説明

ポリシルセスキオキサングラフト共重合体、その製造方法、粘着剤および粘着シート

【課題】優れた粘着性、耐熱性及び凝集性を兼ね備えた粘着剤となり得るポリシルセスキオキサングラフト共重合体、その製造方法、並びに共重合体を用いる粘着剤及び粘着シートの提供。
【解決手段】ポリシルセスキオキサンに式(a)


(rは、炭素数4〜12の炭化水素基を表す。)で表される基、及び、式(b)


(式中、r、rは炭素数1〜6の炭化水素基等を表す。r、rは一緒になって環を形成していてもよく、該環にはヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基をモル比で、式(a):(式(b)=95:5〜60:40となるようグラフト共重合させたポリシルセスキオキサングラフト共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた粘着性、耐熱性及び凝集性を兼ね備えた粘着剤となり得るポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体、並びに、当該ポリシルセスキオキサングラフト共重合体を用いる粘着剤及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の部材や機器に貼着するラベルシートとして、基材シートに粘着剤を塗布して形成してなる粘着剤層を有する粘着シートが知られている。
この粘着シートは、押圧するだけで直ぐに貼り付けることができるという利便性から、印刷ラベル用、包装貼付用等として多くの産業分野で広く利用されている。例えば、自動車や電気・電子製品の生産ラインにおける生産管理においては、部品にバーコード印字された粘着シート(バーコードラベル)を貼付することが行われている。
【0003】
この自動車や電気・電子製品の生産ラインにおける生産管理等においては、部品によっては熱処理が施される工程があり、使用するラベルに対して耐熱性が求められる。
しかしながら、従来から一般的に用いられている粘着剤は、安価であるものの、貼付後に80〜150℃程度の温度で処理されると、粘着剤が劣化し、凝集力が低下してしまう。その結果、基材の収縮と凝集力の低下により粘着シートが部分的に剥離してしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決すべく、特許文献1には、ポリエチレンナフタレートフィルムからなる基材の一方の側の面に印字用コート層を有し、かつ該基材の反対側の面に、温度150℃における粘着力が0.5N/25mm以上である耐熱性粘着剤層を有する耐熱性ラベルが提案されている。ここでは、耐熱性粘着剤層を構成する粘着剤として、ゴム系やアクリル系の粘着剤等が使用されている。
【0005】
また、特許文献2には、基材シートの少なくとも一方の面に、耐熱性の水系粘着剤を含む感熱性粘着剤層を形成してなる粘着シートが記載されている。耐熱性の水系粘着剤として、アクリル系重合体エマルジョン又はゴム系ラテックスを主成分とし、粘着付与樹脂エマルジョンを配合した一般的な水系粘着剤が用いられている。
しかしながら、これらの文献に記載された粘着シートに用いられる粘着剤であっても、耐熱性等の面からは十分なものとはいいがたく、より耐熱性及び粘着力に優れる新しい粘着剤の開発が求められていた。
【0006】
本発明に関連して、特許文献3,4に、ビニル化合物をグラフト重合させて得られるポリシルセスキオキサングラフト共重合体を用いる粘着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−275438号公報
【特許文献2】特開2003−138229号公報
【特許文献3】特許第4566577号
【特許文献4】WO2005/080459パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、より優れた粘着性、耐熱性及び凝集性を兼ね備えた粘着剤となり得るポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体、並びに当該ポリシルセスキオキサングラフト共重合体を用いる粘着剤及び粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、ポリシルセスキオキサン化合物の末端に、ジチオエステル基を導入し、これを反応開始点とし、MADIX法により、アクリルアミドとアクリル酸エステルを所定割合でグラフト重合させることにより、溶剤可溶の無色透明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を得た。そして、得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体は、優れた粘着性、耐熱性及び凝集性をもつ粘着剤成分として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(5)のポリシルセスキオキサングラフト共重合体、(6)〜(10)のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法、(11)の粘着剤、及び(12)の粘着シートが提供される。
【0011】
(1)分子内に、下記の式(i)、(ii)及び/又は(iii)
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、Dは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又はこれらの組み合せを表し、Rは炭化水素基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Rは式(a)
【0014】
【化2】

(rは、炭素数4〜12の炭化水素基を表す。)で表される基、及び式(b)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、r、rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。また、r、rは一緒になって環を形成していてもよく、該環にはヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基を表し、式(a)で表される基と式(b)で表される基の存在割合は、モル比で、(式(a)で表される基):(式(b)で表される基)=95:5〜60:40である。Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、又は総炭素数2〜20のアシル基を表し、k1、k2及びk3は、それぞれ独立して、任意の自然数を表す。〕で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体(但し、前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)。
(2)前記式(b)で表される基が、前記式(b)中、r、rが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成した、下記式(b’)
【0017】
【化4】

【0018】
で表される基であることを特徴とする(1)に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
(3)数平均分子量が50,000〜500,000である(1)又は(2)に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
(4)前記式(ii)及び(iii)中、下記式
【0019】
【化5】

【0020】
で表される繰り返し単位が、下記式(c−a)
【0021】
【化6】

【0022】
(R、rは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位からなるブロック〔A〕と、下記式(c−b)
【0023】
【化7】

【0024】
(R、r及びrは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位からなるブロック〔B〕とからなり、ブロック〔A〕とブロック〔B〕とが、式:−CH(R)−D−で表される基のCH部分側から、−〔B〕−〔A〕又は、−〔A〕−〔B〕−〔A〕となるように配列されたブロック共重合体構造を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
(5)前記式(ii)及び(iii)中、下記式
【0025】
【化8】

【0026】
で表される繰り返し単位が、下記式(c−a)
【0027】
【化9】

【0028】
(R、rは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位と、下記式(c−b)
【0029】
【化10】

【0030】
(R、r及びrは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位とからなるランダム共重合体構造を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
(6)分子内に、下記の式(i)、(ii−a)及び/又は(iii−a)
【0031】
【化11】

【0032】
(式中、Dは、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又はこれらの組み合せを表し、Rは炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、又は総炭素数2〜20のアシル基を表し、Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物(但し、式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)と、
式(1a):CH=C(R2a)(R3a)〔式中、R2aは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、R3aは、式(a)
【0033】
【化12】

【0034】
(rは、炭素数4〜12の炭化水素基を表す。)で表される基を示す。〕で表される化合物(1a)、及び、式(1b):CH=C(R2b)(R3b)〔式中、R2bは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、R3bは、式(b)
【0035】
【化13】

