説明

ポリカーボネート樹脂組成物

【課題】ポリカーボネートとポリ乳酸との相溶性を改善し、パール光沢を持たない良好な外観を有し、かつ耐衝撃性を損なわずに外観と流動性を改良したポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート(A)と、ポリ乳酸(B)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)及びポリアルキレンエーテル構造単位(II)を必須成分として有するブロック共重合体(C)とを含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸を含有するポリカーボネート樹脂組成物に関し、さらに詳しくはポリ乳酸とポリカーボネートとの相溶性不良を特定のブロック共重合体を用いることにより改善し、流動性及び耐衝撃性を向上させたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れたエンジニアリングプラスチックとしてあらゆる分野に広く使用されている。また、環境負荷の低減の観点から植物由来のポリヒドロキシカルボン酸であるポリ乳酸を用いた流動性良好なポリカーボネート/ポリ乳酸アロイが知られている。しかし、単純なポリカーボネート/ポリ乳酸アロイは、ポリカーボネートとポリ乳酸との相溶性が低いことから、外観不良を生じ、さらには耐熱性、熱安定性、耐衝撃性等が不十分なため、改良が必要とされている。
【0003】
ポリカーボネートとポリ乳酸からなる樹脂組成物は、外観がパール光沢となる特徴を有するが(例えば、特許文献1参照。)、パール光沢を有すると筐体等の着色された成形品へ応用した場合、安定した着色ができず、色ムラの原因となる問題があった。また、ポリカーボネートとポリ乳酸をラジカル開始剤により反応相溶化させ、耐熱性を向上させた樹脂組成物が知られているが(例えば、特許文献2参照。)、芳香族ポリカーボネートではなく脂肪族ポリエステルカーボネートを用いているため、汎用の芳香族ポリカーボネート系に比べて耐熱性、耐衝撃性が不十分であった。
【0004】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体を第3成分として添加する技術も報告されているが(例えば、特許文献3参照。)、耐衝撃性は改善されるものの、外観不良を十分に改善できない問題があった。活性水素と反応する官能基を有する化合物の添加による改善も報告されているが(例えば、特許文献4参照。)、十分な効果は得られていない。カプロラクトンとポリ乳酸のブロック共重合体を用いて、ポリ乳酸ドメインの微細化を図る試みもなされているが(例えば、特許文献5参照。)、外観不良を十分に改善できない問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−109413号公報
【特許文献2】特開2002−371172号公報
【特許文献3】特開2007−131795号公報
【特許文献4】特開2006−241209号公報
【特許文献5】特開2007−138131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ポリカーボネートとポリ乳酸との相溶性を改善し、パール光沢を持たない良好な外観を有し、かつ耐衝撃性を損なわずに外観と流動性を改良したポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位及びポリアルキレンエーテル構造単位を必須成分として有するブロック共重合体を用いることにより、上記の本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート(A)と、ポリ乳酸(B)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)及びポリアルキレンエーテル構造単位(II)を必須成分として有するブロック共重合体(C)とを含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、前記ブロック共重合体(C)の製造方法、さらには、前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形した樹脂成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリカーボネートとポリ乳酸との相溶性を改善し、パール光沢を持たない良好な外観を有し、かつ耐衝撃性を損なわずに流動性を改良したポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。したがって、本発明によって得られるポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、OA機器部品や電動工具部品などの各種成形品に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いるポリカーボネート(A)は、例えば、2価のフェノールとハロゲン化カルボニルとを界面重縮合させる方法や、2価のフェノールと炭酸ジエステルとを溶融重合法(エステル交換法)させる方法等によって製造したものを用いることができる。
【0011】
前記2価のフェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、広く市販されているビスフェノールA等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系の化合物を主原料として用いることが好ましく、ビスフェノールA等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系の化合物を主原料として用いたポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形物は耐衝撃性に優れる。
【0012】
前記ハロゲン化カルボニルとしては、例えば、一般にホスゲンといわれる塩化カルボニルや、臭化カルボニル及びこれらの混合物等を用いることができる。
【0013】
また、前記炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ビス(メチルフェニル)カーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート及びこれらの混合物等を用いることができる。
【0014】
前記2価のフェノールとハロゲン化カルボニルとを界面重縮合させる方法は、例えば、一般にホスゲン法といわれるものであって、具体的には前記2価のフェノールの分散した水酸化ナトリウム水溶液と、ハロゲンカルボニルの溶解した塩化メチレン溶液とを混合、撹拌し界面重縮合させる方法である。
【0015】
前記2価のフェノールと炭酸ジエステルとを溶融重合法(エステル交換法)させる方法は、例えば、前記2価のフェノールと炭酸ジエステルとを加熱溶融し、脱フェノール反応によりエステル交換反応を進行させ重縮合させる方法である。
【0016】
前記ポリカーボネート(A)の製造方法としては、前記した各種の製造方法のうち前記2価のフェノールとハロゲン化カルボニルとを界面重縮合させる方法が、フェノール類等の低分子量副生成物の含有量が少ないことから好ましい。また、この方法によって得られたポリカーボネート(A)は、成形後に高い耐衝撃性を発現することができる。
【0017】
前記ポリカーボネート(A)としては、重量平均分子量(なお、以下に記載される重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC法」という。)により測定されたスチレン換算による値である。)が、15,000〜60,000の範囲を有するものを用いることで、得られる成形品の機械的強度、耐衝撃性、組成物流動性のバランスに優れることから好ましく、25,000〜45,000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用すれば、さらに優れた機械的物性と組成物流動性とバランスが得られることから好ましい。
【0018】
このようなポリカーボネートの分子量の調節には、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0019】
本発明で用いるポリ乳酸(B)としては、例えば、L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、D,L−ポリ乳酸、L−ポリ乳酸とD−ポリ乳酸の混合物からなるステレオコンプレックス系ポリ乳酸及びこれらの混合物等を好ましく用いることができる。
【0020】
前記D,L−ポリ乳酸は、L−乳酸又はL−ラクタイドと、D−乳酸又はD−ラクタイドとの共重合体であって、特にL−乳酸又はL−ラクタイド由来の構造単位の割合又はD−乳酸もしくはD−ラクタイド由来の構造単位の割合が90質量%以上であるものを用いることが好ましく、95質量%以上であるものを用いることがより好ましい。かかるD,L−ポリ乳酸を用いることによって、耐熱性、及び成形加工性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
