説明

ポリシリコンの製造法

【課題】析出サイクルにおける不純物の濃度を減らす方法を提供する
【解決手段】a)TCSを包含するシリコン含有成分及び水素を含有する反応ガスにより析出反応器中でフィラメント上に多結晶シリコンを析出させ、その際、水素を基準とした該シリコン含有成分のモル飽和度が少なくとも25%である;b)該析出からの排ガスを、該排ガスを冷却するための装置に供給し、c)その際、吸着によって精製された、この凝縮しない成分の第一の物質流を取得し;かつ、d)その際、該吸着ユニットの再生中に、脱着及び洗浄ガスを用いた洗浄により、この凝縮しない成分の第二の物質流を取得し、該物質流はSTCを含有し、かつ、好ましくはSTCをTCSに変換するための変換器に供給することを包含する、ポリシリコンを製造する方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコンの製造法に関する
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン(略記:ポリシリコン)は、るつぼ引き上げ法(チョクラルスキー法若しくはCZ法)により又はゾーンメルト法(フロートゾーン法若しくはFZ法)による単結晶シリコンの製造に際しての出発材料として利用される。この単結晶シリコンは、円盤状の板(ウェハー)に切断され、かつ、多数の機械的、化学的及び化学機械的な加工後に、半導体工業において電子部品(チップ)を作製するために使用される。
【0003】
特に、しかし、多結晶シリコンが、引き上げ法若しくは鋳造法によるモノ結晶シリコン又はマルチ結晶シリコンの製造のためにこれまでよりもいっそう強く必要とされ、その際、このモノ結晶シリコン又はマルチ結晶シリコンは、光電装置用の太陽電池の作製のために利用される。
【0004】
通常、多結晶シリコンは、シーメンス法により製造される。その際、鐘形反応器("シーメンス反応器")中で、シリコンのフィラメントロッド("微細ロッド")が、直接電流を流すことによって加熱され、かつ、シリコン含有成分及び水素を含有する反応ガスが導入される。
【0005】
多結晶シリコンは、特別な流動床反応器(FBR)を用いてペレットの形態で製造されることもでき、その際、シリコン含有成分を含有する反応ガスが、下方からノズルを介して反応室中に導入されることで、既に存在するペレットの流動床が発生し、かつ、シリコン含有成分がペレットの表面で反応してシリコンとなる。
【0006】
通例、反応ガスのシリコン含有成分は、一般組成式SiHn4-n(n=0、1、2、3;X=Cl、Br、I)のモノシラン又はハロゲシランである。有利には、クロロシラン又はクロロシラン混合物であり、とりわけ有利には、トリクロロシランである。
【0007】
主として、SiH4又はSiHCl3(トリクロロシラン、TCS)が水素との混合物において使用される。
【0008】
トリクロロシランが、好ましくは、金属シリコン(MGS−金属グレードシリコン)とHClとの反応を介して、かつ、引き続く蒸留での精製において作製される。シーメンス反応器中のみならず、FBR中でも、析出の間に排ガスが発生し、それは依然として相当な量のシリコンを含むガスを含有する。ガスの組成は、使用されるプロセスに応じて変化する。この排ガスの再処理は、コストの理由から、工業面での関心が高まっていると言える。
【0009】
従来技術から、シリコン析出の排ガスが原則的に再処理されることができるような方法が公知である。
【0010】
相応するサイクルプロセスは、O'Mara,B.Herring,L.Hunt,Handbook of Semiconductor Silicon Technology,ISBN 0−8155−1237−6の第58頁の図7及び8に記されている。
【0011】
析出反応器(シーメンス若しくはFBR)からの排ガスは、その際、二重の凝縮装置に供給され、その凝縮物は、蒸留塔を介して低沸点成分と高沸点成分に分離され、その際、低沸点成分は、再び析出に供給される。
【0012】
高沸点成分は、四塩化ケイ素(STC)を大部分含み、それは変換装置(変換器)中でTCSに変えられることができる。
【0013】
凝縮後に残っている排ガスのガス状の成分は、吸着に供給される。ここで、水素が、ガス流の他の構成成分から分離され、かつ再び析出プロセスに供給される。残っている成分は、更なる凝縮において液状の成分とガス状の成分に分離される。
【0014】