【0036】
(r、rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。また、r、rは一緒になって環を形成していてもよく、該環にはヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基を示す。〕で表される化合物(1b)を、化合物(1a)と化合物(1b)のモル比が、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40となる使用割合で用いて、ラジカル重合開始剤の存在下に、グラフト重合反応を行うことを特徴とする、
分子内に、式(i)、(ii)及び/又は(iii)
【0037】
【化14】

【0038】
(式中、D、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。Rは、前記R3a又はR3bを表し、k1、k2及びk3は、それぞれ独立して、任意の自然数を表す。k1、k2又はk3が2以上のとき、式:−CH−C(R)(R)−で表される基同士は同一であっても、相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体(但し、前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)の製造方法。
(7)前記ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルを用いる、(6)に記載の製造方法。
(8)前記ポリシルセスキオキサン化合物に、ラジカル重合開始剤の存在下に、前記化合物(1b)をグラフト重合させた後、次いで、化合物(1a)をグラフト重合させることを特徴とする(6)又は(7)に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法。
(9)前記ポリシルセスキオキサン化合物に、ラジカル重合開始剤の存在下に、前記化合物(1a)と化合物(1b)のモル比が、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40の割合で含有する化合物(1a)と化合物(1b)との混合物を、グラフト重合させることを特徴とする(6)又は(7)に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法。
(10)前記式(1b)で表される化合物として、前記式(1b)中、R2bは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、R3bは、前記式(b)中、r、rが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成した、下記式(b’)
【0039】
【化15】

【0040】
で表される基である化合物を用いることを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)数平均分子量が50,000〜500,000であるポリシルセスキオキサングラフト共重合体を製造するものである(6)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12)(1)〜(5)のいずれかに記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を含有することを特徴とする粘着剤。
(13)基材シート、及び、該基材シート上に形成された、(12)に記載の粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【発明の効果】
【0041】
本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体は、優れた粘着性、耐熱性及び凝集性を有するため、特に、熱処理が施される工程を有する電気・電子製品ライン等において、粘着剤成分として好適に用いることができる。
本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法によれば、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を効率よく製造することができる。
本発明の粘着剤、粘着シートは、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を用いるものであるため、優れた粘着性、耐熱性及び凝集性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を、1)ポリシルセスキオキサングラフト共重合体、2)ポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法、3)粘着剤、及び、4)粘着シートに項分けして詳細に説明する。
【0043】
1)ポリシルセスキオキサングラフト共重合体
本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体は、分子内に、前記式(i)、(ii)及び/又は(iii)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体である(但し、前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるポリシルセスキオキサングラフト重合体は除かれる。)。
【0044】
前記式(ii)、(iii)中、Dは、炭素数1〜20のアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの組み合せを表す。
【0045】
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
アリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,4’−ビフェニレン基等が挙げられる。
【0046】
前記アルキレン基、アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
アルキレン基の置換基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等の置換基を有していてもよいアミノ基;水酸基;メルカプト基;アミド基、N,N−ジメチルアミド基等の置換基を有していてもよいアミド基;カルボキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
【0047】
前記アリーレン基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;等が挙げられる。
これらの置換基は、アルキレン基、アリーレン基の任意の位置に、同一若しくは相異なって複数個が結合していてもよい。
【0048】
アルキレン基とアリーレン基の組み合せとしては、前記置換基を有していてもよいアルキレン基の少なくとも1種と、前記置換基を有していてもよいアリーレン基の少なくとも1種とが直列に結合してなる基が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、本発明においては、簡便に目的とするグラフト共重合体が得られることから、Dとしては、炭素数1〜6のアルキレン基又はアリーレン基が好ましく、アリーレン基がより好ましく、p−フェニレン基が特に好ましい。
【0050】
前記式(i)、(iii)中、Rは炭化水素基を表す。
の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基等の炭素数2〜10のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;等が挙げられる。
【0051】
の炭化水素基は置換基を有していてもよい。Rの炭化水素基がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であるとき、その置換基としては、前記Dのアルキレン基の置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。Rの炭化水素基がアリール基であるとき、その置換基としては、前記Dのアリーレン基の置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
これらの置換基は、炭化水素基の任意の位置に結合していてもよく、同一又は相異なる複数の置換基が結合していてもよい。
これらの中でも、本発明においては、簡便に目的とするグラフト共重合体が得られることから、Rとしては、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0052】
は、水素原子;又は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜18のアルキル基を表す。なかでも、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0053】
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、又は総炭素数2〜20又はアシル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
これらの中でも、本発明においては、簡便に目的とするグラフト共重合体が得られることから、Rとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0054】
k1、k2及びk3は、それぞれ独立して、任意の自然数を表す。k1、k2又はk3が2以上のとき、式:−CH−C(R)(R)−で表される基同士は同一であっても、相異なっていてもよい。
【0055】
は、下記式(a)又は式(b)で表される基を表し、式(a)で表される基と式(b)で表される基の存在割合は、モル比で、(式(a)で表される基):(式(b)で表される基)=95:5〜60:40である。
【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
式(a)中、rは、炭素数4〜12の炭化水素基を表す。炭素数4〜12の炭化水素基としては、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数4〜12のアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3〜12のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜12のアラルキル基;等が挙げられる。
【0059】
式(b)中、r、rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;を表す。
【0060】
、rは一緒になって、前記式(b’)で表されるように環を形成していてもよい。また、該環は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよく、環は、5員環であっても、6員環であってもよい。
さらに、r、rは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。
、rが一緒になって形成していてもよい環の一例を下記に示す。式中、「−」は結合手を表す。
【0061】
【化18】

【0062】
式中、Zは、CH、NCH、O、Sを示す。
これらの中でも、r、rは、より好適な目的化合物が得られることから、
【0063】

【0064】
で表されるものが好ましく、
【0065】

【0066】
で表されるものがより好ましく、上記式中、Zが酸素原子(O)である、モルホリン環を形成しているものが特に好ましい。
また、前記式(ii)、(iii)で表される繰り返し単位において、下記式(c)
【0067】
【化19】

【0068】
で表される枝重合部位を示す繰り返し単位は、下記式(c−a)
【0069】
【化20】

【0070】
(R、rは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位からなるブロック〔A〕と、下記式(c−b)
【0071】
【化21】

