説明

ポリカーボネート製造用触媒及びポリカーボネートの製造方法

【課題】高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率よく製造することができるポリカーボネート製造用触媒及び該触媒を用いたポリカーボネートの製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)シリカゲルにジアミンを結合させた担体と(b)パラジウム化合物および(c)レドックス触媒能を有する金属化合物との反応生成物を含有することを特徴とするポリカーボネート製造用触媒および芳香族ジヒドロキシ化合物及び一価フェノールと、一酸化炭素及び酸素とを反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合もしくは溶融重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、前記触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート製造用触媒及びポリカーボネートの製造方法に関し、詳しくは電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野及び構造材料分野等における樹脂材料として有用な高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率よく製造することができるポリカーボネート製造用触媒及び該触媒を用いたポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートの製造方法としては、一般にビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとをアルカリの存在下で反応させる方法(溶液法)が知られている。この方法では猛毒なホスゲンを用いる上に、化学量論量のアルカリ塩が副生することなどの問題がある。また、ジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルをカルボニル源として使用して加熱溶融して反応させる方法(溶融法)も知られているが、この溶融法では炭酸ジエステルの製造や溶融のために加熱が必要であり、高温に加熱するために得られたポリカーボネートが着色する等の問題がある。
【0003】
新しいポリカーボネートの製造方法として、パラジウム/レドックス剤/ハロゲン化オニウム塩触媒を用いる酸化的カルボニル化反応による方法が提案されているが、反応速度が不十分であり、重合度の低いポリカーボネートしか得られない。(例えば、特許文献1参照)。
この問題を解決するために、パラジウム化合物/無機レドックス触媒/有機レドックス触媒/ハロゲン化オニウム化合物/脱水剤の触媒系で酸化的カルボニル化反応を行い、ポリカーボネートオリゴマーを製造し、その後エステル交換法によりポリカーボネートを得る方法がある(例えば、特許文献2参照)。
しかし、特許文献2の触媒では高い重合度のポリカーボネートが得られるが、パラジウム化合物が溶媒に溶解する(均一触媒)ため、パラジウム(0)のクラスターを形成し、失活する可能性があり、また、触媒の分離が困難であり、金属成分がポリカーボネート中に残留し易い。
さらに、パラジウム原子を金属中心として複数個有し、ヘテロ二座配位子により架橋された多核金属錯体化合物とレドックス触媒及びハロゲン化オニウム化合物からなる触媒系(特許文献3参照)、ポリビニルピロリドン等からなる触媒担体とパラジウム化合物およびレドックス触媒能を有する金属化合物との反応で得られた錯体を含有する触媒系(特許文献4参照)によりポリカーボネートを得る方法が提案されているが、十分な性能のものが得られない。
さらに、特定の有機担体にパラジウム化合物とレドックス触媒能を有する金属化合物とを反応させた触媒系にハロゲン化オニウム化合物/脱水剤からなる触媒系で酸化的カルボニル化反応を行い、ポリカーボネートオリゴマーを製造し、その後固相重合法によりポリカーボネートを得る方法がある(例えば、特許文献5参照)。
しかし、特許文献5の方法では高い重合度のポリカーボネートが得られるが、使用する触媒の粒子径が細かく、取り扱いが困難であるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭53−68744号公報
【特許文献2】特開2000−297148号公報
【特許文献3】特開2002−69170号公報
【特許文献4】特開2004−352878号公報
【特許文献5】特開2006−89617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリカーボネート製造方法における上記のような問題点を解消し、ポリカーボネートとの分離が容易で繰返し使用が可能なポリカーボネート製造用触媒を提供すると共に、該触媒を使用し、有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると考えられるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いずに、高品質のポリカーボネートを効率良く製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、シリカゲルにジアミンを結合させた担体とパラジウム化合物、およびレドックス触媒能を有する金属化合物との反応生成物により前記目的を達成することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記(1)〜(9)
(1)(a)シリカゲルにジアミンを結合させた担体と(b)パラジウム化合物および(c)レドックス触媒能を有する金属化合物との反応生成物を含有することを特徴とするポリカーボネート製造用触媒、
(2)さらに、(d)オニウム化合物を含有する上記(1)に記載のポリカーボネート製造用触媒、
(3)さらに、(e)有機レドックス剤を含有する上記(1)又は(2)に記載のポリカーボネート製造用触媒、
(4)さらに、(f)脱水剤を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒、
(5)ジアミンがエチレンジアミンである上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒、
(6)(b)のパラジウム化合物が2価のパラジウム化合物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒、
(7)(c)のレドックス触媒能を有する金属化合物が、コバルト化合物である上記(1)〜(6)に記載のポリカーボネート製造用触媒、
(8)(d)のオニウム化合物が有機担体または無機担体の窒素またはリンの一部または全部をアルキルハライドで四級化した化合物である上記(2)〜(7)に記載のポリカーボネート製造用触媒、
(9)芳香族ジヒドロキシ化合物及び一価フェノールと、一酸化炭素及び酸素とを反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合もしくは溶融重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、前記第一工程において上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリカーボネート製造用触媒は、反応終了後、濾過等により容易に分離することができ、該触媒を分離したポリカーボネート中に残存する金属量が極めて低く、繰返し使用が可能で触媒効率が高い。
本発明のポリカーボネート製造用触媒を用いることにより、有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると考えられるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いずに、重合度が高く、着色の無い高品質のポリカーボネートを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリカーボネート製造用触媒およびポリカーボネートの製造方法を詳細に説明する。
