説明

ポリクロロプレン系接着剤組成物及びその製造方法

【課題】耐熱接着力及び耐層分離性に優れたポリクロロプレン系接着剤組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た無変性クロロプレン系重合体Aと、硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た硫黄変性クロロプレン系重合体Bとを、有機溶剤中に溶解させて、接着剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレン系接着剤組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、ポリクロロプレンを主原料とする接着剤組成物の性能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン系重合体は、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、難燃性(自己消火性)等に優れた物質であり、天然ゴムや他の合成樹脂等と比較しても多くの優れた特性を有する。このように全体的にバランスのとれた物性であるクロロプレン系重合体は、種々の用途に使用されており、その中の代表例として接着剤としての用途が挙げられる。
【0003】
ポリクロロプレン系接着剤は、トルエンやアセトン等の有機溶剤に、クロロプレン系重合体、粘着付与樹脂及び金属酸化物等を溶解及び/又は分散させたものであり、有機溶剤が揮発することにより硬化・接着する。このポリクロロプレン系接着剤は、初期立ち上り接着強さ等の接着特性に優れていることから、木工、家具及び車両等といった幅広い分野において使用されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
一方、クロロプレン系接着剤は、貯蔵している間に、「層分離」が発生しやすく、従来、耐層分離性に優れたクロロプレン系重合体組成物が提案されている(例えば、特許文献3,4参照。)。特許文献3,4に記載の組成物では、クロロプレンをロジン酸及び/又はロジン酸塩の存在下で重合体した後、特定のエチレン性不飽和スルホン酸化合物を添加したり、熱処理したりすることで、層分離安定性向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−226852号公報
【特許文献2】特開2005−008713号公報
【特許文献3】特開2009−173891号公報
【特許文献4】特開2009−191235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献3,4に記載されている従来のポリクロロプレン系接着剤組成物は、耐層分離性及び耐熱接着力が十分に得られないという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、耐熱接着力及び耐層分離性に優れたポリクロロプレン系接着剤組成物及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述した問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、無変性クロロプレン系重合体に硫黄変性クロロプレン系重合体をブレンドすることにより、優れた耐熱接着力を維持しつつ、耐層分離性を向上できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明に係るポリクロロプレン系接着剤組成物は、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た無変性クロロプレン系重合体と、硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た硫黄変性クロロプレン系重合体と、有機溶剤と、を含有し、前記無変性クロロプレン系重合体及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体が、前記有機溶剤中に溶解しているものである。
この接着剤組成物では、前記硫黄変性クロロプレン系重合体として、単量体100質量部に対して、硫黄の量を0.01〜2.5質量部として重合したものであり、重合率が50%以上であるものを使用することができる。
また、前記無変性クロロプレン系重合体及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体には、乳化剤としてロジン酸及び/又はロジン酸の金属塩を使用し、単量体100質量部あたりの乳化剤量を0.5〜7.0質量部として乳化重合したものとしてもよい。
更に、前記硫黄変性クロロプレン系重合体は、チウラム化合物を0.3〜6.0質量%含有していてもよい。
更にまた、前記無変性クロロプレン系重合体と前記硫黄変性クロロプレン系重合体の配合比は、例えば、質量比で、99:1〜60:40とすることができる。
更にまた、前記有機溶剤は、トルエン、ベンゼン及びキシレンを含有しないことが望ましい。
更にまた、金属酸化物及び/又は老化防止剤を含有していてもよく、その場合、前記金属酸化物としては、例えば粒子径が300nm以下の酸化亜鉛を使用することができる。
【0010】
本発明に係るポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法は、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して無変性クロロプレン系重合体を得る工程と、硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程と、有機溶剤に、前記無変性クロロプレン系重合体及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体を溶解する工程と、を有する。
