ポリケトン多孔膜

【課題】耐熱性及び耐薬品性を有し、かつ例えば不純物の捕集効率が高い濾過用フィルターとして、及びイオン等の透過抵抗が低くかつ絶縁性の高い電池用又はコンデンサ用のセパレータとして有用なポリケトン多孔膜の提供。
【解決手段】一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含むポリケトン多孔膜であって:ポリケトン多孔膜の最大孔径が1μm以下であること;ポリケトン多孔膜の空隙率が5〜90%であること;及びポリケトン多孔膜が、膜厚方向に亘ってポリケトンのみによって形成されているポリケトン部を有し、該ポリケトン部は、ポリマー充填比率80%以上を有する緻密層とポリマー充填比率80%未満を有する非緻密層とを有し、該緻密層の厚みT1と該非緻密層の厚みT2との比T1:T2が1:99〜50:50であること;を満足するポリケトン多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケトン多孔膜及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造プロセス、バイオ医薬品製造プロセス等において、製品の信頼性及び収率の観点から、ごく微小な粒子、ウィルス等の不純物を効率的に除去することができる濾材が求められている。濾過対称物のサイズよりも小さい孔径の濾材を使用すれば、上記不純物はある程度までは除去可能である。しかし、一般的に孔径が小さくなるほど、濾過における圧力損失が大きくなり、また透過流束が減少してしまう。そこで、極めて小さい不純物を十分に濾過でき、なおかつ圧力損失が少ない濾材が求められている。また、上記プロセスでは多種多様な薬品及び有機溶剤を使用するため、濾材には耐薬品性が必要となる。一部のフィルターは、処理気液が有機溶媒である場合、腐食性を有する場合があり、また高温環境下で使用される場合もある。このような場合、フィルターには耐薬品性、化学的安定性、耐熱性等が要求される場合が多い。現在、微小な不純物等の除去が可能で、かつ耐薬品性を持つ濾材として、ポリエチレン多孔膜又はポリテトラフルオロエチレン多孔膜が用いられている。しかし、ポリエチレン多孔膜は耐熱性が低いという問題がある。また、ポリテトラフルオロエチレン多孔膜は非常に高価であり、10nm程度の微小な不純物を除去できる孔径を持った濾材を作りにくいという問題がある。更に、上記濾材は共に疎水性であり、水系の処理液を濾過する場合には、濾材に予め親水化処理を施しておくか、濾材を使用前にアルコール浸漬してから使用しなければならないという問題がある。
【0003】
一方、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、電解コンデンサ等における、陽極と陰極との接触を防止するための構成部材であるセパレータとしても、多孔膜が用いられている。近年、前記セパレータに対して、安全性及び製品寿命の観点から、耐熱性及び絶縁性の要求が高まっている。現在使用されているリチウムイオン二次電池のセパレータとしては、主にポリエチレン製又はポリプロピレン製の多孔膜が使用されている。しかしポリエチレン及びポリプロピレンは耐熱性に乏しいために、これらの樹脂を用いたセパレータが高温下で溶融軟化して収縮し、陽極と陰極とが接触してショートする危険性が考えられる。電気二重層キャパシタ、及び電解コンデンサにおいては、セルロース素材の紙が主に使用されているが、耐高温用に開発されている、γ−ブチロラクトン等の溶媒に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸等のイオン液体が電解質として溶解している電解液によって、高温下でセルロースが分解又は溶解してしまうために、製品の寿命が短いという問題がある。
【0004】
ところで、パラジウム又はニッケルを触媒として一酸化炭素とオレフィンとを重合させることにより得られる、一酸化炭素とオレフィンとが完全交互共重合した脂肪族ポリケトン(以下ポリケトンともいう)が知られている。ポリケトンは、その高い結晶性により、繊維又はフィルムとしたときに、高力学物性、高融点、耐有機溶媒性及び耐薬品性等の特性を有する。特に、オレフィンがエチレンの場合、該ポリケトンの融点は240℃以上となる。このようなポリケトンは、例えばポリエチレンと比較して耐熱性に優れる。従って、ポリケトンを加工して多孔膜とすることで得られるポリケトン多孔膜も、耐熱性と耐薬品性とを持つ。更に、ポリケトンは水及び各種有機溶媒との親和性があること、また原料の一酸化炭素及びエチレンは比較的安価であり、ポリケトンのポリマー価格が安くなる可能性があることから、孔径の小さいポリケトン多孔膜は濾材として産業上の活用が期待できる。更に、ポリケトン多孔膜が平膜状である場合は、リチウムイオン二次電池及び各種コンデンサの上述の問題を解決するセパレータともなり得るため、より一層有用である。
【0005】
ポリケトン多孔膜が濾材として有用であることは、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1に記載されているポリケトン多孔膜は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として、水又はイソプロパノールを非溶媒として用いた湿式製膜によって製造されている。また特許文献2に記載のポリケトン多孔膜は、濃厚金属塩水溶液を溶媒として、湿式製膜によって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−4431号公報
【特許文献2】特開2002−348401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法で得られる多孔膜は、表面付近に非常に緻密な層が形成されており、この層の孔径は非常に小さいため、濾材として用いる場合の圧力損失が極めて大きい。また、この非常に緻密な層は、電池又はコンデンサセパレータの用途において、電池又はコンデンサの内部抵抗を大きくする原因となる。
【0008】
また、特許文献2の方法で得られるポリケトン多孔膜は、粒子状の結晶が成長した構造、又は液滴状の孔を持つ構造となり、部分的又は全体的に孔径が大きくなっている。この構造では、フィルター用途において、又は電池若しくはコンデンサの用途において、微小な不純物等を高い効率で除去することは不可能である。また、電池又はコンデンサの用途において、絶縁性が低いという問題がある。更に、特許文献2では溶媒として亜鉛塩又はカルシウム塩が用いられているため、ポリケトン多孔膜から製膜、洗浄、乾燥後の残金属を完全になくすことは困難である。従って、特許文献2に記載されているポリケトン多孔膜は、金属不純物を嫌う分野の濾材、及び電池用又はコンデンサ用のセパレータとしては不適である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性及び耐薬品性を有し、かつ、例えば微小な不純物の捕集効率が高い濾過用フィルターとして、及び、イオン等の透過抵抗が低く、かつ絶縁性の高い電池用又はコンデンサ用のセパレータとして有用なポリケトン多孔膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、最大孔径、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比、及び空隙率が所定の範囲にあるポリケトン多孔膜が上記課題を解決することを発見し、本発明に至った。具体的には、本発明は、以下の態様を有する。
【0011】
[1] 一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含むポリケトン多孔膜であって、下記条件(1)〜(3):
(1)ポリケトン多孔膜の最大孔径が1μm以下であること;
(2)ポリケトン多孔膜の空隙率が5〜90%であること;及び
(3)ポリケトン多孔膜が、膜厚方向に亘ってポリケトンのみによって形成されているポリケトン部を有し、該ポリケトン部は、ポリマー充填比率80%以上を有する緻密層と、ポリマー充填比率80%未満を有する非緻密層とを有し、該緻密層の厚みT1と該非緻密層の厚みT2との比T1:T2が1:99〜50:50であること;
を満足する、ポリケトン多孔膜。
[2] 該ポリケトンが、下記一般式(1):
【化1】

{式中、Rは、置換又は非置換の、炭素数2〜20の炭化水素基である。}で表される繰り返し単位を含む、上記[1]に記載のポリケトン多孔膜。
[3] 該ポリケトンを構成する繰り返し単位に対する、下記式(2):
【化2】

で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合が70モル%以上である、上記[1]又は[2]に記載のポリケトン多孔膜。
[4] 該一般式(1)中、Rが、水素、ハロゲン、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む、上記[2]又は[3]に記載のポリケトン多孔膜。
[5] 該ポリケトンを構成する繰り返し単位に対する、該一般式(1)で表される繰り返し単位であってRが水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む繰り返し単位の割合が0.1〜30モル%の範囲である、上記[2]〜[4]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜。
[6] 該ポリケトンが、下記一般式(3):
【化3】

{式中、R1、R2、及びR3は、各々独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造を30質量%以下の量で含む共重合体である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜。
[7] 該一般式(3)中、R1及びR2が共に水素である、上記[6]に記載のポリケトン多孔膜。
[8] 該ポリケトンと複合化された少なくとも1つの不織布を更に含む、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜。
[9] 該不織布が、熱可塑性合成繊維から成り、そして5〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と0.5〜4μmの繊維径を有する不織布層(B)とが、A/B/A型又はA/B型で複合一体化されたものである、上記[8]に記載のポリケトン多孔膜。
[10] 平膜の形態である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜。
[11] 長手方向に貫通した1つ以上の空隙を有する中空糸膜である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜。
[12] 上記[1]〜[11]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜を含む、濾過用フィルター。
[13] 水処理用フィルター、メンブレンバイオリアクタ用フィルター、工業用液体濾過用フィルター、脱気用フィルター、気体除塵用フィルター、ケミカルフィルター用フィルター、ガス分離用フィルター又は医療用フィルターである、上記[12]に記載の濾過用フィルター。
[14] 上記[10]に記載のポリケトン多孔膜を含む、リチウムイオン二次電池用セパレータ。
[15] 上記[10]に記載のポリケトン多孔膜を含む、コンデンサ用セパレータ。
[16] 該コンデンサが、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、又はリチウムイオンキャパシタである、上記[15]に記載のコンデンサ用セパレータ。
[17] 上記[10]に記載のポリケトン多孔膜を含む、イムノクロマトグラフィー用展開相。
[18] 上記[10]に記載のポリケトン多孔膜を含む、細胞培養用足場材。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリケトン多孔膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れるポリケトンを用いて形成されているとともに、制御された多孔構造を有する。よって、本発明のポリケトン多孔膜を濾過用フィルターとして用いた場合、微小な不純物の捕集効率が高く、多種多様な流体を広い温度域において濾過することができる。更に、本発明のポリケトン多孔膜を用いた濾過用フィルターは、流体の抵抗が低く、なおかつ除去対象の不純物を十分に捕捉するため、低エネルギーかつ効率の良い濾過が実現する。また、本発明のポリケトン多孔膜がセパレータとして用いられたリチウムイオン二次電池及び各種コンデンサは、低内部抵抗、高耐熱性、高絶縁性及び長寿命である。更に本発明のポリケトン多孔膜は、吸液速度にバラつきの少ないイムノクロマトグラフィー展開相、及び、正常な球体状細胞の培養が可能な細胞培養用足場材としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜の拡大断面を示す画像である。
