説明

ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物及びその応用

【課題】優れた熱的及び機械的性質を持つフレキシブル基板を得ることができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】式(I)
【化1】


(式中、Wは4価の有機基を表し、Rは3価の有機基を表し、Xはポリシロキサン含有基を表す。)で表される繰り返し単位を含むポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂;及び溶剤、を含有するポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、より詳細には、ポリシロキサンをグラフトしたポリイミド樹脂(以下、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂ともいう)を含む樹脂組成物に関する。本発明はまた、当該樹脂組成物から得られるフレキシブル基板にも関する。
【背景技術】
【0002】
最近、有機ポリマー材料は種々の電子部品やデバイスに広く使用され、電子部品やデバイスの種々の特性(例えば、電気絶縁性、耐熱性、機械的性質など)を高めている。それらの中で、ポリイミドポリマーは、その良好な機械的・電気的性質のため、最も広く使用されている。しかしながら、当該技術において、電子部品又はデバイスの性質及び性能を高めることがますます必要とされている。それ故、ポリイミドポリマーの機械的性質(例えば、柔軟性、伸展性など)、熱的性質(例えば、低い熱膨張係数など)、絶縁性、又は密着性を改善することが必要とされている。
【0003】
従来、種々の補強材を添加することによって、ポリイミドポリマーの物理的性質、特に熱的又は機械的性質を改変して、ポリイミドポリマーの適用性を高めている。よく使われる補強材としては、例えば、チタニア、シリカ、タルクなどが挙げられる。しかし、このような改変方法は、混合均一性及び相溶性に問題がある。さらに、それから得られたフレキシブル基板の外観が白濁する可能性がある。
【0004】
特開2002−293933号公報(特許文献1)は、プリント基板用接着剤として有用なアルコキシ基含有シラン変性ポリアミック酸樹脂組成物を開示している。当該ポリアミック酸樹脂組成物は、アルコキシ基含有シラン変性ポリアミック酸樹脂と溶剤を含有している。当該アルコキシ基含有シラン変性ポリアミック酸樹脂は、ポリアミック酸と、エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物とを反応させることによって得られる。当該反応は、ポリアミック酸のカルボン酸基とアルコキシシラン部分縮合物のエポキシ基との間で行われて、アルコキシシラン部分縮合物をポリアミック酸樹脂のテトラカルボン酸二無水物と結合させる。しかし、該シラン変性ポリアミック酸樹脂は熱で十分な安定性が得ず、アルコキシシラン部分縮合物がポリアミック酸樹脂から解離する可能性があって、そのため後続形成したフレキシブル基板の機械的・熱的性質が低下する。それ故、当該アルコキシ基含有シラン変性ポリアミック酸樹脂組成物は、特にフレキシブル液晶ディスプレー又はフレキシブル電子書籍用のフレキシブル基板に使用されるための、機械的・熱的性質を十分満足していない。
【0005】
よって当該技術において、電子デバイスとして用いる際の十分な機械的・熱的性質を持っているフレキシブル基板を得るための樹脂組成物を提供することが所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−293933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の第一の目的は、優れた熱的及び機械的性質を持つフレキシブル基板を得ることができる樹脂組成物を提供することである。
【0008】
本発明の第二の目的は、このようなフレキシブル基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、
(1)式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Wは4価の有機基を表し、Rは3価の有機基を表し、Xはポリシロキサン含有基を表す。)
で表される繰り返し単位を含むポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂;及び
(2)溶剤;
を含有するポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物が提供される。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、当該ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られるフレキシブル基板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポリシロキサンをグラフトしたポリイミド樹脂組成物及びその製造方法
前述のように、本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物は、
(1)式(I)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Wは4価の有機基を表し、Rは3価の有機基を表し、Xはポリシロキサン含有基を表す。)
で表される繰り返し単位を含むポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(以下、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)ともいう);及び
(2)溶剤;
を含有する。
【0016】
4価の有機基Wとしては、例えば、4価の脂肪族基、4価の脂環式基、及び4価の芳香族基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、当該4価の有機基は、以下のものから選択されるのが好ましい。
【0017】
【化3】

3価の有機基Rは、好ましくは、3価の脂肪族基、3価の脂環式基、3価の芳香族基、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0018】
当該3価の有機基は、場合により、置換基(好ましくは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される)で置換されていてもよい。
【0019】
ポリシロキサン含有基Xは、好ましくは、
−X−X
(式中、
は、式
【0020】
【化4】

(Y及びYはそれぞれ独立に、置換していてもよいC〜C13のアルキレン基、置換していてもよいC〜C12のアリーレン基又は置換していてもよいC〜C12のアラルキル基を表す。Yは置換していてもよいC〜C13のアルキレン基を表す。その際、当該アルキレン基のメチレン基の一部は場合により酸素原子に置換されている。但し、いくつかのメチレン基が酸素原子に置換される場合、2個の酸素原子が隣接する構造となることはない)
で表される基を表し、
はポリシロキサニル基を表す。)
によって表される。
【0021】
該置換しているC〜C13のアルキレン基、置換しているC〜C12のアリーレン基又は置換しているC7〜C12のアラルキル基の上の置換基は、例えばアルキル基、グリシジル基、グリシジル基を含むグループ、グリシドキシ基、グリシドキシ基を含むグループ、水酸基、水酸基を含むグループ等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
該アリーレン基は、例えばフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
該アラルキル基は、例えば、
【0024】
【化5】