【0072】
(R、r及びrは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位からなるブロック〔B〕とからなり、ブロック〔A〕とブロック〔B〕とが、前記式(ii)及び(iii)中、式:−CH(R)−D−で表される基のCH部分側から、−〔B〕−〔A〕又は、−〔A〕−〔B〕−〔A〕となるように配列されたブロック共重合体構造を有するものであっても、前記式(c−a)で表される繰り返し単位と式(c−b)で表される繰り返し単位からなるランダム共重合体構造を有するものであってもよい。
これらの中でも、種々の材料に対して優れた粘着力と凝集力を有する粘着剤成分が得られることから、本発明においては、前者のブロック共重合体構造を有するのがより好ましく、ブロック〔A〕とブロック〔B〕とが、式:−CH(R)−D−で表される基のCH部分側から、−〔B〕−〔A〕又は、−〔A〕−〔B〕−〔A〕となるように配列されたブロック共重合体構造を有するものがより好ましい。
【0073】
本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の数平均分子量は、通常、50,000〜500,000、好ましくは、70,000〜200,000である。分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.1〜5.0、好ましくは1.5〜3.0の範囲である。前記式(ii)、(iii)中のk1、k2及びk3は、それぞれ独立して任意の自然数であれば特に限定されないが、前記の数平均分子量を満たす範囲で設定することが好ましい。
【0074】
本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法としては、特に制約はないが、後述する本発明の製造方法により効率よく製造することができる。
【0075】
2)ポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法
本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法は、分子内に、前記式(i)、(ii−a)及び/又は(iii−a)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物と、式(1a):CH=C(R2a)(R3a)で表される化合物(1a)、及び、式(1b):CH=C(R2b)(R3b)で表される化合物(1b)とを、化合物(1a)と化合物(1b)のモル比で、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40となる使用割合で用いて、ラジカル重合開始剤の存在下、グラフト重合反応を行うことを特徴とする、分子内に、前記式(i)、(ii)及び/又は(iii)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法である。
【0076】
〈ポリシルセスキオキサン化合物(P)〉
本発明の製造方法においては、分子内に、前記式(i)、(ii−a)及び/又は(iii−a)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物(以下、「ポリシルセスキオキサン化合物(P)」ということがある。)を出発原料として用いる。
前記式(ii−a)、(iii−a)中、D、R、Rは前記の項1)で例示したのと同じ意味を表す。
【0077】
前記式中、Xは、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。
【0078】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、1−メトキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基等の炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基;等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基;メチルエチルアミノ基、フェニルアミノ基、アセチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、アセチルメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;が挙げられる。
これらの中でも、Xとしては、反応性の観点から、アルコキシ基が好ましい。
【0079】
ポリシルセスキオキサン化合物(P)は、分子内に、少なくとも(ii−a)又は(iii−a)の繰り返し単位を有するものであって、前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものは含まない。
ポリシルセスキオキサン化合物(P)は、通常、(ii−a)及び(iii−a)、(i)及び(iii−a)、(ii−a)及び(iii−a)、又は(i)、(ii−a)及び(iii−a)の繰り返し単位を有する共重合体である。この共重合体は、ランダム共重合体、部分ブロック共重合体、完全ブロック共重合体等、どのような共重縮合物であってもよい。
【0080】
ポリシルセスキオキサン化合物(P)は、従来公知の方法、例えば、特許文献4に記載の方法により製造することができる。具体的には、次のようにして製造することができる。
【0081】
【化22】

