説明

ポリシラン系トレンチ埋め込み用組成物

【課題】基体に形成されたトレンチ内にシリコン酸化物を埋め込むために使用するのに好適な、トレンチへの埋め込み性が高く、硬化収縮率が小さく、かつ良好なクラック耐性を有するシリコン酸化物塗膜を与えるトレンチ埋め込み用組成物を提供すること。
【解決手段】水素化ポリシラン化合物と、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物とを含むことを特徴とするトレンチ埋め込み用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に形成されたトレンチ内の絶縁保護膜用のトレンチ埋め込み用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される電子デバイスの構成要素であるトランジスタ等の回路素子を電気的に分離するための技術のひとつとして、シャロートレンチ分離技術(STI技術)が開発されている。STI技術とは、基板中、回路素子の間隙にトレンチを形成し、トレンチ内に絶縁材料を埋め込むことにより、回路素子間の電気的分離を行う技術である。
【0003】
デバイスの高集積化が進むにつれ、STI技術におけるトレンチ幅は狭くなり、そのためトレンチのアスペクト比(トレンチの深さを、トレンチの開口幅で除した値)も大きくなる傾向にある。このようなトレンチ埋め込みに使われる材料としては、高い電気絶縁性が求められるという理由でシリコン酸化物が広く好適に用いられている。トレンチ内にシリコン酸化物を埋め込むために、従来、高密度プラズマCVD法に代表されるスパッタ法により、トレンチを有するシリコン基材上にシリコン酸化物膜を形成している。しかしながら、近年半導体素子の微細化に伴い、トレンチ幅が狭くなり、アスペクト比が大きい傾向がある。トレンチ幅が0.2μm以下、アスペクト比が2以上の微細溝にCVD法によりシリコン酸化物を埋めると、微細溝の中にボイドが発生し易い問題があった。
【0004】
スパッタ法以外の方法として、塗布法によりトレンチを埋設し、酸化雰囲気下の焼成によりシリカ膜を形成する方法が知られており、材料としてはポリシラザン材料、ポリシラン材料、シリコーン材料が知られている。
【0005】
トレンチ埋め込み用材料として最も使用されている水素化ポリシラザン材料は、トレンチ埋め込み性が良いことが報告されている(例えば特許文献1)。しかしながら、回路素子の微細化に伴い、より硬化収縮率が小さい材料が求められている。
【0006】
硬化収縮率が小さい材料として、水素化ポリシランが報告されている(例えば特許文献2,3)。しかしながらこれらの技術では基板の応力が大きくなるという問題点があった。これを解決する方法として、水素化ポリシランと水素化ポリシラザン又は水素化シルセスキオキサンとを混合して使用する方法が報告されている(例えば特許文献4)。しかしながらこの技術では厚膜化ができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−308090号公報
【特許文献2】特開2003−31568号公報
【特許文献3】特開2003−115532号公報
【特許文献4】特開2008−305974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、その目的は、基体に形成されたトレンチ内にシリコン酸化物を埋め込むために使用するのに好適な、焼成後のシリコン酸化膜の純度が高く、トレンチ埋め込み性が高く、硬化収縮率が小さく、かつ良好なクラック耐性を有するシリコン酸化物塗膜を与えるトレンチ埋め込み用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、以下に示すトレンチ埋め込み用組成物を見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
(1)水素化ポリシラン化合物と、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物とを含むことを特徴とするトレンチ埋め込み用組成物。
【0011】
(2)上記水素化ポリシラン化合物が、下記一般式(1)〜(3):
Sik2k 一般式(1)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
Sik2k+2 一般式(2)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
Sikk 一般式(3)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0012】
(3)上記水素化ポリシラン化合物の含有割合が10質量%以上95質量%以下である、上記(1)又は(2)に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0013】
(4)上記シリカ粒子の平均一次粒子径が1nm以上120nm以下であり、かつ上記シリカ粒子の平均二次粒子径が2nm以上250nm以下である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0014】
(5)上記シリカ粒子に由来する構造を有する反応物が、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子、及び任意成分としての下記一般式(4):
nSiX4-n 一般式(4)
{式中、nは、1〜3の整数であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物の縮合反応物である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0015】
(6)上記ポリシロキサン化合物が、HSiO3/2基、MeHSiO基、及びH2SiO基から選ばれる少なくとも1種の基を40mol%以上含む、上記(5)に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0016】
(7)上記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(5):
HSiX3 一般式(5)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物の縮合反応物であり、かつ該ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上200,000以下である、上記(5)又は(6)に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0017】
(8)上記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(5):
HSiX3 一般式(5)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物と、下記一般式(6)〜(9):
SiX4 一般式(6)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
2SiX3 一般式(7)
{式中、R2は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてXは同一でも異なっていてもよい。}
2SiX2 一般式(8)
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは同一でも異なっていてもよい。}
3SiX 一般式(9)
