説明

ポリシラザンを基剤とする親水性被覆

本発明は、一または数種のポリシラザンおよびイオン系試薬またはイオン系試薬の混合物を含む、表面用親水性被覆に関する。ポリシラザンは、特に、式1(SiR’R”−NR”)n−(1)のポリシラザンであり、式中、R’、R”、R”は、同一でも、異なっていてもよく、水素または有機または有機金属基であり、nは、ポリシラザンの数平均分子量が150〜150000g/モルになるような値である。好ましい実施態様では、ポリシラザンはペルヒドロポリシラザン(R’=R”=R'''=H)である。イオン系試薬は、好ましくはカルボン酸、特にヒドロキシカルボン酸、の塩、あるいは陽イオン系または陰イオン系シラン、もしくはオリゴマーまたは重合体である。本発明は、上記親水性被覆の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性を増加するためのイオン系試薬と組み合わせた、ポリシラザンを基剤とする、透明で永久的に親水性の被覆に関するものである。
【背景技術】
【0002】
親水性表面の特徴は、水による良好な濡れ性であり、これは、小さな接触角に測定できるように現れる。そのような親水性表面は、例えば鏡用の曇り防止仕上げ、自動車の前面ガラス、等、および濡らす水膜が、存在するすべての汚れ粒子を洗い流す、洗浄し易い表面に適当である。
【0003】
文献では、基材に応じて親水性表面を製造するための様々な選択肢が公知である。
【0004】
第一に、ある種の洗剤は、表面に親水性を一時的に与えるのに適している。そのような処方物は、昔から入手可能であり、特に、眼鏡および光学装置用の曇り防止組成物として使用されているが、これらの組成物は、表面に密着せず、従って、効果を短時間しか発揮しない。
【0005】
ヨーロッパ特許第0498005A1号明細書には、眼鏡用の曇り防止組成物として使用する、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体を基剤とする水性/アルコール性処方物が記載されている。
【0006】
他の親水性被覆材料は、極性基を含む有機重合体または共重合体からなる。これらの被覆は、水を吸収することができ、従って、表面を水膜で濡らすのが特徴である。そのような被覆の欠点は、それらの耐摩耗性が低く、水の吸収により、重合体が膨潤し、表面から剥離または分離することである。その上、そのような重合体系を硬化させるには、UV硬化または熱処理が必要であるが、これは、一方で、高い技術的経費、従って、コストにつながり、他方、熱に敏感な基材には不適当である。
【0007】
ヨーロッパ特許第0339909B1号明細書には、メタクリルアミドの縮合物およびさらに親水性モノマーから構築されている極性共重合体を含んでなる、熱硬化し得る被覆組成物が記載されている。この処方物は、ポリカーボネートおよびPMMAに塗布し、80〜120℃で硬化させる。
【0008】
ヨーロッパ特許第1118646A1号明細書には、ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタクリレート)およびアルカンポリオールポリ(メタクリレート)を基剤とする曇り低減特性を有するUV硬化性被覆組成物が記載されており、この組成物は、ポリカーボネートシートに塗布し、硬化させた時、曇りが軽減される。
【0009】
細かく分割した、アナターゼ変性の二酸化チタン粒子は、光触媒特性を有し、表面を変性させ、親水性を与えることにも適している。しかし、その光触媒効果および親水性は、これらの粒子をUV照射にさらした時にのみ、発揮される、すなわちこれらの粒子は屋内に使用するには不適当である。さらに、それらの光触媒活性のために、これらの粒子は、それらの近傍にある有機基材または結合剤系を時間と共に破壊する傾向がある。従って、対応する二酸化チタン粒子は、無機基材への使用にのみ適当である。
【0010】
ヨーロッパ特許第0913447A1号明細書には、光触媒活性のナノ−金属酸化物を基剤とし、ガラス板に塗布し、続いてUV光に照射すると、息を吹きかけても曇りを生じない処方物が開示されている。応用例A1で、この曇り防止被覆の密着性を試験しているが、消しゴムで2、3回擦った後、この被覆は完全に除去することができる。
【0011】