【0025】
等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
好ましくは、Yは置換していてもよいC〜C13のアルキレン基、Yは置換していてもよいC〜C12のアリーレン基、Yは置換していないC〜C13のアルキレン基である。
【0027】
ポリシロキサン含有基は、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)の全量1モルに対して0.005モル〜35モルのケイ素含有量を有しているのが好ましい。
【0028】
ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)の分子量は、好ましくは、30,000〜1,000,000である。
【0029】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物は、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)に加えて、さらに、式(II)
【0030】
【化6】

【0031】
(式中、W、R、及びXは、式(I)で定義した通りである。)
で表される繰り返し単位を含むポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂(以下、ポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂(II)ともいう)が含有され得る。
【0032】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物にポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂(II)を含む場合、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)の量は、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)、及び、ポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂(II)の合計100重量%に対して、少なくとも70重量%、すなわち70重量%以上であることが好ましい。
【0033】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物において使用される溶剤(2)は、好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジグリコールジメチルエーテル、ジグリコールジエチルエーテル、ジグリコールモノメチルエーテル、ジグリコールモノエチルエーテル、ジグリコールモノメチルエーテルアセテート、ジグリコールモノエチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルエタンアミド、及びそれらの組み合わせ、から選択される。
【0034】
溶剤(2)の、本発明のシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物における含有量は、所望する組成物の粘度や選択した溶剤の種類等によって異なって適宜調整が可能であり、特に限定されるべきものではない。
【0035】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物に、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物の所望の性質が損なわれない限り、当該技術において使用される添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、例えば、可塑剤、耐候剤、フィラー、粘度調整剤、表面処理剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、熱安定剤、密着助剤、及び離型剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当該添加剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
添加剤の使用量は、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)及びポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂(II)の合計100重量部に対して、0.1〜40重量部であるのが好ましい。
【0037】
上記フィラーとしては、例えば、シリカ(商品名は例えばIPA-ST(粒子径12nm)、EG-ST(粒子径12nm)、IPA-ST-L(粒子径45nm)、IPA-ST-ZL(粒子径100nm),日産化学製)、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、及びチタニア等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。フィラーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記密着助剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名はKBM-403,信越化学製)、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(商品名はBHT,TCI製)、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。フィラーが使用される時、当該ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られるフレキシブル基板の熱膨張係数は低い。
【0040】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物は、一般的混合方法を用いて製造することができる。すなわち、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)、溶剤(2)、さらに場合によりポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂(II)、及び、場合により添加剤を混合し、均一な混合物が得られるまで、攪拌器を用いて攪拌することにより、本発明のシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物を製造することができる。
【0041】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物の粘度は、具体的なコーティング方法に応じて、溶剤の量を調整すること等により調整され得る。本発明のシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物の好適な粘度範囲は、1cps〜200,000cpsである。
【0042】
ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂及びポリシロキサングラフト化ポリアミック樹脂及びその製造方法
ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)は好ましくは次の工程(a)及び(b)を含む製造方法によって得られる。
(a)式
【0043】
【化7】

【0044】
で表されるテトラカルボン酸二無水物成分、及び、式
【0045】
【化8】

【0046】
で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分を重合反応に付し、次いで脱水/閉環反応を行って式
【0047】
【化9】

【0048】
(式中、W及びRは、式(I)で定義した通りであり、Zは一価の基である。)
で表される基Zを含む重合反応生成物を得る。
【0049】
(b)工程(a)で得られた基Zを含む重合反応生成物と基Zを含むポリシロキサン(Zは、Zと反応する一価の基である)とを反応させてポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(I)を得る。
【0050】
具体的には、テトラカルボン酸二無水物成分の無水物基及び式
【0051】
【化10】

【0052】
で表されるジアミン化合物のアミノ基が重合反応、次いで、脱水/閉環反応に付され、Z基を含む重合反応生成物が生成される。重合反応生成物のZ基及びポリシロキサンのZ基が反応して、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂を生じる。
【0053】
重合反応において、式
【0054】
【化11】