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてRは同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種との縮合反応物であり、該ポリシロキサン化合物中の、一般式(5)で表されるシラン化合物に由来する構造の割合が30mol%以上であり、かつ該ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上200,000以下である、上記(5)又は(6)に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0018】
(9)上記ポリシロキサン化合物、上記シリカ粒子及び上記一般式(4)で表されるシラン化合物の合計に占める上記シリカ粒子の割合が、10質量%以上95質量%以下である、上記(5)〜(8)のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【0019】
(10)上記ポリシロキサン化合物、上記シリカ粒子及び上記一般式(4)で表されるシラン化合物の合計に占める、上記一般式(4)で表されるシラン化合物の割合が、40質量%以下である、上記(5)〜(9)のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基体に形成されたトレンチ内にシリコン酸化物を埋め込むために使用するのに好適な、焼成後のシリコン酸化膜の純度が高く、トレンチ埋め込み性が高く、硬化収縮率が小さく、かつ良好なクラック耐性を有するシリコン酸化物塗膜を与えるトレンチ埋め込み用組成物を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、水素化ポリシラン化合物と、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物とを含む。本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、水素化ポリシラン化合物に加えて、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物を組合せたものであるため、成膜性が良好でありながら、焼成後に、シリコン酸化物の純度が高く、クラック耐性及びトレンチ埋め込み性が良好で、硬化収縮率が小さいシリコン酸化物塗膜を与えることができる。
【0022】
本発明で使用される水素化ポリシラン化合物とは、Siに結合する元素がSi又はHであるポリマーである。水素化ポリシラン化合物としては、
下記一般式(1):
Sik2k 一般式(1)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
で表される環状の水素化ポリシラン、
下記一般式(2):
Sik2k+2 一般式(2)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
で表される鎖状の水素化ポリシラン、及び
下記一般式(3):
Sikk 一般式(3)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
で表されるかご状の水素化ポリシランが好ましい。
【0023】
一般式(1)〜(3)中、kが3以上の整数である場合、塗布時及び焼成時に残存する水素化ポリシラン量が多いため好ましく、kが50以下の整数である場合、溶液への溶解性が高いため好ましい。より好ましいkは4以上20以下の整数である。一般式(3)で表されるかご状の水素化ポリシランの構造としては、例えばプリズマン(三角柱型)骨格、キュバン骨格、五角柱型骨格等が挙げられる。
【0024】
本発明で使用される水素化ポリシラン化合物は、例えば(a)アルカリ金属の存在下にハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Am.Chem.Soc.,110,2342(1988)及びMacromolecules,23,3423(1999)参照);(b)電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)及びJ.Chem.Soc.,Chem.Commun.,896(1992)参照);(c)金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報参照);(d)フェニル基やアルキル基で置換された環状ポリシラン化合物をアニオン重合により合成した後、ヒドロ置換体に誘導する方法(Macromolecules,23,4494(1990)及びZ.Anorg.Allg.Chem.,459,123(1979)及びMh.Chem.第106巻、503貢(1975)参照)等の公知の方法で合成できる。さらに上記の方法で合成した水素化ポリシラン化合物に光照射することにより、高分子量の水素化ポリシラン化合物を得ることができる。また光照射することによって得られた水素化ポリシラン化合物と光照射していない水素化ポリシラン化合物とを混合して用いても構わない。
【0025】
上記一般式(1)〜(3)で表される水素化ポリシランの中でも、上記一般式(1)で表される環状の水素化ポリシラン、及びこれを光照射して生成した化合物がより好ましく、溶媒への溶解性や埋め込み性が良好である点で、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロペンタシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物及びこれに光照射して生成した化合物がより好ましい。これら環状の水素化ポリシランは、例えば上記(d)で記載したようにジフェニルジクロロシランから製造されるデカフェニルシクロペンタシラン及びドデカシクロペンタシランを経て製造することができる。
【0026】
本発明で使用される、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物とは、典型的にはシリカ粒子と他の化合物とを縮合させて得られる縮合反応物である。本発明においては、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物を水素化ポリシラン化合物とともに組成物中に含有させることによって、成膜性を維持しつつ、焼成後には、シリコン酸化物の純度が高く、クラック耐性及びトレンチ埋め込み性が良好で、硬化収縮率が小さいシリコン酸化物塗膜を与えるという利点が得られる。
【0027】
シリカ粒子を成分として含む反応物は、より典型的には、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物、又はポリシロキサン化合物、シリカ粒子、及び下記一般式(4):
nSiX4-n 一般式(4)
{式中、nは、1から3の整数であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは、同一でも異なっていてもよい。)
で表されるシラン化合物の縮合反応物である。
【0028】
本発明で用いるポリシロキサン化合物は、焼成時の収縮率を下げるという観点から、HSiO3/2基、MeHSiO基もしくはH2SiO基から選ばれる少なくとも1種の基を、好ましくは40mol%以上、より好ましくは50mol%以上、特に好ましくは60mol%以上含むことができる。
【0029】
本発明で用いるポリシロキサン化合物は、下記一般式(5)〜(9):
HSiX3 一般式(5)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
SiX4 一般式(6)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
2SiX3 一般式(7)
{式中、R2は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてXは同一でも異なっていてもよい。}
