説明

ポリカーボネート樹脂組成物

【課題】高流動、透明性、並びに耐久性の改善されたポリカーボネート樹脂材料を提供する。
【解決手段】数平均重合度が10〜60のポリオルガノシロキサン単位を含有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A1成分)からなるか、または該A1成分とA1成分以外のポリカーボネートとからなり、ポリオルガノシロキサン単位含量がA成分100重量%中0.1〜20重量%であるポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対して、下記B3の流動改質剤(B3成分)0.1〜20重量部を含有する樹脂組成物であって、ここでB3成分は、(B3)数平均分子量1,000〜70,000のポリカプロラクトン(B3成分)の流動改質剤であるポリカーボネート樹脂組成物によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高流動、透明性、並びに耐久性の改善されたポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは本発明は、特定のポリオルガノシロキサン―ポリカーボネート共重合体と、特定の流動改質成分とを組み合わせることによりかかる特性を改善した樹脂組成物、並びにかかる樹脂組成物から形成された、殊に薄肉部を有する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、機械強度や透明性といったその優れた特性から機械部品、自動車部品、電気・電子部品などの多くの用途に用いられている。近年は、携帯電話、スマートフォン、およびモバイルパソコンに代表される携帯情報端末の小型化(薄肉化を含む)および軽量化の進展により、各樹脂部材が薄肉になっている(例えば特許文献1参照)。そこで、かかる部材を形成する樹脂材料には、薄肉成形に対応する高流動性の一方で、薄肉成形品における実用上の耐久性が求められるようになっている。更に携帯情報端末を構成する部品においてはキーのボタン部材に、透明硬質樹脂を利用するものがある。かかる部材においては、透明性、機械的強度、および耐久性の観点で、透明なポリカーボネート樹脂が利用される。上記の如く薄肉化の傾向によって、かかる部材は良好な透明性を維持しつつ、薄肉でありながらボタン入力時の繰返し圧力に耐える強度を併せ持つ必要がある。かように高流動、透明性、並びに耐久性の改善されたポリカーボネート樹脂材料が求められる場合がある。
【0003】
ポリカーボネート系樹脂組成物から形成された携帯情報端末のボタン部材に関しては、粘度平均分子量16,000〜22,000であるポリカーボネート樹脂にオリゴマー型のリン酸エステルを配合してなる携帯情報端末のキー用樹脂組成物(特許文献2参照)、ポリカーボネート樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)樹脂(実施例の樹脂の重量平均分子量は約78,000である)とからなる樹脂組成物から形成された携帯情報端末用キー成形品(特許文献3参照)、アセトン可溶分が2重量%以下で延性脆性転移温度が15℃以下のポリカーボネート樹脂を成形した携帯情報端末用キー成形品(特許文献4参照)、並びにポリカーボネート樹脂、ホスファゼン化合物、熱安定剤および離型剤からなるポリカーボネート樹脂組成物から成形された携帯情報端末用キー成形品(特許文献5参照)が公知である。更に、ポリオルガノシロキサン―ポリカーボネート共重合体および離型剤からなる携帯情報端末用キー成形品も公知である(特許文献6参照)。
一方で、ポリカーボネート系材料に特定の流動改質成分を配合して、透明性を維持し、流動特性を改善することは公知である(特許文献7〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−048602号公報
【特許文献2】特開2004−346112号公報
【特許文献3】特開2005−044130号公報
【特許文献4】特開2006−092951号公報
【特許文献5】特開2007−045909号公報
【特許文献6】特開平11−045139号公報
【特許文献7】特開2004−189805号公報
【特許文献8】特開2006−249292号公報
【特許文献9】特開昭51−143058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如く高流動、透明性、並びに耐久性の改善されたポリカーボネート樹脂材料が求められている現状に対して、上記従来技術は成形性の改良が主たる目的となっており、使用時の耐久性を十分に考慮したものとはいえかなった。本発明の目的は、従来技術において十分に考慮されていない点を改善し、高流動、透明性、並びに耐久性の改善されたポリカーボネート樹脂材料を提供することを目的とする。かかる目的を達成すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオルガノシロキサン構造を含有するポリカーボネート共重合体と、特定の流動改質成分とを組み合わせることにより、上記の目的を達成できることを見出した。これらの流動改質剤は、汎用されるビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂に対する効果は知られていたものの、その屈折率や相溶性において異なるポリカーボネート−オルガノシロキサン共重合体を含有するポリカーボネート系樹脂においても同様に良好な透明性が得られ、かつ該ポリカーボネート系樹脂の有する優れた耐久性を大きく低下させないことは驚くべきことであった。かかる知見に基づき、我々は本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、
(1)下記一般式(α1)のポリオルガノシロキサン単位を含有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A1成分)からなるか、または該A1成分とA1成分以外のポリカーボネートとからなり、ポリオルガノシロキサン単位含量がA成分100重量%中0.1〜20重量%であるポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対して、下記B3の流動改質剤(B3成分)0.1〜20重量部を含有する樹脂組成物であって、ここでB3成分は、(B3)数平均分子量1,000〜70,000のポリカプロラクトン(B3成分)の流動改質剤であるポリカーボネート樹脂組成物によって達成される。
【0007】
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよく、Rは脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示し、nはカッコ内の単位の繰り返し数を示し、その数平均値が10〜60であり、カッコ内の構成単位は2種以上の混合物であってもよい。)
【0008】
単量体B2aは、炭素数が1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基は直鎖または分岐鎖)、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステルである。
【0009】
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記A1成分の一般式(α1)として下記一般式(α2)の構成単位を有し、かつ下記一般式(i)で表される構成単位を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体である上記構成(1)のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0010】
【化2】