前記D,L−ポリ乳酸を構成するL体及びD体の割合(光学異性比率)は、それを加水分解して得られた乳酸を、光学異性体分離カラムを備えた高性能液体クロマトグラフィーを用いて、L―乳酸とD−乳酸とに分離した後、それらを定量することにより決定できる。前記加水分解の方法としては、例えば、D,L−ポリ乳酸と水酸化ナトリウム/メタノール混合溶液とを、例えば65℃に設定した水浴浸とう器を用いて混合する方法が挙げられる。高性能液体クロマトグラフィーを用いた定量の際には、予め希塩酸溶液等を用いて中和したものを用いることが好ましい。
【0022】
また、前記ポリ乳酸としては、良好な成形加工性や機械的特性を維持する観点から、分子量は、GPC法による標準ポリスチレン換算で、質量平均分子量が50,000〜400,000の範囲であるものを用いることが好ましく、質量平均分子量が100,000〜400,000の範囲であるものを用いることがより好ましい。
【0023】
前記GPC法は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8220」)を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM−Mを2本、及びTSK gel SuperHZ−2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、展開溶媒として、テトラヒドロフランを用いて測定することができる。
【0024】
前記ポリ乳酸は、例えば、乳酸の縮合重合法や、乳酸の環状2量体であるラクタイドの開環重合法等で製造することができる。乳酸の重縮合反応は、乳酸の有するカルボキシル基及び水酸基をエステル化反応させる方法であり、例えば、L−乳酸もしくはD−乳酸又はこれらの混合物を高沸点溶媒存在下、減圧下で共沸脱水させる方法が挙げられる。また、前記ラクタイドを用いた開環重合法とは、開環したラクタイド同士をエステル化反応する方法であり、例えば重合調節剤、及び重合触媒の存在下でL−ラクタイド又はD−ラクタイドを開環させる方法が挙げられる。さらに、L−乳酸とD−乳酸の2量体であるD,L−ラクタイドを本発明の目的を達成する範囲内で併用してもよい。
【0025】
また、本発明によれば、強度、靭性を有するポリグリコール酸、柔軟性を有するポリカプロラクトン、植物度が高いポリヒドロキシブチレート及びポリヒドロキシバリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のヒドロキシカルボン酸誘導重合体も好ましく用いることができる。例えば、前記ヒドロキシカルボン酸誘導重合体の例としては、ポリグリコール酸とポリ乳酸との重合体や、ポリグリコール酸とポリカプロラクトンとの重合体である。ここで、前記植物度とは、製品、商品、プラスチックに占める植物由来原料の質量%(体積%を明示する場合もある。)をいう。例えば、植物度100%であれば、植物由来原料からのみ生産されたプラスチックであることを意味する。
【0026】
本発明に用いるブロック共重合体(C)は、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)及びポリアルキレンエーテル構造単位(II)を有するものである。
【0027】
より具体的には、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)をXとし、ポリアルキレンエーテル構造単位(II)をYとしたときのブロック共重合体(C)の形態は、XY型ブロック共重合体、XYX型ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、及びこれらの混合物等が挙げられる。また、ブロック共重合体(C)の特性を損なわなければ、これらに未共重合物としてポリヒドロキシカルボン酸やポリアルキレンエーテルなどを含んでいてもよい。
【0028】
さらに、本発明で用いるブロック共重合体(C)は、上記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)と、ポリアルキレンエーテル構造単位(II)に加えてカルボジイミド構造単位(III)を有するものである。カルボジイミド構造単位(III)を有するものは、エステル結合の加水分解による性能劣化を防ぐのに有効である。
【0029】
すなわち、本発明ではポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)とポリアルキレンエーテル構造単位(II)からなる共重合体をポリカーボネート(A)とポリ乳酸(B)に添加することで目的とする相溶性を改善し、パール光沢を持たない良好な外観を有し、かつ耐衝撃性を損なわずに流動性を改良できるが、さらにポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)とポリアルキレンエーテル構造単位(II)に加えてカルボジイミド構造単位(III)を導入した共重合体を用いても同様の効果が得られる。
【0030】
前記ブロック共重合体(C)にカルボジイミド構造単位(III)を導入することにより、カルボジイミド化合物を単に添加するより、耐加水分解性が改良されることが期待される。ここで、ポリカーボネートと比較して耐加水分解性に劣ると考えられる前記ブロック共重合体(C)の加水分解性を改良するには、前記ブロック共重合体(C)の近傍にカルボジイミド化合物が存在する必要があるが、カルボジイミド化合物を単に添加した場合、前記ブロック共重合体(C)の近傍にカルボジイミド化合物が確実に存在する形態にはできない。そこで、前記ブロック共重合体(C)に予めカルボジイミド構造単位(III)を導入することにより、前記ブロック共重合体(C)の近傍にカルボジイミド化合物が存在する状態と同様の形態を構築することができる。
【0031】
さらに、具体的には、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)をXとし、ポリアルキレンエーテル構造単位(II)をYとし、カルボジイミド構造単位(III)をZとしたときのブロック共重合体(C)の形態は、ブロック共重合体(C)を製造する際に用いる原料の仕込み比率及び分子量により異なるが、前者の二つで形成されたXY型ブロック共重合体、XYX型ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体がZで鎖伸長された構造、もしくはYをZで鎖伸長された構造物とXとがブロック又はランダムに共重合化された構造、及びこれらの混合物等が挙げられる。また、ブロック共重合体(C)の特性を損なわなければ、これらに未共重合物としてポリヒドロキシカルボン酸やポリアルキレンエーテルなどを含んでいてもよい。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート(A)とポリ乳酸(B)の配合割合は特に限定されるものではないが、石油由来であるポリカーボネート(A)の環境負荷を低減することを目的とする場合、植物物由来であるポリ乳酸を可能な限り多く用いることが望ましい。また、日本バイオプラスチック協会(JBPA)の「バイオマスプラ」の登録基準を満たすためには、ポリカーボネート樹脂組成物中に25質量%以上のポリ乳酸を含有させるのが望ましい。
【0033】
ポリ乳酸(B)と前記ブロック共重合体(C)との配合割合は、ポリ乳酸(B)/前記ブロック共重合体(C)が質量基準で、99/1〜50/50の範囲であることが好ましく、95/5〜50/50の範囲がより好ましい。この範囲であれば、ポリカーボネート(A)とポリ乳酸(B)との相溶性が改善し、ポリカーボネート(A)中にポリ乳酸(B)が良好に分散する。
【0034】
前記ブロック共重合体(C)は、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)とポリアルキレンエーテル構造単位(II)との質量割合[(I)/(II)]が、95/5〜10/90の範囲であることが好ましく、85/15〜20/80の範囲であることがより好ましく、75/25〜30/70の範囲であることが特に好ましい。ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(II)が多い場合は、得られたブロック共重合体のペレット化が容易となり作業性が良好となる。
【0035】
また、ブロック共重合体(C)のGPC法での重量平均分子量は、相溶化剤としての効果、経時的な樹脂成形品表面への染み出し(ブリード)の防止等の性能を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、1,000〜400,000の範囲であることが好ましく、5,000〜400,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜350,000の範囲であることがより好ましく、15,000〜300,000の範囲であることが特に好ましい。
【0036】
前記ブロック共重合体(C)中のポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)とポリアルキレンエーテル構造単位(II)との合計量とカルボジイミド構造単位(III)との割合[(I)+(II)]/(III)は、質量基準で95/5〜99.9/0.1の範囲が好ましい。この範囲であれば、ブロック共重合体(C)のブロック共重合化での鎖伸長反応を促進することができ、ブロック共重合体(C)の加水分解による本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐久性の低下を抑制することができる。