2SiX2 一般式(8)
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは同一でも異なっていてもよい。}
3SiX 一般式(9)
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてRは同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物の中で、少なくとも一般式(5)で表されるシラン化合物に由来する構造を有することが、硬化収縮率を小さくする観点から好ましい。また、クラック耐性やトレンチへの埋め込み性の観点から、上記一般式(6)〜(9)で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造をさらに含有してもよい。より典型的には、ポリシロキサン化合物としては、上記一般式(5)で表されるシラン化合物の縮合反応物、又は上記一般式(5)で表されるシラン化合物と上記一般式(6)〜(9)で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種との縮合反応物が好ましい。なお上記一般式(5)で表されるシラン化合物としては単独又は2種以上の化合物を使用できる。上記各々の縮合反応は酸性雰囲気下で行うことができる。
【0030】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造される際に用いられるシラン化合物の一般式(8)及び一般式(9)中のRの具体例としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式及び環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式のアルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時のシリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、硬化収縮率が小さい点で、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0031】
上記一般式(5)〜(9)中のXの具体例としては、例えば塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でも塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、及びアセトキシ基が縮合反応の反応性が高い点で好ましい。
【0032】
一般式(7)中のR2の具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式及び環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式のアルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも、焼成時のシリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく硬化収縮率が小さい点で、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0033】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の調製においては、上記一般式(5)で表される水素化シラン化合物の使用割合、又は上記一般式(8)においてH2SiX2若しくはMeHSiX2で表される水素化シラン化合物の使用割合が、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計の40mol%以上であることが好ましく、より好ましくは50mol%以上である。上記いずれかの使用割合が上記範囲内に入っている場合は、焼成時のシリコン酸化物への転換の際に塗布膜の硬化収縮率が小さいため好ましい。
【0034】
なお、ポリシロキサン化合物中、特に上記一般式(5)で表されるシラン化合物と上記一般式(6)〜(9)で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種との縮合反応物中の、上記一般式(5)で表されるシラン化合物(すなわち水素化シラン化合物)に由来する構造の割合が30mol%以上である場合、クラック耐性が良好であり好ましい。
【0035】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(6)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計の30mol%以下であることが好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内である場合、成膜性が良く硬化収縮率が小さいため好ましい。
【0036】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(7)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計の30mol%以下であることが好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内である場合、成膜性が良く硬化収縮率が小さいため好ましい。
【0037】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(8)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計の50mol%以下であることが好ましく、より好ましくは30mol%以下である。上記の範囲内である場合、トレンチ埋め込み性が良くクラック耐性が高いため好ましい。
【0038】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(9)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計の30mol%以下であることが好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内である場合、トレンチ埋め込み性が良くクラック耐性が高いため好ましい。
【0039】
ポリシロキサン化合物を製造する際、上記一般式(5)〜(9)で表されるシラン化合物のうち使用されるものの少なくとも1種のXにハロゲン原子及び/又はアセトキシ化合物が含まれている場合には、縮合反応のために水を加えることによって反応系が酸性を示すため、シラン化合物の他に酸触媒を加えても加えなくてもよい。また上記一般式(5)〜(9)で表されるシラン化合物のうち使用されるもののXが全てアルコキシ基である場合は、酸触媒を加えることが好ましい。
【0040】
酸触媒としては、無機酸及び有機酸を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等を挙げることができる。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p − アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等を挙げることができる。
【0041】
これらの化合物は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。また使用される酸触媒の量は、ポリシロキサン化合物の重量平均分子量を制御するために、ポリシロキサン化合物を製造する際の反応系のpHを0.01〜6.0の範囲に調整する量であることが好ましい。
