説明

ポリカーボネート物品を滅菌する方法

【課題】
物品を蒸気で処理することからなる方法。
【解決手段】
ここで、物品は、15サイクル以上に渡る熱及び加水分解安定性を物品に付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物からなり、各サイクルは、100℃、大気圧の蒸気と20分接触させることからなる。この物品は、フードサービスや医療用途のような広範囲の用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート物品、特に繰り返して滅菌することができるポリカーボネート物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、自動車部品から医療用機器まで広範囲の用途の物品及び部品の製造に有用である。その広い用途のため、ポリカーボネートに改良された熱及び加水分解安定性を付与することが望ましい。特に医療用機器は蒸気滅菌に対して耐性であるのが望ましい。一部のポリカーボネート物品は一回蒸気滅菌することができるが、多くのポリカーボネート物品は繰り返して蒸気滅菌すると通常、ポリカーボネートの有利な物理的及び/又は機械的性質が悪化する。
【0003】
蒸気滅菌に対する耐性は、殆どの場合、より高いガラス転移温度及び加熱撓み温度を有する物質を用いることによって試みられている。幾つかのこれらの物質はポリエーテルイミド、ポリスルホン、Bayer APEC(高熱性ポリカーボネート)及びポリフタリルカーボネート(PPC、高熱性コポリエステルポリカーボネート)である。しかしながら、一般に、これらの物質には、通常蒸気滅菌される物品における広範な使用を妨げる欠点がある。例えば、ポリエーテルイミドは着色しており、比較的高価で、しかも衝撃強さが低い。ポリスルホンは光への曝露の際に着色し、脆性である傾向があり、粘稠であり、また水を吸収し得る。Bayer APECは加工上の問題があり、また加水分解に対して感受性であり得る剛直な物質であり、ある種のコポリエステルポリカーボネートは脆性の着色物質である傾向がある。従って、当技術分野では、繰り返して蒸気滅菌されても大きく低下した物理的及び/又は機械的性質を示さないポリカーボネート物品の需要が残されている。
【特許文献1】米国特許第3296081号明細書
【特許文献2】米国特許第4053355号明細書
【特許文献3】米国特許第4801422号明細書
【特許文献4】米国特許第5513229号明細書
【特許文献5】米国特許第3706921号明細書
【特許文献6】米国特許第4282061号明細書
【特許文献7】米国特許第4690794号明細書
【特許文献8】米国特許第5519740号明細書
【特許文献9】米国特許第5581586号明細書
【特許文献10】米国特許第5984504号明細書
【特許文献11】米国特許第6590952号明細書
【特許文献12】米国特許第6650722号明細書
【特許文献13】米国特許第6798859号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2002/0122520号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
当技術分野の上記及びその他の欠陥は、物品の少なくとも一部分が、15サイクル以上の間その物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から形成されている物品を蒸気で処理することからなる方法によって満たされる。ここで、各サイクルは1.5気圧以上で121℃以上の蒸気と20分接触させることからなる。
【0005】
さらに別の実施形態では、熱的及び加水分解的に耐性の物品の製造方法は、15サイクル以上の間その物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から物品の少なくとも一部分を形成することからなる。ここで、各サイクルは1.5気圧以上で121℃以上の蒸気に20分間接触させることからなる。
【0006】
また、別の実施形態では、上記方法により形成される物品が提供される。
【0007】
もう1つ別の実施形態では、蒸気滅菌に対する改良された耐性を有する物品は、15サイクル以上の間その物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含んでいる。ここで、各サイクルは1.5気圧以上で121℃以上の蒸気に20分接触させることからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
予想外のことに、本発明者により、ポリシロキサンポリカーボネートコポリマーを用いて、熱的及び加水分解的劣化に対する改良された耐性を物品に付与することができることが発見された。特に有利な特徴において、かかる物品は、1以上の有利な性質を大幅に悪化させることなく繰り返して蒸気で処理(例えば、蒸気滅菌)することができるということが判明した。一実施形態では、本物品は、繰返しの熱及び/又は蒸気処理にもかかわらず、寸法安定性、延性、衝撃強さ、透明性及び/又はビカット軟化温度を殆どないしは全く損なわないことが判明した。
【0009】
熱及び/又は蒸気による処理、例えば蒸気滅菌中の適切な耐熱性を付与するために、本物品は、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から形成される。かかるコポリマーはポリシロキサンブロックとポリカーボネートブロックを含んでいる。ポリカーボネートブロックは次式(1)の繰返し構造カーボネート単位からなる。
【0010】
【化1】

式中、R基の総数の60パーセント以上は芳香族有機基であり、残りは脂肪族、脂環式又は芳香族基である。各Rは芳香族有機基であることができ、次式(2)の基であることができる。
【0011】
【化2】

式中、各A及びAは単環式二価アリール基であり、YはAとAを隔てる1又は2個の原子を有する橋架け基である。代表的な実施形態では、1個の原子がAとAを隔てている。このタイプの基の具体的な非限定例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンである。橋架け基Yは炭化水素基又はメチレン、シクロヘキシリデン若しくはイソプロピリデンのような飽和炭化水素基であることができる。
【0012】
ポリカーボネート単位は、次式(3)のジヒドロキシ化合物を始めとして式HO−ROHを有するジヒドロキシ化合物の界面又は溶融反応によって製造することができる。
【0013】
【化3】

式中、Y、A及びAは上記の通りである。また、次の一般式(4)のビスフェノール化合物も包含される。
【0014】
【化4】

式中、R及びRは各々がハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、同じでも異なっていてもよく、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは次式(5)の基のいずれかを表す。
【0015】
【化5】

式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環式炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0016】
適切なジヒドロキシ化合物の幾つかの具体的な非限定例としては、米国特許第4217438号に名称又は式(一般又は特定)で開示されているジヒドロキシ置換炭化水素がある。適切なジヒドロキシ化合物の特定例の包括的なリストとしては、レゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、l,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−l,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン及び2,7−ジヒドロキシカルバゾールなど、並びに以上のジヒドロキシ化合物を含む混合物がある。
【0017】
式(3)で表すことができるタイプのビスフェノール化合物の特定例の包括的なリストには、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後「ビスフェノールA」又は「BPA」という)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンが包含される。以上のジヒドロキシ化合物を含む組合せも使用することができる。枝分れポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、並びに線状ポリカーボネート単位と枝分れポリカーボネート単位を含むブレンドも有用であり得る。枝分れポリカーボネート単位は重合中に枝分れ剤を添加することによって製造することができる。これらの枝分れ剤としては、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル並びにこれらの官能基の混合物から選択された官能基を3個以上含有する多官能性有機化合物がある。特定例としては、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸がある。枝分れ剤は0.05〜2.0重量パーセント(wt%)のレベルで添加することができる。あらゆるタイプのポリカーボネート末端基が本ポリカーボネート組成物に有用であると考えられる。
【0018】
本明細書で使用する場合、「ポリカーボネート単位」にはさらに、カーボネート連鎖単位及び他の連鎖単位を含むコポリマーが包含される。特定の適切なコポリマー単位はコポリエステルポリカーボネート単位ともいわれるポリエステルカーボネート単位である。かかるコポリマー単位は、式(1)の繰返しカーボネート連鎖単位に加えてさらに次式(6)の繰返し単位を含有する。
【0019】
【化6】

式中、Dはジヒドロキシ化合物から誘導された二価基であり、例えばC2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20芳香族基又はアルキレン基が2、3若しくは4個の炭素原子であることができる2〜6個の炭素原子を含有するポリオキシアルキレン基であることができ、Tはジカルボン酸から誘導された二価基で、例えばC2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20アルキル芳香族基又はC6−20芳香族基であることができる。
【0020】
一実施形態では、DはC2−6アルキレン基である。別の実施形態では、Dは次式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。
【0021】
【化7】

式中、各Rは独立にハロゲン原子、C1−10炭化水素基又はC1−10ハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4である。ハロゲンは臭素であることができる。式(7)で表すことができる化合物の例としては、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物、例えば5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなど、カテコール、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン、例えば2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなど又はこれらの化合物を1種以上含む組合せがある。
【0022】
ポリエステルを製造するのに使用することができる芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸若しくはテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸並びにこれらの酸を1種以上含む混合物がある。1,4−、1,5−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸の場合のような縮合環を含有する酸も存在することができる。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸又はこれらのジカルボン酸を1種以上含む組合せである。特定のジカルボン酸はイソフタル酸とテレフタル酸の混合物からなり、テレフタル酸とイソフタル酸の重量比は10:1〜0.2:9.8である。もう1つ別の特定の実施形態では、DはC2−6アルキレン基であり、Tはp−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価環式脂肪族基又はこれらの混合物である。この部類のポリエステルとしては、ポリ(アルキレンテレフタレート)がある。
【0023】
コポリマーは、繰返し構造カーボネート単位(1)に加えて、次式(8)の繰返し構造単位からなるポリジオルガノシロキサンブロックを含んでいる。
【0024】
【化8】

式中、各々のRは同一か又は異なり、C1−13一価有機基である。例えば、RはC〜C13アルキル基、C〜C13アルコキシ基、C〜C13アルケニル基、C〜C13アルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル基、C〜Cシクロアルコキシ基、C〜C10アリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C13アラルキル基、C〜C13アラルコキシ基、C〜C13アルカリール基又はC〜C13アルカリールオキシ基であることができる。以上のR基の組合せを同じコポリマー中に使用してもよい。
【0025】
式(8)中のDは、蒸気滅菌サイクルの場合のような蒸気による繰返し処理の間有効なレベルの加水分解安定性を付与するように選択される。従って、Dの値は、ポリカーボネートブロックの種類と量、下記のようなポリカーボネート樹脂(存在する場合)の種類と量、衝撃改良剤(存在する場合)の種類と量、ポリシロキサン単位の種類及び組成物中に存在する他の添加剤の種類と量を始めとして、組成物中の各成分の種類と相対量に応じて変化する。Dの適切な値は、本明細書に教示した指針を用いて過度の実験をすることなく当業者が決定することができる。通常、Dは2〜1000、具体的には10〜100、より具体的には25〜75の平均値を有する。一実施形態では、Dは40〜60の平均値を有し、さらに別の実施形態では、Dは50の平均値を有する。Dが低めの値、例えば40未満の場合、比較的多めの量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用することが許容され又は有利であり得る。逆に、Dが高めの値、例えば40より高い場合、比較的少なめの量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用することが許容され又は有利であり得る。
【0026】
特定のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、その組成物から製造される物品の熱及び加水分解安定性の性質を損なわないように当業者により選択される。適切なポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの特定のタイプは次式(9)の繰返し構造単位を含むポリジオルガノシロキサンブロックを有する。
【0027】
【化9】