【0037】
ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)を構成するポリヒドロキシカルボン酸(I’)としては、分子内に水酸基を有する脂肪族カルボン酸類の繰り返し単位からなるものであればよく、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0038】
前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)としては、本発明の特性を発揮させるにはポリ乳酸を主成分として用いることが好ましい。すなわち、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)中に含まれるポリ乳酸の含有量が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、100質量%用いることが最も好ましい。
【0039】
また、前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)としては、ポリ乳酸のように繰り返し単位中に不斉炭素原子を有するもの場合、L体、D体、L体とD体の混合物(混合比率は特に限定しない。)、ラセミ体の何れも用いることができる。本発明において「ポリ乳酸」とは、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)やこれらの混合物をいう。
【0040】
前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)をポリ乳酸とした場合には、前記ポリ乳酸(B)とステレオコンプレックスを形成させるため、前記ポリ乳酸(B)の構造単位がL−乳酸の場合は、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)をポリ(D−乳酸)とし、前記ポリ乳酸(B)の構造単位がD−乳酸の場合は、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)をポリ(L−乳酸)とすることにより、ステレオコンプレックスが形成され、本発明のポリカーボネート樹脂組成物が、高融点となり、耐熱性、機械的物性等が向上するので好ましい。
【0041】
また、本発明で用いるポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)の分子量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に問わない。ただし、得られるブロック共重合体(C)がポリカーボネートに優れた溶融成形性、耐衝撃性などの特性を付与することができるという観点から、GPC法による重量平均分子量が、500〜400,000の範囲であることが好ましく、5,000〜400,000の範囲であることがよりに好ましく、10,000〜400,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜300,000の範囲であることが特に好ましく、15,000〜250,000の範囲であることが最も好ましい。
【0042】
ブロック共重合体(C)のポリアルキレンエーテル構造単位(II)を形成するポリアルキレンエーテル(II’)はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンジオール、ポリエチレンオキサイド等やこれら2種以上からなる共重合物又は混合物等を挙げることができる。
【0043】
本発明で使用するポリアルキレンエーテル(II’)のGPC法での重量平均分子量は、500〜50,000の範囲であることが好ましく、1,000〜40,000の範囲であることがより好ましく、2,000〜30,000の範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
前記ブロック共重合体(C)の製造方法としては、例えば、以下の方法1〜3が挙げられる。なお、ブロック共重合体(C)の原料であるポリヒドロキシカルボン酸(I’)及びポリアルキレンエーテル(II’)は、未反応で残留しても構わない。
【0045】
(方法1)
前記ポリアルキレンエーテル(II’)と前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とをエステル化触媒の存在下、減圧条件でエステル化反応させる製造方法。
【0046】
(方法2)
前記ポリアルキレンエーテル(II’)及びラクトンを、開環重合触媒の存在下にて反応させる製造方法。
【0047】
(方法3)
前記ポリアルキレンエーテル(II’)とポリヒドロキシカルボン酸(I’)とをエステル化触媒を用いて、高沸点溶媒の共存下、減圧条件で共沸脱水重縮合反応させる製造方法。
【0048】
方法1では、例えば、前記ブロック共重合体(C)は、ポリアルキレンエーテル(II’)と、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とを、エステル化触媒の存在下、減圧条件でエステル化反応させて得られた反応物を回転型レオメーターを用いて、周波数1Hz、温度が該反応物の融点〜融点+50℃の範囲内の測定条件で、歪みを1〜60%まで変化させた時、歪みM%(1<M≦60)の貯蔵弾性率G’(M%)が歪み1%の貯蔵弾性率G’(1%)の90〜100%の範囲となる時点まで当該エステル化反応を継続させることにより製造することができる。
【0049】
方法1での反応温度は、170〜220℃の範囲であることが好ましく、180〜210℃の範囲であることがより好ましい。この範囲の温度で反応することによって、得られるブロック共重合体(C)の分子量の低下を抑制することが可能である。
【0050】
また、方法1での減圧度は、高真空であるほど、重合反応が速やかに進行するので好ましい。具体的には、2kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましく、0.5kPa以下が特に好ましい。
【0051】
前記エステル化触媒の種類は、後述するポリエステルを製造する際に用いることができるものとして例示したエステル化触媒と同様のものを用いることができる。
【0052】
また、水分の存在は、得られるブロック共重合体(C)の分子量を低下させるため、特に、前記ポリアルキレンエーテル(II’)は、反応前に十分に乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0053】
上記エステル化触媒の使用量は、ポリアルキレンエーテル(II’)とポリヒドロキシカルボン酸(I’)との合計量に対して50〜500ppmの範囲が好ましく、50〜300ppmの範囲がより好ましく、50〜200ppmの範囲が特に好ましい。触媒の使用量がこの範囲であれば、反応中に生じるポリヒドロキシカルボン酸(I’)のポリマー鎖の切断が抑えられるため、ブロック共重合体(C)の分子量低下が抑制され、良好な色相のものが得られる。
【0054】
方法2の前記ポリアルキレンエーテル(II’)及びラクトンを、開環重合触媒の存在下で反応させ前記ブロック共重合体(C)を製造する方法としては、例えば、所定温度に設定した反応釜中に、前記ポリエステル(II’)と前記ラクトンとを適当な良溶媒中に分散、均一化し、次いで、開環重合触媒を添加して反応させる。
【0055】
前記ラクトンとしては、例えば、ラクチド、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0056】
反応温度としては、反応が実質的に進行すればよく、得られるブロック共重合体(C)の着色及び熱分解を防止する観点から、150〜220℃の範囲であることが好ましく、160〜210℃の範囲であることがより好ましく、170〜200℃の範囲であることが特に好ましい。
【0057】
また、方法2では、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、反応系中の水分は、一般に得られるブロック共重合体(C)の分子量を低下させるため、特に前記ポリアルキレンエーテル(II’)は、反応前に十分に乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0058】
前記開環重合触媒としては、例えば、Sn、Ti、Zr、Zn、Ge、Co、Fe、Al、Mn、Hf等のアルコキサイドなどが挙げられる。これらの中でも、錫粉末、オクタン酸錫、2−エチルヘキシル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)エトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムアセチルアセトナートは、反応に対する活性作用が高い重合触媒のため好ましい。
【0059】
方法3の前記ポリアルキレンエーテル(II’)とポリヒドロキシカルボン酸(I’)とを高沸点溶媒及びエステル交換触媒の存在下、高減圧下で共沸脱水重縮合反応する方法において、用いる高沸点溶媒としては、例えば、キシレン、アニソール、ジフェニルエーテル等が挙げられる。また、減圧度は、高沸点溶媒が反応系内を還流させるため、1,000〜3,000Paの範囲であることが好ましい。なお、減圧下で反応させる場合には、前記高沸点溶媒が還流するような装置を用いることが好ましい。