【0042】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、有機溶媒中又は水と有機溶媒との混合溶液系中で製造できる。有機溶媒としては、例えばアルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等を挙げることができる。
【0043】
上記アルコール類としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類等が挙げられる。
【0044】
上記エステル類としては例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。上記ケトン類としては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0045】
上記エーテル類としては上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような、多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等が挙げられる。
【0046】
上記脂肪族炭化水素としては例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0047】
上記芳香族炭化水素としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0048】
上記アミド化合物としては例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を、それぞれ挙げることができる。
【0049】
以上の溶媒の中でもメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が水と混合しやすく、シリカ粒子を分散させやすいため好ましい。
【0050】
これらの溶媒は単独で使用してもよいし、複数の溶媒を併用しても構わない。また上記溶媒を用いずにバルク中で反応を行ってもよい。
【0051】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、反応系中に水を添加することによって製造されることが好ましい。水の添加量としては、例えば、上記一般式(5)〜(9)で表されるシラン化合物のうち使用されるもののXの合計モル数に対して0.1当量以上10当量以下が好ましく、更に好ましくは0.4当量以上、8当量以下の範囲である。水の添加量が0.1当量以上である場合、ポリシロキサン化合物の分子量が上がるため好ましく、10当量以下である場合、トレンチ埋め込み用組成物溶液のポットライフが長くなり、成膜後のクラック耐性が向上するため好ましい。
【0052】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造する際の反応温度には特に制限は無いが、−50℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以上150℃以下である。上記の範囲で反応を行うことにより、ポリシロキサン化合物の分子量を所望の範囲に制御することができる。
【0053】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物を製造する際に用いるポリシロキサン化合物、より典型的には上記一般式(5)で表されるシラン化合物の縮合反応物又は上記一般式(5)で表されるシラン化合物と上記一般式(6)〜(9)で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種との縮合反応物の重量平均分子量としては、1,000以上200,000以下の範囲が好ましく、更に好ましくは2,000以上150,000以下である。ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上である場合、成膜性とクラック耐性が良好であり、重量平均分子量が200,000以下である場合、トレンチ埋め込み用組成物のポットライフが長くなるため好ましい。本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、例えば上記有機溶媒中で製造した後、そのままシリカ粒子と反応させても良いし、上記有機溶媒中で製造した後、濃縮したり、他の有機溶媒に置換してから、シリカ粒子と反応させても構わない。なお本明細書に記載する重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(例えば東ソー製の「HLC−8220」)を用い、クロロホルム溶液中、1質量%溶液にて測定し、示差屈折率計(RI)によりポリスチレン換算して得られる値である。
【0054】
次に本発明で使用されるシリカ粒子について説明する。本発明のトレンチ埋め込み用組成物に使用されるシリカ粒子としては、例えばヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができる。
【0055】
上記ヒュームドシリカは、シリコン原子を含む化合物を気相中で酸素及び水素と反応させることによって得ることができる。原料となるケイ素化合物としては、例えばハロゲン化ケイ素(例えば塩化ケイ素等)等を挙げることができる。
【0056】
コロイダルシリカは、原料化合物を加水分解及び縮合するゾルゲル法により合成することができる。コロイダルシリカの原料化合物としては、例えば、アルコキシケイ素(例えばテトラエトキシシラン等)、ハロゲン化シラン化合物(例えばジフェニルジクロロシラン等)等を挙げることができる。中でも、金属やハロゲン等の不純物は少ないことが好ましいため、アルコキシケイ素から得られたコロイダルシリカがより好ましい。
【0057】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上120nm以下であることが好ましく、1nm以上100nm以下であることがより好ましく、1nm以上40nm以下であることが特に好ましい。上記平均一次粒子径が1nm以上である場合、クラック耐性が向上するため好ましく、120nm以下である場合、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましい。
【0058】
シリカ粒子の平均二次粒子径は、2nm以上250nm以下であることが好ましく、2nm以上80nm以下であることがより好ましい。上記平均二次粒子径が2nm以上である場合、クラック耐性が向上するため好ましく、250nm以下である場合、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましい。また、シリカ粒子の平均二次粒子径は、上記の範囲内で、かつ基板に形成されたトレンチのうち最小の開口幅の0.1〜3倍であることが、トレンチへの埋め込み性が高くなる点で好ましく、上記最小の開口幅の0.1〜2倍であることが更に好ましい。
【0059】
なお上記平均一次粒子径は、BET比表面積から計算で求められる値であり、上記平均二次粒子径は、動的光散乱光度計で測定される値である。
【0060】
なお、シリカ粒子は、加熱された際に結合が開裂・再結合して再配列する、いわゆる「リフロー」といわれる現象を示すことが知られている。このため、シリカ粒子の平均二次粒子径がトレンチの開口幅より大きくても、後述する加熱工程においてリフロー現象が起こり、これによって細分化されたシリカ粒子の一部がトレンチ内部まで到達することとなる。
【0061】
シリカ粒子の形状は、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらの2種以上が合体した形状であることができるが、好ましくは球状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体や卵形等の略球状である場合も含む。
