説明

ポリシリコン薄膜とその製造方法およびそれを用いた太陽電池とTFT、TFTアレイ、表示デバイスとそれらの製造方法

【課題】
反応性の単分子膜で被覆したシリコンナノ微粒子を用いたシリコンペーストを選択的に塗布し、レーザー照射することにより、単分子膜を分解除去し、微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜を用いてTFTを形成することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のシリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程により、n(またはp)型のポリシリコン薄膜を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコン薄膜とその製造方法およびそれを用いた太陽電池とTFT、TFTアレイ、表示デバイスとそれらの製造方法に関するものである。
さらに詳しくは、半導体性シリコン微粒子の表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与したシリコン微粒子を用いてペーストを作成し、前記シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、硬化する工程と、真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー光を照射してポリシリコン化することを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法に関するものである。
【0002】
半導体性シリコン微粒子の表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与したシリコン微粒子を用いてシリコン微粒子ペーストを作成し、前記シリコン微粒子ペーストをシリカ膜または高融点金属膜介して基板表面に塗布する工程と、硬化する工程と、真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー光を照射してポリシリコン化することを特徴とする太陽電池とその製造方法。
【0003】
および、半導体性シリコン微粒子の表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与したシリコン微粒子を用いてペーストを作成し、前記シリコン微粒子ペーストをシリカ膜を介して基板表面に選択的に印刷して、硬化する工程と、さらに真空中あるいは不活性ガス中でレーザー光を照射し加熱して前記有機被膜を分解除去すると共に、前記シリコン微粒子を再結晶化してポリシリコン薄膜を形成することを特徴とするTFTやTFTアレイ及びそれを用いた表示デバイスとそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
従来、表示デバイス用のTFTアレイのチャネル領域の形成には、プラズマCVD法により形成したアモルファスシリコン(α―シリコン)薄膜や、さらにそのアモルファスシリコンをレーザーアニールしたポリシリコン薄膜が用いられている。
例えば、アモルファス型シリコンを用いたものには、下記特許がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-163500
【特許文献2】特開2001-188252また、例えば、ポリシリコンを用いたものには、下記特許がある。
【特許文献3】特開2001-339070
【特許文献4】特開2003-280038
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のプラズマを用いたアモルファス型シリコン薄膜やポリシリコン薄膜の製造は、半導体層の形成に真空装置を用いるため、p−n接合やTFTを形成する半導体薄膜を必要な部分にのみ選択的に形成することは難しかった。
そこで、一般には、基板表面に全面薄膜を形成し、ホトリソ法等を用いて不要部をエッチング除去する方法が用いられており、極めて効率が悪かった。
【0007】
本発明は、反応性の単分子膜で被覆したシリコンナノ微粒子を用いたシリコンペーストを選択的に塗布し、レーザー照射することにより、単分子膜を分解除去し、シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜を用いて太陽電池やTFTアレイを形成することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、少なくとも基板上でシリコン微粒子から再結晶化されていることを特徴とするポリシリコン薄膜である。
【0009】
第二の発明は、第一の発明において、基板がガラスであり、アルカリバリヤー層としてのシリカ(SiO)膜またはバック電極用の高融点金属膜(Cr,Mo,Ta等)を介して基板上に形成されていることを特徴とするポリシリコン薄膜である。
【0010】
第三の発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のシリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記第1のシリコン微粒子ペーストをシリカ膜またはバック電極用の高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程を含むことを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法である。
【0011】
第四の発明は、第三の発明において、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法である。
【0012】
第五の発明は、表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第2のシリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記第2のシリコン微粒子ペーストをシリカ膜またはバック電極用の高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中またはArやHe等の不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程を含むことを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法である。
【0013】
第六の発明は、第五の発明において、第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法である。
【0014】
第七の発明は、少なくともpn接合部が、シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜で形成されていることを特徴とする太陽電池である。
【0015】
第八の発明は、第七の発明において、基板がガラスであり、シリカ膜または高融点金属膜を介して基板上に形成されていることを特徴とする太陽電池である。
【0016】
第九の発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストをMoやTa,Cr,W等の高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0017】