【図2】本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜の拡大断面を示す画像である。
【図3】本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜としての中空糸膜の模式図である。
【図4】本発明の一態様における、ポリケトンと不織布とが複合化されてなるポリケトン多孔膜の断面模式図である。
【図5】本発明の一態様における、ポリケトンと不織布とが複合化されてなるポリケトン多孔膜の断面模式図である。
【図6】本発明の一態様における、ポリケトンと不織布とが複合化されてなるポリケトン多孔膜の断面模式図である。
【図7】本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜のポリケトン部における緻密層の拡大断面を示す画像である。
【図8】本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜としての中空糸膜を形成するために用いる紡糸口金の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含むポリケトン多孔膜であって、下記条件(1)〜(3):(1)ポリケトン多孔膜の最大孔径が1μm以下であること;(2)ポリケトン多孔膜の空隙率が5〜90%であること;及び(3)ポリケトン多孔膜が、膜厚方向に亘ってポリケトンのみによって形成されているポリケトン部を有し、該ポリケトン部は、ポリマー充填比率80%以上を有する緻密層と、ポリマー充填比率80%未満を有する非緻密層とを有し、該緻密層の厚みT1と該非緻密層の厚みT2との比T1:T2が1:99〜50:50であること;を満足する、ポリケトン多孔膜を提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明のポリケトン多孔膜を用いた各種部材を提供する。一態様において、本発明に係るポリケトン多孔膜を含む濾過用フィルターを提供する。濾過用フィルターの例としては、水処理用フィルター、メンブレンバイオリアクタ用フィルター、工業用液体濾過用フィルター、脱気用フィルター、気体除塵用フィルター、ケミカルフィルター用フィルター、ガス分離用フィルター及び医療用フィルターが挙げられる。別の態様において、本発明に係るポリケトン多孔膜を含むリチウムイオン二次電池用セパレータを提供する。別の態様において、平膜状のポリケトン多孔膜を含むコンデンサ用セパレータを提供する。コンデンサの例としては、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、及びリチウムイオンキャパシタが挙げられる。別の態様において、平膜状のポリケトン多孔膜を含む、イムノクロマトグラフィー用展開相、及び細胞培養用足場材を提供する。
【0016】
以下、本発明の典型的な態様をより詳細に説明する。
【0017】
本発明の一態様は、一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含むポリケトン多孔膜であって、下記条件(1)〜(3):
(1)ポリケトン多孔膜の最大孔径が1μm以下であること;
(2)ポリケトン多孔膜の空隙率が5〜90%であること;及び
(3)ポリケトン多孔膜が、膜厚方向に亘ってポリケトンのみによって形成されているポリケトン部を有し、該ポリケトン部は、ポリマー充填比率80%以上を有する緻密層と、ポリマー充填比率80%未満を有する非緻密層とを有し、該緻密層の厚みT1と該非緻密層の厚みT2との比T1:T2が1:99〜50:50であること;
を満足する、ポリケトン多孔膜を提供する。本発明の一態様に係るポリケトン多孔膜は、実質的にポリケトンのみで構成されてもよいし、ポリケトンと別の材料(例えば1つ以上の不織布)とを複合化して構成してもよい。
【0018】
ポリケトン多孔膜は、一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含む。ポリケトン多孔膜中のポリケトンの含有率は、ポリケトンが本来持つ耐熱性及び耐薬品性を反映させるという観点から、多いほど好ましい。別の材料と複合化されない平膜状である場合、ポリケトン多孔膜中のポリケトン含有率は、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましい。また、不織布等が複合化されているポリケトン多孔複合膜では、ポリケトンが持つ耐熱性及び耐薬品性と、不織布等が持つ力学特性とを両立させるという観点から、ポリケトン多孔複合膜中のポリケトン含有率は、10〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が更に好ましい。ポリケトン多孔膜中のポリケトンの含有率は、該多孔膜を構成する成分のうちポリケトンのみを溶解する溶媒によってポリケトンを溶解除去する方法、又は、ポリケトン以外を溶解する溶媒によってポリケトン以外を溶解除去する方法によって確認される。
【0019】
ポリケトンの合成において、一酸化炭素と共重合させるオレフィンとしては、目的に応じて任意の種類の化合物を選択できる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の鎖状オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族化合物、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン等の環状オレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化アルケン、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、及び酢酸ビニル等が挙げられる。ポリケトン多孔膜の力学特性及び耐熱性の観点からは、共重合させるオレフィンの種類は、1〜3種類であることが好ましく、1〜2種類であることがより好ましく、1種類であることが更に好ましい。
【0020】
本発明の好適な形態の1つにおいては、ポリケトンが、下記一般式(1):
【0021】
【化4】

【0022】
{式中、Rは、置換又は非置換の、炭素数2〜20の炭化水素基である。}で表される繰り返し単位を含む。Rは、置換基として、水素、ハロゲン、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含むことができる。ポリケトンを構成する繰り返し単位(すなわちケトン繰り返し単位)は1種類又は2種類以上の組合せであることができる。
【0023】
ポリケトン多孔膜の力学特性及び耐熱性の観点からは、上記一般式(1)のRの炭素数は2〜8がより好ましく、2〜3が更に好ましく、2が最も好ましい。特に、ポリケトンを構成する繰り返し単位は、下記式(2):
【0024】
【化5】

【0025】
で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を多く含むほど好ましい。力学特性及び耐熱性の観点からは、ポリケトンを構成する繰り返し単位中の1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合は、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合は100モル%でもよい。一方、ポリケトンを構成する繰り返し単位には、後述するように1−オキソトリメチレン繰り返し単位以外の構造が0.1モル%以上含まれていてもよい。なおここで上記100モル%とは、公知の元素分析、NMR(核磁気共鳴)、ガスクロマトグラフィー等の分析装置において、ポリマー末端基を除いて1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位が観測されないことを言う。典型的には、ポリケトンを構成する繰り返し単位の構造及び各構造の量は、NMRによって確認される。
【0026】
ポリケトン多孔膜は、最大孔径が1μm以下を有する。最大孔径は、バブルポイント法(ASTM F316−86又はJIS K3832に準拠)により測定される値である。最大孔径が1μm以下であるポリケトン多孔膜が例えば濾材として用いられた場合、半導体製造プロセス、バイオ医薬品製造プロセス等での除去ニーズが高いサブマイクロメートルオーダーの微小な粒子等の捕集効率が高い。また、例えば該ポリケトン多孔膜がセパレータとして用いられた電池又はコンデンサにおいては、絶縁性が非常に高く、また電極同士の接触が起こりにくくなり、ショートを防ぐことが可能となる。ポリケトン多孔膜の最大孔径は、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましく、0.2μm以下が最も好ましい。一方、ポリケトン多孔膜の最大孔径は、例えば濾材の用途における圧力損失及び透過流速の減少を良好に回避でき、又は例えばセパレータの用途における内部抵抗の増大を良好に回避できるという観点から、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.005μm以上、更に好ましくは0.01μm以上である。
【0027】
ポリケトン多孔膜は、膜厚方向に亘ってポリケトンと該ポリケトンがなす空隙のみによって形成されている部分であるポリケトン部を有する。ポリケトン部は、ポリマー充填比率80%以上を有する緻密層と、ポリマー充填比率80%未満を有する非緻密層とを有する。緻密層の厚みT1と非緻密層の厚みT2との比は、1:99〜50:50である。緻密層は、ポリケトン部の膜厚方向の断面視野において、空隙部分と比べてポリケトンが大幅に大きい体積を占めている。緻密層は、典型的には多孔膜の面方向に連続して延びている。また、非緻密層は、上記緻密層以外の部分からなる層である。緻密層と非緻密層とは、顕微鏡画像等によって明瞭に区別されてもよい。一方、例えばポリケトン部の空隙率が多孔膜の厚み方向において連続的に変化していることにより、緻密層と非緻密層とが明瞭な境界部を示さなくてもよい。
【0028】
ポリマー充填比率とは、ポリケトン部の膜厚方向の断面画像から以下の方法で算出される値である。まず、該断面画像を二値化処理してポリケトン部に対応する部分(明部)と空隙に対応する部分(暗部)とに分ける。次に、膜厚方向に50等分された計測区間を設定する。50区間の各々について明部及び暗部の面積を求める。全体に対する明部の面積比率をポリマー充填比率と定義する。ポリマー充填比率が80%以上の区間を緻密層、80%未満の区間を非緻密層と決定する。上記測定を、5視野の断面画像について同様に行う。緻密層と決定された区間数の5視野での算術平均と、非緻密層と決定された区間数の5視野での算術平均との比を、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比とする。上記比の詳細な決定方法は[実施例]の項で後述する方法に準拠できる。
【0029】
図1は、本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜の拡大断面を示す画像である。図1は、ポリケトンのみで構成されるポリケトン多孔膜の電子顕微鏡による断面画像である。図1に示すポリケトン多孔膜断面においては、上述の定義により規定される緻密層11と非緻密層12との厚みの比が本発明所定の範囲内であることを示す。ポリケトン多孔膜表面3は多数の空隙を有している。
【0030】
図2は、本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜の拡大断面を示す画像である。図2は、ポリケトンとポリエステル不織布とが複合化されたポリケトン多孔膜の電子顕微鏡による断面画像である。図2に示すポリケトン多孔膜断面においては、多数の微細孔を有するポリケトン部21と、不織布を構成するポリエステル繊維部22とが現れている。膜厚方向に亘ってポリケトンのみで構成されるポリケトン部23において、緻密層と非緻密層との厚みの比が図1で示す画像と同様に本発明所定の範囲内であることを示す。
【0031】
フィルター用途において、緻密層は分画性能に大きく寄与するため、濾過において最も重要な層である。よって緻密層が厚いほど分画能力は上がるが、同時に圧力損失の上昇又は透過流速の減少を起こす。一方、電池又はコンデンサの用途においては、緻密層が厚いほど絶縁性は上がるが、同時に内部抵抗の増大も起こす。また、膜が緻密層のみで構成される場合、膜に作用する引っ張り、圧縮、及び曲げの応力を緻密層のみで受けねばならず、膜の破損又は孔の形状の変化を起こしやすい。よって、非緻密層の存在もまた重要である。更に、フィルター用途においては、非緻密層を濾過の一次側としたとき、非緻密層がプレフィルターとして粗大粒子を除去して目詰まりを抑える役割、及び緻密層を保護する役割を果たす場合もある。従って、本発明のポリケトン多孔膜においては、ポリケトン部の緻密層と非緻密層との厚みの比が、所定範囲内に制御されていることが重要となる。
【0032】