【0062】
シリカ粒子の比表面積としては、HF耐性が良好になる点で、BET比表面積が1000m2/g以下であることが好ましく、500m2/g以下であることがより好ましい。上記BET比表面積は、N2分子の圧力とガス吸着量から計算される方法で求められる値である。
【0063】
シリカ粒子としては、上記の要件に適合する限りで、制限は無く、市販品を使用することもできる。市販品としては、コロイダルシリカとして、例えばLEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾルIPA−ST、同MEK−ST、同NBA−ST、同XBA−ST、同DMAC−ST、同ST−UP、同ST−OUP、同ST−20、同ST−40、同ST−C、同ST−N、同ST−O、同ST−50、同ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を、それぞれ挙げることができる。
【0064】
本発明において用いられるポリシロキサン化合物に上記シリカ粒子を反応させる際には、溶媒中に分散した状態のシリカ粒子を反応させることができる。溶媒としては、水若しくは有機溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができる。使用される有機溶媒の種類は使用されるシリカ粒子の分散媒によって変わる。使用されるシリカ粒子の分散媒が水系の場合は、水若しくはアルコール系溶媒をシリカ粒子の水分散媒に加えてからシリカ粒子をポリシロキサン化合物と反応させてもよいし、シリカ粒子の水溶液を一度アルコール系溶媒に置換してから、シリカ粒子をポリシロキサン化合物と反応させてもよい。使用できるアルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等が挙げられ、これらは水と容易に混合されるため好ましい。
【0065】
使用されるシリカ粒子の分散媒がアルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶媒である場合は、水若しくはアルコール、エーテル、ケトン、エステル等の溶媒を使用することができる。アルコール類としては例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。エーテル系溶媒としては例えばジメトキシエタンが挙げられる。ケトン系溶媒としては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等が挙げられる。
【0066】
シリカ粒子とポリシロキサン化合物との反応は酸性雰囲気下で行われることが好ましい。酸触媒としては、ポリシロキサン化合物を製造する際について前述したのと同じ酸触媒を挙げることができる。ポリシロキサン化合物の製造後に酸触媒を取り除く場合には、シリカ粒子とポリシロキサン化合物とを反応させる際に酸触媒を再度加える必要があるが、ポリシロキサン化合物の製造後に酸触媒を取り除かずそのままシリカ粒子を反応させる場合は、酸触媒を再度加えなくても、ポリシロキサン化合物を反応させる際に使用された酸触媒でポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応を行うことができる。しかしこの場合ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応時に改めて酸触媒を加えても構わない。
【0067】
シリカ粒子とポリシロキサン化合物との反応温度は特に制限されず、通常の範囲である−50℃以上200℃以下で行われる。
【0068】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物の製造においては、上記のようにしてシリカ粒子とポリシロキサン化合物とを反応させた後に、下記一般式(4):
nSiX4-n 一般式(4)
{式中、nは、1〜3の整数であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物を更に反応させても構わない。シリカ粒子に由来する構造を有する反応物が上記一般式(4)で表されるシラン化合物に由来する構造を有することは、特にシリカ粒子として水系のものを用いる場合に成膜性等の点で有利である。
【0069】
一般式(4)中のR及びXは上記一般式(5)〜(9)と同じ基から選ばれることが好ましく、Rの具体例としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式及び環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式のアルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも、焼成時のシリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、硬化収縮率が小さい基として、水素原子、メチル基及びエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0070】
上記一般式(4)中のXの具体例としては、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高い点で好ましい。
【0071】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物に加える上記一般式(4)で表されるシラン化合物は、1種でも複数種でもよい。複数種のシラン化合物を加える際には、1種ずつ加えてもよいし、複数種のシラン化合物を混合してから加えてもよい。
【0072】
上記一般式(4)で表されるシラン化合物の添加量は、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子、及び一般式(4)で表されるシラン化合物の合計の、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。一般式(4)で表されるシラン化合物の添加量が上記の範囲である場合、本発明のトレンチ埋め込み用組成物のポットライフが長くなり、クラック耐性が上がるため好ましい。
【0073】
上記一般式(4)で表されるシラン化合物は、ニートで(すなわち溶媒で希釈せずにそのまま)加えてもよいし、一度溶媒で希釈してから加えてもよい。希釈用の溶媒としては、シラン化合物が反応しなければどのような溶媒を用いても構わない。例えばエーテル系、炭化水素系の溶媒やハロゲン化溶媒等を使用できる。一般式(4)で表される
シラン化合物の添加時の濃度としては1質量%以上100質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上50質量%以下である。該濃度が上記の範囲内である場合、溶媒量を少なくできる点で好ましい。
【0074】
一般式(4)で表されるシラン化合物は、添加後、−50℃以上200℃以下の範囲で、1分以上100時間の範囲で反応させることが好ましい。反応温度と反応時間とを制御することで、本発明のトレンチ埋め込み用組成物を成膜する際の粘度を制御することができる。
以上のような手順で、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物を得ることができる。
【0075】
シリカ粒子に由来する構造を有する反応物中のシリカ粒子の割合は、より典型的には、上記ポリシロキサン化合物、上記シリカ粒子及び上記一般式(4)で表されるシラン化合物の合計に占める上記シリカ粒子の割合が、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上90質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以上90質量%以下である。上記割合が10質量%以上である場合クラック耐性が向上するため好ましく、95質量%以下である場合トレンチ埋め込み性が良くなるため好ましい。