凝縮後に形成される液状の成分は蒸留に供給され、かつ、分離後に析出において再び使用される。ガス状の成分(O'Mara編において図7及び8に"HCl"で示されている)は、塩化水素(HCl)として販売されることができる(O'Mara編における図7を参照されたい)か、又は原料作製において再利用されることができる(O'Mara編における図8を参照されたい)かのいずれかである。
【0015】
O'Mara編に示される方法の欠点は、所望されていない物質、例えばホウ素及びリンが析出において富化し、その結果、析出されたシリコンの品質に悪影響を及ぼすことである。
【0016】
既に前で言及した"吸着"は、水素を、なお含有されているクロロシラン及び、場合によりまたHClから精製するために使用される。
【0017】
その際、クロロシランで及び、場合によりまた塩化水素で汚染された水素が、高い圧力(5〜20barの圧力、有利には9〜16barの圧力)及び低い温度(基準的なオーダーT1=20℃)で活性炭の層に送られる。活性炭の代わりに、DE1106298Bに記載されるようなモレキュラーシーブも用いられることができる。或いはまた、活性炭に加えて、酸化ケイ素及びアルミノケイ酸塩も吸着剤として用いられることができる(CN101279178Aを参照されたい)。
【0018】
不純物は、活性炭に物理的及び/又は化学的に吸着される。
【0019】
活性炭は、これらの所望されていない物質による負荷後に再生工程によって負荷が除かれる。その際、圧力は低下され(基準的なオーダーP2=1bar)、かつ、温度は高められる(基準的なオーダーT2=200℃)。
【0020】
高い温度及び低い圧力にて、事前に吸着されたガス構成成分が脱着、つまり、洗浄ガスに放出される。
【0021】
通常、洗浄ガス(水素)は、その後に、低い温度にて液状の成分をガス状の成分から分離するために不純物と一緒に冷却される。これは、例えばDE2918060A1から公知である。
【0022】
その後に、吸着剤は再び冷却され、かつ再び吸着に利用可能である。
【0023】
従来技術において主としてHClを含むガス状の成分は、原料作製に供給される(O'Mara編における図7及び8を参照されたい)。
【0024】
液状の成分は、従来技術において蒸留に供給され、その際、沸点が低い成分と沸点がより高い成分が分離される。沸点が低い成分は析出に供給され、かつ、沸点がより高い成分は変換に供給される。
【0025】
通常、それぞれ別の段階に存在するいくつかの吸着剤が、連続的な吸着性能を保証するために用いられる。
【0026】
使用されるべき吸着剤の数は、相応する"吸着"、"加熱"、"脱着"及び"冷却"段階における滞留時間によって決められる。
【0027】
"吸着"段階が他の段階に比較して長ければ長いほど、それだけ一層、同時に作用させられなければならない吸着剤が少なくなる。
【0028】
吸着剤のための資本費を減らすために、たいていは、"加熱"、"脱着"及び"冷却"段階の時間を可能な限り短く保つことが試みられる。
【0029】
従来技術において示される、低沸点成分を脱着から析出プロセスに完全に返送することは、不純物、なかでもホウ素及びリン(或いはまた、Al、As、C)が、析出サイクルにおいて蓄積/富化することにつながり、その結果、製造されたシリコン中でより高い濃度が生じることになる。
【0030】
たしかに、全てのクロロシランが析出プロセスにおいて得られるが、しかしながら、析出されたシリコンの品質は下がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】DE1106298B
【特許文献2】CN101279178A
【特許文献3】DE2918060A1
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】O'Mara,B.Herring,L.Hunt,Handbook of Semiconductor Silicon Technology,ISBN 0−8155−1237−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
それゆえ、本発明の課題は、析出サイクルにおける不純物の濃度を減らす方法を提供することであった。
【0034】
更なる課題は、全てのクロロシランを物質サイクルにおいて最適に利用することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0035】
第一の課題は、シリコンを含有する成分及び水素を含む反応ガスにより析出反応器中でフィラメント上にポリシリコンを析出させる方法によって解決され、その際、水素を基準としたシリコンを含有する成分のモル飽和度は少なくとも25%である。
