ポリケチド化合物の製造方法

【課題】放線菌のバイオメディエーター化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(A)で表される化合物を含む、放線菌におけるポリケチド化合物の増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、並びに、該化合物を含むポリケチド化合物の産生増強剤及びLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強剤に関する。また、本発明はLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強することによりポリケチドなどの二次代謝産物の産生を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の生長に必要なエネルギー代謝などの一次代謝によって生成される産物を一次代謝産物と呼ぶのに対し、一次代謝から二次的に枝分かれした代謝経路によって生成される産物を二次代謝産物と呼ぶ。色素や抗生物質などの多くが、二次代謝産物と考えられているが、その中には生体の生長に必須の意義が決められていないものが多い。
二次代謝産物の産生を増強するためには、UV照射により放線菌などの遺伝子配列に変異を導入し、変異株の中から高生産株の選別を行なうこと、さらに、培地組成などの培養条件を検討することなどが行われてきた。二次代謝産物の産生増強のための培養条件は放線菌の種により異なり、その決定には熟練技術者の長い間の経験と培養に関する知識及び技術が必要とされる。
【0003】
近年、ゲノム解析技術の向上により、放線菌が有している二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの情報を取得することが可能となってきている。この情報をもとに生合成遺伝子クラスターを見出して、組換えDNA技術を用いて二次代謝産物の産生を増強することが試みられている。しかしながら、制限修飾系の存在などが障害となって形質転換系の開発が困難な放線菌も多く存在し、手法の確立には多大な労力が必要である。それゆえ、組換えDNA技術が適用可能な放線菌は限られている。
放線菌の形態分化と二次代謝を誘導する物質としてゴードスポリンが見いだされており、数nMオーダーで作用することが知られているが、特定の二次代謝産物の産生には適用されていない(非特許文献1)。放線菌の形質転換に頼らない別の方法として、希土類元素スカンジウム処理による二次代謝産物の産生の活性化が報告されている。しかし、これは比較的高い濃度(100μM)で添加するために毒性が生じ、これにより放線菌の生育が阻害されるので、二次代謝産物の大量生産には使用されていない(非特許文献2)。
一方、ストレプトマイシン産生菌 Streptomyces griseusの物質産生は、A-factorと呼ばれる低分子シグナルにより精密に制御されていることが知られている。しかしながら、これは内生の因子による制御機構であるので、外部からの添加によってバイオメディエーターとして作用させて物質生産を制御することには使用されていない(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Onaka H. et al. Goadsporin, a chemical substance which promotes secondary metabolism and morphogenesis in streptomycetes. I. Purification and Characterization, J. Antibiot. 54, 1036-1044, 2001.
【非特許文献2】Kawai K. et al. The rare earth, scandium, causes antibiotic overproduction in Streptomyces spp. FEMS Microbiol Lett. 274: 311-5, 2007.
【非特許文献3】Horinouchi S. Mining and polishing of the treasure trove in the bacterial genus streptomyces. Biosci Biotechnol Biochem. 71(2):283-99, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲノム解析技術の向上により、一つの放線菌には約30種の二次代謝生合成遺伝子群が存在することが見いだされている。しかし、その多くは休眠遺伝子であり、実際に産生される代謝産物はごく一部であることが判明している。近年、新規生理活性物質の取得は困難な状況であるので、遺伝子の活性化手法を開発して、産生されていないか又は微量にしか存在しない微生物代謝産物を利用可能にすることは、次世代の医薬や農薬開発に向けた重要課題である。
放線菌における二次代謝産物の産生増大のためには培養条件の検討や形質転換系の開発による遺伝子操作が行われているが、物質産生を活性化させる小分子バイオメディエーターを開発することが出来れば、経験や知識によらず、微生物二次代謝産物の産生増大が可能となる。
従って、本発明の目的は、放線菌の二次代謝産物の生産性を増大することの出来る新規バイオメディエーター化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、放線菌の二次代謝産物の生産性を効率よく増大させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意検討した結果、放線菌におけるLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強により二次代謝産物であるポリケチド化合物の産生量が増大されること、さらに、放線菌の培養液に特定の化合物を添加することにより、LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現が増強され、それにより二次代謝産物であるポリケチド化合物の生産性が向上することを見出した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(I) 放線菌におけるポリケチド化合物の産生増強剤であって、下記一般式(A)で表される化合物を含むことを特徴とする、前記増強剤。
【0008】
【化1】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表す。)
(II) R1がハロゲン原子であり、R2がCONH2であり、nが0又は1である、上記(I)に記載の増強剤。
(III) 前記ポリケチド化合物がリベロマイシンAである、上記(I)又は(II)に記載の増強剤。
(IV) 前記放線菌がStreptomyces sp. SN-593(受託番号FERM BP−3406)である、上記(I)〜(III)のいずれかに記載の増強剤。
(V) 下記一般式(A)で表される化合物を含む、放線菌におけるLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強剤。
【0009】
【化2】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表す。)
(VI) 下記一般式(A)で表される化合物。
【0010】
【化3】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表し;但し、R2がCONH2のとき、R1はフッ素原子、OCH3又はNO2であり;R2がCONH(CH2x−R’であってR’がOHのとき、xは0〜1であり;R2がCONH(CH2x−R’であってR’がOCOR”のとき、xは0〜3であることを条件とする。)
(VII) 下記から選ばれる、上記(VI)に記載の化合物。
【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