<(a)シリカゲルにジアミンを結合させた担体>
シリカゲルは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOにさらにSiが結合して三次元網目構造を有し、表面に反応性の水酸基(シラノール基)を有する。シリカゲルは天然品、合成品(例えば、ゾル−ゲル法やシリコンアルコキシドを加水分解して得られたシリカヒドロゾルを水熱処理してシリカゲルを得る方法等)のいずれを用いても良い。
本発明のポリカーボネート製造用触媒はこのシリカゲルにジアミンを結合させたものを担体として使用する。ジアミンはシリカゲル表面のシラノール基と化学結合(水素結合)するため表面上に強く担持され、一旦結合したジアミンはシリカゲル表面から容易に外れることはない点で好ましい。
結合させるためのジアミンとしては、下記一般式(1)で表されるポリメチレンジアミンが好ましく用いられる。
−NR3−(CR12n−NR45 (1)
一般式(1)中、R1〜R5は、水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。nは、1〜10、好ましくは2〜3の整数を示す。
これらジアミンの中でもエチレンジアミンが好ましく、エチレンジアミンを結合させた下記一般式(2)で表される担体が容易に入手できる点で好ましい。
Silicagel−(X−NH−CH2−CH2−NH2n (2)
一般式(2)中、Xは単結合、メチレン基、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のポリメチレン基、アルキレン基、アルキリデン基、炭素数5〜20、好ましくは5〜10のシクロアルキレン基、シクロアルキリデン基等の2価の有機基である。
Xが単結合でない場合は、シリカゲル中のシラノール基のOH基を予め、例えば、OH−X−Cl(Xは2価の有機基)などを用いた脱水反応により形成されたSilicagel−X−Clにジアミンを反応させることにより式(2)のものが得られる。OH−X−Clの具体的な化合物としては、1−クロロ−4−ヒドロキシプロパン、1−クロロ−6−ヒドロキシヘキサン、1-クロロ‐4-ヒドロキシシクロヘキサン、1-クロロ‐4-ヒドロキシベンゼン、等が挙げられる。
シリカゲルにジアミンを結合させた担体は、平均粒子径が50〜1000μm程度、好ましくは50〜200μmのものが用いられる。
【0010】
<(b)パラジウム化合物>
パラジウム化合物としては、特に制限はないが、好ましくは二価のパラジウム化合物が好ましく、具体的には、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)等があり、溶媒への溶解性の高いジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)が好ましい。これらのパラジウム化合物は単独で用いても二種以上併用しても構わない。
【0011】
<(c)レドックス触媒能を有する金属化合物>
レドックス触媒能を有する金属化合物中の金属としては、ランタノイド、第5〜7族遷移金属、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等が挙げられ、中でもコバルトが好ましい。コバルト化合物としては、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)等が適している。中でも塩化コバルト(II)が好ましい。レドックス触媒能を有する金属化合物はパラジウム化合物1モルに対して、通常0.5〜100モル、好ましくは2〜10モル程度用いられる。これらのレドックス触媒能を有する金属化合物は単独で用いても二種以上併用しても構わない。
反応生成物は金属化合物を溶解する溶剤中、上記成分(a)、(b)および(c)を室温で混合することにより得られる。
例えば、アセトン中にシリカゲルにジアミンを結合させた担体を懸濁させた後、そこへパラジウム化合物のアセトン溶液を加え、室温で攪拌し、パラジウムの色が消失した後、レドックス触媒能を有する金属化合物のアセトン溶液を加え、室温で攪拌することにより本発明のポリカーボネート製造用触媒(以下、固定化触媒と称することがある)が得られる。溶剤としては、パラジウム化合物とレドックス触媒能を有する金属化合物を溶解できるものであれば特に制限はなく、特にアセトンが好ましい。
これらの固定化触媒は単独で用いても、2種以上併用しても差し支えない。
例えば、エチレンジアミンをシリカゲルに結合させた上記一般式(2)で表される担体に(b)成分のパラジウム化合物として塩化パラジウム(II)、および(c)成分のレドックス触媒能を有する金属化合物として金属塩化物(II)を反応させた場合の反応生成物は下記一般式(3)で表わされる構造を有するものとなる。
一般式(3)におけるMは金属原子を表わし、ランタノイド、第5〜7族遷移金属、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅等である。
【0012】
【化1】

【0013】
(a)成分であるシリカゲルにジアミンを結合させた担体で市販のものとしては、富士シリシア化学株式会社製のDiamine SilicaやSilicycle社製のSi-Diamineが挙げられる。
Diamine SilicaおよびSi-Diamineは、上記一般式(2)におけるXがトリメチレン基のものである。
【0014】
<(d)オニウム化合物>
固定化触媒には、後で述べるポリカーボネート製造の出発原料の一つであるヒドロキシ化合物を活性化させると考えられるオニウム塩を含有させても良い。オニウム塩としては、アンモニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレノニウム塩などが挙げられる。中でもアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。例えばアンモニウム塩として、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロマイド等が用いられる。ホスホニウム塩として、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等が用いられる。
また、オニウム化合物として有機担体または無機担体の窒素またはリンをアルキルハライドで一部または全部を四級化した化合物も使用することが可能である。窒素またはリンをアルキルハライドで四級化できる有機担体としては、ジフェニルホスフィノ‐ポリスチレン、ポリ‐4-ビニルピリジン、ポリ‐2−ビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ビピリジノ‐ポリスチレン、N,N-(ジイソプロピル)アミノメチル‐ポリスチレン、N-(メチルポリスチレン)-4-(メチルアミノ)ピリジン、N,N-ジエタノールアミノメチル‐ポリスチレン等が挙げられ、無機担体としては、ジフェニルホスフィノ‐2−シリカ、ピリジノ‐2−シリカ等が挙げられ、中でもジフェニルホスフィノ‐ポリスチレンが好ましい。市販のものとしては、たとえば、Argonaut製PS-Triphenylphosphine(PS-TPP)等が挙げられる。
アルキルハライド(R−X)として特に制限はなく、Rとしてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、ベンジル等が挙げられ、Xとしては、臭素、塩素、ヨウ素が挙げられる。アルキルハライドは単独で用いても二種以上併用しても構わない。
有機担体または無機担体の四級化反応は特別なものではなく、一般的な方法でよい。担体とアルキルハライドを溶媒中で加熱することにより得られる。溶媒も特に制限はなく、メタノール、エタノール、ジメチルフォルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)等が用いられ、メタノールが好ましい。