式中、Dは上記の通りであり、各々のRは同一であるか又は異なり、C1−13一価有機基である。例えば、RはC〜C13アルキル基、C〜C13アルコキシ基、C〜C13アルケニル基、C〜C13アルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル基、C〜Cシクロアルコキシ基、C〜C10アリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C13アラルキル基、C〜C13アラルコキシ基、C〜C13アルカリール基又はC〜C13アルカリールオキシ基であることができる。以上のR基の組合せを同じコポリマー内に使用することができる。式(6)中のRは二価C〜C脂肪族基である。式(9)中の各Mは同じであるか又は異なることができ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜C12アラルキル、C〜C12アラルコキシ、C〜C12アルカリール又はC〜C12アルカリールオキシであることができ、各nは独立に0、1、2、3又は4である。
【0028】
一実施形態では、Mは独立にブロモ若しくはクロロ、C〜Cアルキル基、例えばメチル、エチル若しくはプロピル、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシ又はC〜Cアリール基、例えばフェニル、クロロフェニル若しくはトリルであり、Rはジメチレン、トリメチレン又はテトラメチレン基であり、RはCアルキル、ハロアルキル、例えばトリフルオロプロピル、シアノアルキル又はアリール、例えばフェニル、クロロフェニル若しくはトリルである。別の実施形態では、Rはメチル又はメチルとトリフルオロプロピルの混合物又はメチルとフェニルの混合物である。さらに別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、Rは二価C〜C脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0029】
これらの単位は、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(10)から誘導することができる。
【0030】
【化10】

式中、Y、R、D、M、R及びnは上記の通りである。かかるジヒドロキシポリシロキサンは、次式(11)のシロキサンヒドリドと脂肪族性不飽和一価フェノールの白金触媒付加を行うことによって作成することができる。
【0031】
【化11】

式中、RとDは既に定義した通りである。適切な脂肪族性不飽和一価フェノールとしては、例えば、オイゲノール、2−アルキルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノール及び2−アリル−4,6−ジメチルフェノールがある。以上の脂肪族性不飽和一価フェノールを含む混合物も使用することができる。
【0032】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、ジヒドロキシポリシロキサン(10)とカーボネート源及び式(3)のジヒドロキシ芳香族化合物とを、界面重合や溶融重合のようなプロセスで反応させることによって製造することができる。界面重合の反応条件は変化し得るが、代表的なプロセスでは通常、二価反応体を水性苛性ソーダ又はカリに溶解又は分散させ、得られた混合物を適切な水不混和性溶媒媒体に添加し、トリエチルアミンや相間移動触媒のような適切な触媒の存在下、管理されたpH条件、例えば8〜10で反応体をカーボネート前駆体と接触させる。一実施形態では、コポリマーは、0℃以下〜100℃の温度でホスゲン化により製造され、また25〜50℃の温度で製造することができる。最も一般的に使用される水不混和性溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどがある。適切なカーボネート前駆体としては、例えば、臭化カルボニルや塩化カルボニルのようなハロゲン化カルボニル又は二価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロホルメート)若しくはグリコールのビスハロホルメート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロホルメート)のようなハロホルメートがある。以上のタイプのカーボネート前駆体を1種以上含む組合せも使用することができる。一実施形態では、フェノール、tert−ブチルフェノール又はパラ−クミルフェノールのような単官能性化合物が存在し、連鎖停止剤として機能してポリカーボネートの分子量を制限することができる。
【0033】
使用することができる特定の相間移動触媒の中には式(RXの触媒があり、式中の各Rは同じであるか又は異なり、C1−10アルキル基であり、Qは窒素又はリン原子であり、Xはハロゲン原子又はC1−8アルコキシ基若しくはC6−188アリールオキシ基である。適切な相間移動触媒としては、例えば、[CH(CHNX、[CH(CHPX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、CH[CH(CHNX、CH[CH(CH)]NXがあり、ここでXはCl、Br又はC1−8アルコキシ基若しくはC6−188アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効量はホスゲン化混合物中の二価反応体の重量を基準にして0.1〜10wt%であることができる。別の実施形態では、相間移動触媒の有効量はホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量を基準にして0.5〜2wt%であることができる。米国特許出願公開第2004/0039145号に記載されている管型反応器プロセスの一方又は両方を使用して、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを合成することができる。
【0034】
また、溶融法を使用してコポリマーを作成することができる。通常、溶融重合法では、コポリマーを製造するのに、バンバリーミキサー、二軸式押出機などを用い、エステル交換触媒の存在下でジヒドロキシ反応体とジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネートエステルとを溶融状態で共に反応させて、均一な分散物を形成することができる。溶融している反応体から蒸留により揮発性一価フェノールを除去し、溶融残渣としてポリマーを単離する。
【0035】
ポリエステル単位を含むポリカーボネートコポリマーは、例えば米国特許第3169121号及び同第4487896号に記載されているような界面重合技術によっても製造することができる。ジカルボン酸自体を使用する代わりに、その酸の反応性誘導体、例えば対応する酸ハロゲン化物、特に酸二塩化物及び酸二臭化物を使用することが可能であり、場合によっては好ましいことさえあり得る。すなわち、例えばイソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物を使用する代わりに、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル並びにこれらの1種以上を含む組合せを使用することが可能である。
【0036】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの製造において、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、繰返し蒸気に曝露した際に有効なレベルの加水分解耐性を組成物に付与するように選択される。従って、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、Dの値、組成物中の各成分、例えばポリカーボネートブロック、ポリシロキサンブロック、任意のポリカーボネート樹脂、任意の衝撃改良剤及びあらゆる他の添加剤の相対量とタイプに応じて変化する。ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量に対して適切な値は、本明細書に教示した指針を用いて当業者が過度の実験をすることなく決定することができる。通例、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、0.1〜40wt%のポリジメチルシロキサン又は等モル量の別のポリジオルガノシロキサンを含むコポリマーが生成するように選択される。その後、このコポリマーを他のポリマーと合わせて、異なるポリシロキサン含量を有するポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含むブレンドを始めとするブレンドを作成することができる。0.1wt%未満のポリジメチルシロキサン単位が存在すると、組成物中により高めの量のコポリマーが存在しても適切な耐熱性が達成されない。40wt%より多いポリジメチルシロキサン単位は、成形製品における層間剥離、低めの熱変形温度及び加工の困難性のように、組成物の物理的性質に悪影響を及ぼすことがある。
【0037】
典型的な実施形態では、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、0.5〜12wt%のポリジメチルシロキサン又は等モル量の別のポリジオルガノシロキサンを含むコポリマーが生成するように選択される。別の実施形態では、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、1〜7wt%のポリジメチルシロキサン又は等モル量の別のポリジオルガノシロキサンを含むコポリマーが生成するように選択される。これらのコポリマーは、当技術分野で記載されているように、そのコポリマーがどのように合成されたかに応じて不透明又は透明な物品を製造するのに使用することができる。
【0038】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、10000〜200000、具体的には20000〜100000の重量平均分子量(MW、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー、超遠心又は光散乱により測定)を有することができる。一般に、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、15000〜100000の重量平均分子量を有することができる。適切なポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーはGE Plasticsから市販されている。
【0039】
上記のポリシロキサンポリカーボネートコポリマーに加えて、本組成物は、1種以上の追加の成分、例えば追加の熱可塑性樹脂及び/又は充填材その他の添加剤を含んでいてもよい。この追加の成分(1種以上)は、組成物の熱及び加水分解安定性に対して有意な悪影響を及ぼさないように選択され、従って高熱性材料であり得る。
【0040】
一実施形態では、本組成物は、以下により詳細に記載するように蒸気による処理の前後で組成物の望ましい性質に有意な悪影響を及ぼさない高熱性熱可塑性ポリマーを含む。一実施形態では、高熱性熱可塑性ポリマーは、1.8メガパスカル(MPa)における加熱撓み温度(HDT)が135℃より高い。別の実施形態では、高熱性熱可塑性ポリマーは、0.45MPaにおける加熱撓み温度が150℃より高い。加熱撓み温度はASTM 648に準拠して測定することができる。
【0041】
高熱性熱可塑性ポリマーは、ポリオキシメチレン、ポリアリーレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート並びにこれらの高熱性熱可塑性ポリマーを1種以上含む組合せからなる群から選択され得る。
【0042】
一実施形態では、高熱性熱可塑性ポリマーは、式(1)のカーボネート単位を含む高熱性ポリカーボネートであることができる。種々の高熱性ポリカーボネートを使用することができ、上記性質を損なわないように当業者が選択することができる。一実施形態では、高熱性ポリカーボネートは、式(3)のジヒドロキシ化合物、好ましくは式(4)のビスフェノール化合物から誘導された単位を、高熱性モノマーから誘導された単位と共に含むコポリマーである。適切な高熱性モノマーとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、2−フェニル−3−3−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)フタルイミジン(PPP)、4,4’−(ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−5−イリデン)ジフェノール(TCD又はトリシクロデカンビスフェノール)、ビスフェノールTMC(1,3,5−トリメチルシクロヘキサン)(Bayer’s APEC材料に見られる)、4−[1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル]フェノール、4,4’−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル]ビスフェノール、フェノールフタレイン、2−メチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−ブチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−オクチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド及び1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジアルキルシクロヘキサンがあり、ここでアルキル基は例えば米国特許第5344999号に記載されているように1〜4個の炭素原子を有する。適切な高熱性ポリカーボネートの特定の例は、以上の高熱性モノマーから誘導された単位を、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンから誘導されたモノマーと共に含む。また、高熱性ポリカーボネートは以上のポリカーボネートモノマーから作成することができ、次いでこれを、高熱性モノマー又は高熱耐性をもたらすその他のポリマーとブレンドする。
【0043】
別の適切な高熱性ポリカーボネートは、式(1)の単位を式(6)のポリエステル単位と共に含むコポリエステルポリカーボネートである。ここでも、式(1)の単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタンのような高熱性二価化合物又は高熱性二価化合物とビスフェノールAのような他の二価化合物との組合せから誘導され得る。エステル単位は好ましくは芳香族である。一実施形態では、エステル単位はイソフタル酸又はテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸から誘導される。
【0044】
高熱性ポリカーボネートの平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して5000〜100000、より具体的には10000〜65000、最も具体的には15000〜45000であり得る。異なる重量のポリカーボネートの混合物を使用して、所望の粘度及び/又はその他の物理的性質達成することができる。
【0045】
この高熱性ポリカーボネートは、上記の通り界面重合や溶融重合のようなプロセスで製造することができる。高熱性コポリエステルポリカーボネートの製造の適切な手順は、例えば米国特許第4238597号に記載されている。適切な高熱性ポリカーボネートは、GE Plasticsから入手可能な商標LEXAN 4704、4504及び4404で、またBayerから入手可能なAPECで市販されている。
【0046】
上記高熱性ポリカーボネート樹脂に加えて、ポリカーボネート樹脂とその他の熱可塑性ポリマーの組合せ、例えばポリカーボネート及び/又はポリカーボネートコポリマーとポリエステルとの組合せも可能である。使用する場合、「組合せ」には、混合物、ブレンド、アロイ、コポリマーなどが包含される。適切なポリエステルは、式(6)の繰返し単位を含み、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル及びポリエステルコポリマーであることができる。また、枝分れ剤、例えば3個以上のヒドロキシル基又は三官能性若しくは多価官能性カルボン酸を有するグリコールが配合されている枝分れポリエステルを使用することが可能である。さらに、組成物の最終使用目的に応じて、ポリエステル上に様々な濃度の酸及びヒドロキシル末端基を有するのが望ましいことがある。
【0047】
一実施形態では、ポリ(アルキレンテレフタレート)を使用する。適切なポリ(アルキレンテレフタレート)の特定の例は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(l,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)、(ポリプロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)並びにこれらのポリエステルを1種以上含む組合せである。また、以上のポリエステルと、少量、例えば0.5〜10重量パーセントの脂肪族二酸及び/又は脂肪族ポリオールから誘導された単位とがコポリエステルを形成しているものも考えられる。
【0048】
ポリカーボネートとポリエステルのブレンドは、10〜90wt%のポリカーボネートとこれに対応して90〜10wt%のポリエステル、特にポリ(アルキレンテレフタレート)からなる。一実施形態では、ブレンドは、30〜70wt%のポリカーボネートと、これに対応して70〜30wt%のポリエステルからなる。以上の量はポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の総重量に基づいている。
【0049】
組成物は、さらに、その衝撃耐性を増大するために特定の組合せの衝撃改良剤を含む衝撃改良剤組成物を含むことができる。適切な衝撃改良剤は、(i)0℃より低い、より具体的には−40〜−8O℃のTgを有するエラストマー性(すなわち、ゴム状)ポリマー基幹(基体)と、(ii)エラストマー性ポリマー基幹にグラフト化した硬質ポリマー枝とからなるエラストマー変性グラフトコポリマーであることができる。公知のように、エラストマー変性グラフトコポリマーを製造するには、まず最初にエラストマー性ポリマー基幹を製造することができる。次いで、1種以上、具体的には2種のグラフト用モノマーを、ポリマー基幹の存在下で重合してグラフトコポリマーを得る。
【0050】
存在するエラストマー変性ポリマーの量に応じて、非グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーの別個のマトリックス又は連続相を、エラストマー変性グラフトコポリマーと共に同時に得ることができる。通常、かかる衝撃改良剤は衝撃改良剤の総重量を基準にして40〜95wt%のエラストマー変性グラフトコポリマーと5〜60wt%のグラフト(コ)ポリマーからなる。別の実施形態では、かかる衝撃改良剤は、衝撃改良剤の総重量を基準にして50〜85wt%又は75〜85wt%のゴム変性グラフトコポリマー及び15〜50wt%、より具体的には15〜25wt%のグラフト(コ)ポリマーと共に含む。非グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーはまた、例えば、ラジカル重合により、特に乳化、懸濁液、溶液若しくは塊状重合によって別途製造されるが、衝撃改良剤組成物又はポリカーボネート組成物に添加される。かかる非グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーは20000〜200000の数平均分子量を有することができる。
【0051】
エラストマー性ポリマー基幹として使用するのに適切な材料としては、例えば、共役ジエンゴム、共役ジエンと50wt%未満の共重合可能なモノマーとのコポリマー、C1−8アルキル(メタ)アクリレートエラストマー、エチレンプロピレンコポリマー(EPR)若しくはエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)のようなオレフィンゴム、シリコーンゴム、エラストマー性C1−8アルキル(メタ)アクリレート、C1−8アルキル(メタ)アクリレートとブタジエン及び/又はスチレンとのエラストマー性コポリマー又はこれらのエラストマーを1種以上含む組合せがある。
【0052】
ポリマー基幹を製造するのに適切な共役ジエンモノマーは次式(12)のものである。
【0053】
【化12】