【0013】
【化6】

【0014】
【化7】

【0015】
【化8】

(VIII) 下記一般式(A)で表される化合物を放線菌の培養液に添加する工程を含む、ポリケチド化合物の製造方法。
【0016】
【化9】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表す。)
(IX) 放線菌においてLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強させる工程を含む、ポリケチド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化合物を用いたポリケチド化合物などの二次代謝産物の生産は、ゲノム情報の解析や個々の放線菌についての形質転換系の開発の必要もなく応用範囲が広い。また、本発明の化合物は、医薬、農薬などとして利用される可能性が高いポリケチド化合物などの二次代謝産物の産生を容易に誘導又は増強することが出来る。
また、本発明によれば、LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強することにより、放線菌の二次代謝産物の生産性を効率よく増大することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例2のバイオメディエーター処理及びスクリーニング手法の流れを示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の化合物(1)の解析結果を示す図である。
【図3】図3は、本発明の化合物(1)を起点とした構造活性相関を示す図である。
【図4】図4は、β−カルボリン化合物と構造と活性の相関を示す図である。
【図5】図5は、種々のβ−カルボリン化合物の添加量とリベロマイシン類生産量との関係を示す図である。
【図6】図6は、種々のβ−カルボリン化合物を添加した場合の、放線菌増殖量とリベロマイシン類産生量を経時的に示す図である。
【図7】図7は、β−カルボリン化合物添加による、リベロマイシン生合成遺伝子クラスター中の各遺伝子の発現量を示す図である。
【図8】図8は、revU遺伝子を破壊した放線菌におけるリベロマイシン類産生を示す図である。
【図9】図9は、revU遺伝子を破壊した放線菌におけるリベロマイシン類産生量を示す図である。
【図10】図10は、リベロマイシン生合成遺伝子クラスターに含まれる各遺伝子の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
<<ポリケチド化合物の産生増強剤>>
本発明の第一の態様は、ポリケチド化合物の産生増強剤である。
以下、本発明をポリケチド化合物に言及して説明するが、本発明はそれに制限されるものではなく、本発明の化合物(A)の添加又はLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強によってその産生が増大する任意の産物(例えば二次代謝産物)の産生に本発明を適用することができる。
本明細書及び特許請求の範囲において、「産生増強剤」とは、ポリケチド化合物の放線菌による産生量を、当該物質を添加していないコントロールに比較して増大させる化合物又は組成物を意味する。増大の程度は、好ましくは約1.2倍以上、より好ましくは約2倍以上、さらにより好ましくは約3倍以上、さらにより好ましくは約4倍以上、特には約5倍以上である。
本発明の放線菌によって産生されるポリケチド化合物の産生増強剤に用いられる化合物は、下記一般式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)又は本発明の化合物(A)と呼ぶことがある。)である。
【0021】
【化10】

【0022】
式中、R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表す。
xは0〜5の整数であり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0が最も好ましい。xが0のとき、−(CH2x−は単結合である。
R’はOH又はOCOR”であり、OHが好ましい。
R”はCH3又はC25であり、CH3が好ましい。
好ましいR2の具体例としては、CONH(CH23OH、CONH(CH22OH、CONH(CH23OCOCH3、CONHOH、CONH2が挙げられる。中でも、R2としては、CONH2が最も好ましい。
【0023】
1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表す。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子が好ましい。
これらの中でも、R1としては、ハロゲン原子が好ましく、塩素原子、フッ素原子、又は臭素原子が特に好ましい。
【0024】
nは0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1であり、最も好ましくは0である。また、nが1又は2のとき、R1はメタ位(m−)に配置されることが好ましい。
【0025】
以下に、ポリケチド化合物の産生増強剤に好ましく用いることの出来る化合物の構造式を例示する。なお、以下に挙げる式(1)〜(9)で表される化合物(化合物(1)〜(9))は例示であり、上記R1、R2及びnの限定を満たす限り他の化合物も本発明に含まれる。
【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
【化13】