オニウム化合物としては有機担体または無機担体の窒素またはリンをアルキルハライドで一部または全部を四級化した化合物が好ましい。オニウム塩は、ヒドロキシ化合物に対し、0.1モル%程度あればよい。
【0015】
<(e)有機レドックス剤>
必要に応じて添加される有機レドックス剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、α−ナフトキノン、アントラキノン、カテコール、2,2'-ビフェノール、4,4'-ビフェノール等が挙げられる。これらの有機レドックス剤は単独で用いても2種以上併用しても差し支えない。有機レドックス剤はパラジウム化合物1モルに対して、通常0.5〜100モル、好ましくは5〜50モル程度用いられる。
【0016】
<(f)脱水剤>
必要に応じて添加される脱水剤としては、モレキュラーシーブや合成ゼオライト等が用いられ、特に制限はないが、例えば、合成ゼオライトのA−3およびA−4が好ましく、より好ましくはA−3である。形状にも制限はなく、粉末、粒状、ビーズ状、球状、チップ状が用いられる。
【0017】
<助触媒>
本発明のポリカーボネート製造用触媒においては、触媒活性、目的とするポリカーボネートへの選択率、収率あるいは寿命の向上を目的に助触媒を添加することができる。助触媒は反応に悪影響を及ぼさない限りいかなるものも使用できるが、ヘテロポリ酸やヘテロポリ酸のオニウム塩等が好適に用いられる。ヘテロポリ酸としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等が挙げられる。また、これらのオニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等も用いることが可能である。これらは単独でも、二種以上併用しても差し支えない。助触媒として、ヘテロポリ酸やヘテロポリ酸のオニウム塩等用いてもよい。ヘテロポリ酸としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等が挙げられる。また、これらのオニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等も用いることが可能である。これらは単独で用いても、二種以上併用しても差し支えない。
【0018】
本発明は、上記ポリカーボネート製造用触媒とともにポリカーボネートの製造方法を提供する。
本発明のポリカーボネートの製造方法においては、第一工程で芳香族ジヒドロキシ化合物及び一価フェノールと、一酸化炭素及び酸素とを反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造し、次いで第二工程において、同ポリカーボネートプレポリマーを固相重合もしくは溶融重合して目的とするポリカーボネートを製造する。
【0019】
以下、本発明のポリカーボネートの製造方法における第一工程を詳細に説明する。前記ポリカーボネート製造用触媒はこの第一工程において用いられる。
第一工程は酸化的カルボニル化反応により、ポリカーボネートプレポリマーが製造される。
酸化的カルボニル化反応における反応温度は通常30〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜120℃の範囲である。180℃以下とすることにより、分解反応等の副反応を防止し、ポリカーボネートプレポリマーが着色するのを防止する。30℃以上とすることにより、反応速度が低下するのを防止する。
また、反応圧力は、一酸化炭素や酸素等のガス状の原料を用いるため、加圧状態に設定することが一般的であり、一酸化炭素分圧は1×10-2〜20MPa、好ましくは1×10-2〜10MPaの範囲内で、酸素分圧は1×10-2〜10MPa、好ましくは1×10-2〜5MPaの範囲内であればよい。特に、酸素分圧は、反応系内のガス組成が爆発範囲を外れるように調節することが望ましく、反応圧力があまり低圧では反応速度が低下し、また高圧過ぎると反応装置が大型となり、建設費用が高く、経済的に不利である。不活性ガスや水素等を用いる際には、その分圧は特に規定されないが、適宜実用的な圧力範囲で用いればよい。
反応時間は、たとえば回分式の場合は1〜48時間程度、好ましくは2〜36時間、より好ましくは3〜24時間である。1時間以上とすることにより、収率が低下するのを防止し、収率の向上が見られなくなる48時間以下とすることにより生産性の低下を防止する。
ポリカーボネートプレポリマー製造の際の反応方式は、回分式、原料と触媒等を連続的に投入する半連続式、原料と触媒等を連続的に投入し、反応生成物を連続的に抜き出す連続式のいずれでも可能である。
なお、前記ポリカーボネート製造用触媒は芳香族ジヒドロキシ化合物だけでなく、一価フェノールのカルボニル化にも有用であり、ジフェニルカーボネートの合成にも適用可能である。
【0020】
次に、本発明のポリカーボネートの製造方法における出発原料について説明する。
<芳香族ジヒドロキシ化合物>
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、様々なものがあるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノールA以外のビス(4−ヒドロキシフェニル)化合物または2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール類等が挙げられる。これらのフェノール類が置換基としてアルキル基を有する場合には、該アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。なお、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独でも、二種以上併用しても差し支えない。
【0021】
<一価フェノール>
一価フェノールとしては特に制限はなく、フェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−メトキシフェノール、p−フェニルフェノール等が挙げられる。なかでもp−tert−ブチルフェノール、フェノールが好ましい。
一価フェノールの使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常5〜70モル%範囲である。
これらの一価フェノールは単独で用いても、二種以上併用しても差し支えない
【0022】
第一工程で芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールを反応させる一酸化炭素は、単体であってもよいが、不活性ガスで希釈されていても、窒素との混合ガスであってもよい。また、第一工程で同様に反応させる酸素は、純酸素であっても、不活性ガスで希釈されたもの、例えば空気等の酸素含有ガスであってもよい。一酸化炭素および酸素は上記それぞれの分圧を保つことによりそれぞれ適切な量が反応に関与する。
【0023】
第一工程のポリカーボネートプレポリマーの製造において使用できる溶媒としては、特に制限はない。
例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトフェノン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、環境問題等から非ハロゲン溶媒が好ましい。非ハロゲン溶媒として有用な溶媒には、カーボネート結合を有する化合物がある。例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルメチルカーボネート、ビス(2−メトキシフェニル)カーボネート、ビニレンカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジ(o-メトキシフェニル)カーボンネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましいのはプロピレンカーボネートである。これらのカーボネート系溶媒は単独でも2種以上併用しても差し支えない。