(式中、R、R、RおよびR、並びにnは上記一般式(α1)と同じであり、R11およびR12は、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、これらは同一でも異なっていてもよく、Yは、ベンゼン環に結合したR11またはR12、および酸素原子(O)とは、異なる位に置換した水素原子またはアルコキシ基を表す。)
【化3】

(Aは下記式(i−1)〜(i−3)および(i−5)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、または下記式(i−4)のいずれかの結合を表し、sおよびtはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、R13およびR14はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。)
【化4】

(式(i−1)中、R15、R16、R17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【化5】

(式(i−2)中、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【化6】

(上記式(i−3)において、uは4〜11の整数を表し、かかる複数のR21およびR22はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜3のアルキル基から選択される基を表す。)
【化7】

【化8】

(式(i−5)中、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜10の炭化水素基から選択される基を表す。)
上記α2は、耐加水分解性に優れ、より良好な耐久性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記A成分は、その粘度平均分子量が16,000〜25,000の範囲である上記構成(1)〜(2)のポリカーボネート樹脂組成物である。A成分の粘度平均分子量(M)が10,000未満では、多くの分野において実用上の機械的強度が得られにくく、50,000を超えると、樹脂組成物は溶融粘度が高く、概して高い成形加工温度を必要とすることから、A成分の粘度平均分子量は、10,000〜50,000の範囲が適切である。更に上述の如き薄肉成形品で、その耐久性が要求される部材においては、A成分の粘度平均分子量は16,000〜25,000、より好ましくは17,000〜21,000である。
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記A1成分は、その粘度平均分子量が16,000〜25,000の範囲である上記構成(3)のポリカーボネート樹脂組成物である。上記構成(3)における本発明のA成分の粘度平均分子量は、かかる範囲外のA1成分と、A1成分以外のポリカーボネートの混合により調整されてもよい。したがって例えば、粘度平均分子量が100,000のA1成分と、粘度平均分子量15,000の他のポリカーボネート樹脂との混合により、粘度平均分子量20,000のA成分を得ることができる。しかしながら粘度平均分子量が大きく異なる成分の混合は、概して透明性の低下を招きやすいことから、A1成分も上記好適なA成分の粘度平均分子量の範囲にあることが好ましい。したがって、かかる構成(4)によれば、より透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記A成分は、そのA1成分100重量%中に含有するポリオルガノシロキサン単位含量が1〜20重量%であり、A成分100重量%中のポリオルガノシロキサン単位含量が0.5〜5重量%である上記構成(1)〜(4)のポリカーボネート樹脂組成物である。A1成分100重量%中に含有するポリオルガノシロキサン単位含量は、特に限定されるものではないが、余りに高いと樹脂組成物の透明性を低下させやすいことから、0.1〜40重量%の範囲が適切である。かかる含量は好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜12重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。かかる好適な範囲の下限未満では、A成分中のポリオルガノシロキサン濃度の調整範囲が制限されて生産効率的に劣るようになり、かかる好適な範囲の上限を超えると透明性が安定性して発揮されず、かかる点で生産効率的に劣るようになる。また、A成分100重量%中のポリオルガノシロキサン単位含量は0.1〜20重量%であるが、好ましくは0.5〜5重量%であり、より好ましくは1.5〜4.5重量%、更に好ましくは2〜4重量%の範囲である。上記構成(5)は、かかる好適なポリオルガノシロキサン単位含量を有するA1成分を用いて、A成分100重量%中のポリオルガノシロキサン単位含量を、かかるより好適な範囲とする構成である。これにより、透明性と耐久性の両立に優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記一般式(α1)におけるnが16〜50の範囲である上記構成(1)〜(5)のポリカーボネート樹脂組成物である。かかるポリオルガノシロキサンの重合度を示すnは、10未満では樹脂組成物に十分な耐久性を付与することができず、一方60を超えると透明性に劣るようになる。透明性の点では微分散が必要とされ、耐久性の点では層がある程度分離している方が有利であるからである。かかるnはより好適には16〜50であり、更に好適には20〜40の範囲となる。かかる構成(5)によれば、より良好な透明性と耐久性の両立が可能となる。
本発明の好適な態様の1つは、 (7)上記B3成分のポリカプロラクトンの分子量は、数平均分子量で表して1,500〜40,000である上記構成(1)〜(6)のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(8)(1)〜(7)のポリカーボネート樹脂組成物を、射出成形することにより得られた透明樹脂成形品、
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記射出成形品の肉厚が主として0.05〜0.5mmの部分からなる上記構成(8)の透明樹脂成形品である。
ここで透明樹脂成形品とは、そのヘーズが0.1〜20%、好ましくは0.2〜4%、更に好ましくは0.2〜2%である成形品をいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、改善された流動性、透明性、並びに耐久性を有することから、かかる特性を活かし従来使用できなかった部品に用途展開が可能である。中でも薄肉射出成形品の用途において好適であり、特に透明性が必要とされ、繰り返しの外力を受ける用途に適している。薄肉射出成形品の具体例としては、電池ハウジングなどの各種ハウジング成形品、鏡筒、メモリーカード、スピーカーコーン、ディスクカートリッジ、面発光体、マイクロマシン用機構部品、ヒンジ付き成形品またはヒンジ用成形品、透光・導光型ボタン類、タッチパネル部品などが例示される。したがってその奏する工業的効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】疲労性を評価するために使用した、いわゆるくの字型試験片の正面図である。尚、試験片の厚みは3mmである。符号4で示される孔の部分に試験機の治具を通し、符号3で示される垂直方向に所定の荷重をかけて試験を行う。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下、本発明の詳細について更に説明する。
【0015】
(A1成分:ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体)
本発明のA1成分は、上述のとおり一般式(α1)のポリオルガノシロキサン単位を含有する。かかる一般式(α1)におけるR1、R2、R3およびR4の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、およびフェニル基などが好適に例示され、特にメチル基が好ましい。R5は脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示す。−Si−R5−において、−Si−O−の結合を有する場合、R5は、各種の脂環式ジオール残基および二価フェノール残基を挙げることができる。かかる脂環式ジオールおよび二価フェノールとしては、後述するポリカーボネートと同様のものが利用できる。−Si−R5−において、−Si−C−の結合を有する場合、R5は、o−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基、4−アリル−2−メトキシフェノール残基、およびイソプロペニルフェノール残基などが好適に例示され、特にo−アリルフェノール残基が好ましい。即ち、上述のとおりA1成分は、一般式(α1)として一般式(α2)の構成単位を有することが好ましいが、かかるR11およびR12は、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、およびブタン−2,3−ジイル基などが例示され、中でもエタン−1,2−ジイル基およびプロパン−1,3−ジイル基が好ましく、特にプロパン−1,3−ジイル基が好ましい。
【0016】
A1成分におけるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体において、ポリオルガノシロキサン単位と共重合されるポリカーボネート単位は特に限定されるものではない。即ち、二価フェノール、および/または脂肪族および/または脂環式の二官能性アルコールとカーボネート前駆体とを反応させて得られる各種のカーボネート単位を有することができる。好適であるのは二価フェノールから誘導されるカーボネート単位である。
【0017】
特に上述のとおり一般式(i)で表される構成単位が好ましい。一方、ポリカーボネートの構成単位を誘導する二官能性アルコールとしては脂環式ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、スピログリコール、1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール、1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール、および1,4;3,6−ジアンヒドロ−L−イジトールなどが例示される。
【0018】
一般式(i)の具体例を、該構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例に基づいて説明する。
式(i)におけるAが単結合であるときの化合物としては、4,4’−ビフェノールおよび4,4’−ビス(2,6−ジメチル)ジフェノール等が挙げられる。
【0019】
Aが式(i−1)であるときの化合物としては、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−mジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、およびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0020】
Aが式(i−2)であるときの化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0021】