【0029】
【化14】

【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
【化17】

【0033】
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
また、上記式(5)〜(9)の化合物を包含する化合物として、上記一般式(A)で表される化合物であって、R1が各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xが0〜5の整数を表し;R’がOH又はOCOR”を表し;R”がCH3又はC25を表し;nが0〜2の整数を表し;但し、R2がCONH2のとき、R1はフッ素原子、OCH3又はNO2であり;R2がCONH(CH2x−R’であってR’がOHのとき、xは0〜1であり;R2がCONH(CH2x−R’であってR’がOCOR”のとき、xは0〜3であることを条件とする、前記化合物が本発明によって提供され、これらもポリケチド化合物の産生増強剤に好ましく用いられる。
【0036】
上記化合物(A)は1種または2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0037】
(添加量)
本発明のポリケチド化合物産生増強剤における、本発明の化合物(A)の添加量は、放線菌の種類や、培地、温度などの培養条件に応じて適宜選択すればよいが、0.1〜10μg・ml-1の範囲内で放線菌培養液に添加することが好ましく、1〜10μg・ml-1の範囲内で添加することがより好ましい。
化合物(A)は固体のまま放線菌培養液中に添加してもよく、溶媒に溶解させてから培養液に添加してもよい。また、放線菌培養液とは異なる培養液に添加した後、該培養液と放線菌培養液とを混合させてもよい。
溶媒に溶解させてから培養液に添加する場合には、溶媒中の化合物(A)の濃度が0.1〜10μg・ml-1程度になるように溶解させた溶液を用いればよく、使用可能な溶媒の例としてはDMSOが挙げられる。
【0038】
(放線菌)
「放線菌」は、糸状の菌糸が放射状に伸長することを特徴とする形態分化の進んだ菌糸状の細菌である。本発明には、本発明の化合物(A)の添加またはLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強によってポリケチド化合物の産生が増強される任意の放線菌を使用することができる。
本発明における使用に好ましい放線菌としては、制限されるものではないが、Streptomyces reveromyceticus、Streptomyces scabies、Streptomyces roseum、Streptomyces griseus、Amycolatopsis mediterranei、Saccharopolyspora erythraea、Streptomyces antibioticus、Streptomyces avermitilis、Streptomyces verticillus、Streptomyces peuceticus、Streptomyces tsukubaensis、Streptomyces hygroscopics、Stereptomyces hygroscopicus var. limoneus、Streptomyces ambofaciens、Streptomyces venezuelae、Streptomyces albus、Streptomyces noursei, Streptomyces nodosus、Streptomyces cinnamonensisなどが挙げられる。これらの中でもStreptomyces reveromyceticus、Streptomyces scabies、Streptomyces roseum、Streptomyces griseusが好ましく、Streptomyces reveromyceticusが特に好ましい。
本明細書では、放線菌を使用する場合について本発明を説明するが、本発明はこれに制限されるものではなく、本発明の化合物(A)の添加又はLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増大によって産物の産生量の増大が観察される任意の生物、例えばグラム陽性細菌などの微生物を本発明において使用することができる。
【0039】
(ポリケチド化合物)
「ポリケチド化合物」とは、アセチルCoAを出発物質とし、主にマロニルCoA及びメチルマロニルCoAを伸張物質としてポリケトン鎖を合成した後、様々な修飾を受けて生合成された化合物の総称である。
ポリケチド化合物は医薬、農薬などとしての利用可能性の高い二次代謝産物であり、リベロマイシン類のほか、抗生物質としてのエリスロマイシンA及びリファマイシンS;抗癌剤としてのドキソルビシン及びエポチロン;コレステロール低減剤としてのロバスタチン;駆虫剤としてのアベルメクチン;抗真菌剤としてのアンフォテリシンB、殺虫剤としてのスピノシンA、免疫抑制剤としてのラパマイシン及びタクロリムスなどが代表的なポリケチド化合物として知られている。その他のポリケチド化合物については、例えばWeissman, K.J. & Leadlay, P.F. Combinatorial biosynthesis of reduced polyketides. Nat. Rev. Microbiol. 3, 925-936 (2005).を参照することが出来る。
リベロマイシン類(本明細書においてリベロマイシンともいう)には、リベロマイシンA、リベロマイシンB、リベロマイシンC、リベロマイシンD、リベロマイシンE、リベロマイシンT、リベロマイシンA1aなどが知られている。リベロマイシンAは、放線菌Streptomyces reveromyceticus SN-593(Streptomyces sp. SN-593ともいう)から単離された分子量660からなるポリケチド化合物である(特開平4−49296号公報)。破骨細胞に選択的に取り込まれ、標的分子のイソロイシルtRNA合成酵素の活性を阻害し、タンパク質合成を阻害することで、アポトーシスを誘導する(特開平7−223945号公報)。構造的特徴として、多くの不斉炭素中心をもつスピロアセタール環、トリカルボン酸を有している。合成化学的にも興味深い化合物であり、多くの有機合成化学者により化学合成が報告されている。
本発明により、これらの既知のポリケチド化合物の生産を増強することができる。さらに、本発明により、その生合成遺伝子がほとんど又は全く発現されていないポリケチド化合物の生産を誘導又は増強することができる。
【0040】
<<化合物(A)を用いた、ポリケチド化合物の製造方法>>
本発明の第二の態様は、前記一般式(A)で表される化合物(化合物(A))を放線菌に添加する工程を含む、ポリケチド化合物の製造方法である。
【0041】
上記方法における工程として、例えば、(a)放線菌の培養液を用意する工程、(b)該培養液に化合物(A)を添加する工程、(c)該培養液を培養して放線菌にポリケチド化合物を生合成させる工程、(d)培養液からポリケチド化合物を抽出、精製する工程を採用することが出来る。これにより、ポリケチド化合物を大量且つ容易に製造することが出来る。
【0042】
(培養条件)
上記方法によりポリケチド化合物を製造する際の放線菌の培養条件(培養温度、培養時間、培地)は、特に制限されず、放線菌が増殖する限りにおいて適宜選択することができる。例えば、放線菌を通常の培養液内で28〜30℃で48〜72時間程度前培養し、本培養開始と同時に該培養液に化合物(A)を添加した後、ポリケチド化合物を産生させるために28〜30℃で3〜5日更に培養すればよい。
【0043】
本発明の化合物(A)の添加量は上記のとおりである。
【0044】
(抽出・精製)
放線菌培養液からポリケチド化合物を得る方法は既に知られており、そのいずれの方法を用いてもよい。例として、培養液に対して等量のアセトンを加え、超音波処理で菌体を破砕する。その後、アセトンを除去し、等量の酢酸エチルを加えて抽出を行い粗抽出物を得る。さらに、HPLCにて精製を行う手法が挙げられる。簡易検出法としては、アセトン処理、超音波処理、遠心分離後の上清を直接LC-MS解析する方法が挙げられる。
【0045】
<<LuxRファミリー転写因子遺伝子発現増強剤>>
本発明の第三の態様は、上記一般式(A)で表される化合物を含む、LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強剤である。
一般式(A)中のR1、R2及びnの定義や化合物(A)の添加量は、上記と同様である。
【0046】
本発明の化合物(A)を含む発現増強剤を放線菌に添加することにより、化合物(A)を添加しないコントロールに比較して好ましくは約1.2倍以上、より好ましくは約2倍以上、さらにより好ましくは約3倍以上、さらにより好ましくは約4倍以上、特には約5倍以上、放線菌におけるLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現量を増大させることが出来る。
【0047】
(LuxRファミリー転写因子)
「LuxRファミリー転写因子」とは、Vibrio fischeriのLuxRタンパク質に対するアミノ酸配列相同性を示す、N末端にATP結合ドメインを、C末端にヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)モチーフを有する一群のATP結合性転写調節因子を指す(De Schrijver, A. et al. A subfamily of MalT-related ATP-dependent regulators in the LuxR family, Microbiology, 1999, 145, 1287-1288; Stevens, A.M. Mechanisms and synthetic modulators of AHL-dependent gene regulation, Chem. Rev., 2011, 111, 4-27)。
LuxRファミリー転写因子は当初グラム陰性細菌におけるクオラムセンシングの調節に関与する因子として見出されたが、放線菌においてもポリケチド化合物などの二次代謝物の生合成の調節に関与し得るLuxRファミリー転写因子が見出されている。既知のポリケチド化合物の生合成遺伝子クラスターに含まれるLuxRファミリー転写因子の例としては、例えば以下の表1に示すようなものが知られている。
【0048】
【表1】