【0036】
好ましくは、水素を基準としたシリコンを含有する成分のモル飽和度は少なくとも30%である。
【0037】
好ましくは、シリコンを含有する成分は、ハロゲンシラン、とりわけ有利にはクロロシラン、極めて有利にはトリクロロシランを包含する。
【0038】
2つ目の課題は、ポリシリコンを製造する方法であって、
a)トリクロロシランを包含するシリコン含有成分及び水素を含有する反応ガスにより析出反応器中でフィラメント上に多結晶シリコンを析出させること、その際、水素を基準としたシリコン含有成分のモル飽和度は少なくとも25%である;
b)析出からの排ガスを、排ガスを冷却するための装置に供給すること、
i)その際、冷却によって凝縮する、STCを含有する排ガスの成分を、凝縮物の蒸留精製を可能にする装置に導き、かつ
ii)冷却に際して凝縮しない成分を、吸着ユニット若しくは脱着ユニットに導く;
c)その際、吸着によって精製された、この凝縮しない成分の、水素を含有する第一の物質流を得ること;及び
d)その際、吸着ユニットの再生の間に、脱着及び洗浄ガスを用いた洗浄により、この凝縮しない成分の第二の物質流を得て、該物質流はSTCを含有し、かつ、好ましくはSTCをTCSに変換するための変換器に供給すること、
を包含する方法によって解決される。
【0039】
本発明による方法を、以下ではまた図1〜7を手がかりにして説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の範囲における有利なサイクルプロセスを示す図
【図2】脱着からのガスによる変換を示す図であって、その際、ガスは、反応器と冷却区域の間に供給する
【図3】クロロシランのモル飽和度に依存した、析出反応器の排ガス中のHCl濃度の経過を示す図
【図4】本発明の範囲における有利なサイクルプロセスを示す図
【図5】脱着からのガスによる変換を示す図であって、その際、ガスは、反応器に直接供給する
【図6】変換器の概略的な構造を示す図であって、例えば、それは本発明の範囲において、特に脱着されたガスを該変換器に直接供給する際に利用することができる
【図7】加熱エレメント及び偏向エレメントを備えた変換器の概略的な構造を示す図であって、例えば、それは本発明の範囲において、特に脱着されたガスを該変換器に直接供給する際に利用することができる
【0041】
図1は、吸着剤13の再生の間に脱着によって取得された物質流113を、変換15に完全に送ることを示す。
【0042】
析出11のために、シリコンを含有する成分(例えばTCS又はDCS)が必要とされ、該成分は、一方では新しいTCS119と、他方では再使用可能なTCS118を含有する。
【0043】
析出に必要とされる水素は、再処理された水素110と、水素損失を調整するために新しい水素17も含む。
【0044】
析出からの排ガス流18は、冷却区域12内で冷却し、好ましくは、−60℃以下の温度に冷却し、極めて有利には、HClの露点より低い温度に排ガス中の相応するHCl含有量及び相応する圧力にて冷却する。
【0045】
その際、冷却区域12は、好ましくは、ガス状の物質を冷却するための種々の装置、例えば空気冷却器、冷水運転式の冷却器、ブライン冷却器又は他の冷却媒体(アンモニア、ハロゲン化炭化水素又は液化ガス)を有する冷却器を含む。
【0046】
冷却区域12内で生じる凝縮物112は、1つ又は複数の凝縮物コレクター16に溜め、そして蒸留14に送る。蒸留14の役目は、TCS及びSTCを分離し、そしてTCSを析出118に供給し、かつSTCを変換116に供給することである。
【0047】
冷却区域内で凝縮しないガス成分19は、吸着装置13に送る。
【0048】
そこで、脱着に際して、洗浄ガス111、好ましくは新しい水素で洗浄される複数の吸着剤を断続的に作用させる。
【0049】
そのようにして生じる物質流113は、変換15に送る。
【0050】
吸着において精製した、主として水素を含む物質流110は、析出11に送り戻す。
【0051】
析出、冷却区域、吸着剤から最終的に再び析出に至るまでの物質流は、以下では"析出循環路"と呼ぶ。
【0052】
高温変換15は、水素114の消費下でSTC116をTCS117に変える。変換器の有利な構造については、後でより詳細に述べる。
【0053】
変換の生成物の物質流117は、所望のTCSに加えて、プロセスの選択性に応じて、少なからぬ量のSTCを含む。
【0054】