【0082】
(上記式においては、便宜上、前記式(i)、(ii−a)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位の記載を省略し、前記(iii−a)で表される繰り返し単位からなるものを記載しているが、これに限定されるものではない。式中、qは、任意の自然数を表す。)
すなわち、式(4):〔Hal−CH(R)D〕Si(ORで表されるアルコキシシラン化合物(4)、及び、該アルコキシシラン化合物(4)1質量部に対し、0〜100倍量の、式(5):RSi(ORで表されるアルコキシシラン化合物(5)を、酸触媒又は塩基触媒の存在下に縮合させて共重縮合物(P’)を得る。
【0083】
前記式中、R、D、X及びRは前記と同じ意味を表す。
Halはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。
、Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0084】
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子;または鉄、マンガン、亜鉛、銅等の遷移金属原子;を表し、アルカリ金属原子が好ましい。nはMの原子価を表す。
【0085】
アルコキシシラン化合物(4)の具体例としては、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルトリメトキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルトリエトキシシラン、p−(3−クロロプロピル)フェニルトリメトキシシラン、p−(3−クロロプロピル)フェニルトリエトキシシラン、p−ブロモメチルフェニルトリメトキシシラン、p−ブロモメチルフェニルトリエトキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルトリメトキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルトリエトキシシラン、p−(3−ブロモプロピル)フェニルトリメトキシシラン、p−(3−ブロモプロピル)フェニルトリエトキシシラン、
【0086】
p−クロロメチルフェニルメチルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルメチルトリエトキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルメチルトリメトキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルメチルトリエトキシシラン、p−(3−クロロプロピル)フェニルメチルトリメトキシシラン、p−(3−クロロプロピル)フェニルメチルトリエトキシシラン、p−ブロモメチルフェニルメチルトリメトキシシラン、p−ブロモメチルフェニルメチルトリエトキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルメチルトリメトキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルメチルトリエトキシシラン、p−(3−ブロモプロピル)フェニルメチルトリメトキシシラン、p−(3−ブロモプロピル)フェニルメチルトリエトキシシラン、2−(p−クロロメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−クロロメチルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(p−クロロメチルフェニル)エチルトリプロポキシシラン、2−(p−クロロメチルフェニル)エチルトリブトキシシラン、2−(p−ブロモメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ブロモメチルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(p−ブロモメチルフェニル)エチルトリプロポキシシラン、
【0087】
2−(m−クロロメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(m−クロロメチルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(m−クロロメチルフェニル)エチルトリプロポキシシラン、2−(m−クロロメチルフェニル)エチルトリブトキシシラン、2−(m−ブロモメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(m−ブロモメチルフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(m−ブロモメチルフェニル)エチルトリプロポキシシラン、3−(p−クロロメチルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(p−クロロメチルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(p−クロロメチルフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、3−(p−クロロメチルフェニル)プロピルトリブトキシシラン、3−(p−ブロモメチルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(p−ブロモメチルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(m−ブロモメチルフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、3−(m−クロロメチルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(m−クロロメチルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(m−クロロメチルフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、3−(m−クロロメチルフェニル)プロピルトリブトキシシラン、3−(m−ブロモメチルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(m−ブロモメチルフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(m−ブロモメチルフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、
【0088】
4−(p−クロロメチルフェニル)ブチルトリメトキシシラン、4−(p−クロロメチルフェニル)ブチルトリエトキシシラン、4−(p−クロロメチルフェニル)ブチルトリプロポキシシラン、4−(p−クロロメチルフェニル)ブチルトリブトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)ブチルトリメトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)ブチルトリエトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)ブチルトリプロポキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルトリメトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルトリエトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルトリメトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルトリエトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルメチルトリメトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルメチルトリエトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルトリメトキシシラン、4−(p−ブロモメチルフェニル)フェニルメチルトリエトキシシラン、2−〔4’−(p−ブロモメチルフェニル)フェニル〕エチルトリメトキシシラン、2−〔4’−(p−ブロモメチルフェニル)フェニル〕エチルトリエトキシシラン、2−〔4’−(p−ブロモメチルフェニル)フェニル〕エチルトリメトキシシラン、2−〔4’−(p−ブロモメチルフェニル)フェニル〕エチルトリエトキシシラン、及びこれらの2種以上の組合せ等が挙げられる。
【0089】
アルコキシシラン化合物(5)の具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、2−メトキシフェニルトリエトキシシラン等の(置換)フェニルトリアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類;シアノメチルトリメトキシシラン、シアノメチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、4−シアノブチルトリメトキシシラン、4−シアノブチルトリエトキシシラン等のシアノアルキルトリアルコキシシラン類;アセトキシメチルトリメトキシシラン、アセトキシメチルトリエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリエトキシシラン等のアセトキシ基を有するシラン類;及びこれら2種以上の組合せ等が挙げられる。
【0090】
共重縮合物(P’)を構成するアルコキシシラン化合物(4)とアルコキシシラン化合物(5)との割合は任意に設定することができるが、通常、質量部比で、アルコキシシラン化合物(4):アルコキシシラン化合物(5)=100:0〜1:99の範囲である。
【0091】
用いる酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸1水和物、スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酢酸、蟻酸等の有機酸が挙げられる。
【0092】
また塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等の金属アルコキシド;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等の1級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン;ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)などの含窒素複素環化合物;等が挙げられる。
【0093】
酸触媒又は塩基触媒の使用量は、アルコキシシラン化合物(4)に対して、通常、0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲である。
【0094】
アルコキシシラン化合物(4)とアルコキシシラン化合物(5)との反応に用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;水;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0095】
反応温度は、通常0℃から用いられる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは40℃〜130℃の範囲である。反応温度があまりに低いと縮合反応の進行が不十分となる場合がある一方で、反応温度が高くなりすぎるとゲル化抑制が困難となる。反応は、通常数分から数時間で完結する。
【0096】
次いで、得られた共重縮合物(P’)に、式(6):M〔SC(=S)X〕で表される化合物(6)を反応させることにより、ポリシルセスキオキサン化合物(P)を得ることができる。すなわち、得られた共重縮合物(P’)に、化合物(6)を反応させることにより、前記アルコキシシラン化合物(4)由来のハロゲン部分が、式:−SC(=S)−Xで表される基で置換されたポリシルセスキオキサン化合物(P)が得られる。
【0097】
化合物(6)の具体例としては、エチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム等のXがアルコキシ基である化合物;
フェノキシキサントゲン酸カリウム、フェノキシキサントゲン酸ナトリウム等のXがアリールオキシ基である化合物;
これらの中でも、反応性が高く、また得られるポリシルセスキオキサン化合物が、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体の合成を効率よく行うことができることから、式(6)中、Xがアルコキシ基である化合物が好ましく、エチルキサントゲン酸塩がより好ましく、エチルキサントゲン酸カリウムが特に好ましい。
【0098】
前記共重縮合物(P’)と化合物(6)との反応は、通常、不活性溶媒中で行うことができる。
用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0099】
溶媒の使用量は、特に制約はないが、用いる共重縮合物(P’)1gに対して、通常1〜1000ml、好ましくは5〜100mlである。
【0100】
反応温度は、特に制約はないが、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは15〜60℃、より好ましくは室温である。
反応時間は、通常数分から数十時間、好ましくは1〜20時間である。
反応終了後、通常の後処理操作を行うことにより、本発明に用いるポリシルセスキオキサン化合物(P)を得ることができる。
ポリシルセスキオキサン化合物(P)は、ラダー構造を有することがあるが、ラダー型構造を有しているか否かは、例えば、反応生成物の赤外線吸収スペクトルやX線回折測定を行うことによって確認することができる。
【0101】
ポリシルセスキオキサン化合物(P)の数平均分子量は、通常1,000〜30,000、好ましくは1,500〜20,000の範囲である。また、ポリシルセスキオキサン化合物(P)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限されないが、通常1.0〜3.0、好ましくは1.1〜2.0の範囲である。数平均分子量及び分子量分布は、例えば、SEC(サイズ・エクスクルージョン・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により求めることができる。
【0102】
次いで、得られたポリシルセスキオキサン化合物(P)に、式(1a):CH=C(R2a)(R3a)で表される化合物(1a)、及び、式(1b):CH=C(R2b)(R3b)で表される化合物(1b)とを、化合物(1a)と化合物(1b)のモル比で、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40となる使用割合で用いて、ラジカル重合開始剤の存在下、グラフト重合反応(すなわち、MADIX法による反応)を行うことで、目的とするポリシルセスキオキサングラフト共重合体を得ることができる。
【0103】
〈化合物(1a)〉
本発明に用いる化合物(1a)は、式(1a):CH=C(R2a)(R3a)で表される化合物である。
式(1a)中、R2aは前記Rと同じ意味を表し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
3aは、前記式(a)で表される基を示し、式中、rは前記と同じ意味を表す。
【0104】
化合物(1a)としては、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素4〜12のアルキルエステル;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素5〜12のシクロアルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェナシル(メタ)アクリレート、1−ナフチルメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素7〜12のアラルキルエステル;

フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素6〜12のアリールエステル;
ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」であり、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」であることを意味する(以下にて同じ。)。
化合物(1a)は、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
これらの中でも、化合物(1a)としては、目的とするポリシルセスキオキサン化合物をより簡便に得られる観点から、n−ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0106】
〈化合物(1b)〉
本発明に用いる化合物(1b)は、式(1b):CH=C(R2b)(R3b)で表される化合物である。
式(1b)中、R2bは、前記Rと同じ意味を表し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
3bは、前記式(b)で表される基を示し、式中、r、rは、前記と同じ意味を表す。
【0107】
化合物(1b)としては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルチオモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する〔以下にて同じ。〕。
化合物(1b)は、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
これらの中でも、化合物(1b)としては、目的とするポリシルセスキオキサン化合物をより簡便に得られる観点から、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の、r、rが一緒になって環を形成した化合物が好ましく、下記式で示す(メタ)アクリロイルモルホリンがより好ましく、アクリロイルモルホリンが特に好ましい。
【0109】
【化23】

【0110】
〈MADIX法による反応〉
本発明においては、前記ポリシルセスキオキサン化合物(P)と、化合物(1a)及び化合物(1b)とを、ラジカル重合開始剤の存在下、グラフト重合反応を行うことにより、目的とするポリシルセスキオキサングラフト共重合体を得ることができる。
より詳細には、前記ポリシルセスキオキサン化合物(P)と、化合物(1a)及び化合物(1b)とを、MADIX法により、目的とするポリシルセスキオキサングラフト共重合体を得ることができる。
【0111】
ここで、MADIX法は、移行活性キサンテートを用いる、可逆的付加−フラグメンテーション連鎖移行重合法(Macromolecular Design via Interchange of Xanthate)のことである。すなわち、キサンテートをドーマント種(ラジカル反応において休眠種とも呼ばれる安定な化学種)として用い、これとラジカル種との可逆的な付加開裂反応によりラジカル種を発生させる方法である。
本発明においては、MADIX法を用いることにより、化合物(1b)をも効率よくグラフト重合させることができるため、簡便に目的物を得ることができる。
【0112】
具体的には、ポリシルセスキオキサン化合物(P)と、化合物(1a)及び化合物(1b)とを、溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下で撹拌することにより反応を行う。反応は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行うのが好ましい。
【0113】
本発明においては、前記化合物(1a)と化合物(1b)を、化合物(1a)と化合物(1b)のモル比で、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40となる割合で用いる。このような割合で用いることで、結果として、粘着性、耐熱性及び凝集性に優れた粘着剤成分として有用なポリシルセスキオキサングラフト共重合体を得ることができる。
【0114】
また、ポリシルセスキオキサン化合物(P)と、化合物(化合物(1a)と化合物(1b)との合計)との使用割合は、ポリシルセスキオキサン化合物(P)と化合物のモル比で、通常、(ポリシルセスキオキサン化合物(P)):(化合物)=1:20〜1:100、好ましくは1:40〜1:80である。
【0115】
用いるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルペルオキシド等の過酸化物系ラジカル重合開始剤;等が挙げられる。これらの中でも、効率よく目的物を得ることができること等から、AIBNが好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、ポリシルセスキオキサン化合物(P)1当量に対して、通常、0.01〜0.3当量である。
【0116】
用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に制限されない。例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
溶媒の使用量は、ポリシルセスキオキサン化合物(P)1gあたり、通常、0.1〜1,000ml、好ましくは1〜100mlである。
【0118】
反応温度は、通常20℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは40〜100℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常数分から数十時間、好ましくは1〜10時間である。
【0119】
本反応においては、化合物(1a)と化合物(1b)の混合物を、ポリシルセスキオキサン化合物(P)と反応させて、グラフト鎖が、化合物(1a)と化合物(1b)のランダム共重合体となるように反応を行ってもよいし、化合物(1a)と化合物(1b)とを段階的に添加することにより、グラフト鎖が、化合物(1a)と化合物(1b)のブロック共重合体となるように反応を行ってもよい。
【0120】
化合物(1a)と化合物(1b)とを段階的に添加する場合においては、化合物(1b)を反応させた後に、化合物(1a)を反応させるのが好ましい。
このように反応させて、グラフト鎖の末端を、化合物(1a)由来の繰り返し単位からなるブロック〔A〕とすることで、種々の材料に対して粘着性の優れたポリシルセスキオキサングラフト共重合体を得ることができる。
【0121】
なお、グラフト鎖のブロック共重合体は、ジブロック体に限らず、トリブロック体、マルチブロック体であってもよい。これらの場合であっても、上記と同じ理由から、グラフト鎖の末端のブロックは、化合物(1a)由来の繰り返し単位からなるブロック〔A〕であるのが好ましい。
【0122】
段階的に反応させる場合において、反応温度及び反応時間は、前記に記載の反応温度及び反応時間の範囲内で選択すればよい。
【0123】
反応終了後は、周知の方法に従って、残存モノマー及び/又は溶媒を留去し、適当な溶媒中で再沈殿させ、沈殿した重合体を従来公知の方法で回収して目的とする重合体を単離することができる。
【0124】
再沈殿に使用する溶媒としては、水;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜8の炭化水素類又は脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜6のアルコール類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;等が挙げられる。これらの中では、n−ヘキサン、メタノール、水、ジエチルエーテル、又はこれらの混合溶媒が好適である。
【0125】
以上のようにして、前記式(i)、(ii)及び/又は(iii)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体(前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)を得ることができる。
前記式(i)、(ii)、(iii)中、D、R、R、R、R、k1、k2及びk3は前記と同じ意味を表す。
【0126】
得られるポリシルセスキオキサングラフト共重合体の数平均分子量は、50,000〜500,000、好ましくは、70,000〜200,000である。前記式(ii)、(iii)中のk1、k2及びk3は、それぞれ独立して任意の自然数であれば特に限定されないが、前記の数平均分子量を満たす範囲で設定することが好ましい。
このものは、粘着性、耐熱性及び凝集性に優れるため、粘着剤として好適に用いることができる。
【0127】
3)粘着剤
本発明の粘着剤は、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を含有することを特徴とする。
本発明の粘着剤は、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の1種又は2種以上を適当な溶剤に溶解することにより製造してもよい。
【0128】
用いる溶剤としては、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を溶解するものであれば特に制限されない。
例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
溶剤の使用量は任意であるが、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体100質量部に対して、通常、1〜10,000質量部、好ましくは10〜1,000質量部である。
【0130】
本発明の粘着剤は、主成分として本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を含み、さらに所望により、他の粘着剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤等を添加することができる。
【0131】
本発明の粘着剤は、主成分として本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を含むものであるため、粘着性、耐熱性に優れ、かつ、凝集性を有している。
【0132】
4)粘着シート
本発明の粘着シートは、基材シートと、該基材シート上に形成された、本発明の粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする。
用いる基材シートとしては、グラシン紙、コート紙、キャスト紙等の紙基材;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミド;ポリエーテルイミドフィルム;合成紙、セルロース系シートやフィルム、種々の材料からなる不織布、織布、編布;金属箔;等が挙げられる。また、これらの基材シートは、所望により表面に適当な文字や図柄等の印刷を施しておくこともできる。
【0133】
基材シート上に粘着剤層を形成する方法としては、(i)基材シート上に、本発明の粘着剤を所定の厚みとなるように塗工し、40〜150℃で乾燥する方法、(ii)剥離シート(又は工程紙)上に、本発明の粘着剤を所定の厚みとなるように塗工し、該塗工面に基材シートを貼合わせて40〜150℃で乾燥した後、剥離シートを剥離する方法、等により製造することができる。(ii)の方法による場合、剥離シートは、所望により剥離することなくそのまま付着させておいて、粘着シートの使用時に剥離するようにしてもよい。
【0134】
用いる剥離シートとしては、グラシン紙、コート紙、キャスト紙等の紙基材;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;等が挙げられる。これらの剥離シートは、粘着剤層に面する側の表面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート樹脂、アルキド樹脂等の剥離剤を塗布したものであってもよい。
【0135】
粘着剤を基材シート又は剥離シート上に塗工する方法は特に限定されず、公知の塗工方法を採用できる。塗工方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、リバースグラビア法、キスコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法などが挙げられる。得られる粘着剤層の厚みは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmである。
【0136】
本発明の粘着シートは、粘着性、耐熱性及び凝集性に優れる本発明の粘着剤から形成されてなる粘着剤層を有するため、優れた粘着力と凝集力を有し、高温環境下で使用しても、凝集力(保持力)が低下することがない。
本発明の粘着シートは、SUS等の金属板;ポリメタクリレート(PMMA)等の樹脂板;ソーダライムガラス等のガラス板;等の種々の被着体のみならず、ポリエチレン等の接着性の低い被着体に対しても優れた粘着力及び凝集力を発揮する。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、実施例等によって何ら限定されるものではない。
【0138】
なお、重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするサイズ・エクスクルージョン・クロマトグラフィー(SEC)により測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0139】
(製造例1) ポリシルセスキオキサン化合物(P)の合成
【0140】
【化24】