緻密層の厚みと非緻密層の厚みとの比が1:99よりも緻密層の割合が低いポリケトン多孔膜は、フィルター用途において、微小な不純物の捕集効率が極端に悪くなる。また上記ポリケトン多孔膜がセパレータとして用いられた電池又はコンデンサにおいては、絶縁性が低く極めてショートしやすい。一方、緻密層の厚みと非緻密層の厚みとの比が50:50よりも緻密層の割合が高いポリケトン多孔膜は、フィルター用途において圧力損失が極めて高く、また透過流束が著しく低くなる。また上記ポリケトン多孔膜がセパレータとして用いられた電池又はコンデンサにおいては、内部抵抗が著しく高くなる。緻密層の厚みと非緻密層の厚みとの比としては、2:98〜45:55がより好ましく、5:95〜40:60が更に好ましい。
【0033】
本発明の一態様に係るポリケトン多孔膜は、空隙率5〜90%を有する。空隙率は、下記数式:
空隙率(%)=(1−G/ρ/V)×100
{式中、Gはポリケトン多孔膜の質量(g)であり、ρはポリケトン多孔膜を構成する全ての樹脂の質量平均密度(g/cm3)であり、Vはポリケトン多孔膜の体積(cm3)である。}により算出される。上記数式において、質量平均密度ρは、ポリケトン多孔膜が、ポリケトンとは密度の異なる樹脂と、ポリケトン樹脂との複合化によって構成される場合、各々の樹脂の密度にその構成質量比率を乗じた値の和である。例えば、ρA及びρBの密度をそれぞれ持つ繊維がGA及びGBの質量比率で構成された不織布に、密度ρpのポリケトンがGpの質量比率で複合されているときには、質量平均密度は、下記数式:
質量平均密度=(ρA・GA+ρB・GB+ρp・Gp)/(GA+GB+Gp
で表される。空隙率が5%より低いポリケトン多孔膜は、例えば濾材として用いられる場合、透過流束が小さい、粒子捕集効率が悪い、閉塞までの時間が短い等の不具合を生じる。また例えば上記ポリケトン多孔膜がセパレータとして用いられた電池又はコンデンサでは、電解液の保持性が低くなり、またイオン透過速度が遅くなり、好ましくない。一方、ポリケトン多孔膜の空隙率が90%より高くなると、該ポリケトン多孔膜は機械的強度が極端に低くなってしまい、フィルター、電池、コンデンサ等の製造中又は使用中の破損を頻繁に引き起こす。本発明のポリケトン多孔膜の空隙率としては30〜90%が好ましく、40〜90%が更に好ましく、50〜90%が最も好ましい。
【0034】
本発明において、ポリケトン多孔膜に対し、後述のような追加の機能を付与するという観点で、ポリケトンを構成する繰り返し単位は、30モル%以下の割合で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位であってRが水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む繰り返し単位(以下、置換基含有単位ともいう)を含むことが好ましい。特に好ましい態様において、該置換基含有単位は、上記式(2)で表される繰り返し単位における水素原子の少なくとも1つ以上が上記列挙した官能基の1つ以上で置換されている構造を有する。
【0035】
ポリケトンを構成する繰り返し単位中、上記置換基含有単位の割合は、0.1〜30モル%であることが好ましい。該割合が0.1モル%以上である場合、置換基による実用上の効果が良好に発現され、30モル%以下である場合、ポリケトン多孔膜の強度(例えば引張強度)、耐熱性及び耐薬品性が良好であり、実用において好都合である。強度、耐熱性及び耐薬品性を保ちつつ置換基による効果を良好に発現させる点で、上記割合は0.2〜15モル%がより好ましく、0.5〜10モル%が更に好ましく、1〜5モル%が最も好ましい。上記官能基は、目的によって任意の種類及び任意の数を選択することができる。例えば、ポリケトン多孔膜を濾材として用いる場合、タンパク質等の吸着による詰まりを回避するために、親水性の官能基を選択することが有効である。また、ポリケトン多孔膜を電池又はコンデンサのセパレータとして用いる場合、電解液等との濡れ性を上げる官能基を選択することで、イオン等の透過抵抗を下げることができる。目的によっては、更に二次的な機能を持つ官能基を選んでもよく、例えば4級アンモニウム基及びスルホン酸基のような官能基を選択することで、ポリケトン多孔膜にイオン交換能を持たせることも可能である。
【0036】
ポリケトン多孔膜に良好な機能を付与するという観点で、ポリケトンは、下記一般式(3):
【0037】
【化6】

【0038】
{式中、R1、R2、及びR3は、各々独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造(以下、ピロール成分ともいう)を含む共重合体であってもよい。ポリケトン中のピロール成分の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましい。該質量割合が0.1質量%以上である場合、ポリケトン鎖と上記成分とで構成されるポリケトンを含むポリケトン多孔膜において、ピロール成分の含有による実用上の効果が良好に発現され、30質量%以下である場合、ポリケトン多孔膜の強度、耐熱性及び耐薬品性が良好であり、実用において好都合である。上記質量割合は0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
【0039】
なお、上記一般式(3)中の置換基R1、R2、及びR3は、目的によって上記置換基から任意の種類及び任意の数を選択することができる。例えば、ポリケトン多孔膜を濾材として用いる場合、タンパク質等の吸着による詰まりを回避するために、親水性の官能基を選択することが有効である。また、ポリケトン多孔膜を電池又はコンデンサのセパレータとして用いる場合、電解液等との濡れ性を上げる官能基を選択することで、イオン等の透過抵抗を下げることができる。目的によっては、更に二次的な機能を持った官能基を選んでもよく、例えば4級アンモニウム基及びスルホン酸基のような官能基を選択することで、イオン交換能を持たせることも可能である。これらのように様々な官能基を選択することができる。中でも、式中のR1及びR2が共に水素である場合、力学特性の点で有利であり好ましい。
【0040】
ポリケトン多孔膜の孔の形状は、上述の最大孔径、空隙率、及び緻密層の厚みと非緻密層の厚みとの比を満たしていれば特に限定されず、円形、扁平形等であることができる。主として円形の孔が配された多孔膜は、例えば濾材として用いたときの捕集性能、及び例えばセパレータとして用いたときのイオン等の透過性能が安定するため好ましく、一般的な分野に容易に適用できる利点を有する。
【0041】
ポリケトン多孔膜の形状は特に限定されない。しかし、好ましい例として、ポリケトン多孔膜は平膜状であり、別の好ましい例として、ポリケトン多孔膜は長手方向に貫通した1つ以上の空隙を有する中空糸膜である。ポリケトン多孔膜の形状は目的・用途に応じて使い分けることができる。
【0042】
図3は、本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜としての中空糸膜の模式図である。図3に示す中空糸膜31は、長手方向に貫通した空隙33(以下、中空部ともいう)を内部に少なくとも1つ有する。図3に示す中空糸膜31においては中空糸膜断面32がリング形状を有する。中空糸膜は、特にフィルター用途に好適である。ポリケトン多孔膜が中空糸膜である場合、中空部の体積を含めた中空糸膜全体の体積に対する中空部の割合、すなわち中空率は特に制限されないが、低すぎると膜の分離効率が低下する傾向があり、また高すぎると中空糸膜の力学特性が低下する傾向がある。このような観点から、中空率は、10〜70体積%であることが好ましく、20〜60体積%であることがより好ましい。上記中空率は、中空糸膜の内径r及び外径Rから、下記計算式:
中空率(%)=(r2/R2)×100
に従って算出される。
【0043】
中空糸膜1本が有する中空部の数には特に制限はなく、1本であっても複数本であってもよい。中空糸膜の外径には特に制限はないが、100〜5000μmの範囲が好適に用いられる。中空糸膜は1本で用いてもまたマルチフィラメントとして用いてもよい。中空糸膜の断面としては円、楕円、三角、星形、アルファベット型等の従来公知の形状を適用することができる。また、中空糸膜の厚み(例えば図2に示す中空糸膜における厚みT)は、外径と中空率との兼ね合いによって選択されるが、通常8〜1700μmである。
【0044】
ポリケトン多孔膜の形状は、他の一例においてシート状の平膜である。平膜は、濾材として好適である上に、電池又はコンデンサ等のセパレータとして用いられる場合にも好適である。平膜の厚みは、特に制限はなく用途に応じて任意の厚みとできるが、通常0.1〜1000μmである。ポリケトン多孔膜を濾材として用いる場合、モジュールの小型化及び有効濾過面積の広さの観点から、ポリケトン多孔膜の厚みは小さい方が好ましく、500μm以下が好ましい。濾材としてのポリケトン多孔膜の厚みは、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。また、ポリケトン多孔膜を電池用又はコンデンサ用のセパレータとして用いる場合、電池容量の向上、コンデンサ小型化等を考慮すると、ポリケトン多孔膜の厚みは小さい方が好ましく、70μm以下であることが好ましい。電池用又はコンデンサ用のセパレータとしてのポリケトン多孔膜の厚みは、50μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが最も好ましい。前記の両用途において機械的強度を考慮すると、ポリケトン多孔膜の厚みは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが最も好ましい。また、前記の両用途において、ポリケトン多孔膜の厚みの均一性は非常に重要であり、任意の箇所100点で計測した厚みの、最小値/最大値の比が0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。
【0045】
一態様において、本発明のポリケトン多孔膜は、ポリケトンと複合化された少なくとも1つの不織布を更に含むことができる。図4〜6は、本発明の一態様における、ポリケトンと不織布とが複合化されてなるポリケトン多孔膜の断面模式図である。図4〜6を参照して、ポリケトンと不織布とが複合化された形態の例を以下に示す。例えば図4に示すように、平膜状のポリケトン部41と不織布部42とがそれぞれの表面を界面として接着している形態が挙げられる。また、図5に示すように、ポリケトン部51、不織布部52、及び不織布内にポリケトンが浸透している複合部53を有する形態が挙げられる。更に、図6に示すように、ポリケトン部61と、その中に不織布(該不織布内にはポリケトンが浸透している)が完全に内包されることで形成された複合部63とを有する形態が挙げられる。例えば図5及び図6に示すような複合部を有する態様は、ポリケトンと不織布とが剥がれる現象が抑制される点で好ましい。また、平膜状のポリケトン多孔膜において、ポリケトン部は、不織布部の片面に複合化されてもよく、不織布部の両面に複合化されてもよい。
【0046】
上記不織布としては、目的及び用途に応じて、一般公知のものを使用することができる。不織布を構成する繊維には特に限定は無く、短繊維、及び紡糸直結型の長繊維を例示できる。不織布を構成する繊維が使用中に脱落する可能性がない点、及び製造コストの点では、紡糸直結型の長繊維不織布が好ましい。本発明において用いられる不織布としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリフェニレンサルファイド系樹脂としては、酸化架橋型及び直鎖型等の樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0047】
一般的に、耐熱性を重視する場合はポリエステル系樹脂が用いられ、耐薬品性を重視する場合はポリオレフィン系樹脂が用いられる。また、耐熱性と耐薬品性とを両立させたい場合は、ポリフェニレンサルファイド系樹脂又はフッ素系樹脂が用いられる。加工性の良さを考慮すると、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が好ましい。上記不織布は全て、必要に応じてプラズマ照射等によって親水化処理されていてもよい。
【0048】
上記不織布は、熱可塑性合成繊維から成ることが好ましい。また、不織布の構造は、5〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と、0.5〜4μmの繊維径(すなわち極細繊維)を有する不織布層(B)とが、A/B/A型、又はA/B型で接合等により複合一体化されて成ることが好ましい。不織布は、繊維及びその間隙である空隙から構成されるが、上記のような不織布構造とすることで、厚み方向に連続して繋がった大きな空隙を作ることが無いため、ポリケトン樹脂との複合化をより均一な厚みで実現することが可能となる。また、ポリケトン多孔膜が、不織布の片面にポリケトン樹脂の多孔膜が複合化された構造を有する場合、上記極細繊維を有する不織布層(B)の繊維は細く、かつ空隙が小さいために、ドープが塗布面の反対側に透過してしまうことを抑制する効果があり、より均一なポリケトン多孔膜を製造することが可能となる。なお、不織布がA/B型の場合、ポリケトンはA面側から複合化されていても、B面側から複合化されていてもよい。上記繊維径は、ポリケトン多孔膜の断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察することで測定される。