式中、各Xは独立に水素、C〜Cアルキル、塩素、臭素などである。使用することができる共役ジエンの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、クロロ−及びブロモ−置換ブタジエン、例えばジクロロブタジエン、ブロモブタジエン、ジブロモブタジエンなど、並びに以上の共役ジエンを1種以上含む混合物である。特定の共役ジエンホモポリマーとしては、ポリブタジエン及びポリイソプレンがある。
【0054】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば、共役ジエンと、これと共重合可能な1種以上のモノマーとの水性ラジカル乳化重合によって製造されたものも使用することができる。共役ジエンとの共重合に適切なモノマーとしては、縮合芳香環構造を含有するモノビニル芳香族モノマー、例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど又は次式(13)のモノマーがある。
【0055】
【化13】

式中、各Xは独立に水素、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであり、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ又はクロロである。使用することができる適切なモノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ−クロロスチレン、以上の化合物を1種以上含む組合せなどがある。スチレン及び/又はα−メチルスチレンが、共役ジエンと共重合可能なモノマーとして広く使用されている。以上のモノビニルモノマーとモノビニル芳香族モノマーの混合物も使用することができる。
【0056】
共役ジエンと共重合することができるその他のモノマーは、モノビニルモノマー、例えばイタコン酸、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド又はメタアクリルアミド、マレイン酸無水物、マレイミド、N−アルキル、アリール又はハロアリール置換マレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル及び次の一般式(14)のモノマーである。
【0057】
【化14】