【0049】
L. Laureti et al., Identification of a bioactive 51-membered macrolide complex by activation of a silent polyketide synthase in Streptomyces ambofaciens., Proc Natl Acad Sci U S A. 2011, 108(15):6258-63.にはこれらを含む44個の放線菌由来のLuxRファミリー転写因子やその他のいくつかの潜在的なファミリーメンバーが記載されている。本発明において、LuxRファミリー転写因子としてこれらの任意のものを使用することができる。
本発明の発現増強剤により発現が増強されるrevU遺伝子は、リベロマイシン生合成遺伝子クラスター(図10参照)に存在する21種のrev遺伝子の1つであり(Takahashi S. et al., Reveromycin A biosynthesis uses RevG and RevJ for stereospecific spiroacetal formation., Nature Chemical Biology. 7, 461-468 (2011))、その遺伝子産物(RevU)は配列相同性に基づいて上記LuxRファミリーに属すると考えられる。revU遺伝子の塩基配列を配列番号1に、それによってコードされるRevUタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。本発明におけるLuxRファミリー転写因子は、ポリケチド生合成遺伝子の発現制御機能を有する限り、配列番号2に示すアミノ酸配列に対して、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上の同一性を示すものでもよい。
本発明者らは、revU遺伝子の発現量を増大させることによりリベロマイシン生合成遺伝子の発現が増大することを初めて見出した。
リベロマイシン生合成は以下のように制御されていると考えられる。LuxRファミリー転写因子の1つであるrevU遺伝子産物が、リベロマイシン類の生合成に関わる遺伝子(ポリケチド生合成遺伝子(revB及びrevC);前駆体生合成遺伝子(revR及びrevS);及びポストポリケチド修飾遺伝子(post polyketide tailoring genes)(revG、revI、revJ、revK、revL))の発現を正に制御する。その結果、リベロマイシン生合成タンパク質群が協調的・連続的に作用し、放線菌におけるリベロマイシン類の生産量を増大させる。
【0050】
リベロマイシン生合成遺伝子クラスターに存在する上記revU遺伝子と同一性又は相同性の高い配列は、他の放線菌におけるポリケチド化合物生合成遺伝子クラスターにも存在する。
従って、本発明の化合物(A)を用いることにより、リベロマイシン類以外の二次代謝産物(例えばポリケチド化合物)の生産性も高めることができる。
放線菌には、ゲノム配列解析から、4〜5個のLuxRファミリー転写因子遺伝子がポリケチド生合成遺伝子クラスター中に存在することが知られている。発現量が低いか又は全く発現していない生合成遺伝子群(休眠遺伝子クラスター)を活性化することで、これまで取得が困難であったポリケチド化合物などの二次代謝産物の利用が可能となる。
下記の実施例に示すように、本発明の化合物(A)は、LuxRファミリー転写因子遺伝子の1つであるrevU遺伝子の発現量を増大させる。発現が増大したrevU遺伝子産物(RevU)はポリケチド化合物であるリベロマイシン類の生合成遺伝子の発現を正に制御し、ポリケチド化合物の生合成を促進する。さらに、RevUホモログを有する別の放線菌の培養液に本発明の化合物(A)を添加した場合でも、代謝産物の産生量を増強できることが確認されている。このように、放線菌に化合物(A)を作用させてLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強することによって、ポリケチド化合物を大量且つ容易に取得することができる。
【0051】
<<LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強する方法>>
本発明の第四の態様は、前記一般式(A)で表される化合物を放線菌の培養液に添加する工程を含む、LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現量を増大する方法である。
【0052】
上記方法における工程として、例えば、放線菌の培養液を用意する工程、該培養液に化合物(A)を添加する工程、該培養液を培養してLuxRファミリー転写因子遺伝子を発現させる工程を採用することが出来る。また、発現量は、リアルタイムPCR(RT−PCT)により測定することが出来る。
【0053】
放線菌の培養条件や化合物(A)の添加量は上記のとおりである。
【0054】
<ポリケチド化合物の製造方法>
本発明の第五の態様は、LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強させる工程を含む、ポリケチド化合物の製造方法である。
【0055】
LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強させるには、例えば、本発明の化合物(A)を放線菌に添加すればよい。あるいは、LuxRファミリー転写因子遺伝子を含む多コピーベクター、ゲノム組み込み型ベクターを用いて放線菌にLuxRファミリー転写因子遺伝子を導入すること、LuxRファミリー転写因子遺伝子に強いプロモーターやエンハンサーを作動可能に連結すること、又はLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現量を増大することのできる他の化合物を添加することなどによってLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強してもよい。LuxRファミリー転写因子の発現を増強させることが出来るのであれば、いずれの方法を用いてもポリケチド化合物などの二次代謝産物の生産量を増大させることができる。
LuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強する工程以外の工程については、上記第二の態様の工程(a)、(c)、(d)と同様の工程を採用することが出来る。
【0056】
放線菌の培養条件や化合物(A)の添加量は上記のとおりである。
Streptomyces ambofaciensにおいてLuxRファミリーに属すると推定されるタンパク質をコードするsamR484遺伝子を強い構成性プロモーターの制御下に配置することにより、51員グリコシル化マクロライドの生産性が増大されたことが報告されている(L. Laureti et al., Identification of a bioactive 51-membered macrolide complex by activation of a silent polyketide synthase in Streptomyces ambofaciens., Proc Natl Acad Sci U S A. 2011, 108(15):6258-63.)。しかし、この文献における発現増強は組換えDNA技術に依存していた。
一方、本発明者らは、複数の放線菌を使用した実験により、形質転換系の開発が困難な放線菌においても、本発明の化合物(A)のようなバイオメディエーターの添加によって、一般にLuxRファミリー転写因子の発現増大によりポリケチド化合物の産生が達成されることを明らかにした。
【実施例】
【0057】
[製造例]
以下に本発明のrevU遺伝子の発現増強剤に用いることの出来るβ−カルボリン化合物及び本実施例で用いられるβ−カルボリン化合物の製造方法の一例を示すが、本発明の化合物の製造方法はこれらの実施例に限定されない。
【0058】
<β−カルボリン化合物の化学合成>
一連のアリル置換β−カルボリンを、市場で入手可能なL−トリプトファン及び適切なハロ置換ベンズアルデヒドを用いて設計・合成した。合成経路の概要を、スキーム1に記載する。L−トリプトファン誘導体とハロ置換ベンズアルデヒドのピクテ・スペングラー(Pictet−Spengler)反応の後に、トリクロロシアン酸(TCCA)を用いて酸化することにより、β−カルボリン−3−カルボキシレートを得る。これらのβ−カルボリン−3−カルボキシレートを種々のアミンで処理して、所望のβ−カルボリン−3−カルボキサミドを得る。得られた化合物の化学構造は、MS及び1H NMRのデータにより確認した。
【0059】
【表2】