Aが式(i−3)であるときの化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、および1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0022】
Aが式(i−4)のいずれかであるときの化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドおよびビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0023】
Aが式(i−5)のいずれかであるときの化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、および1,1−ビス(2,3−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)デカン等が例示される。
【0024】
更に式(i)以外の構成単位を誘導される二価フェノールとして、好適には2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素数1〜3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロインダン、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、およびエチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が例示される。
【0025】
上記二価フェノールの中でも、式(i−1)ではビスフェノールM、式(i−2)では9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、式(i−3)では1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、式(i−4)では3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、並びに式(i−5)ではビスフェノールA、ビスフェノールC、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有するビスフェノールAが最も好適である。
【0026】
ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、公知の各種の方法で製造することができる。より好適な方法は、フェノール性水酸基を有する基で両末端をキャップされたポリオルガノシロキサンと、カーボネートオリゴマーとを反応させる方法である。他の方法としては、フェノール性水酸基を有する基で両末端をキャップされたポリオルガノシロキサンと二価フェノールまたは脂肪族ジオールとを共存させた状態でカーボネート前駆体と反応させる方法、および末端に塩素原子を有するポリオルガノシロキサンとカーボネートオリゴマーとを反応させる方法等が例示される。また、かかる反応においては通常のポリカーボネートの重合と同様の条件が用いることができ、ポリカーボネートの重合条件等については後述する。即ち、A1成分において、その製造条件、末端停止剤、および分岐剤成分などは、後述するA1成分以外のポリカーボネートのそれを同様に利用できる。
【0027】
尚、かかるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体には、少なからずポリカーボネートに結合しない、ポリマーの原料として使用された遊離のポリオルガノシロキサンやポリオルガノシロキサンにカーボネート単位や末端停止剤のカーボネート単位が結合しているものの、それが不十分な成分(以下、“遊離のポリオルガノシロキサン等”と称する)が含まれる。かかる遊離のポリオルガノシロキサン等はn−ヘキサンによる抽出処理によりその量を算出することができる。
【0028】
遊離のポリオルガノシロキサン等は、凝集して樹脂組成物の透明性を低下させる原因となりやすい。したがって、本発明のA1成分においては、その遊離のポリオルガノシロキサン等の含有割合、即ち、n−ヘキサン抽出量の割合は、該A1成分中に含まれるポリオルガノシロキサン成分に対して10重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下とすることが好ましい。一方かかる含有割合の下限は0.1重量%程度が実用上妥当である。尚、かかるn−ヘキサン抽出量の算出は、秤量された共重合体試料を、特級n−ヘキサンによりソックスレー抽出処理することにより算出される。かかるソックスレー抽出処理は、平均サイクル約20回/時で3時間実施し、処理後溶液からn−ヘキサンを除去することにより算出する。遊離のポリオルガノシロキサン等を低下させるためには、反応系中のモノマー類が十分に反応するよう、原料や重合促進剤の仕込み比、乳化状態、温度、および攪拌条件を調節する。
【0029】
(ポリカーボネート)
本発明のA成分は、A1成分の単独であっても、A1成分とA1成分以外のポリカーボネートとの混合物であってもよい。かかるA1成分以外のポリカーボネートは、二価フェノール、および/または脂肪族および/または脂環式の二官能性アルコールとカーボネート前駆体とを反応させて得られる、公知のポリカーボネートを利用できる。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。上述の如くA成分のポリカーボネートはまた二価のフェノールまたはアルコールに加えて、3官能成分を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0030】
かかるA1成分以外のポリカーボネートにおいても、上記式(i)で表される構成単位を有するものが好適である。かかる具体例およびその好適な態様も上述のとおりであり、特にビスフェノールAが好ましい。ポリカーボネートのその他詳細については、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報、および特開2002−117580号公報等に記載されている。またポリカーボネートの構成単位を誘導する二官能性アルコールの具体例もA1成分におけるそれと同様である。
【0031】
ポリカーボネートは分岐成分を含有することができ、分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、および4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03〜1モル%、より好ましくは0.07〜0.7モル%、特に好ましくは0.1〜0.4モル%である。また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。上述のとおりA1成分中にかかる分岐成分を含有してもよい。
【0032】
ポリカーボネートは、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。A1成分中にかかるジカルボン酸から誘導される単位を含有してもよい。
【0033】
A成分およびA1成分の粘度平均分子量は上述のとおりであるが、ポリカーボネートは、その範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に50,000を超える粘度平均分子量を有するポリカーボネートは、樹脂組成物の溶融張力を増加させ、かかる特性に基づいて成形加工性を改善できる。その上限は30万が適切である。かかる高分子量ポリカーボネートをA成分中の20重量%を目安とする割合で混合して、所定の分子量範囲を満足するように調整し、成形加工性の改善を図ることができる。
【0034】
ポリカーボネートの重合反応において、界面重縮合法による反応は、通常、二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が好ましく用いられる。有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられる。また、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の3級アミン、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0035】
また、かかる重合反応においては、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類としては、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。
【0036】
界面重縮合法により得られたポリカーボネートの有機溶媒溶液は、通常水洗浄が施される。この水洗工程は、好ましくはイオン交換水等の電気伝導度10μS/cm以下、より好ましくは1μS/cm以下の水により行われ、上記有機溶媒溶液と水とを混合、攪拌した後、静置してあるいは遠心分離機等を用いて、有機溶媒溶液相と水相とを分液させ、有機溶媒溶液相を取り出すことを繰り返し行い、水溶性不純物を除去する。高純度な水で洗浄を行うことにより、効率的に水溶性不純物が除去され、得られるポリカーボネートの色相は良好なものとなる。また、上述のポリカーボネートの有機溶媒溶液は、触媒等の不純物を除去するために酸洗浄やアルカリ洗浄を行うことも好ましい。
【0037】
また、上記有機溶媒溶液は不溶性不純物である異物を除去することが好ましく行われる。この異物を除去する方法は、濾過する方法あるいは遠心分離機で処理する方法が好ましく採用される。
上記水洗浄が施された有機溶媒溶液は、次いで、溶媒を除去してポリカーボネート樹脂の粉粒体を得る操作が行われる。
【0038】
ポリカーボネート樹脂粉粒体を得る方法(造粒工程)としては、操作や後処理が簡便なことから、ポリカーボネート粉粒体および温水(65〜90℃程度)が存在する造粒装置中で、攪拌しながらポリカーボネートの有機溶媒溶液を連続的に供給して、かかる溶媒を蒸発させることにより、スラリーを製造する方法が使用される。当該造粒装置としては攪拌槽やニーダーなどの混合機が使用される。生成されたスラリーは、造粒装置の上部または下部から連続的に排出される。排出されたスラリーは、次いで熱水処理を行うこともできる。熱水処理工程は、かかるスラリーを90〜100℃の熱水の入った熱水処理容器に供給するか、または供給した後に蒸気の吹き込みなどにより水温を90〜100℃にすることによって、スラリーに含まれる有機溶媒を除去するものである。
【0039】
造粒工程で排出されたスラリーまたは熱水処理後のスラリーは、好ましくは濾過、遠心分離等によって水および有機溶媒を除去し、次いで乾燥されて、ポリカーボネート樹脂粉粒体(パウダー状やフレーク状)を得ることができる。乾燥機としては、伝導加熱方式でも熱風加熱方式でもよく、ポリカーボネート樹脂粉粒体が静置、移送されても攪拌されてもよい。なかでも、伝導加熱方式でポリカーボネート樹脂粉粒体が攪拌される溝形または円筒乾燥機が好ましく、溝形乾燥機が特に好ましい。乾燥温度は130℃〜150℃の範囲が好ましく採用される。
【0040】
溶融エステル交換法による反応は、通常、二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコール又はフェノールを留出せしめる方法により行われる。反応温度は、生成するアルコール又はフェノールの沸点等により異なるが、殆どの場合は120〜350℃の範囲内である。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して、生成されるアルコール又はフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は、通常、1〜4時間程度である。