【0141】
(上記式においては、便宜上、前記式(i)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位の記載を省略し、式(ii−a)と式(iii−a)で表される繰り返し単位に相当するものが式中の上下交互に結合した状態を記載する。式中、nは、任意の自然数を表す。)
【0142】
〈共重縮合物(P’)の合成〉
200mLのナスフラスコに、トルエン/水混合溶液(体積比=2/1)15mL、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン(アヅマックス社製)4.94g(0.02モル)、フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)3.97g(0.02モル)、及びメタンスルホン酸(東京化成工業社製)0.19gを仕込み、室温(25℃)で16時間撹拌した。反応終了後、反応液から有機層を分取し、溶媒を減圧留去し、得られた残留物を大量のn−ヘキサンに滴下した。沈殿した固体を濾別し、乾燥し、前駆体となる共重縮合物(P’)であるp−クロロメチルフェニルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの共重縮合物(以下、「BzClPSQ」と略することがある。)を得た(収率:83%)。得られたBzClPSQの数平均分子量(Mn)は2,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.52であった。
【0143】
得られたBzClPSQのIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−Ph:698cm−1,737cm−1,Si−O−Si:1129cm−1
【0144】
〈ポリシルセスキオキサン化合物(P−1)の合成〉
200mLのナスフラスコに、アセトン50mLと、得られたBzClPSQ 5.58gを仕込み、0℃に保ちながらエチルキサントゲン酸カリウム(東京化成工業社製)3.53g(22mol)のアセトン(30mL)溶液を30分かけて滴下した。その後、室温(25℃)で16時間撹拌した。反応終了後、反応液の沈殿物を吸引濾過により濾別し、濾液を大量のメタノール/水混合溶液(体積比=3/1)に滴下した。沈殿した固体を濾取し、乾燥し、目的とするポリシルセスキオキサン化合物(P)であるキサントゲン酸エステル化合物(以下、「XaPSQ」と略することがある。)を得た(収率:95%)。得られたXaPSQの数平均分子量(Mn)は2,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.66であった。
【0145】
得られたXaPSQのIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−Ph:699cm−1,734cm−1,Si−O−Si:1130cm−1,C−S:1221cm−1
【0146】
(実施例1) ポリシルセスキオキサングラフト共重合体1の合成
100mLの2口ナスフラスコに、窒素雰囲気下、製造例1で得たXaPSQ、AIBN、ブチルアクリレート(BA)及びアクリロイルモルホリン(ACMO)を表1に示すモル比で添加した(表1中のXaPSQのモル比は、ジチオエステル基基準である。以下にて同じ。)。さらにアニソールを1.7mol/Lの濃度になる量を加え、全容を表1に示す反応温度で、所定時間撹拌した。反応終了後、反応液を大量のn−ヘキサンまたはメタノールに滴下し、沈殿物を回収し、乾燥し、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体1を得た。得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体1の収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。なお、表1中、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体、ポリシルセスキオキサングラフト重合体、及び共重合体を総称して、「重合体」と記載する。
【0147】
得られたポリシルセスキオキサングラフト重合体のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1163cm−1,C=O(アミド結合):1645cm−1,C=O(エステル結合):1732cm−1,−CH−:2874cm−1,2960cm−1
【0148】
(実施例2) ポリシルセスキオキサングラフト共重合体2の合成
100mLの2口ナスフラスコに、窒素雰囲気下、製造例1で得たXaPSQ、AIBN及びBAを下記表1に示すモル比で添加した。さらにアニソールを1.7mol/Lの濃度になる量を加え、全容を表1に示す反応温度で、所定時間撹拌した。次に、ACMOを表1に示すモル比で添加し、全容を表1に示す反応温度で、所定時間撹拌した。反応終了後、反応液を大量のメタノールに滴下し、沈殿物を回収・乾燥し、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体2を得た。得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体2の反応収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を下記表1に示す。
【0149】
得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体2のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1163cm−1,C=O(アミド結合):1644cm−1,C=O(エステル結合):1733cm−1,−CH−:2874cm−1,2960cm−1
【0150】
(実施例3〜5) ポリシルセスキオキサングラフト共重合体3〜5の合成
100mLの2口ナスフラスコに、窒素雰囲気下、製造例1で得たXaPSQ、AIBN及びACMOを下記表1に示すモル比で添加した。さらにアニソールを1.7mol/Lの濃度になる量を加え、全容を表1に示す反応温度で、所定時間撹拌した。次に、BAを表1に示すモル比で添加し、全容を表1に示す反応温度で、所定時間撹拌した。反応終了後、反応液を大量のメタノールに滴下し、沈殿物を回収・乾燥し、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体3〜5を得た。得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体3〜5の反応収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0151】
得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体3のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1164cm−1,C=O(アミド結合):1641cm−1,C=O(エステル結合):1737cm−1,−CH−:2874cm−1,2960cm−1
【0152】
得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体4のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1164cm−1,C=O(アミド結合):1640cm−1,C=O(エステル結合):1737cm−1,−CH−:2874cm−1,2960cm−1
【0153】
得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体5のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1163cm−1,C=O(アミド結合):1640cm−1,C=O(エステル結合):1734cm−1,−CH−:2875cm−1,2960cm−1
【0154】
(比較例1) ポリシルセスキオキサングラフト重合体1rの合成
実施例1において、ACMOを使用せず、BAを表1に示すモル比で使用した他は、実施例1と同様にして、ポリシルセスキオキサングラフト重合体1rを得た。得られたポリシルセスキオキサングラフト重合体1rの収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0155】
得られたポリシルセスキオキサングラフト重合体1rのIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1163cm−1,C=O(エステル結合):1733cm−1,−CH−:2874cm−1,2960cm−1
【0156】
(比較例2) フリーラジカル重合によるBAとACMOの共重合体2rの製造
1000mLのセパラブルフラスコに、AIBN 0.2g、BA 83.3g、ACMO 16.7g、及び、酢酸エチル230g、トルエン20gを仕込み、窒素雰囲気下、60℃で16時間撹拌した。反応終了後、反応液を大量のメタノールに滴下し、沈殿物を回収し、乾燥して共重合体2rを得た。得られた共重合体2rの反応収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0157】
得られた共重合体2rのIRスペクトルデータを以下に示す。
C−O−C:1164cm−1,C=O(アミド結合):1646cm−1,C=O(エステル結合):1733cm−1,−CH−:2874cm−1,2960cm−1
【0158】
(比較例3) ポリシルセスキオキサングラフト共重合体3rの合成
実施例3において、ACMOとBAを下記表1に示すモル比で使用した他は、実施例3と同様にして、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体3rを得た。得られたポリシルセスキオキサングラフト重合体3rの反応収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0159】
得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体3rのIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1164cm−1,C=O(アミド結合):1646cm−1,C=O(エステル結合):1734cm−1,−CH−:2875cm−1,2960cm−1
【0160】
(比較例4) ポリシルセスキオキサングラフト共重合体4rの合成
実施例2において、ACMOの代わりに、メタクリル酸メチル(MMA)を使用し、表1に示すモル比、反応温度、反応時間で反応を行った他は、実施例2と同様にして、ポリシルセスキオキサングラフト共重合体4rを得た。得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体4rの収率(%)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0161】
得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体4rのIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−O−Si、C−O−C:1163cm−1,C=O(エステル結合):1733cm−1,−CH−:2875cm−1,2959cm−1
【0162】
【表1】

