説明

ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法

【課題】浸漬成形製品用途に適した化学的安定性を有し、なおかつ凍結安定性に優れたポリクロロプレンラテックス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】以下で表される構造の、HLBが12.9〜18.5のノニオン性界面活性剤を含有するポリクロロプレンラテックス。ノニオン性界面活性剤の含有量は、ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン共重合体100質量部あたり、0.1〜1.0質量部であることが好ましい。


(式中、Xは水素またはメチル基、nは1〜3の整数、mは5〜100の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法に関する。より詳しくは、医用手袋等の浸漬成形製品の原料として利用されるポリクロロプレンラテックス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレンラテックスの用途の一つとして、医療用手袋、実験用手袋、カテーテル、ゴム長靴、ゴム糸、風船など、浸漬成形製品の原料がある。これらの浸漬成形製品は、主に凝固液法と呼ばれる方法で製造されている。凝固液法とは、陶器製または金属製の立体形状の型の表面に、ポリクロロプレンラテックスを凝固させる働きをする凝固液を塗布、乾燥させて凝固剤層を形成し、その型を、硫黄や加硫促進剤などを配合させたポリクロロプレンラテックス組成物に浸漬して引き上げ、加熱乾燥して皮膜を形成させた後、得られた皮膜を型から剥がして製品を得る方法である。型の表面に、均一で滑らかな皮膜を形成させるためには、ポリクロロプレンラテックスの凝固剤に対する安定性(化学的安定性)を低くしなければならず、そのためには、ポリクロロプレンラテックス中の乳化剤を出来るだけ少なくした方が良いことが知られている。
なお、本発明でいう化学的安定性とは、ポリクロロプレンラテックスと凝固剤との反応性をいう。つまり、化学的安定性が低いポリクロロプレンラテックスとは、凝固剤と反応しやすく製膜しやすいポリクロロプレンラテックスを表す。
【0003】
ところが、ポリクロロプレンラテックス中の乳化剤を減らすと、凍結安定性の低下を招いてしまう。すなわち、寒冷地で貯蔵した場合に、ポリクロロプレンラテックスが増粘や凍結を起こしてしまい、浸漬成形製品の原料として使用できなくなることがある。このため、浸漬成形製品の原料として用いられるポリクロロプレンラテックスには、凍結安定性を維持しながら、化学的安定性を低くすることが求められていた。
【0004】
化学的安定性の観点で検討された例はないが、従来から、凍結安定性改良や、接着剤用途での性能向上を目的として、ポリクロロプレンラテックスに、いくつかの乳化剤を添加することが検討されている。
例えば、ロジン酸と、HLBが10〜17のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを組み合わせることによって、凍結・低温安定性に優れたポリクロロプレンラテックスを得る手段(例えば、特許文献1参照。)が記載されている。また、カルボン酸アルカリ金属塩と、HLBが9〜16で、分岐アルキル鎖の親油基を有する、ポリオキシアルキレン分岐アルキルエーテルを組み合わせて使用することによって、−3〜−7℃でも凍結しないポリクロロプレンラテックスを得る手段(例えば、特許文献2や特許文献3参照。)が記載されている。
さらに、HLBが14〜19のポリオキシエチレンアルキルエーテルと、ポリビニルアルコールの存在下で、クロロプレン単量体を乳化重合することによって、種々の安定性に優れるポリクロロプレンラテックスを得る手段(例えば、特許文献4参照。)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3979749号(特開2001−49043)
【特許文献2】特開2009−215418
【特許文献3】特開2009−215419
【特許文献4】特開2005−8859
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているポリクロロプレンラテックスは、凍結・低温安定性だけでなく、多価イオンに対する安定性(化学的安定性)も高まるものである。ここで、凝固液法によって浸漬成形を行う際には、硝酸カルシウムや塩化カルシウムのような多価イオンを凝固液の成分として用いて、ポリクロロプレンラテックスを凝固させる。したがって、特許文献1の手段によって得られるポリクロロプレンラテックスは、浸漬成形製品の原料としては適切とはいえないものであった。
特許文献2や特許文献3に記載されているポリクロロプレンラテックスは、凍結安定性が優れるが、特許文献1と同様に、化学的安定性が高い。そのため、接着剤のように化学的安定性が関係ない用途では、問題なく使用することができるが、浸漬成形製品のように化学的安定性を低くすべき用途では、皮膜の欠陥を招きやすいという問題があった。また、特許文献4に記載されているポリクロロプレンラテックスは、アニオン性乳化剤を使用していないノニオン性ラテックスであるため、化学的安定性は非常に高い。したがって、ポリクロロプレンラテックスを凝固させることができず、浸漬成形製品の原料としては不向きであった。
【0007】
本発明は、浸漬成形製品の原料として適した化学的安定性を有し、なおかつ凍結安定性に優れたポリクロロプレンラテックス及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩と、以下の化1で表される構造の、HLBが12.9〜18.5のノニオン性界面活性剤を含有させたポリクロロプレンラテックスである。
【化1】

(式中、Xは水素またはメチル基、nは1〜3の整数、mは5〜100の整数を表す。)
【0009】
ここで、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩の含有量は、ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン共重合体100質量部あたり、0.5〜20質量部であることが好ましく、ノニオン性界面活性剤の含有量は、ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン共重合体100質量部あたり、0.1〜1.0質量部であることが好ましい。