【0024】
次に、本発明のポリカーボネートの製造方法における第二工程を詳細に説明する。第二工程は上記第一工程で製造されたポリカーボネートプレポリマーを固相重合もしくは溶融重合することにより目的の分子量のポリカーボネートが得られる。
まず、固相重合について以下に詳細に説明する。
固相重合の際には、触媒として四級ホスホニウム塩が好適に用いられる。
固相重合に使用する四級ホスホニウム塩としては、特に制限はなく、各種のものがあるが、例えば下記一般式(4)又は(5)
(PR34)+(X2)-・・・・・(4)
(PR34)+2(Y1)2-・・・(5)
で表される化合物を用いることができる。
【0025】
上記一般式(4)および(5)において、R3は有機基を示す。この有機基としては、例えば置換基を有する若しくは有しない炭素1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基または置換基を有する若しくは有しない炭素数7〜20のアラルキル基を示す。ここで炭素1〜20のアルキル基の例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n又はイソペンチル基、n又はイソヘキシル基、n又はイソオクチル基、n又はイソデシル基、n又はイソドデシル基、n又はイソテトラデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。また、これらのアリール基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、1,1,1−トリフェニルメチル基などが挙げられる。また、これらのアラルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。
前記四つのR3は互いに同一でも異なっていてもよく、また二つのR3が結合して環構造を形成していてもよい。
2はハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、R'COO、HCO3、(R'O)2P(=O)O又はBR''4などの1価のアニオン形成が可能な基を示す。ここで、R'はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、二つのR'Oは互いに同一でも異なっていてもよい。またR''は水素原子又はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、四つのR''は互いに同一でも異なっていてもよい。Y1はCO3などの2価のアニオン形成が可能な基を示す。
前記X2の具体例としては、ヒドロキシド;ボロヒドリド;テトラフェニルボレート;アルキルトリフェニルボレート;ホルメート;アセテート;プロピオネート;ブチレート;フルオリド;クロリド;ヒドロカーボネートなどを挙げることができる。また、Y1の具体例としては、カーボネートなどを挙げることができる。
【0026】
前記一般式(4)または(5)で表される四級ホスホニウム塩の具体例としては、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラナフチルホスホニウムヒドロキシド、テトラ(クロロフェニル)ホスホニウムヒドロキシド、テトラ(ビフェニル)ホスホニウムヒドロキシド、テトラトリルホスホニウムヒドロキシド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトライソプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラヘキシルホスホニウムヒドロキシド、テトラシクロヘキシルルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラ(アリール又はアルキル)ホスホニウムヒドロキシド類、メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、プロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、イソプロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、オクチルトリフエニルホスホニウムヒドロキシド、テトラデシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、アセトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、フェナシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、クロロメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ブロモメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ビフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ナフチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、クロロフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、アセトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アリール又はアルキル)トリフェニルホスホニウムヒドロキシド類、フェニルトリメチルホスホニウムヒドロキシド、ビフェニルトリメチルホスホニウムヒドロキシド、フェニルトリヘキシルホスホニウムヒドロキシド、ビフェニルトリヘキシルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アリール)トリアルキルホスホニウムヒドロキシド類、ジメチルジフェニルホスホニウムヒドロキシド、ジエチルジフェニルホスホニウムヒドロキシド、ジ(ビフェニル)ジフェニルホスホニウムヒドロキシドなどのジアリールジアルキルホスホニウムヒドロキシド類、さらにはイソプロピルトリメチルホスホニウムヒドロキシド;イソプロピルトリエチルホスホニウムヒドロキシド;イソプロピルトリブチルホスホニウムヒドロキシド;シクロヘキシルトリメチルホスホニウムヒドロキシド;シクロヘキシルトリエチルホスホニウムヒドロキシド;シクロヘキシルトリブチルホスホニウムヒドロキシド;1,1,1−トリフェニルメチルトリメチルホスホニウムヒドロキシド;1,1,1−トリフェニルメチルトリエチルホスホニウムヒドロキシド;1,1,1−トリフェニルメチルトリブチルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アルキル又はアラルキル)トチアルキルホスホニウムヒドロキシド類などが挙げられる。
【0027】