【0060】
また、方法3においても、水分の存在は、得られるブロック共重合体(C)の分子量を低下させるため、特に、前記ポリアルキレンエーテル(II’)は、反応前に十分に乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0061】
前記ブロック共重合体(C)を製造する方法としては、上記の方法1〜3が挙げられるが、これらの中でも、溶媒を除去する必要のない方法1及び2が好ましい。
【0062】
また、前記ブロック共重合体(C)は、例えば、ポリオール、酸無水物、多価イソシアネート、エポキシ化合物、過酸化物等を用いることにより、その化学構造を分岐状にして高分子量化してもよい。
【0063】
前記ブロック共重合体(C)は、その製造後に適当な溶媒を用いて、製造する際に用いたエステル化触媒や開環重合触媒等を抽出除去したり、キレート化剤を用いてエステル化触媒や開環重合触媒を失活させたりすることにより、その保存安定性をさらに向上させることができる。
【0064】
方法1においては、原料である前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)及び前記ポリアルキレンエーテル(II’)の本来の分子量を変化させずにエステル化反応させるため、それぞれの原料の製造時に使用された重合触媒を失活させておくことが好ましい。
【0065】
また、前記ブロック共重合体(C)の具体的な製造方法として、以下の方法が挙げられる。
【0066】
原料であるポリヒドロキシカルボン酸(I’)と、ポリアルキレンエーテル(II’)とを反応器に供給し、不活性ガス雰囲気下で150〜230℃の温度条件で溶融させる。この範囲の温度であれば、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)が溶融しやすくなり、かつ原料が熱分解しにくくなる。また、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)に関しては、予め十分に乾燥することが好ましく、これにより溶融時の加水分解による粘度の低下、ブロック共重合体の着色が起こらず、優れた溶融混合物となる。
【0067】
また、反応器は、高真空かつバッチ式又は連続式に対応した縦型又は横型タンク式リアクターが好ましい。反応器に用いる翼は特に限定されないが、製造されるブロック共重合体の粘性又は分子量に応じて適宜選択すればよい。翼の形状としては、縦型反応器の翼としては、例えば、パドル型、アンカー型、ヘリカル型、大型翼等が挙げられ、横型反応器の翼としては、例えば、格子型、メガネ型、リブ型等が挙げられる。また、1つの反応器でポリアルキレンエーテル(II’)の製造、その後にブロック共重合体の製造を行う場合、低粘度から高粘度領域に対応した、表面更新性が優れた翼が好ましい。
【0068】
ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とポリアルキレンエーテル(II’)との溶融方法は、特に限定されないが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で両者を同時に反応器に供給してもよいし、ポリアルキレンエーテル(II’)が液状の場合、予めポリアルキレンエーテル(II’)を反応器に仕込み、その後、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)を反応器へ添加しても、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とポリアルキレンエーテル(II’)とを押出し機等を用いて溶融させてから反応器に添加してもよい。
【0069】
ここで、本発明でいうエステル化反応とは、カルボキシル基と水酸基の脱水によりエステルを得る反応のほか、エステルにアルコール、酸又は他のエステルを作用させて酸基又はアルキル基の交換を生じさせ、別種のエステルを生成させるエステル交換反応等を含むものである。
【0070】
上記の製造方法により得られるブロック共重合体(C)において、従来公知の方法で残留するモノマーを除去すれば、得られたブロック共重合体の保存安定性をさらに向上させることができる。残留するモノマーの除去方法としては、例えば、触媒失活処理後に減圧により除去する方法等が挙げられる。
【0071】
また、エステル化触媒の除去方法としては、例えば、溶媒としてメタノール/塩酸水溶液、アセトン/塩酸水溶液、又はこれらの混合溶媒に、ブロック共重合体を浸漬させ、エステル化触媒を溶媒中に抽出する方法、ブロック共重合体を溶融状態で、前記溶媒に投入して、ブロック共重合体を沈殿させながら洗浄する方法等が挙げられる。このような方法により、微量な残留モノマーや、オリゴマーなども同時に洗浄除去できる。
【0072】
前記ブロック共重合体(C)の構造中に、カルボジイミド構造単位(III)を導入するのに用いる化合物(III’)は、カルボジイミド基を少なくとも1つ有する化合物である。また、前記化合物(III’)は、前記ポリアルキレンエーテル(II’)が有する水酸基と反応する官能基として、イソシアネート基、エポキシ基等の官能基を有していることが好ましい。
【0073】
前記化合物(III’)としては、ポリカルボジイミドが好ましい。このポリカルボジイミドは、前記ポリアルキレンエーテル(II’)が有する水酸基又と反応する官能基として、イソシアネート基、エポキシ基等の官能基を有していることが好ましいが、カルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドであれば、カルボジイミド基の一部が前記ポリアルキレンエーテル(II’)の水酸基又と反応するため、必ずしもイソシアネート基、エポキシ基等の官能基を有していなくてもよい。この場合、ポリカルボジイミドのカルボジイミド基が、前記ポリアルキレンエーテル(II’)の水酸基と反応しても、他のカルボジイミド基が残るため、結果として前記ブロック共重合体(C)の構造中に、カルボジイミド構造単位(III)を導入することができる。
【0074】
前記ポリカルボジイミドは、例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用い、各種ポリイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応に付することにより合成することができるものが挙げられる。これらの化合物には、イソシアネート基が残っていてもよい。
【0075】
前記ポリカルボジイミドとしては、例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環式ポリカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの中でも、良好な耐加水分解性を得られることから、芳香族ポリカルボジイミド又は脂環式ポリカルボジイミドが好ましい。
【0076】
前記ブロック共重合体(C)の構造中に、カルボジイミド構造単位(III)を導入する方法としては、例えば、以下の方法A〜Dが挙げられる。
【0077】
(方法A)
前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とブロック共重合する前に、前記ポリアルキレンエーテル(II’)と前記化合物(III’)とを反応させ、前記ポリアルキレンエーテル(II’)に鎖伸長によりカルボジイミド構造単位(III)を導入した後、ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とブロック共重合させる方法。
【0078】
(方法B)
前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)と、前記ポリアルキレンエーテル(II’)との溶融混合物を、エステル化触媒の存在下、減圧条件にてエステル化反応させてブロック共重合した後、前記化合物(III’)を反応させ、鎖伸長によりカルボジイミド構造単位(III)を導入する方法。
【0079】
(方法C)
前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)の代わりにそのモノマーとしてラクトンを用いて、前記ポリアルキレンエーテル(II’)の末端から開環反応にてポリヒドロキシカルボン酸(I’)セグメントを形成させた後、前記化合物(III’)を反応させて、鎖伸長によりカルボジイミド構造単位(III)を導入する方法。
【0080】
(方法D)
前記化合物(III’)の存在下で、前記ポリヒドロキシカルボン酸(I’)とポリアルキレンエーテル(II’)とを反応させる方法。
【0081】
また、前記ブロック共重合体(C)の構造中に、カルボジイミド構造単位(III)を導入する際に、上記の方法A〜Dを2種以上組み合わせてもよい。
【0082】
さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、前記ブロック共重合体(C)として、ブロック共重合体(C)の構造中のポリアルキレンエーテル構造単位(II)の一部をその他の構造単位に置き換えたブロック共重合体を用いてもよい。
【0083】
前記のその他の構造単位としては、例えば、ポリエステル構造単位(IV)が挙げられる。このポリエステル構造単位(IV)を導入する場合に用いるポリエステル(IV’)としては、例えば、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させて得られるポリエステル、ラクトンの開環重縮合から得られるポリエステル等が挙げられる。