【0049】
本発明のポリケトン多孔膜を構成するポリケトンの極限粘度(これは分子量の指標である)は、特に制限はしないが、力学特性及び成型性の観点から、0.1〜10dl/gであることが好ましい。極限粘度が0.1dl/g以上のポリケトンより構成されるポリケトン多孔膜は、強度が高く濾材としての使用において好適である。更に、極限粘度が0.1dl/g以上のポリケトンは、水及び種々の有機溶媒に易溶なオリゴマー成分の含有量が少ない。このようなポリケトンを成型して得られるポリケトン多孔膜は、不純物の混入が許されない濾材として、又は電池用若しくはコンデンサ用のセパレータとして好適に使用される。一方、極限粘度が10dl/g以下であるポリケトンは、製造コストの点で有利であり、また厚みの均一な多孔膜に製膜することが容易であるため実用面で有利である。ポリケトンの極限粘度は、0.5〜6dl/gであることがより好ましい。上記極限粘度は、以下の定義式:
【数1】

{式中、t及びTは、それぞれ、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール、及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質(すなわちポリケトン)質量値である。}に基づいて求められる値である。
【0050】
本発明の多孔膜に含有されるポリケトンの融点については特に制限はないが、ポリケトンの融点は高いほど高温環境での使用に有利である。ポリケトンの融点は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることが更に好ましく、240℃以上であることが最も好ましい。上記融点は、示差熱測定の昇温過程におけるポリケトンの融解による吸熱開始点とする。
【0051】
ポリケトン多孔膜の引張強度は、フィルター、電池又はコンデンサを製造する上で取扱性が良い、生産性が高いという観点から、2MPa以上であることが好ましく、2.5MPa以上であることがより好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。上記引張強度は、引張強度試験機を用いて破断強度として測定される値である。
【0052】
本発明のポリケトン多孔膜において、緻密層の厚みと非緻密層の厚みとの比が本発明所定の範囲内に保たれれば、緻密層の数及び位置は特に限定しない。例えば平膜状の場合は、緻密層が片側表面のみにあってもよく、両側表面にあってもよく、膜の内部にあってもよい。中空糸膜状の場合も、緻密層は外周側及び内周側のいずれにあってもよく、両側にあってもよく、また膜の内部にあってもよい。複数の緻密層が存在する場合、緻密層の厚みの総和と非緻密層の厚みの総和との比が、上述の範囲内であればよい。
【0053】
図7は、本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜のポリケトン部における緻密層の拡大断面を示す画像である。図7に示す緻密層は繊維状のポリケトンで構成されている。本発明のポリケトン多孔膜においては、ポリケトン部の緻密層が図7に示すような繊維状の組織であることができる。これにより、緻密層に孔を形成できる。
【0054】
緻密層が繊維状のポリケトン組織である場合、緻密層を構成する繊維状物の全数に対する、太さが0.5μm以下であるものの数の割合が、60%以上であることが好ましい。上記割合が60%以上である場合、濾材としての利用において、いわゆるスリップフロー効果が良好に生じ、流体の透過抵抗が小さくなる。また、電池及びコンデンサのセパレータとしての利用において、太い繊維状組織が少ないため、イオン等の透過抵抗が小さくなる。上記割合は、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。上記割合は、後述の手順でポリケトン多孔膜の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像を2値化し、画像処理を行う方法で算出される。
【0055】
ポリケトン多孔膜において、孔の部分は強度に寄与しないため、支持体となるポリケトンに応力・歪みが集中することになる。このため、ポリケトンのミクロ構造が強固な構造であることが好ましい。特に、結晶化度は重要なパラメータであり、この値が高いほど高強度、高寸法安定性、高耐熱性、及び高耐薬品性となる。よって、ポリケトンの結晶化度は、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。上記結晶化度(%)は、示差熱測定の昇温過程における融解の吸熱ピーク面積をΔH(J/g)、ポリケトン結晶の融解熱をΔH0(J/g)とすると、結晶化度(%)=ΔH/ΔH0×100で求められる。
【0056】
本発明のポリケトン多孔膜を非水系の濾材又は電池用若しくはコンデンサ用のセパレータとして用いる場合、吸湿率が低いことが好ましい。ここで吸湿率とは、ポリケトン多孔膜を105℃にて2時間オーブンで絶乾したときの質量をT0とし、その後、23℃、RH50%で24時間放置した後の質量をT1としたとき、吸湿率=(T1−T0)/T0×100(%)で表される値である。ポリケトン多孔膜の吸湿率が高いと、濾材として用いる場合は、水分自体が不純物となり、又は水分が濾過対象物の加水分解を引き起こし、更なる不純物を生成する恐れがある。また、ポリケトン多孔膜を電池用又はコンデンサ用のセパレータとして用いる場合は、水の電気分解によってガスが発生し、発生したガスが電池又はコンデンサの膨張を招来し、電極を劣化させ、電池又はコンデンサの性能の低下を引き起こす場合がある。よってポリケトン多孔膜の吸湿率は、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。
【0057】
本発明のポリケトン多孔膜は、本来の性能を妨げない範囲内で、無機フィラー、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、親水性高分子、タンパク吸着性物質等の、機能性物質を含んでもよい。具体的には、ポリケトン多孔膜は、機械的強度、耐衝撃性、及び耐熱性を上げるために、無機フィラーとしてガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、又はカーボンナノチューブ等を含んでもよい。また、ポリケトン多孔膜は、光及び酸化に対する安定性を向上させるために、光安定剤として紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を含んでもよく、酸化防止剤としてフェノール系、リン系、又は硫黄系の酸化防止剤等を含んでもよい。更に、ポリケトン多孔膜は、帯電防止剤として各種界面活性剤等を含んでもよい。また、親水性を上げるために、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コラーゲン等の親水性高分子等を含んでもよい。また、タンパク吸着性を上げるためにニトロセルロース等を含んでもよい。
【0058】
上記機能性物質の合計含有量は、ポリケトン多孔膜100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。該合計含有量が30質量部以下であれば、ポリケトン多孔膜の強度の低下、並びに機能性物質の脱落及び溶出が生じにくく好ましい。該合計含有量は、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0059】
ポリケトン多孔膜においては、必要に応じて、耐薬品性及び耐熱性を向上させる目的で、ポリケトンが三次元架橋処理されていてもよい。ポリケトンが三次元架橋されていることにより、溶媒に不溶化し、熱に対しての変形も改善される。三次元架橋構造としては特に制限は無く、例えば加熱処理によるアルドール縮合構造、ジアミン化合物による架橋構造(すなわちメチレン鎖で架橋されたピロール環構造、詳細は国際公開第2010/33027号パンフレットを参照)等が挙げられる。三次元架橋はポリケトン多孔膜を形成した後に行われることが好ましい。架橋反応度の好ましい範囲としては、晒される薬品及び溶媒、並びに温度により異なるが、ポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(25℃)中で3時間攪拌したとき、溶解前の質量に対する、溶解せずに固形分として残った質量の比率が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0060】
次に、本発明のポリケトン多孔膜の製造方法の一例について説明する。
【0061】
多孔膜の原料となるポリケトンの製造方法としては特に制限はなく、例えば国際公開第2003/055934号パンフレットに記載されるような公知の方法を用いて製造することができる。
【0062】
ポリケトン多孔膜は、湿式成型によって製造されることが好ましい。すなわち、上記公知の方法で得られたポリケトンを溶媒に溶解してポリケトンドープを作製し、これを望みの形に成型して、凝固、洗浄、及び乾燥を経て製造されることが好ましい。
【0063】
ポリケトンを溶解させる溶媒は特に限定されず、ヘキサフルオロイソプロパノール、プロピレンカーボネート、m−クレゾール等の有機溶媒、レゾルシン水溶液、塩化亜鉛、塩化亜鉛/塩化カルシウム、塩化亜鉛/塩化リチウム、塩化亜鉛/チオシアン酸カルシウム、塩化亜鉛/塩化カルシウム/塩化リチウム、塩化亜鉛/塩化カルシウム/チオシアン酸カルシウム等の金属塩水溶液等の公知の溶媒を用いることができる。ただし、緻密層の厚みと非緻密層の厚みとの比が本発明所定の範囲である多孔膜を製造するためには、前記溶媒の選択と、ポリケトンドープを相分離させる凝固液の組み合わせとが重要となる。詳しくは、溶媒としてはポリケトンを十分良好に溶解させる溶媒を選択し、凝固液としてはポリケトンドープを適切な速度で相分離させる非溶媒を選択することが重要である。上記の理由より、ポリケトン多孔膜を製造するために用いる溶媒としては、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、レゾルシン水溶液等が好ましい。以下、本発明のポリケトン多孔膜の製造方法の一例として、レゾルシン水溶液を用いた方法を説明する。
【0064】
レゾルシン水溶液中のレゾルシン濃度としては、ポリケトンの溶解性の観点より60〜80質量%が好ましく、より好ましくは65〜75質量%である。ポリケトン粉末は、該レゾルシン水溶液と混合され、加熱及び撹拌されて、必要に応じて減圧下又は加圧下で脱泡され、ポリケトンドープとなる。この際使用するポリケトンの極限粘度と、ドープ中のポリケトン濃度(以下ポリマー濃度ともいう)との組合せは、ポリケトン多孔膜の構造を維持する力学的強度、成形性、及び均一な溶解の確保の観点から、極限粘度が0.1〜10dl/gかつポリマー濃度が1〜50質量%の範囲での組合せが好ましく、極限粘度が0.5〜6dl/gかつポリマー濃度が3〜20質量%の範囲での組合せがより好ましい。上記組合せは、ポリケトンドープの粘度及びポリケトン多孔膜の構造を考慮しながら適宜決められる。特に、ポリマー濃度は最終的なポリケトン多孔膜の孔径に影響を与えるため、その調整は重要である。
【0065】
ポリケトン多孔膜がシート状の平膜である場合の製造方法の一例を挙げる。ポリケトンをシート状に成型する場合、比較的ドープ粘度が低い方が成形性において適している。この観点から、成形温度でのドープ粘度は10〜1000poiseであることが好ましい。ドープ粘度が10poise以上である場合、ドープが過度に流れやすくならず、フィルム形状を均一に留まらせることが容易であり、欠点が少ない平膜を形成できる。一方、ドープ粘度が1000poise以下である場合、ポリケトン多孔膜の厚みを均一にすることが容易である点で好ましい。ドープ粘度は50〜500poiseであることがより好ましい。上記ドープ粘度は、成型温度に保温した状態で、B型粘度計で測定される。
【0066】
平膜の成型方法としては、バッチ式ではアプリケータを用いてガラス板、金属板、プラスチックフィルム等の基材の上面に、ドープをシート状に流延する方法が挙げられる。連続式では、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター等の装置を用いて、走行する基材に連続的にポリケトンドープをシート状に塗布する方法、T−ダイ等からシート状にポリケトンドープを空気中へ押し出す方法等を用いることができる。塗布又は押し出しの際のドープ温度は、上記の好ましいドープ粘度にするために適宜調節されるが、通常は15〜90℃が好ましい。15℃以上の場合、ドープ粘度の増大を抑えて膜の厚みを容易に均一にできるとともに、ドープ中のレゾルシンの析出を回避できる。また90℃以下の場合、溶媒中の水が蒸発することによるドープの組成変化を回避でき、目的の構造制御が容易である。
【0067】