【0055】
で表されるジアミン化合物のアミノ基に対するテトラカルボン酸二無水物成分の無水物基の当量比は、好ましくは0.2〜2であり、より好ましくは0.3〜1.2である。
【0056】
重合及び脱水/閉環反応の作業条件、例えば、反応温度及び反応時間は、当該技術において通常用いられる条件であり得る。重合は、0℃〜100℃の温度で、1時間〜24時間行われるのが好ましく、脱水/閉環反応は、30℃〜200℃の温度で、0.5時間〜50時間行われるのが、好ましい。
【0057】
重合反応に用いられる溶剤は、反応物質及び生成物を溶解できるものであれば、特に限定されるものではない。当該溶剤の例としては、好ましくは、非プロトン性極性溶剤、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド等;及びフェノール性溶剤、例えば、メタクレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等が挙げられる。
【0058】
脱水/閉環反応は、重合反応で生じたアミド酸官能基をアミド官能基に変化させるように、脱水剤及びイミド化触媒の存在下で加熱することによって行われる(すなわち、イミド化反応)。
【0059】
ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂のイミド化度が70%より大きい場合、本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られるフレキシブル基板の熱的及び機械的性質はより良好である。
【0060】
脱水/閉環反応に適した脱水剤は、酸無水物類化合物、例えば無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等、から選択される。当該脱水剤の使用量は、ポリアミック酸1モルに対して0.01〜20モルであるのが好ましい。脱水/閉環反応に適したイミド化触媒は、ピリジン類化合物、例えば、ピリジン、トリメチルピリジン、ジメチルピリジン等;及び第三級アミン類化合物、例えばトリエチルアミン等、から選択される。イミド化触媒の使用量は、脱水剤1モルに対して0.5〜10モルであるのが好ましい。
【0061】
基Zを含む重合反応生成物と基Zを含むポリシロキサンとの反応は、触媒の存在下に加熱することによって行われるのが好ましい。当該触媒としては、例えば、
(1)第三級アミン類化合物(例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等);
(2)イミダゾール類化合物(例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、ベンズイミダゾール等);
(3)有機ホスフィン化合物(例えば、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等);及び
(4)テトラフェニル・ボロン塩(例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボーレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボーレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボーレート等)
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
基Zを含む重合反応生成物と基Zを含むポリシロキサンとの反応を行うための溶剤は、基Zを含む重合反応生成物、ポリシロキサン、及びそれによって生じる生成物が溶剤に溶解することができる限り特に限定されるものではない。当該溶剤としては、例えば、(1)非プロトン性の極性溶剤(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド等);及び(2)フェノール性溶剤(例えば、メタクレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
基Zを含む重合反応生成物とポリシロキサンとの前述の反応は、50℃〜120℃の温度で行われるのが好ましく、60℃〜100℃の温度で行われるのがより好ましい。
【0064】
基Zを含む重合反応生成物のZ基に対するポリシロキサンのZ基の当量比は、0.01〜0.4であるのが好ましい。
【0065】
式(II)で表されるポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂は、好ましくは、以下の工程(1)及び(2)を含む製造方法によって得られる。
(1)式
【0066】
【化12】

【0067】
で表されるテトラカルボン酸二無水物成分及び式
【0068】
【化13】

【0069】
で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分を重合反応に付して式
【0070】
【化14】

【0071】
(式中、W、R、及びZは、上で定義した通りである。)
で表される基Zを含む重合反応生成物を得る。
【0072】
(2)(1)で得られた基Zを含む重合反応生成物及び基Zを含むポリシロキサン(Zは、Zと反応する一価の基である)とを反応させてポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂を得る。
【0073】
製造方法は、それによって得られる重合反応生成物がポリアミック酸、ポリイミド、又はポリアミック酸及びポリイミドの両方を含み得るように、反応温度又は反応時間等を調節することによって制御することができる。
【0074】
テトラカルボン酸二無水物成分
本発明に適したテトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのテトラカルボン酸二無水物成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
当該脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
当該脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロヘプチル−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシルシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
当該芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’−4,4’−ビフェニルエタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ペルフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキシド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビストリメリット酸無水物、プロピレングリコール−ビストリメリット酸無水物、1,4−ブタンジオール−ビストリメリット酸無水物、1,6−ヘキサンジオール−ビストリメリット酸無水物、1,8−オクタンジオール−ビストリメリット酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビストリメリット酸無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
テトラカルボン酸二無水物の上記例に加えて、その他本発明に有用なテトラカルボン酸二無水物として、例えば、次の式(i−1)〜(i−6)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【化15】

【0080】
【化16】

【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
【化19】

【0084】
(式中、Rは芳香環構造を有する二価基を表し、sは、1〜2の整数を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、無関係に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0085】
【化20】

【0086】
(式中Rは芳香環構造を有する二価基を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、無関係に、水素原子又はアルキル基を表す。)
式(i−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、(i−5−1)〜(i−5−3)から選択されるのが好ましい。
【0087】
【化21】

【0088】
式(i−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、
【0089】
【化22】

【0090】
であるのが好ましい。
【0091】
本発明に適したテトラカルボン酸二無水物成分は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、及びそれらの組み合わせ、から選択されるのが好ましい。
【0092】
ジアミン成分
ジアミン成分は、式
【0093】
【化23】

【0094】
(式中、Zは上で定義した通りである。)
で表されるジアミン化合物を含む。
【0095】
本発明に適した式
【0096】
【化24】

【0097】
で表されるジアミン化合物としては、例えば、基Zを含む脂肪族ジアミン化合物、基Zを含む脂環式ジアミン化合物、及び基Zを含む芳香族ジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】

