説明

ポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び該化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】
低粘度で耐熱性と硬化性に優れた特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物と、それを用いて硬化させた際、硬度と耐熱性に優れた塗膜が得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であるポリグリセリンとアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数4〜20)に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られる(メタ)アクリル酸エステル化物、及び該化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物と、それを用いて得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コーティング膜の作成に、熱硬化型や溶剤揮散型の樹脂組成物を用いるのが一般的であったが、熱硬化型では耐熱性のない基材に対しては不適当であり、溶剤揮散型では環境に対する負荷が大きいという問題があった。そこで、近年、活性エネルギー線の照射によって硬化可能な樹脂組成物を用いる塗装方法が、さまざまな分野で開発されている。
【0003】
ところが、活性エネルギー線の照射による硬化には収縮が伴い、硬化物に反りや割れが生じてしまう問題点が指摘されており、活性エネルギー線硬化型組成物としては、(メタ)アクリレート修飾した微粒子シリカを含有してなる組成物(特許文献1)やウレタン骨格を有するアクリレートを含有してなる組成物(特許文献2)を用いることが報告されている。
【0004】
しかし、上記微粒子シリカを用いた場合に、組成物中で均一分散させることが必ずしも容易ではなく組成物を各種有機溶剤にて希釈しなければ均一分散安定性に欠ける。また、ウレタン骨格を有するアクリレートも分子量が大きくなる傾向に起因して粘度が増大し、組成物を各種有機溶剤にて希釈しなければ作業上使用しづらく薄いコーティング膜を作成することが困難である。このように、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の有機溶剤を使用せずとも硬化できる作業環境・環境対応型技術という本質的意義を全うできない現状にある。
【0005】
また、活性エネルギー線の照射による硬化においては、性能だけでなく生産効率や作業性のより良い物が求められており、特に硬化が速く化合物の粘度が低い物が求められている。一般的に、硬化速度を速くするには、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物を使用することが有効である。しかしながら、これらを用いた場合、硬化性は良好であるものの粘度や硬化収縮などの性能を満足する物は得られなかった。
【0006】
この問題に対して、ポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステルを含有してなる組成物(特許文献3)が提案されているが、粘度や硬化性、更には硬化収縮などの性能は優れているが、(メタ)アクリル酸エステル自身の耐熱性や、それを用いた硬化塗膜の硬度や耐熱性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−063244号公報
【特許文献2】特開2005−330403号公報
【特許文献3】特開2008−045104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、低粘度で耐熱性と硬化性に優れた特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物と、それを用いて硬化させた際、硬度と耐熱性に優れた塗膜が得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であるポリグリセリンとアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数4〜20)に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られる(メタ)アクリル酸エステル化物、及び該化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物により上記課題を解決にするに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物は、多官能でありながら低粘度で、耐熱性が高く、分子量分布も狭いため、該化合物を配合した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は硬化速度が速く、低粘度で作業性が優れると共に、硬化させた際、硬度と耐熱性に優れた塗膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物を用いることを特徴とするが、ポリグリセリンの組成、アルキレンオキサイドの種類や付加モル数、(メタ)アクリロイル基の反応割合により種々の化合物を合成することができるので、以下に説明する。
【0012】
本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物に使用されるポリグリセリンは、グリセリンの脱水縮合反応、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンのハロヒドリン等のグリセリン類縁物質を用いての合成、あるいは合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの回収等によって得られるが、一般的には、グリセリンに少量のアルカリ触媒を加えて200℃以上の高温に加熱し、生成する水を除去しながら重縮合させる方法により得られる。反応は逐次的な分子間脱水反応により順次高重合体が生成するが、反応組成物は均一なものではなく、未反応グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等の複雑な混合生成物となり、反応温度が高いほど、あるいは反応時間が長いほど反応は高分子量側にシフトする。また、未反応のグリセリンは減圧蒸留による蒸留が可能であり、ジグリセリンは分子蒸留による蒸留が可能であるため、一般的にはジグリセリンは高純度品が使用され、それ以上の重合度のポリグリセリンは、複雑な他成分の混合物やグリセリン、ジグリセリンを蒸留した残分が使用される。
【0013】
ポリグリセリンの組成分析は、一例として、ポリグリセリン試料を約0.5g、及び内部標準物質としてパルミチン酸メチル(1級試薬;キシダ化学)を約0.05g精秤し、ピリジン(特級試薬;キシダ化学)約1.8mlにこれらを溶解させ、次いで、この溶液20μlに対してTMS−HT(試薬;東京化成工業)を0.2ml注入し、温浴にて反応後に上澄み液を1μlと下記の分析に供することで判定される。
【0014】
ガスクロマトグラフ:GC−14B(島津製作所製)
カラム:OV−1(GLサイエンス製、内径3mm、長さ1.5m)
カラム温度:100℃〜350℃(昇温速度10℃/min)
キャリアーガス:窒素(50ml/min)
注入部温度:350℃
検出器温度:350℃
検出器:FID
【0015】
本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物に使用されるポリグリセリンは、ポリグリセリン組成中のトリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であり、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。60重量%未満のポリグリセリンを用いた場合、分子量分布の広いポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物となり、低粘度、耐熱性、硬化性などの性能を全て満たすことが困難となるため好ましくない。