【0041】
上記カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。溶融エステル交換法により得られた溶融ポリカーボネート樹脂は、溶融押出機により、ペレット化することができる。このペレットは成形用に供される。
【0042】
A1成分と他のポリカーボネートとの混合は、以下の(i)〜(iv)に代表される方法で行うことができるが、これらに限定されるものではない。即ち、(i)特開平05−306336号公報に開示されている技術を応用し、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を合成するための乳化液と他のポリカーボネートを合成するための乳化液とを同一反応槽に共に乳化状態を維持して混合し静置させて重合を進展させ、一体となった乳化液からA成分のポリカーボネート系樹脂を回収する方法、(ii)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の溶液と他のポリカーボネートの溶液とを混合し、該混合溶液からA成分のポリカーボネート系樹脂を回収する方法、(iii)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粉粒体と他のポリカーボネートの粉粒体とを混合して一体化した後、B成分と混合する方法、並びに(iv)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粉粒体、他のポリカーボネートの粉粒体、およびB成分の粉粒体を押出機等に供給して混合する方法等が挙げられる。
【0043】
かようにして製造されるA成分のポリカーボネート系樹脂は、そのCl量が0.1〜100ppm、およびOH末端量が0.1〜30eq/tonであることが好ましい。かかるポリカーボネート系樹脂中のCl量は、燃焼法で測定される。試料は秤量された後、アルゴンおよび酸素の混合気流中で燃焼させられ、銀電極の電化移動量で適定される。測定装置には三菱化学社製TOX−2100Hが例示される。またかかるOH末端量は、NMR法、IR法、および滴定法により算出することができる。かかる特性を満足することにより、熱安定性に優れ、変色の少ない成形材料および成形品が得られるようになり、本発明の樹脂組成物は、高温下および高圧力負荷の下で成形される薄肉成形品により適したものとなる。
【0044】
A成分およびA1成分のポリカーボネートの粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
【0045】
尚、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
【0046】
(B3成分)
本発明のB3成分のポリカプロラクトンは、例えばカプロラクトンを酸、塩基、有機金属化合物等の触媒の存在下開環重合して製造することができる。また、ポリカプロラクトンの末端はエステル化やエーテル化等の末端処理を施してあってもよい。ポリカプロラクトンの分子量は数平均分子量で表して1,000〜70,000であり、1,500〜40,000が好ましく、2,000〜30,000がより好ましく、2,500〜15,000が更に好ましい。
【0047】
(C成分:離型剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて離型剤を配合することができ、配合することが好ましい。薄肉成形では成形温度が高く、高圧充填されるため、金型に成形品が密着しやすく離型不良が発生しやすいからである。かかる離型不良は、成形時の割れの他、耐久性の点においてもその残留応力によってクラックの起点になりやすく、好ましくない場合が多い。 本発明の離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および樹脂組成物の透明性の点から脂肪酸エステルが好ましい。かかる離型剤はA成分のポリカーボネート系樹脂100重量部に対して好ましくは、0.005〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.3重量部、更に好ましくは0.03〜0.2重量部、特に好ましくは0.07〜0.15重量部である。添加量が上記範囲の下限未満では、離型性の改善が十分ではなく、上限を超える場合は、樹脂組成物の熱安定性が悪化し、成形安定性に劣るようになる。
更に、離型剤の種類によっては、金型に堆積した離型剤により、成形品にソルベントクラックが生ずる不具合が生ずる場合がある。
【0048】
上記の中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステル(C−1成分)が挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、3〜32の範囲、より好適には5〜30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
【0049】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3〜32であることが好ましく、特に炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14〜20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、それらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明のC−1成分の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なくからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3〜15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。
【0050】
本発明の脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよいが。本発明においてより好ましくは良好な離型性および耐久性の点で部分エステルである。中でもグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。グリセリンモノエステルは、他の離型剤、殊に脂肪酸フルエステルとの併用が可能であるが、併用した場合でもグリセリンモノエステルを主成分とすることが好ましい。即ち、離型剤100重量%中、60重量%以上とすることが好ましい。
【0051】
尚、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
【0052】
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120〜150℃、真空度0.01〜0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160〜230℃、真空度0.01〜0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
【0053】
(その他の添加剤について)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記A成分〜C成分以外にも、通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤を含むことができる。
【0054】
(i)リン系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系安定剤は第3級ホスフィンを含む。
【0055】
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。 更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0056】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0057】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0058】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0059】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0060】
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
【0061】
(ii)ヒンダードフェノール系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性、耐熱老化性、および耐紫外線性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系安定剤が更に配合されることができる。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以を組合せて使用することができる。
【0062】
上記(i)リン系安定剤および(ii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対し、0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.1重量部である。安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下を起こす場合がある。
【0063】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形品の熱処理時における色相を更に安定化させる為、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することができる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら他の酸化防止剤の使用量は、A成分のポリカーボネート系樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
【0064】
(iii)紫外線吸収剤
本発明の紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0065】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0066】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0067】
紫外線吸収剤としては、具体的に環状イミノエステル系では、例えば2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
【0068】
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0069】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0070】