また、ポリクロロプレンラテックス中に含まれるクロロプレン重合体は、クロロプレン単位100質量部あたり、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン単位2〜20質量部を含む共重合体であることが好ましい。
ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン(共)重合体のトルエン不溶分は、70〜99%であることが好ましい。
【0010】
ポリクロロプレンラテックスは、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩を乳化剤に使用して、クロロプレン又はクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンを含む単量体を乳化重合させ、得られた乳化重合終了後の反応液にノニオン性界面活性剤を添加して得ることができる。
本発明のポリクロロプレンラテックスは、浸漬成形製品の原料として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浸漬成形製品用途に適した化学的安定性を有し、なおかつ凍結安定性に優れたポリクロロプレンラテックスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明のポリクロロプレンラテックスとは、クロロプレン重合体を、乳化剤を介して水中に乳化させたラテックス(エマルジョン)のことである。ここで、クロロプレン重合体とは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、クロロプレンと記す。)の単独重合体、又はクロロプレンと他の単量体との共重合体をいう。クロロプレンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、硫黄、メタクリル酸及びそのエステル類、アクリル酸及びそのエステル類が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン重合体としては、クロロプレンと2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの共重合体であることが好ましい。また、クロロプレンと2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの共重合体である場合には、単量体の合計100質量部のうち、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの仕込み量が2〜20質量部であることが望ましい。この範囲で、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンを仕込んで共重合させると、浸漬成形製品の皮膜に柔軟性を付与させることができる。
【0015】
本発明のポリクロロプレンラテックスは、乳化剤として、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩と、特定構造のノニオン性界面活性剤を含有する。
【0016】
ロジン酸とは、樹脂酸、脂肪酸などの混合物である。樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロイソピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などが含まれ、脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸などが含まれている。これらの成分組成は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンに分類されるロジン採取方法の違い、松の産地及び樹種、蒸留精製、不均化(不均斉化)反応によって変化するものであり、本発明では限定されない。アルカリ金属塩とは、ナトリウム塩またはカリウム塩のことである。
【0017】
ロジン酸又はそのアルカリ金属塩は、クロロプレン又はクロロプレンと他の単量体を乳化重合する際の乳化剤として使用することが好ましい。その仕込み量は、初期仕込み単量体の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが望ましい。0.5質量部未満の場合、これらの単量体を十分に乳化させることが困難になる場合がある。また、20質量部を超えると、撹拌時に発泡しやすくなったり、得られる浸漬成形製品の皮膜強度が低下したりする場合がある。
【0018】
本発明で用いるノニオン性界面活性剤は、以下の化2で表される構造の、HLBが12.9〜18.5のノニオン性界面活性剤である。このノニオン性界面活性剤は、得られるポリクロロプレンラテックスの凍結安定性を向上させるために添加するものである。
【化2】

(式中、Xは水素またはメチル基、nは1〜3の整数、mは5〜100の整数を表す。)
【0019】
上記化学式におけるnは、ベンジル基の付加数であり、nが3を超えると、凍結安定性の改良効果が得られない。また、mは、エチレンオキサイドの付加数の平均値であり、幅を持っていても良い。例えば、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルの市販品であるエマルゲンB66(花王株式会社製)は、平均値としてはm=16であるが、m=約5〜30の幅を持っている。mが5よりも小さいと、凍結安定性の改良効果が得られない。mが100を超えると、水に溶けにくくなり、希釈水溶液を調製してから添加しなければならず、生産性が低下する。
【0020】
更に、ノニオン性界面活性剤のHLB値は12.9〜18.5の範囲であり、13.0〜18.0の範囲が好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性又は親油性の度合いを示す指標であり、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。そして、このHLB値は、例えば、以下に示すグリフィンの式を用いて算出することができる。