ケイ酸塩系表面、例えばガラスおよびセラミック、または金属酸化物から製造された表面は、親水性置換基を含むハロ−またはアルコキシシランで被覆することができる。これらの物質は、酸化物系表面と反応し、それによって共有的に結合する。基材とシランとの間の化学的結合により、親水性置換基は表面に永久的に固定され、それらの効果が保持される。米国特許第6,489,499B1号明細書には、シロキサン変性されたエチレンジアミントリカルボン酸塩の溶液を使用する、親水性付与変性したガラス表面の製造方法が記載されている。しかし、この方法には、接触角に関する量的な記載が無く、水滴を付けた時、被覆されたガラス表面の濡れ性が、被覆が無い場合よりも優れていることだけが記載されている。これらのシランは、酸化物または水酸化物基を含まない表面とは反応しないのが欠点である。例えば、プラスチック、ペンキおよび樹脂は、親水性シランを使用することにより、親水性を持たせる仕上げを行うことができない。これらの親水性付与試薬の別の欠点は、それらの分子量が低いために、吸収性が非常に高い表面または大きな細孔を有する表面では、これらの物質が基材中に拡散し、表面を親水性効果で十分に覆うことがない。
【0012】
ポリシラザンは、基材を、例えば引掻きまたは腐食から保護することができる薄い層を形成するのに適当である。国際特許第WO02/088269A1号明細書には、ポリシラザンを基剤とする汚れ防止被覆溶液が記載されているが、これは、他の親水性付与試薬による後処理を行わない。ポリシラザンによる表面被覆と、その後に続く空気中硬化だけで、接触角30〜40℃を有する比較的親水性の表面を与える。
【0013】
要約すると、親水性表面を形成するためのこの分野で公知の方式は、この親水性を永久的に維持できないか、または非常に広範囲な表面に汎用的に使用できない、および/または高温での硬化、またはUV光照射によってのみ、被覆を達成することができ、そのために先ず経費が増加し、さらに熱に敏感な基材には不適当であるという欠点がある。
【発明の開示】
【0014】
本発明の目的は、非常に広範囲な材料、例えばガラス、セラミック、金属、プラスチック、ペンキ、樹脂および多孔質表面、に永久的な親水性効果を付与することができる、容易に塗布できる被覆を開発することである。
【0015】
驚くべきことに、ポリシラザンをイオン系試薬と組み合わせることにより、ポリシラザンを直接塗布するよりも著しく優れた、永久的な親水性効果を表面に与えることができることが分かった。
【0016】
従って、本発明は、親水性を増加するために、一種以上のポリシラザンおよびイオン系試薬またはイオン系試薬の混合物を含んでなる、表面用の親水性被覆を提供する。ポリシラザン被覆にイオン系試薬を塗布することにより、電荷が基材表面に固定され、水で容易に濡らすことができる表面エネルギーが高い表面が得られる。ここで、電荷が陽であるか、または陰であるか、は重要ではない。ポリシラザンは、反応性が非常に高い無機または有機重合体であり、この高い反応性のために、先ず永久的な化学的結合を形成することにより、非常に広範囲な表面に非常に良く密着し、さらに、使用される他の試薬と化学反応することにより、これらの試薬も同様に永久的に結合する。
【0017】
本発明により、親水性被覆は、少なくとも一種の、式1
−(SiR’R”−NR''')− (1)
(式中、R’、R”、R'''は、同一でも、異なっていてもよく、水素または有機または有機金属基であり、nは、ポリシラザンの数平均分子量が150〜150000g/モルになるような値である)
のポリシラザン、好ましくはペルヒドロポリシラザン(R’=R”=R'''=H)
(式中、nは、ポリシラザンの数平均分子量が150〜150000g/モルになるような値である)
を含んでなる。
【0018】
親水性付与剤は、イオン系化合物であり、一般的に溶解した形態で、最初に塗布されたポリシラザン被覆に塗布され、ポリシラザン被覆と反応し、そこに永久的に密着する。これらの物質は、ポリシラザン被覆との組合せで、所望の永久的親水性効果を与える非常に広範囲な試薬でよい。
【0019】
これらのイオン系親水性付与剤は、例えばカルボン酸、特にヒドロキシカルボン酸、の塩、例えばカルシウム、ナトリウムまたはカリウムのグルコン酸塩、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸または糖酸(sugar acid)の塩、でよい。これらの塩の溶液は、対応する酸をアルカリと直接反応させることにより、得ることもできる。
【0020】
さらに、置換されたイオン系ハロ−、ヒドロキシ−、アルコキシ−またはアルキルシラン、例えばN−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリ酢酸の三ナトリウム塩、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、N−(トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン、1−トリヒドロキシシリルプロピオン酸の二ナトリウム塩が適当な親水性付与剤である。
