説明

ポリカーボネート樹脂組成物

【課題】流動性、耐衝撃性及び難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(2’)


(式中、R2'は炭素数21〜35のアルキル基を示す。)
で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(D)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(C)0.05〜1質量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、さらに詳しくは流動性、耐衝撃性及び難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は機械的強度(特に、耐衝撃性)、電気的特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、OA機器、電気・電子機器分野、自動車分野等様々な分野において幅広く利用されている。そして、これらの利用分野の中には、OA機器、電気・電子機器分野を中心として、難燃性を要求される分野がある。
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、各種熱可塑性樹脂の中では酸素指数が高く、自己消火性を有するが、OA機器,電気・電子機器分野で要求される難燃性のレベルは、一般的にUL94規格で、V−0レベルと高く、難燃性を付与するには、通常難燃剤、難燃助剤を添加することによって行われている。しかし、このような添加剤を用いることにより、耐衝撃性や耐熱性が低下する。その問題点を解決する方法として、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体及びポリテトラフルオロエチレンの組成物が開示されている(例えば特許文献1参照)。ところで、最近、コピー機やプリンターのハウジングのように、大型薄肉成形が可能な流動性に優れた難燃材料が求められている。しかし、上記技術ではポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の分子量を低下させることにより流動性は向上できるが、耐衝撃性が低下するという問題がある。また、ポリカーボネート樹脂の分子量を低下させることにより流動性は向上できるが、難燃性及び耐衝撃性が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−81620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、流動性、耐衝撃性及び難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、(1)一般の末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、及び特定の末端基を有する芳香族ポリカーボネートを含む芳香族ポリカーボネート樹脂又は(2)特定の末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定のポリテトラフルオロエチレンを配合したポリカーボネート樹脂組成物が上記本発明の目的に適合しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
〔第一発明〕
1.下記式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基又はハロゲン原子を示し、aは0〜5の整数を示す。)
で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び下記式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R2は炭素数21〜35のアルキル基を示す。)
で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート(B)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(C)0.05〜1質量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
2.(A)及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の粘度平均分子量が10,000〜40,000である前記1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.(A)成分中のポリオルガノシロキサンの割合が、(A)及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の0.1〜2質量%である前記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.(B)成分の割合が、(A)及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の少なくとも10質量%である前記項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
〔第二発明〕
5.下記式(2’)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R2'は炭素数21〜35のアルキル基を示す。)
で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(D)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(C)0.05〜1質量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
6.(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の粘度平均分子量が10,000〜40,000である前記5記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7.(D)成分中のポリオルガノシロキサンの割合が、(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の0.1〜2質量%である前記5又は6に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
〔第三発明〕