【0076】
上記のようにして得た、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物は、沸点100℃以上200℃以下の、ケトン系、エステル系、エーテル系、炭化水素系の溶媒から選ばれる少なくとも1種類の溶媒を使用した分散液又は溶液とすることが好ましい。ケトン系、エステル系、エーテル系の溶媒は、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応、あるいはポリシロキサン化合物及びシリカ粒子の反応物と一般式(4)で表されるシラン化合物との反応の際にあらかじめ加えておいても構わないし、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応、あるいは、ポリシロキサン化合物及びシリカ粒子の反応物と一般式(4)で表されるシラン化合物との反応を行った後に、上記から選ばれる溶媒を更に添加しても構わない。また、反応時に使用した溶媒を蒸留等の方法で濃縮したものを、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物を形成した後で加えても構わない。
【0077】
上記のケトン系、エステル系、エーテル系、炭化水素系の溶媒の具体例としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソアミルケトン、エチルヘキシルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ―ブチロラクトン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、ヘキシルプロピオネート、プロピレングリコールメチルエチルアセテート等のエステル系溶媒、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、エチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、オクタン、ノナン、デカン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0078】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、上記で説明した水素化ポリシラン化合物とシリカ粒子に由来する構造を有する反応物とを混合することによって製造される。トレンチ埋め込み用組成物中の水素化ポリシラン化合物の割合は、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。上記割合が10質量%以上である場合、焼成後の収縮率が小さくなるため好ましく、95質量%以下である場合、クラック耐性が向上するため好ましい。
【0079】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、溶液又は分散液の状態で保存及び使用できる。溶媒としては、水素化ポリシラン化合物、及びシリカ粒子に由来する構造を有する反応物が反応しない溶媒が好ましく、例えば、上記シリカ粒子に由来する構造を有する反応物を製造する際に使用される、沸点が100℃以上200℃以下のケトン系、エステル系、エーテル系、炭化水素系の溶媒が好ましい。
【0080】
このような方法により製造された本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、通常の方法で基板上に塗布することができる。塗布方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。中でも成膜時の塗布厚みが均一になる点でスピンコート法が好ましい。
【0081】
トレンチ埋め込み用組成物をこれらの方法で塗布した後、塗布膜中の残存溶媒を除くため50〜200℃で予備硬化させることが好ましい。その後、予備硬化させて得られた膜を酸化及び加熱焼成することによってシリコン酸化物を得ることができる。
【0082】
上記の酸化及び加熱焼成の方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等の一般的な加熱手段を適用することができる。熱処理温度は、好ましくは100℃〜1200℃であり、より好ましくは200℃〜1000℃であり、更に好ましくは300℃〜900℃である。熱処理温度が上記の範囲内である場合、焼成後の膜密度が高く、また得られる膜質が良いため好ましい。加熱焼成時の雰囲気としては、空気、酸素又は水蒸気酸化雰囲気のいずれを用いても構わない。酸化及び加熱焼成の温度は通常200〜850℃の範囲であり、酸化前後にN2、Ar等の不活性雰囲気下で焼成しても構わない。酸化及び加熱焼成の工程時の圧力に特に制限は無く、加圧下、常圧下、減圧下又は真空中のいずれの圧力でも実施することができる。
【0083】
また酸化、加熱燃焼時に光処理を併用しても構わない。この場合、光処理は加熱前後のいずれに行ってもよいし、加熱しながら光処理を同時に行っても構わない。加熱と光処理とを同時に行う場合の温度は、好ましくは室温以上500℃以下であり、処理時間は0.1分以上120分以下程度である。
【0084】
光処理には、可視光線、紫外線、遠紫外線等を使用できるほか、低圧もしくは高圧の水銀ランプ、重水素ランプや、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光や、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl等のエキシマレーザー等を光源として使用することができる。これらの光源は、好ましくは10〜5,000Wの出力のものである。これらの光の波長は、塗布した膜中のトレンチ埋め込み用組成物に少しでも吸収があれば構わないが、好ましくは170nm〜600nmの波長であり、照射量は、好ましくは0.1〜1,000J/cm2であり、より好ましくは1〜100J/cm2である。光処理時に同時にオゾンを発生させても構わない。例えば上記の条件で光処理することによって水素化ポリシラン化合物、特に水素化環状ポリシラン化合物を高分子化することができると同時に、酸化反応が進行し、焼成後の膜質を向上させることができる。
【0085】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物を使用して得られた絶縁膜は、例えばフラッシュメモリ等の絶縁膜として好適である。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
(1)分子量測定
東ソー製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、HLC−8220を使用し、クロロホルム溶媒中、ポリシロキサン化合物を1質量%溶液にして測定し、示差屈折率計(RI)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0088】
(2)成膜性
Si基板上にトレンチ埋め込み用組成物を塗布し、プリベークによって溶媒を除去した後のSi基板を光学顕微鏡にて観察し、クラック、ハジキ、異物のいずれも認められない場合を○、これらの少なくともいずれかが認められる場合を×とした。
【0089】
(3)クラック耐性
焼成後の膜厚が1.0μmになるように、Si基板上にトレンチ埋め込み用組成物を塗布及び焼成し、焼成後のSi基板を光学顕微鏡にて観察し、光学顕微鏡下でクラックが入っているか否かを判定し、クラックが入っていない場合を○、クラックが入っている場合を×とした。