【0099】
【化25】

【0100】
で表されるジアミン化合物に含まれるZ基は、カルボン酸基又は水酸基であるのが好ましい。
【0101】
該基Zを含むジアミン化合物は、下記式(ii−1)で表されるジアミン化合物、下記式(ii−2)で表されるジアミン化合物、及びそれらの組み合わせから選択されるのが好ましい。
【0102】
<式(ii−1)で表されるジアミン化合物>
【0103】
【化26】

【0104】
(式中、R11、R12、R13、及びR14は同一であっても異なっていてもよく、独立して、水素原子、カルボン酸基、又は水酸基を表す。但し、R11、R12、R13、及びR14は同時に水素原子であってはならない。)
【0105】
当該式(ii−1)で表されるジアミン化合物は、2−ヒドロキシ−p−ジアミノベンゼン、2−カルボキシ−p−ジアミノベンゼン、2,5−ジヒドロキシ−p−ジアミノベンゼン、2,5−ジカルボキシ−p−ジアミノベンゼン、等から選択されるのが好ましい。
【0106】
<式(ii−2)で表されるジアミン化合物>
【0107】
【化27】

【0108】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26、R27、R28、及びR29は同一であっても異なっていてもよく、独立して、水素原子、メチル基、カルボン酸基、又は水酸基を表す。但し、R21、R22、R23、R24、R26、R27、R28、及びR29がカルボン酸基又は水酸基の少なくとも一つである。また、式中、R25は、単結合、−O−、−S−、−CH−、
【0109】
【化28】

【0110】
を表す。)
【0111】
当該式(ii−2)で表されるジアミン化合物は、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメチルビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,1−ビス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジヒドロキシー4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド等から選択されるのが好ましい。
【0112】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物の所望の性質が損なわれない限り、上記基Zを含むジアミン化合物と組み合わせて、上記基Zを含むジアミン化合物以外のさらなるジアミン化合物を使用してもよい。
【0113】
本発明に適した「さらなるジアミン化合物」としては、例えば、脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの「さらなるジアミン化合物」は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0114】
「さらなるジアミン化合物」として用いられる脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、4,4’−ジアミノヘプタン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
「さらなるジアミン化合物」として用いられる脂環式ジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、三環式[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
「さらなるジアミン化合物」として用いられる芳香族ジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,5−ジアミノナフタレン、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインデニレンジメチレンジアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]オクタフルオロビフェニル、5−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチレン−1,3−ジアミノベンゼン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−(4−エチルフェニル)シクロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
「さらなるジアミン化合物」の上記例に加えて、本発明に有用な「さらなるジアミン化合物」として、次の式(ii−3)〜(ii−17)で表される化合物が挙げられる。
【0118】
【化29】

【0119】
(式中、Rは、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、又は−CO−を表し、R51は、ステロイド骨格、トリフルオロメチル基、フルオロ基、C〜C30アルキル基、及び一価の窒素含有環状構造(当該一価の窒素含有環状構造は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジン及びピペラジンからなる群から得られる)からなる群から選択される基を有する一価の基を表す。)
【0120】
【化30】

【0121】
(式中、Rは、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、又は−CO−を表し、R61及びR62はそれぞれ、脂肪族基、芳香族基、及び複素環基からなる群から選択される二価の基(当該二価の基は、場合によって、例えば、ハロゲン原子によって置換されている)を表し、R63は、C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシ基、C〜Cフルオロアルキル基、C〜Cフルオロアルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子を表す。)
【0122】
【化31】

【0123】
(式中、Rは、水素原子、C〜Cアシル基、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、繰り返し単位中のRは同一であっても異なっていてもよく、xは1〜3の整数である。)
【0124】
【化32】

【0125】
(式中、tは2〜12の整数である。)
【0126】
【化33】

【0127】
(式中、uは1〜5の整数である。)
【0128】
【化34】

【0129】
(式中、R及びR82は同一であっても異なってもよく、それぞれ二価の有機基を表し、R81は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジン及びピペラジンからなる群から得られる、窒素原子を含む環構造を有する二価の基を表す。)
【0130】
【化35】

【0131】
(式中、Rは−O−又はシクロへキシレン基を表し、R91は−CH−を表し、R92はフェニレン基又はシクロへキシレン基を表し、R93は水素原子又はヘプチル基を表す。)
【0132】
【化36】

【0133】
【化37】

【0134】
式(ii−3)で表されるジアミン化合物の例としては、好ましくは、2,4−ジアミノフェニルギ酸エチルエステル、3,5−ジアミノフェニルギ酸エチルエステル、2,4−ジアミノフェニルギ酸プロピルエステル、3,5−ジアミノフェニルギ酸プロピルエステル、1−ドデコキシ−2,4−アミノベンゼン、1−ヘキサデコキシ−2,4−アミノベンゼン、1−オクタデコキシ−2,4−アミノベンゼン、
【0135】
【化38】