8.前記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を使用してなる電気・電子機器ハウジング又は部品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流動性、耐衝撃性及び難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。したがって、本発明によって得られる樹脂組成物は、例えば、電気・電子分野(ハウジング、部品)などで好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について詳細に説明する。
先ず、本願の第一発明の樹脂組成物を構成する(A)成分は、前記式(1)で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、PC−PDMS共重合体と略記する。)であり、例えば、特開昭50−29695号公報、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報、特開平10−7897号公報に開示されている共重合体を挙げることができ、好ましくは、下記構造式(3)で表される構造単位からなる芳香族ポリカーボネート部と下記構造式(4)で表される構造単位からなるポリオルガノシロキサン部を分子内に有する共重合体を挙げることができる。
【0016】
【化4】

【0017】
ここで、R3及びR4は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよい。R5〜R8は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、好ましくはメチル基である。R5〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R9は脂肪族もしくは芳香族を含む有機残基を示し、好ましくは、o−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基又はオイゲノール残基である。
【0018】
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数1〜20のアルキリデン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基又は炭素数5〜20のシクロアルキリデン基、あるいは−SO2−、−SO−、−S−、−O−、−CO−結合を示す。好ましくは、イソプロピリデン基である。b及びcは0〜4の整数で好ましくは0である。nは1〜500の整数で、好ましくは5〜100である。
【0019】
このPC−PDMS共重合体は、例えば、予め製造された芳香族ポリカーボネート部を構成する芳香族ポリカーボネートオリゴマー(以下、PCオリゴマーと略称する。)と、ポリオルガノシロキサン部を構成する末端にo−アリルフェノール基、p−ヒドロキシスチレン基、オイゲノール残等の反応性基を有するポリオルガノシロキサン(反応性PDMS)とを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの苛性アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、下記一般式(5)
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R1、aは前記と同じである。)
で表されるフェノール化合物からなる一般の末端停止剤の存在下界面重縮合反応することにより製造することができる。
上記の末端停止剤としては、具体的には、例えば、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−tert−アミルフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノールなどをが挙げることができる。なかでも、環境問題からハロゲンを含まない化合物が好ましい。PC−PDMS共重合体の製造に使用されるPCオリゴマーは、例えば塩化メチレンなどの溶媒中で、下記一般式(6)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R3、R4、Z、b及びcは、前記と同じである。)
で表される二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物などのカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。
【0024】
前記一般式(6)で表される二価フェノールとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどを挙げることができる。なかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。これらの二価フェノールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを挙げることができる。本発明において、PC−PDMS共重合体の製造に供されるPCオリゴマーは、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーであってもよく、また二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。その場合、分岐剤(多官能性芳香族化合物)として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシルフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などを使用することができる。
【0026】
(A)成分は上記によって製造することができるが、一般に芳香族ポリカーボネートが副生し、PC−PDMS共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂として製造され、全体の粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。また、ポリオルガノシロキサンの割合は(A)成分を含むポリカーボネート樹脂全体の0.5〜10質量%であることが好ましい。なお、上記の方法によって製造される重合体は、実質的に分子の片方又は両方に前記式(1)で表される末端基を有するものである。
【0027】
次に、本発明の樹脂組成物を構成する(B)成分は、前記式(2)で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート(以下、末端変性ポリカーボネートと略記する。)であり、その粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。前記式(2)において、R2は炭素数21〜35のアルキル基であり、直鎖状のものでも分岐状のものでもよい。
【0028】
また、結合の位置は、p位、m位、o位のいずれもよいがp位が好ましい。この末端変性ポリカーボネートは二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物とを反応させることにより容易に製造することができる。