【0084】
また、前記ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させて得られるポリエステルは、ジオール、ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸を反応させたものであっても構わない。
【0085】
前記ポリエステル(IV’)は、結晶性であっても非結晶性であってもよいが、透明性、成形加工性に優れたフィルム又はシートを得るためには、非結晶性のポリエステルを用いることが好ましい。ここで、本発明でいう「結晶性のポリエステル」、及び「非結晶性のポリエステル」とは、融点の有無で定義する。具体的には、「非結晶性のポリエステル」とは、融解熱量が0kJ/kgであるポリエステルを指す。また、前記融点は、標準状態で状態調節を行ったポリエステルのフィルム片約10mgを、JIS−K7122に準じて、TAインスツメンタル社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」を用いて、窒素ガス流量50ml/分、昇温速度10℃/分で−100℃から210℃までの測定を行うことによって求めることができる。前記測定温度範囲内に、吸熱ピークが存在しないポリエステル(IV’)は、非結晶性ポリエステルということができる。
【0086】
また、前記ポリエステル(IV’)としては、10以下の酸価を有するものが好ましく、8以下であることがより好ましく、0.1〜5の範囲であることが特に好ましい。この範囲の酸価を有するポリエステルを用いると、前記ブロック共重合体(C)を製造する際の反応の転化率の向上により未反応物を抑制でき、かつゲル化しにくい成形加工性に優れたブロック共重合体(C)を得ることができる。
【0087】
さらに、前記ポリエステル(IV’)としては、ジオール由来の構造単位と、ジカルボン酸由来の構造単位とが、不規則に配列した、いわゆるランダム共重合体であるものを用いると、副生成物生成を抑制でき、かつポリエステルを高分子量化できることから好ましい。
【0088】
前記ポリエステル(IV’)は、GPC法による重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲であることが好ましく、5000〜200,000の範囲であることがより好ましく、5000〜200,000の範囲であることが特に好ましい。この範囲の重量平均分子量を有するポリエステル由来のポリエステル構造単位を有するブロック共重合体は、ポリカーボネートと混合した場合、耐衝撃性及び流動性が向上できる利点がある。
【0089】
前記ポリエステル(IV’)を製造する際に用いるジオールとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオールを用いることが好ましい。
【0090】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、ダイマー酸ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、キシリレングリコール、フェニルエチレングリコール等を用いることができる。
【0091】
上記の芳香族ジオールとしてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物などを用いることもできる。また、脂環式ジオールとしてシクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAが挙げられる。
【0092】
上記のジオールは、単独で用いることもできるが、2種類以上を併用することもできる。例えば、1,2−プロパンジオールとポリエチレングリコールとの併用、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールとの併用などが挙げられる。
上記の
【0093】
前記ポリエステル(IV’)を製造する際に用いるジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や、フマル酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸や、無水コハク酸、無水アジピン酸や、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0094】
前記ジカルボン酸としては、得られるブロック共重合体の性能、具体的にはポリカーボネート組成物に優れた耐衝撃性や流動性を付与可能であることから、アジピン酸、セバシン酸もしくはこれらの無水物、又はこれらのエステル化物を用いることが好ましい。
【0095】
また、前記ポリエステル(IV’)を製造する際に本発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシカルボン酸を用いることが可能である。このヒドロキシカルボン酸としては、1分子中に水酸基及びカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p―ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。光学異性体が存在するヒドロキシカルボン酸を用いる場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれも用いることができる。また、前記ヒドロキシカルボン酸は、固体であっても液体であってもよく、水溶液で用いてもよい。
【0096】
前記ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸又はグリコール酸を用いることが、入手が容易であること、前記ポリエステル(IV’)を製造する際の反応制御が容易であること、ポリエステルの2量体や3量体等の副生成物の発生を大幅に抑制できることなどから好ましい。また、前記ヒドロキシカルボン酸を用いることにより、得られるポリエステルの分子量を比較的高分子量に調整することが容易である。
【0097】
前記ポリエステル(IV’)の製造方法は、特に限定されず、例えば、前記ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸とを、必要に応じてエステル化触媒を用いて、公知慣用のエステル化反応によってエステル化させることにより製造することができる。その際、ポリエステル(IV’)の着色を抑制するため、亜リン酸エステル化合物等の酸化防止剤を、前記ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸との合計量に対し、10〜2000ppmの範囲で用いることが好ましい。
【0098】
前記ヒドロキシカルボン酸は、ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物と、ヒドロキシカルボン酸とを一括混合してエステル化反応させてもよいが、ジオールと、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステル化物とを予め反応させた後に、ヒドロキシカルボン酸を混合しエステル化反応させてもよい。
【0099】
前記のジオールとジカルボン酸との組み合わせは、特に限定されるものではないが、炭素原子数が3〜8のジオールと、炭素原子数が4〜12のジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
【0100】
前記エステル化触媒としては、周期律表2族、3族、及び4族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属又はそれらの金属化合物からなるものを用いることが好ましい。前記金属としては、例えば、Ti、Sn、Zn、Al、Zr、Mg、Hf、Ge等の金属が挙げられる。また、前記金属化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等が挙げられる。
【0101】
前記エステル化触媒の使用量は、通常、反応が制御でき、かつ良好な品質が得られる量であればよく、一般的にジオール、ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の合計量に対し、10〜1000ppmの範囲であることが好ましく、20〜800ppmの範囲であることがより好ましく、ポリエステル(IV’)の着色を低減する観点から、30〜500ppmの範囲が特に好ましい。
【0102】
前記エステル化触媒は、ジオール、ジカルボン酸等の原料を仕込む際に添加しておいても、反応系内を減圧する前に添加してもよい。
【0103】
また、前記エステル化触媒は、前記ポリエステル(IV’)の製造後に、公知慣用の方法で失活させることが、後述するポリ乳酸やラクトンとの反応の際にこれらとの溶融混合時に副反応を抑制できることから好ましい。エステル化触媒の失活方法としては、例えばキレート化剤を用いる方法がある。
【0104】