【0016】
さらに、本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物に使用されるポリグリセリンは、トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上のポリグリセリンであるが、好ましくはトリグリセリンとテトラグリセリンの各々の濃度が10重量%〜70重量%の範囲であり、さらに好ましくは20重量%〜70重量%の範囲である。これらの下限範囲を外れる組成のポリグリセリンを用いた場合、前記同様に分子量分布の広いポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物となり、低粘度、耐熱性、硬化性などの性能を全て満たすことが困難となるため好ましくない。また、上限範囲を外れる組成のポリグリセリンを用いた場合、これを製造するには複数の蒸留工程が必要となるため、非常に不経済なものとなるため好ましくない。
【0017】
また、これに加えて、本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物に使用されるポリグリセリンは、ジグリセリン濃度が10重量%未満、ヘキサグリセリン以上のポリグリセリン濃度が15%未満であることが望ましい。ジグリセリン濃度が範囲を外れるポリグリセリンを用いた場合、得られるポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物の耐熱性や硬化速度が低下するため好ましくない。また、ヘキサグリセリン以上のポリグリセリン濃度が範囲を外れるポリグリセリンを用いた場合、得られるポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物の粘度が上昇し作業性が悪くなる。
【0018】
本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物に使用されるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられるが、エチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドは単独でも併用しても良い。アルキレンオキサイドの付加単位数は、ポリグリセリン1モルに対して4〜20モルであり、好ましくは4〜16モルである。付加モル数が4モルより少ない場合、ポリグリセリン骨格の2級のアルコールが増えるため(メタ)アクリレートを反応させることが難しくなり、逆に付加モル数が20より多い場合、本発明のアクリレートを含有した樹脂組成物を硬化させた際、硬化塗膜の硬度などが低下するので好ましくない。
【0019】
本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物の製造方法には特に制限がない。例えば、特定のポリグリセリンに任意の量のアルキレンオキサイドを公知の方法で付加反応させた後、末端水酸基に(メタ)アクリル酸を反応させて生成水を系外に抜き出しながらエステル化物を得る脱水エステル化法と、末端水酸基に低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを反応させて生成低級アルコールを系外に抜き出しながらエステル化物を得るエステル交換法が例示できる。
【0020】
本発明のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物の(メタ)アクリロイル基の反応割合については、ポリグリセリン1分子にアルキレンオキサイドが付加した末端水酸基のうち、3つ以上反応させることが好ましい。3つより少ないと、活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させる際の硬化速度が遅くなるだけでなく、本発明の(メタ)アクリル酸エステルを製造する際、工程中で水洗することが困難となったり、製品の粘度が高くなる等種々の問題が発生するために好ましくない。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成は、ポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物を含有することを特徴とするが、本発明で用いられるエステル化物以外に他の(メタ)アクリル系モノマーやアクリル系オリゴマーであるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを単独若しくは2種以上併用しても良い。樹脂組成物に対し、硬化性や粘度、耐熱性、硬度などの性能が損なわれない限り、任意の割合で併用することが出来る。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステル化物以外の他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジエトキシ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレート等のモノマー類を挙げることができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物は公知の方法によって硬化する事ができる。活性エネルギー線とは、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線若しくは電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置として多くの種類があるが、任意に選択できる。また、低波長領域側の可視光等エネルギーとして、青色LEDを用いることも可能である。
【0024】
本発明において上記の中で、紫外線を用いて硬化させる場合に、ラジカル重合系光重合開始剤を使用する必要がある。光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤であっても良いが配合後の貯蔵安定性の良い事が要求される。この様な光重合開始剤としては、例えば分子内開裂型開始剤として、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン類等、水素引き抜き型開始剤として、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等が挙げられ、単独または2種以上を併用することができる。光重合開始剤を使用する必要がある場合、その使用量は、通常組成物の0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜7重量%である。
【0025】
ベンジルケタール類としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等、α−ヒドロキシアセトフェノン類としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等、アミノアセトフェノン類としては、例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等、アシルフォスフィンオキサイド類としては、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド等、ベンゾイン類としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン類としては、例えばベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等、チオキサントン類としては、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0026】