【0029】
すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、トリエチルアミン等の触媒と特定の末端停止剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。ここで、二価フェノールとしては、前記の一般式(6)で表される化合物と同じものでもよく、また異なるものでもよい。また、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーでも、二種以上用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0030】
炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが例示できる。末端停止剤としては、前記式(2)で表される末端基が形成されるフェノール化合物を使用すればよい。すなわち、下記一般式(7)で表されるフェノール化合物で、R2の記載は前記と同様である。
【0031】
【化7】

【0032】
これらのアルキルフェノールとしては、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール、テトラトリアコンチルフェノール等を例示できる。これらは一種でもよく、二種以上を混合したものでもよい。また、これらのアルキルフェノールは、効果を損ねない範囲で、他のフェノール、例えば、炭素数20以下のアルキルフェノール等を併用しても差し支えない。なお、上記の方法によって製造される芳香族ポリカーボネートは、実質的に分子の片末端又は両末端に前記式(2)で表される末端基を有するものである。
【0033】
上記(A)成分及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂は、(A)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)成分を配合することによって得られるが、さらに一般の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合してもよい。その場合、新たに配合する芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000〜40,000のものが好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。その芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端停止剤として、前記一般式(5)の一般に使用されるフェノール化合物を使用して、(B)成分と同様に製造すればよい。その際、二価フェノールとして、(A)成分の製造の際に使用される前記一般式(6)のもの及び(B)成分の製造の際に使用されるものと同一でも異なっていてもよい。
【0034】
(A)成分及び(B)成分を含む全体の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000であり、特に好ましくは14,000〜26,000である。分子量が低すぎると、本発明の樹脂組成物の機械的強度に劣る場合があり、分子量が高すぎると、本発明の樹脂組成物の流動性に劣る場合がある。
【0035】
前記のポリオルガノシロキサン含有率は、(A)及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の0.1〜2質量%の範囲が、本発明の樹脂組成物の難燃性の点で好ましい。さらに好ましくは0.2〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.5〜1.3質量%である。また、前記(B)成分のポリカーボネートの量は、(A)及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の少なくとも10質量%が好ましく、より好ましくは30〜90質量%、特に好ましくは40〜80質量%である。10質量%未満であると、本発明の組成物の流動性が改善されない場合がある。
【0036】
本願第一発明の樹脂組成物を構成する(C)成分のフィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略称する。)は溶融滴下防止効果を付与するものであり、高い難燃性を付与することができる。その平均分子量は500,000以上であることが必要であり、好ましくは500,000〜10,000,000、さらに好ましくは1,000,000〜10,000,000である。
【0037】
(C)成分の量は、(A)成分及び(B)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.05〜1質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部である。この量が1質量部を超えると、耐衝撃性及び成形品外観に悪影響を及ぼすだけでなく、混練押出時にストランドの吐出が脈動し、安定したペレット製造ができず好ましくない。また、0.05質量部未満では十分な溶融滴下防止効果が得られない。好ましい範囲では好適な溶融滴下防止効果が得られ、優れた難燃性のものが得られる。
【0038】
(C)成分のフィブリル形成能を有するPTFEとしては、特に制限はないが、具体的には、テフロン6−J(商品名 三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンD−1及びポリフロンF−103(商品名 ダイキン工業社製)、アルゴフロンF5(商品名 モンテフルオス社製)及びポリフロンMPA FA−100(商品名 ダイキン工業社製)等を挙げることができる。これらのPTFEは二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記のようなフィブリル形成能を有するPTFEは、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウムあるいはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得ることができる。次いで本第二発明のポリカーボネート樹脂組成物について説明する。
【0040】
先ず、本第二発明の樹脂組成物を構成する(D)成分は、前記式(2’)で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(以下末端変性PC−PDMS共重合体と略記する。)である。前記式(2’)において、R2'は炭素数21〜35のアルキル基であり、前のR2の記載と同様である。
【0041】