この接着剤組成物の製造方法では、前記硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程において、単量体100質量部に対して、硫黄の量を0.01〜2.5質量部として、重合率が50%以上になるまで重合してもよい。
また、前記無変性クロロプレン系重合体を得る工程及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程は、乳化剤としてロジン酸及び/又はロジン酸の金属塩を使用し、単量体100質量部あたりの乳化剤量を0.5〜7.0質量部として乳化重合することもできる。
更に、前記無変性クロロプレン系重合体と前記硫黄変性クロロプレン系重合体とを、それぞれを個別に仕上げて乾燥処理を行った後、シート状又はチップ状にしたものを、混合して有機溶剤に溶解してもよい。
更にまた、前記無変性クロロプレン系重合体と、前記硫黄変性クロロプレン系重合体と、金属酸化物及び老化防止剤のうちの少なくとも一方とを、前記有機溶剤に直接添加して溶解及び分散させることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無変性クロロプレン系重合体に、硫黄変性クロロプレン系重合体を配合しているため、優れた耐熱接着強度を維持しつつ、耐層分離性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明の実施形態に係るクロロプレン系接着剤組成物は、無変性クロロプレン系重合体Aと、硫黄変性クロロプレン系重合体Bとを、有機溶剤中に溶解したものである。ここで、「クロロプレン系重合体」とは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(クロロプレン)の単独重合体、又は、クロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た共重合体をいう。
【0014】
[無変性クロロプレン系重合体A]
無変性クロロプレン系重合体Aは、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合することにより得られる。その際、クロロプレン単量体と共重合する他の単量体は、1種類に限定されるものではなく、クロロプレンの他に2種以上の単量体を使用することもできる。
【0015】
その種類は特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸のエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸のエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート類、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン並びにアクリロニトリル等を用いることができる。
【0016】
無変性クロロプレン系重合体Aの最終重合率は、所望するポリクロロプレン系接着剤組成物の物性や用途等を考慮して、適宜決定することができるが、最終重合率が50%未満の場合、接着剤組成物の接着強度が低くなりすぎることがある。このため、無変性クロロプレン系重合体Aの最終重合率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60〜95%、更に好ましくは62〜82%である。これにより、適度な接着性が得られ、かつ、接着剤の溶液粘度やムーニー粘度の調整が容易になる。
【0017】
[硫黄変性クロロプレン系重合体B]
硫黄変性クロロプレン系重合体Bは、硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合することにより得られる。その際、クロロプレン単量体と共重合する他の単量体は、前述した無変性クロロプレン系重合体Aと同様の単量体を使用することができ、また、この他の単量体は、1種類に限定されるものではなく、2種以上の単量体を併用することもできる。
【0018】
硫黄変性クロロプレン系重合体Bの最終重合率は、特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると50%以上とすることが好ましく、60〜95%とすることがより好ましい。なお、最終重合率が95%を超えると、硫黄変性クロロプレン系重合体Bの絡み合い分子構造がより複雑になるため、ゲル化して溶剤に溶け難くなることがある。
【0019】
また、硫黄変性クロロプレン系重合体Bは、分子量調整剤としてチウラム化合物を含有する場合がある。しかしながら、硫黄変性クロロプレン系重合体Bにおけるチウラム化合物含有量が0.3質量%未満の場合、添加効果が十分に得られず、粘度調整が難しくなる。一方、チウラム化合物含有量が6.0質量%を超えると、接着剤組成物としたときの貯蔵安定性が低下する。よって、チウラム化合物含有量は、0.3〜6.0質量%であることが望ましい。
【0020】
[配合比]
無変性クロロプレン系重合体Aと硫黄変性クロロプレン系重合体Bの配合比は、特に限定されるものではないが、質量比で、無変性クロロプレン系重合体A:硫黄変性クロロプレン系重合体B=99:1〜60:40とすることが好ましい。クロロプレン系重合体全量あたり硫黄変性クロロプレン系重合体Bの量が1質量%未満の場合、接着剤組成物の耐熱接着力及び耐層分離性が不十分となることがある。また、硫黄変性クロロプレン系重合体Bの量が40質量%を超えると、接着剤組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0021】
[有機溶剤]