HLB=((親水基部分の分子量/全体の分子量)×100)/5
【0021】
ノニオン性界面活性剤量は、クロロプレン重合体100質量部に対して0.1〜1.0質量部であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤含有量が、クロロプレン重合体100質量部あたり0.1質量部未満の場合、凍結安定性が改良できないことがあり、また、1.0質量部よりも多いと、撹拌時に発泡しやすくなるからである。また、このノニオン性界面活性剤は、乳化重合時よりも、単量体の乳化重合が終了した後の反応液に添加する方が、高い凍結安定性が得られるため好ましい。
【0022】
このようなノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルなどがある。これらのノニオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルを用いることで、得られるポリクロロプレンラテックスの凍結安定性をより向上させることができる。
【0023】
本発明のポリクロロプレンラテックスは、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩と、上記化学式で表されるノニオン性界面活性剤以外の乳化剤として、アニオン性乳化剤やノニオン性乳化剤を含有させることもできる。アニオン性乳化剤の具体例としては、カルボン酸型及び硫酸エステル型等があり、例えば、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート及びナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物等が挙げられる。特に、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物を併用すると、ポリクロロプレンラテックスを長期間貯蔵した時に層分離を起こしにくくなる効果が得られるので、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.05〜1.2質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0024】
ノニオン性乳化剤の具体例としては、ポリビニルアルコール又はその共重合体(例えばアクリルアミドとの共重合体)、ポリビニルエーテル又はその共重合体(例えば、マレイン酸との共重合体)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアシルエステル等が挙げられる。
【0025】
ポリクロロプレンラテックス中のクロロプレン(共)重合体のトルエン不溶分は、70〜99%であることが好ましい。この範囲に調整することで、得られるポリクロロプレンラテックスの化学的安定性を低くすることができる。
【0026】
ポリクロロプレンラテックスを得る際は、先ず、乳化剤としてロジン酸又はロジン酸のアルカリ金属塩を使用し、クロロプレン又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を、水中でラジカル乳化重合する。その際、重合温度、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、重合率等を任意に選択することで、クロロプレン重合体の分子量、分子量分布、トルエン不溶分、分子末端構造、結晶化速度を制御することが可能である。
【0027】
乳化重合時の重合温度は、特に限定されるものではないが、重合反応を円滑に行うためには5〜50℃とすることが好ましい。また、重合開始剤は、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、第3−ブチルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
連鎖移動剤の種類は、特に限定されるものではなく、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等のように、クロロプレンの乳化重合に一般的に使用されている公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0029】
重合停止剤(重合禁止剤)も、特に限定されるものではなく、例えば2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン及びヒドロキシアミン等を使用することができる。前述した重合工程により得られるクロロプレン重合体の最終重合率は、特に限定するものではなく、70〜100%の範囲内で任意に調節することができる。
【0030】
次に、重合工程により得られた重合液から、未反応単量体を除去する操作(脱モノマー操作)を行う。その方法は、特に限定されるものではなく、減圧加熱等の公知の方法を適用することができる。上記化学式で表されるノニオン性界面活性剤は、乳化重合終了後、未反応単量体を除去する前に添加することが好ましい。
【0031】
本発明のポリクロロプレンラテックスは、硫黄、金属酸化物、増粘剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤などを配合させて、ポリクロロプレンラテックス組成物とする。
【0032】
金属酸化物の具体的な例としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなどが挙げられる。金属酸化物は、ポリクロロプレンラテックスの粘度が高い場合には、粉末状態のまま添加することができるが、乳化剤を用いて水中に乳化/分散させてエマルジョンとしてから配合することが好ましい。
【0033】
増粘剤の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸系、ポリアクリルアミド系、HEUR系(ポリエチレンオキシドの両末端を疎水基でエンドキャップしたポリマー)などの有機系増粘剤、ヘクトライトやモンモリロナイトなどシリケート化合物のような無機系増粘剤が挙げられる。これらのうち、MC、HPMCなどのセルロース系が、皮膜形成を阻害することが少ないため、好適である。