式中、Rは既に定義した通りであり、Xはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニル、C〜C12アリールオキシカルボニルなどである。式(XV)のモノマーの例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル、以上のモノマーを1種以上含む組合せなどがある。アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルのようなモノマーが、共役ジエンと共重合可能なモノマーとして広く使用されている。
【0058】
エラストマー性ポリマー基幹として使用するのに適している適切な(メタ)アクリレートゴムは、場合により15wt%以下のコモノマー、例えばスチレン、メタクリル酸メチル、ブタジエン、イソプレン、ビニルメチルエーテル又はアクリロニトリル並びにこれらのコモノマーを1種以上含む混合物と混合されたC1−8アルキル(メタ)アクリレート、特にC4−6アルキルアクリレートの架橋した粒子状乳化ホモポリマー又はコポリマーであることができる。場合により、5wt%以下の多官能性架橋用コモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、例えばグリコールビスアクリレート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなど、並びに以上の架橋剤を1種以上含む組合せが存在することができる。
【0059】
エラストマー性ポリマー基幹はブロック又はランダムコポリマーのいずれかの形態であることができる。基幹の粒径は重要ではない。例えば、基幹の粒径は、0.05〜1.2マイクロメートルの平均粒径であることができ又は乳化系重合ゴムラテックスの場合0.2〜0.8マイクロメートルであることができ若しくはさらにグラフト化モノマー封入物(occlusion)をも有する塊状ゴム基幹の場合0.5〜10マイクロメートル若しくはさらに0.6〜1.5マイクロメートルであることができる。粒径は簡単な光透過法又は毛管流体クロマトグラフィー(CHDF)で測定することができる。ゴム基幹は、粒子状の適度に架橋した共役ジエン又はC4−6アルキルアクリレートゴムであることができ、70%より高いゲル含量を有することができる。また、共役ジエン及びC4−6アルキルアクリレートゴムの混合物も適している。
【0060】
エラストマー性グラフトコポリマーの製造の際、エラストマー性ポリマー基幹は、グラフトコポリマー全体の40〜95wt%からなることができ又はエラストマー変性グラフトコポリマーの50〜85wt%からなることができ、さらには75〜85wt%からなることができ、残りが硬質グラフト相である。
【0061】
一実施形態では、エラストマー変性グラフトポリマーは、1種以上のエラストマー性ポリマー基幹の存在下で、モノビニル芳香族モノマーと場合により1種以上のコモノマーを含む混合物のグラフト重合によって得ることができる。上記モノビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロスチレン、例えばジブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラ−ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン又はこれらのモノビニル芳香族モノマーを1種以上含む組合せを、硬質グラフト相内に使用することができる。モノビニル芳香族モノマーは、1種以上のコモノマー、例えば上記モノビニルモノマー及び/又は一般式(XV)のモノマーと組み合わせて使用することができる。1つの特定の実施形態では、モノビニル芳香族モノマーはスチレン又はα−メチルスチレンであり、コモノマーはアクリロニトリル、アクリル酸エチル及び/又はメタクリル酸メチルである。別の特定の実施形態では、硬質グラフト相は、スチレンとアクリロニトリルのコポリマー、α−メチルスチレンとアクリロニトリルのコポリマー又はメタクリル酸メチルのホモポリマー若しくはコポリマーであることができる。
【0062】
かかるエラストマー変性グラフトコポリマーの特定の例としては、特に限定されないが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸ブチル(ASA)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)及びメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)及びアクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン(AES)がある。
【0063】
別の実施形態では、エラストマー変性グラフトポリマーは、1種以上のエラストマー性ポリマー基幹の存在下で、1種以上の上記モノビニルモノマー及び/又は一般式(XV)のモノマーを含む混合物の乳化グラフト重合によって得ることができる。特定の実施形態では、モノビニルモノマーアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル及び/又は メタクリル酸メチルがある。
【0064】
エラストマー変性グラフトポリマーは、連続式、半回分式又は回分式プロセスを用いて塊状、乳化、懸濁、溶液又は複合法、塊状(バルク)−懸濁、乳化−塊状、塊状−溶液若しくはその他の技術によって重合することができる。上記の通り、特定の衝撃改良剤の特定の組合せを使用することによって、驚くべき良好な結果が得られた。
【0065】
特に、第1の衝撃改良剤は、乳化重合により製造され、C6−30脂肪酸のアルカリ金属塩、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなど、アルカリ金属炭酸塩、アミン、例えばドデシルジメチルアミン、ドデシルアミンなど及びアミンのアンモニウム塩のような塩基性の物質を含まない。かかる物質は、乳化重合における界面活性剤として広く使用されており、ポリカーボネートのエステル交換及び/又は分解を触媒することができる。代わりに、衝撃改良剤、特に
イオン性スルフェート、スルホネート又はホスフェート界面活性剤を使用することができる。適切な界面活性剤としては、例えば、C1−22アルキル若しくはC7−25アルキルアリールスルホネート、C1−22アルキル若しくはC7−25アルキルアリールスルフェート、C1−22アルキル又はC7−25アルキルアリールホスフェート、置換されたシリケートであり、以上の界面活性剤を1種以上含む組合せが包含される。特定の界面活性剤はC6−16、さらにはC8−12アルキルスルホネートを移す。
【0066】
本発明の衝撃改良剤を製造するための乳化重合プロセスは重要なものではなく、Rohm & Haas及びGeneral Electric Companyのような会社の各種特許及び文献に記載され開示されている。実施に際して、上記衝撃改良剤の多くが、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、その他の塩基性物質を含まないという条件の下で使用することができる。しかし、一実施形態では、衝撃改良剤は、コアがエラストマー性ポリマー基幹であり、シェルがPCで容易に湿潤される硬質熱可塑性ポリマーであるコア−シェル構造を有する。このシェルはコアを単に物理的にカプセル化することができるか又はシェルは部分的に又は本質的に完全にコアにグラフト化していることができる。シェルはモノビニル芳香族化合物及び/又はモノビニルモノマー若しくはアルキル(メタ)アクリレートの重合生成物からなることができる。このタイプの特定の衝撃改良剤はMBS衝撃改良剤であり、この場合ブタジエン基幹は上記スルホネート、スルフェート又はホスフェートを界面活性剤として使用して製造される。また、衝撃改良剤は3〜8又はより好ましくは4〜7である。
【0067】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーは当技術分野で周知であり、例えば、General Electric CompanyからBLENDEX(登録商標)グレード131、336、338、360及び415として入手可能な高ゴムアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を始めとして多くが市販されている。
【0068】
ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、追加の熱可塑性ポリマー及び任意の衝撃改良剤(以後、「樹脂組成物」という)に加えて、本組成物は、このタイプの組成物中に通常混入される各種添加剤を含んでいることができる。ただし、それらの添加剤がこの組成物の所望の性質、特に蒸気による繰返し処理後の加水分解及び/又は熱的安定性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。従って、湿気の存在下で触媒の分解を起こす添加剤、例えば加水分解的に不安定なホスファイトは望ましくないであろう。添加剤の混合物を使用することができる。かかる添加剤は、組成物を形成するための成分を混合する間の適切な時点で混合することができ又はマスターバッチの形態で添加することができる。
【0069】
適切な充填材又は強化材としては、例えば、TiO、繊維、例えばアスベスト、炭素繊維など、ケイ酸塩及びシリカ粉末、例えばケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ヒュームドシリカ、結晶質シリカ グラファイト、天然珪砂など、ホウ素粉末、例えば窒化ホウ素粉末、ホウケイ酸塩粉末など、アルミナ、酸化マグネシウム(マグネシア)、硫酸カルシウム(無水物、二水和物又は三水和物)、炭酸カルシウム、例えばチョーク、石灰石、大理石、合成沈降炭酸カルシウムなど、タルク、例えば繊維状、モジュール状、針状、ラメラ状タルクなど、ウォラストナイト、表面処理ウォラストナイト、ガラス球、例えば中空及び中実ガラス球、ケイ酸塩球、セノスフェア、アルミノケイ酸塩(アーモスフェア(armosphere))など、カオリン、例えば硬質カオリン、軟質カオリン、焼成カオリン、ポリマーマトリックス樹脂との相溶性を助けることが当技術分野で公知の様々なコーティングを含むカオリンなど、単結晶繊維又は「ウィスカー」、例えば炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅など、ガラス繊維(例えば連続及びチョップト繊維)、例えばE、A、C、ECR、R、S、D及びNEガラス及び石英など、硫化物、例えば硫化モリブデン、硫化亜鉛など、バリウム化合物、例えばチタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石など、金属及び金属酸化物、例えば粒子状又は繊維状アルミニウム、青銅、亜鉛、銅及びニッケルなど、フレーク状充填材、例えばガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、スチールフレークなど、繊維状充填材、例えば無機短繊維、例えば1種以上のケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸カルシウム半水和物を含むブレンドから誘導されたものなど、天然の充填材及び強化材、例えば木材、繊維状生成物、例えばセルロース、綿、サイザル、ジュート、澱粉、コルク粉、リグニン、挽いたナッツ殻、トウモロコシ、もみ殻などを粉砕することによって得られる木粉、繊維を形成することができる有機ポリマー、例えばポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリ(ビニルアルコール)などから形成された強化用有機繊維状充填材、並びにその他の充填材及び強化材、例えば雲母、粘土、長石、煙塵、フィライト(fillite)、石英、石英岩、パーライト、トリポリ、ケイ藻土、カーボンブラックなど又はこれらの充填材若しくは強化材を1種以上含む組合せがある。
【0070】
これらの充填材及び強化材は、金属材料の層でコートして導電性を促進することもできるし又はシランで表面処理してポリマーマトリックス樹脂との接着及び分散を改良することもできる。また、強化用充填材はモノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の形態で得ることができ、単独で又は例えば共織り又はコア/シース(鞘)により、並べて、オレンジ−タイプ若しくはマトリックス及びフィブリル構造により若しくはその他繊維製造の当業者に公知の方法によって他のタイプの繊維と組み合わせて使用することができる。適切な共織り構造としては、例えば、ガラス繊維−炭素繊維、炭素繊維−芳香族ポリイミド(アラミド)繊維及び芳香族ポリイミド繊維ガラス繊維などがある。繊維状充填材は、例えば、ロービング、0〜90度ファブリックなどのような織った繊維状強化材、連続ストランドマット、チョップトストランドマット、ティッシュー、紙及びフェルトなどのような不織繊維状強化材又は組み紐・編み紐のような三次元強化材の形態で供給され得る。充填材は一般に、樹脂組成物の100重量部を基準にして1〜50重量部の量で使用される。
【0071】
適切な熱安定剤添加剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス−(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス−(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)ホスファイトなどのようなオルガノホスファイト、ジメチルベンゼンホスホネートなどのようなホスホネート、トリメチルホスフェートなどのようなホスフェート又はこれらの熱安定剤を1種以上含む組合せがある。熱安定剤は通常、ポリカーボネート樹脂と任意の衝撃改良剤の100重量部を基準にして0.01〜1.0重量部の量で使用される。一実施形態では、熱安定剤添加剤は、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.03〜0.09重量部の量で存在する。
【0072】
適切な酸化防止剤添加剤としては、例えば、オルガノホスファイト、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなど、アルキル化モノフェノール又はポリフェノール、ポリフェノールとジエンのアルキル化反応生成物、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンなど、パラ−クレゾール又はジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデン−ビスフェノール、ベンジル化合物、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸と一価若しくは多価アルコールのエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と一価若しくは多価アルコールのエステル、チオアルキル若しくはチオアリール化合物のエステル、例えばジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸などのアミド又はこれらの酸化防止剤を1種以上含む組合せがある。酸化防止剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.001〜1.0重量部の量で使用される。
【0073】
適切な光安定剤添加剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール類、例えば2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなど又はこれらの光安定剤を1種以上含む組合せがある。光安定剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.001〜3.0重量部の量で使用される。
【0074】
適切なUV吸収剤添加剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾトリアジン類、シアノアクリレート類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(CYASORB 5411)、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB 531)、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−l,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール(CYASORB 1164)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン)(CYASORB UV−3638)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL 3030)、2,2’−(l,4−フェニレン)ビス(4H−3,l−ベンゾキサジン−4−オン)、l,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン、ナノ−サイズの無機材料、例えば酸化チタン、酸化セリウム及び酸化亜鉛(いずれも粒径100ナノメートル未満)など又はこれらのUV吸収剤を1種以上含む組合せがある。UV吸収剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.001〜3.0重量部の量で使用される。
【0075】
適切な可塑剤添加剤としては、例えば、フタル酸エステル、例えばジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレート、トリス−(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン、エポキシド化大豆油など又はこれらの可塑剤を1種以上含む組合せがある。可塑剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして1〜50重量部の量で使用される。
【0076】
適切な帯電防止添加剤としては、例えば、グリセロールモノステアレート、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど又はこれらの帯電防止剤の組合せがある。一実施形態では、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、カーボンブラック又はこれらの任意の組合せを、化学的帯電防止剤を含有するポリマー樹脂中に使用して、その組成物を静電気的に散逸性とすることができる。帯電防止剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.001〜5.0重量部の量で使用される。
【0077】
適切な離型性添加剤としては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラステアレート、1−デセン(エチルフロー)、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックスなど又はこれらの離型剤を1種以上含む組合せがある。離型剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.10〜3.0重量部の量で使用される。
【0078】
適切な潤滑剤添加剤としては、例えば、脂肪酸エステル、例えばアルキルステアリルエステル、例えばステアリン酸メチルなど、適切な溶媒中のステアリン酸メチルとポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー及びこれらのコポリマーからなる親水性及び疎水性界面活性剤、例えば、ステアリン酸メチルとポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーとの混合物又はこれらの潤滑剤を1種以上含む組合せがある。潤滑剤は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.01〜5.0重量部の量で使用される。
【0079】
適切な顔料添加剤としては、例えば、無機顔料、例えば金属酸化物及び混合金属酸化物、例えば酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄など、硫化物、例えば硫化亜鉛など、アルミン酸塩、スルホケイ酸ナトリウム(sodium sulfo-silicate)、硫酸塩及びクロム酸塩、カーボンブラック、亜鉛フェライト、ウルトラマリンブルー、Pigment Brown 24、Pigment Red 101、Pigment Yellow 119、有機顔料、例えばアゾ、ジアゾ、キナクリドン、ペリレン、ナフタレンテトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、アンタントロン、ジオキサジン、フタロシアニン及びアゾレーキ、Pigment Blue 60、Pigment Red 122、Pigment Red 149、Pigment Red 177、Pigment Red 179、Pigment Red 202、Pigment Violet 29、Pigment Blue 15、Pigment Green 7、Pigment Yellow 147及びPigment Yellow 150又はこれらの顔料を1種以上含む組合せがある。顔料は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.00001〜20重量部の量で使用される。
【0080】
適切な染料としては、例えば、有機染料、例えばクマリン460(青)、クマリン6(緑)、ナイルレッドなど、ランタニド錯体、炭化水素及び置換炭化水素染料、多環式芳香族炭化水素、シンチレーション染料(例えばオキサゾール及びオキサジアゾール)、カルボシアニン染料、フタロシアニン染料、オキサジン染料、カルボスチリル染料、ポルフィリン染料、アクリジン染料、アントラキノン染料、アリールメタン染料、アゾ染料、ジアゾニウム染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、テトラゾリウム染料、チアゾール染料、ペリレン染料、ペリノン染料、ビス−ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT)、キサンテン染料、フルオロフォア、例えばアンチストークスシフト染料(近赤外波長で吸収し、可視波長で放出する)など、発光染料、例えば7−アミノ−4−メチルクマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス−(4−ビフェニリル)−オキサゾール、2,2’−ジメチル−p−クォーターフェニル、2,2−ジメチル−p−ターフェニル、3,5,3””,5””−テトラ−t−ブチル−p−キンケフェニル、2,5−ジフェニルフラン、2,5−ジフェニルオキサゾール、4,4’−ジフェニルスチルベン、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、1,1’−ジエチル−2,2’−カルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチル−4,4’,5,5’−ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージド、7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2、7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2、2−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−3−エチルベンゾチアゾリウムペルクロレート、3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサゾニウムペルクロレート、2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール、2,2’−p−フェニレン−ビス(5−フェニルオキサゾール)、ローダミン700、ローダミン800、ピレン、クリセン、ルブレン、コロネンなど又はこれらの染料を1種以上含む組合せがある。染料は通常、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.0001〜20重量部の量で使用される。
【0081】
フォーム(発泡体)が望まれる場合、適切な発泡剤としては、例えば、低沸点ハロ炭化水素及び二酸化炭素を生成するもの、室温では固体であり、その分解温度より高い温度に加熱されたときに窒素、二酸化炭素25、アンモニアガスのようなガスを生成する発泡剤、例えばアゾジカーボンアミド、アゾジカーボンアミドの金属塩、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなど又はこれらの発泡剤を1種以上含む組合せがある。発泡剤は通常、米国特許第5597887号に記載されているように、ポリカーボネート中のカーボネート構造単位の総モル数を基準にして2.0〜10のモル比で使用される。
【0082】
添加することができる適切な難燃剤はリン、臭素及び/又は塩素を含む有機化合物であることができる。ある種の用途では、規制上の理由から、非臭素化及び非塩素化リン含有難燃剤、例えば有機ホスフェート及び/又はリン−窒素結合を含有する有機化合物が好ましいことがある。
【0083】
1つのタイプの代表的な有機ホスフェートは式(GO)P=Oの芳香族ホスフェートであり、式中、各々のGは独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール又はアラルキル基であるが、1つ以上のGが芳香族基である。2つのG基が互いに結合して環式基を形成することができる。例えば、Axelrodの米国特許第4154775号に記載されているジフェニルペンタエリトリトールジホスフェートがある。その他の適切な芳香族ホスフェートは、例えば、フェニルビス(ドデシル)ホスフェート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスフェート、フェニルビス(3,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ビス(ドデシル)p−トリルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどであることができる。特定の芳香族ホスフェートは、各々のGが芳香族であるもの、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェートなどである。
【0084】
二−又は多官能性の芳香族リン含有化合物も有用であり、例えば次式の化合物がある。
【0085】
【化15】