第十の発明は、第九の発明において、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0018】
第十一の発明は、表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第2のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程と、
p(またはn型)不純物を拡散する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0019】
第十二の発明は、第十一の発明において、第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0020】
第十三の発明は、少なくともチャネル部分が、シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜で形成されていることを特徴とするTFTである。
【0021】
第十四の発明は、第十三の発明のTFTが、透明基板表面に複数個形成されていることを特徴とするTFTアレイである。
【0022】
第十五の発明は、第十四の発明のTFTアレイと液晶を用いたことを特徴とする表示デバイスである。
【0023】
第十六の発明は、第十四の発明のTFTアレイと有機ELを用いたことを特徴とする表示デバイスである。
【0024】
第十七の発明は、第十三の発明のTFTが少なくとも駆動回路部に用いられていることを特徴とする表示デバイスである。
【0025】
第十八の発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のp(またはn)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記p(またはn)型シリコン微粒子ペーストをシリカ膜を介して基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
絶縁膜の一部を除去する工程と、
金属配線を形成する工程を有するTFTやTFTアレイの製造方法である。
【0026】
第十九の発明は、第十八の発明において、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とするTFTやTFTアレイの製造方法である。
【0027】
第二十の発明は、表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第4のp(またはn)型シリコン微粒子ペースト(または第5のn型シリコン微粒子ペースト)を作成する工程と、
前記p(またはn)型シリコン微粒子ペーストをシリカ膜を介して基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
絶縁膜の一部を除去する工程と、
金属配線を形成する工程を有するTFTやTFTアレイの製造方法である。
【0028】
第二十一の発明は、第二十の発明において、第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とするTFTやTFTアレイの製造方法である。
【0029】
第二十二の発明は、第三乃至六、九乃至十二、十八乃至二十の発明において、反応性官能基を含む有機膜が化学吸着単分子膜であることを特徴とするポリシリコン薄膜や太陽電池、TFT、TFTアレイの製造方法である。
【0030】
第二十三の発明は、第十三および十四の発明のTFTアレイの上に液晶を載置する工程を含むことを特徴とする表示デバイスの製造方法である。
【0031】
第二十四の発明は、第十三および十四の発明のTFTアレイの上に有機ELを載置する工程を含むことを特徴とする表示デバイスの製造方法である。
以下、さらに、本願発明の要旨を説明する。
【0032】
本発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程を含むことを特徴とするn(またはp)型のポリシリコン薄膜の製造方法により、
少なくとも基板上でn(またはp)型シリコン微粒子から再結晶化されていることを特徴とするポリシリコン薄膜を製造することを要旨とする。
【0033】
このとき、基板がガラスの場合は、ポリシリコン層へのアルカリ成分の拡散を防ぐため、基板上にシリカ(SiO)膜またはSiより融点が高い高融点金属膜(MoやTa,Cr,W等)を介してポリシリコン薄膜を形成する必要がある。
また、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いておけば、互いに反応させて硬化できる。
【0034】
あるいは、表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第2のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程を含むことを特徴とするn(またはp)型のポリシリコン薄膜の製造方法により、少なくとも基板上でシリコン微粒子から再結晶化されていることを特徴とするポリシリコン薄膜を製造する。
【0035】
このとき、第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いておけば、互いに反応させて硬化できる。
【0036】
さらにまた、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程とp(またはn型)不純物を拡散する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法により、少なくともpn接合部が、n(またはp)型シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜に形成されている太陽電池を製造する。
【0037】
このときも、基板がガラスの場合は、ポリシリコン層へのアルカリ成分の拡散を押さえるため、基板上にシリカ膜または高融点金属膜を介してポリシリコン薄膜を形成する必要がある。あるいは、高融点金属薄板を基板としてそのまま用いても良い。
また、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いると、レーザー照射前に硬化できて都合がよい。
【0038】
あるいは、表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第2のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射してポリシリコン化する工程と、p(またはn型)不純物を拡散する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法により、少なくともpn接合部が、型シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜で形成されている太陽電池を製造する。
【0039】
このとき、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いておけば、互いに反応させて硬化できる。
また、このとき、第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いておけば、互いに反応させて硬化できる。
【0040】