【0021】
イオン系オリゴマーまたは重合体状化合物、例えば界面活性剤または分散添加剤、例えばByk(登録商標)-151、Byk(登録商標)-LPN6640、Anti-Terra(登録商標)-203、Disperbyk(登録商標)-140、Byk(登録商標)-9076、Byk(登録商標)-154、Disperbyk(登録商標)、Disperbyk(登録商標)-181も、同様に適当な親水性付与剤である。
【0022】
塩、例えばリン酸チタンも適当であり、これは、二酸化チタンのアナターゼ変性と同様に、UV光で照射する結果、「超親水性」になる。しかし、アナターゼと比較して、リン酸チタンには、有機材料に対してそれ程攻撃的ではなく、有機材料を破壊しない、という利点がある。
【0023】
これらの親水性付与助剤すべてに共通の特徴は、ポリシラザンで被覆した表面の接触角が、これらの試薬を使用せずに観察される接触角よりも小さいことである。
【0024】
本発明は、一種以上のポリシラザンおよびイオン系試薬またはイオン系試薬の混合物を含んでなる親水性被覆の製造方法であって、第一工程で、表面を少なくとも一種のポリシラザンで被覆し、次いで、第二工程で、溶剤中のイオン系親水性付与試薬またはイオン系親水性付与試薬の混合物を塗布する、方法をさらに提供する。
【0025】
使用するポリシラザンは、特に、上記の化合物である。本発明は、上記のポリシラザンおよびイオン系親水性付与試薬で被覆することにより得られる親水性表面をさらに提供する。
【0026】
本発明の親水性被覆を使用することにより、広範囲な基材表面を被覆することができる。適当な基材としては、例えば
・金属、例えば鉄、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銅、マグネシウムおよびそれらの合金、銀および金、
・プラスチック、例えばポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ABS重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、
・多孔質鉱物材料、例えばコンクリート、クレーレンガ、大理石、玄武岩、アスファルト、ローム、テラコッタ、
・被覆された表面、例えばプラスチックエマルション被覆、アクリルコーティング、エポキシコーティング、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂およびアルキドコーティングおよび・有機材料、例えば木材、皮革、パーチメント、紙および織物
・ガラス
があるが、これらに限定するものではない。
【0027】
ポリシラザンによる被覆は、ポリシラザンを直接、またはポリシラザン溶液を、ワイピング、浸漬、スプレーまたはスピンコーティングすることにより、施すことができる。所望の親水性効果を達成するには、ポリシラザンを薄く塗ることが必要であり、これは透明であり、従って、基材の光学的外観に悪影響を及ぼさない。被覆厚差が小さいために、非常に少量の材料が必要になるだけであり、コストの観点から、および生態学的にも有利であり、被覆される基材がほんの僅かに重くなるだけである。溶剤の蒸発および硬化に続くポリシラザン被覆の被覆厚さは、0.01〜10マイクロメートル、好ましくは0.05〜5マイクロメートル、特に好ましくは0.1〜1マイクロメートルである。ここで、被覆すべき表面を先ずプライマーで前処理することができる。
【0028】
その後に続く親水性付与剤の塗布も、浸漬、スプレースピンコーティングまたはワイピングにより行うことができる。
【0029】
ポリシラザン被覆およびその後に続くイオン系試薬塗布の両方共、好ましくは温度5〜40℃で行い、室温における塗布が特に有利であり、これによって、熱に敏感な基材も被覆できる。
【0030】
イオン系試薬を含む溶液を僅かに加熱することにより、被覆時間を大きく短縮することができる。
【0031】
ポリシラザンおよびさらに親水性付与剤からなる親水性被覆を施した表面は、曇り傾向が著しく低く、表面を容易に洗浄できるのが特徴である。この被覆は、落書き防止(antigraffiti)特性も有する。例えば、耐水性Eddingペンマークも、温水または蒸気で容易に除去できる。
【0032】