【0163】
(実施例6〜10、比較例5〜8) 粘着剤1〜5、1r〜4rの調製
実施例1〜5及び比較例1〜4で得た重合体1〜5、1r〜4rに対して、濃度30%となるよう酢酸エチルを加えて十分に混合することにより粘着剤1〜5、1r〜4rをそれぞれ調製した。
【0164】
(実施例11〜15、比較例9〜12) 粘着シート1〜5、1r〜4rの作製
実施例6〜10及び比較例5〜8で得た粘着剤1〜5、1r〜4rを基材として、厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の片面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱して粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層の表面に剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μm、PETフィルムにシリコーン系剥離剤で表面処理したもの)を貼り付けることにより、粘着シート1〜5、1r〜4rをそれぞれ作製した。
【0165】
(粘着力試験)
得られた粘着シート1〜5、1r〜4rを25mm×300mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、剥離シートを剥がし、下記被着体に貼付した。貼付に際しては、重さ2kgのローラーを用い、1往復させて、被着体に圧着した。その後、23℃、50%RHの環境下で、貼付後24時間放置した後、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定した値(N/25mm)を粘着力とした。
【0166】
粘着力の測定に用いた被着体は以下のとおりである(〔 〕は表2の略称を示す)。
・ステンレス板〔SUS304〕:SUS304鋼板、360番研磨、150mm×70mm×0.7mm。
・ポリメタクリレート板〔PMMA板〕:ユーコウ商会社製、製品名「アクリライトL オパール432」、150mm×70mm×2mm。
・フロートガラス板〔ガラス〕:ユーコウ商会社製、製品名「フロートガラス板 R3202 糸面加工」、150mm×70mm×2mm。
・ポリエチレン板〔PE板〕: ユーコウ商会社製、製品名「PE(コウベポリシート)EL−N−AN」、150mm×70mm×2mm。
結果を下記表2に示す。
なお、表中、「AT」は、粘着剤と基材との間に界面破壊が発生したことを表し、「Cf」は凝集破壊が発生したことを表し、「Zip」は、ジッピング(滑らかに剥離せず剥がした後に横の線が入ったような状態になること)が発生したことを表す。
【0167】
(保持力試験)
得られた粘着シート1〜5、1r〜4rを25mm×100mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下にて、貼付面積25mm×25mmとなるようにステンレス板(SUS304鋼板、360番研磨)に貼付した。貼付に際しては、重さ2kgのローラーを用い、5往復させて、被着体に圧着した。貼付後20分間放置した後、温度40℃ならびに80℃のオーブン内に移し、1kgの重しを粘着シートに垂直方向に荷重がかかるよう取り付けて、オーブン内に放置し、粘着シートがずれ落ちて被着体から完全に剥がれ落ちるまでの経過時間(秒)を測定した。ただし、70000秒経過してもずれ落ちなかった場合は、ずれ落ちた長さ〔ズレ量(mm)〕を測定した。剥がれ落ちるまでの経過時間が長いほど、及び、ずれ落ちた長さが短いほど保持力が優れている。
なお、表中、「NC」はズレがないことを意味する。
【0168】
(プローブタック試験)
得られた粘着シート1〜5、1r〜4rを25mm×25mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、プローブタック測定装置(RHESCA社製、製品名「PROBE TACK TESTER model RPT100」)を用い、「JIS Z0237:1991参考5」に準拠して測定した。具体的には、測定用サンプルの剥離シートを剥離し、表出した粘着剤面に直径5mmのステンレス製プローブを1秒間、接触荷重0.98N/cmで接触させた後、プローブを600mm/分の速度で測定用サンプルから離し、その際に剥がれる力〔N〕を測定した。
【0169】
【表2】