【0034】
加硫促進剤としては、チオウレア系、ジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩などが挙げられる。チオウレア系化合物の具体例としては、エチレンチオ尿素、ジブチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、N,N‘−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素(TMU)、N,N’−ジエチルチオ尿素(EUR)等が挙げられる。ジチオカルバミン酸塩の例としては、ジメチルカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジメチルジチオカルバミン酸テルル(IV)などが挙げられる。キサントゲン酸塩の例としては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸ガリウム(III)などが挙げられる。
【0035】
老化防止剤としては、アミン−ケトン系、芳香族アミン系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系などが挙げられる。アミンケトン系の具体例としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物などが挙げられる。芳香族アミン系の具体例としては、N−フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0036】
モノフェノール系の具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、モノ(又はジ、又はトリ) (α−メチルベンジル)フェノールなどが挙げられる。ビスフェノール系の具体例としては、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物などが挙げられる。ポリフェノールの具体例としては、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノンが挙げられる。これらの老化防止剤は、乳化剤を用いて水中に乳化/分散させてエマルジョンとしてから配合することが、ポリクロロプレンラテックス中に均一に分散させることができるため、好ましい。
【0037】
充填剤としては、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、ベントナイト、シリカ、シラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
【0038】
浸漬成形に用いる凝固液は、硝酸カルシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、酢酸亜鉛等の無機化合物、あるいは、蟻酸、酢酸等の有機酸を、水及びまたはアルコール類などに溶解させた溶液である。凝固液を型の表面に塗布した後、乾燥させて凝固剤層を形成させるが、この時、凝固剤の濃度が低いと、型の表面全体に均一に凝固剤を付着させることができなかったり、乾燥時間が長くなったりする。そのため、一般的な凝固剤の濃度は、5〜50質量%である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、ノニオン性界面活性剤の種類及び添加量を変えてポリクロロプレンラテックスを製造し、その性能を評価した。
【0040】
[実施例1]
<ポリクロロプレンラテックスAの製造>
内容積3リットルの反応器に、窒素気流下で、水:100質量部、不均化ロジン酸:4質量部、水酸化カリウム:1.3質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩:0.8質量部を仕込み、溶解させた。その後、撹拌しながら、クロロプレン:90質量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン10質量部、及びn−ドデシルメルカプタン:0.03質量部を加えた。そして、開始剤に過硫酸カリウムを使用し、窒素雰囲気下、35℃で重合を行い、重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。重合液に、ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.3質量部添加し、減圧下で未反応の単量体を除去した後、更に減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行い、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスAを得た。
【0041】
[実施例2]
<ポリクロロプレンラテックスBの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノイゲンEA−177/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスBを得た。
【0042】
[実施例3]
<ポリクロロプレンラテックスCの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノイゲンEA−197D/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスCを得た。
【0043】
[実施例4]
<ポリクロロプレンラテックスDの製造>
ポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。重合液には、ノニオン性界面活性剤を添加せず、減圧下で未反応の単量体を除去した後、更に減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行った。その後、ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.3質量部添加し、固形分濃度60%に調節して、ポリクロロプレンラテックスDを得た。ポリクロロプレンラテックスAとポリクロロプレンラテックスDは、ノニオン性界面活性剤の種類と添加量が同じだが、添加方法が異なる。