さらにまた、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のp(またはn)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記p(またはn)型シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
絶縁膜を形成する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
絶縁膜の一部を除去する工程と、
金属配線を形成する工程を有するTFTやTFTアレイの製造方法、
【0041】
あるいは、表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第4のp型シリコン微粒子ペースト(または第5のn型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
絶縁膜を形成する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
絶縁膜の一部を除去する工程と、
金属配線を形成する工程を有するTFTやTFTアレイの製造方法により、
少なくともチャネル部分が、シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜で形成されているTFTを提供する。
【0042】
さらに、透明基板表面に、上記TFTが複数個形成されていることを特徴とするTFTアレイを提供する。
このとき、TFTが少なくともTFTアレイの駆動回路部に用いられていると駆動速度の大きなTFTアレイを提供できる。
【0043】
また、このとき、第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いるか、第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いると微粒子を硬化でき、レーザー照射時の微粒子の飛散防止に都合がよい。
【0044】
さらに、反応性官能基を含む有機膜が化学吸着単分子膜であると、ポリシリコン薄膜中への炭素成分の混入を最少にできる。
さらにまた、前記TFTアレイの上に液晶、または有機ELを載置すれば、それぞれ液晶、または有機EL表示デバイスを提供できる。
【発明の効果】
【0045】
以上説明したとおり、本発明のように、反応性の単分子膜で被覆したシリコン微粒子を用いて作成したペーストとレーザー加熱法を組合わせて用いれば、印刷やインクジェット方式にて活性層となるポリシリコン層(p−n接合層)を塗布形成できるので、従来のプラズマを用いたアモルファス型シリコン薄膜やポリシリコン薄膜を全面形成し、部分的にエッチング除去する方法に比べて極めて高効率に変換効率の高い太陽電池や、高速駆動に適したTFTアレイ、及びそれを用いた高速表示デバイスを提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施例におけるn(またはp)型シリコン微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のn(またはp)型シリコン微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【0047】
【図2】本発明の第1の実施例における高融点金属薄膜形成基板表面にn(またはp)型シリコン微粒子膜を形成した状態の概念図を示す。
【0048】
【図3】本発明の第1の実施例におけるポリシリコン微粒子を用いた太陽電池断面概念図を示す。
【0049】
【図4】本発明の第2の実施例におけるp(またはn)型シリコン微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のp(またはn)型シリコン微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、表面全体がエポキシ基で被われたp(またはn)型シリコン微粒子を概念的に示している。
【0050】
【図5】本発明の第2の実施例におけるSiO付き基板表面にp(またはn)型シリコン微粒子膜を形成した状態の概念図を示す。
【0051】
【図6】本発明の第2の実施例におけるSiO付き基板表面にポリシリコン薄膜を形成した状態の断面概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(第1の実施の形態)
本発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp型)型シリコン微粒子ペーストを高融点金属膜が形成された基板(高融点金属薄板をそのまま基板として用いても良い。)表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザーアニールしてポリシリコン化する工程と、前記ポリシリコンの導電型と異なる不純物を拡散した後、透明電極または櫛形電極を取り付けて太陽電池を製造する。
ここで、レーザーアニールには、一般にポリシリコン型TFTアレイの製造に利用されている、短波長(紫外光)レーザー光を用いて瞬時にアモルファスシリコン薄膜を融解させ結晶成長させる手法が利用可能である。
【0053】
(第2の実施の形態)
表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のp(またはn)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記p(またはn)型シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
絶縁膜を形成する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
絶縁膜の一部を除去する工程と、
金属配線を形成する工程によりTFTアレイを製造する。
さらには、そのTFTアレイの表面に液晶または有機EL膜を載置し、液晶表示装置または有機EL表示装置を提供する。
【0054】
したがって、本発明では、印刷やインクジェット方式にてポリシリコン活性層を形成できるので、極めて低コストで高効率太陽電池を製造提供できる作用がある。また、応答速度(電子移動度)がアモルファス型シリコンの数十乃至数百倍の性能を有するポリシリコンTFTを製造できるため、高速表示特性に優れた表示装置を製造提供できる作用がある。
【0055】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、本発明に於ける、太陽電池やTFTアレイの製造方法は、印刷法とレーザーアニール法にてポリシリコン層を基板表面に選択的に形成する工程以外は、通常のポリシリコンを用いた太陽電池やTFTアレイの製造方法と何等変わらないので詳しく記載することは省略する。
【実施例1】
【0056】
1.〈化学吸着液の調製1〉
まず、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)あるいは(化2)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、あるいは有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、型シリコンとジメチルホルムアミドを同量混合した溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン50%とジメチルホルムアミド50%の溶液に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0057】
【化1】