前述したクロロプレン系重合体を溶解させる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、酢酸イソプロピル及び酢酸エチル等を使用することができる。また、これの有機溶剤は、単独で使用しても、混合溶剤として使用してもよい。なお、本実施形態のクロロプレン系接着剤組成物では、シックハウス症候群の原因化学物質とされるトルエン、ベンゼン及びキシレン以外の有機溶剤を使用することが望ましく、混合溶剤の場合もこれらを含まないものとすることが望ましい。
【0022】
[その他の添加成分]
本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物には、前述した各成分に加えて、金属酸化物及び/又は老化防止剤が配合されていてもよい。例えば、金属酸化物を添加すると、接着剤の貯蔵安定性及び接着力を向上させる効果が得られる。本実施形態の接着剤組成物に添加される金属酸化物としては、例えば酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化マグネシウム等が挙げられるが、特に、粒子径が300nm以下の酸化亜鉛を使用することが望ましい。これにより、接着剤組成物中に分散しやすくなる。
【0023】
一方、老化防止剤としては、例えば2,2´−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル、ジエチル[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ホスホネート、3,3´,3´´,5,5´,5´´−ヘキサ−t−ブチル−a,a´,a´´−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)ポロピオネート]、4,4´−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等を用いることができる。
【0024】
また、本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物には、所望の物性に応じて、粘着付与樹脂、ホルムアルデヒドキャッチャー剤及び充填剤等を添加することもできる。例えば、粘着付与樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、ロジン樹脂、クマロン樹脂及び石油樹脂等を用いることができる。
【0025】
ホルムアルデヒドキャッチャー剤は、有害な揮発性物質であるホルムアルデヒドを捕捉するものであり、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、メラミン、ジシアンジアミド、尿素、エチレン尿素、4,5−ジメトキシエチレン尿素、プロピレン尿素、5−メチルプロピレン尿素、5−ヒドロキシプロピレン尿素、5−メトキシプロピレン尿素、オキサリル尿素(パラバン酸)、ヒドラゾベンゾチアゾール、セミカルバジド及びチオセミカルバジド等を用いることができる。
【0026】
充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、クレー、スメクタイト、シリカ及びハイドロタルサイトやマイカ等を用いることができる。
【0027】
更に、本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物には、耐光性を向上させる目的で、ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン等の光安定剤を添加することもできる。
【0028】
[製造方法]
次に、本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法について説明する。本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法は、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して無変性クロロプレン系重合体を得る工程と、硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程と、有機溶剤に、無変性クロロプレン系重合体及び硫黄変性クロロプレン系重合体を溶解する工程と、を有する。
【0029】
[重合工程]
無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bを得るための重合反応は、特に限定されるものではなく、乳化重合、塊状重合、懸濁重合及び溶液重合等の公知の方法を適用することができるが、特に乳化重合法が好適である。この乳化重合は、水等を反応溶剤とし、かつ簡便な方法でありながら接着剤として良質なクロロプレン系重合体を得ることができる点で望ましい。即ち、クロロプレン単独又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を、乳化剤、分散剤、重合開始剤及び連鎖移動剤等の存在下で、乳化重合させることで、クロロプレン系重合体を得ることができる。
【0030】
また、乳化重合により、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bを得る場合は、乳化剤としてロジン酸及び/又はロジン酸の金属塩を使用することが望ましい。ここで、「ロジン酸」とは、モノカルボン酸系のジテルペン酸であり、分子式C2030で表される。本実施形態においては、ロジン酸の異性体については限定されず、例えば、下記化学式1で表されるアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、ジヒドロピマール酸、イソピマール酸及びセコデヒドロアビエチン酸等が挙げられ、これらを単独で使用しても、混合して使用してもよい。なお、乳化剤には、オレイン酸、オクタデセン酸又はステアリン酸等の脂肪酸が含有されていてもよい。
【0031】
【化1】

【0032】