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相(透明性)の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤の配合量は、ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.03〜2重量部、より好ましくは0.02〜1重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0071】
(iv)光安定剤
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。
上記光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物を用いてもよい。光安定剤の使用量はポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましい。
【0072】
(v)ブルーイング剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中0.05〜3.0ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。本発明の樹脂組成物において更に黄色味を減少させ成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更に良好な色相を得る。ブルーイング剤の量
が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は樹脂組成物中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
【0073】
(vi)蛍光染料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な透明性を有することから、更に蛍光増白剤を含むことにより、より高い光透過性や自然な透明感を付与すること、並びに蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を含むことにより、発光色を生かした意匠効果を付与することができる。
【0074】
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。中でも本発明のB成分との組み合わせにおいても良好な特性を維持する点からクマリン系蛍光染料、即ちクマリン誘導体からなる蛍光染料が好ましい。蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対し0.0001〜3重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.5重量部、更に好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.001〜0.1重量部である。かかる範囲においてより良好な耐紫外線性および色相と、熱安定性および光線透過率とが両立する。
【0075】
(vii)帯電防止剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合(例えば、印刷時の埃の付着を防止するなど)があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、A成分100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
【0076】
帯電防止剤としては例えば、(ii)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、A成分100重量部あたり0.5重量部以下の組成割合が適切であり、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.005〜0.2重量部がより好ましい。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
【0077】
帯電防止剤としては、例えば(iii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(iv)ポリエーテルエステルアミドなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部あたり5重量部以下が適切である。
【0078】
(viii)加水分解改良剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、A成分の耐加水分解性を改良する目的で、各種の加水分解改良剤を、本発明の目的を損なわない範囲において配合することもできる。かかる化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、シラン化合物およびホスホン酸化合物などが例示され、特にエポキシ化合物およびオキセタン化合物が好適に例示される。エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ化合物、および3−グリシジルプロポキシ−トリエトキシシランに代表される珪素原子含有エポキシ化合物が好適に例示される。かかる加水分解改良剤の含有量は、A成分100重量部に対して0.01〜1重量部の範囲が好ましい。
【0079】
(ix)熱線吸収能を有する化合物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜0.2重量部が好ましく、0.0008〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
【0080】
(x)その他の染顔料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、発明の効果を発揮する範囲で上記ブルーイング剤および蛍光染料以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性をより損なわない点から、染料が好適である。一方深みのある色彩や、メタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。
【0081】
染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。これら染料の使用量は、A成分ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
【0082】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、スルホン酸塩以外の有機酸金属塩、およびシリコーン系難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
【0083】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、B成分以外の他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれないで少割合使用することもできる。かかる樹脂は特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂に配合した場合の透明性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、およびフェノキシ樹脂などが好適に例示される。かかる他の樹脂は、A成分100重量部に対して0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部の範囲が好ましい。
更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、各種無機充填材、抗菌剤、光触媒系防汚剤、光拡散剤、光高反射用白色顔料およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
【0084】
(樹脂組成物の製造方法について)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではない。しかしながら本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各成分を溶融混練することにより製造されることが好ましい。
【0085】
上記溶融混練の具体的方法としては、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などを挙げることができ、中でも混練効率の点から押出機が好ましく、更に二軸押出機などの多軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機においてより好ましい態様は次の通りである。スクリュー形状は1条、2条、3条のネジスクリューを使用することができ、特に溶融樹脂の搬送能力やせん断混練能力の両方の適用範囲が広い2条ネジスクリューが好ましく使用できる。二軸押出機におけるスクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は、20〜45が好ましく、更に28〜42が好ましい。L/Dが大きい方が均質な分散が達成されやすい一方、大きすぎる場合には熱劣化により樹脂の分解が起こりやすい。スクリューには混練性を上げるためのニーディングディスクセグメント(またはそれに相当する混練セグメント)から構成された混練ゾーンを1個所以上有することが必要であり、1〜3箇所有することが好ましい。
【0086】
更に押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0087】
更にB成分およびその他添加剤(以下の例示において単に“添加剤”と称する)の押出機への供給方法は特に限定されないが、以下の方法が代表的に例示される。(i)添加剤をポリカーボネート系樹脂とは独立して押出機中に供給する方法。(ii)添加剤とポリカーボネート系樹脂粉末とをスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出機に供給する方法。尚、いずれの方法においてもポリカーボネート系樹脂におけるA1成分のポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体と他のポリカーボネートとは、一体の混合物であっても、それぞれ独立した固体であってもよい。
【0088】
上記(ii)の方法の1つは、必要な原材料を全て予備混合して押出機に供給する方法である。また他の方法は、添加剤が高濃度に配合されたマスター剤を作成し、該マスター剤を独立にまたは残りのポリカーボネート樹脂等と更に予備混合した後、押出機に供給する方法である。尚、該マスター剤は、粉末形態および該粉末を圧縮造粒などした形態のいずれも選択できる。また他の予備混合の手段は、例えばナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などがあるが、スーパーミキサーのような高速撹拌型の混合機が好ましい。更に他の予備混合の方法は、例えばポリカーボネート系樹脂と添加剤を溶媒中に均一分散させた溶液とした後、該溶媒を除去する方法である。また第3の方法として(iii)添加剤とポリカーボネート樹脂とを予め溶融混練してマスターペレット化する方法が挙げられる。
【0089】