【0058】
【化2】

【0059】
2.〈エポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp型)型シリコン微粒子の作製〉
次に、粒径が30〜20nm程度のn型(またはp)型シリコン微粒子1を用意し、水を含まない溶媒で洗浄し、よく乾燥した後、前記吸着液にn型(またはp)型シリコン微粒子1を混入撹拌して普通の空気中で(湿度は低い方が良いが、相対湿度45%でも問題はなかった。)で2時間程度反応させた。このとき、n型(またはp)型シリコン微粒子1表面のダングリングボンドには水酸基2が多数結合しているの(図1a)で、前記化学吸着剤の−型シリコン(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒あるいは有機酸存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化3)あるいは(化4)に示したような結合を形成し、シリコン微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3あるいはアミノ基を含む化学吸着膜4が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図1b、1c)。
【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
その後、トリクレン等の塩素系溶媒を添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子を作製できた。
【0063】
なお、形成された被膜は、シリコン微粒子の酸化の進行を防止できる機能があった。
【0064】
このとき、微粒子に対する吸着剤分子の量が適量になる様に調整すれば、洗浄せずに空気中に取り出しても、反応性はほぼ変わらず、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が粒子表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のオリゴマー乃至ポリマー膜が形成されたシリコン微粒子が得られた。
【0065】
また、この方法の特徴は、脱アルコール反応であるため、乾燥雰囲気を必要としないことであり、量産性に優れている。
【0066】
3.〈n(またはp)型シリコン微粒子を含むペーストの作成〉
次に、前記エポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子をそれぞれ同程度取りイソプロピルアルコール中で十分混合してn(またはp)型シリコン微粒子をペースト化した。
【0067】
4.〈n(またはp)型シリコン微粒子膜の形成1〉
図2に示したように、あらかじめガラス基板11表面に形成された高融点金属膜(Siより融点が高いMoやTa,Cr,W等をガラス基板表面に蒸着した基板良い。)12の上にn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを印刷(印刷法は、スクリーン印刷やインクジェット印刷法等が利用できた。)し、50〜100℃程度に加熱すると、下記式(化5)に示したような反応でエポキシ基とアミノ基が付加して、シリコン微粒子はバインダーを含まなくても硬化して、膜厚が1ミクロン程度のn型シリコン微粒子の塗膜13を形成した。
ここで、14,15は、それぞれエポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子である。
【0068】
【化5】