式中、各々のGは独立に1〜30個の炭素原子を有する炭化水素であり、各々のGは独立に1〜30個の炭素原子を有する炭化水素又は炭化水素オキシであり、各々のXは独立に臭素又は塩素であり、mは0〜4であり、nは1〜30である。適切な二−又は多官能性芳香族リン含有化合物の例としては、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート及びビスフェノール−Aのビス(ジフェニル)ホスフェート、これらのオリゴマー及びポリマー対応物などがある。上記二−又は多官能性芳香族化合物の製造方法は英国特許第2043083号に記載されている。
【0086】
リン−窒素結合を含有する代表的な適切な難燃剤化合物としては、塩化ホスホニトリル、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフインオキシドがある。存在する場合、リン含有難燃剤は、樹脂組成物の100重量部を基準にして、通常0.001〜10重量部の量で存在することができ又は0.01〜5重量部の量で存在することができる。
【0087】
ハロゲン化物質もまた有用な部類の難燃剤である。これらの物質は次式(15)の芳香族ハロゲン化合物及び樹脂であることができる。
【0088】
【化16】

式中、Rはアルキレン、アルキリデン又は環式脂肪族結合、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど、酸素エーテルからなる群から選択される結合、カルボニル、アミン又はイオウ含有結合、例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどである。Rはまた芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどのような基によって連結された2以上のアルキレン若しくはアルキリデン結合からなることもできる。
【0089】
式(15)中のAr及びAr’は各々独立にモノ−又はポリ炭素環式芳香族基、例えばフェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレンなどである。Ar及びAr’は同じであるか又は異なることができる。
【0090】
Yは有機、無機又は有機金属基からなる群から選択される置換基である。Yで表される置換基としては、(1)ハロゲン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フルオリン又は(2)一般式OEのエーテル基(ここで、EはXと類似の一価炭化水素基である)又は(3)Rで表されるタイプの一価炭化水素基又は(4)その他の置換基、例えば、ニトロ、シアノなどであり、これらの置換基は本質的に不活性であるが、1個以上が存在し、アリール核1個当たり2個のハロゲン原子が存在することができる。
【0091】
存在する場合、各Xは独立に一価炭化水素基、例えばアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなど、アリール基、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなど及びアラルキル基、例えばベンジル、エチルフェニルなど、環式脂肪族基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルなどである。この一価炭化水素基はそれ自身が不活性な置換基を含有することができる。
【0092】
各dは独立に1から、Ar又はAr’からなる芳香環上の置換される置換可能な水素の数の最大値に等しい。各eは独立に0から、R上の置換可能な水素の数に等しい最大値である。各a、b及びcは独立に0を含む整数である。bが0でない場合、aもcも0であることができる。他の場合には、a又はcのいずれか一方のみが0であることができる。bが0である場合、芳香族基は直接炭素−炭素結合によって結合される。
【0093】
芳香族基Ar及びAr’上のヒドロキシル及びY置換基は芳香環上でオルト、メタ又はパラ位で変化することができ、またこれらの基は互いに対して任意の可能な幾何学的関係にあることができる。
【0094】
上記式の範囲内にはビスフェノールがあり、その代表例は2,2−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ビス−(2−クロロフェニル)−メタン、ビス(2,6−ジブロモフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヨードフェニル)エタン、1,2−ビス−(2,6−ジクロロフェニル)エタン、1,1−ビス−(2−クロロ−4−ヨードフェニル)エタン、1,1−ビス−(2−クロロ−4−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)エタン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ブロモフェニル)エタン、2,6−ビス−(4,6−ジクロロナフチル)プロパン、2,2−ビス−(2,6−ジクロロフェニル)−ペンタン、2,2−ビス−(3,5−ジブロモフェニル)ヘキサン、ビス−(4−クロロフェニル)フェニルメタン、ビス−(3,5−ジクロロフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス−(3−ニトロ−4−ブロモフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,6−ジクロロ−3−メトキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。また、上記構造式には、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−4−ヒドロキシベンゼン、並びにビフェニル、例えば2,2’−ジクロロビフェニル、ポリ臭素化1,4−ジフェノキシベンゼン、2,4’−ジブロモビフェニル及び2,4’−ジクロロビフェニル並びにデカブロモジフェニルオキシドなどが包含される。
【0095】
また、オリゴマー及びポリマーのハロゲン化芳香族化合物、例えばビスフェノールA及びテトラブロモビスフェノールA及びカーボネート前駆体、例えばホスゲンのコポリカーボネートも有用である。金属相乗剤、例えば、酸化アンチモンを難燃剤と共に使用してもよい。存在する場合、ハロゲン含有難燃剤は、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.001〜10重量部の量で存在することができ又は0.01〜5重量部の量で存在することができる。
【0096】
無機難燃剤も使用することができ、例えばペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)及びジフェニルスルホンスルホン酸カリウムのようなスルホン酸塩、並びに米国特許第3775367号などに記載されているペルフルオロアルカンスルホン酸塩、
例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム塩などであることができる)と無機酸錯塩、例えばオキソ−陰イオンとを反応させることで形成される塩、例えば炭酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、例えばNaCO、KCO、MgCO、CaCO、BaCO及びBaCO又はフルオロ−陰イオン錯体、例えばLiAlF、BaSiF、KBF、KAlF、KAlF、KSiF及び/又はNaAlFなどがある。存在する場合、無機難燃剤塩は、樹脂組成物の100重量部を基準にして、通常0.001〜10重量部の量で存在することができ、また0.01〜5重量部の量で存在することができる。
【0097】
ドリップ抑制剤、例えばフィブリル形成性又は非フィブリル形成性のフルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)も使用できる。ドリップ抑制剤は上記したような硬質コポリマー、例えばSANでカプセル化してもよい。SAN中にカプセル化されたPTFEはTSANとして公知である。カプセル化されたフルオロポリマーは、フルオロポリマー、例えば水性分散液の存在下でカプセル化用ポリマーを重合させることによって作成することができる。TSANは、TSANが組成物中により容易に分散することができるという点でPTFEと比べて多大な利点を提供し得る。適切なTSANは、例えば、カプセル化されたフルオロポリマーの総重量を基準として50wt%のPTFEと50wt%のSANからなることができる。SANは、例えば、このコポリマーの総重量を基準として75wt%のスチレンと25wt%のアクリロニトリルからなることができる。また、フルオロポリマーは、何らかの方法で第2のポリマー、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂又はSANと予めブレンドして、ドリップ抑制剤として使用される凝集した物質を形成してもよい。いずれの方法を用いてカプセル化されたフルオロポリマーを製造してもよい。ドリップ抑制剤は一般に、樹脂組成物の100重量部を基準にして0.01〜20重量部の量で使用される。
【0098】
組成物の各成分の相対量は、所望の性質、使用する個々の成分などに依存し、当業者により以下の指針を用いて容易に決定される。一実施形態では、樹脂組成物は、4〜100wt%のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、0〜15wt%の衝撃改良剤及び0〜96wt%の追加のポリマーからなる。別の実施形態では、樹脂組成物は、25〜90wt%のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、0〜12wt%の衝撃改良剤及び10〜75wt%の追加のポリマー、好ましくは高温熱可塑性樹脂からなる。さらに別の実施形態では、樹脂組成物は、30〜85wt%のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、0〜10wt%の衝撃改良剤及び15〜70wt%の任意の追加のポリマーからなる。以上のwt%の値は全て、樹脂組成物、すなわち、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、あらゆる衝撃改良剤及びあらゆる任意の追加のポリマーの合わせた重量を基準にしている。
【0099】
上記混合物は、熱的及び加水分解的に安定な物品、特に蒸気処理することが意図される物品、例えば皿洗い機又はオートクレーブの性能要件に対して最適であると考えられる。少なめの量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用する混合物は、対応して蒸気処理、特に蒸気滅菌の際に低めの延性保持率を示し得るが、高めの量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを用いる混合物は、より高い層間剥離の可能性又は繰返し蒸気処理の間に物品の軟化を起こす熱誘起変形に対する低めの耐性を示し得る。
【0100】
本組成物は、当技術分野で一般に利用可能な方法によって製造することができ、例えば、一実施形態では、最初に、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、あらゆる衝撃改良剤、あらゆる追加のポリマー及び任意の添加剤を、場合によりチョップトガラスストランドその他の充填材と共にHenschel高速ミキサーでブレンドする。特に限定されないが手練りを始めとする他の低剪断プロセスでもこのブレンド作業を達成することができる。ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、組成物全体にわたって充分に分散したときに最も効果的である。幾つかの状況において、穏やかな加熱により、混合作業中のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの分散を補助することができる。溶媒を使用して、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの分散に役立てることができる。
【0101】
次に、このブレンドをホッパーを介して二軸式押出機の喉部へ供給する。或いは、1以上の成分を、喉部で及び/又は下流でサイドスタッファーを介して直接押出機に供給することにより組成物中に混入することができる。また、添加剤は、所望のポリマー樹脂と共にコンパウンディングしてマスターバッチとし、押出機に供給することもできる。場合により、再分配触媒を含ませて、ブレンド中のポリマーの分子量を調節し及び/又はブレンド中のポリシロキサンブロックの再分配を実施することも可能である。再分配触媒としては、例えば、不活性有機溶媒の存在下で枝分れ部位を生成する割合の多官能性フェノール性枝分れ剤及び塩基性エステル交換触媒を一緒に反応させることによって生成する触媒がある。エステル交換触媒と反応させるのに有用な適切な多官能性フェノール性又はカルボン酸性枝分れ剤は芳香族であり、カルボキシル、カルボン酸無水物、フェノール、ハロホルミル又はこれらの混合物である官能基を3つ以上含有する。これらの多官能性芳香族化合物の幾つか非限定例としては、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’,5,5’−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、トリメリト酸無水物、トリメリト酸、トリメリトイルトリクロリド、4−クロロホルミルフタル酸無水物、ピロメリト酸、ピロメリト酸二無水物、メリト酸、メリト酸無水物、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などがある。好ましい多官能性フェノール性又はカルボン酸性化合物は1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリメリト酸無水物、トリメリト酸又はこれらのハロホルミル誘導体である。適切なエステル交換触媒としては、例えば、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカリ又はアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、アルコキシド又はアミド、並びに酸化亜鉛のような塩基性金属酸化物、ステアリン酸リチウムのような弱酸の塩及びオルガノチタン、オルガノアルミニウム及びオルガノスズ、例えばテトラオクチルチタネートがある。他の触媒としては、例えば、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートがある。
【0102】
押出機は通常、組成物が流動するのに必要な温度より高い温度で作動させる。押出物は即座に水浴で急冷し、ペレット化する。こうして製造されたペレットは、押出物を切断したときに、所望により長さ1/4インチ(6.35mm)以下であることができる。かかるペレットはその後の成形、賦形又は造形に使用することができる。
【0103】
本組成物はまた、フィルム、シート、テープ、ウェブ、チューブ(円筒状及び非円筒状の両方)などに押し出すことができ又は商業的に入手可能な通常の手順によって物品に賦形、造形若しくは成形、例えば射出成形、圧縮成形することができる。
【0104】
適切な物品は非常に様々であることができる。一実施形態では、物品はそのメンテナンス及び/又は使用の規定の一部として蒸気処理を受ける。本明細書で使用する場合「蒸気処理」及び「蒸気との接触」とは、指定条件下での蒸気単独又は蒸気及び水との接触を含んで意味するものと了解されたい。別の実施形態では、物品は、そのメンテナンス及び/又は使用、例えば医療用機器の規定の一部としてスチームオートクレーブ(「スチームオートクレーブ滅菌」)内で蒸気処理を受ける。医療用機器の幾つかの例は、注射器、血液フィルターハウジング、血液バッグ、溶液バッグ、静脈コネクター、透析装置、カテーテル、医療用保存トレイ、医用器具、医療用チューブ、心臓ペースメーカー及び細動除去器、カニューレ、移植可能なプロテーゼ、心臓補助装置、心臓弁、血管移植片、体外装置、人工臓器、ペースメーカーリード、細動除去器リード、血液ポンプ、バルーンポンプ、A−Vシャント、バイオセンサー、細胞カプセル化用の膜、創傷包帯、人工関節、整形用インプラント並びに注射器である。
【0105】
メンテナンス及び/又は使用の規定の一部として蒸気処理を受け得る非医療用機器の例としては、フードトレイ、動物の檻、ケーブルシース、ワニス及びコーティング、ポンプ及び車両の構造部品、鉱石採掘用スクリーン及びコンベヤベルト、積層用コンパウンド、航空用途 チョコレートモールド、水冷器部品、洗濯機部品、皿洗い機部品、皿洗い機で洗える物品などがある。幾つか用途において、物品はそれほど厳格でない条件(例えば、皿洗い機)及びスチームオートクレーブ滅菌での両方の蒸気処理に付されることがある。
【0106】
1つの特定の実施形態では、物品を蒸気で処理することを含んでなる方法が提供され、ここで、物品の少なくとも一部分は、15サイクル以上の間その物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から形成され、各サイクルは100℃以上、1.0気圧以上で20分蒸気と接触させることからなる。別の実施形態では、物品の少なくとも一部分は、15サイクル以上の間その物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から形成され、各サイクルは121℃以上、1.5気圧以上で20分蒸気と接触させることからなる。
【0107】
別の実施形態は、物品を蒸気で処理することを含んでなり、100℃、大気圧で15サイクル以上物品を蒸気に曝露することを含んでおり、ここで、物品は、この物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量でポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含んでいる。さらに別の実施形態は、物品を蒸気で処理することを含んでなり、121℃、1.5気圧の圧力で15サイクル以上物品を蒸気に曝露することを含んでおり、ここで、物品は、この物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに有効な量でポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含んでいる。