【0060】
全ての反応は、窒素雰囲気下で行われ、0.25mmのプレコートされたシリカゲルプレート60F254 Art 105715 (Merck, Darmstadt, Germany)を用いた薄層クロマトグラフィ(TLC)でモニターした。分取用クロマトグラフィ(PLC)では、60F254 Art 5744 (0.5 mm)及び60F254 113895 (1mm)が用いられた。カラムクロマトグラフィ(C.C.)では、シリカゲル60N (Kanto Chemical Co., Inc., Tokyo, Japan)が用いられた。1H NMRのスペクトルはJEOL JNM AL 300及び/又は400スペクトロメーターで記録した。FAB質量スペクトルは、JMS-HX 110質量分析計を用いて得られた。ESI質量スペクトルは、Bioapex-II (Brucker Daltonics)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計を用いて得られた。電子イオン化(EI)質量スペクトルは、JMS-HX/HX110 (JEOL)質量分析計を用いて得られた。
【0061】
<L−トリプトファンメチルエステルの合成>
50mlの乾燥MeOH中のL−トリプトファン(2.04g,10mmol)の攪拌溶液に、SOCl2(3.57g,30mmol)を0℃で15分かけて滴下添加した。その後、反応混合液を室温で3.5時間攪拌した。減圧下でMeOHを除去し、残渣を水(25ml)に溶解した。該溶液のpHを飽和NaHCO3溶液を用いて9〜10に調節し、混合液全体をEtOAcで抽出した。混合有機相を生理食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。減圧下で濃縮させて、L−トリプトファンメチルエステルを無色の結晶性固体の形態で得た。これを更に精製することなく次の工程に用いた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.12 (brs, 1H), 7.60 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.34 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.20 - 7.09 (m, 2H), 7.05 (s, 1H), 3.82 (brs, 1H), 3.69 (s, 3H), 3.27 (d, 1H, J = 14.0 Hz), 3.04 (dd, 1H, J = 14.0, 7.6 Hz).
【0062】
<β−カルボリン−3−カルボキシレートの合成>
乾燥CH2Cl2(1ml)中の置換ベンズアルデヒド(1mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、乾燥CH2Cl2(10ml)中のL−トリプトファンメチルエステル(1mmol)、CF3COOH(0.02ml)及び粉末状の乾燥モレキュラーシーブ4Å(400mg)の懸濁液に添加し、一晩攪拌した。混合液全体を濾過し、CH2Cl2で洗浄した後、混合溶液を濃縮させて残渣をDMF(2ml)で取り出し、必要に応じてトリエチルアミンで中和した。テトラヒドロβ−カルボリン中間体を精製することなく更に酸化させた。トリエチルアミン(0.5ml)を添加した後、溶液を−15℃に冷却した。その後、TCCA(1mmol)を含むDMF(1ml)をゆっくりと加えた。該反応混合液を同一温度で15分間攪拌し、反応温度を0℃まで徐々に上げていった(1.5時間)。混合液を更に1.5時間0℃で攪拌した。減圧下で溶媒を完全に除去し、強く攪拌しながら冷水(25ml)を注ぎ、β−カルボリン−3−カルボキシレートを得た。これを再結晶(MeOH又はMeOH/CH2Cl2)又はPLCで更に精製した。
【0063】
<β−カルボリン−3−カルボキサミドの合成>
上記で得られたβ−カルボリン−3−カルボキシレートのMeOH溶液に、10倍以上過剰のアミン(濃縮NH4OH、NH2OH又はアルキルアミン)を添加し、その混合液を2〜3日室温又は45℃で攪拌した。減圧下で反応混合液を濃縮し、淡黄色又は茶色の残渣をカラムクロマトグラフィー又は分取用クロマトグラフィーにより精製した。
【0064】
<アセテートの合成>
乾燥ピリジン(0.5ml)中のN−(3−ヒドロキシプロピル)−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(10mg,0.026mmol)及びAc2O(80mg,0.78mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。水を添加し、5分間強く攪拌した。混合液をジクロロメタンで3回抽出し、合わせた。Na2SO4で乾燥した後、溶媒を蒸発して固体を得た。これをPLC(EtOAc:Hexane=1:1)で更に精製し、無色の粉末としてアセテートを得た。
【0065】
<メチルエーテルの合成>
CH2Cl2(2ml)中のN−(3−ヒドロキシプロピル)−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(10mg,0.026mmol)の溶液に、48%水性フルオロホウ酸(FBA)(10μl,0.053mmol)及びトリメチルシリルジアゾメタン(ヘキサン溶液中0.6M,0.1ml,0.06mmol)を0℃で添加し、30分間攪拌した。水を添加し、混合液全体を30分間強く攪拌した後、0.1%のNaHCO3水溶液で中和した。該混合液をCH2Cl2で抽出し、Na2SO4で乾燥した後に濃縮した。残渣をPLCで精製して、O−シリル化化合物と共にメチルエーテルを得た。
【0066】
以下の質量及びNMRデータに基づいて、合成した化合物1〜18の構造を決定した。
1. メチル−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
無色の固体;
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO)δ: 12.04 (s, 1H), 8.95 (s, 1H), 8.44 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.01(s, 1H), 7.99 (dd, 1H, J = 8.7, 1.8 Hz), 7.71 - 7.59 (m, 4H), 7.33 (dd, 1H, J = 7.8, 6.9 Hz), 3.93 (s, 3H);
ESI-MS [M+H] + for C19H14ClN2O2 : 337.07, found 337.07.
【0067】
2. メチル−1−(4−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
淡黄色の固体;
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.73 (s, 1H), 8.17 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.91 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.65 - 7.52 (m, 2H), 7.55 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.37 (dd, 1H, J = 7.8, 7.5 Hz), 4.04 (s, 3H).
【0068】
3. メチル−1−(3−ブロモフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
淡黄色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 12.02 (s, 1H), 8.95 (s, 1H), 8.44 (1H, d, J = 7.6 Hz), 8.13 (s, 1H), 8.03 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.77 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 7.69 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 7.63 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 7.60 (m, 2H), 7.34 (m, 1H) 3.93 (s, 3H).
【0069】
4. メチル−1−(3−フルオロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
無色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 11.98 (s, 1H), 8.95 (s, 1H), 8.43 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.87 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 7.80 (d, 1H, J = 10.0 Hz), 7.69 (dd, 1H, J = 8.0, 6.4 Hz), 7.65 - 7.59 (m, 1H), 7.40 (m, 1H), 7.34 (dd, 1H, J = 7.6, 7.2 Hz), 3.93 (s, 3H).
【0070】
5. メチル−1−(3−メトキシフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
淡黄色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 11.91 (s, 1H), 8.92 (s, 1H), 8.42 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.69 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 7.61 - 7.57 (m, 1H), 7.52 (brs, 1H), 7.32 (m, 1H), 7.15 - 7.12 (m, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.88 (s, 3H).
【0071】
6. メチル−1−(3−ニトロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
茶色がかった黄色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO)δ: 12.15 (s, 1H), 9.00 (s, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.46 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 8.40 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.93 (dd, 1H, J = 8.0, 8.4 Hz), 7.70 (m, 1H), 7.63 (dd, 1H, J = 6.4, 8.0 Hz), 7.35 (dd, 1H, J = 7.6, 7.2 Hz), 3.94 (s, 3H).
【0072】
7. メチル−1−フェニル−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシレート:
無色の固体(156mg、収率51.5%)
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 11.94 (s, 1H), 8.93 (s, 1H), 8.43 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.02 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.70 - 7.54 (m, 3H), 7.63 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.33 (dd, 1H, J = 7.6, 6.8 Hz), 3.93 (s, 3H).
【0073】
8. N−ヒドロキシ−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(6)):
淡黄色の固体;
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO) δ: 11.99(s, 1H), 9.05 (s, 1H), 8.79 (s, 1H), 8.42 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 8.34 (brs, 1H), 8.16(d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.70 - 7.57 (m, 4H), 7.31 (t, 1H, J = 7.5 Hz);
FAB-MS [M+H]+ calcd. for C18H13ClN3O2 338.06, found 338.04.
【0074】
9. N−(2−ヒドロキシエチル)−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(2)):
無色の固体;