二軸押出機より押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。更に外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さ好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.mmである。
【0090】
(本発明の樹脂組成物からなる成形品について)
上記の如く得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0091】
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブや光機能性フィルムとして成形することも可能である。また本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
【0092】
これにより優れた透明性および耐久性を有し、薄肉形状のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品が提供される。更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。ハードコートは特に好ましくかつ必要とされる表面処理である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性の測定は、以下の方法によった。原料は以下の原料を用いた。
【0094】
(I)ポリカーボネート樹脂組成物の評価
(i)成形品の透明性:算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル50秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段型プレートの厚み2.0mm部の成形板における全光線透過率とHazeをASTM D1003に準拠し測定した。Hazeは成形品の濁り度で、数値が低いほど濁りが少ないことを示す。
(ii)流動性:住友重機械工業(株)SG−150U成形機を用い、アルキメデス型スパイラルフロー金型(流路厚さ2mm、流路幅8mm)にて流動長を評価した。条件は、シリンダー温度290℃、金型温度70℃、射出圧力100MPaとした。
(iii)疲労特性:図1に示す、いわゆる“くの字型”試験片を用いて、各サンプルにおける疲労試験における破断に至る回数の相違について観察した(破断とは試験片が試験荷重を担えなくなる状態をいい、試験片が2つに切断されることを意味しない)。3本の試験片の平均値を破断回数とした。試験は温度23℃、相対湿度50%、振動数1Hzの正弦波、最大荷重6.86N(7kgf)の条件で実施した。試験装置は、疲労試験機((株)島津製作所製 島津サーボパルサー EHF−FD1−10LA型)を用いた。試験片は、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒にて成形した。
【0095】
(実施例5,6、および比較例1〜3)
表1に記載の配合割合からなる樹脂組成物を以下の要領で作成した。尚、説明は以下の表中の記号にしたがって説明する。表1に記載成分をポリエチレン製の袋内に全量秤取り、かかる袋を振り混ぜることにより均一な予備混合物を作成した。
かかる予備混合物をスクリュー径30mmのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX−30XSST)の最後部の第1投入口に供給した。押出は真空ポンプを使用し3kPaの真空下において、シリンダー温度230℃〜280℃(スクリュー根元のバレル〜ダイスまでほぼ均等に上昇)、スクリュー回転数180rpm、および時間当りの吐出量15kgの条件で行った。押出されたストランドを水浴において冷却した後、ペレタイザーで切断しペレット化した。得られたペレットを120℃で6時間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥した後、上述の試験用の試験片をそれぞれ作成した。
表1に記載の使用原材料は以下の通りである。
【0096】
(A成分)
(A1成分)
PC−PDMS−1:下記の製造法により製造された粘度平均分子量が20,300、平均重合度25のポリジメチルシロキサン成分含有量が4重量%、n−ヘキサン抽出割合が1.2重量%であり、分子量分布Mw/Mnが2.4であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキン共重合体。
PC−PDMS−2:下記の製造法により製造された粘度平均分子量が20,000、平均重合度38のポリジメチルシロキサン成分含有量が4重量%、n−ヘキサン抽出割合が1.7重量%であり、分子量分布Mw/Mnが2.4であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキン共重合体。
PC−PDMS−3:下記の製造法により製造された粘度平均分子量が16,000、平均重合度25のポリジメチルシロキサン成分含有量が4重量%、n−ヘキサン抽出割合が1.3重量%であり、分子量分布Mw/Mnが2.4であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキン共重合体。PC−PDMS−4(比較用):下記の製造法により製造された粘度平均分子量が20,000、平均重合度67のポリジメチルシロキサン成分含有量が3.9重量%、n−ヘキサン抽出割合が2.2重量%であり、分子量分布Mw/Mnが2.4であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキン共重合体。
【0097】
(PC−PDMS−1の製造法):温度計および撹拌機付き反応器にイオン交換水3310部および48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液650部を仕込み、これにハイドロサルファイト1.2部、つづいてビスフェノールA596部を溶解した後、塩化メチレン2230部を加えて激しく撹拌しながら20℃でホスゲン312部を、約40分を要して吹込み反応させた。ホスゲン吹き込み終了後、反応液の温度を28℃に上げてp−tert−ブチルフェノール16部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液173部、並びにo−アリルフェノールで両末端がキャップされ、両末端にフェノール性水酸基を含有する平均重合度25のポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−1875)31部を加えて乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が26℃の状態でトリエチルアミン0.9部を加えて温度26〜31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、共重合体のパウダーを得た。この共重合体の粘度平均分子量は20,300であり、ポリジメチルシロキサン成分含有量は3.95重量%であった。かかる含有量は、1H−NMRの測定に基づき算出した。得られた共重合体をn−ヘキサン(和光純薬製特級)により20回/時のサイクルで3時間ソックスレー抽出を行い、n−ヘキサン抽出割合を算出した。かかる割合は、共重合体中に含有されるポリジメチルシロキサン100重量%中、1.2重量%であった。またGPC測定により算出される分子量分布Mw/Mnは2.4であった。
【0098】
(PC−PDMS−2の製造法):上記PC−1の製造法において、ポリジメチルシロキサンとして、o−アリルフェノールで両末端がキャップされ、両末端にフェノール性水酸基を含有する平均重合度38のポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−1821)を31部加えた以外は、PC−1の製造法と同様にして共重合体のパウダーを得た。この共重合体の粘度平均分子量は20,000であり、ポリジメチルシロキサン成分含有量は4重量%、n−ヘキサン抽出割合は1.7重量%、および分子量分布Mw/Mnは2.4であった。
【0099】
(PC−PDMS−3の製造法):p−tert−ブチルフェノールを24部とする以外は、上記PC−1の製造法と同様にして共重合体のパウダーを得た。この共重合体の粘度平均分子量は16,000であり、ポリジメチルシロキサン成分含有量は4重量%、n−ヘキサン抽出割合は1.3重量%、および分子量分布Mw/Mnは2.4であった。
【0100】
(PC−PDMS−4の製造法):上記PC−1の製造法において、ポリジメチルシロキサンとして、o−アリルフェノールで両末端がキャップされ、両末端にフェノール性水酸基を含有する平均重合度67のポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−1822)を31部加えた以外は、PC−1の製造法と同様にして共重合体のパウダーを得た。この共重合体の粘度平均分子量は20,000であり、ポリジメチルシロキサン成分含有量は3.9重量%、n−ヘキサン抽出割合は2.2重量%、および分子量分布Mw/Mnは2.4であった。
【0101】
(A1成分以外のポリカーボネート)
PC−1:粘度平均分子量19,700の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製パンライトL−1225WX)
PC−2:粘度平均分子量16,000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製パンライトCM−1000)
(B3成分)
B−3:数平均分子量10,000のポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製;プラクセルH1P)
高温連続塊状重合法により製造され、重量平均分子量2,800、分子量分布が2.1のポリスチレンオリゴマーからなる流動改質剤(BASF社製:JONCRYL ADF−1300)
(C成分:離型剤)
C−1:ナトリウム金属含有量が0.2ppmであるグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製)
C−2:ナトリウム金属含有量が9.8ppmであるグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製)
尚、上記のナトリウム金属含有量は、WO2006/025587号パンフレットに記載の方法で測定されたものである。またかかるステアリン酸は、主成分であることを示し、植物性油脂を原料とする混合物である。
【0102】
(その他の成分)
ST−P1:ホスホナイト系熱安定剤(クラリアント社製:サンドスタブP−EPQ(商品名))ST−P2:ホスファイト系熱安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製:Irgafos168)
ST−H1:フェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製Irganox1076(商品名))
UVA:2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)竹本油脂(株)製:CEi−P)BLM:ブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.1重量%となるよう上記PC−2とスーパーミキサーにより均一混合したブルーイング剤マスター。
【0103】
【表1】