ポリシラザンに適当な溶剤は、特に水および反応性基(例えばヒドロキシルまたはアミン基)を含まない有機溶剤である。これらの溶剤は、例えば脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル、ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン、エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジブチルエーテル、およびモノ−およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(グライム)またはこれらの溶剤の混合物である。
【0033】
ポリシラザン溶液のその他の構成成分は、ポリシラザン被膜の硬化速度を増加する触媒、例えば第3級アミン、または基材を濡れ易くするか、または被膜を形成し易くする添加剤でよい。親水性付与試薬に適当な溶剤は、特に水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン、カルボン酸、例えばギ酸、酢酸またはプロピオン酸、およびエステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル、またはこれらの溶剤の混合物である。
諸例
【0034】
再現性を向上させるためにグローブボックス中、不活性ガス雰囲気中で、ポリシラザンによる被覆を行った。浸漬装置を使用して様々な基材に被覆した。接触角測定は、Kruess製の計器を使用して行った。使用したポリシラザンは、様々な溶剤中に入れたペルヒドロポリシラザンであった。キシレンとPegasol(名称NP)またはジ−n−ブチルエーテル(名称NL)の混合物が一般的である。製造業者はClariant Japan K.K.である。
【0035】
実験1
ポリカーボネートシート(10x10cm)を、20%濃度ペルヒドロポリシラザンのn−ジブチルエーテル溶液中に、グローブボックス中の20cm/分速度のステップモーターを備えた浸漬装置中で浸漬した。滞留時間10s後、このシートを溶液から、やはり20cm/分速度で取り出した。短時間、滴を切り、次いで試料をグローブボックスから取り出した。試料を空気中に10分間放置し、次いで添加剤Byk-LP N-6640の水溶液(10%濃度)(原溶液は濃度40%、水で3:1に希釈)中に浸漬した。試料を溶液中に24時間放置し、次いで水洗した。水の接触角は、正確には測定できなかったが、10°よりはるかに小さかった。半分被覆したポリカーボネートシートの、被覆した表面および被覆していない表面上に、Staedtler製のペンPermanent Marker 352(耐水性)を使用してマークを付けた。被覆された側のマークは、温水または蒸気および紙タオルを使用して、難なく除去できた。
【0036】
実験2
V2Aステンレス鋼試料を、キシレン/Pegasol AN45中20%濃度ペルヒドロポリシラザンで、上記の方法により被覆した。次いで、試料を空気中で1時間エージングし、添加剤Byk-LP N-6640の水溶液中に24時間浸漬した。水の接触角は、10°よりはるかに小さかった。
【0037】
実験3
V2Aステンレス鋼試料を、上記のように被覆した。Byk添加剤の水溶液は50℃に加熱し、鋼試料を30分間浸漬した。水の接触角は、10°よりはるかに小さかった。
【0038】
実験4
ステンレス鋼試料を使用し、実験を、実験2に記載するように行った。Byk添加剤の代わりに、試料を飽和グルコン酸Ca水溶液中に浸漬した。24時間後、測定した接触角は10°未満であった。
【0039】
実験5
ステンレス鋼試料を使用し、実験4に記載する手順を行った。飽和グルコン酸Ca溶液を50℃に加熱し、試料を30分間エージングした。水の接触角は10°よりはるかに小さかった。
【0040】
実験6
ステンレス鋼試料を使用し、実験2に記載する手順を行った。Byk添加剤の代わりに、試料を、カルボキシエチルシラントリオール二ナトリウム塩の10%濃度水溶液中に24時間浸漬した。水の接触角は10°未満であった。
【0041】
実験7
ステンレス鋼試料を使用し、実験2に記載する手順を行った。Byk添加剤の代わりに、試料を、リン酸チタンの1%濃度水溶液中に浸漬した。24時間のエージング後、被覆したステンレス鋼試料上の、水の接触角は32°であった。次いで、試料をUV光で12時間照射し、接触角は13°に減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上のポリシラザンおよびイオン系試薬またはイオン系試薬の混合物を含んでなる、表面用の親水性被覆。
【請求項2】
少なくとも一種の、式1
−(SiR’R”−NR''')− (1)