前記キレート化剤としては、公知慣用の有機系キレート化剤又は無機系キレート化剤を用いることができる。有機系キレート化剤としては、例えば、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子として窒素原子を有するフェノール類やカルボン酸等が挙げられる。また、無機キレート化剤としては、例えば、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物が挙げられる。
【0105】
また、エステル化触媒の失活剤の添加前後にポリエステル(IV’)に、酸無水物、多価イソシアネート、過酸化物等を反応させてポリエステルの化学構造を分岐状にして、さらに高分子量化したポリエステルとすることもできる。さらに、前述したカルボジイミド基を少なくとも1つ有する化合物(III’)をこの段階で反応させてもよい。
【0106】
前記ポリエステル(IV’)を製造する際の温度は、150〜260℃の範囲であることが好ましく、180〜230℃の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステル(IV’)を製造する際の重合時間は2時間以上であることが好ましく、4〜60時間の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステル(IV’)を製造する際の減圧度は、1.33kPa以下であることが好ましく、0.26kPa以下であることがより好ましい。
【0107】
なお、前記ポリエステル(IV’)を用いて、ブロック共重合体(C)を製造する場合、前記の方法(1)〜(3)と同様の方法で行いことができる。
【0108】
前記ポリエステル構造単位(IV)のブロック共重合体(C)中に占める割合は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されるものではない。また、ブロック共重合体(C)中のポリアルキレンエーテル構造単位(II)をすべてポリエステル構造単位(IV)に置き換えたポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)及びポリエステル構造単位(IV)を有するブロック共重合体(D)を、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート(A)、ポリ乳酸(B)及び前記ブロック共重合体(C)以外の成分として配合しても構わない。
【0109】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤、その他の合成樹脂、エラストマー等を、本発明の目的を阻害しない範囲で配合することができる。
【0110】
前記添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系(亜リン酸エステル系、リン酸エステル系等)、アミン系等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;脂肪族カルボン酸エステル系、パラフィン系、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス等の内部滑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、各種の有機フィラー、無機充填剤、ブロッキング防止剤、各種カップリング剤、界面活性剤、着色剤、発泡剤、天然材料などが挙げられる。
【0111】
前記その他の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート等の合成樹脂が挙げられる。また、前記エラストマーとしては、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマー等が挙げられる。
【0112】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に無機充填剤を配合すると、機械的強度、寸法安定性等が向上するため好ましい。また、増量を目的で、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に無機充填剤を配合してよい。
【0113】
前記無機充填剤としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウムニウム、硫酸アンチモン、硫酸エステル、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム等の硫酸金属化合物;酸化チタン等のチタン化合物;炭酸カリウム等の炭酸塩化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化金属化合物;合成シリカ、天然シリカ等のシリカ系化合物;アルミン酸カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂;硝酸ナトリウム等の硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物及びその変性物;二酸化珪素及び酸化アルミニウムニウムの複合体微粒子などが挙げられる。
【0114】
また、上記以外の無機充填剤として、例えば、チタン酸カリウムウイスカー、鉱物繊維(ロックウール等)、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維(ステンレス繊維等)、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、ボロン繊維、テトラポット状酸化亜鉛ウイスカー、タルク、クレー、カオリンクレー、天然マイカ、合成マイカ、パールマイカ、アルミ箔、アルミナ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、黒鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アスベスト、石英粉等を挙げられる。
【0115】
これらの無機充填剤は、無処理であっても、予め化学的又は物理的表面処理を施してもよい。その表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤系、高級脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、不飽和有機酸系、有機チタネート系、樹脂酸系、ポリエチレングリコール系等が挙げられる。
【0116】
前記難燃剤としては、例えば、ホウ酸系難燃化合物、リン系難燃化合物、窒素系難燃化合物、ハロゲン系難燃化合物、有機系難燃化合物、コロイド系難燃化合物等が挙げられる。
【0117】
前記の各成分を配合し、混練する方法は通常の方法で行えばよく、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。なお、混練に際しての加熱温度は、通常240〜320℃の範囲が適当である。
【0118】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種押出成形(コールドランナー方式、ホットランナー方式成形法はもとより、さらには射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、及び超高速射出成形などの射出成形法)により各種異形押出成形品、押し出し成形によるシート、フィルムなどの形で用いることもできる。また、シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0119】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、OA機器や家電製品の外装材、例えば、パソコン、ノートパソコン、ゲーム機、ディスプレー装置(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、及び有機ELなど)、マウス、並びにプリンター、コピー機、スキャナー及びファックス(これらの複合機を含む)などの外装材、キーボードのキー、スイッチ成形品、携帯情報端末(いわゆるPDA)、携帯電話、携帯書籍(辞書類等)、携帯テレビ、記録媒体(CD、MD、DVD、次世代高密度ディスク、ハードディスクなど)のドライブ、記録媒体(ICカード、スマートメディア、メモリースティックなど)の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、及びタイプライターなどに形成された樹脂製品を用いることができる。また、トレー、カップ、皿、シャンプー瓶、OA筐体、化粧品瓶、飲料瓶、オイル容器、射出成形品(ゴルフティー、綿棒の芯、キャンディーの棒、ブラシ、歯ブラシ、ヘルメット、注射筒、皿、カップ、櫛、剃刀の柄、テープのカセット及びケース、使い捨てのスプーンやフォーク、ボールペン等の文房具等)等に有用である。
【0120】
また、結束テープ(結束バンド)、プリペイカード、風船、パンティーストッキング、ヘアーキャップ、スポンジ、セロハンテープ、傘、合羽、プラ手袋、ヘアーキャップ、ロープ、チューブ、発泡トレー、発泡緩衝材、緩衝材、梱包材、煙草のフィルター等の多分野にわたる用途に用いることが可能である。
【0121】
さらに、各種容器、雑貨、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品などの車両用部品にも用いることができる。