さらに、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラナフチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ(クロロフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ(ビフェニル) ホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラトリルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのテトラ(アルキル又はアリール)ホスホニウムテトラフェニルボレート類、メチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、エチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、プロピルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、オクチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラデシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、シクロペンチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、アセトキシメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、フェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、クロロメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ブロモメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ナフチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、クロロフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、アセトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのモノ(アリール又はアルキル)トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート類、フェニルトリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ビフェニルトリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、フェニルトリヘキシルホスホニウムテトラフェニルボレート、ビフェニルトリヘキシルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのモノアリールトリアルキルホスホニウムテトラフェニルボレート類、ジメチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジエチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジ(ビフェニル) ジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのジアリールジアルキルホスホニウムテトラフェニルボレート類が挙げられる。
【0028】
さらに、対アニオンとして、上記のヒドロキシドやテトラフェニルボレート類の代わりに、アルキルトリフェニルボレート、フェノキシドなどのアリールオキシ基、メトキシド、エトキシドなどのアルキルオキシ基、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレートなどのアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾエートなどのアリールカルボニルオキシ基、クロリド、ブロミドなどのハロゲン原子を用いた上記四級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(4)で表される化合物以外に、一般式(5)で表される2価の対アニオンを有するもの、例えばビス(テトラフェニルホスホニウム)カーボネート、ビス(ビフェニルトリフェニルホスホニウム)カーボネートなどの四級ホスホニウム塩や、さらに、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのビス−テトラフェニルホスホニウム塩、エチレンビス(トリフェニルホスホニウム)ジブロミト、トリメチレンビス(トリフェニルホスホニウム)−ビス(テトラフェニルボレート)なども挙げることができる。
【0030】
これらの四級ホスホニウム塩の中で、触媒活性が高く、かつ熱分解が容易でポリマー中に残留しにくいなどの点から、アルキル基を有するホスホニウム塩、具体的には、テトラメチルホスホニウムメチルトリフェニルボレート、テトラエチルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラプロピルホスホニウムプロピルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムブチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルエチルホスホニウムトリメチルフェニルボレート、トリメチルベンジルホスホニウムベンジルトリフェニルボレート等が好適である。
【0031】
また、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルホスホニウム塩は分解温度が比較的低いので容易に分解し、製品ポリカーボネートに不純物として残る恐れが小さい。また、炭素数が少ないので、ポリカーボネートの製造における原単位を低減でき、コスト的に有利であるという点で好ましい。
また、触媒効果と得られるポリカーボネートの品質とのバランスからテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが好ましく用いられる。
さらにシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートやシクロペンチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが触媒効果と得られるポリカーボネートの品質とのバランスに優れる点で好ましく使用することができる。
【0032】
この固相重合での反応触媒としては、好ましくは四級ホスホニウム塩及び必要に応じて他の触媒も用いられるが、ポリカーボネートプレポリマー生成工程で添加し、残存しているものをそのまま使用しても、又は前記触媒を再度粉末、液体又は気体状態で添加してもよい。この固相重合反応を実施する際の反応温度Tp(℃)及び反応時間は、結晶化ポリカーボネートプレポリマーの種類(化学構造、分子量等)や形状、結晶化ポリカーボネートプレポリマー中の触媒の有無、種類又は量、必要に応じて追加される触媒の種類又は量、結晶化ポリカーボネートプレポリマーの結晶化の度合や溶融温度Tm'(℃)の違い、目的とする芳香族ポリカーボネートの必要重合度、他の反応条件などによって異なるが、好ましくは目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス転移湿度以上で、かつ固相重合中の結晶化ポリカーボネートプレポリマーが溶融しないで固相状態を保つ範囲の温度、より好ましくは下記式(6)
Tm'−50≦Tp<Tm'・・・(6)
で示される範囲の温度において、1分〜100時間、好ましくは0.1〜50時間程度加熱することにより、固相重合反応を行う。
【0033】
このような温度範囲としては、例えばビスフェノールAのポリカーボネートを製造する場合には、約150〜260℃が好ましく、特に約180〜245℃が好ましい。また、重合工程では、重合中のポリマーにできるだけ均一に熱を与え、副生物の抜き出しを有利に進めるために、攪拌したり、反応器自身を回転させたり、又は加熱ガスによって流動させる方法などが好ましく用いられる。
【0034】
一般に工業的に有用な芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、6000〜200,000程度であり、上記固相重合工程を実施することによって、このような重合度のポリカーボネートが容易に得られる。結晶化ポリカーボネートプレポリマーの固相重合によって得られた芳香族ポリカーボネートの結晶化度は、重合前のポリカーボネートプレポリマーの結晶化度より増大していることから、本発明の方法では、結晶性芳香族ポリカーボネート粉体が得られる。結晶性芳香族ポリカーボネート粉体は、冷却せず直接押出機に導入してペレット化することもでき、冷却せずに直接成形機に導入して成形することもできる。重合に寄与する予備重合と固相重合との割合は、必要に応じて適宜変えてもよい。