【0136】
等が挙げられる。
【0137】
式(ii−4)で表されるジアミン化合物の例としては、好ましくは、
【0138】
【化39】

【0139】
【化40】

【0140】
【化41】

【0141】
(式中、vは3〜12の整数を表す。)、
【0142】
【化42】

【0143】
(式中、vは3〜12の整数を表す。)、
【0144】
【化43】

【0145】
(式中、vは3〜12の整数を表す。)、
【0146】
【化44】

【0147】
(式中、vは3〜12の整数を表す。)
等が挙げられる。
【0148】
式(ii−5)で表されるジアミン化合物としては、好ましくは、
(1)xが1である場合は、p−ジアミノベンゼン、m−ジアミノベンゼン、o−ジアミノベンゼン、2,5−ジアミノトルエン等;
(2)xが2である場合は、4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリクロロメチル)ビフェニル等;及び
(3)xが3である場合は、1,4−ビス(4’−アミノフェニル)ベンゼン等;
が挙げられる。
【0149】
式(ii−7)で表されるジアミン化合物としては、好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィドが挙げられる。
【0150】
式(ii−9)で表されるジアミン化合物は、好ましくは、
【0151】
【化45】

【0152】
及び
【0153】
【化46】

【0154】
から選択される。
【0155】
本発明に適した「さらなるジアミン化合物」としては、好ましくは、1,2−ジアミノエタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、5−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチレン−1,3−ジアミノベンゼン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−(4−エチルフェニル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノフェニルギ酸エチルエステル、式(ii−3−1)、(ii−3−2)、(ii−4−1)、及び(ii−4−11)で表されるジアミン化合物、p−ジアミノベンゼン、m−ジアミノベンゼン、o−ジアミノベンゼン、式(ii−9−1)で表されるジアミン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
基Zを含むジアミン化合物の使用量は、ジアミン成分の合計100モルに対して、10〜100モルであるのが好ましく、20〜100モルであるのがより好ましい。
【0157】
ポリシロキサン
基Zを含むポリシロキサンは、基Z及び基Aを含む二官能性化合物と基Aを含むシロキサンプレポリマーとを反応させることによって得られる。ここで、Zは、上で定義した通りであり、Aは第一の活性基であり、Aは、Aと反応する第二の活性基であり、当該反応によりポリシロキサンが形成される。
【0158】
好ましくは、Z基は、エポキシ基、イソシアネート基、又はカルボン酸基である。基Aは水酸基であり、基Aはアルコキシ含有基である。
【0159】
基Zは、基Zに応じて選択され、基Aは、基Aに応じて選択される。
【0160】
基Aに対する基Aの当量比は、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.03〜0.4である。基Aに対する基Aの当量比が上記範囲内にある時、上記工程(b)におけるポリシロキサンと重合反応生成物との反応性を高めることができ、その後得られるフレキシブル基板が優れた機械特性を有する。
【0161】
当該ポリシロキサンを得るための反応に使用される触媒としては、例えば、金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、錫、鉛、ゲルマニウム、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン等);上記金属のハロゲン化物;上記金属の酸化物;上記金属の塩;上記金属のアルコキシド;及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。当該触媒の具体的な例としては、ジブチル錫ジラウレート及びオクチル酸錫が挙げられる。
【0162】
当該ポリシロキサンを得るための反応は、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは70℃〜110℃の温度で行われる。ポリシロキサンを得るための反応を上記範囲の温度で行うと、シロキサンプレポリマーの自己重合を低減することができ、反応媒体の粘度の上昇―これは反応性の低下に導き得る―を避けることができる。ポリシロキサンを得るための反応は、1時間〜15時間行われるのが好ましい。
【0163】
二官能性化合物
本発明において用いられる二官能性化合物とは、好ましくは、化合物が、2種類の官能性基、すなわち、基Zと基Aを有することを意味する。二官能性化合物としては、例えば、水酸基含有エポキシ化合物、水酸基含有イソシアネート化合物、水酸基含有カルボン酸化合物及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0164】
当該水酸基含有エポキシ化合物としては、例えば、
(1)エピクロロヒドリン、水、及び、2価アルコール又はジヒドロキシフェノール類を反応させることによって得られる、末端に水酸基を有するグリシジルエーテル類化合物;
(2)エピクロロヒドリンと多価アルコール(例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール等)とを反応させることによって得られる、末端に水酸基を有するポリグリシジルエーテル類化合物;
(3)エピクロロヒドリンとアミノアルコール化合物とを反応させることによって得られる、末端に水酸基を有するエポキシ化合物;
(4)水酸基含有脂環式炭化水素エポキシド、又は、式(III)
【0165】
【化47】

【0166】
(式中、Rは、C〜C13アルキレン基を表す。)
で表される水酸基含有エポキシ化合物
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの水酸基含有エポキシ化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0167】
当該水酸基含有エポキシ化合物としては、具体的には例えば、4−ヒドロキシフェニルグリシジルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)フェニルグリシジルエーテル、[1,3−ビス(グリシジルオキシ)−2−プロパノール]、[2,2−ビス(グリシジルオキシメチル)−3−(グリシジルオキシ)−1−プロパノール]、エポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール、2,3−エポキシ−1−シクロヘキサノール、グリシドール(商品名はエピオールOH,日油株式会社製)、8−オキシラニル−1−オクタノール、9−オキシラニル−1−ノナノール、商品名EOA(クラレ株式会社製)等が挙げられる。
【0168】
当該水酸基含有イソシアネート化合物としては、例えば、式(IV)
【0169】
【化48】