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.84 (s, 1H), 8.76 (s, 1H), 8.53 (brs, 1H), 8.09 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.90 (t, 1H, J = 1.8 Hz), 8.10 (ddd, 1H, J = 7.5, 1.8, & 1.2 Hz), 7.60 - 7.40 (m, 1H), 3.85 (t, 2H, J = 16 Hz), 3.70 (t, 2H, J = 16 Hz).
【0075】
10. N−(3−ヒドロキシプロピル)−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(1)):
白色の固体;
1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ: 8.92 (brs, 1H), 8.84 (m, 1H), 8.42 (brs, 1H), 8.15 (d, 1H, J=8.4), 7.94 (brs, 1H), 7.85 (m, 1H), 7.57 - 7.49 (m, 3H), 7.34 (brs, 1H), 3.69 (br s, 4H), 1.66 (brs, 2H).
【0076】
11. 1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(3)):
淡黄色の固体;
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO)δ:11.91 (s, 1H), 8.85 (s, 1H), 8.40 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 8.21 (s, 2H), 8.12 (d, 1H, J = 6.9 Hz), 7.70 - 7.52 (m, 5H), 7.32 (1H, dd, J = 7.5, 7.2 Hz);
FAB-MS [M+H] calcd. for C18H13ClN3O 322.07, found 322.03.
【0077】
12. N−(3−アセトキシプロピル)−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(5)):
無色の粉末;
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ: 8.88 (s, 1H), 8.76 (s, 1H), 8.36 (brs, 1H), 8.19 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 7.95 (s, 1H), 7.85 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.61 - 7.47 (m, 4H), 7.35 (dd, 1H, J = 8.1, 6.3 Hz), 4.20 (t, 2H, J = 6.0 Hz), 3.63 (q, 2H, J = 6.6 Hz), 2.00 (s, 3H), 1.23 (m, 2H);
FAB-MS [M+H]+ calcd. for C23H21ClN3O3 : 422.12, found 422.10.
【0078】
13. N−(3−メトキシプロピル)−1−(3−クロロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド:
無色の固体;
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.90 (s, 1H), 8.69 (s, 1H), 8.59 (brs, 1H), 8.20 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 8.01 (s, 1H), 7.87 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 7.61 - 7.47 (m, 4H), 7.35 (ddd, 1H, J = 8.1, 6.6 & 1.5 Hz). 3.68 - 3.62 (m, 2H), 3.56 (t, 2H, J = 6.0 Hz), 3.38 (s, 3H), 1.98 - 1.90 (m, 2H);
FAB-MS [M+H]+ calcd. for C22H21ClN3O2 : 394.12, found 394.12.
【0079】
14. 1−(3−ブロモフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド:
茶色がかった黄色の固体;
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO) δ: 11.90 (s, 1H), 8.85 (s, 1H), 8.40 (d, 2H, J = 6.6 Hz), 8.32 (brs, 1H), 8.20 - 8.12 (m, 2H), 7.75 - 7.69 (m, 2H), 7.62 - 7.51 (m, 3H), 7.31 (dd, 1H, J = 6.9, 8.1 Hz);
EI-HRMS [M+] calcd. for C18H12BrN3O: 365.0160, found 365.0162.
【0080】
15. 1−(3−フルオロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(7)):
無色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 11.88 (s, 1H), 8.85 (s, 1H), 8.40 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.18 (s, 1H), 8.02 (m, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.68 (dd, 1H, J = 8.4, 8.8 Hz), 7.64 - 7.58 (m, 1H), 7.38 (m, 1H), 7.32 (t, 1H, J = 7.6 Hz);
EI-HRMS [M+] calcd. for C18H12FN3O: 305.0964, found 305.0959.
【0081】
16. 1−(3−メトキシフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(8)):
淡黄色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 11.80 (s, 1H), 8.83 (s, 1H), 8.39 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.30 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.68 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.64 (brs, 1H), 7.60 - 7.52 (m, 2H), 7.51 (brs, 1H), 7.30 (dd, 1H, J = 7.2, 7.6 Hz), 7.12 (dd, 1H, J = 8.0, 2.4 Hz);
EI-HRMS [M+] calcd. for C19H15N3O2:: 317.1165, found: 317.1165.
【0082】
17. 1−(3−ニトロフェニル)−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(9)):
淡黄色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO)δ: 12.02 (s, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.87 (brs, 1H), 8.60 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 8.44 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 8.39 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.21 (brs, 1H), 7.92 (dd, 1H, J = 7.6, 8.4 Hz), 7.69 - 7.60 (m, 2H), 7.56 (brs, 1H), 7.33 (t, 1H, J = 7.6 Hz);
EI-HRMS [M+] calcd. for C18H12N4O3: 332.0910, found: 332.0906.
【0083】
18. 1−フェニル−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキサミド(化合物(4)):
無色の固体;
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO)δ: 11.82 (s, 1H), 8.83 (s, 1H), 8.39 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.15 (d, 2H, J = 7.2, 7.6 Hz), 7.69 -7.53 (m, 5H), 7.51 (brs, 1H), 7.30 (dd, 1H, J = 7.2, 7.6 Hz);
EI-HRMS [M+] calcd. for C18H13N3O: 287.1059, found 287.1058.
【0084】
[実施例1]
<<リベロマイシン類生産量の評価試験>>
リベロマイシン類生産増大をハイスループットで調べる事が出来る二つのスクリーニング系(スクリーニング1、スクリーニング2)を構築した。理研天然化合物バンク(RIKEN NPDepo)を利用し、下記手順によりリベロマイシン類生産を活性化する因子の探索を行った。
【0085】
図1に示すフローチャートに従って、リベロマイシン類生産菌(Streptomyces reveromyceticus SN-593)に理研天然化合物バンクに存在する各化合物を添加して培養し、リベロマイシン類の生産を誘導した。Streptomyces reveromyceticus SN-593はStreptomyces sp. SN-593と表示され日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)の通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現、日本国茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6(郵便番号305−8566)独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に平成2年6月5日(原寄託日)に寄託されている。その後、アセトン抽出と濃縮を行ってバイオメディエーター処理溶液(BTB)を得た。その後、いもち病菌(Magnaporthe oryzae Kita1)及びsrcts−NRK細胞を用いて、リベロマイシン類の生産誘導を評価した(スクリーニング1、スクリーニング2)。
【0086】
<スクリーニング1>
・いもち病菌(Magnaporthe oryzae Kita1)を用いた活性スクリーニング
前培養プレートからのアガロース片を含む菌体をYG培地(10ml)に入れて、50mlファルコンチューブ中で、27℃、150r.p.m.で3日間培養した。0.2%寒天を含むポテトデキストロース培地で50倍に希釈し、96穴プレートに200μl分注した。バイオメディエーター処理をしたリベロマイシン類生産菌のアセトン抽出液(BTB)を5μl添加してさらに5日間培養した。リベロマイシンA(RM−A)の生産が増大したフラクションはいもち病菌に対して抗菌活性を示すため、抗菌活性の有無でリベロマイシン類の生産が増強されたかを判断した。
【0087】
<スクリーニング2>
リベロマイシンAは、srcts−NRK細胞の形態を正常化させることが知られている。そこで、srcts−NRK細胞の形態正常化を検討することによりリベロマイシン類生産評価を行った。
1.6x104個のsrcts−NRK細胞(200μl)を96穴プレートに入れ、10%calf serum (CS)を含むMEM(Eagle's minimal essential medium)培地で32℃、5時間CO2インキュベーターで培養した。次にバイオメディエーター処理をしたリベロマイシン類生産菌のアセトン抽出液(BTB)を5μl添加してさらに2日間培養し、癌細胞様形態から正常細胞様形態に復帰させる活性を評価した。
【0088】
<スクリーニング3>
スクリーニング1及び2でヒットした化合物で再度リベロマイシン類生産菌を処理し、生産誘導されるリベロマイシン類をLC−MSを用いて解析した。
スクリーニング1〜3の結果を以下の表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
<結果>
3155種の化合物をスクリーニングした結果、リベロマイシンA及びリベロマイシンB(RM−A及びRM−Bと呼ぶことがある)の生産を誘導する下記化合物(1)を見出した(図2a参照)。化合物(1)を上記リベロマイシン類生産菌に添加処理した場合における、リベロマイシン類産生誘導をLC−MSを用いて解析した結果を図2のb、cに示す。
【0091】
【化20】