(式中、R’、R”、R'''は、同一でも、異なっていてもよく、水素または有機または有機金属基であり、nは、ポリシラザンの数平均分子量が150〜150000g/モルになるような値である)
のポリシラザンを含んでなる、請求項1に記載の親水性被覆。
【請求項3】
前記ポリシラザンが、ペルヒドロポリシラザン(R’=R”=R'''=H)である、請求項2に記載の親水性被覆。
【請求項4】
前記イオン系試薬が、カルボン酸、特にヒドロキシカルボン酸、の塩、あるいは陽イオン系または陰イオン系シラン、もしくはオリゴマーまたは重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の親水性被覆。
【請求項5】
前記イオン系試薬が無機塩であり、前記表面の親水性を、UV光で照射することにより増加させることができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の親水性被覆。
【請求項6】
一種以上のポリシラザンおよびイオン系試薬またはイオン系試薬の混合物を含んでなる親水性被覆の製造方法であって、第一工程で、表面を少なくとも一種のポリシラザンで被覆し、次いで、第二工程で、溶剤中のイオン系親水性付与試薬またはイオン系親水性付与試薬の混合物を塗布する、方法。
【請求項7】
使用する前記ポリシラザンが、式1
−(SiR’R”−NR''')− (1)
(式中、R’、R”、R'''は、同一でも、異なっていてもよく、水素または有機または有機金属基であり、nは、ポリシラザンの数平均分子量が150〜150000g/モルになるような値である)
の少なくとも一種のポリシラザンである、請求項8に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリシラザンが、不活性有機溶剤中の溶液の形態で使用され、前記溶液が、所望により、表面の濡れ性および/または被膜形成を改良するための触媒および/または添加剤も含んでなることができる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記使用するイオン系試薬が、カルボン酸、特にヒドロキシカルボン酸、の塩、あるいは陽イオン系または陰イオン系シラン、もしくはオリゴマーまたは重合体である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記使用するイオン系試薬が無機塩であり、前記試薬の、前記表面の親水性に対する効果を、UV光で照射することにより増加させることができる、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン系試薬を、下記の群、すなわち水、アルコール、ケトン、カルボン酸、エステルまたはそれらの混合物、から選択された溶剤中に溶解させる、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記被覆される表面が、下記の群、すなわち金属、プラスチック、多孔質鉱物材料、塗料状または樹脂状表面、有機材料またはガラス、から選択される、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記表面が純粋なポリシラザンまたはポリシラザン溶液で被覆され、前記溶剤の蒸発および硬化に続く前記ポリシラザン被覆の厚さが、0.01〜10マイクロメートルである、請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記表面が、前記ポリシラザンまたは前記ポリシラザン溶液で被覆される前に、プライマーで前処理される、請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリシラザンによる、および前記イオン系試薬による被覆の両方が、温度5〜40℃で行われる、請求項6〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の被覆を表面に施すことにより得られる、親水性表面。

【公表番号】特表2007−517943(P2007−517943A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548149(P2006−548149)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014326
【国際公開番号】WO2005/066285
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(597164194)クラリアント インターナショナル リミテッド (5)
【Fターム(参考)】