末端変性PC−PDMS共重合体は、芳香族ポリカーボネート部とポリシロキサン部からなる共重合体であり、末端基以外の骨格としては、第一発明におけるPC−PDMSと同様であり、好ましくは、前記構造式(3)で表される構造単位からなる芳香族ポリカーボネート部と下記構造式(4)で表される構造単位からなるポリオルガノシロキサン部を分子内に有する共重合体を挙げることができる。
【0042】
この末端変性PC−PDMS共重合体は、前記のPC−PDMS共重合体と同様に、例えば、予め製造された芳香族ポリカーボネート部を構成する芳香族ポリカーボネートオリゴマー(以下PCオリゴマーと略称する。)と、ポリオルガノシロキサン部を構成する末端にo−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基、オイゲノール残基等の反応性基を有するポリオルガノシロキサン(反応性PDMS)とを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの苛性アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、下記一般式(7’)
【0043】
【化8】

【0044】
(R2'は前記と同じである。)
で表されるフェノール化合物からなる末端停止剤の存在下界面重縮合反応することにより製造することができる。上記一般式(7’)において、R2'の記載は前のR2の記載と同じである。
末端変性PC−PDMS共重合体の製造に使用されるPCオリゴマーは、例えば塩化メチレンなどの溶媒中で、前記一般式(6)で表される二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物などのカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。
【0045】
すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを挙げることができる。
【0046】
本第二発明において、末端変性PC−PDMS共重合体の製造に供されるPCオリゴマーは、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーであってもよく、また二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。その場合、分岐剤(多官能性芳香族化合物)として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシルフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などを使用することができる。
【0047】
(D)成分は上記の方法によって製造することができるが、一般に前記一般式(2’)で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート(以下、末端変性ポリカーボネートと略記する。)が副生し、末端変性PC−PDMS共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂として製造され、その場合、全体の粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。
【0048】
また、ポリオルガノシロキサンの割合は(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の0.5〜10質量%であることが好ましい。なお、上記の方法によって製造される重合体は、実質的に、分子の片末端又は両末端に前記一般式(2’)で表される末端基を有するものである。本発明においては、上記の方法で製造される(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂を、そのまま使用してもよいが、さらに一般の芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは別に製造された末端変性芳香族ポリカーボネート樹脂を配合してもよい。その場合、(D)成分の末端変性PC−PDMS共重合体の量と末端変性ポリカーボネートの量の和を、(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の少なくとも10質量%にするのが好ましく、より好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、本発明の組成物の流動性が改善されない場合がある。また、新たに配合する芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000〜40,000のものが好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。
【0049】
その芳香族ポリカーボネート樹脂は、特に制限はないが、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物とを反応させることにより容易に製造することができる。すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、トリエチルアミン等の触媒と末端停止剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。
【0050】
ここで、二価フェノールとしては、(D)成分の製造に使用される前記の一般式(6)で表される化合物と同じものでもよく、また異なるものでもよい。また、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーでも、二種以上用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0051】
炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが例示できる。末端停止剤としては、一般の芳香族ポリカーボネート樹脂の場合には、例えば、フェノール,p−tert−ブチルフェノール,p−tert−オクチルフェノール,p−クミルフェノール,p−ノニルフェノール,p−tert−アミルフェノール,ブロモフェノール,トリブロモフェノール,ペンタブロモフェノール等を挙げることができる。末端変性芳香族ポリカーボネート樹脂の場合には、前記一般式(7’)で表されるフェノール化合物を使用する。
【0052】
(D)成分を含む全体の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000であり、特に好ましくは14,000〜26,000である。分子量が低すぎると、本発明の樹脂組成物の機械的強度に劣る場合があり、分子量が高すぎると、本発明の樹脂組成物の流動性に劣る場合がある。