【0090】
(4)埋め込み性
トレンチ埋め込み用組成物を塗布及び焼成した後のトレンチを有するSi基板をトレンチに沿って割断し、FIB加工をした後、日立製作所製、走査型電子顕微鏡(SEM)S4700を使用し、加速電圧5kVで測定し、トレンチ内がトレンチ埋め込み用組成物で埋まっており溝、孔、クラック等のボイドが観察されない場合を○、このようなボイドが観察される場合を×とした。
【0091】
水素化ポリシラン化合物の製造例
[製造例1]
滴下ロート、メカニカルスターラー、コンデンサーを備えた2Lの4つ口フラスコを窒素置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1000mLとリチウム金属18.3gを入れた。この懸濁液を0℃で攪拌しながら、ジフェニルジクロロシラン333gを滴下ロートにより添加し、添加終了後、室温でリチウム金属が完全に消失するまでさらに12時間攪拌を続けて反応混合物を得た。反応混合物を5Lの氷水に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物を濾別し、水で洗浄した後、シクロヘキサンで洗浄し、真空乾燥することにより、白色固体140gを得た。この白色固体100gと乾燥したシクロヘキサン1000mLを2Lのフラスコに仕込み、塩化アルミニウム4gを加え、室温下で塩化水素を導入し、窒素雰囲気下で5時間反応を行った。また別途に水素化リチウムアルミニウム40gとジイソプロピルエーテル400mLを2Lのフラスコに入れ、窒素下、0℃で攪拌しながら、上記反応混合物を加え、0℃のまま1時間と、室温に上げて12時間攪拌を続けた。反応混合物より、ろ過によってアルミニウム化合物を除去した後、70℃、10mmHgで減圧蒸留を行ったところ、無色の液体10gが得られた。これは1H−NMR、29Si−NMR、GC−MSよりシクロペンタシランであることが分かった。このシクロペンタシランをキシレンに溶解し、20質量%のキシレン溶液を得た。
【0092】
ポリシロキサン化合物の製造例
[製造例2]
蒸留塔、滴下ロートを備えた1Lの4つ口フラスコにトリエトキシシラン18.60g(0.11mol)とイソプロパノール100gを入れ、水6.11g(0.34mol)と塩酸0.2gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物の1質量%イソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPC測定したところ重量平均分子量は6,500であった。
【0093】
[製造例3]
還流塔と滴下ロートを備えた500mLの4つ口フラスコにトリエトキシシラン4.77g(0.029mol)とイソプロパノール100gを入れ、ドライアイス−エタノール浴で冷却した。25質量%のジクロロシランのキシレン溶液9.4g(0.023mol)をシリンジにて滴下した。0℃まで昇温した後、水2.4gを滴下した。滴下終了後2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物の1質量%イソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPC測定したところ重量平均分子量は4,500であった。
【0094】
シリカ粒子に由来する構造を有する反応物の製造例
[製造例4]
蒸留塔及び滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、触媒化成工業製の平均粒子径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003,45g、イソプロパノール200gを入れ、上記製造例2で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液126gを室温で滴下した。滴下終了後、キシレン200gを追加した後、オイルバス中100℃に昇温し、4時間還流した。還流後にオイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を得た。得られた反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮した。
【0095】
[製造例5]
蒸留塔及び滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒子径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、142.86gとイソプロパノール500gを入れ、上記製造例3で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノールとキシレン混合溶液117gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、前述一般式(4)で表されるシラン化合物であるトリエトキシシラン9.02g(0.055mol)をキシレン10gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にキシレン200gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。
【0096】
トレンチ埋め込み用組成物の調製
[実施例1]
製造例1で製造した水素化ポリシラン化合物の20質量%キシレン溶液6gと製造例4で製造したシリカ粒子に由来する構造を有する反応物の20質量%キシレン溶液4gを混合し、トレンチ埋め込み用組成物を調製した。上記トレンチ埋め込み用組成物を6インチのSi基板上に2mL滴下し、回転速度500rpmで10秒間、及び回転速度1000rpmで30秒間の2段階でスピンコートを行った。この基板を空気中、50℃、100℃、200℃のホットプレート上でこの順に2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られた塗膜はクラック、ハジキや異物の観察されない均一なものであり、成膜性は良好であった。
【0097】
上記塗膜が形成されたSi基板を酸素雰囲気下、5℃/分で400℃まで昇温し、水蒸気を30分間流して焼成した。雰囲気を窒素に切り替え、30分放置後、700℃まで昇温し、1時間焼成し、2℃/分で室温まで降温した。焼成後のSi基板上の塗膜の膜厚は1.0μmであり、クラック、ハジキや異物の観察されない均一なものであり、クラック耐性は良好であった。
【0098】
また上記トレンチ埋め込み用組成物を、開口幅100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSiチップに1mL滴下し、同様に上記条件でスピンコート、プリベーク、焼成を行った。得られた焼成後の基板をトレンチに沿って割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、トレンチ内に局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認められず、埋め込み性は良好であった。
【0099】
[実施例2]
製造例1で製造した水素化ポリシラン化合物の20質量%キシレン溶液6gと製造例5で製造したシリカ粒子に由来する構造を有する反応物の20質量%キシレン溶液4gを混合し、トレンチ埋め込み用組成物を調製した。上記トレンチ埋め込み用組成物のキシレン溶液を、6インチのSi基板と、開口幅100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に、それぞれ実施例1と同条件でスピンコート、プリベーク及び焼成した。焼成後のSi基板上の塗膜の膜厚は1.0μmであった。またプリベーク後の成膜性評価及び焼成後のクラック耐性評価を実施例1と同様に行ったところ、プリベーク後及び焼成後の塗膜はいずれもクラック、ハジキや異物の観察されない均一なものであり、成膜性及びクラック耐性は良好であった。