次いで、塗布された、又は空気中へ押し出されたシート状ポリケトンドープは、メタノール、水、又はそれらの混合溶媒等の、レゾルシンが溶解可能な凝固液に浸漬される。該凝固液にレゾルシンが所定量含まれていることは、溶媒の回収を考慮した場合に、安定した凝固液組成の管理が可能な点で好ましい。凝固液中の溶媒の組成及び凝固液の温度は、ポリケトン多孔膜の構造を制御するために重要な条件であり、溶媒組成との組合せも考慮して適宜選定される。レゾルシン水溶液をポリケトン溶解用溶媒として用いた場合では、メタノール、又はメタノールと水とを適切な比率で混合した溶媒を凝固液として用いることが好ましい。メタノールと水との混合溶媒の場合は、その混合質量比率がメタノール:水=0:100〜30:70であることが、本発明のポリケトン多孔膜の構造を構築する上で好ましい。凝固液のメタノールと水の質量比率が30:70、又はこれよりメタノールが少ない場合、得られるポリケトン多孔膜の緻密層と非緻密層との厚みを良好に制御できる。また、前記凝固液の温度は−20℃〜70℃であることが好ましい。凝固液温度が−20℃以上である場合、凝固工程での膜中へのレゾルシンの析出を回避でき、最終的なピンホールの形成を回避できる。凝固液温度が70℃以下である場合、膜の全体が緻密となってしまうことを回避できる。凝固液の温度は、0〜60℃であることがより好ましい。
【0068】
上述の方法により凝固した平膜は、凝固液等で更に洗浄され、必要に応じて膜に含まれる凝固液を他の溶媒で置換する。溶媒置換を行う目的は、凝固膜を乾燥する際に、乾燥の効率を高めること、及び、ポリケトン多孔膜の構造が乾燥時の収縮等により変形することを防止することである。ポリケトン多孔膜構造の変形を抑えたり、空隙率を高めるという観点では、凝固浴から置換する溶媒としては、水より表面張力の低い溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、ノルマルオクタノール等の低級又は高級のアルコール溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ベンゼン、トルエン等の低極性有機溶媒が好ましい。また、溶媒置換に用いる溶媒には、必要に応じて界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。更に、高い空隙率を有するポリケトン多孔膜を得るという点では、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ベンゼン、トルエン等の低極性有機溶媒が特に好ましい。
【0069】
凝固した平膜が水を含む場合、低極性溶媒への溶媒置換を円滑に行うために、水と低極性溶媒との両方と混ざりやすいアセトン等の溶媒で前もって溶媒置換を行ってもよい。凝固液から置換する溶媒としては、表面張力の小さい溶媒が好ましく、具体的にはトルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が好ましい。これら溶媒の中に極性の強い溶媒が含まれていると、ポリケトン多孔膜の構造の均一性を損なう傾向がある。そのため、置換回数を増やすこと、又は置換に使用する溶媒の純度を限りなく高くすることが重要である。置換に使用する溶媒の純度としては、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、限りなく100質量%に近い場合が最も好ましい。また、凝固膜を水で洗浄した場合は、水洗浄後のポリケトン凝固膜を必要に応じて、常圧又は加圧下で、60〜200℃の温水で処理することが好ましい。この処理は、凝固膜を乾燥する際に、孔の構造が乾燥時に収縮等により変形することを防止する効果がある。以上の処理は、溶媒及び凝固液の種類等により処理方法及びその必要性は異なるが、ポリケトン多孔膜の構造をコントロールし、所定の範囲内に調整するために重要な条件である。特にノルマルヘキサンの置換及び温水処理は、ポリケトン多孔膜の結晶化度を高め、機械的強度及び熱的安定性をもたらす点で好ましい。
【0070】
この平膜を、加熱ロールに接触させる方法、熱風を吹きかける方法、電熱ヒーターで非接触加熱して乾燥する方法等、又はこれらを組合せた方法等、公知の乾燥方法等で乾燥させ、平膜状ポリケトン多孔膜を得る。乾燥温度は、15〜200℃の範囲で、乾燥させる液体の種類により適宜選ばれる。また、必要に応じて、静電気の発生を防止する薬剤を乾燥前若しくは乾燥後、又はポリケトン多孔膜を巻き取ったり、重ねたりする前に付与してもよい。
【0071】
上述のようにして得た平膜状ポリケトン多孔膜を、必要に応じて延伸してもよい。延伸は1軸方向のみでしてもよいし、2軸方向でしてもよいが、全延伸倍率は5倍以下が好ましい。延伸倍率が5倍以下である場合、延伸時に平膜状ポリケトン多孔膜の破断を回避する点で有利である。延伸は、凝固液中でポリケトンドープを凝固させた直後に行ってもよいし、平膜状ポリケトン多孔膜の乾燥後に、必要ならば加熱して、行なってもよい。加熱延伸を実施する場合、延伸速度は1cm長あたり秒速0.5cm以下で行なうことが好ましい。ポリケトン多孔膜の孔を構成する繊維状組織は、多くの場合太さが1μm程度、又はそれ以下と非常に細く、空隙率の高い構造であるため、延伸速度は遅いことが好ましい。平膜状ポリケトン多孔膜の孔を扁平孔にする場合は、1軸方向の延伸で1.2〜5倍の延伸を行なうか、2軸方向の延伸において、全延伸倍率が5倍を超えない範囲で、一方の軸の延伸倍率を他方の軸の延伸倍率の1.2倍以上にすることが好ましい。
【0072】
次に、ポリケトン多孔膜が中空糸膜である場合の製造方法の一例を挙げる。中空糸膜の場合、比較的ポリケトンドープの粘度が高い方が中空形状の成形において適している。この観点から、成形温度でのドープ粘度は100〜5000poiseであることが好ましい。ドープ粘度が100poise以上である場合、ポリケトン中空糸膜の成型時に糸切れが生じにくく、連続して糸を作ることが容易になる。一方、ドープ粘度が5000poise以下である場合、内部の中空を作ることが容易であり好ましい。ドープ粘度は200〜4000poiseであることがより好ましく、300〜2000poiseであることが更に好ましい。押し出しの際のドープ温度は、上記の好ましいドープ粘度にするために適宜調節されるが、通常は20〜90℃が好ましい。20℃以上である場合、ドープ粘度の過度の増大を回避して膜の厚みを均一にすることができるとともに、ドープ中の溶質の析出を回避できる。また90℃以下である場合、ドープ中の溶媒が蒸発することによるドープの組成の変化を回避でき、目的の構造制御が容易になる。
【0073】
ポリケトン中空糸膜は、二重管オリフィス、C型オリフィス等の紡糸口金を用いて製造することができる。図8は、本発明の一態様におけるポリケトン多孔膜としての中空糸膜を形成するために用いる紡糸口金の模式図であり、円筒二重管オリフィスの断面構造例を示している。二重管オリフィス83を用いる場合、外側の輪状オリフィス81からはポリケトンドープを、内側の円状オリフィス82からは液体又は気体を、空気中へ吐出することが好ましい。内側の円状オリフィスからの吐出物は、中空糸膜形状の制御性の観点からは気体であることが好ましく、紡糸の安定性と多孔構造の制御の観点からは液体であることが好ましい。内側の円状オリフィスから気体を吐出する場合、該気体としては乾燥させた窒素が好ましい。内側の円状オリフィスから液体を吐出する場合、例えばポリケトン中空糸膜の内層側に緻密層を形成させる場合は、メタノール:水=0:100〜30:70の質量比である混合液を用いることが好ましい。また、ポリケトン中空糸膜の内層側に緻密層を形成させない場合は、メタノール:水=30:70〜0:100の質量比である混合液を用いることが好ましい。この場合、ポリケトン中空糸膜の厚み方向中央部、又は外層側に緻密層を形成させる必要がある。そのために、例えば後の凝固工程において、凝固液をメタノール:水=0:100〜30:70の質量比である混合液とすることができる。また、中空部の形状維持の点から、内側の円状オリフィスから流す液体又は気体は、0.01MPa以上の圧力をかけて吐出されることが好ましい。
【0074】
次いで、空気中へ押し出されたポリケトンドープから、乾式又は湿式でポリケトンを析出させることにより、凝固した微多孔構造が形成される。レゾルシン水溶液を溶媒とした場合、空気中へ押し出された、中空部に気体又は液体が充填されたポリケトンドープは、メタノール、水、又はそれらの混合溶媒等の、レゾルシンが溶解可能な凝固液に浸漬する。凝固液としては、平膜の場合と同様の凝固液が好適に用いられる。そして凝固した中空糸膜には、平膜と同様の方法で、洗浄、及び必要に応じた溶媒置換又は温水処理が行われる。乾燥処理は行っても行わなくてもよく、もし行う場合は平膜と同様の条件で乾燥が行われる。
【0075】
上述のようにして得たポリケトン中空糸膜を、必要に応じて延伸してもよい。延伸は1軸方向で行われ、延伸倍率は5倍以下が好ましい。5倍以下である場合、延伸時にポリケトン中空糸膜が破断せず好ましい。延伸は、凝固液中でポリケトンドープを凝固させた直後に行ってもよいし、ポリケトン中空糸膜の乾燥後に、必要ならば加熱して、行なってもよい。加熱延伸を実施する場合、延伸速度は1cm長あたり秒速0.5cm以下で行なうことが好ましい。ポリケトン多孔膜の孔を規定する繊維状組織は、多くの場合太さが1μm程度、又はそれ以下と非常に細く、空隙率の高い構造であるため、延伸速度は遅いことが好ましい。ポリケトン中空糸膜の孔を扁平孔にする場合は、1軸方向の延伸で1.2〜5倍の延伸を行なうことが好ましい。
【0076】
ポリケトンと不織布とを複合化する場合の複合化方法は、特に限定はしないが、バッチ式、又は連続式で、ポリケトン部と不織布とを、重ねて圧着させる方法及び加熱して融着させる方法が挙げられる。また、不織布の片面又は両面にポリケトンドープを塗布した後、上述の方法で凝固、洗浄、及び必要に応じて溶媒置換又は温水処理をした後、乾燥させる方法が挙げられる。更に、基板又は不織布の上にポリケトンドープを塗布して、その上に不織布を適度な圧力で重ねた後、上述の方法で凝固、洗浄、及び必要に応じて溶媒置換又は温水処理をした後、乾燥させる方法もある。これら方法は、不織布の内部にまでポリケトン部が侵入し、ポリケトン部と不織布との接着強度が高くなるため、好ましい。不織布の片面にポリケトンドープを塗布する場合は、比較的ドープの粘度が高い方が成形において適しており、成形温度でのドープ粘度は100〜5000poiseであることが好ましい。ドープ粘度が100poise以上である場合、不織布の内部までドープが浸透し過ぎることがなく、ポリケトン部の膜厚が均一になる。一方、5000poise以下である場合、不織布の内部にドープを良好に浸透させることができるため、不織布とポリケトンとが複合化されやすく、ドープの塗布状態が均一であり、不織布複合ポリケトン多孔膜の厚みが均一になる。ドープ粘度は、200〜2000poiseであることがより好ましい。
【0077】
ポリケトン多孔膜に所望の機能を付与するという観点で、ポリケトン多孔膜を構成するポリケトンの少なくとも1つの水素原子を他の基に置換する場合、置換方法としては、例えば電子線、γ線、プラズマ等の照射によってポリケトンにラジカルを発生させた後、望みの機能を発現する官能基を有する反応性モノマーを付加させる方法が挙げられる。反応性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸及びそれらの誘導体、アリルアミン、p−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。上記の置換処理は、ポリケトンを多孔膜に成型する前に行ってもよいし、多孔膜に成型した後に行ってもよいが、成型性の観点から、多孔膜に成型した後に行う方が好ましい。
【0078】
また、下記一般式(3):
【0079】
【化7】

【0080】
{式中、R1、R2、及びR3は、各々独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造を含むポリケトンを製造する場合、任意の方法が可能であるが、ポリケトンと1級アミンとの脱水縮合反応によって、上記構造を含むポリケトンを製造することが、簡便性の面で好ましい。1級アミンとしては、エチルアミン、1−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−ヘキシルアミン、1−ドデシルアミン、モノエタノールアミン、末端アミノ基含有ポリエチレングリコール、エチレンジアミン、プロパンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−メチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロパンジアミン、4−アミノピリジン、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルファニル酸、スルファニル酸ナトリウム、グリシン、グリシンメチルエステル、O−ホスホエタノールジアミン、システイン、システアミン、メチオニン、メチオニンメチルエステル、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記脱水縮合反応は、ポリケトンを多孔膜に成型する前に行ってもよいし、多孔膜に成型した後に行ってもよいが、成型性の観点から、多孔膜に成型した後に行う方が好ましい。
