説明

ポリシロキサン含有膜形成用の組成物及び帯電部材

【課題】白濁や相分離が抑制され、硬化後に高誘電特性を有し、かつ、耐付着物性、低分子量成分のブリードアウト抑制が長期間維持されるポリシロキサン含有膜形成用の組成物を提供する。
【解決手段】所定の2種類の加水分解性シラン化合物に対して、所定の加水分解性チタン化合物を0.01〜0.3モル%の割合で含む加水分解性化合物の混合物を、水及びアルコールの存在下で加水分解させて得た、該加水分解性シラン化合物と該加水分解性チタン化合物との縮合物と、エポキシ変性シリコーンオイルと、光重合開始剤とを含むことを特徴とするポリシロキサン含有膜形成用の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリシロキサン含有膜形成用の組成物、帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体と当接して該電子写真感光体を帯電させる帯電部材は、電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分かつ均一に確保するためにゴムを含む弾性層を有する構成が一般的である。かかる弾性層中には低分子量成分が不可避的に含まれることから、長期の使用によって、当該低分子量成分が帯電部材の表面に染み出し、電子写真感光体の表面を汚染することがある。このような課題に対して特許文献1には、弾性層の周面を無機酸化物被膜あるいは無機−有機ハイブリッド被膜で被覆し、低分子量成分が帯電部材の表面に染み出すことを抑制した構成が提案されている。また、特許文献2には、両末端又は片末端に金属アルコキシドと反応可能な官能基を有する有機ケイ素化合物と金属アルコキシドを滴下して有機・無機ハイブリッドゾル液を調製し、該ゾル液を加熱ゲル化する有機・無機ハイブリッドの製造方法が示されている。また、該有機・無機ハイブリッドを表面被覆材として用いたロール部材が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−173641号公報
【特許文献2】特開2004−210857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、上記特許文献2の開示に基づき、Siアルコキシドと共にTiのようなヘテロ原子のアルコキシドを原料として用い、ゾルゲル反応を経て、Si内にヘテロ原子を分散・結合してなる有機・無機ハイブリッドを表面層に有する帯電部材について検討を進めた。その結果、チタンアルコキシドはSiアルコキシドと比較し反応速度がはるかに大きく、特にチタン量を増加した際には合成液の相分離・白濁・沈殿が生じやすいという課題を見出した。
【0005】
そこで、本発明の目的は、弾性層の表面に形成することで、弾性層からの低分子量成分の染み出しを抑制でき、表面にトナー等が付着しにくく、また、高誘電特性を示すポリシロキサン含有膜を形成でき、かつ、白濁や相分離の抑制された組成物の提供にある。また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像の形成に資する帯電部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物は、下記式(1)及び下記式(2)で表される加水分解性シラン化合物に対して、下記式(3)で示される加水分解性チタン化合物を0.01〜0.3モル%の割合で含む加水分解性化合物の混合物を、水及びアルコールの存在下で加水分解させて得た、該加水分解性シラン化合物と該加水分解性チタン化合物との縮合物と、エポキシ変性シリコーンオイルと、光重合開始剤とを含むことを特徴とする:
式(1)
1−Z−Si−(OR23
(上記一般式(1)中、R1はカチオン重合可能な有機基、Zは二価の有機基、R2は飽和又は不飽和の炭化水素基を示す)
式(2)
(R3)−Si−(OR23
(上記一般式(2)中、R2は飽和又は不飽和の炭化水素、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基を示す)
式(3)
(R3x−Ti−(OR24-x
(上記一般式(3)中、xは0〜3の整数、R2は飽和又は不飽和の炭化水素基、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基を示す)。
【0007】
本発明に係る帯電部材は、支持体と、該支持体の外周に、導電性弾性層と、表面層とを少なくとも有する帯電部材において、該表面層が、請求項1又は2に記載の組成物の塗膜の光硬化膜を含むことを特徴とする。また、本発明に係るプロセスカートリッジは、前記帯電部材を具備していることを特徴とする。更に、本発明に係る電子写真装置は、前記帯電部材を具備していることを特徴とする。更にまた、本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物の製造方法は、前記組成物の製造方法であって、(i)前記式(1)及び下記式(2)で表される加水分解性シラン化合物に対して、前記式(3)で示される加水分解性チタン化合物を0.01〜0.3モル%の割合で含む加水分解性化合物の混合物を、水及びアルコールの存在下で加水分解させて、加水分解性シラン化合物と、該加水分解性チタン化合物との縮合物を調製する工程と、(ii)該縮合物と、エポキシ変性シリコーンオイルと、光重合開始剤とを混合する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、白濁や相分離が抑制され、硬化後に高誘電特性を有し、かつ、耐付着物性、低分子量成分のブリードアウト抑制が長期間維持されるポリシロキサン含有膜形成用の組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の帯電部材の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図3】本発明における動摩擦係数の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリシロキサン含有膜形成用の組成物]