【0035】
膨潤固相状態での重合方法は、上記方法で結晶化したポリカーボネートプレポリマーを後述する膨潤ガスにより膨潤させた状態での固相重合によって、さらに重合を行わせる方法である。この方法は、溶融重合反応によりポリカーボネートを製造する方法において、副生するフェノールのような低分子化合物を脱気又は抽出除去する場合、膨潤ガスにより膨潤状態にある高分子(オリゴカーボネート)から、低分子化合物を脱気又は抽出除去する方が、高粘度溶融高分子や結晶化した固体からの脱気又は抽出除去よりも物質移動速度が速くなり、高効率で反応できることを利用したものである。
【0036】
ここで使用する膨潤溶媒は、ポリカーボネートを以下に示す反応条件で膨潤可能な単一膨潤溶媒、それらの単一膨潤溶媒の混合物、又は単一膨潤溶媒もしくはそれらの混合物にポリカーボネートの貧溶媒を単一あるいは数種類混合したものを示す。
本工程における膨潤状態とは、以下に示した反応条件の範囲において、反応原料であるポリカーボネートプレポリマーフレークを熱膨潤値以上に体積的又は質量的に増加した状態をいい、膨潤溶媒とは、下記反応条件の範囲において完全に気化する沸点を有するか、又は通常6.7kPa以上の蒸気圧を有する単一化合物又はそれらの混合物であり、同時に上記の膨潤状態を形成させることができるものをいう。
【0037】
このような膨潤溶媒は、上記の膨潤条件を満たしていれば、特に制限はない。例えば、溶解度パラメーターが4〜20(cal/cm31/2の範囲、好ましくは7〜14(cal/cm31/2の範囲にある芳香族化合物や含酸素化合物が該当する。膨潤溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ一テル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜20の芳香族炭化水素の単一化合物又は混合物が好ましい。
また、膨潤溶媒と混合される貧溶媒の条件としては、下記の反応条件で溶媒へのポリカーボネート溶解度が0.1質量%以下であり、反応に関与する可能性が少ない直鎖又は分岐鎖を有する炭素数4〜18の飽和炭化水素化合物、又は炭素数4〜18でかつ低度の不飽和炭化水素化合物が好ましい。膨潤溶媒及び貧溶媒の沸点が、共に250℃を越えると残留溶剤の除去が困難となり、品質が低下する可能性があり好ましくない。
【0038】
このような貧溶媒と膨潤溶媒とを混合して用いる場合には、その混合溶媒中に膨潤溶媒が1質量%以上合有されていれば良く、好ましくは5質量%以上の膨潤溶媒を混合溶媒中に存在させる。この膨潤固相重合工程では、反応温度が好ましくは100〜240℃であり、反応時の圧力が好ましくは1330Pa〜0.5MPa・G、特に好ましくは大気圧下で実施する。反応温度が上記範囲より低いと溶融重合反応が進行せず、反応温度がポリカーボネートプレポリマーの融点を超える高温条件では、固相状態を維持できず、粒子間で融着等の現象が生じ、運転操作性が著しく低下する。したがって、反応温度は融点以下にする必要がある。
【0039】
膨潤溶媒ガスの供給は、液体状態で反応器に供給し反応器内で気化させても、予め熱交換器などにより気化させた後、反応器に供給してもよい。ガス供給量としてはポリカーボネートプレポリマー1g当たり0.5リットル(標準状態)/時以上のガスを反応器に供給することが好ましい。膨潤溶媒ガスの流通量は反応速度と密接に関係し、フェノール除去効果と同時に熱媒体としての作用をもしているため、ガスの流通量の増加に伴い反応速度が向上する。このような膨潤固相重合に用いられる反応器に特に制限はない。
【0040】
次に、溶融重合について詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、溶融重合反応の際に、重合触媒として、含窒素有機塩基性化合物とアリール基を含む4級ホスホニウム塩との組合せを用いることが必要である。上記含窒素有機塩基性化合物としては、特に制限はなく、各種のものがある。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミンなどの脂肪族第三級アミン化合物、トリフェニルアミンなどの芳香族第三級アミン化合物、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、アミノキノリン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)などの含窒素複素環化合物が挙げられる。
【0041】
さらに、一般式(7)
(NR34+(X2-・・・(7)又は、
一般式(8)
(NR34+2(Y12-・・・(8)あるいは、
一般式(9)〔(NR34+-n−P(=O)R'3-n・・・(9)
で表される4級アンモニウム塩を挙げることができる。上記一般式(7)、(8)あるいは(9)において、R3は有機基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基やシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアリールアルキル基などを示す。4つのR3はたがいに同一でも異なっていてもよく、また二つのR3が結合して環構造を形成していてもよい。また一般式(7)において、X2はハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、HCO3又はBR4を示し、一般式(8)において、Y1はCO3を示す。ここで、Rは水素原子又はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、4つのRはたがいに同一でも異なっていてもよい。また一般式(9)において、R'は炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基または水酸基を示し、R'はたがいに同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数を示す。
【0042】
このような4級アンモニウム塩としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル基、アリール基、アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどの塩基性塩が挙げられる。また、一般式(8)のような2価アニオンであってもよく、例えば、ビス(テトラメチルアンモニウム)カーボネート等が挙げられる。あるいは、一般式(9)のようなリン酸塩であってもよく、例えば、リン酸テトラメチルアンモニウム、フェニルリン酸テトラメチルアンモニウム、ジフェニルリン酸テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。これらの含窒素有機塩基性化合物の中で、触媒活性が高く、かつ熱分解が容易でポリマー中に残留しにくいなどの点から、上記一般式(7)で表される4級アンモニウム塩、具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライドが好ましく、特にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好適である。この含窒素有機塩基性化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
一方、4級ホスホニウム塩としては、前記固相重合において使用される化合物を同様に使用することができる。
さらに好ましくは、本発明の製造方法では、溶融重合反応の際に、重合触媒として、含窒素有機塩基性触媒と下記一般式(10)、(11)あるいは(12)で表される4級ホスホニウム化合物を組み合わせて用いることが望ましい。ここで、一般式(10)は、
【0044】
【化2】

【0045】