付加的に、変換に際してHClの物質流115が発生し、それは例えば、金属シリコンの塩素化によるTCSの原料作製のために使用することができる。
【0055】
変換は、好ましくは2つの構成エレメント、すなわち、変換反応器及び専用の冷却区域を含む。
【0056】
図2は、有利には使用される変換の構造を示す。
【0057】
水素を含む物質流21及びHCl22を、変換23のための装置に通す。変換の排ガス流は、脱着の物質流24と混合して冷却区域25に導入する。冷却区域の通過後に、2つの物質流が得られる:冷却区域からの凝縮物26及びHClを含むガス状の成分27。
【0058】
この場合、物質流24がガス状で変換されることがとりわけ好ましい。
【0059】
本発明にとって重要なことは、シリコンを含有する反応ガスの成分のモル飽和度、つまり、例えばトリクロロシランの飽和度が、析出に際して、そのつど反応ガス中の水素を基準として、25%より高く、好ましくは27%より高く、とりわけ有利には29%より高く、極めて有利には31%より高いことである。
【0060】
同時に、所望されていない物質、例えばホウ素又はリンの濃度が析出サイクルにおいて増大することが回避され、それというのも、該物質は、脱着を介して変換へと運搬されることが明らかだからである。
【0061】
脱着からの物質流24中のHCl濃度は、意想外にも、シリコンを含有する反応ガスの成分、つまり、例えばクロロシラン流の使用される飽和度により、析出プロセスに際して調節することができる。
【0062】
飽和度が小さすぎると、高いHCl濃度が明らかに生じる。
【0063】
析出における飽和度が比較的低いと、変換の冷却区域内で高すぎるHCl濃度が明らかに生じ、これはまた必然的に冷却区域のレイアウトをより大きくすることの要因となり、ひいてはより高い資本金が必要となる。
【0064】
この方法の利点は、シリコンを含有する全ての成分を実質的に再利用することができる点にある。
【0065】
トリクロロシランの飽和度を上昇させることによる試験と測定したHCl濃度の詳細は、図3に見出すことができる。
【0066】
HCl濃度は、15%の飽和度から、飽和度が上昇するにつれて減少する。この点を基準として考える。より小さい飽和度の場合、初めにHCl濃度はほぼ一定に保たれる。25%以上の飽和度の場合、例えばHCl濃度は、基準点に対して半分以下に下がっている。
【0067】
27%以上の飽和度が調節される場合、HCl濃度は、基準点に対して4分の1以下に減る。
【0068】
29%の飽和度から、基準点の10%より小さいHCl濃度が生じる。
【0069】
そして31%の飽和度から、基準点に対して5%より低いHCl濃度に留まる。
【0070】
図4は、更なる有利な循環プロセスを示し、その際、吸着剤43の再生の間、脱着によって取得された物質流413を、ガスクロマトグラフによって物質流中のジクロロシラン(DCS)の割合についてオンライン分析する。
【0071】
DCSのモル百分率が、TCS及びSTCの合計の割合より小さい場合、物質量は、冷却区域の入口側422に三方弁420を介して送る。
【0072】
割合がより大きい場合、物質流422は、変換45に完全に送る。
【0073】
図1に記された循環プロセスと比べて、以下の変更を行った。
【0074】
吸着剤装置43と変換45の間に、ガス流をガス状で三方弁420(これはガス流を冷却区域の入口421又は変換422に送ることができる)に送る。
【0075】
温度は、脱着の間、0.9K/minより小さい速度で高める。
【0076】
開始温度は約20℃であり、最終温度は約160℃である。
【0077】
温度上昇の速度が小さいことは、まず第一に経済的な不利益を意味する。
【0078】
しかしながら、温度上昇の速度が小さいと、意想外にも、脱着の間に、DCS、TCS及びSTCへの大まかな分離が達成される。
【0079】
そのために、吸着剤43から脱着されたガス流を、測定装置を用いてDCS、TCS及びSTCについて調べる。
【0080】
測定装置は、その際、とりわけ有利にはプロセスガスクロマトグラフを含有する。
【0081】
ガス流中のDCSの相対割合が、STC及びTCSのガス成分の合計より高い場合、三方弁は、ガス流が変換に送られるように調節する。
【0082】
そうでない場合、ガス流は、冷却区域の入口に送る。
【0083】
更なる変形例は、洗浄するための、洗浄ガス、理想的には水素を吸着剤に供給することに関する。
【0084】
少なくとも付加的に、水素を、析出サイクル411から直接的に洗浄ガスとして使用することが好ましいと判明した。