【0108】
別の実施形態は、医療用機器をスチームオートクレーブ処理することを含んでなり、ここで、医療用機器の少なくとも一部分は、15回以上のオートクレーブサイクルの間その物品にオートクレーブ耐性を付与するのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から形成されており、各サイクルは121℃以上、1.5気圧以上で20分蒸気と接触させることからなる。
【0109】
別の特定の実施形態では、121℃、1.5気圧の圧力で15サイクル以上の間物品を蒸気に曝露することを含んでなる物品を蒸気滅菌する方法が提供され、ここで、物品は、物品にスチームオートクレーブ耐性を付与するのに有効な量でポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含んでいる。
【0110】
蒸気滅菌はその便利さと信頼性のために医療用途で使用されることが多い。蒸気滅菌は、1回以上の有効なサイクルの間物品をオートクレーブ処理することを伴い得る。有効なサイクルは、使用するオートクレーブ、そのオートクレーブのユーザー及び滅菌する物品、並びに圧力、温度及びサイクルの長さに応じて大きく変化し得る。また、オートクレーブサイクルは種々の蒸気ボイラー添加剤の存在下で行うことができる。蒸気発生系内の腐食を低減するように設計された典型的なボイラー添加剤は、アミノ化合物、例えばモルホリン、ヒドラジン、N,N−ジエチルアミノエタノール(「NALCO 359」又は「BETZ NA−9」)及びオクタデシルアミンである。蒸気滅菌はまた、「Castle 7900」(音波クリーナー)、「Chem Crest 14」(超音波クリーナー)、「Tergitol Min Foam 2X」(非イオン性界面活性剤)などの商標で販売されているもののような各種病院用クリーナー及び洗浄剤の存在下でも可能である。
【0111】
さらに別の実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、100℃、大気圧で、各20分の持続時間の15サイクル以上の蒸気による処理の際に物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに充分な量で存在する。
【0112】
さらに別の実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、121℃、1.5気圧の圧力、各20分の持続時間で15サイクル以上のスチームオートクレーブ処理の際に物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに充分な量で存在する。別の実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、121℃、2.0気圧の圧力、各20分の持続時間で15サイクル以上のスチームオートクレーブ処理の際に物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに充分な量で存在する。さらに別の実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、135℃、1.5気圧の圧力、各20分の持続時間で15サイクル以上のスチームオートクレーブ処理の際に物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに充分な量で存在する。さらに別の実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、135℃、2気圧の圧力、各20分の持続時間で15サイクル以上のスチームオートクレーブ処理の際に物品に熱及び加水分解安定性を付与するのに充分な量で存在する。
【0113】
本明細書で使用する場合「熱及び加水分解安定性」を有する物品とは、以上の条件下でのオートクレーブ処理を始めとする蒸気処理の後、本発明の組成物を含む物品が、衝撃強さ、引張強さ、延性率、寸法安定性、ビカット軟化温度、透明性などのような1以上の物理的又は機械的性質において有意な低下を示さないことを意味している。蒸気処理は100〜200℃、1〜30気圧の圧力で起こり得る。本明細書で使用する場合「有意な低下」とは、その物品がその後の使用に適さなくなる程度の特定の物理的又は機械的性質の悪化を意味する。当業者には分かるように、物品がその後の使用に適さなくなるようにする物理的性質の悪化は、特定の物品及び使用目的のような要因に応じて大きく変化し得る。以下に特定する実施形態では、改良された熱及び加水分解安定性を有する物品の各種物理的及び/又は機械的性質について記載する。蒸気処理した物品がその後の使用に適さないとみなされ得るかどうかを決定する基準は、例えば、繰返し蒸気滅菌後の注射器が下記のような衝撃耐性の性質を満たさないことを決定することであり得る。その後の使用に対するこの適合基準は、以下に記載する物理的及び/又は機械的性質のいずれか又は全てに同様に適用することができる。その後の使用の適合を決定するために本発明で使用する蒸気処理基準は熱及び加水分解安定性の単なる一例であり、下記のように滅菌後物品の特定の機械的及び/又は物理的性質のパラメーターを維持することを条件として、等価な代わりの基準が当業者によって決定され得ることが了解されるであろう。
【0114】
例えば、熱及び加水分解安定性を有する物品は、各サイクルが100℃、大気圧で20分の蒸気との接触からなる15回以上の処理サイクルに耐えることができ、その初期引張強さの50%以上、具体的にはその初期引張強さの75%を保持することができる。別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、各サイクルが121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の蒸気との接触からなる15回以上のオートクレーブサイクルに耐えることができ、その初期引張強さの50%以上、具体的にはその初期引張強さの75%を保持することができる。
【0115】
別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、各サイクルが100℃以上、大気圧で20分の蒸気との接触からなる15回以上の蒸気処理サイクルに耐えることができ、50〜99%、具体的には60〜99%、より具体的には75〜99%の延性率を維持することができる。別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、各サイクルが121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧の圧力で20分の蒸気との接触からなる15回以上のオートクレーブサイクルに耐えることができ、50〜99%、具体的には60〜99%、より具体的には75〜99%の延性率を維持することができる。本明細書で使用する場合、延性率は、対象組成物の5〜10本の1/8インチ(3.12mm)のASTM又はISO試験棒を使用し、これらの試験棒をそれぞれASTM D 256又はISO 180/1 Aに従う衝撃試験にかけることで決定することができる。通常、応力白化又は延性破断は延性破壊モードを示し、一方応力白化の欠如又は脆性破断は脆性破壊モードを示す。延性率は、延性破壊モードを示した試験棒の百分率として表す。
【0116】
別の実施形態では、寸法安定性の有意な低下とは、その物品のいずれかの寸法が15回以上のオートクレーブサイクル後に10%より多く変化することを意味し、ここで、各サイクルは100℃、大気圧で20分の蒸気との接触からなる。別の実施形態では、寸法安定性の有意な低下とは、その物品のいずれかの寸法が15回以上のオートクレーブサイクル後に10%より多く変化することを意味し、ここで、各サイクルは121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の蒸気との接触からなる。例えば、オートクレーブ処理の前後の両方で無負荷のフリーチューブ(unloaded, free tubing)の直径を測定したときに、その物品が寸法安定性であると考えられるためには、そのチューブのいずれか一点におけるチューブ直径の寸法が、100℃、大気圧での蒸気処理後10パーセントより多く変化していてはならない。別の実施形態では、その物品が寸法安定性であると考えられるためには、そのチューブのいずれか一点におけるチューブの寸法が、121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧で15サイクルの蒸気によるオートクレーブ処理後5パーセントより多く変化していてはならない。
【0117】
別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、ビカット軟化温度(ASTM D−1525により測定して物品の軟化が最初に認められる温度)が15回以上のオートクレーブサイクル後に121〜400℃、具体的には125〜300℃、より具体的には130〜220℃であることができ、ここで、各サイクルは100℃、大気圧で20分の蒸気との接触からなる。別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、ビカット軟化温度が15サイクル以上後に121〜400℃、具体的には125〜300℃、より具体的には130〜220℃であることができ、ここで、各サイクルは121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の蒸気との接触からなる。
【0118】
別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、各サイクルが100℃、大気圧で20分の蒸気との接触からなる15サイクル以上の後に、ASTM D256に従って1/8−インチ(3.12mm)の試験棒を用いて室温で測定して3〜18ft−lb/インチ(フィート・ポンド/インチ)又は3〜14ft−lb/インチのノッチ付アイゾット衝撃(NII)を有することができる。別の実施形態では、熱及び加水分解安定性を有する物品は、各サイクルが121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の蒸気との接触からなる15回以上のオートクレーブサイクルの後に、ASTM D256に従って1/8−インチ(3.12mm)の試験棒を用いて室温で測定して3〜18ft−lb/インチ(フィート・ポンド/インチ)又は3〜14ft−lb/インチのノッチ付アイゾット衝撃(NII)を有することができる。
【0119】
さらに別の実施形態では、各サイクルが100℃、大気圧で20分の蒸気との接触からなる15サイクル以上の蒸気処理後、物品は、ASTM D256により測定して15〜100%、具体的には40〜100%、より具体的には60〜100%のパーセントNII保持率を有することができる。さらに別の実施形態では、各サイクルが121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の蒸気との接触からなる15回以上のオートクレーブサイクルのオートクレーブ処理後、物品は、ASTM D256により測定して15〜100%、具体的には40〜100%、より具体的には60〜100%のパーセントNII保持率を有することができる。
【0120】
本熱可塑性組成物は、高湿度条件に曝露した後の重量平均分子量及び/又はメルトフロー(MFR)の変化率の低下に反映されるように著しく改良された加水分解エージング安定性を有し得る。メルトフローは所定の温度及び荷重でオリフィスを通る熱可塑性材料の押出速度である。これは、溶融した物質の流動性を測定する手段を提供し、熱及び/又は湿度に曝露された結果としてのプラスチックの分解の程度を決定するのに使用することができる。分解した物質は通常、低減した分子量の結果としてより流動し、低減した物理的性質を示し得る。通例、高湿度条件下での保存前後にメルトフローレートを決定し、その後パーセント差を計算する。
【0121】
物品の形成に適切な組成物は、100℃、大気圧で20分の15回の処理サイクル後、メルトフローの変化率が、ISO 1133に従って300℃/1.2キログラム(Kg)(6分の予熱後)で測定して約20%未満、具体的には1〜15%未満、より具体的には約10%未満であるという点で、改良された加水分解エージング安定性を有し得る。オートクレーブ処理可能な物品の形成に適切な組成物はまた、121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の15回のオートクレーブサイクル後、メルトフローの変化率が、ISO 1133に従って300℃/1.2キログラム(Kg)(6分の予熱後)で測定して約20%未満、具体的には1〜15%未満、より具体的には約10%未満であるという改良された加水分解エージング安定性を有し得る。
【0122】
物品の形成に適切な組成物は、100℃、大気圧で20分の15サイクル後、重量平均分子量の変化率が、ポリスチレン標準を用いてジクロロメタン中でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して1〜10%又は1〜8%又はさらに1〜5%であるという改良された加水分解エージング安定性を有し得る。オートクレーブ処理可能な物品の形成に適切な組成物は、121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分ずつの15回のオートクレーブサイクル後、重量平均分子量の変化率がポリスチレン標準を用いてジクロロメタン中でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して1〜10%又は1〜8%又はさらに1〜5%であるという改良された加水分解エージング安定性を有し得る。
【0123】
一実施形態では、例えば物品を通して又はその中の透視が重要なときには、透明な組成物を使用し得る。例えば、血液及び流体の取扱装置のような医療用途の場合、血液及びドレン管路内の例えば泡、血塊、異物などを観察できることが重要なことがある。本明細書中に記載した組成物では、透明性に悪影響を及ぼすことなく1/4インチ(6.35mm)以下又はそれ以上の壁厚を有する装置の製造が可能である。また、各サイクルが100℃以上、大気圧以上の圧力で20分の蒸気との接触からなる15回以上のサイクルの蒸気処理後、物品は、ASTM D 1003に準拠して測定したときに、30%未満のヘイズと40%より高い透過率、具体的には20%未満のヘイズと50%より高い透過率、より具体的には15%未満のヘイズと60%より高い透過率を有し得る。また、各サイクルが121℃又は135℃、1.5又は2.0気圧(ゲージ)の圧力で20分の蒸気との接触からなる15回以上のオートクレーブサイクルでオートクレーブ処理した後、物品は、ASTM D 1003に準拠して測定したときに、30%未満のヘイズと40%より高い透過率、具体的には20%未満のヘイズと50%より高い透過率、より具体的には15%未満のヘイズと60%より高い透過率を有し得る。
【0124】
一実施形態では、本明細書中に記載した蒸気処理又は滅菌した物品は、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含有しないポリカーボネート組成物と比較して増大した蒸気耐性を有することができる。一実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物から作成されたオートクレーブ耐性物品は、100〜300℃、1〜3気圧の圧力で1〜5000回のオートクレーブサイクル後、具体的には110〜250℃、1〜2気圧の圧力で5〜1000回のオートクレーブサイクル後、より具体的には120〜200℃、1〜1.8気圧の圧力で10〜100回のオートクレーブサイクル後、上記の通り熱的及び加水分解的に安定である。例えば、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーから作成されたオートクレーブ耐性物品は、100〜300℃、1〜3気圧の圧力で1〜5000回のオートクレーブサイクルの間寸法安定性であることができ又は110〜250℃、1〜2気圧の圧力で5〜1000回のオートクレーブサイクルの間寸法安定性であることができ、さらにまた120〜200℃、1〜1.8気圧の圧力で10〜100回のオートクレーブサイクルの間寸法安定性であることができる。
【実施例】
【0125】
以下の非限定的実施例により、本発明をさらに例証する。
【0126】
下記実施例では以下の材料を使用した。
A:ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、3.5wt%ポリジメチルシロキサン、D=45〜50。
B:ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、5.0wt%ポリジメチルシロキサン、D=45〜50。
B1:ISO 10993で試験したポリシロキサン−ポリカーボネート、3.5wt%ポリシロキサン、D=45〜50。
LEXAN 141:汎用、中程度の粘度のBPAポリカーボネート。
LEXAN 164H:改良された加水分解安定性を有するポリカーボネート製品。
HPS6:高粘度、高分子量のポリカーボネート。
4704:高温ポリフタリル−BPAカーボネートコポリマー。
【0127】
実施例1
以上のポリマーの試料を0.125インチ(3.2mm)の厚さのASTM試験棒に成形した。初期ノッチ付アイゾット衝撃強さをASTM D256に準拠して測定した。次に、この試料を飽和蒸気オートクレーブ中に入れ、そのオートクレーブを指定時間の間121℃(250°F)に維持した。試料を取り出し、ノッチを付け、このオートクレーブした試料のノッチ付アイゾット衝撃強さを測定した。データは、初期ノッチ付アイゾット衝撃強さのパーセント保持率として示す。全てのケースで、各試料の5本の試験棒を測定した。
【0128】
B1(3.5%ポリシロキサン製品)及び選択されたポリカーボネート製品のノッチ付アイゾット衝撃保持率を比較して図1及び表1に示す。表1は、選択された製品のノッチ付アイゾット衝撃強さ(ft−lb/インチ)に対する延長された121℃オートクレーブ効果を示す。延性率は、延性的な試料破断の百分率を示す。全ての実施例で使用される「Std dev」は標準偏差である。
【0129】
【表1】