一方、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bの重合工程において使用するロジン酸金属塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩を使用することが望ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩を使用することがより望ましい。これにより、取扱い性をより向上させることができる。
【0033】
また、ロジン酸及びロジン酸金属塩の添加量は、クロロプレン系重合体を構成する全単量体100質量部に対して、ロジン酸及びロジン酸金属塩の総量で0.5〜7.0質量部とすることが好ましい。ロジン酸及びロジン酸金属塩の量が、単量体100質量部あたり0.5質量部未満の場合、十分な添加効果が得られず、クロロプレンラテックスが不安定となり、重合缶に付着することがある。また、ロジン酸及びロジン酸金属塩の量が、単量体100質量部あたり7.0質量部を超えると、接着剤組成物としたときに耐層分離性が低下する。なお、ロジン酸及びロジン酸金属塩の添加量は、単量体100質量部あたり、1.0〜5.0質量部とすることがより好ましい。
【0034】
本実施形態においては、重合反応の制御を安定化させるために、適宜、他の乳化剤を併用してもよい。具体的には、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸カリウム及びポリオキシプロピレンアルキルエーテルスルホン酸カリウム等を用いることができる。
【0035】
重合反応の重合温度、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤及び最終重合率等を適宜、選定・制御することで、重合により得られる無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bの分子量、分子量分布、分子末端構造及び結晶化速度等を制御することができる。なお、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bを重合する際の温度は、特に限定されるものではないが、8〜50℃とすることが好ましく、より好ましくは10〜45℃である。重合温度をこの範囲にすることにより、安定的に重合反応を遂行することができる。
【0036】
また、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bの重合工程において使用される重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム等の無機過酸化物、又はケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類及びジアシルパーオキサイド類等の有機化酸化物等が挙げられる。これら重合開始剤の中でも、特に、安定した重合を行なうことができる点から、過硫酸カリウムを使用することが望ましい。
【0037】
この重合開始剤の使用条件等については、特に限定されるものではないが、0.1〜5質量%の水溶液として使用することが望ましい。これにより、安定した乳化重合を行うことができる。そして、この重合開始剤を添加することにより、重合反応が開始され、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bが生成する。
【0038】
更に、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bの重合工程では、前述した重合開始剤の活性をより向上させるために、重合促進剤等の添加剤を使用することができる。この重合促進剤(添加剤)としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、酸化鉄(II)、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム、ホルムアミジンスルホン酸及びL−アスコルビン酸等を用いることができる。
【0039】
更にまた、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bの重合工程では、連鎖移動剤を用いることもできる。この連鎖移動剤の種類は特に限定されるものではく、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン及びn−オクチルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド及びジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、テトラエチルチウラムスルフィド、テトラブチルチウラムスルフィド及びテトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム化合物、又はヨードホルム等を用いることができる。
【0040】
なお、硫黄変性クロロプレン系重合体Bは、前述した連鎖移動剤を使用して分子量を調整することもできるが、連鎖移動剤を使用せずに重合し、その後の可塑化工程にて分子量を調整することもできる。例えば、連鎖移動剤を使用しないで重合する場合、クロロプレンと硫黄が共重合し、極度の高分子量のポリマーに成長する。そこで、「可塑化工程」において、チウラム化合物等を使用して、この共重合ポリマー中のポリスルフィド結合を化学的に切断し、重合体の分子量を調整する。
【0041】
また、硫黄変性クロロプレン系重合体Bを重合する際は、クロロプレン単量体100質量部又はクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、硫黄の添加量を0.01〜2.5質量部とすることが望ましい。硫黄は、接着剤組成物としたときに、加硫促進剤として作用する。しかしながら、単量体100質量部あたりの硫黄添加量が0.01質量部未満の場合、得られる重合体中の硫黄含有量が不足するため、接着剤組成物の耐熱接着力が不十分となることがある。一方、重合時の硫黄添加量が、単量体100質量部あたり2.5質量部を超えると、重合中に硫黄が析出してしまうことがある。なお、重合時の硫黄添加量のより好適な範囲は、単量体100質量部あたり、0.1〜1.0質量部である。