【0170】
(式中、Rは、C〜C12アルキレン基を表す。)
で表される水酸基含有イソシアネート化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの水酸基含有イソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0171】
当該水酸基含有イソシアネート化合物としては、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチルイソシアネート、3−ヒドロキシプロピルイソシアネート、4−ヒドロキシブチルイソシアネート、6−ヒドロキシヘキシルイソシアネート、8−ヒドロキシオクチルイソシアネート、10−ヒドロキシデシルイソシアネート、12−ヒドロキシドデシルイソシアネート等が挙げられる。
【0172】
当該水酸基含有カルボン酸化合物としては、例えば、式(V)〜(VII)で表される水酸基含有カルボン酸化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの水酸基含有カルボン酸化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0173】
【化49】

【0174】
(式中、Rは、C〜C11の直鎖又は分岐アルキレン基を表す。)
【0175】
【化50】

【0176】
(式中、Rは、C〜Cアルキレン基を表し、yは、1〜3の整数を表し、zは1〜2の整数の表す。)
【0177】
【化51】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、wは0又は1を表す。)
当該水酸基含有カルボン酸化合物としては、具体的には例えば、ヒドロキシ酢酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸、12−ヒドロキシラウリル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジメチル−6−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ−6−プロピル安息香酸、サリチル酸、3−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−8−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸、4−ヒドロキシメチル−1−ナフトエ酸、8−ヒドロキシメチル−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−6−メチル−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0178】
シロキサンプレポリマー
シロキサンプレポリマーは、シランモノマーを加水分解し、次いで部分的に縮合することによって得られる。当該シランモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、式(VIII):
【0179】
【化52】