B1製品は、粘性が低めであり、4704及びHPS6より低い熱変形温度値を有しているが、121℃での延長されたオートクレーブ処理後衝撃性のより良好な保持率を有する。驚くべきことに、B1は、ずっと長い平均オートクレーブ処理期間にわたって他の比較試料よりずっと高い延性率を示す。
【0130】
実施例2
試料をISOアイゾット試験棒に成形し、ノッチを付けた。初期ノッチ付アイゾット衝撃強さを測定した。次に、試料を飽和蒸気オートクレーブ内に入れ、そのオートクレーブを指定時間の間100℃(212°F)に維持した。試料を取り出し、オートクレーブした試料のノッチ付アイゾット衝撃強さを測定した。データは、初期ノッチ付アイゾット衝撃強さのパーセント保持率として示す。全てのケースで、各試料の5本の試験棒を測定した。
【0131】
表2は、ポリシロキサン−ポリカーボネート製品とポリカーボネート製品について、キロジュール/平方メートル(kJ/m)で表したノッチ付アイゾット衝撃強さの保持率を示す。全ての実施例で使用したMVRは、ISO 1133に準拠して測定しcm/10minで表したメルトボリュームフローレートである。ノッチ付アイゾット衝撃強さはISO 180/1 Aに従ってkJ/mで示す。
【0132】
【表2】