【0092】
次に、化合物(1)に類似したβ−カルボリン化合物を理研天然化合物バンク(RIKEN NPDepo)より収集し、化合物(A)のR1、R2が異なる種々の化合物についてsrcts−NRK細胞を用いたスクリーニングを行った。ポジティブ化合物については、リベロマイシン(RM)類の生産増強に関与するか否かLC−MSを用いて確認した。下記表4にその要約を示す。
【0093】
【表4】

【0094】
表4中、(−)は、tsNRK細胞アッセイでポジティブな結果が得られなかった化合物(LC−MS未解析)に付されている。(+)は、srctsNRK細胞アッセイでポジティブな結果が得られた化合物で、リベロマイシン類の生産量が40mg・L-1以下の化合物に付されている。tsNRK細胞アッセイポジティブでRM類(リベロマイシン類)の生産量が40mg・L-1以上の化合物には、実際に得られた生産量が数字で示されている。なお、表4には示していないが、通常、β−カルボリン化合物を添加しないコントロールでは、約12mg・L-1のリベロマイシン類が産生される。
【0095】
この結果、R2の炭素鎖が短い化合物(2)が、化合物(1)よりもリベロマイシン類の産生を増強するバイオメディエーターとしての活性が強い傾向が判明したため、化合物(2)の構造を起点として構造活性相関研究を行った。その結果を図3及び図4に示す。
図3から判るように、R2の炭素鎖を更に短く改変した化合物(3)は、化合物(2)よりも強いバイオメディエーター活性を示した。また、化合物(3)の構造を起点としてR1のメタ位の構造活性相関を調べたところ、化合物(4)が最も強い活性を示した。
以下に、化合物(2)、(3)、(4)の構造(それぞれ下記式(2)、(3)、(4))を示す。
【0096】
【化21】

【0097】
【化22】

【0098】
【化23】

【0099】
[実施例2]
<β−カルボリン化合物とリベロマイシン類の生産量の関係>
野生株をSK2培地(70 ml)で28℃、150rpmでO.D.600値が6-8になるように48〜72時間前培養を行った。その後、化合物(2)、(3)、(4)をそれぞれ0〜10μg・ml-1の最終濃度となるように添加したSY−B培地(1ml)に1/100量の前培養液を添加し、96穴ディープウェル中で28℃、1000rpmで72時間培養した。その後、培養液に等量のアセトンを加え、超音波破砕し、遠心分離後に上清(20μl)をLC-MS解析しリベロマイシン類の生産量を測定した。その結果を図5に示す。図5(a)は化合物(2)を、図5(b)は化合物(3)を、図5(c)は化合物(4)を添加した場合の結果を示す。
*:コントロールに対してp<0.05;
**:コントロールに対してp<0.001。
【0100】
その結果、化合物(2)、(3)及び(4)のいずれも、0.1〜10μg・ml-1の範囲内の濃度でリベロマイシン類の生産を誘導することが判った。また、化合物(2)を3μg・ml-1添加した場合を除き、基本的に化合物の濃度が高くなるにつれてリベロマイシン類生産量も増大した。
【0101】
次に、化合物(2)、(3)又は(4)を1μg・ml-1添加した場合の、S. reveromyceticus SN-593の細胞増殖量(図6a)及びリベロマイシン類生産量(図6b)を時系列で解析した。その結果を図6に示す(*:コントロールに対して p<0.001)。図6中、NCはネガティブコントロールを表す。
上記化合物でS. reveromyceticus SN-593を処理すると、培養初期の24時間細胞増殖が低下したが、その後は非治療群(コントロール)と類似した増殖速度を示した(図6a)。
一方、培養48時間後以降で細胞質量がコントロールと類似しているにもかかわらず、バイオメディエーター化合物(2)〜(4)で処理したS. reveromyceticus SN-593のリベロマイシン類生産量は、コントロールに比べて顕著に増大していた(図6b)。
【0102】
この結果から、化合物(2)〜(4)のバイオメディエーター活性が、単に細胞質量の増大によるものではないことが示唆された。増殖速度の低減は、二次代謝を引き起こす重要なシグナルであるという一般的な概念があるため、培養の初期段階における細胞増殖抑制は、リベロマイシン生合成遺伝子クラスターの発現を誘導するシグナルとして作用していると考えられた。
【0103】
[実施例3]
<<リベロマイシン生合成遺伝子クラスターの発現増強試験>>
そこで、次に、バイオメディエーター化合物で処理した場合に、リベロマイシン生合成遺伝子クラスターが発現増強されるか否かを調べた。
生合成遺伝子の発現は、経路特異的な制御遺伝子によって調節されている。そこで、まず最初に、リベロマイシン生合成の経路特異的制御遺伝子であると推定されるrevP、revQ及びrevU遺伝子の転写量を評価した。
化合物(4)(1μg・ml-1)でS. reveromyceticus SN-593を処理してから24時間後にmRNAを抽出し、上記3種の遺伝子発現量を定量的RT−PCRを用いて調べた。RT−PCRで使用したプライマーを下記表5に示す。各遺伝子の発現量は、内部コントロールhrdB(主要転写シグマ因子)で校正した(*:コントロールに対してp<0.001)。
【0104】
【表5】