【0122】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形した樹脂成形品には、表面改質を施すことにより、他の機能を付与するとこが可能である。ここでいう表面改質とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、印刷等の樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の樹脂成形品に用いられる方法が適用できる。本発明の樹脂組成物は、その良好な色相により遮蔽性の低い塗装であっても1コートで良好な製品を提供することが可能である。
【0123】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、前記ブロック共重合体(C)がポリカーボネートとポリ乳酸とのポリマーアロイの相溶化剤としても効果を有する理由は定かでないが、前記ブロック共重合体(C)がポリ乳酸との相溶性が良好なポリ乳酸構造とポリカーボネートと比較的親和性の高いポリアルキレンエーテル構造を併せて持つブロック共重合体であるため耐衝撃性と流動性を満足する特異なモルフォロジーを取るためと推測される。
【実施例】
【0124】
以下に具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0125】
《製造例1》ポリエステル(IV’−1)の製造例
反応器に、アジピン酸1モル当量及び1,4−ブタンジオール1.1モル当量を仕込み、窒素気流下で150℃から230℃まで、1時間に10℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら撹拌しエステル化反応を行った。その後、230℃で2時間反応した後、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドを、アジピン酸及び1,4−ブタンジオールの合計量に対して100ppm加え、減圧度200Paで15時間反応させた。反応終了後、重合触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、アジピン酸及び1,4−ブタンジオールの合計量に対して110ppm添加し、333Pa、220℃で1時間撹拌することによって、数平均分子量が29,000、重量平均分子量が43,000のポリエステル(IV’−1)を得た。
【0126】
《製造例2》ブロック共重合体(C−1)の製造例
反応器に、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製「PEG−20000」、数平均分子量:20,000、水酸基価:5.6mgKOH/g)(II’−1)を50g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、ポリ乳酸(I’−1)〔数平均分子量が92,000、重量平均分子量が170,000、L体:D体=98.5:1.5(モル比)〕を55g加えて溶融混合した。ポリエチレングリコール(II’−1)とポリ乳酸(I’−1)とが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が44,000、重量平均分子量が56,000のブロック共重合体(C−1)を得た。
【0127】
《製造例3》ブロック共重合体(C−2)の製造例
反応器に、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製「PEG−20000」、数平均分子量:20,000、水酸基価:5.6mgKOH/g)(II’−1)を50g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、ポリ乳酸(I’−1)〔数平均分子量が92,000、重量平均分子量が170,000、L体:D体=98.5:1.5(モル比)〕を55g加えて溶融混合した。ポリエチレングリコール(II’−1)とポリ乳酸(I’−1)とが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、イソシアネート基を有するポリカルボジイミド(日清紡績株式会社製「カルボジライトLA−1」)0.25gを加えて、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が48,000、重量平均分子量が63,000のブロック共重合体(C−2)を得た。
【0128】
《製造例4》ブロック共重合体(C−3)の製造例
反応器に、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製「PEG−20000」、数平均分子量:20,000、水酸基価:5.6mgKOH/g)(II’−1)を25gと製造例1のポリエステル1を25g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、ポリ乳酸(I’−1)〔数平均分子量が92,000、重量平均分子量が170,000、L体:D体=98.5:1.5(モル比)〕を55g加えて溶融混合した。ポリエチレングリコール(II’−1)とポリ乳酸(I’−1)とが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が41、000、重量平均分子量が67,000のブロック共重合体(C−3)を得た。
【0129】
《製造例5》ブロック共重合体(D−1)の製造例
反応器に、製造例1で得られたポリエステル(IV’−1)を50g仕込み、窒素雰囲気下、ジャケット温度200℃で加熱した。その後、ポリ乳酸(I’−1)〔数平均分子量が92,000、重量平均分子量が170,000、L体:D体=98.5:1.5(モル比)〕を55g加えて溶融混合した。ポリエステル(IV’−1)とポリ乳酸(I’−1)とが均一に溶融混合したことを目視で確認した後、さらに2時間溶融混合した。次いで、エステル化触媒としてチタンテトラブトキシドを溶融混合物の全量に対して200ppm添加し、減圧度80Paで4時間反応させた。反応終了後にエステル化触媒の失活剤として、2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、反応物の全量に対して500ppm添加し、数平均分子量が44、000、重量平均分子量が70,000のブロック共重合体(D−1)を得た。
【0130】
《製造例6》ブロック共重合体(D−2)の製造例
L−ラクチド(ピューラック社製)100g及びポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル H1P」:分子量10,000)150gを撹拌装置のついた反応容器中で、窒素雰囲気下、150℃で均一に溶解させた後、オクチル酸錫45mgを加えた後、1時間重合反応させた。重合反応終了後、反応物をクロロホルムに溶解させ、メタノール中で撹拌しながら沈殿させ、モノマーを完全に除去して、数平均分子量が13,000、重量平均分子量が21,000のポリ乳酸とポリカプロラクトンとのブロック共重合体(D−2)を得た。
【0131】
なお、上記の製造例1〜6で得られたポリエステル、ブロック共重合体(C−1)〜(C−4)、(D−1)及び(D−2)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法は、下記の通りである。
【0132】
[数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8220」)を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM−Mを2本、及びTSK gel SuperHZ−2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、標準ポリスチレンとの比較で数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0133】
上記の製造例2〜6で得られたブロック共重合体(C−1)〜(C−4)、(D−1)及び(D−2)を用いて、ポリカーボネート樹脂組成物を下記の通り調製した。
【0134】
(実施例1)
ポリカーボネート(温度280℃、荷重21.18Nでのメルトフローレート(以下、「MFR」という。)が16g/10分の芳香族ポリカーボネート(汎用低粘度タイプ))7.5kg、ポリ乳酸(三井化学株式会社製「レイシアH−400」)2.5kg、製造例2で得られたブロック共重合体(C−1)0.5kg、安定剤(ジーイーケミカルズ社製「ウルトラノックス641」)5g及び酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス1010」)5gをドライブレンドした後、それらを回転数20rpm、温度260℃のラボプラストミル二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて溶融混合し、押出成形を行ってポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0135】
(実施例2)
ブロック共重合体(C−1)の配合量を0.5kgから1.0kgに変更した以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0136】
(実施例3)
ブロック共重合体(C−1)の配合量を0.5kgから1.5kgに変更した以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0137】