本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物は、下記式(1)及び下記式(2)で表される加水分解性シラン化合物に対して、下記式(3)で示される加水分解性チタン化合物を0.01〜0.3モル%の割合で含む加水分解性化合物の混合物を、水及びアルコールの存在下で加水分解させて得た、該加水分解性シラン化合物と該加水分解性チタン化合物との縮合物と、エポキシ変性シリコーンオイルと、光重合開始剤とを含む:
式(1)
1−Z−Si−(OR23
(上記一般式(1)中、R1はカチオン重合可能な有機基、Zは二価の有機基、R2は飽和又は不飽和の炭化水素基を示す)
式(2)
(R3)−Si−(OR23
(上記一般式(2)中、R2は飽和又は不飽和の炭化水素、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基を示す)
式(3)
(R3x−Ti−(OR24-x
(上記一般式(3)中、xは0〜3の整数、R2は飽和又は不飽和の炭化水素基、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基を示す)。
【0011】
本発明によれば、加水分解性シラン化合物と加水分解性チタン化合物がゾルゲル反応を経て共重合した化合物を含むポリシロキサン含有膜形成用の組成物を得ることができる。従来のTiO2粒子を混合したものと比較し、共重合しているためにTiO2粒子が帯電部材の使用中に離脱することなく長期間にわたり高い比誘電率を維持することができる。また、層分離・白濁・沈殿することなく、透明で均一な組成物を得ることができる。
【0012】
本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物(以下、単に組成物と示す場合有り)は、さらにエポキシ変性シリコーンオイルを含み、表面自由エネルギーを低く調節できるため、膜形成後の表面の付着物との親和性を調整することができる。またバインダーである加水分解性シラン化合物が有するエポキシ基及びエポキシ変性シリコーンオイルが有するエポキシ基が光重合により結合し、シリコーン部分がシラン化合物に固定化される。これによりシリコーンの特性をより長期間にわたり維持することができる。
【0013】
また、前記エポキシ変性シリコーンオイルはバインダーとなる加水分解性シラン化合物との相溶性が良好であるため、膜形成後塗工ムラになりにくい。また、前記ポリシロキサン含有膜形成用の組成物を用いて製造した帯電部材は、DC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電及び画像出力が可能である。
【0014】
(加水分解性シラン化合物(A))
前記式(1)で示される加水分解性シラン化合物(以下、加水分解性シラン化合物(A)とする)中のR1のカチオン重合可能な基とは、開裂によってオキシアルキレン基を生成するカチオン重合可能な有機基を意味する。例えば、エポキシ基やオキセタン基の如き環状エーテル基、及び、ビニルエーテル基等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性及び反応制御の容易性の観点から、エポキシ基が好ましい。前記式(1)中のZの二価の有機基としては、アルキレン基又はアリーレン基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。前記式(1)中のR2の飽和又は不飽和の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。なお、加水分解性シラン化合物(A)には−(OR2)基が3つ含まれるが、各基は異なっていてもよい。
【0015】
以下に、加水分解性シラン化合物(A)の具体例を示す。
(A−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)
(A−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)
(A−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(A−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン。
【0016】
これらの中でも、(A−2)GPTESが好ましい。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(加水分解性シラン化合物(B))
前記式(2)で示される加水分解性シラン化合物(以下、加水分解性シラン化合物(B)とする)中、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基である。前記アルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基がより好ましい。前記アリール基としては、フェニル基、ベンジル等が挙げられる。R3としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ヘキシル基、デシル基、フェニル基が好ましい。なお、R2は、加水分解性化合物(A)のR2と同様である。以下に、加水分解性シラン化合物(B)の具体例を示す。
【0018】
(B−1):メチルトリメトキシシラン
(B−2):メチルトリエトキシシラン
(B−3):メチルトリプロポキシシラン
(B−4):エチルトリメトキシシラン
(B−5):エチルトリエトキシシラン
(B−6):エチルトリプロポキシシラン
(B−7):プロピルトリメトキシシラン
(B−8):プロピルトリエトキシシラン
(B−9):プロピルトリプロポキシシラン