【0053】
前記のポリオルガノシロキサン含有率は、(D)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の0.1〜2質量%の範囲が、本発明の樹脂組成物の難燃性の点で好ましい。さらに好ましくは0.2〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.5〜1.3質量%である。本第二発明の樹脂組成物を構成する(C)成分のフィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略称する。)は溶融滴下防止効果を付与するものであり、高い難燃性を付与することができる。その平均分子量は500,000以上であることが必要であり、好ましくは500,000〜10,000,000、さらに好ましくは1,000,000〜10,000,000である。
【0054】
(C)成分の量は、(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.05〜1質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部である。この量が1質量部を超えると、耐衝撃性及び成形品外観に悪影響を及ぼすだけでなく、混練押出時にストランドの吐出が脈動し、安定したペレット製造ができず好ましくない。また、0.05質量部未満では十分な溶融滴下防止効果が得られない。好ましい範囲では好適な溶融滴下防止効果が得られ、優れた難燃性のものが得られる。
【0055】
(C)成分のフィブリル形成能を有するPTFEとしては、特に制限はないが、第一発明と同様なものを挙げることができ、同様にして製造できる。本発明の樹脂組成物は、さらに、必要に応じて、各種の無機質充填材、添加剤、またはその他の合成樹脂、エラストマー等を、本発明の目的を阻害しない範囲で配合することができる〔以下、これらを(E)成分と略記する〕。
【0056】
まず、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度、耐久性または増量を目的として配合される前記無機質充填材としては、例えばガラス繊維(GF)、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、アスベスト、タルク、クレー、マイカ、石英粉などが挙げられる。また、前記添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系(亜リン酸エステル系、リン酸エステル系等)、アミン系等の酸化防止剤、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、例えば脂肪族カルボン酸エステル系、パラフィン系、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス等の滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができる。
【0057】
その他の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリメチルメタクリレート等の各樹脂を挙げることができる。また、エラストマーとしては、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマーなどが挙げられる。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、前記の各成分と必要に応じて(E)を配合し、混練することによって得ることができる。該配合,混練は、通常用いられている方法、例えば、リボンブレンダー,ドラムタンブラー,ヘンシェルミキサー,バンバリーミキサー,単軸スクリュー押出機,二軸スクリュー押出機,コニーダ,多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。なお、混練に際しての加熱温度は、通常240〜320℃の範囲で選ばれる。
【0059】
かくして得られたポリカーボネート樹脂組成物は、既知の種々の成形方法、例えば、射出成形,中空成形,押出成形,圧縮成形,カレンダー成形,回転成形等を適用して、難燃性が必要な電気・電子機器のハウジングや部品に好適に供される。
【実施例】
【0060】
更に、本発明を製造例,実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1
[アルキルフェノール(a)の調製]
バッフル及び攪拌翼を備えた反応器に、フェノール300質量部と1−ドコセン110質量部〔フェノール/オレフィン=9/1(モル比)〕及び触媒として強酸性ポリスチレン系スルホン酸型カチオン樹脂(ロームアンドハース社;Amberlyst15)11質量部の仕込み割合で、反応原料及び触媒を仕込み、120℃において、攪拌下に3時間反応を行った。反応終了後、減圧蒸留により精製し、アルキルフェノール(a)を得た。この得られたアルキルフェノール(a)のアルキル基の炭素数は22であった。
【0061】
製造例2
[PCオリゴマーの製造]
400リットルの5質量%水酸化ナトリウム水溶液に、60kgのビスフェノールAを溶解し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、室温に保持したこのビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を138リットル/時間の流量で、また、塩化メチレンを69リットル/時間の流量で、内径10mm、管長10mの管型反応器にオリフィス板を通して導入し、これにホスゲンを並流して10.7kg/時間の流量で吹き込み、3時間連続的に反応させた。ここで用いた管型反応器は二重管となっており、ジャケット部分には冷却水を通して反応液の排出温度を25℃に保った。また、排出液のpHは10〜11となるように調整した。
【0062】
このようにして得られた反応液を静置することにより、水相を分離、除去し、塩化メチレン相(220リットル)を採取して、PCオリゴマー(濃度317g/リットル)を得た。ここで得られたPCオリゴマーの重合度は2〜4であり、クロロホーメイト基の濃度は0.7規定であった。
【0063】
製造例3−1
[反応性PDMS−Aの製造]
1,483gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、96gの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン及び35gの86%硫酸を混合し、室温で17時間攪拌した。その後、オイル相を分離し、25gの炭酸水素ナトリウムを加え1時間攪拌した。濾過した後、150℃、3torr(4×102Pa)で真空蒸留し、低沸点物を除きオイルを得た。
【0064】