〔式中、R4は有機基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、X3はハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、HCO3又はBR4(Rは水素原子又は炭化水素基を示し、4つのRは互いに同一でも異なっていてもよい)を示し、nは0〜4の整数を示す〕で表され、一般式(11)は、
【0046】
【化3】

【0047】
〔式中、R4は一般式(10)と同様であり、Y1はCO3を示す〕で表され、一般式(12)は、
【0048】
【化4】

【0049】
〔式中、R4は一般式(10)と同様であり、R'は炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基または水酸基を示し、nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を示す〕で表される。
【0050】
この4級ホスホニウム塩は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、含窒素有機塩基性化合物及びアリール基を含む4級ホスホニウム塩は、各々金属不純物の含有量は50ppm以下であることが好ましく、アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物の含有量が30ppm以下のものがより好ましく、特に10ppm以下のものが好ましい。さらに、含窒素有機塩基性化合物及びアリール基を含む4級ホスホニウム塩中の各々の金属不純物の合計量が、両者のの合計量に対して、50ppm以下であることが好ましく、含窒素有機塩基性化合物及びアリール基を含む4級ホスホニウム塩中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物の含有量の合計が、両者の合計量に対して、30ppm以下のものがより好ましく、特に10ppm以下のものが好適である。本発明においては、重合触媒として、上記含窒素有機塩基性化合物を、原料である例えば芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、10-1〜10-8モル、好ましくは10-2〜10-7モル、さらに好ましくは10-3〜10-6モル用い、アリール基を含む4級ホスホニウム塩を10-1〜10-8モル、好ましくは10-2〜10-7モル、さらに好ましくは10-3〜10-6モル用いるのが望ましい。含窒素有機塩基性化合物の使用量を10-8モル以上とすることにより反応初期での触媒活性を確保し、また10-1モル以下とすることによりコストアップするのを防止する。一方、アリール基を含む4級ホスホニウム塩の使用量を10-8モル以上とすることにより反応後期での触媒活性を確保し、また10-1モル以上とすることによりコストアップを防止する。
【0051】
また、原料であるたとえば芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、含窒素有機塩基性化合物及びアリール基を含む4級ホスホニウム塩の合計量が、通常2×10-1〜2×10-8モル、好ましくは2×10-2〜2×10-7モル、さらに好ましくは2×10-3〜2×10-6モルになるような割合で添加される。添加量を2×10-8モル以上とすることにより、触媒効果が発現し、また、2×10-1モル以下とすることにより、最終製品であるポリカーボネートの物性、特に、耐熱性, 耐加水分解性の低下を防止するとともに、コストアップを防止する。不必要な量を添加することはない。また、本発明にあっては、重合触媒として、含窒素有機塩基性化合物とアリール基を含む4級ホスホニウム塩との組合せにより、重合活性を高めたものであり、重合系には、最終的に得られるポリカーボネート中で、耐加水分解性、着色性に悪影響を及ぼす金属類は極力少なくすることがよい。すなわち、アリール基を含む4級ホスホニウム塩によって、従来の反応後期に用いられてきた金属触媒の使用を実質的に不要にしたものである。
【0052】
本発明の製造方法において溶融重合反応を行うに当たっては、反応温度は、特に制限はなく、通常100〜330℃の範囲、好ましくは180〜300℃の範囲で選ばれるが、より好ましくは、反応の進行に合わせて次第に180〜300℃まで温度を上げていく方法がよい。この溶融重合反応の温度が100℃未満では反応速度が遅くなり、一方330℃を超えると副反応が生じたり、あるいは生成するポリカーボネートが着色するなどの問題が生じ、好ましくない。また、反応圧力は、使用するモノマーの蒸気圧や反応温度に応じて設定される。これは、反応が効率良く行われるように設定されればよく、限定されるものではない。通常、反応初期においては、大気圧〜5MPa程度までの大気圧(常圧)ないし加圧状態にしておき、反応後期においては、減圧状態、好ましくは最終的には1.3〜13kPa程度にする場合が多い。さらに、反応時間は、目標の分子量となるまで行えばよく、通常、0.2〜10時間程度である。
【0053】
そして、上記の溶融重合反応は、通常、不活性溶剤の不存在下で行われるが、必要に応じて、得られるポリカーボネートの1〜150質量%程度の不活性溶剤の存在下において行ってもよい。ここで、不活性溶剤としては、例えば、ジフェニルエーテル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ポリフェニルエーテル、ジクロロベンゼン、メチルナフタレンなどの芳香族化合物、トリシクロ(5,2,10)デカン、シクロオクタン、シクロデカンなどのシクロアルカンなどが挙げられる。また、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、ここで、不活性ガスとしては、例えばアルゴン、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素などのガス、クロロフルオロ炭化水素、エタンやプロパンなどのアルカン、エチレンやプロピレンなどのアルケンなど、各種のものが挙げられる。
【0054】
また、溶融重合反応においては、必要に応じ、酸化防止剤を反応系に添加してもよい。この酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤が好ましく、例えばトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスチルジホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイトなどのトリアルキルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイトなどのトリシクロアルキルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどのトリアリールホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイトなどのモノアルキルジアリールホスファイト、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェートなどのトリシクロアルキルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェートなどのトリアリールホスフェートなどが挙げられる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
<製造例1(固定化触媒Aの調製)>
Diamine-Silica〔富士シリシア化学製、官能基濃度0.88ミリモル/g、平均粒子径90μm〕2.34gをアセトン30mlにサスペンドさせた。これにジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)のアセトン溶液〔ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II):0.5ミリモル、ジクロロメタン:10ml〕をゆっくり加え、続いて塩化コバルト(II)のアセトン溶液〔塩化コバルト(II):1.5ミリモル、アセトン:20ml〕を加えて、室温で1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、70℃で24時間真空乾燥し、目的の固定化触媒Aを得た。得られた触媒は、Diamine-Silicaの平均粒子径90μmのままであった。