【0044】
[実施例5]
<ポリクロロプレンラテックスEの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノイゲンEA−177/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスDと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスEを得た。ポリクロロプレンラテックスBとポリクロロプレンラテックスEは、ノニオン性界面活性剤の種類と添加量が同じだが、添加方法が異なる。
【0045】
[実施例6]
<ポリクロロプレンラテックスFの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノイゲンEA−197D/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスDと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスFを得た。ポリクロロプレンラテックスCとポリクロロプレンラテックスFは、ノニオン性界面活性剤の種類と添加量が同じだが、添加方法が異なる。
【0046】
[実施例7]
<ポリクロロプレンラテックスGの製造>
内容積3リットルの反応器に、窒素気流下で、水:100質量部、不均化ロジン酸:4質量部、ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製):0.26質量部、水酸化カリウム:1.3質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩:0.8質量部を仕込み、溶解させた。その後、撹拌しながら、クロロプレン:90質量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン10質量部、及びn−ドデシルメルカプタン:0.03質量部を加えた。そして、開始剤に過硫酸カリウムを使用し、窒素雰囲気下、35℃で重合を行い、重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。重合液を減圧加熱して、未反応の単量体を除去した後、更に減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行い、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスGを得た。
【0047】
[実施例8]
<ポリクロロプレンラテックスHの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(商品名:ノイゲンEA−197D/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスHを得た。
【0048】
[実施例9]
<ポリクロロプレンラテックスIの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)の添加量を、クロロプレン重合体100質量部に対して0.1質量部に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスIを得た。
【0049】
[実施例10]
<ポリクロロプレンラテックスJの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)の添加量を、クロロプレン重合体100質量部に対して1.0質量部に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスJを得た。
【0050】
[実施例11]
<ポリクロロプレンラテックスKの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)の添加量を、クロロプレン重合体100質量部に対して1.2質量部に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスKを得た。
【0051】
[実施例12]
<ポリクロロプレンラテックスLの製造>
内容積3リットルの反応器に、窒素気流下で、水:100質量部、不均化ロジン酸:4質量部、水酸化カリウム:1.3質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩:0.8質量部を仕込み、溶解させた。その後、撹拌しながら、クロロプレン:100質量部、及びn−ドデシルメルカプタン:0.03質量部を加えた。そして、開始剤に過硫酸カリウムを使用し、窒素雰囲気下、35℃で重合を行い、重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。重合液に、ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.3質量部添加し、減圧下で未反応の単量体を除去した後、更に減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行い、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスLを得た。
【0052】
[実施例13]
<ポリクロロプレンラテックスMの製造>
内容積3リットルの反応器に、窒素気流下で、水:100質量部、不均化ロジン酸:4質量部、水酸化カリウム:1.3質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩:0.8質量部を仕込み、溶解させた。その後、撹拌しながら、クロロプレン:90質量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン10質量部、及びn−ドデシルメルカプタン:0.10質量部を加えた。そして、開始剤に過硫酸カリウムを使用し、窒素雰囲気下、20℃で重合を行い、重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。重合液に、ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.3質量部添加し、減圧下で未反応の単量体を除去した後、更に減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行い、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスMを得た。