60gの2−アリルフェノールと0.0014gの塩化白金−アルコラート錯体としてのプラチナとの混合物に、上記で得られたオイル294gを90℃の温度で添加した。この混合物を90〜115℃の温度に保ちながら3時間攪拌した。生成物を塩化メチレンで抽出し、80%の水性メタノールで3回洗浄し、過剰の2−アリルフェノールを除いた。その生成物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で115℃の温度まで溶剤を留去した。得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は30であった。
【0065】
製造例3−2
[反応性PDMS−Bの製造]
製造例3−1において、60gの2−アリルフェノールを、73.4gのオイゲノールに変えた以外は、同様に実施した。得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は30であった。
【0066】
製造例3−3
[反応性PDMS−Cの製造]
製造例3−1において、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの量を18.1gに変えた以外は、同様に実施した。得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は150であった。
【0067】
製造例4−1
[PC−PDMS共重合体A1の製造]
製造例3−1で得られた反応性PDMS−A138gを塩化メチレン2リットルに溶解させ、前記で得られたPCオリゴマー10リットルを混合した。そこへ、水酸化ナトリウム26gを水1リットルに溶解させたものと、トリエチルアミン5.7ccを加え、500rpmで室温にて1時間攪拌、反応させた。
【0068】
反応終了後、上記反応系に、5.2質量%の水酸化ナトリウム水溶液5リットルにビスフェノールA600gを溶解させたもの、塩化メチレン8リットル及びp−tert−ブチルフェノ−ル96gを加え、500rpmで室温にて2時間攪拌、反応させた。反応後、塩化メチレン5リットルを加え、さらに、水5リットルで水洗、0.03規定水酸化ナトリウム水溶液5リットルでアルカリ洗浄、0.2規定塩酸5リットルで酸洗浄、及び水5リットルで水洗2回を順次行い、最後に塩化メチレンを除去し、フレーク状のPC−PDMS共重合体A1を得た。得られたPC−PDMS共重合体Aを120℃で24時間真空乾燥した。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は3.0質量%であった。なお、粘度平均分子量、PDPS含有率は下記の要領で行った。
(1)粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ型粘度計にて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求めた後、次式にて算出した。
【0069】
[η]=1.23×10-5Mv0.83
(2)PDMS含有率
1H−NMRで1.7ppmに見られるビスフェノールAのイソプロピルのメチル基のピークと、0.2ppmに見られるジメチルシロキサンのメチル基のピークとの強度比を基に求めた。
【0070】
製造例4−2
[PC−PDMS共重合体A2の製造]
製造例4−1において、反応性PDMS−A138gを反応性PDMS−B91gに変え、p−tert−ブチルフェノール96gをp−クミルフェノール136gに変えた他は、製造例4−1と同様にして、フレーク状のPC−PDMS共重合体A2を得た。粘度平均分子量は16,800であり、PDMS含有率は2.0質量%であった。
【0071】
製造例4−3
[PC−PDMS共重合体A3の製造]
製造例4−1において、反応性PDMS−Aを反応性PDMS−Cに変えた他は、製造例4−1と同様にして、フレーク状のPC−PDMS共重合体A3を得た。粘度平均分子量は17,200であり、PDMS含有率は3.0質量%であった。
【0072】
製造例5−1
[末端変性ポリカーボネートB1の製造]
内容積50リットルの攪拌付き容器に、製造例2で得られたPCオリゴマー10リットルを入れ、製造例1で製造したアルキルフェノール(a)249gを溶解させた。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム53g、水1リットル)とトリエチルアミン5.8ccを加え、1時間300rpmで攪拌し、反応させた。その後、上記系にビスフェノールAの水酸化ナトリウム溶液(ビスフェノール:720g、水酸化ナトリウム412g、水5.5リットル)を混合し、塩化メチレン8リットルを加え、1時間500rpmで攪拌し、反応させた。反応後、塩化メチレン7リットル及び水5リットルを加え、10分間500rpmで攪拌し、攪拌停止後静置し、有機相と水相を分離した。得られた有機相を5リットルのアルカリ(0.03規定−NaOH)、5リットルの酸(0.2規定−塩酸)及び5リットルの水(2回)の順で洗浄した。その後、塩化メチレンを蒸発させ、フレーク状のポリマーを得た。粘度平均分子量は17,500であった。
【0073】
製造例5−2
[ポリカーボネートB2の製造]
製造例5−1において、アルキルフェノール(a)をp−n−ノニルフェノール136gに変えた他は、製造例5−1と同様にして、フレーク状のポリマーを得た。粘度平均分子量は17,400であった。
【0074】
製造例6−1
[末端変性PC−PDMS共重合体A4の製造]
製造例3−1で得られた反応性PDMS−A46gを塩化メチレン2リットルに溶解させ、製造例2で得られたPCオリゴマー10リットルを混合した。そこへ、水酸化ナトリウム26gを水1リットルに溶解させたものと、トリエチルアミン5.7ccを加え、500rpmで室温にて1時間攪拌、反応させた。
【0075】
反応終了後、上記反応系に、5.2質量%の水酸化ナトリウム水溶液5リットルにビスフェノールA600gを溶解させたもの、塩化メチレン8リットル及びアルキルフェノール(a)249gを加え、500rpmで室温にて2時間攪拌、反応させた。反応後、塩化メチレン5リットルを加え、さらに、水5リットルで水洗、0.03規定水酸化ナトリウム水溶液5リットルでアルカリ洗浄、0.2規定塩酸5リットルで酸洗浄、及び水5リットルで水洗2回を順次行い、最後に塩化メチレンを除去し、フレーク状の末端変性PC−PDMS共重合体A4を得た。得られた末端変性PC−PDMS共重合体A4を120℃で24時間真空乾燥した。粘度平均分子量は17,500であり、PDMS含有率は1.0質量%であった。
【0076】
製造例6−2
[末端変性PC−PDMS共重合体A5の製造]
製造例6−1において、反応性PDMS−Aの代わりに反応性PDMS−Bを91g使用したこと以外は同様にしてフレーク状の末端変性PC−PDMS共重合体A5を得た。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は2.0質量%であった。