【0057】
<製造例2(固定化触媒Bの調製)>
PS-TPP(Argonaut製、TPP:2.22ミリモル/g、Lot No.0289)5.00g、1-ブロモブタン1.52g及びメタノール70mlを内容量200mlのオートクレーブに入れ、窒素パージし、100℃で加熱攪拌し、48時間後、冷却した。沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄し、80℃、24時間真空乾燥した。収量は6.19gであり、増量からリンの78%が四級化されていると見られる。
【0058】
〔実施例1〕
内容量30mlのオートクレーブに、ビスフェノールA:4.16ミリモル、製造例1で得られた固定化触媒A:96.2mg、テトラブチルアンモニウムブロミド201mg、ベンゾキノン67.6mg、210℃で一晩乾燥処理した合成ゼオライトA-3の粉末(和光純薬製 粒径75μm未満)1.0g、モレキュラーシーブ3Aで一晩脱水処理をしたプロピレンカーボネート10mlを入れ、一酸化炭素6.0 MPa、酸素0.3MPaを25℃で充填した。封入した後に容器を閉構造とし、95℃で24時間加熱した。反応終了後、合成ゼオライト及び固定化触媒を分離し、メタノール再沈殿により、目的のポリカーボネートプレポリマーを得、70℃で24時間、真空乾燥した。目視におけるポリカーボネートプレポリマー粉末の色は薄い茶色であった。
【0059】
〔実施例2〕
内容量30mlオートクレーブに、ビスフェノールA:4.16ミリモル、製造例1で得られた固定化触媒A:40.0mg、製造例2で得られた固定化触媒B:245mg、210℃で一晩乾燥処理した合成ゼオライトA−3の粉末(和光純薬製 粒径75μm未満)1.0g、モレキュラーシーブ3Aで一晩脱水処理をしたプロピレンカーボネート10mlを入れ、一酸化炭素6.0 MPa、酸素0.3 MPaを25℃で充填した。封入した後に容器を閉構造とし、95℃で24時間加熱した。反応終了後、合成ゼオライト及び固定化触媒を分離し、メタノール再沈殿により、目的のポリカーボネートプレポリマーを得、70℃で24時間、真空乾燥した。目視におけるポリカーボネートプレポリマー粉末の色は白色であった。
【0060】
〔実施例3〕
実施例2の固定化触媒Aの量を22.3mg用いた他は、実施例2と同様に実施した。
【0061】
〔実施例4〕
実施例2の210℃で一晩乾燥処理した合成ゼオライトA-3の粉末(和光純薬製 粒径75μm未満)の代わりにモレキュラーシーブ3Aビーズ(Aldrich製:8〜12メッシュ)3.0gを用いた他は実施例2と同様に実施した。
【0062】
〔実施例5〕
実施例2において、固定化触媒B及び合成ゼオライトA−3を用いなかった以外は実施例2と同様に実施した。
【0063】
実施例1〜5で得られたポリカーボネートプレポリマーの収率(%)と、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
〔実施例6(ポリカーボネートの製造)〕
<第一工程>
内容量100mlのオートクレーブに、ビスフェノールA:12.48ミリモル、p-tert-ブチルフェノール6.72ミリモル、製造例1で得られた固定化触媒A:100.5mg、210℃で一晩乾燥処理した合成ゼオライトA-3の粉末(和光純薬製 粒径75μm未満)3.0g、モレキュラーシーブ3Aで一晩脱水処理をしたプロピレンカーボネート30mlを入れ、一酸化炭素6.0MPa、酸素0.3MPaを25℃で充填した。封入した後に容器を閉構造とし、100℃で24時間加熱した。反応終了後、合成ゼオライト及び固定化触媒を分離し、メタノール再沈殿により、目的のポリカーボネートプレポリマーを得、70℃で、24時間、真空乾燥した。
【0066】
<第二工程>
第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマー500mgにシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを300ppm添加し、内径1.3cmのSUS管に入れ、窒素ガス100ml/分の速度で導入し、190℃で2時間、210℃で2時間、230℃で4時間、計8時間の固相重合を実施し、目的のポリカーボネートを得た。ポリカーボネート中の残存パラジウム量は25ppm以下であった。第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーおよび第二工程で得られたポリカーボネートの分子量(Mn、Mw)を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
〔比較例1〕
実施例6において、p-tert-ブチルフェノールを用いなかった他は実施例と同様に実施した。第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーおよび第二工程で得られたポリカーボネートの分子量(Mn、Mw)を上記表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野及び構造材料分野等における樹脂材料等として有用なポリカーボネートが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリカゲルにジアミンを結合させた担体と(b)パラジウム化合物および(c)レドックス触媒能を有する金属化合物との反応生成物を含有することを特徴とするポリカーボネート製造用触媒。
【請求項2】
さらに、(d)オニウム化合物を含有する請求項1に記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項3】
さらに、(e)有機レドックス剤を含有する請求項1又は請求項2に記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項4】
さらに、(f)脱水剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項5】
ジアミンがエチレンジアミンである請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項6】
(b)のパラジウム化合物が二価のパラジウム化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項7】
(c)のレドックス触媒能を有する金属化合物が、コバルト化合物である請求項1〜6に記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項8】
(d)のオニウム化合物が有機担体または無機担体の窒素またはリンの一部または全部をアルキルハライドで四級化した化合物である請求項2〜7に記載のポリカーボネート製造用触媒。
【請求項9】
芳香族ジヒドロキシ化合物及び一価フェノールと、一酸化炭素及び酸素とを反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合もしくは溶融重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、前記第一工程において請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。

【公開番号】特開2009−40842(P2009−40842A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205687(P2007−205687)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】