【0180】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基又はC〜Cアリール基を表し、mは0又は1を表し、Rは、C〜Cアルキル基を表し、4−mが3又は4である時は同一であっても異なっていてもよい。)
で表される。
【0181】
mが0である時、当該シランモノマーは、四官能性シランである。mが1である時、当該シランモノマーは、三官能性シランである。
【0182】
当該シランモノマーは、例えば、(1)四官能性シラン(例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等);及び(2)三官能性シラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン等)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0183】
シランモノマーの加水分解及び部分的な縮合は通常の方法で行うことができる。例えば、シランモノマーを溶剤、水、及び、場合により触媒、と共に加え、熱処理してシロキサンプレポリマーを得る。溶剤及び触媒は特に限定されるものではない。
【0184】
シロキサンプレポリマーの数平均分子量は、230〜2,000であるのが好ましい。各シロキサンプレポリマー分子中のケイ素原子の平均個数は2〜11であるのが好ましい。当該シロキサンプレポリマーに含まれる基Aの量は、シロキサンプレポリマー100モルに対して、好ましくは50モル〜95モル、より好ましくは60モル〜90モルである。
【0185】
フレキシブル基板及びその製造
本発明のフレキシブル基板は、本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られる。
【0186】
フレキシブル基板の製造は、本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物を支持基板に塗布し、次いで、当該樹脂組成物を乾燥して硬化させた後、支持基板から剥離することにより得ることができる。
【0187】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物は、当該技術において通常用いられているコーティング方法、例えば、スピン・コーティング、キャスト・コーティング、ロール・コーティング等、を用いて支持基板上に塗布することができる。
【0188】
乾燥は、溶剤を除去するための当該技術における周知の方法で行うことができる。乾燥は50℃〜200℃の乾燥温度で1分間〜1時間行われる。
【0189】
硬化は、アルコキシシリルのゾル−ゲル硬化を行い、かつ、残留溶媒を除去するための当該技術における周知の方法で行うことができる。硬化は、150℃〜500℃の硬化温度で10分間〜2時間行われる。
【0190】
フレキシブル基板は、例えば、ストリッピング、乾式エッチング、湿式エッチング等の、当該技術において周知の方法で、支持基板から剥離される。
【0191】
本発明に適した支持基板としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、又はシリコン・ウエハーが挙げられる。
【0192】
フレキシブル基板の熱膨張係数は、30ppm/℃未満であるのが好ましい。
【0193】
本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られるフレキシブル基板は、フレキシブル液晶ディスプレー又は電子書籍の基板上で有用である。
【実施例】
【0194】
ポリシロキサンの製造
製造例1
窒素注入口及び攪拌器を備えた500mlの三つ口三角フラスコを窒素でパージして、グリシドール(商品名:エピオールOH、日油株式会社製、1420g)及びテトラメトキシシラン部分縮合物(商品名:Mシリケート51、多摩化学工業株式会社製、9000g)を添加し、次いで連続して攪拌して90℃に加熱した。次いでジブチル錫ジラウレート(2g)を加えた。約620gのメタノールを留去した後、フラスコの内容物を室温に冷却した。約100gのメタノールをさらに、13kPaの減圧下で蒸留により除去し、ポリシロキサンを得た。テトラメトキシシラン部分縮合物の基A(メトキシ基)に対する、グリシドールの基A(水酸基)の当量比は、0.11である。
【0195】
製造例2
窒素注入口及び攪拌器を備えた500mlの三つ口三角フラスコを窒素でパージして、グリシドール(製品名:エピオールOH、日油株式会社製、1420g)及びメチルトリメトキシシラン部分縮合物(製品名:MTMS−B、多摩化学工業株式会社製、9000g)を添加し、次いで連続して攪拌し90℃に加熱した。次いでジブチル錫ジラウレート(1.8g)を加えた。約630gのメタノールを留去した後、フラスコの内容物を室温に冷却した。約30gのメタノールをさらに、13kPaの減圧下で蒸留により除去し、ポリシロキサンを得た。メチルトリメトキシシラン部分縮合物の基A(メトキシ基)に対する、グリシドールの基A(水酸基)の当量比は、0.06である。
【0196】
製造例3
窒素注入口及び攪拌器を備えた500mlの三つ口三角フラスコを窒素でパージして、2−ヒドロキシエチルイソシアネート(1757g)及びテトラメトキシシラン部分縮合物(製品名:Mシリケート51、多摩化学工業株式会社製、4520g)を添加し、次いで連続して攪拌し90℃に加熱した。次いでジブチル錫ジラウレート(1.2g)を加えた。約590gのメタノールを留去した後、フラスコの内容物を室温に冷却した。約25gのメタノールをさらに、13kPaの減圧下で蒸留により除去し、ポリシロキサンを得た。テトラメトキシシラン部分縮合物の基A(メトキシ基)に対する、2−ヒドロキシエチルイソシアネートの基A(水酸基)の当量比は、0.21である。
【0197】
製造例4
窒素注入口及び攪拌器を備えた500mlの三つ口三角フラスコを窒素でパージして、4−ヒドロキシ安息香酸(2623g)及びメチルトリメトキシシラン部分縮合物(製品名:MTMS−A、多摩化学工業株式会社製、3380g)を添加し、次いで連続して攪拌し90℃に加熱した。次いでジブチル錫ジラウレート(2.1g)を加えた。約620gのメタノールを留去した後、フラスコの内容物を室温に冷却した。約32gのメタノールをさらに、13kPaの減圧下で蒸留により除去し、ポリシロキサンを得た。メチルトリメトキシシラン部分縮合物の基A(メトキシ基)に対する、4−ヒドロキシ安息香酸の基A(水酸基)の当量比は、0.36である。
【0198】
ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂の製造
実施例1
窒素注入口、撹拌器、ヒーター、冷却器、及び温度計を備えた500mlの四つ口三角フラスコを窒素でパージし、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(86.5g、0.4モル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(20.1g,0.1モル)、及びN−メチルピロリドン(700g)を添加し、溶解するまで室温で撹拌した。次いで、2,3,5−トリカルボキシルシクロペンチル酢酸二無水物(112.2g、0.5モル)及びN−メチルピロリドン(300g)を加え、室温で6時間反応させた。次いで、N−メチルピロリドン(950g)、無水酢酸(56.1g)、及びピリジン(197.5g)を加え、60℃で4時間撹拌して、水酸基を含む重合反応生成物を得た。
【0199】
得られた水酸基を含む重合反応生成物を90℃に加熱した後、製造例1で製造したエポキシ基を含むポリシロキサン(40g)と2−メチルイミダゾール(0.25g)を添加した。反応を80℃で6時間行い、次いで室温に冷却することによって、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂を得た。当該ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂の内容をNMRで調べたところ、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂は90重量%であり、残りの10重量%は、ポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂であった。
【0200】
実施例2〜9及び比較例1〜4
実施例2〜9及び比較例1〜4を、表1に示す成分と反応条件を用いて、実施例1と同じ方法で行って、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂を得た。実施例1と同様、当該ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂の内容をNMRで調べたところ、結果は表1に示すとおりであった。
【0201】
【表1】

【0202】
フレキシブル基板の製造
適用例1
実施例1で得られたポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂(100重量部)及びエチレングリコールn−ブチルエーテル(800重量部)を混合して、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物を得た。
【0203】
得られたポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物を、100mm×100mm×0.7mmのガラス基板上に、スピン・コーティングにより塗布して基板上に塗膜を形成した。塗膜を110℃で2分間乾燥し次いで220℃で30分間焼成し、ガラス基板およびフレキシブル基板を含む積層体を得た。このフレキシブル基板を以下の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0204】
適用例2〜10及び比較適用例1〜4
適用例2〜10及び比較適用例1〜4を、表2に示す成分とその量を用いて、適用例1と同じ方法で行い、フレキシブル基板を得た。こうして得られたフレキシブル基板を以下の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0205】
[評価項目]
1.熱膨張係数(α)
適用例1〜10及び比較適用例1〜4で得られた積層体上のフレキシブル基板のそれぞれの、100℃〜200℃の温度での熱膨張係数(α、ppm/℃)を、熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、モデルTAM120C)を用いて測定し、以下のように評価した。
【0206】
◎:α<25
○:30>α≧25
△:40>α≧30
×:α≧40
【0207】
2.引張破壊強度(σ)
適用例1〜10及び比較適用例1〜4で得られた積層体上のフレキシブル基板のそれぞれの引張破壊強度(σ、GPa)を、引張強度テスター(株式会社オリエンテック製、モデルUCT−500)を用いて室温で3回測定し、それぞれの平均引張破壊強度を、以下のように評価した。
【0208】
○:0.15<σ≦0.2
△:0.1<σ≦0.15
×:σ≦0.1
【0209】
【表2】