【0069】
5.〈n(またはp)型ポリシリコン薄膜の形成1〉
次に、基板を1×10-7Torrに真空排気した結晶化室に搬入して、予備加熱温度300℃に維持したままでXeCl(KrFでも良い。)エキシマレーザーを照射して前記n(またはp)型シリコン微粒子の塗膜を1700度程度まで加熱して冷却すると、前記単分子膜は有機物なので分解して飛散し、n(またはp)型シリコン微粒子は瞬時に融解するが温度が低下するに伴って再結晶化してn(またはp)型ポリシリコン薄膜16を形成できた。
なお、このとき、塗布されたシリコン微粒子塗膜は灰色乃至黒色であり、紫外光は、大部分透過せずにn(またはp)型シリコン微粒子膜に吸収された。
【0070】
6.〈太陽電池の製造〉
さらに、詳細は省略するが、通常のポリシリコン結晶板を用いた太陽電池の製造方法と同様にして、このn(またはp)型ポリシリコン薄膜にp(またはn)型不純物をイオン注入し、アニールすれば、p-n接合を形成でき、最後に銀ペーストを格子状に印刷するか、透明電極(例えば、ITO) 17(または格子状電極)を載置すると、透明電極側から光18を受光する11%程度の耐候性が高く且つ高効率の太陽電池19を製造できた。(図3)
【0071】
なお、n(またはp)型シリコンペースト塗布時、あらかじめ同様の方法で高融点金属膜12表面にもエポキシ基あるいはアミノ基を持つ単分子膜20を形成しておくと、n(またはp)型シリコン微粒子の表面の単分子膜は、高融点金属膜12表面の単分子膜20とも反応して、接着強度の高い被膜となった。(図2)
【0072】

また、n(またはp)型シリコン微粒子の表面の反応性の単分子膜は、n(またはp)型シリコン微粒子を硬化製膜する働き、およびn(またはp)型シリコン微粒子の空気中での酸化を防ぐ働きをした。
【0073】
さらに、この反応性の単分子膜は、厚みが1nm程度であるため、レーザーアニール時にレーザー加熱で簡単に飛散した。分析はしてないが、多少炭素がポリシリコン中に残ってもn(またはp)型シリコンと同族であるためダイオード特性に問題はなかった。
【実施例2】
【0074】

11.〈化学吸着液の調整2〉
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化6、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、化学吸着液を調製した。
【0075】
【化6】

【0076】
12.〈ポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子の作製〉

次に、図4に示した様に、p(またはn)型シリコン微粒子31(粒径20nm)を用意し、水を含まない溶媒でよく洗浄して乾燥した。
続いて、前述の化学吸着液中にp(またはn)型シリコン微粒子31を分散させて、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度表面の水酸基32と反応させた。
【0077】
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去してエポキシ基(図中Eで表示)を有する化学吸着単分子膜33で被われたp(またはn)型シリコン微粒子34を作製した。
なお、このとき、単分子膜の厚さは厚さが1nm程度であるが、得られたエポキシ化p(またはn)型シリコン微粒子の耐酸化性は向上していた。
【0078】
13.〈p(またはn)型シリコン微粒子を含むペーストの作製〉
12.で得たエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子100重量部と、架橋性の2−メチルイミダゾール(その他、トリアジンチオール等、多官能の物質が利用できた。)を7重量部架橋剤として添加し、さらにイソプロピルアルコール40重量部を加えたものを十分混合してp(またはn)型シリコン微粒子を含むペーストを作製した。
【0079】
14.〈エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたSiO付きガラス板の製造〉
図5に示した様に、あらかじめCVDで形成したSiO35付きガラス板36を用意し、よく洗浄して乾燥した。
一方、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化11)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、化学吸着液を調製した。
【0080】
次に、前記化学吸着液をSiO付きガラス板のSiO側の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去してエポキシ基を有する化学吸着単分子膜37で被われたSiO付きガラス板36を作製した。
【0081】
15.〈p(またはn)型シリコン微粒膜の製造〉
次に、図5に示した様に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜37で被われたSiO付きガラス板36の表面に、前出のプロセスで得られたp(またはn)型シリコン微粒子ペーストをインクジェット法でTFTを形成することが予定されている部分に塗布し、50〜100℃程度に加熱すると、下記の化学式(化7)に示すような架橋反応により、
基材表面のエポキシ基および微粒子表面のエポキシ基とイミノ基が結合して、p(またはn)型シリコン微粒子は樹脂バインダーを含まなくても基材と結合硬化して、膜厚が500nm程度のp(またはn)型シリコン微粒子の塗膜38を選択的に形成できた。なお、ここで、39は、エポキシ基を有する単分子膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子である。
【0082】
【化7】