(B−10):ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)
(B−11):ヘキシルトリエトキシシラン
(B−12):ヘキシルトリプロポキシシラン
(B−13):デシルトリメトキシシラン
(B−14):デシルトリエトキシシラン
(B−15):デシルトリプロポキシシラン
(B−16):フェニルトリメトキシシラン
(B−17):フェニルトリエトキシシラン(PhTMS)
(B−18):フェニルトリプロポキシシラン。
【0019】
これらの中でも、(B−10)HeTMS及び(B−17)PhTMSが好ましい。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記加水分解性シラン化合物(B)を2種併用する場合、R3が炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基である加水分解性シラン化合物(B)と、R3がフェニル基である加水分解性シラン化合物(B)を組み合わせることがより好ましい。これにより、加水分解・縮合と反応によりモノマー構造が変化しても溶媒への相溶性が良好となる。
【0020】
(加水分解性チタン化合物(C))
前記式(3)で示される加水分解性チタン化合物(以下、加水分解性チタン化合物(C)とする)中のR2及びR3は、前記加水分解性シラン化合物(B)のR2及びR3と同様である。以下に、加水分解性チタン化合物(C)の具体例を示す。
【0021】
(C−1):テトラメトキシチタニウム
(C−2):テトラエトキシチタニウム
(C−3):テトラプロポキシチタニウム
(C−4):テトラi−プロポキシチタニウム
(C−5):テトラブトキシチタニウム
(C−6):テトラt−ブトキシチタニウム
(C−7):メチルチタニウムトリイソプロポキシド
(C−8):フェニルチタニウムトリイソプロポキシド。
【0022】
これらの中でも、(C−4)テトラi−プロポキシチタニウム及び(C−7)メチルチタニウムトリイソプロポキシドが好ましい。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(アルコール(E))
前記アルコール(以下、アルコール(E)とする)としては、特に限定されないが、エタノール、メタノールと2−ブタノールとの混合液、エタノールと2−ブタノールとの混合液の使用が好ましい。
【0024】
(配合量)
前記加水分解性化合物の混合物は、加水分解性シラン化合物(A)及び(B)に対して、加水分解性チタン化合物(C)を0.01〜0.3モル%の割合で含む。該割合は、好ましくは0.03〜0.2モル%である。この範囲内とすることにより、(C)成分の縮合の早い進行による微粒子の形成を抑制でき、沈殿の発生を抑えることができる。また前記加水分解性化合物の混合物に含まれる(A)、(B)のモル比は、(A)/((A)+(B))が0.05〜0.85であることが好ましい。より好ましくは、(A)/((A)+(B))が0.10〜0.50である。この領域では、(C)との反応性又は使用溶剤との溶解性が良好であるため、組成物の白濁化を抑制できる。エポキシ基の開環も抑制できる。また前記加水分解性化合物を加水分解する水(以下、水(D)とする)の量は、(A)、(B)及び(C)の加水分解する置換基の全モル数を((A)+(B)+(C))とすると、0.4≦(D)/((A)+(B)+(C))≦1.0であることが好ましい。更に0.6≦(D)/((A)+(B)+(C))≦0.9がより好ましい。この範囲内とすることで、縮合が十分となり、未反応のモノマーが残存しにくい。また、縮合の進行が早過ぎることがないため、白濁化や沈殿が生じにくい。また、水(D)が多いとアルコール(E)との混合時の相溶性も、極性の高い状態となるため、縮合物との相溶性も低くなり、先と同様に白濁化や沈殿が生じ易くなる。
【0025】
(混合)
前記(A)〜(E)を混合する方法としては、特に限定されない。しかし、先に(A)、(B)及び(C)を含む加水分解性化合物の混合物と(E)とを混合した後、該混合液を撹拌しながら(D)を滴下して混合する方法が、(C)の急激な反応による白濁・沈殿を抑える観点から好ましい。混合する際の温度としては、室温でよい。
【0026】
(加水分解)
次に、前記(A)〜(E)の混合液を加熱還流して、前記(A)、(B)及び(C)を加水分解し、縮合物を調製する。加熱還流は、前記混合液を撹拌しながら、60〜140℃で行うことが好ましい。加熱還流時間としては、10〜30hが好ましい。
【0027】
(エポキシ変性シリコーンオイル(F))
前記エポキシ変性シリコーンオイル(以下、エポキシ変性シリコーンオイル(F)とする)は、下記式(4)に示す片末端、側鎖、両末端又は側鎖両末端がエポキシ変性シリコーンオイルであることが好ましい。下記式(4)には、脂環式エポキシ変性シリコーンオイルも含まれる。
【0028】
【化1】

【0029】
前記式(4)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9は置換もしくは未置換のアルキル基、又は、置換もしくは未置換のエポキシ基を示し、この中で少なくとも1つはエポキシ基を示す。なお、同一のSiに結合する2つのR5、R6、R7又はR8は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。前記式(4)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9が置換もしくは未置換のアルキル基である場合、具体的には、炭素原子数1〜30のアルキル基が挙げられる。これらの中でもメチル又はブチル基が代表的である。(n1+n2+n3)は2以上の整数であり、2以上になるようにn1、n2、n3各々は0又は正の整数をとる。(n1+n2+n3)が2以上で十分な効果を発揮する。エポキシ変性シリコーンオイル(F)は、エポキシ基を含む有機鎖の結合位置により、片末端変性型、側鎖変性型、両末端変性型、側鎖両末端変性型の4種類に分類できる。中でも片末端変性のものが効果を発揮しやすいため好ましい。シリコーンオイルのエポキシ変性に用いる化合物としては、メチレンオキシラン、11−ドデシルオキシラン、4−ビニルシクロへキセンオキシド、4−(4−ペンテニル)シクロヘキセンオキシド、等を用いることができる。この中でも、メチレンオキシランが好ましい。これらは、1種を用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。以下に、前記式(4)で示される構造を有するエポキシ変性シリコーンオイル(F)の具体例を示す。各式中l、m、nは正の整数を示し、(l+m+n)は2以上の整数であることが、本発明の効果を十分に発揮する観点から好ましい。