【実施例】
【0081】
次に、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
実施例及び比較例における各測定値の測定方法は次のとおりである。
【0083】
(1)ポリケトンの極限粘度
ポリケトンの極限粘度[η](単位dl/g)は、次の定義式:
【0084】
【数2】

【0085】
{式中、t及びTは、それぞれ、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール、及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質(すなわちポリケトン)質量値である。}に基づいて求められる値である。
【0086】
(2)最大孔径
Porous Materials,Inc.社製のパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」、表面張力15.6dyn/cm)を用いて、ASTM F316−86又はJIS K3832に準拠し、バブルポイント法により最大孔径(μm)を測定した。
【0087】
(3)緻密層厚みと非緻密層厚みとの比
ポリケトン多孔膜をエタノールと共にゼラチンカプセル中に封入し、液体窒素に浸漬冷却してエタノールを凍結させた状態で割断し、その厚み方向断面切片を調製した。走査型電子顕微鏡(JSM−6700F:日本電子製)を用いて、得られた切片の倍率500〜5000倍の画像を撮影した。撮影したネガ画像を、画像解析装置(IP1000−PC:旭化成社製)を用いて、以下の方法で解析した。スキャナー(JX−330:シャープ社製)を使用して、ネガ画像を白黒256階調(ガンマ補正値は2.2)で取り込んだ。取り込み領域は撮影倍率に応じて選択した。取り込んだ256階調の画像に対し、2値化処理を行った。この際に設定したパラメータは、(1)しきい値(=自動)、(2)シェーディング補正処理(=有り)、(3)穴埋め処理(=有り)、(4)ガンマ補正処理(=補正値γ=2.2)である。続いて得られた2値化画像より、面積率計測を行った。具体的には、膜厚方向に亘ってポリケトン及び該ポリケトンが規定する空隙(孔)によって形成される部分を計測エリアとし、該計測エリアの膜厚方向距離の50分の1を区間ピッチとした。各区間で、明部(ポリケトン部に対応)及び暗部(空隙に対応)の面積を計測し、明部と暗部との合計面積を100%としたときの明部の面積比率を算出した。明部の面積比率が80%以上の区間を緻密層とし、80%より低い区間を非緻密層とした。同様の手順で5視野計測し、緻密層とされた区間の数の算術平均と、非緻密層とされた区間の数の算術平均との比を、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比として算出した。
【0088】
(4)中空糸膜の内径及び外径
中空糸膜の長手方向に垂直な断面を任意の5か所について光学顕微鏡で撮影し、それぞれの断面画像において任意の2点の内径及び外径を計測し、計10点の数平均値として得られる中空糸膜の平均内径r(μm)及び平均外径R(μm)をそれぞれ内径及び外径とした。
【0089】
(5)膜厚
・平膜の場合
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEACOCK No.25)にて、ポリケトン多孔膜の膜厚を、格子状に5mm間隔で9箇所(3点×3点)選んだ測定点にて測定し、数平均値として得られる平均厚みLp(μm)を膜厚とした。
・中空糸膜の場合
(4)で求めた平均内径r及び平均外径Rより、(R−r)/2に従って得られる中空糸膜の平均厚みLh(μm)を膜厚とした。
【0090】
(6)空隙率
・平膜の場合
5cm×5cmの試験片を切り取り、その質量G(g)を量った。(5)で求めた平均厚みLp(μm)、及び、質量平均密度ρ(g/cm3)から、以下の計算式:
空隙率(%)={1−G/52/ρ/(Lp×10-4)}×100
{式中の質量平均密度ρは、質量G、ポリケトンの質量密度、不織布を構成する繊維におけるポリエステル及びポリプロピレンの質量密度、並びに不織布の目付より算出される質量平均密度である。}に従って空隙率を算出した。なお、ポリケトン、ポリエステル、及びポリプロピレンの質量密度は、それぞれ1.3g/cm3、1.4g/cm3、及び0.9g/cm3とした。
・中空糸膜の場合
糸長5cmの試験片を10本切り取り、その総質量G(g)を量った。(4)で求めた平均外径R(μm)と平均内径r(μm)とから、ポリケトンの質量密度を1.3g/cm3として、以下の計算式:
空隙率(%)=[1−G/10/1.3/5/{(R2−r2)×10-8×π/4}]×100
より中空糸膜の空隙率を算出した。
【0091】
(7)中空率
(4)で求めた平均内径r及び平均外径Rを用いて、下記計算式:
中空率(%)=(r2/R2)×100
より算出した。
【0092】
(8)緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合
(3)の方法で得た厚み方向断面切片を、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍で撮影した。得られた画像からポリケトン部の緻密層における繊維状組織の太さ(すなわち繊維径)と割合とを評価した。(3)と同様の方法で2値化処理を行った後、更に収縮回数5〜10回で収縮分離処理を行い、組織の長手方向を主軸方向長、長手方向に直角な方向を主軸方向幅としてそれぞれの値を求めた。主軸方向長を主軸方向幅で除した値が1.5より低い測定点、及び主軸方向長が0.1μmより小さい測定点はノイズと判断して除外した。上記測定を任意の5視野で行った後に、全測定点数に対する、主軸方向幅が0.5μm以下である測定点数の割合を100分率で算出した。得られた値を、ポリケトン部の緻密層における繊維状組織に対する、太さが0.5μm以下の繊維状組織の割合(%)とした。
【0093】
(9)ポリケトンの融点・結晶化度
ポリケトン多孔膜5mgを窒素雰囲気下でアルミニウムパンに封入し、パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1(商品名)を用いて下記条件で測定した。
サンプル重量:5mg
雰囲気:窒素、窒素流量=100mL/分
温度条件:(i)25℃で1分間保持
(ii)25℃→300℃(昇温速度=10℃/分)
上記(ii)の昇温過程におけるポリケトンの融解による吸熱ピークの立ち上がりの温度をポリケトンの融点とした。また、ポリケトンの結晶化度は上記吸熱ピークの大きさΔH(J/g)から下記数式により求めた。
ポリケトンの結晶化度(%)=ΔH/ΔH0×100
{ΔH0はポリケトンの融解熱の理論値(J/g)であり、ポリケトンの化学構造によって値は異なる。例えば、1−オキソトリメチレン繰り返し単位のみから成るポリケトンの場合、ΔH0=225J/gである。}
【0094】
(10)引張強度
横型引張強度試験機(熊谷理機工業製)を用い、15mm幅の短冊状に切り出したサンプルについて、チャック間距離:80mm、伸長速度:80m/minの条件で5点の破断強度を測定し、その数平均を引張強度(MPa)とした。
【0095】
(11)単位厚み当たりの圧力損失
・平膜の場合
ポリケトン多孔平膜を円形に打ち抜き、ステンレス製ホルダ(アドバンテック製、有効濾過面積3.5cm2)に平膜を固定し、1.4mL/min/cm2で蒸留水を全量濾過してその時の圧力損失を測定し、厚み(μm)で割って、単位厚み当たりの圧力損失(kPa/μm)を算出した。
・中空糸膜の場合
中空糸膜をn本束ね(nは5〜10)、有効濾過長5cmとなるように、両端をエポキシ樹脂で包埋・切削して中空糸膜ミニモジュールを作製して評価を行った。該ミニモジュールの一端を完全に封止し、1.4mL/min/cm2で蒸留水を全量濾過してその時の圧力損失を測定し、厚み(μm)で割って単位厚み当たりの圧力損失(kPa/μm)を算出した。ここで、有効濾過面積(cm2)は(3)で求めた平均内径r(μm)を用いて下記式により算出する。
有効濾過面積(cm2)=n×5×π×r×10-4
【0096】
(12)粒子捕集効率
・平膜の場合
平膜状のポリケトン多孔膜を濾材として、平均粒子径50nm、粒子濃度10ppmのポリスチレンラテックス水分散液を、差圧200kPa、有効濾過面積3.5cm2で10分間全量濾過した。濾液の粒子濃度C(ppm)を測定し、下記式より粒子捕集効率(%)を算出した。
粒子捕集効率(%)=(1−C/10)×100
【0097】
・中空糸膜の場合
中空糸膜をn本束ね(nは5〜10)、有効濾過長5cmとなるように、両端をエポキシ樹脂で包埋・切削して中空糸膜ミニモジュールを作製して評価を行った。該ミニモジュールの一端を完全に封止し、平膜状の場合と同様の条件のポリスチレンラテックス水分散液を差圧200kPaで10分間全量濾過を行った。濾液の粒子濃度C(ppm)を測定し、上記式より粒子捕集効率(%)を算出した。
【0098】
なおポリスチレンの濃度は、紫外可視分光光度計(日本分光:V−650)を用い、濃度既知のポリスチレンラテックス水分散液から検量線を作成し、測定した。
【0099】
(14)耐電圧
JIS C2110に準拠して、23℃の空気中で測定した。測定結果を(4)で測定したサンプルの平均厚みで割り、1mm厚み換算として値を記した。
【0100】
[実施例1]
エチレンと一酸化炭素とが完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトン(ポリマー構造略称:ECO)を、ポリマー濃度10.7質量%で65質量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0101】
この50℃のドープを、アプリケータを用いてドープ厚が100μmとなるようにガラス板上にシート状に塗布した。このシート状ドープを25℃の水中に10分間浸漬して凝固させた後、メタノールで洗浄し、60℃で乾燥を行い、平膜状のポリケトン多孔膜を得た。
【0102】
得られたポリケトン多孔膜の最大孔径は0.06μm、空隙率は25%、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は25:75であった。また、膜厚は14μm、ポリケトン部の緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は82%、ポリケトンの融点は248℃、ポリケトンの結晶化度は67%、引張強度は12.5MPaであった。ポリケトン多孔膜にはピンホールのような欠点となる大きな孔は観察されず、均一であった。
【0103】
上記ポリケトン多孔膜を用いて、濾過膜としての性能を評価した。水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、49.2kPa/μmであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は99%であった。このように、実施例1で得られたポリケトン多孔膜は濾材として非常に優れていた。上記の結果を表1に示す。
【0104】
[実施例2]
凝固、洗浄後に、アセトン、ノルマルヘキサンの順で溶媒置換を行い、乾燥温度を50℃にしたこと以外は実施例1と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0105】
[実施例3]
凝固液及び洗浄溶媒として、メタノールの代わりにメタノール/水の質量比25/75の混合液を用いたこと以外は実施例2と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0106】
[実施例4]
ドープ厚が40μmとなるようにガラス板上にシート状に塗布したこと以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0107】
[実施例5]
ドープ厚が500μmとなるようにガラス板上にシート状に塗布したこと以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0108】
[実施例6]
凝固液としてメタノール/水の質量比25/75の混合液の代わりにメタノール/水/レゾルシンの質量比22.5/67.5/10の混合液を用いたこと以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0109】
[実施例7]
ポリマー濃度を9.2質量%としたこと以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0110】
[実施例8]
ポリマー極限粘度を4.9dl/gとし、ポリマー濃度を9.2質量%とした以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0111】
[実施例9]
洗浄溶媒を水とし、洗浄後のポリケトン膜を該ポリケトン膜が全て浸かるに十分な量の水が入ったオートクレーブ中で、150℃で1時間加熱処理した後、他の溶媒に置換しないで80℃で乾燥させた以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0112】