16.〈ポリシリコン薄膜の形成2〉
【0083】
次に、基板を1×10-7Torrに真空排気した(ヘリウムガス雰囲気でも良い。)結晶化室に搬入して、予備加熱温度300℃に維持したままでXeCl(KrFでも良い。)エキシマレーザーを照射して前記p(またはn)型シリコン微粒子の塗膜を1700度程度まで加熱して冷却すると、前記単分子膜は分解して飛散し、p(またはn)型シリコン微粒子は瞬時に融解するが温度が低下するに伴って再結晶化してp(またはn)型ポリシリコン薄膜40を形成できた。(図6)
なお、このとき、塗布されたp(またはn)型シリコン微粒子塗膜は灰色乃至黒色であり、紫外光は、大部分透過せずにp(またはn)型シリコン微粒子膜に吸収された。(図6)

17.〈TFTアレイの製造〉
【0084】
このポリシリコン薄膜が形成された基板を用い、通常のポリシリコンTFT アレイの製造方法と同様の方法で、n(またはp)型不純物を選択的にイオン注入し拡散してアニールした後、ソース、ドレーン及びゲート電極を形成すると、ポリシリコン薄膜をエッチングすることなくポリシリコンTFTアレイを製造できた。なお、このときのチャネル部の電界効果移動度は290cm2/V・S程度であり、通常のアモルファスシリコンTFTアレイに比べ100倍以上高性能なTFTアレイを製造できた。 さらに、このTFTアレイを用い有機EL膜を積層し、対向電極を形成すると有機EL表示装置を製造できた。また、このTFTアレイを用いたLCDセルを組み立て液晶を注入すると液晶表示装置を製造できた。
【0085】
なお、上記実施例1では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは(化2)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
【0086】
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化8)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化9)で表される官能基を表す。
【化8】