【0030】
(片末端変性型)
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
(側鎖変性型)
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
(Rはアルキル基を示し、POAはポリアルキレンオキシドを示す)。
【0038】
(両末端変性型)
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
(側鎖両末端型)
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
前記エポキシ変性シリコーンオイル(F)の重量平均分子量Mwは、100以上、100,000以下が好ましい。100未満であると電位安定効果が小さく、100,000より大きいと組成物中の他の成分との親和性が小さくなり白濁化する場合があり、最終的に塗工時のムラになり易くなる。より好ましくは、300以上、100,000以下である。なお、エポキシ変性シリコーンオイル(F)の重量平均分子量測定には、GPC装置として「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー(株)製)を用いる。カラムはガードカラム(TSK guardcolum SuperH−L)TSKgel SuperH4000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH1000を5本連結して用いる。溶離液として、高速液体クロマトグラフィー用トルエンを用い、温度INLET40℃、OVEN40℃、RI40℃とする。検出器はRIで行う。検量線はポリスチレン(EasiCal PS−2)を用いる。
【0045】
前記エポキシ変性シリコーンオイルを前記合成した縮合物に添加する際、相溶性を高めるために溶媒で希釈してもよい。具体的にはメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール、2−ブタノール等のアルコールが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。この中でも、メチルエチルケトンが好ましい。
【0046】
本発明に係る組成物中の、前記エポキシ変性シリコーンオイル(F)の含有量は、前記縮合物中のポリシロキサン縮合物100質量部に対して、1.0質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。1.0質量部未満では電位向上の効果が小さく、20質量部より大きいと帯電特性が低下する場合がある。より好ましくは、5.0質量部以上、20質量部以下である。なお、ポリシロキサン縮合物の質量は、前記縮合物中の固形分から求めることができる。
【0047】
(光重合開始剤(G))
前記光重合開始剤(以下、光重合開始剤(G)とする)としては、カチオン重合開始剤、ラジカル型光重合開始剤等が挙げられるが、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合開始剤を少なくとも含むことが好ましい。カチオン重合開始剤としては、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合開始剤としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。前記光重合開始剤(G)は、組成物中の他の成分との相溶性を向上させるために事前にアルコールやケトン等の溶媒に希釈する。例えばメタノール、MIBKが挙げられる。各種カチオン重合開始剤の中でも、感度、安定性及び反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(5)で示される構造を有する化合物(商品名:「アデカオプトマーSP150」、(株)ADEKA製)が好ましい。また、下記式(6)で示される構造を有する化合物(商品名:「イルガキュア261」、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
本発明に係る組成物中の前記光重合開始剤(G)の使用量としては、開環重合するエポキシ基が十分反応するのに必要なカチオン量の観点から、前記縮合物中のポリシロキサン縮合物100質量部に対して0.1質量部以上、17.0質量部以下、特には、1.0質量部以上、10.0質量部以下が好ましい。
【0051】
以上のようにエポキシ変性シリコーンオイル(F)、光重合開始剤(G)を前記縮合物に添加後、塗布性向上のため溶剤により適当な濃度に調整してポリシロキサン含有膜形成用の組成物とする。前記溶剤としては、例えば、エタノール及び2−ブタノール等のアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン等、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。
【0052】
[帯電部材]