[実施例10]
エチレンと一酸化炭素との完全交互共重合体の代わりに、エチレン6モル%分をプロピレンで置き換えた3元共重合体(極限粘度2.0dl/g)のポリケトン(ポリマー構造略称:EPCO)を用い、ポリマー濃度12質量%でドープを作製した以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0113】
[実施例11]
エチレンと一酸化炭素との完全交互共重合体の代わりに、エチレン4モル%分をスチレンで置き換えた3元共重合体(極限粘度1.8dl/g)のポリケトン(ポリマー構造略称:EStCO)を用い、ポリマー濃度12質量%でドープを作製した以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0114】
[実施例12]
エチレンと一酸化炭素との完全交互共重合体の代わりに、プロピレンと一酸化炭素との完全交互共重合体(極限粘度1.6dl/g)のポリケトン(ポリマー構造略称:PCO)を用い、ポリマー濃度12質量%でドープを作製した以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0115】
[実施例13]
平均繊維経16μmのポリエチレンテレフタレート繊維から成る、目付10g/m2の未結合長繊維ウェブ繊維層(不織布層A)が、平均繊維径1.6μmの極細ポリエチレンテレフタレート繊維からなる目付5g/m2のランダムウエブ極細繊維層(不織布層B)の上下に熱圧着した、A/B/A型積層不織布を用い、下記の方法でポリケトン多孔膜を作製した。
【0116】
実施例3と同じ条件で作製した50℃のポリケトンドープを、アプリケータを用いて、ドープ厚が35μmとなるように上記不織布の片面に塗布した。このポリケトンドープ/不織布複合体を、実施例3と同じ条件で凝固、洗浄、及び乾燥して、ポリエステル不織布複合ポリケトン多孔膜を得た。このポリケトン多孔膜の全質量に対するポリケトン質量割合は11質量%であった。
【0117】
このポリケトン多孔膜の引張強度は32MPaであった。実施例3のポリケトン多孔膜の引張強度は5.1MPaであるため、本実施例のポリケトン多孔膜は引張強度において特に優れていると言える。本実施例のポリケトン多孔膜の最大孔径は0.17μm、空隙率は49%、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は17:83であった。また、膜厚は48μm、ポリケトン部の緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は91%であった。本実施例のポリケトン多孔膜を用いて、水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、2.3kPa/μmであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は96%であった。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0118】
[実施例14]
平均繊維経11μmのポリプロピレン繊維から成る、目付8g/m2の未結合長繊維ウェブ繊維層(不織布層A)が、平均繊維径1.6μmの極細ポリプロピレン繊維からなる目付1g/m2のランダムウエブ極細繊維層(不織布層B)の上下に熱圧着した、A/B/A型積層不織布を用い、下記の方法でポリケトン多孔膜を作製した。
【0119】
実施例3と同じ条件で作製した50℃のポリケトンドープを、アプリケータを用いて、ドープ厚が35μmとなるように上記不織布の片面に塗布した。このポリケトンドープ/不織布複合体を、実施例3と同じ条件で凝固、洗浄、及び乾燥してポリプロピレン不織布複合ポリケトン多孔膜を得た。このポリケトン多孔膜の全質量中のポリケトン質量割合は19質量%であった。
【0120】
このポリケトン多孔膜の引張強度は22MPaであった。本実施例のポリケトン多孔膜の最大孔径は0.16μm、空隙率は52%、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は16:84であった。また、膜厚は41μm、ポリケトン部の緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は91%であった。本実施例のポリケトン多孔膜を用いて、水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、1.8kPa/μmであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は96%であった。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0121】
[実施例15]
平均繊維経16μmのポリエステルフィラメントから成る、目付3.3g/m2の未結合長繊維ウェブ繊維層(不織布層A)が、平均繊維径1.6μmの極細ポリエステル繊維からなる目付1.4g/m2のランダムウエブ極細繊維層(不織布層B)の上下に熱圧着した、A/B/A型積層不織布を用い、下記の方法でポリケトン多孔膜を作製した。
【0122】
実施例3と同じ条件で作製した50℃のポリケトンドープを、アプリケータを用いて、ドープ厚が25μmとなるように上記不織布の片面に塗布した。このポリケトンドープ/不織布複合体を、実施例3と同じ条件で凝固、洗浄、及び乾燥してポリエステル不織布複合ポリケトン多孔膜を得た。このポリケトン多孔膜の全質量中のポリケトン質量割合は33質量%であった。
【0123】
このポリケトン多孔膜の引張強度は21MPaであった。本実施例のポリケトン多孔膜の最大孔径は0.17μm、空隙率は62%、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は17:83であった。また、膜厚は48μm、ポリケトン部の緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は90%であった。本実施例のポリケトン多孔膜を用いて、水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、2.1kPa/μmであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は95%であった。本実施例のポリケトン多孔膜の性能を表1に示す。
【0124】
[比較例1]
エチレンと一酸化炭素とが完全交互共重合した極限粘度3.9dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度8.5質量%で塩化亜鉛/塩化カルシウム=22/40質量比の62質量%金属塩水溶液に添加し、80℃で2時間、90℃で1時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0125】
アプリケータを用いて、この90℃のドープをドープ厚が500μmとなるようにガラス板上に塗布した。これを、−20℃のメタノールに10分間浸漬して凝固させた後、2℃の水に10分間浸漬した。続いて0.1質量%塩酸で洗浄し、次いで水で洗浄した。続いてアセトン、tert−ブタノールの順で溶媒置換を行った。得られた平膜を液体窒素で凍結後、0.01Paの減圧下で10分間の乾燥を行った。続いて160℃で20秒間艇長熱乾燥を行い、平膜状のポリケトン多孔膜を得た。
【0126】
得られたポリケトン多孔膜の最大孔径は4.2μm、空隙率は45%、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は10:90であった。また、膜厚は502μm、ポリケトン部の緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は14%、引張強度は24MPaであった。ポリケトン多孔膜にはピンホールのような欠点となる大きな孔は観察されなかった。
【0127】
上記ポリケトン多孔膜を用いて、濾過膜としての性能を評価した。水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、0.10kPa/μmであり良好であった。しかし、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は3%であり、満足の行く値ではなかった。上記の結果を表1に示す。
【0128】
[比較例2]
エチレンと一酸化炭素とが完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度8.5質量%で塩化亜鉛/塩化カルシウム=22/40質量比の62質量%金属塩水溶液に添加し、80℃で2時間、90℃で1時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0129】
アプリケータを用いて、この90℃のドープをドープ厚が100μmとなるようにガラス板上に塗布した。これを、25℃の水に10分間浸漬して凝固させた後、0.1質量%塩酸で洗浄し、次いで水で洗浄した。得られた平膜を105℃で60分間の乾燥を行い、平膜状のポリケトン多孔膜を得た。
【0130】
得られたポリケトン多孔膜の最大孔径は今回用いた測定装置では計測できず、0.015μmより低いことが示唆された。空隙率は2%であり、非緻密層は観測されなかった。また、膜厚は9μm、ポリケトン部の緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は14%、引張強度は24MPaであった。ポリケトン多孔膜にはピンホールのような欠点となる大きな孔は観察されなかった。上記ポリケトン多孔膜は、200kPaでは水及びポリスチレンラテックス水分散液を全く透過せず、圧力損失測定及び粒子捕捉効率の測定が不可能であった。
【0131】
[比較例3]
凝固液としてメタノール/水の質量比40/60の混合液を用いたこと以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。上記の結果を表1に示す。
【0132】
[比較例4]
ドープ厚が150μmとなるようにガラス板上に塗布し、かつ洗浄溶媒を水とし洗浄後のポリケトン多孔膜を該ポリケトン多孔膜が全て浸かるに十分な量の80℃の水が入った浴中で1時間加熱処理した後、他の溶媒に置換しないで80℃で乾燥させた以外は実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。上記の結果を表1に示す。
【0133】
[実施例16]
図8に示すような、円筒二重管オリフィスを用い、25℃に保温した二重管の外側の輪状オリフィス81から実施例3で調製したドープを吐出し、また二重管内側の円状オリフィス82からは0.15MPaに加圧した25℃のメタノール/水の同質量混合液を吐出した。なお本実施例では、図8中の外外径D1=0.8mm、外内径D2=0.4mm、内外径D3=0.2mmのサイズの二重管オリフィスを用いた。オリフィスから吐出されたドープは、一定速度で引き取られながら、10mmのエアギャップを経て25℃、メタノール/水の質量比25/75の混合液からなる凝固液に入り、凝固糸となった。得られたポリケトン凝固糸をメタノール/水の質量比25/75の混合液で洗浄した後、かせに巻き取った。続いて、かせに巻いたままアセトンで置換して、更にノルマルヘキサンで置換した後、50℃で乾燥させて中空糸膜を得た。
【0134】
得られた中空糸膜の膜厚は83μm、外径は469μm、中空率は42%、最大孔径は0.16μm、空隙率は69%であった。緻密層は最外層に存在し、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は10:90、緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は96%、引張強度は5.2MPaであった。ポリケトン多孔膜にはピンホールのような欠点となる大きな孔は観察されず、均一であった。
【0135】
上記ポリケトン中空糸膜を用いて濾過膜としての性能を評価した。水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、8.7kPaであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は96%であった。このように、実施例1で得られたポリケトン多孔膜は濾材として非常に優れていた。上記の結果を表2に示す。
【0136】
[実施例17]
図8に示すような、円筒二重管オリフィスを用い、25℃に保温した二重管の外側の輪状オリフィス81から実施例3で調製したドープを吐出し、また二重管内側の円状オリフィス82からは0.15MPaに加圧した25℃のメタノール/水の質量比25/75の混合液を吐出した。なお本実施例では、図8中の外外径D1=0.6mm、外内径D2=0.5mm、内外径D3=0.4mmのサイズの二重管オリフィスを用いた。オリフィスから吐出されたドープは、一定速度で引き取られながら、10mmのエアギャップを経て25℃、メタノール/水の同質量混合液からなる凝固液に入り、凝固糸となった。得られたポリケトン凝固糸をメタノール/水の同質量混合液で洗浄した後、かせに巻き取った。続いて、かせに巻いたままアセトンで置換して、更にノルマルヘキサンで置換した後、50℃で乾燥させて中空糸膜を得た。