【0105】
その結果、本発明の化合物(A)で処理することにより、特にrevU遺伝子の発現量が増強されることが判った(図7a)。revU遺伝子産物(RevU)はLuxRファミリー転写因子であることから、本発明の化合物(A)はLuxRファミリー転写因子の遺伝子発現を制御すること、及びポリケチド化合物であるリベロマイシン類産生はLuxRファミリー転写因子の1つであるRevUを介して制御されることが示唆された。
【0106】
次に、リベロマイシン生合成遺伝子に対する本発明の化合物の効果について調査した。リベロマイシン類の生合成に必要な遺伝子として、上記制御遺伝子3種及びリベロマイシン生合成遺伝子18種の合計21種の遺伝子が同定されている(Takahashi S. et al., Reveromycin A biosynthesis uses RevG and RevJ for stereospecific spiroacetal formation., Nature Chemical Biology. 7, 461-468 (2011))。
そこで、リベロマイシン生合成遺伝子について培養開始24時間後の転写量を調査した。使用したプライマーは上記表5の通りである。
【0107】
その結果、上記転写因子3種をコードする遺伝子以外の18種の遺伝子うち、ポリケチド生合成に関与する遺伝子(revB及びrevC);前駆体生合成に関与する遺伝子(revR及びrevS);及びポストポリケチド修飾遺伝子(post polyketide tailoring genes)(revG、revI、revJ、revK、revL)の発現が、ネガティブコントロールに対して少なくとも4倍上方に制御されることが判った(図7b)。
以上から、本発明の化合物は、LuxRファミリー転写因子量を増大させるように作用し、増大したLuxRファミリー転写因子がポリケチド化合物の合成・修飾に関与する遺伝子群の発現量を増大することにより、ポリケチド化合物の生産量が増大することが強く示唆された。
【0108】
[実施例4]
<revU遺伝子ノックアウト試験>
RevUがリベロマイシン生合成の正の制御因子であること確認するために遺伝子ノックアウトおよび相補試験を行った。revU遺伝子破壊株は、revU遺伝子の一部をaphII遺伝子に置き換えた構築物を含むベクターで形質転換したE. coli GM2929 hsdS::Tn10(pUB307::Tn7)をS. reveromyceticus SN-593との接合により伝達することにより作製し、遺伝子破壊をサザンハイブリダイゼーションにより確認した(図8(a)及び(b))。相補試験は、aphIIプロモーターの制御下にrevU遺伝子を含むpTYM19ベクター(pTYM−revU)を野生株又は上記revU遺伝子破壊株に導入することにより行った。使用した株およびプラスミドを以下の表6にまとめる。S. reveromyceticus SN-593、ΔrevU、ΔrevU::revU、SN-593::revUについての結果をそれぞれ図8(c)、(d)、(e)、(f)に示す。
【0109】
【表6】

【0110】
revU遺伝子の破壊によりリベロマイシン類の生産が完全に消失し、aphIIプロモーターの制御下のrevU遺伝子のrevU遺伝子破壊株への組み込み(1コピー)により、野生株に匹敵するレベルのリベロマイシン類の産生が回復した。また、aphIIプロモーターの制御下のrevU遺伝子を野生株に組み込んだ場合、リベロマイシン生産量が増加した。これらの結果は、RevUがリベロマイシン生合成において正の制御因子として重要な役割を果たしており、revU遺伝子の発現増強によりリベロマイシン類の生産が増大することを示す。
次に、野生株及びrevU遺伝子破壊株(ΔrevU)をSK2培地(70ml)で28℃、150rpmで2日間、前培養した。バイオメディエーター(化合物(4))添加又は無添加のSY−B培地(10ml)に、前培養液1/100量添加し、28℃、150rpmで3日間培養を継続した。培養液に等量のアセトンを加え、超音波破砕し、遠心分離後に上清をLC−MS解析した。その結果を図9に示す。
なお、図9(a)〜(d)は以下の通りである。
・図9(a):野生株にDMSOに溶解した化合物(4)を1μg・ml-1添加した場合。
・図9(b):野生株にDMSOのみを加えた場合。
・図9(c):revU遺伝子破壊株(ΔrevU)にDMSOに溶解した化合物(4)を1μg・ml-1添加した場合。
・図9(d):ΔrevUにDMSOのみを加えた場合。
【0111】
その結果、野生株では、化合物(4)存在下でリベロマイシン類の生産増強が見られた(図9a:2種の大きなピークはそれぞれリベロマイシンA(左)、リベロマイシンB(右)を示す)。しかしながら、revU遺伝子破壊株では、化合物(4)の有無に関わらずリベロマイシン類の生産増強は認められなかった。従って、本発明の化合物(A)は、revU遺伝子の発現増強を介して、リベロマイシン類の生産性を高めることが明らかとなった。
【0112】
[実施例5]
<LuxRファミリー転写因子を有する放線菌での、化合物(A)処理による代謝産物増強試験>
リベロマイシン生合成遺伝子クラスターを有するS. reveromyceticus SN-593以外の、LuxRファミリー転写因子遺伝子を含むポリケチド化合物生合成遺伝子クラスターを有する放線菌においても本発明の化合物(A)によりポリケチド化合物の生産性が増大するか否かを調べるために、別のStreptomyces属放線菌の培養液に本発明の化合物(4)を添加し、代謝産物をHPLCで解析したところ、代謝産物の生産性が増大することが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の化合物による二次代謝産物生産は、ゲノム情報解読や遺伝子機能アノテーション情報を必要とせず、各放線菌について形質転換手法を確立する必要もなく応用範囲が広い。また、本発明の化合物は、薬剤として利用の可能性が高いポリケチド化合物を二次代謝産物として誘導することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放線菌におけるポリケチド化合物の産生増強剤であって、下記一般式(A)で表される化合物を含むことを特徴とする、前記増強剤。
【化1】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表す。)
【請求項2】
1がハロゲン原子であり、R2がCONH2であり、nが0又は1である、請求項1に記載の増強剤。
【請求項3】
前記ポリケチド化合物がリベロマイシンAである、請求項1又は2に記載の増強剤。
【請求項4】
前記放線菌がStreptomyces sp. SN-593(受託番号FERM BP−3406)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の増強剤。
【請求項5】
下記一般式(A)で表される化合物を含む、放線菌におけるLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現増強剤。
【化2】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表す。)
【請求項6】
下記一般式(A)で表される化合物。
【化3】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表し;但し、R2がCONH2のとき、R1はフッ素原子、OCH3又はNO2であり;R2がCONH(CH2x−R’であってR’がOHのとき、xは0〜1であり;R2がCONH(CH2x−R’であってR’がOCOR”のとき、xは0〜3であることを条件とする。)
【請求項7】
下記から選ばれる、請求項6に記載の化合物。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【請求項8】
下記一般式(A)で表される化合物を放線菌の培養液に添加する工程を含む、ポリケチド化合物の製造方法。
【化9】

(式中、R1は各々独立にハロゲン原子、OCH3又はNO2を表し;R2はCONH2又はCONH(CH2x−R’を表し;xは0〜5の整数を表し;R’はOH又はOCOR”を表し;R”はCH3又はC25を表し;nは0〜2の整数を表す。)
【請求項9】
放線菌においてLuxRファミリー転写因子遺伝子の発現を増強させる工程を含む、ポリケチド化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39081(P2013−39081A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178620(P2011−178620)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年6月5日 http://www.nature.com/nchembio/journal/v7/n7/full/nchembio.583.html 及び http://www.nature.com/nchembio/journal/v7/n7/pdf/nchembio.583.pdfにおける発表
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】