本発明に係る帯電部材は、支持体と、該支持体の外周に、導電性弾性層と、表面層とを少なくとも有する帯電部材において、該表面層が、本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物の塗膜の光硬化膜を含む。本発明に係る帯電部材の最も簡単な構成は、支持体上に導電性弾性層及び表面層の2層を設けた構成であるが、支持体と導電性弾性層との間や導電性弾性層と表面層との間に別の層を1層又は2層以上設けてもよい。図1に、本発明に係る帯電部材の構成の一例を示す。図1に示す帯電部材は、支持体101の外周に導電性弾性層102が形成され、導電性弾性層102の外周に表面層103が形成されている。
【0053】
(支持体)
帯電部材の支持体としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属製の支持体を用いることができる。
【0054】
(導電性弾性層)
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性体を1種又は2種以上用いることができる。
【0055】
前記ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びアルキルエーテルゴム。前記熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、三菱化学(株)製「ラバロン」(商品名)、クラレ(株)製「セプトンコンパウンド」(商品名)が挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、以下のものが挙げられる。三菱化学(株)製の「サーモラン」(商品名)、三井石油化学工業(株)社製の「ミラストマー」(商品名)、住友化学工業(株)社製の「住友TPE」(商品名)及びアドバンストエラストマーシステムズ社製の「サントプレーン」(商品名)。
【0056】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類及び使用量を適宜選択することによって調整することができる。その電気抵抗の好適な範囲は102Ω以上、108Ω以下であり、より好ましくは103Ω以上、106Ω以下である。
【0057】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、帯電防止剤、電解質が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては以下のものが挙げられる。第四級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム及び変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム)。第四級アンモニウム塩としては、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩及びハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩等)が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩及び高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステルの如き非イオン性帯電防止剤が挙げられる。電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(Li、Na、K等)の塩が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩としては、具体的には、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN及びNaClが挙げられる。また、導電性弾性層用の導電剤として、周期律表第2族の金属(Ca、Ba等)の塩(Ca(ClO42等)やこれから誘導される帯電防止剤を用いることもできる。また、これらと多価アルコールもしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオールとの錯体の如きイオン導電性導電剤を用いることもできる。多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。モノオールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。また、導電性弾性層用の導電剤として導電性のカーボンブラック、グラファイトを用いることもできる。また、酸化スズ、酸化チタン及び酸化亜鉛の如き金属酸化物や、ニッケル、銅、銀及びゲルマニウムの如き金属を用いることもできる。また、導電性弾性層には、無機又は有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。前記充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム及び硫酸アルミニウムが挙げられる。前記架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤が挙げられる。導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である感光ドラムとを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCで70度以上であることが好ましく、特には73度以上、92度以下であることがより好ましい。また、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
【0058】
(表面層)