【0085】
この場合、可能性として考えられる不純物の付加的な排出が明らかに行われる。
【0086】
図5は、更なる有利な実施形態を示し、これは、吸着剤の再生の間に脱着によって取得された物質流54を、変換反応器53中に直接導入(し、図2に示されるような反応器と冷却区域の間には導入しない)することを予定する。図2に示される通り、変換反応器53に、主としてH2を含有する物質流51及び主としてSTCを含有する物質流52を供給する。その際に形成される生成物流を、凝縮物流56と、主としてHClを含有する物質流57に分離する。
【0087】
その際、脱着から生じるガス混合物54(主としてDCSを含む)を、ガス状で変換反応器の反応ゾーンに直接導入する。
【0088】
とりわけ有利には、その際、図6に示すような反応器を使用する。
【0089】
反応ゾーンRZに直接接続される"より高温の"熱交換器WT1中で、四塩化ケイ素を含む反応体ガス流62を、反応ゾーン(RZ)の排ガスによって加熱する。
【0090】
熱交換器WT1は、グラファイト製、炭化ケイ素製、又は炭化ケイ素で被覆されたグラファイト製である。
【0091】
任意の、しかしとりわけ有利にはスロット66(これは、例えば、管路の狭窄部、適した継手の据え付け又は使用される管路の直径のより小さい形状から構成される)は、熱交換器WT1の出口と加熱ゾーンHZの間の所定の差圧をもたらす。
【0092】
加熱ゾーン内では、反応体ガス流62を加熱エレメントに沿って送ることで、温度を高める。その際、加熱エレメントは、有利にはDE102005046703A1に記載のように構成されている。
【0093】
その際、達成される温度は、反応に必要とされる温度より高くなければならない。
【0094】
そのようにして加熱及び減圧させたこの反応体ガス流62を、反応器の反応ゾーンRZに導入する。
【0095】
反応体ガス流61は、"より低温の"熱交換器ユニットWT2によって加熱し、該熱交換器ユニットは、有利には鋼製又はステンレス鋼製であり、熱交換器ユニットWT71が接続されており、かつ、より低温の生成物ガスに既にいくぶん曝されている。
【0096】
反応体流61は、熱交換器ユニットWT2内での加熱後に1つ以上のノズル67を介して反応ゾーンに送る。
【0097】
その際、熱交換ユニットWT2内での加熱後の反応体ガス流61の温度は、反応に必要とされる温度より低い。
【0098】
反応体ガス流61は、RZにおける反応に不可欠な水素を含む。
【0099】
熱交換器ユニットWT1内の生成物流は既に十分に冷却されていたので、熱交換器ユニットWT2に鋼を使用することはプロセス工学的に問題ない。
【0100】
空時収量の理由により、変換反応器は、高められた圧力範囲で稼働させる。
【0101】
それゆえ、個々の反応体流、それに生成物流は、高められた圧力も有する。
【0102】
それゆえ、熱交換器、特に(ステンレス)鋼製の熱交換器は、圧力に耐える反応器のシェル65内に配置することが好ましく、それというのも、熱交換器はその時に、小さい機械的強度のみを有している必要があり、かつ、可能性として考えられる熱交換器の僅かに漏れのある箇所が、いかなる生成物流出ももたらし得ないか又はそれどころか安全リスクも結果としてもたらし得ないからである。
【0103】
好ましくは、反応ゾーンの底部に取り付けられた更なる中心ノズルを介して、脱着されたガス流を第三の反応体流63として注入する。
【0104】
付加的な中心ノズルを備えた相応する装置は、図7に概略的に記している。
【0105】
中心ノズル77によって、脱着されたガス流73を、好ましくは、予め加熱せずにガス状で反応器中に導入する。
【0106】
四塩化ケイ素72を含む反応体流を、耐圧ハウジングの内壁75に沿って、第一の円筒状の偏向エレメント79の通過後に加熱ゾーンに導き、該ゾーン中には活発に加熱された加熱エレメント78が存在する。例えば、この加熱エレメントは電気抵抗加熱器として設計してよいが、或いはまた誘導加熱法も考えられる。
【0107】
加熱エレメントは、個々に半径方向に分布して存在していてよいが、又はリング全体を形成する雷文模様のバンドヒーターから、又は複数の雷文模様の加熱部リングから成っていてもよい。雷文模様の加熱エレメントの詳細な説明は、特許文献WO03/073794A1に示されている。
【0108】
円筒状の偏向エレメントが、それに限定されることなく、例えば単純なグラファイト製の中空シリンダーから成っていてよい。偏向エレメントにより、ガスの主たる流れ方向が180°変わることになる。