【0104】
表1における実施例と比較例との比較から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、流動性および疲労特性に代表される耐久性に優れていることがわかる。
更に、上記の実施例3,4,8,9で得られたペレットを、住友重機械工業(株)製SG260M−HPを用いて、シリンダー温度320℃、金型温度80℃、射速50mm/sec、および成形サイクル70秒の条件で、厚み0.4mmのUL94燃焼試験用の試験片を成形した。いずれもショートショット、離型不良、および残留歪のない透明な成形品が得られた。Hazeはいずれも0.3〜0.4であった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性および流動性に優れていることから、上述の用途以外にも小型のレンズおよびレンズユニット、光カード基板、ディスプレーカバー、視覚効果の要求される各種の筐体類、遊戯装置およびその回路保護カバー、センサーカバー類、および医療機器など幅広い分野に適用可能である。また上述のボタン成形品においては、従来スプルーからカットした後シート状部材に接着される構成を、シート状部材とボタン部品とを一体として射出成形する構成のボタン成形品への適用の試みも可能になる。かかる場合、シート状部材の厚みは概して50〜200μmであり、かかる極めて薄肉の部分を有する射出成形品に適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 くの字型試験片本体
2 くの字部分と円弧部分との結合位置を示す破線
3 疲労試験字に試験片に課される荷重の方向
4 治具装着用孔(直径3mmの円)
5 治具装着用孔の位置を示す中心角(60°)であり、符号7の交点を中心とする
6 試験片の対象軸(図上、上下対称)
7 符号2の破線と対称軸6との交点
8 くの字部分の角度(90°)
9 くの字部分の内側部のR面(R1.5:半径1.5mm)
10 くの字部分の外側部のR面(R10:半径10mm)
11 くの字部分の幅(10mm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(α1)のポリオルガノシロキサン単位を含有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A1成分)からなるか、または該A1成分とA1成分以外のポリカーボネートとからなり、ポリオルガノシロキサン単位含量がA成分100重量%中0.1〜20重量%であるポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対して、下記B3の流動改質剤(B3成分)0.1〜20重量部を含有する樹脂組成物であって、ここでB3成分は、(B3)数平均分子量1,000〜70,000のポリカプロラクトン(B3成分)の流動改質剤であるポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3およびR4は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよく、R5は脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示し、nはカッコ内の単位の繰り返し数を示し、その数平均値が10〜60であり、カッコ内の構成単位は2種以上の混合物であってもよい。)
【請求項2】
上記A1成分の一般式(α1)として下記一般式(α2)の構成単位を有し、かつ下記一般式(i)で表される構成単位を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化2】