本発明に係る帯電部材の表面層は、本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物の塗膜の光硬化膜を含む。また、感光ドラムとの当接ニップを十分に確保するために設けた導電性弾性層の機能を十分に発揮させる観点から、帯電部材の表面層の弾性率は2000MPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、表面層の弾性率を小さくするほど架橋密度が低下する傾向にある。このため、帯電部材の表面にブリードアウトした低分子量成分による感光ドラムの表面の汚染を抑制する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。また、表面層の層厚は、厚いほど上記の低分子量成分のブリードアウトの抑制及び帯電部材としての帯電性能に鑑みて、0.005μm以上、1.000μm以下、特には0.010μm以上、0.600μm以下とすることが好ましい。なお、表面層の層厚の確認には、帯電部材表面部位をカミソリで削ぎ、液体窒素につけ、破断させた後に、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製)で約20000倍の倍率で確認した。また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rz)はJIS94で10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、3μm以上、5μm以下がさらに好ましい。
【0059】
[帯電部材の製造方法]
(導電性弾性部材)
本発明に係る帯電部材の製造方法としては、まず、前記導電性弾性層材料を混練することにより、混練物を得る。次に、前記支持体に熱硬化性接着剤を塗布し、乾燥させる。
【0060】
クロスヘッド押出機を使用して、前記熱硬化性接着剤を塗布し乾燥させた支持体を押し出しながら、該支持体を覆うように前記混練物を円筒形に押し出す。支持体端部を受けながら引き取り、端部を切断する。次に、連続加熱炉により加硫を行う。連続加熱炉は異なる温度設定にしたゾーンを2つ設けたものを使用する。急速な加硫温度の立ち上げは、ボイドの要因となり易い。これは、加硫反応による加硫促進剤等の揮発性副生成物がガス化し、ゴムの加硫による硬化の際に、ガスが抜け難い状態で、閉じ込められるためと推測している。このため、支持体周辺あるいは押出表面付近まで気泡が発生し、これを研磨すると凹となり画像不良の要因となる。そこで、硬化ゾーンを2つ設け、第1ゾーンを加硫温度より低い状態に保持することで、ガス成分を十分抜いた後で、第2ゾーンで加硫を行うことが好ましい。第1ゾーン及び第2ゾーンの温度、時間の設定は適宜設定できる。加硫後の導電性弾性層の表面を研磨することにより、導電性弾性部材を得ることができる。
【0061】
(帯電部材)
次に、本発明に係るポリシロキサン含有膜形成用の組成物を前記導電性弾性部材上に塗布する。前記組成物の導電性弾性部材への塗布方法としては、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布等の方法が挙げられる。次に、導電性弾性部材上の組成物の層に活性化エネルギー線を照射する。すると、前記組成物に含まれる加水分解性シラン縮合物、及びエポキシ変性シリコーンオイル中のカチオン重合可能な基が開裂・重合する。これによって、前記加水分解性シラン縮合物同士、該加水分解性シラン縮合物と前記エポキシ変性シリコーンオイルが架橋し硬化する。つまり、前記組成物の層の硬化と同時に加水分解性シラン縮合物への固定化が起こる。前記活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、非常に均一な膜状態が得られる。このため、感光ドラムへの均一で安定した電位を与えられることができる。前記紫外線照射時に発生した熱により、導電性弾性部材の導電性弾性層が膨張し、その後冷却によって収縮した際、表面層がこの膨張・収縮に十分に追従しないと、シワやクラックが多い表面層となる場合がある。しかしながら、架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に前記加水分解性シラン縮合物同士、該加水分解性シラン縮合物と前記エポキシ変性シリコーンオイルを架橋することができる。また、熱の発生も少なく、導電性弾性層と表面層との密着性が高まるため、表面層のシワやクラックが発生しにくい。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプ等を用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上、480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いられる。紫外線の積算光量は、組成物の材料・組成や、塗布した量から、十分に硬化するように選択すればよい。なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
【0062】
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]。
【0063】
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0064】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」や「UVD−S254」(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」や「VUV−S172」(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0065】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