【0109】
前述の反応体流は、前述の加熱エレメントに沿って導き、そのようにしてより高い温度に加熱する。その後、反応体流は、第二の円筒状の偏向エレメント79を通過する。第三の偏向エレメント79の通過後に初めて、四塩化ケイ素を含有する反応体流にノズル環76を介して水素を含む更なる反応体流71を添加する。この場合、装置の反応ゾーンが開始され、該反応ゾーン内で、2つの反応体流が混ざり、そして所望の生成物へと反応する。
【0110】
2つの更なる円筒状偏向エレメント79の通過後に、このガス流に更なる反応体流、すなわち、ジクロロシランを含む脱着されたガス流73が、反応ゾーン内で中心に取り付けられたノズル77を介して添加する。反応体ガス流の全ての成分は、それらが生成物流74として反応ゾーンを第一の熱交換器ユニットの方向に向かって抜ける前に互いに所望の反応を起こすことができる。
【0111】
反応の化学平衡が生じる反応ゾーン(RZ)内での温度は、トリクロロシランとHClを得るための反応体流の四塩化ケイ素と水素の反応に必要とされる吸熱エネルギーを差し引いた、四塩化ケイ素と水素の総量の混合温度より生じる。
【0112】
脱着からのガス流は、とりわけ有利には反応器中の中心ノズル73によって導入する。
【0113】
それによって、相対選択率は、DCSを用いない変換を基準として165%に高まる。
【0114】
相対選択率は、四塩化ケイ素に対するトリクロロシランのモル割合によって示される。
【0115】
前提条件として、析出において25%、より良好には30%のクロロシラン飽和度を使用した。
【0116】
析出に際しての飽和度が20%より小さいことにより、変換に際しての相対選択率は非常に低下する。
【符号の説明】
【0117】
11 析出、 12 冷却区域、 14 吸着/脱着、 15 変換、 16 凝集物コレクター、 17 新しい水素を含む物質流、 18 STC及びTCSを含む析出からの排ガス流、 19 冷却区域12の通過後に残っているガス状の成分の物質流、 110 再処理された水素を含む物質流、 111 脱着用の洗浄ガスとして水素を含む物質流、 112 冷却に際して生じる凝縮物の物質流、 113 脱着によって取得された物質流、 114 変換15のための水素を含む物質流、 115 HClを含む物質流、 116 STCを含む物質流、 117 STC及びTCSを含む物質流、 118 再利用のために析出11において予定されたTCSを含有する物質流、 119 新しいTCSを含有する物質流、 21 水素を含む物質流、 22 STCを含む物質流、 23 変換のための装置、 24 DCSを含有する物質流、 25 冷却区域、 26 冷却区域25からの凝縮物の物質流、 27 HClを含む物質流、 41 析出、 42 冷却区域、 43 吸着/脱着、 44 蒸留、 45 変換、 46 凝縮物コレクター、 47 新しい水素を含む物質流、 48 析出からのSTC及びTCSを含む排ガス流、 49 冷却区域42の通過後に残っているガス状の成分の物質流、 410 再処理された水素を含む物質流、 411 選択的に物質流410から取り出された、脱着のための洗浄ガスとして水素を含む物質流、 412 冷却に際して生じる凝縮物の物質流、 413 脱着によって取得された物質流、 414 変換15のための水素を含む物質流、 415 HClを含む物質流、 416 STCを含む物質流、 417 STC及びTCSを含む物質流、 418 再利用のために析出41において予定されたTCSを含有する物質流、 419 新しいTCSを含有する物質流、 420 三方弁、 421 冷却区域の入口側に向かう物質流、 422 変換のための流、 51 水素を含む物質流、 52 STCを含む物質流、 53 変換のための装置、 54 DCSを含む物質流、 55 冷却区域、 56 冷却区域55からの凝縮物の物質流、 57 HClを含む物質流、 61 水素を含む反応体ガス流、 62 四塩化ケイ素(STC)を含む反応体ガス流、 63 反応ゾーンの中に入る第三の反応体流としての脱着されたガス流、 64 冷却区域に向かう変換器の排ガス流、 65 圧力に耐える反応器のシェル、 66 スロットル、 67 1つ又は複数のノズル、 WT1 熱交換器1、 WT2 熱交換器2、 HZ 変換器の加熱ゾーン、 RZ 変換器の反応ゾーン、 71 水素を含む反応体流、 72 四塩化ケイ素を含む反応体流、 73 脱着されたガス流、 74 トリクロロシラン及びHClを含む生成物流、 75 下方の基部及び外被を含む、耐圧ハウジングの内壁、 76 反応体流の水素用のノズル環、 77 脱着されたガス流用のノズル、 78 加熱エレメント、 79 円筒状のガス偏向エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有成分及び水素を含む反応ガスにより析出反応器中でフィラメント上に多結晶シリコンを析出させる方法であって、その際、該水素を基準とした該シリコン含有成分のモル飽和度が少なくとも25%である、多結晶シリコンを析出させる方法。