(実施例4)
イソシアネート基を有するポリカルボジイミド(日清紡績株式会社製「カルボジライトLA−1」)50gを加えた以外は実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0138】
(実施例5)
ブロック共重合体(C−1)の代わりに、製造例3で得られたブロック共重合体(C−2)を用いた以外は実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0139】
(実施例6)
ブロック共重合体(C−1)の代わりに、製造例4で得られたブロック共重合体(C−3)を用いた以外は実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0140】
(実施例7)
ブロック共重合体(C−1)1.0kgの代わりに、ブロック共重合体(C−1)0.5kg及び製造例5で得られたブロック共重合体(D−1)0.5kgを用いた以外は実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0141】
(比較例1)
ポリカーボネート(MFR(280℃、21.18N):16g/10分の芳香族ポリカーボネート(汎用低粘度タイプ))10.0kg、安定剤(ジーイーケミカルズ社製「ウルトラノックス641」)5g及び酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス1010」)5gをドライブレンドした後、それらを回転数20rpm、温度260℃のラボプラストミル二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて溶融混合し、押出成形を行ってポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0142】
(比較例2)
ポリカーボネート(MFR(280℃、21.18N):16g/10分の芳香族ポリカーボネート(汎用低粘度タイプ))7.5kg、ポリ乳酸(三井化学株式会社製「レイシアH−400」)2.5kg、安定剤(ジーイーケミカルズ社製「ウルトラノックス641」)5g及び酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス1010」)5gをドライブレンドした後、それらを回転数20rpm、温度260℃のラボプラストミル二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて溶融混合し、押出成形を行ってポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0143】
(比較例3)
ブロック共重合体(C−1)の代わりに、製造例5で得られたブロック共重合体(D−1)を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0144】
(比較例4)
ブロック共重合体(C−1)の代わりに、製造例6で得られたブロック共重合体(D−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0145】
上記の実施例1〜7及び比較例1〜4で得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを用いて、以下の評価を行った。
【0146】
[アイゾット衝撃値の測定方法]
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットをシリンダー温度260℃、金型温度80℃の成形条件で1オンス竪型射出成形機(株式会社山城精機製作所製)を用いて、試験規格JIS K 7110にあるアイゾット衝撃試験用の2号試験片を作製した。次いで、ノッチングマシン(テクノサプライ株式会社製)を用いて、前記2号試験片を試験規格JIS K 7110にある2号Aの形状なるようノッチを入れた。得られた試験片を、ユニバーサルインパクトテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、試験規格JIS K 7110に準拠してアイゾット衝撃値を測定した。
【0147】
[外観]
上記のアイゾット衝撃値の測定で作製した試験片の色調、ムラ及びパール光沢の有無、平滑性を目視で観察して、外観を以下の基準にしたがって評価した。
(ムラの評価基準)
◎:ムラがない。
○:ほとんどムラがない。
△:多少ムラがある。
×:ムラがある。
(パール光沢の評価基準)
◎:パール光沢が無い
○:パール光沢が殆どない。
×:パール光沢がある。
××:パール光沢が著しくある。
(平滑性の評価基準)
○:平滑である。
×:表面に凹凸がある。
【0148】
[流動性(MFR)の測定方法]
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを東洋精機工業株式会社製のメルトインデクサーを用いて、下記の測定条件での流出樹脂量を測定して換算により、MFR(単位:g/10分)を算出した。
測定条件:標準オリフィス(直径:2.096×8.001mm)、荷重:21.18N、温度280℃、測定時間:60秒
【0149】
[耐加水分解性の評価方法]
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを上記の測定方法と同様に重量平均分子量を測定して初期値とした。また、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを高温多湿(温度40℃、湿度90%)の雰囲気下で6ヶ月間放置した後、同様に重量平均分子量を測定した。この高温多湿の雰囲気下においたものの重量平均分子量と初期値との比である保持率を算出して耐加水分解性を評価した。
【0150】
上記の実施例1〜7及び比較例1〜4で得られたポリカーボネート樹脂組成物の組成及び評価結果を表1〜2に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

【0153】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物である実施例1〜7のものは、外観が良好で、耐衝撃性、流動性に優れ、耐加水分解性も高いことが分かった。
【0154】
一方、比較例1は、ポリカーボネートのみの例だが、外観、耐衝撃性及び耐加水分解性は高いが、流動性に劣ることが分かった。
【0155】
比較例2は、ブロック共重合体(C)を配合しなかった例だが、流動性及び耐加水分解性は高いが、外観及び耐衝撃性に劣ることが分かった。
【0156】
比較例3は、本発明で用いるブロック共重合体(C)が有する構造単位であるポリアルキレンエーテル構造単位(II)をジオール及びジカルボン酸を反応させて得られたポリエステルとした例であるが、流動性や耐加水分解性は良好で、耐衝撃性も比較例2のものに比べ改善されているが、外観は満足できるレベルではないことが分かった。
【0157】
比較例4は、本発明で用いるブロック共重合体(C)が有する構造単位であるポリアルキレンエーテル構造単位(II)をポリカプロラクトンとした例であるが、流動性や耐加水分解性は良好で、耐衝撃性も比較例2のものに比べ改善されているが、外観は満足できるレベルではないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート(A)と、ポリ乳酸(B)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)及びポリアルキレンエーテル構造単位(II)を必須成分として有するブロック共重合体(C)とを含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(C)を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)が、ポリ乳酸に由来する構造単位である請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体(C)の構成単位にカルボジイミド構造単位(III)が追加された請求項1又は2記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボジイミド構造単位(III)が、ポリカルボジイミドに由来する請求項3記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体(C)の樹脂組成物全体に占める比率が5〜30質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(I)を有する重合体及びポリアルキレンエーテル構造単位(II)を有する重合体をブロック重合させて得られた共重合体に、カルボジイミド基を有する化合物を反応させることを特徴とするブロック共重合体(C)の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形した樹脂成形品。

【公開番号】特開2010−106111(P2010−106111A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278156(P2008−278156)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】