(式中、R、R、RおよびR、並びにnは上記一般式(α1)と同じであり、R11およびR12は、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、これらは同一でも異なっていてもよく、Yは、ベンゼン環に結合したR11またはR12、および酸素原子(O)とは、異なる位に置換した水素原子またはアルコキシ基を表す。)
【化3】

(Aは下記式(i−1)〜(i−3)および(i−5)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、または下記式(i−4)のいずれかの結合を表し、sおよびtはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、R13およびR14はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。)
【化4】

(式(i−1)中、R15、R16、R17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【化5】

(式(i−2)中、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【化6】

(上記式(i−3)において、uは4〜11の整数を表し、かかる複数のR21およびR22はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜3のアルキル基から選択される基を表す。)
【化7】

【化8】

(式(i−5)中、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜10の炭化水素基から選択される基を表す。)
【請求項3】
上記A成分は、その粘度平均分子量が16,000〜25,000の範囲である請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
上記A1成分は、その粘度平均分子量が16,000〜25,000の範囲である請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
上記A成分は、そのA1成分100重量%中に含有するポリオルガノシロキサン単位含量が1〜20重量%であり、A成分100重量%中のポリオルガノシロキサン単位含量が0.5〜5重量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
上記一般式(α1)におけるnが16〜50の範囲である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
上記B3成分のポリカプロラクトンの分子量は数平均分子量で表して1,500〜
40,000である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項のポリカーボネート樹脂組成物を、射出成形することにより得られた透明樹脂成形品。
【請求項9】
上記射出成形品の肉厚が主として0.05〜0.5mmの部分からなる請求項8に記載の透明樹脂成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82947(P2013−82947A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24600(P2013−24600)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2007−295742(P2007−295742)の分割
【原出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】