【0053】
[比較例1]
<ポリクロロプレンラテックスNの製造>
内容積3リットルの反応器に、窒素気流下で、水:100質量部、不均化ロジン酸:4質量部、水酸化カリウム:1.3質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩:0.8質量部を仕込み、溶解させた。その後、撹拌しながら、クロロプレン:90質量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン10質量部、及びn−ドデシルメルカプタン:0.03質量部を加えた。そして、開始剤に過硫酸カリウムを使用し、窒素雰囲気下、35℃で重合を行い、重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応の単量体を除去した後、更に減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行い、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスNを得た。ポリクロロプレンラテックスIには、ノニオン性界面活性剤が含まれていない。
【0054】
[比較例2]
<ポリクロロプレンラテックスOの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンジスチレンフェニルエーテル(商品名:エマルゲンA−60/花王株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスOを得た。
【0055】
[比較例3]
<ポリクロロプレンラテックスPの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(商品名:ノイゲンEA−207D/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスP得た。
【0056】
[比較例4]
<ポリクロロプレンラテックスQの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル(商品名:エマルゲンLS−114/花王株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスQを得た。
【0057】
[比較例5]
<ポリクロロプレンラテックスRの製造>
ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル(商品名:エマルゲンB−66/花王株式会社製)を、ポリオキシプロピレン分岐デシルエーテル(商品名:ノイゲンXL−100/第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、すべてポリクロロプレンラテックスAと同じ手順で、固形分濃度が60%のポリクロロプレンラテックスRを得た。
【0058】
なお、各実施例及び各比較例の固形分濃度は、以下に示す方法により算出した値である。
アルミ皿だけの質量をA、ポリクロロプレンラテックス試料を2ml入れたアルミ皿の質量をB、ポリクロロプレンラテックス試料を入れたアルミ皿を125℃で1時間乾燥させた後の質量をCとし、下式により算出した。
固形分濃度(%)=(B−A)/(C−A)×100
【0059】
各実施例及び各比較例のポリクロロプレンラテックスについて、「トルエン不溶分」、「化学的安定性」、「凍結安定性」、「フィルム引張強度」を評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0060】
<トルエン不溶分>
ラテックス試料を凍結乾燥し秤量してAとした。23℃で20時間、トルエンで溶解(0.6%に調整)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いてゲルを分離した。ゲル分を風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、秤量してBとした。トルエン不溶分(%)は下式に従って算出した。
トルエン不溶分=(B/A)×100
【0061】
<化学的安定性>
23℃に維持された室内で、容量225mlのガラス瓶に、各ポリクロロプレンラテックスを50g入れ、400rpmで撹拌した。そこへ、ビュレットを用いて、濃度0.05%の硝酸カルシウム水溶液50gを、2分間かけて滴下した。その後、撹拌翼に付着した析出物を全てガラス瓶内に落とし、ガラス瓶を密閉して16時間静置した。析出物を、80メッシュ金網で濾過して、鋏で細かく刻み、水洗し、110℃で3時間乾燥させた。析出物の乾燥質量を測定し、下式によって、析出率を計算した。以上の作業を2回繰り返し、析出率の平均値を計算した。
化学的安定性(%)=A/(B×(C/100))×100
(式中、Aは析出物の乾燥質量(g)、Bはラテックスサンプルの質量(g)、Cはラテックスサンプルの固形分濃度(%)を表す)
【0062】
表1〜3の化学的安定性は、析出率の平均値を記載している。この値が低いほど、凝集剤に対する安定性が高い(ポリクロロプレンラテックスが凝集しにくい)ことを意味する。すなわち、析出率が低いポリクロロプレンラテックスは、実際の浸漬成形製品の製造工程で、凝集剤の付着した型の表面で凝集しにくく、均一な皮膜が形成されない可能性がある。従来のポリクロロプレンラテックスは、ラテックス中の界面活性剤量が増加すると、化学的安定性が向上して、析出率が低下する傾向があったが、浸漬成形製品用途では、出来るだけ化学的安定性が低く、析出率が高い方ことが好まれる。表1〜3では、ノニオン性界面活性剤を全く添加していないポリクロロプレンラテックスIと比較して、析出率の数値の低下幅が小さいほど、浸漬成形製品用途に適していると判断する。
【0063】
<凍結安定性>
各ポリクロロプレンラテックス(固形分濃度60%)を、ガラス試験管に入れて、2時間毎にガラス棒で激しく撹拌しながら、−1℃、−5℃、−7℃で24時間放置し、凍結するかどうか確認した。その結果、外観が変化しなかったかったものを○、増粘や凍結が発生したものを×とした。