【0042】
無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bの重合工程においては、所望の重合率に達した際に重合反応を停止させるが、その際の停止方法は、特に限定されるものではなく、例えば、重合禁止剤を添加する方法や反応温度を変化させる方法等を適用することができる。
【0043】
その際、重合禁止剤の種類は特に限定されず、例えば、チオジフェニルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン及びハイドロキノンメチルエーテル等を用いることができる。
【0044】
[後処理工程]
後処理工程では、例えば、スチームフラッシュ法や濃縮法により高温下に曝すことにより、未反応の単量体等を除去する。その後、未反応の単量体等が除去されたクロロプレン系重合体を、酸性度が中性となるように調整する。その際、中和剤としては、例えば、酢酸及びメタクリル酸等の酸性物質の水溶液、苛性ソーダ、水酸化カリウム及び炭酸ソーダ等の塩基性物質の水溶液等を用いることができる。このような後処理により、クロロプレン系重合体のラテックスを得ることができる。
【0045】
[可塑化工程]
硫黄変性クロロプレン系重合体Bの可塑化工程に使用される分子量調整剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム化合物、ジブチルジチオカルバミン酸ソーダ及びジエチルジチオカルバミン酸ソーダ等のチオカルバミン酸塩類を使用することができる。
【0046】
これらの分子量調整剤は、重合終了後のラテックスに、直接添加することができる。その際、分子量調整剤にチウラム化合物を使用する場合には、前述したように、硫黄変性クロロプレン系重合体B中に、チウラム化合物が0.3〜6.0質量%含有されるように添加することが望ましい。また、チオカルバミン酸塩類を使用する場合には、硫黄変性クロロプレン系重合体B中の含有量が4.0質量%以下となるように添加することが望ましい。
【0047】
[仕上げ乾燥工程]
前述した工程を経て得た無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bのラテックスは、凍結凝固や塩析等の方法で仕上げ乾燥処理を行う。その後、必要に応じて、シート状やチップ状等に成型加工してもよい。
【0048】
[溶解工程]
有機溶剤に、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体B等を溶解する方法は、特に限定されるものではなく、公知の技術を使用できる。ただし、接着剤の品質を制御する上では、前述した仕上げ乾燥工程を行った後に、シート状やチップ状となった各ラテックスを混合し、無変性クロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体B等の有機物を有機溶剤に溶解すると共に、ラテックス中に含まれる無機物を有機溶媒中に分散させる方法が好ましい。
【0049】
一般に、ポリクロロプレン系接着剤組成物は、アルキルフェノール樹脂や酸化マグネシウム(MgO)を有機溶剤に溶解させて、25℃の温度条件下で20時間静置した反応樹脂溶液に、クロロプレン系重合体、金属酸化物及び老化防止剤をロールで混練したものを溶解させる方法により製造されている。
【0050】
これに対して、本実施形態のポリクロロプレン接着剤組成物の製造方法では、クロロプレン系重合体と、金属酸化物と、老化防止剤とを、ロール練りせずに、直接有機溶剤に溶解及び分散させることにより、接着剤組成物を製造することもできる。これにより、前述した反応やロール混練等の準備作業を省略することができる。
【0051】
このように、本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物においては、無変性クロロプレン系重合体に、硫黄変性クロロプレン系重合体を混合しているため、優れた耐熱接着強度を維持しつつ、耐層分離性を向上させることができる。
【0052】
本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物は、紙、木材、布、皮革、ジャージ、レザー、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、モルタル、セメント系材料、セラミック及び金属等の同種又は異種の材料同士を接着することが可能である。特に、本実施形態のポリクロロプレン系接着剤組成物は、耐熱接着強度に優れるため、木工、家具、建築材料、車両、靴、鞄、ベルト及び各種ラミネーションを接着するための接着剤として好適である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す方法で製造した無変性ポリクロロプレン系重合体A及び硫黄変性クロロプレン系重合体Bを用いて接着剤組成物を作製し、その性能を評価した。
【0054】
(実施例1)
<無変性クロロプレン系重合体Aの製造>
水:120部、ロジン酸のナトリウム塩(荒川化学工業社製 商品名「ロンジス」):4.0部、水酸化カリウム:0.5部の乳化剤水溶液に、亜硫酸水素ナトリウム:0.5部を添加した。また、その他の添加剤として、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(花王社製 商品名「デモールNL(登録商標)」):0.5質量部を仕込んで溶解させた。
【0055】