【0087】
【化9】

【0088】
さらに、反応性基を含む化学吸着剤として、光または電子線等のエネルギービーム反応性官能基を含む下記(17)〜(22)に示した物質が利用できた。この場合は、全面塗布し、選択的に光や電子線等のエネルギービームを照射して、現像すれば、選択的にシリコン微粒子被膜を形成できた。
(17) CH≡C−C≡C−(CH2)15SiCl3
(18) CH≡C−C≡C−(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(19) CH≡C−C≡C−(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(20) (C) (CH)2CO(C)O(CH2)OSi(OCH)3
(21) (C) (CH)2CO(C)O(CH2)OSi(OC)3
(22) (C) CO(CH)2(C)O(CH2)OSi(OCH)3
ここで、(C) CO(CH)2 (C)−はカルコニル基を表す。
【0089】
なお、実施例1に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0090】
また、膜形成溶液の溶媒としては、化学吸着剤がアルコキシシラン系、クロロシラン系、何れの場合も水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。
【0091】
具体的に使用可能なものは、有機塩素系溶媒、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコン、フェニルシリコン、アルキル変性シリコン、ポリエーテルシリコン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0092】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0093】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を1/2〜2/3程度まで短縮できた。
【0094】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0095】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0096】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0097】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0098】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0099】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0100】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
上記2つの実施例では、本発明で得られるポリシリコン薄膜を用いた太陽電池や表示装置を例にしたが、光センサー等にも利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 n(またはp)型シリコン微粒子
2 水酸基
3 エポキシ基を含む化学吸着単分子膜
4 アミノ基を含む化学吸着膜
エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子 アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子
11 ガラス基板
12 高融点金属膜
13 n(またはp)型シリコン微粒子の塗膜
14 アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子
15 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子
16 p型拡散したn(またはp)型ポリシリコン薄膜
17 透明電極
18 入射光
19 太陽電池
20 アミノ基を持つ単分子膜
31 p(またはn)型シリコン微粒子
32 水酸基
33 エポキシ基を含む化学吸着単分子膜(Eは、エポキシ基を表している。)
34 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子
35 SiO薄膜
36 ガラス板
37 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜
38 p(またはn)型シリコン微粒子の塗膜
39 p(またはn)型シリコン微粒子
40 p(またはn)型ポリシリコン薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基板上でシリコン微粒子から再結晶化されていることを特徴とするポリシリコン薄膜。
【請求項2】
基板がガラスであり、シリカ膜または高融点金属膜を介して基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポリシリコン薄膜。
【請求項3】
表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のシリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記シリコン微粒子ペーストをシリカ膜または高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射により溶融再結晶化してポリシリコン化する工程とを含むことを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法。
【請求項4】
第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする請求項3記載のポリシリコン薄膜の製造方法。
【請求項5】
表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第2のシリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記シリコン微粒子ペーストを基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射により溶融再結晶化してポリシリコン化する工程とを含むことを特徴とするポリシリコン薄膜の製造方法。
【請求項6】
第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする請求項5記載のポリシリコン薄膜の製造方法。
【請求項7】
少なくともpn接合部が、シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜で形成されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項8】
基板がガラスであり、ポリシリコン薄膜が高融点金属膜を介して基板上に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池。
【請求項9】
表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と、表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射により溶融再結晶化してポリシリコン化する工程と、
p(またはn型)不純物を拡散する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項10】
第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする請求項9記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたn(またはp)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第2のn(またはp)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記n(またはp)型シリコン微粒子ペーストを高融点金属膜を介して基板表面に塗布する工程と、
硬化する工程と、
真空中または不活性ガス雰囲気中でレーザー照射により溶融再結晶化してポリシリコン化する工程と、
p(またはn型)不純物を拡散する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項12】
第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする請求項11記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
少なくともチャネル部分が、シリコン微粒子から再結晶化されたポリシリコン薄膜で形成されていることを特徴とするTFT。
【請求項14】
透明基板表面に、請求項13記載のTFTが複数個形成されていることを特徴とするTFTアレイ。
【請求項15】
請求項14に記載のTFTアレイと液晶を用いたことを特徴とする表示デバイス。
【請求項16】
請求項14に記載のTFTアレイと有機ELを用いたことを特徴とする表示デバイス。
【請求項17】
請求項13に記載のTFTが少なくとも駆動回路部に用いられていることを特徴とする表示デバイス。
【請求項18】
表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合して第1のp(またはn)型シリコン微粒子ペーストを作成する工程と、
前記p(またはn)型シリコン微粒子ペーストをシリカ膜を介して基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
絶縁膜を形成する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
金属配線を形成する工程を有するTFTやTFTアレイの製造方法。
【請求項19】
第1の反応性官能基および第2の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする請求項18記載のTFTやTFTアレイの製造方法。
【請求項20】
表面に共有結合した第3の反応性官能基を含む有機膜で被われたp(またはn)型シリコン微粒子と第4の反応性官能基を複数個含む架橋剤を有機溶媒中で混合して第4のp(またはn)型シリコン微粒子ペースト(または第5のn型シリコン微粒子ペースト)を作成する工程と、
前記p(またはn)型シリコン微粒子ペーストをシリカ膜を介して基板表面に塗布する工程と、
レーザー照射してポリシリコン化する工程と、
絶縁膜を形成する工程と、
任意の部分にn(またはp)型不純物を選択的に拡散する工程と、
金属配線を形成する工程を有するTFTやTFTアレイの製造方法。
【請求項21】
第3の反応性官能基および第4の反応性官能基として、それぞれ互いに反応する官能基を用いることを特徴とする請求項20記載のTFTやTFTアレイの製造方法。
【請求項22】
反応性官能基を含む有機膜が化学吸着単分子膜であることを特徴とする請求項3乃至6、9乃至12、18乃至22のいずれか1項に記載のポリシリコン薄膜や太陽電池、TFT、TFTアレイの製造方法。
【請求項23】
請求項13および14のいずれか1項に記載のTFTアレイの上に液晶を載置する工程を含むことを特徴とする表示デバイスの製造方法。
【請求項24】
請求項13および14のいずれか1項に記載のTFTアレイの上に有機EL膜を載置する工程を含むことを特徴とする表示デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−278370(P2010−278370A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131782(P2009−131782)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(503002662)
【Fターム(参考)】