さらに、光増感剤を単独あるいは2種以上と組合せて用いることができる。光増感剤としては、例えばN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類があげられる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、所望により、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等の界面活性剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の有機溶剤、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、アクリルポリマー等の非反応性高分子樹脂;ポリジアリルフタレート、ポリジアリルイソフタレート等の反応性高分子樹脂;レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、熱安定剤、重合禁止剤等の添加剤;炭酸カルシウム、タルク、シリカ、硫酸バリウム等の無機フィラー等を併用することができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、活性エネルギー線によって硬化させる際、公知の方法により、塗膜、フィルム等様々な形態とすることができる。よって、この組成物は、コーティング剤、ライニング剤、光学材料、インキ等の用途で利用することが出来、また、硬質及び可橈性プラスチック、ガラス、金属基板など広い範囲の基板上へ適用できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。なお、今回使用したポリグリセリンは、下記の合成例に示すポリグリセリンA〜Hを用いた。ただし、%は重量基準である。
【0030】
<ポリグリセリンA〜Hの合成例>
温度計、撹拌機を備えた反応容器に精製グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)、及び触媒として水酸化ナトリウムを添加し、窒素気流下にて250℃で反応させ、ポリグリセリン組成物を得た。次いで、この組成物を減圧蒸留して表1に示すポリグリセリン組成物A〜Fを得た。なお、減圧蒸留工程を実施しないものとして、ポリグリセリンG、及びHを得た。
【0031】
【表1】

【0032】
<合成例>
温度計、撹拌機、還流冷却管、水分離管、空気吹き込み管を備えた反応器に、ポリグリセリンA(1mol)にエチレンオキサイド6mol付加した化合物200g、トルエン300g、パラトルエンスルホン酸15g、ハイドロキノン0.5g、アクリル酸228gを仕込み、一定量の空気を吹き込み、かつ撹拌しながらトルエン還流雰囲気まで昇温し、約15時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、トルエンを追加した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で未反応のアクリル酸を中和洗浄し、水層を除去した。更に有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、水層を除去してから、トルエンを減圧留去し、ポリグリセリンAのエチレンオキサイド6mol付加物のアクリル酸エステル化物(A1)を得た。以下同様に、ポリグリセリンの種類やアルキレンオキサイドの種類や付加モル数を変化させて、表2に示すポリグリセリンのアクリル酸エステル化物を合成した。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例1〜9、比較例1〜7を表3及び表4に示すような処方で(数値は重量部を示す)各成分を混合し、各種組成物を光重合開始剤が溶解し均一になるよう調製し、各種評価を行った。なお、粘度と熱重量減少温度の測定は、光重合開始剤を配合する前に評価した。実施例中の評価は、以下の方法で行った。
【0035】
粘度:各種アクリル酸エステル化物の粘度をB型粘度計(BM形式;ローターNo.1、株式会社東京計器製)を用い、25℃下で測定した。
【0036】
熱重量減少温度:各種アクリル酸エステル化物の熱重量減少温度をTG−DTA8120(株式会社リガク製)を用い、1%重量減少温度(Td1)、5%重量減少温度(Td5)を測定した。
【0037】
硬化性:調製された組成物を厚さ100μmのPETフィルム上にバーコーターにより塗布し(厚み10μm)、次いで高圧水銀灯(ランプ出力2kw)を平行に配した光源下20cmの位置で照射して硬化させた。硬化するまでの積算光量(mJ/cm)をウシオ電機(株)製積算光量計UIT−250(受光部365nm)を用いて求めた。また、硬化性以外の評価は、1000mJ/cmの紫外線を照射し硬化させた。
○・・・150mJ/cm未満で完全に硬化した。
×・・・150mJ/cm以上で完全に硬化した。
【0038】
鉛筆硬度:上記の方法で硬化した塗膜をJIS K5400に従って評価した。
【0039】
収縮性:上記の方法で硬化した基材の反りを目視にて観察した。
○・・・・基材のPETフィルムに反りが見られない。
×・・・・基材のPETフィルムに反りが見られる。
【0040】
黄変度:上記の方法で硬化した塗膜の硬化直後と120℃で72時間放置後に、それぞれの黄色度(YI:イエローインデックス)を測色色差計(ZE6000;日本電色工業(株)製)にて測定して、黄変度(ΔYI)を算出した。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表3、及び表4の評価結果から、本発明の特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物は、多官能でありながら低粘度で、耐熱性が高く、分子量分布も狭いため、該化合物を配合した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は硬化速度が速く、低粘度で作業性が優れると共に、硬化させた際、硬度と耐熱性に優れた塗膜が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物は、低粘度で、耐熱性が高く、分子量分布も狭いため、該化合物を配合した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は硬化速度が速く、硬化させた際、硬度と耐熱性に優れた塗膜が得られる。この事から、コーティング剤、ライニング剤、光学材料、インキ等の様々な用途で使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であるポリグリセリンとアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数4〜20)に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル化物。
【請求項2】
ポリグリセリンを構成するトリグリセリンおよびテトラグリセリンの各々の濃度が10重量%〜70重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸エステル化物。
【請求項3】
ポリグリセリンを構成するジグリセリン濃度が10重量%未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリル酸エステル化物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステル化物を含有する事を特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたコーティング用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたインキ用樹脂組成物。


【公開番号】特開2012−219170(P2012−219170A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85621(P2011−85621)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】