【0210】
表2に示されている通り、適用例1〜10において、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物中で使用されたポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂のジアミン部分に結合したポリシロキサン含有基を有している。本発明のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られるフレキシブル基板は、優れた熱膨張係数と引張破壊強度を有している。
【0211】
しかしながら、比較適用例1及び2において使用されたポリイミド樹脂は、特開2002−293933号公報に記載されているように、ポリシロキサン含有基を含むが、ポリシロキサン含有基は、ポリイミド樹脂のテトラカルボン酸二無水物部分のカルボキシ基に結合している。当該ポリイミド樹脂組成物から得られたフレキシブル基板の熱膨張係数及び引張破壊強度は劣っている。
【0212】
比較適用例3及び4において使用されたポリイミド樹脂は、ポリシロキサン含有基を含んでいない。当該ポリイミド樹脂組成物から得られたフレキシブル基板の熱膨張係数及び引張破壊強度は劣っている。
【0213】
本発明は、最も実用的で好適な実施態様であると考えられるものに関して記載されているが、この発明は、開示された実施態様に限定されるものではなく、最も広い解釈と均等の精神と範囲の中に含まれる、様々なアレンジメントを包含することが意図されていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式(I)
【化1】

(式中、Wは4価の有機基を表し、Rは3価の有機基を表し、Xはポリシロキサン含有基を表す。)
で表される繰り返し単位を含むポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂;及び
(2)溶剤;
を含有するポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
Xが、以下の式:
−X−X
(式中、Xは、式
【化2】

(Y及びYはそれぞれ独立に、置換していてもよいC〜C13のアルキレン基、置換していてもよいC〜C12のアリーレン基又は置換していてもよいC7〜C12のアラルキル基を表す。Yは置換していてもよいC〜C13のアルキレン基を表す。その際、当該アルキレン基のメチレン基の一部は場合により酸素原子に置換されている。但し、いくつかのメチレン基が酸素原子に置換される場合、2個の酸素原子が隣接する構造となることはない)で表される基を表し、Xはポリシロキサニル基を表す。)
によって表される、請求項1に記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記3価の有機基が、3価の脂肪族基、3価の脂環式基、3価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサン含有基が、ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂1モルに対して0.005モル〜35モルのケイ素含有量を有している、請求項1〜3のいずれかに記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂が、次の工程(a)及び(b):
(a)式
【化3】

で表されるテトラカルボン酸二無水物成分、及び、式
【化4】

で表されるジアミン化合物を含むジアミン成分を重合反応に付し、次いで脱水/閉環反応を行って式
【化5】

(式中、W及びRは、請求項1で定義した通りであり、Zは一価の基である。)
で表される基Zを含む重合反応生成物を得る工程、及び
(b)当該基Zを含む重合反応生成物と基Zを含むポリシロキサン(Zは、Zと反応する一価の基である。)を反応させてポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂を得る工程、
を含む製造方法によって得られる、請求項1〜4のいずれかに記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項6】
当該ポリシロキサンが、基Zと基Aを含む二官能性化合物と基Aを含むシロキサンプレポリマーとを反応させることによって得られる(その際、Zは、請求項5において定義したとおりであり、Aは、第一の活性基であり、Aは、Aと反応して当該ポリシロキサンを形成する第二の活性基である。)、請求項5に記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項7】
に対するAの当量比が0.01〜0.5である、請求項6に記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項8】
当該二官能性化合物が、水酸基含有エポキシ化合物、水酸基含有イソシアネート化合物、及び水酸基含有カルボン酸化合物からなる群から選択される、請求項6又は7に記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、式(II)
【化6】

(式中、W、R、及びXは、請求項1で定義した通りである。)
で表される繰り返し単位を含むポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂の含有量が、前記ポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂、及び、ポリシロキサングラフト化ポリアミック酸樹脂の合計100重量部に対して70重量部以上である、請求項9に記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項11】
さらに添加剤を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリシロキサングラフト化ポリイミド樹脂組成物から得られるフレキシブル基板。
【請求項13】
熱膨張係数が30ppm/℃以下である、請求項12に記載のフレキシブル基板。

【公開番号】特開2013−95921(P2013−95921A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241369(P2012−241369)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【出願人】(594006345)奇美實業股▲分▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】