ポリシロキサンを含有するポリカーボネート製品はまた、100℃(212°F)、増大した圧力で改良された性質保持率を示す。ポリシロキサンを含有する製品A及びBは、表2及び3並びに図2及び3に示されているように改良された加水分解安定性に関して最適化されたポリカーボネート製品である164Hと比べてノッチ付アイゾット衝撃及び機器衝撃のより良好な保持率を示す。
【0133】
Si(PDMS)の含量は、ポリジメチルシロキサン中のケイ素の含量を示す。示されているように、試料A及びBは、25時間のオートクレーブ処理後に延性率をもたない164Hと対照的に、延長された期間にわたって延性率の維持を示す。
【0134】
表3は、ポリシロキサン−ポリカーボネート製品とポリカーボネート製品についての機器衝撃エネルギー(J)の保持率を示す。800時間の期間にわたって、A及びBは両方とも、その初期エネルギー最大値の約85%を保持していたが、164Hはその初期エネルギー最大の約56%を維持していたのみである。破壊エネルギー及び最大エネルギーはISO 6603法に従ってジュールで表される。延性は延性的に破断する試料の数により決定される。
【0135】
【表3】

実施例3
実施例3では、試料を0.125インチ(3.2mm)の厚さのASTMアイゾット試験棒に成形した。初期ノッチ付アイゾット衝撃強さを測定した。次に、試料を飽和蒸気オートクレーブ内に入れ、そのオートクレーブを指定時間の間121℃(250°F)に維持した。試料を取り出し、ノッチを付け、オートクレーブされた試料のノッチ付アイゾット衝撃強さを測定した。データは初期ノッチ付アイゾット衝撃強さのパーセント保持率として示す。全てのケースで、各試料の5本の試験棒を測定した。
【0136】
表4は、ポリシロキサン−ポリカーボネート含量を増大することによる121℃、1.5気圧でのオートクレーブ後のノッチ付アイゾット衝撃(ft−lb/in)保持率の改良を示す。
【0137】
【表4】

BPA−PPC(ポリフタリルカーボネート)コポリマー、ポリカーボネート及びポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーのブレンドを、121℃で延長されたオートクレーブ処理に付して、増大した加水分解安定性を付与した。ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含ませると、表4及び図4に示されているように、PPC−PCブレンドと比べて初期延性とアイゾット衝撃特性の保持率が増大したが、ポリシロキサンの存在によりブレンドの加熱撓み温度は低下した。
【0138】
実施例4
この実施例では、BHPM及びBPA単位を重量比52:48で含む特定の高温ポリカーボネート0〜100wt%を、6重量%のポリジメチルシロキサンを含有するポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー100〜0wt%とのブレンド中に使用した。この実施例で使用したオートクレーブ条件は135℃、圧力2バールである。表中の「サイクル数」は、135℃、圧力2バールで20分と等価なオートクレーブ処理のサイクルの数である。試料のノッチ付アイゾット衝撃強さを下記表5に示す。
【0139】
【表5】

この実施例は、ポリシロキサンポリカーボネートコポリマーとBHPM−ポリカーボネートコポリマーのブレンドから作成された物品のノッチ付アイゾット衝撃強さが6回のオートクレーブサイクルにわたって維持される一方で100%ポリシロキサンポリカーボネートコポリマーから作成された物品は3回のオートクレーブサイクルでも耐えられないことを示している。表5と図5から分かるように、最良の衝撃強さ性能は、80%ポリシロキサンポリカーボネートコポリマーと20%BHPMポリカーボネートコポリマーから作成された物品で得られる。
【0140】
表5と図5に示されているように、少なめの量のポリシロキサンポリカーボネートコポリマーと多めの量のBHPM−ポリカーボネートコポリマーを含む試料は、たった3回のオートクレーブサイクル後に低下した衝撃強さを示す。さらに、表5と図5から分かるように、100%のBHPM−ポリカーボネートコポリマーポリカーボネートを使用すると、たった3回のオートクレーブサイクル後に衝撃強さが失われる。
【0141】
実施例5
この実施例では、表6と図6から分かるように、上記ポリシロキサンポリカーボネートコポリマーとBHPM−ポリカーボネートコポリマーのコポリマーの黄色度変化率(「ΔYI」)は12回のオートクレーブサイクル後でも許容できるレベルである。この実施例におけるΔYIパーセントの許容できるレベルは20%未満である。この実施例で使用したオートクレーブサイクルは、135℃、圧力2バールで20分のオートクレーブ処理である。
【0142】
【表6】

対照的に、表6と図6から分かるように、100%ポリシロキサンポリカーボネートコポリマーの試料は6回のオートクレーブサイクル後に許容できないヘイズレベルを有することが示されている。さらに、表6と図6から分かるように、100%BHPM−ポリカーボネートコポリマーを使用すると、ヘイズが12回のオートクレーブサイクル後許容できるレベルにより良好に維持される。
【0143】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含んでなる物品は、加水分解及び/又は寸法安定性を失うことなく延長された期間蒸気滅菌することができる。また、これらの物品は、延長された蒸気滅菌にもかかわらず、延性、衝撃強さ、衝撃保持率、耐湿性、透明性及び/又は軟化温度のようなポリカーボネートの有利な物理的性質の全てを殆ど又は全く失わない。
【0144】
単数形態は、前後関係から明らかに他の意味を示さない限り、複数も含む。同じ特性を表す全ての範囲の終点は組み合わせることが可能であり、また明示した終点を含む。文献は全て援用により本明細書の内容の一部をなす。
【0145】
特定の実施形態に関連して本発明を説明して来たが、当業者には了解されるように、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、またその要素に代えて等価物を使用することができる。また、特定の状況又は材料を本明細書の教示に適合させるべく、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を施すことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、選択されたポリカーボネート組成物について蒸気処理後のノッチ付アイゾット衝撃保持率を比較して示す。
【図2】図2は、選択されたポリカーボネート組成物について蒸気処理後のノッチ付アイゾット衝撃保持率を比較して示す。
【図3】図3は、選択されたポリカーボネート組成物について蒸気処理後の機器衝撃保持率値を示す。
【図4】図4は、各種ポリカーボネート組成物について加水分解安定性に対する蒸気処理の効果を示す。
【図5】図5は、選択されたポリカーボネート組成物について蒸気処理後の衝撃強さ性能を示す。
【図6】図6は、選択されたポリカーボネート組成物について蒸気処理後の黄色度変化率(「ΔYI」)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を蒸気で処理することを含んでなり、該物品は、15サイクル以上の間該物品に熱及び加水分解安定性をもたらすのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を含んでなり、各サイクルは100℃の温度、大気圧で20分蒸気と接触させることを含んでなる方法。
【請求項2】
物品が、15サイクル以上の間該物品に熱及び加水分解安定性をもたらすのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を含んでなり、各サイクルが121℃、1.5気圧で20分蒸気と接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
物品が、15サイクル以上の間該物品に熱及び加水分解安定性をもたらすのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を含んでなり、各サイクルが135℃、2.0気圧で20分蒸気と接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーが、0.1〜40wt%のポリジメチルシロキサン又は等モル量の別のポリジオルガノシロキサンを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
組成物が、当該樹脂組成物の総重量を基準にして4〜100wt%のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
組成物がさらに1〜96wt%の高熱性熱可塑性ポリマーを含んでおり、該高熱性熱可塑性ポリマーがASTM D 648に準拠して測定して135℃より高い1.8Mpaにおける加熱撓み温度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
高熱性熱可塑性ポリマーが高熱性ポリカーボネートである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
高熱性ポリカーボネートが、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)フタルイミジン、4,4’−(ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−5−イリデン)ジフェノール、ビスフェノール(1,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、4−[1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル]フェノール、4,4’−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル]ビスフェノール、フェノールフタレイン、2−メチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−ブチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−オクチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド又はこれらの1種以上含む組合せから誘導された単位を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
高熱性ポリカーボネートがコポリエステルポリカーボネートである、請求項5記載の方法。
【請求項10】
高熱性コポリエステルポリカーボネートが、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)フタルイミジン、4,4’−(ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−5−イリデン)ジフェノール、ビスフェノール(1,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、4−[1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル]フェノール、4,4’−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル]ビスフェノール、フェノールフタレイン、2−メチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−ブチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−オクチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド又はこれらの1種以上含む組合せから誘導された単位及び芳香族ジカルボン酸から誘導された単位を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
物品の蒸気での処理が滅菌を達成するのに充分である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
物品の蒸気での処理をオートクレーブ中で行う、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15サイクル後に50〜99%の延性を物品にもたらすのに充分である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15サイクル後に121〜400℃のビカット軟化温度を物品にもたらすのに充分である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15回のオートクレーブサイクル後にASTM D256により測定して3〜18フィート−ポンド/インチのノッチ付アイゾット衝撃強さを物品にもたらすのに充分である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15回のオートクレーブサイクル後に15〜100%のノッチ付アイゾット衝撃保持率を物品にもたらすのに充分であり、ここでノッチ付アイゾット衝撃強さはASTM D256により測定される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15回のオートクレーブサイクル後に20%未満の黄色度変化率を物品にもたらすのに充分である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15回のオートクレーブサイクル後に0〜20%のヘイズ及び60〜100%の透過率を物品にもたらすのに有効である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの量が、15回のオートクレーブサイクル後に10%未満の単一の寸法の変化率を物品にもたらすのに有効である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
物品が医療用機器である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
医療用機器が、注射器、血液フィルターハウジング、血液バッグ、溶液バッグ、静脈コネクター、透析装置、カテーテル、医療用保存トレイ、医用器具、医療用チューブ、心臓ペースメーカー及び細動除去器、カニューレ、移植可能なプロテーゼ、心臓補助装置、心臓弁、血管移植片、体外装置、人工臓器、ペースメーカーリード、細動除去器リード、血液ポンプ、バルーンポンプ、A−Vシャント、バイオセンサー、細胞カプセル化用の膜、創傷包帯、人工関節、整形用インプラント及び注射器からなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
物品が非医療用機器である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
非医療用機器が、フードトレイ、動物の檻、ケーブルシース、ワニス及びコーティング、ポンプ及び車両用構造部品、鉱石採掘用スクリーン及びコンベヤベルト、積層用コンパウンド、航空用途並びにチョコレートモールドからなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
物品を蒸気で処理することを含んでなり、該物品は、15回のオートクレーブサイクル後に15〜100%のノッチ付アイゾット衝撃保持率を該物品にもたらすのに充分な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を含んでなり、ここでノッチ付アイゾット衝撃強さは、ASTM D256により測定され、各サイクルは100℃の温度、大気圧で20分蒸気と接触させることを含んでなる方法。
【請求項25】
物品を形成することを含んでなり、該物品は、15回のオートクレーブサイクル以上の間熱及び加水分解安定性を該物品にもたらすのに有効な量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を含んでなり、各サイクルは100℃の温度、大気圧で20分蒸気と接触させることを含んでなる、物品の製造方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法によって形成された物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−507596(P2008−507596A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519478(P2007−519478)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/023500
【国際公開番号】WO2006/085970
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】