレート、アミド類、ニトリル類、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、スチレン類、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記変性アクリル系共重合体の重量平均分子量は、5,000〜50,000g/molであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記変性アクリル系共重合体の重量平均分子量は、10,000〜40,000g/molであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体と前記変性アクリル系共重合体の重量比は、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体:変性アクリル系共重合体=12:88〜99:1であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、無機物添加剤、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、混和剤、安定剤、滑剤、静電気防止剤、調色剤、防染剤、耐候剤、着色剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、難燃剤、充填剤、核形成剤、接着調剤、粘着剤、またはこれらの組み合わせの添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造された成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241374(P2011−241374A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288485(P2010−288485)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】