この溶液を内容積5リットルの反応器に投入し、撹拌しながらクロロプレン単量体:100質量部及びn−ドデシルメルカプタン:0.1質量部を加えた。更に、過硫酸カリウム:0.1質量部を触媒として用いて、窒素ガス雰囲気下で、重合温度を40℃にして重合し、最終重合率が65%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止させた。その後、減圧下で、反応溶液中の未反応単量体を除去した。そして、このラテックスを10%酢酸水溶液によってpH=7に調整し、凍結凝固乾燥法により無変性クロロプレン系重合体Aのゴムシートを得た。
【0056】
<硫黄変性クロロプレン系重合体Bの製造>
水:120部、ロジン酸のナトリウム塩(荒川化学工業社製 商品名「ロンジス」):4.5部、水酸化カリウム:0.5部の乳化剤水溶液に、亜硫酸水素ナトリウム:0.5部を添加した。また、その他の添加剤として、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(花王社製 商品名「デモールNL(登録商標)」):0.5質量部を仕込んで溶解させた。
【0057】
この溶液を、内容積5リットルの反応器に投入し、撹拌しながらクロロプレン単量体:100質量部と硫黄:0.6質量部を加えた。更に、過硫酸カリウム:0.1質量部を触媒として用いて、窒素ガス雰囲気下で、重合温度を40℃にして重合し、最終重合率が65%に達したところでフェノチアジンの乳濁液、テトラエチルチウラムジスルフィド:2部の乳濁液及びジブチルジチオカルバミン酸ソーダの水溶液を加えて、重合を停止させた。その後、減圧下で、反応溶液中の未反応単量体を除去した。そして、このラテックスを10%酢酸水溶液によってpH=7に調整し、凍結凝固乾燥法により硫黄変性クロロプレン系重合体Bのゴムシートを得た。
【0058】
<ポリクロロプレン系接着剤組成物の製造>
粘着付与樹脂(フェノール樹脂、「タマノル526(登録商標)」)と、酸化マグネシウムを有機溶剤に溶かして、25℃で20時間反応させることで樹脂溶液を調製した。そして、この樹脂溶液に、前述した方法で作製した無変性クロロプレン系重合体Aからなるゴムシート:95質量部と、硫黄変性クロロプレン系重合体Bからなるゴムシート:5質量部と、老化防止剤として4,4´−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(「ノクラックN−300(登録商標)」):1質量部と、酸化マグネシウム:3質量部と、酸化亜鉛2種(粒径約500nm):1質量部とを直接溶解して、実施例1の接着剤組成物とした。
【0059】
(実施例2〜7)
無変性クロロプレン系重合体Aからなるゴムシートと、硫黄変性クロロプレン系重合体Bからなるゴムシートの配合比を変えて、それ以外は実施例1と同様の条件にして、実施例2、3の接着剤組成物を作製した。また、連鎖移動剤を使用せずに重合を行った無変性クロロプレン系重合体と、硫黄添加量を変えて重合した硫黄変性クロロプレン系重合体を使用した以外は、前述した実施例1と同様にして、実施例4の接着剤組成物を作製した。
【0060】
一方、酸化亜鉛2種の代わりに、酸化亜鉛(「METAZ−102(登録商標),粒径約100nm」を使用して、それ以外は前述した実施例1と同様にして、実施例5の接着剤組成物を作製した。また、硫黄変性クロロプレン系重合体の配合量をクロロプレン系重合体全体の50質量%とし、それ以外は、実施例1と同様にして、実施例6の接着剤組成物を作製した。更に、硫黄変性クロロプレン系重合体Bを、クロロプレン:90質量部及びジクロロブタジエン:10質量部の共重合体とした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の接着剤組成物を作製した。
【0061】
(比較例1)
硫黄変性クロロプレン重合体Bを配合していない以外は、前述した実施例1と同様にして、比較例1の接着剤組成物を作製した。
【0062】
実施例及び比較例の各接着剤組成物の配合を、下記表1に示す。また、このようにして得られた実施例及び比較例の各接着剤組成物について、以下に示す方法で、溶液粘度、接着剥離強度、耐熱接着剥離強度及びスプレー塗工作業性を評価した。
【0063】
【表1】

【0064】
[溶液粘度]
実施例及び比較例の各接着剤組成物の溶液粘度は、ブルックスフィールド粘度計を用いて、温度20℃、30rpmの条件で測定した。
【0065】
<接着剥離強度>
帆布(25mm×150mm)2枚それぞれに、実施例及び比較例の各接着剤組成物を3000g/cm塗布した。その後、オープンタイムを30分として、ハンドローラーで5往復した。そして、セットタイム3時間後の初期強度と、10日後の常態強度を50mm/minの引張強度で測定した。
【0066】
<耐熱接着剥離強>
帆布(25mm×150mm)2枚それぞれに、実施例及び比較例の各接着剤組成物を3000g/cm塗布した。その後、オープンタイムを30分として、ハンドローラーで5往復した。そして、セットタイム10日後の被着体を、80℃の恒温槽付きの引張試験機で50mm/minの条件で剥離強度を測定した。
【0067】
<軟化点試験>
帆布(25mm×150mm)2枚それぞれに、実施例及び比較例の各接着剤組成物を3000g/m塗布した。その後、オープンタイムを30分として、ハンドローラーで5往復した。そして、セットタイム10日後の試験体を、500gの重りを吊り下げた状態で、試験装置内にセットし、試験装置内を38℃雰囲気下で15分間保持後、5分間に2℃の割合で昇温し、重りが落下する温度を測定した。
【0068】
<接着剤の耐層分離安定性>
実施例及び比較例の各接着剤組成物をガラス瓶に入れ、50℃で4週間放置後の溶液状態を観察した。そして、均一であったものを○、層分離が顕著な状態のものを×とした。
【0069】
<接着剤の貯蔵安定性>
実施例及び比較例の各接着剤組成物をガラス瓶に入れた直後と、50℃で4週間後の溶液粘度測定を、ブルックフィールド型粘度計により測定した。
【0070】