【0170】
表2より、本発明のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を用いて作製された粘着シート1〜5は、種々の被着体に対して、架橋剤を使用せずとも優れた粘着力及び高温下での保持力を有することがわかる。
ACMOの後にBAを反応させて得られるポリシルセスキオキサングラフト共重合を用いて作製された粘着シート(実施例3〜5)は、BAの後にACMOを反応させて得られる共重合体を用いて作製された粘着シート(実施例2)よりも、PE板に対して優れた粘着力を示す。
【0171】
一方、ACMOを使用せずに得られたポリシルセスキオキサングラフト重合体を用いた粘着シート1r(比較例9)は、粘着力、保持力に劣っていた。BAとACMOの共重合体を用いた粘着シート2r(比較例10)は、保持力に劣っていた。ACMOを、BAと同量用いて得られたポリシルセスキオキサングラフト共重合体を用いた粘着シート3r(比較例11)は、粘着力を発揮しなかった。ACMOの代わりにMMAを用いた粘着シート4r(比較例12)は、粘着力、高温下での保持力に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、下記の式(i)、(ii)及び/又は(iii)
【化1】

〔式中、Dは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又はこれらの組み合せを表し、Rは炭化水素基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Rは式(a)
【化2】

(rは、炭素数4〜12の炭化水素基を表す。)で表される基、及び、式(b)
【化3】

(式中、r、rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。また、r、rは一緒になって環を形成していてもよく、該環にはヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基を表し、式(a)で表される基と式(b)で表される基の存在割合は、モル比で、(式(a)で表される基):(式(b)で表される基)=95:5〜60:40である。Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、又は総炭素数2〜20のアシル基を表し、k1、k2及びk3は、それぞれ独立して、任意の自然数を表す。〕で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体(但し、前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)。
【請求項2】
前記式(b)で表される基が、前記式(b)中、r、rが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成した、下記式(b’)
【化4】

で表される基であることを特徴とする請求項1に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
【請求項3】
数平均分子量が50,000〜500,000である請求項1又は2に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
【請求項4】
前記式(ii)及び(iii)中、下記式
【化5】

で表される繰り返し単位が、下記式(c−a)
【化6】

(R、rは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位からなるブロック〔A〕と、下記式(c−b)
【化7】

(R、r及びrは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位からなるブロック〔B〕とからなり、ブロック〔A〕とブロック〔B〕とが、式:−CH(R)−D−で表される基のCH部分側から、−〔B〕−〔A〕又は、−〔A〕−〔B〕−〔A〕となるように配列されたブロック共重合体構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
【請求項5】
前記式(ii)及び(iii)中、下記式
【化8】

で表される繰り返し単位が、下記式(c−a)
【化9】

(R、rは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位と、下記式(c−b)
【化10】

(R、r及びrは、前記と同じ意味を表す。)で表される繰り返し単位とからなるランダム共重合体構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体。
【請求項6】
分子内に、下記の式(i)、(ii−a)及び/又は(iii−a)
【化11】

(式中、Dは、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又はこれらの組み合せを表し、Rは炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、又は総炭素数2〜20のアシル基を表し、Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物(但し、式(i)、(ii)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)と、
式(1a):CH=C(R2a)(R3a)〔式中、R2aは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、R3aは、式(a)
【化12】

(rは、炭素数4〜12の炭化水素基を表す。)で表される基を示す。〕で表される化合物(1a)、及び、式(1b):CH=C(R2b)(R3b)〔式中、R2bは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、R3bは、式(b)
【化13】

(r、rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。また、r、rは一緒になって環を形成していてもよく、該環にはヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基を示す。〕で表される化合物(1b)を、化合物(1a)と化合物(1b)のモル比が、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40となる使用割合で用いて、ラジカル重合開始剤の存在下に、グラフト重合反応を行うことを特徴とする、
分子内に、式(i)、(ii)及び/又は(iii)
【化14】

(式中、D、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。Rは、前記R3a又はR3bを表し、k1、k2及びk3は、それぞれ独立して、任意の自然数を表す。k1、k2又はk3が2以上のとき、式:−CH−C(R)(R)−で表される基同士は同一であっても、相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサングラフト共重合体(但し、前記式(i)で表される繰り返し単位のみからなるものを除く。)の製造方法。
【請求項7】
前記ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルを用いる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリシルセスキオキサン化合物に、ラジカル重合開始剤の存在下に、前記化合物(1b)をグラフト重合させた後、次いで、化合物(1a)をグラフト重合させることを特徴とする請求項6又は7に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記ポリシルセスキオキサン化合物に、ラジカル重合開始剤の存在下に、前記化合物(1a)と化合物(1b)のモル比が、(化合物(1a)):(化合物(1b))=95:5〜60:40の割合で含有する化合物(1a)と化合物(1b)との混合物を、グラフト重合させることを特徴とする請求項6又は7に記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記式(1b)で表される化合物として、前記式(1b)中、R2bは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、R3bは、前記式(b)中、r、rが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成した、下記式(b’)
【化15】

で表される基である化合物を用いることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
数平均分子量が50,000〜500,000であるポリシルセスキオキサングラフト共重合体を製造するものである請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリシルセスキオキサングラフト共重合体を含有することを特徴とする粘着剤。
【請求項13】
基材シート、及び、該基材シート上に形成された、請求項12に記載の粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。

【公開番号】特開2013−95814(P2013−95814A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238473(P2011−238473)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】