【0100】
また上記トレンチを有するSi基板を、実施例1と同様の方法で、割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、トレンチ内に局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認められず、埋め込み性は良好であった。
【0101】
[比較例1]
上記製造例1で製造した水素化ポリシラン化合物のキシレン溶液を、6インチのSi基板と、開口幅100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に、それぞれ実施例1と同条件でスピンコート、プリベーク及び焼成し、同様に成膜性及びクラック耐性を評価した。プリベーク後の塗膜にはクラック、ハジキや異物は観察されず良好な成膜性を示した。一方、焼成後の6インチのSi基板上の膜厚は1.0μmであり、クラックが発生していた。トレンチを有するSi基板を、実施例1と同様の方法で、割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、トレンチ内に溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認められず、埋め込み性は良好であった。
以上実施例及び比較例の評価結果を表1に纏める。
【0102】
【表1】

【0103】
表1より、水素化ポリシラン化合物とシリカ粒子に由来する構造を有する反応物とを含む本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、成膜性、クラック耐性、埋め込み性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、例えばフラッシュメモリ等の半導体素子に形成されたトレンチ内の絶縁保護膜用トレンチ埋め込み用組成物の分野等で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ポリシラン化合物と、シリカ粒子に由来する構造を有する反応物とを含むことを特徴とするトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項2】
前記水素化ポリシラン化合物が、下記一般式(1)〜(3):
Sik2k 一般式(1)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
Sik2k+2 一般式(2)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
Sikk 一般式(3)
{式中、kは3以上の50以下の整数である。}
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項3】
前記水素化ポリシラン化合物の含有割合が10質量%以上95質量%以下である、請求項1又は2に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項4】
前記シリカ粒子の平均一次粒子径が1nm以上120nm以下であり、かつ前記シリカ粒子の平均二次粒子径が2nm以上250nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項5】
前記シリカ粒子に由来する構造を有する反応物が、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子、及び任意成分としての下記一般式(4):
nSiX4-n 一般式(4)
{式中、nは、1〜3の整数であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物の縮合反応物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項6】
前記ポリシロキサン化合物が、HSiO3/2基、MeHSiO基、及びH2SiO基から選ばれる少なくとも1種の基を40mol%以上含む、請求項5に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項7】
前記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(5):
HSiX3 一般式(5)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物の縮合反応物であり、かつ該ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上200,000以下である、請求項5又は6に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項8】
前記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(5):
HSiX3 一般式(5)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物と、下記一般式(6)〜(9):
SiX4 一般式(6)
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}
2SiX3 一般式(7)
{式中、R2は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてXは同一でも異なっていてもよい。}
2SiX2 一般式(8)
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてR及びXは同一でも異なっていてもよい。}
3SiX 一般式(9)
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる基であり、そしてRは同一でも異なっていてもよい。}
で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種との縮合反応物であり、該ポリシロキサン化合物中の、一般式(5)で表されるシラン化合物に由来する構造の割合が30mol%以上であり、かつ該ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上200,000以下である、請求項5又は6に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項9】
前記ポリシロキサン化合物、前記シリカ粒子及び前記一般式(4)で表されるシラン化合物の合計に占める前記シリカ粒子の割合が、10質量%以上95質量%以下である、請求項5〜8のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用組成物。
【請求項10】
前記ポリシロキサン化合物、前記シリカ粒子及び前記一般式(4)で表されるシラン化合物の合計に占める、前記一般式(4)で表されるシラン化合物の割合が、40質量%以下である、請求項5〜9のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用組成物。

【公開番号】特開2010−177648(P2010−177648A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21890(P2009−21890)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】