以上の結果を、下記表2にまとめて示す。
【0071】
【表2】

【0072】
上記表2に示すように、硫黄変性クロロプレン系重合体を配合していない比較例1の接着剤組成物は、耐層分離性に劣り、耐熱接着強度も低いものであった。これに対して、本発明の範囲内で作製した実施例1〜7の接着剤樹脂組成物は、耐層分離性に優れ、耐熱接着強度も高かった。これにより、本発明によれば、耐熱接着力及び耐層分離性の両方が優れたポリクロロプレン系接着剤組成物を実現できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るポリクロロプレン系接着剤組成物は、紙、木質材、布類、皮革類、ジャージ、合成レザー類、ゴム類、プラスチック類、陶器、セラミックス、ガラス、モルタル、セメント、金属類等の幅広い材料の接着剤等として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た無変性クロロプレン系重合体と、
硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して得た硫黄変性クロロプレン系重合体と、
有機溶剤と、を含有し、
前記無変性クロロプレン系重合体及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体が、前記有機溶剤中に溶解しているポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項2】
前記硫黄変性クロロプレン系重合体は、単量体100質量部に対して、硫黄の量を0.01〜2.5質量部として重合したものであり、重合率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記無変性クロロプレン系重合体及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体は、乳化剤としてロジン酸及び/又はロジン酸の金属塩を使用し、単量体100質量部あたりのロジン酸及びその金属塩の量を合計で0.5〜7.0質量部として乳化重合したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記硫黄変性クロロプレン系重合体は、チウラム化合物を0.3〜6.0質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項5】
前記無変性クロロプレン系重合体と前記硫黄変性クロロプレン系重合体の配合比が、質量比で、99:1〜60:40であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤は、トルエン、ベンゼン及びキシレンを含有しないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項7】
更に、金属酸化物及び/又は老化防止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物は、粒子径が300nm以下の酸化亜鉛であることを特徴とする請求項7に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物。
【請求項9】
クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して無変性クロロプレン系重合体を得る工程と、
硫黄存在下で、クロロプレンを単独で重合するか又はクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合して硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程と、
有機溶剤に、前記無変性クロロプレン系重合体及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体を溶解する工程と、
を有するポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程は、単量体100質量部に対して、硫黄の量を0.01〜2.5質量部として、重合率が50%以上になるまで重合することを特徴とする請求項9に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法。
【請求項11】
前記無変性クロロプレン系重合体を得る工程及び前記硫黄変性クロロプレン系重合体を得る工程は、乳化剤としてロジン酸及び/又はロジン酸の金属塩を使用し、単量体100質量部あたりの乳化剤量を0.5〜7.0質量部として乳化重合することを特徴とする請求項9又は10に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法。
【請求項12】
前記無変性クロロプレン系重合体と前記硫黄変性クロロプレン系重合体とを、それぞれを個別に仕上げて乾燥処理を行った後、シート状又はチップ状にしたものを、混合して有機溶剤に溶解することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記無変性クロロプレン系重合体と、前記硫黄変性クロロプレン系重合体と、金属酸化物及び老化防止剤のうちの少なくとも一方とを、前記有機溶剤に直接添加して溶解及び分散させることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のポリクロロプレン系接着剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−111862(P2012−111862A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262443(P2010−262443)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】