【0064】
<フィルム引張強度>
酸化亜鉛(亜鉛華2種/堺化学工業株式会社製):3質量部、硫黄(鶴見化学工業株式会社製):0.6質量部、酸化防止剤(Wingstay−L/R.T.Vanderbilt Company, Inc.製):1.2質量部、ラウリル硫酸ナトリウム(エマール10G/花王株式会社製):0.24質量部、水:4.56質量部を、陶器製ボールミルを用いて、20℃で16時間混合し、水分散液を調製した。この水分散液の合計9.6質量部(wet)に対して、各ポリクロロプレンラテックス:100質量部(wet)と、水:20.48質量部を混合して、固形分濃度50%のポリクロロプレンラテックス組成物を作製した。
【0065】
硝酸カルシウム:15.4質量%、炭酸カルシウム:7.7質量%、水76.9質量%となるように混合して、凝固液を作製した。
【0066】
機械撹拌させた凝固液中に、陶器製筒を沈めてから取り出した後、50℃で2分間乾燥した。表面に凝固剤層が形成された筒を、ポリクロロプレンラテックス組成物中に20秒間沈めてから、ゆっくりと取り出した。ポリクロロプレンラテックスが付着、凝固した筒を、水道水で1分間洗浄した後、50℃で5分間乾燥した後、140℃で30分間加熱して、加硫フィルムを作製した。JIS K6251に準拠して、筒から剥がした加硫フィルムをダンベル状3号形に打ち抜き、引張試験機を用いて引張強度(TB)を測定した。
【0067】
以上の結果を表1〜3にまとめて示す。なお、表1〜3に示すノニオン性界面活性剤の添加量は、クロロプレン重合体100質量部に対する値である。
また、表1〜3に記載したノニオン性界面活性剤I〜VIIは、それぞれ次に記載した化合物である。
I:ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル (商品名: エマルゲンB−66/花王株式会社製)
II:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル (商品名: ノイゲンEA−177/第一工業製薬株式会社)
III:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル (商品名: ノイゲンEA−197D/第一工業製薬株式会社)
IV:ポリオキシエチレンジスチレンフェニルエーテル (商品名: エマルゲンA−60/花王株式会社製)
V:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル (商品名: ノイゲンEA−207D/第一工業製薬株式会社)
VI:リオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル (商品名: エマルゲンLS−114/花王株式会社製)
VII:ポリオキシプロピレン分岐デシルエーテル (商品名: ノイゲンXL−100/第一工業製薬株式会社製)
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
表1〜3に示すように、本発明の範囲内のノニオン性界面活性剤を使用したポリクロロプレンラテックス(実施例1〜13)は、ノニオン性界面活性剤を使用していないポリクロロプレンラテックス(比較例1)と比較して、化学的安定性の変化がほとんど無く、凍結安定性及びフィルム引張強度も良好であり、浸漬成形製品に好適である。なお、凍結安定性は、ノニオン性界面活性剤の添加方法の影響も受ける。ノニオン性乳化剤は、乳化重合が終了した後に添加する方法(実施例1〜6及び9〜13)の方が、乳化重合時に添加する方法(実施例7〜8)よりも、凍結安定性の改良効果が高い。特に、未反応単量体を除去する前に添加する方法(実施例1〜3及び9〜13)が、凍結安定性が高いため好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化1で表される構造の、HLBが12.9〜18.5のノニオン性界面活性剤を含有するポリクロロプレンラテックス。
【化1】

(式中、Xは水素またはメチル基、nは1〜3の整数、mは5〜100の整数を表す。)
【請求項2】
ノニオン性界面活性剤の含有量が、ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン重合体100質量部あたり、0.1〜1.0質量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリクロロプレンラテックス。
【請求項3】
クロロプレン重合体が、クロロプレン単位100質量部あたり、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン単位2〜20質量部を含む共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリクロロプレンラテックス。
【請求項4】
ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン重合体のトルエン不溶分が、70〜99%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のポリクロロプレンラテックス。
【請求項5】
ロジン酸又はそのアルカリ金属塩を乳化剤に使用して、クロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンを含む単量体を乳化重合させ、得られた乳化重合終了後の反応液にノニオン性界面活性剤を添加して得られることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のポリクロロプレンラテックス。
【請求項6】
浸漬成形製品の原料として用いられることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項記載のポリクロロプレンラテックス。

【公開番号】特開2012−219204(P2012−219204A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87060(P2011−87060)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】