【0137】
得られた中空糸膜の膜厚は36μm、外径は220μm、中空率は45%、最大孔径は0.16μm、空隙率は66%であった。緻密層は最内層に存在し、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は17:83、緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は95%、引張強度は5.1MPaであった。ポリケトン多孔膜にはピンホールのような欠点となる大きな孔は観察されず、均一であった。
【0138】
上記ポリケトン中空糸膜を用いて濾過膜としての性能を評価した。水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、10.0kPaであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は97%であった。このように、実施例1で得られたポリケトン多孔膜は濾材として非常に優れていた。上記の結果を表2に示す。
【0139】
[実施例18]
ポリマー濃度を12質量%とした以外は実施例17と同じ条件でポリケトン中空糸膜を作製した。上記の結果を表2に示す。
【0140】
[比較例5]
凝固液と洗浄液とをメタノール/水の質量比60/40の混合液にした以外は、実施例16と同じ条件でポリケトン中空糸膜を作製した。
【0141】
得られた中空糸膜の膜厚は96μm、外径は469μm、中空率は37%、最大孔径は0.25μm、空隙率は80%であった。緻密層は最外層に存在し、緻密層厚みと非緻密層厚みとの比は0.5:99.5、緻密層における太さ0.5μm以下の繊維状組織の割合は95%、引張強度は1.3MPaであった。ポリケトン多孔膜にはピンホールのような欠点となる大きな孔は観察されず、均一であった。
【0142】
上記ポリケトン中空糸膜を用いて濾過膜としての性能を評価した。水の濾過速度1.4mL/min/cm2の時の単位厚み当りの圧力損失を測定したところ、0.2kPaであった。また、平均粒径0.05μmのポリスチレンラテックス水分散液を10分間濾過したところ、粒子捕集効率は14%であり、満足の行く値ではなかった。上記の結果を表2に示す。
【0143】
[実施例19]
実施例3で得られたポリケトン多孔膜をドライアイスで冷やしながら200kGyの電子線を数秒間照射して、ラジカル化ポリケトン多孔膜を作製した。窒素バブリングによって溶存酸素を除去した5質量%ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液に、上記ラジカル化ポリケトン多孔膜を窒素雰囲気下、60℃で3時間浸漬させた。次いで、水、アセトンの順でよく洗浄した後60℃で乾燥して、4級アンモニウム化ポリケトン多孔膜を得た。上記4級アンモニウム化ポリケトン多孔膜は非常に親水性であり、元の構造及び流量−圧力損失特性を維持したままであった。更に、前記ポリケトン多孔膜は優れた陰イオン交換能を有していた。
【0144】
[実施例20]
120℃の10質量%グリシンメチルエステル/酢酸懸濁液に、実施例3で得られたポリケトン多孔膜を5分間浸漬させた。次いでポリケトン多孔膜を取り出して80℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸漬させた。次いでポリケトン多孔膜を取り出して水、メタノール、アセトンの順でよく洗浄した後60℃で乾燥して、N−(カルボキシメチル)ピロール成分含有ポリケトン多孔膜を作製した。上記カルボン酸化ポリケトン多孔膜は非常に親水性であり、元の構造及び流量−圧力損失特性を維持したままであった。更に、前記ポリケトン多孔膜は優れた陽イオン交換能を持っていた。
【0145】
[実施例20、比較例6及び比較例7]
実施例3、比較例3、及び比較例4で得られたポリケトン多孔膜のそれぞれをセパレータとして用い、単層ラミネート型のリチウムイオン電池を一般的な方法で作製し、初期のサイクル特性、及びセパレータの抵抗の評価を行った。正極には、アルミ箔上にリチウムコバルト酸/アセチレンブラック/ポリフッ化ビニリデン=89/5/6(質量比)の組成物を塗工したもの(面積が14mm×21mm、厚みが83μm)を用いた。負極には、銅箔上にメソカーボンマイクロビーズ/アセチレンブラック/ポリフッ化ビニリデン=93/2/5(質量比)の組成物を塗工したもの(面積が15mm×21mm、厚みが83μm)を用いた。電解液としては、エチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート=30/70(質量比)の溶液に1モル/Lの濃度で六フッ化リン酸リチウムを溶解したものを用いた。温度:25℃、充電:0.2C、4.2V、CCCV 8h、放電:0.2C、2.7V、CCの条件で初期サイクル特性評価を行った。1サイクル目及び3サイクル目の充放電容量及び効率の結果を表3に示す。これらの結果から、3サイクル目の充放電効率はいずれも99%程度で高いことがわかった。また、充放電カーブからも短絡等の異常は見られず、優れたリチウムイオン電池が作製されていることがわかった。次いで、温度:25℃、周波数:0.1〜20,000Hz、振幅:10mVの条件で交流インピーダンス特性の評価を行った。表3に20,000Hzの抵抗値を示す。該抵抗値が小さいほどセパレータが低抵抗であり、出力性能に優れることを示す。実施例3及び比較例3のポリケトン多孔膜を用いた例では、0.5Ω以下と低抵抗であったが、比較例4のポリケトン多孔膜を用いた例では高い値を示した。また、AC/DC耐電圧試験器 TW−5110ADLP(多摩電測株式会社製)を用い、JIS C 2110−1に準じて、23℃、相対湿度50%の環境下で、それぞれのポリケトン多孔膜の耐電圧を測定した。結果を表3に示す。実施例3及び比較例4のポリケトン多孔膜を用いた例では1.5V以上の耐電圧であり高い絶縁性を示したが、比較例3のポリケトン多孔膜を用いた例では耐電圧が低い結果であった。したがって、実施例3のポリケトン多孔膜を用いた例は、高絶縁性と低抵抗とが両立された優れた性能を示した。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のポリケトン多孔膜は、ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性とを有するとともに、高い空隙率、及び緻密層と非緻密層との組合せによる特定多孔構造を有するため、フィルター濾材、及び電池、コンデンサ等のセパレータとして有用である。該フィルター濾材は、水処理用、メンブレンバイオリアクタ用、工業用液体濾過用、脱気用、気体除塵用、ケミカルフィルター用、及び医療用の濾過フィルターとして有用であり、該セパレータは、リチウムイオン二次電池用セパレータ、及び、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のコンデンサ用セパレータとして有用である。更に、該ポリケトン多孔膜は、イムノクロマトグラフィー展開相及び細胞培養足場材としての利用も可能である。
【符号の説明】
【0151】
11 緻密層
12 非緻密層
13 ポリケトン多孔膜表面
21 ポリケトン部
22 ポリエステル繊維部
23 ポリケトン部
31 中空糸膜
32 中空糸膜断面
33 空隙
41,51,61 ポリケトン部
42,52 不織布部
53,63 複合部
81 輪状オリフィス
82 円状オリフィス
83 二重管オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素と1種類以上のオレフィンとの共重合体であるポリケトンを10〜100質量%含むポリケトン多孔膜であって、下記条件(1)〜(3):
(1)ポリケトン多孔膜の最大孔径が1μm以下であること;
(2)ポリケトン多孔膜の空隙率が5〜90%であること;及び
(3)ポリケトン多孔膜が、膜厚方向に亘ってポリケトンのみによって形成されているポリケトン部を有し、該ポリケトン部は、ポリマー充填比率80%以上を有する緻密層と、ポリマー充填比率80%未満を有する非緻密層とを有し、該緻密層の厚みT1と該非緻密層の厚みT2との比T1:T2が1:99〜50:50であること;
を満足する、ポリケトン多孔膜。
【請求項2】
前記ポリケトンが、下記一般式(1):
【化1】

{式中、Rは、置換又は非置換の、炭素数2〜20の炭化水素基である。}で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項3】
前記ポリケトンを構成する繰り返し単位に対する、下記式(2):
【化2】

で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位の割合が70モル%以上である、請求項1又は2に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項4】
前記一般式(1)中、Rが、水素、ハロゲン、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む、請求項2又は3に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項5】
前記ポリケトンを構成する繰り返し単位に対する、前記一般式(1)で表される繰り返し単位であってRが水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む繰り返し単位の割合が0.1〜30モル%の範囲である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項6】
前記ポリケトンが、下記一般式(3):
【化3】

{式中、R1、R2、及びR3は、各々独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、エーテル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、アルコキシシリル基、及びシラノール基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造を30質量%以下の量で含む共重合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項7】
前記一般式(3)中、R1及びR2が共に水素である、請求項6に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項8】
前記ポリケトンと複合化された少なくとも1つの不織布を更に含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項9】
前記不織布が、熱可塑性合成繊維から成り、そして5〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と0.5〜4μmの繊維径を有する不織布層(B)とが、A/B/A型又はA/B型で複合一体化されたものである、請求項8に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項10】
平膜の形態である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項11】
長手方向に貫通した1つ以上の空隙を有する中空糸膜である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜を含む、濾過用フィルター。
【請求項13】
水処理用フィルター、メンブレンバイオリアクタ用フィルター、工業用液体濾過用フィルター、脱気用フィルター、気体除塵用フィルター、ケミカルフィルター用フィルター、ガス分離用フィルター又は医療用フィルターである、請求項12に記載の濾過用フィルター。
【請求項14】
請求項10に記載のポリケトン多孔膜を含む、リチウムイオン二次電池用セパレータ。
【請求項15】
請求項10に記載のポリケトン多孔膜を含む、コンデンサ用セパレータ。
【請求項16】
前記コンデンサが、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、又はリチウムイオンキャパシタである、請求項15に記載のコンデンサ用セパレータ。
【請求項17】
請求項10に記載のポリケトン多孔膜を含む、イムノクロマトグラフィー用展開相。
【請求項18】
請求項10に記載のポリケトン多孔膜を含む、細胞培養用足場材。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76024(P2013−76024A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217713(P2011−217713)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】