【請求項2】
前記水素を基準とした前記シリコン含有成分の前記モル飽和度が少なくとも30%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン含有成分がトリクロロシランを包含する、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポリシリコンの製造法であって、
a)トリクロロシランを包含するシリコン含有成分及び水素を含有する反応ガスにより析出反応器中でフィラメント上に多結晶シリコンを析出させること、その際、水素を基準とした該シリコン含有成分のモル飽和度が少なくとも25%である;
b)該析出からの排ガスを、該排ガスを冷却するための装置に供給すること、
i)その際、該冷却によって凝縮する、四塩化ケイ素を含有する該排ガスの成分を、該凝縮物の蒸留精製を可能にする装置に導き、かつ
ii)該冷却に際して凝縮しない成分を、吸着ユニット若しくは脱着ユニットに導く;
c)その際、吸着によって精製された、この凝縮しない、水素を含有する成分の第一の物質流を取得すること;及び
d)その際、該吸着ユニットの再生中に、脱着及び洗浄ガスを用いた洗浄により、この凝縮しない成分の、四塩化ケイ素を含有する第二の物質流を取得すること、
を包含する方法。
【請求項5】
b)における前記排ガスを、−60℃以下の温度に冷却する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
d)による前記脱着の前記第二の物質流を、四塩化ケイ素をトリクロロシランに変換するための変換器に供給し、その際、前記変換器が反応器及び冷却区域を包含し、かつ、前記第二の物質流を反応器と冷却区域の間で変換器中に導入し、かつ、そこで前記変換の生成物ガス流と混合する、請求項4又は請求項5記載の方法。
【請求項7】
d)による前記脱着の前記第二の物質流を、四塩化ケイ素をトリクロロシランに変換するための変換器の反応ゾーンにガスの状態で直接導入する、請求項4又は請求項5記載の方法。
【請求項8】
d)において、前記脱着の前記物質流を、前記物質流中のジクロロシランの割合について調べ、その際、前記物質流中のジクロロシランの百分率が、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素の合計の割合より大きい場合、前記物質流を、b)による前記析出の前記排ガスを冷却するための装置に送り、そして前記析出の前記排ガスと混合する、請求項4から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記脱着の間の前記温度を0.9K/minより小さい速度で高める、請求項4から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
c)により吸着によって精製された前記第一の物質流からの水素を、a)による前記析出における反応ガスとして使用する、請求項4から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
c)により吸着によって精製された前記第一の物質流からの水素を、d)による前記脱着に際しての洗浄ガスとして使用する、請求項4から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程a)における水素を基準とした前記シリコン含有成分の前記モル飽和度が少なくとも30%である、請求項4から11までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14504(P2013−14504A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150744(P2012−150744)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】