【0077】
製造例6−3
[末端変性PC−PDMS共重合体A6の製造]
製造例6−1において、反応性PDMS−Aの代わりに反応性PDMS−Bを138g使用したこと以外は同様にしてフレーク状の末端変性PC−PDMS共重合体A6を得た。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は3.0質量%であった。
【0078】
製造例6−4
[末端変性PC−PDMS共重合体A7の製造]
製造例6−1において、反応性PDMS−Aの代わりに反応性PDMS−Bを使用したこと以外は同様にしてフレーク状の末端変性PC−PDMS共重合体A7を得た。粘度平均分子量は17,100であり、PDMS含有率は1.0質量%であった。
【0079】
製造例6−5
[末端変性PC−PDMS共重合体A8の製造]
製造例6−1において、反応性PDMS−Aの代わりに反応性PDMS−Cを使用したこと以外は同様にしてフレーク状の末端変性PC−PDMS共重合体A8を得た。粘度平均分子量は17,200であり、PDMS含有率は1.0質量%であった。
【0080】
製造例6−6
[PC−PDMS共重合体A9の製造]
製造例6−1において、製造例1でで得られたアルキルフェノール(a)の代わりにp−tert−ブチルフェノールを96g使用したこと以外は同様にしてフレーク状のPC−PDMS共重合体A9を得た。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は1.0質量%であった。
【0081】
製造例6−7
[PC−PDMS共重合体A10の製造]
製造例6−1において、製造例1でで得られたアルキルフェノール(a)の代わりにp−ノニルフェノールを141g使用したこと以外は同様にしてフレーク状のPC−PDMS共重合体A10を得た。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は1.0質量%であった。
【0082】
〔第一発明〕
実施例1〜3及び比較例1〜4
製造例で得られたPC−PDMS共重合体A1〜A3、末端変性ポリカーボネートB1,B2、市販のポリカーボネート及びPTFEを第1表に示す配合割合で配合し、ベント付き二軸押出機[東芝機械(株)製、TEM−35B]によって、温度280℃で混練し、ペレット化した。市販のポリカーボネートとして出光石油化学社製のタフロンFN1700A(粘度平均分子量:17,200)を使用し、PTFEとしてモンテフルオス社製のアルゴフロンF5を使用した。
【0083】
なお、実施例1及び比較例1には、酸化防止剤として旭電化工業社製のPEP36〔ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト〕を0.05質量部配合した。得られたペレットは、各々120℃で5時間熱風乾燥させた後、東芝機械(株)製、IS100EN(射出成形機)を用いて、280℃の成形温度、80℃の金型温度で測定用のテストピースを成形した。そのテストピースについて、下記の要領で燃焼性、アイゾット衝撃強度及びスパイラルフロー長さ(SFL)を測定した。その結果を第2表に示す。
【0084】
(1)燃焼性
UL94規格。厚み1.5mm。アンダーライターズラボラトリー・サブジェクト94に従って垂直燃焼試験を行った。
(2)アイゾット衝撃強度
JIS K 7110に準拠し測定した。5本試験を行い、その平均値を示した。
(3)SFL
射出圧80kg/cm2(7.84MPa)、成形温度280℃、金型温度80℃、厚み2mmの条件で測定した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
〔第二発明〕
実施例4〜8及び比較例5,6
製造例で得られた末端変性PC−PDMS共重合体A4〜A8、PC−PDMS共重合体A9,A10、市販のポリカーボネート及びPTFEを第3表に示す配合割合で配合し、ベント付き二軸押出機[東芝機械(株)製、TEM−35B]によって、温度280℃で混練し、ペレット化した。市販のポリカーボネートとして出光石油化学社製のタフロンFN1700A(粘度平均分子量:17,200)を使用し、PTFEとしてモンテフルオス社製のアルゴフロンF5を使用した。
【0088】
なお、実施例4及び比較例5には、酸化防止剤として旭電化工業社製のPEP36〔ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト〕を0.05質量部配合した。得られたペレットは、各々120℃で5時間熱風乾燥させた後、東芝機械(株)製、IS100EN(射出成形機)を用いて、280℃の成形温度、80℃の金型温度で測定用のテストピースを成形した。そのテストピースについて、前記の要領で燃焼性、アイゾット衝撃強度及びスパイラルフロー長さ(SFL)を測定した。その結果を第4表に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
第2表及び第4表から、実施例は比較例に比べて流動性、耐衝撃性ともに優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2’)
【化1】

(式中、R2'は炭素数21〜35のアルキル基を示す。)
で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(D)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(C)0.05〜1質量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の粘度平均分子量が10,000〜40,000である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分中のポリオルガノシロキサンの割合が、(D)成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂全体の0.1〜2質量%である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を使用してなる電気・電子機器ハウジング又は部品。

【公開番号】特開2010−275565(P2010−275565A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206422(P2010−206422)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【分割の表示】特願2000−349455(P2000−349455)の分割
【原出願日】平成12年11月16日(2000.11.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】