図2に、本発明の帯電部材を具備するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例の概略構成を示す。図2において、円筒状の感光ドラム1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される感光ドラム1の表面は、本発明に係る帯電部材3(図2においてはローラ形状の帯電部材)により、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、不図示の露光手段から出力される露光(画像露光)4を受けて感光ドラム1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。本発明に係る帯電部材3による感光ドラム1の表面の帯電の際、帯電部材3には、不図示の電圧印加手段から直流電圧のみの電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。感光ドラム1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像もしくは正規現像)されてトナー像となる。次いで、感光ドラム1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラ等)6からの転写バイアスによって、転写材(紙等)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から感光ドラム1と転写手段6との間(当接部)に感光ドラム1の回転と同期して取り出されて給送される。現像手段6としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段及び磁気ブラシ手段等が挙げられるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像手段が好ましい。トナー像の転写を受けた転写材Pは、感光ドラム1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。トナー像転写後の感光ドラム1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレード等)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。
【0066】
上述の感光ドラム1、帯電部材3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成することができる。このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターの如き電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図2では、感光ドラム1、帯電部材3、現像手段5及びクリーニング手段7を一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールの如き案内手段10を用いた電子写真装置本体に着脱可能に構成されてなるプロセスカートリッジ9としている。
【実施例】
【0067】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0068】
(実施例1)
[導電性弾性部材の作製]
・中高ニトリルNBR 100部
(商品名:「Nipol DN219」、結合アクリロニトリル量中心値33.5%、ムーニー粘度中心値27、日本ゼオン(株)製)
・カラー用カーボンブラック(充填剤) 48部
(商品名:「#7360SB」、粒子径28nm、窒素吸着比表面積77m2/g、DBP吸収量87cm3/100g、東海カーボン(株)製)
・炭酸カルシウム(充填剤) 20部
(商品名:「ナノックス#30」、丸尾カルシウム社製)
・酸化亜鉛 5部
・ステアリン酸 1部。
【0069】
以上の成分を、6L加圧ニーダー(商品名:「TD6−15MDX」、トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。該未加硫ゴム組成物174部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:「サンセラーTBZTD」、三新化学工業(株)製)4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、導電性弾性層用の混練物Iを得た。次に、表面をニッケルメッキ加工した、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体を準備した。そして、該支持体の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属及びゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:「メタロックU−20」、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを30分間、80℃で乾燥させた後、さらに1時間、120℃で乾燥させた。次に、クロスヘッド押出機を用いた押出成形によって、硬化性接着剤を塗布し乾燥させた支持体を押し出しながら、該支持体を覆うように前記混練物Iを外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出した。該支持体の端部を切断して、支持体の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性部材1を作製した。該クロスヘッド押出機は、シリンダー径70mm(Φ70)、L/D=20のクロスヘッド押出機であり、押出時の温調は、ヘッドの温度を90℃とし、シリンダーの温度を90℃とし、スクリューの温度を90℃とした。次に導電性弾性部材1を、異なる温度設定にした2つのゾーンを有する連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し、こちらも30分通過させ、加硫された導電性弾性部材2を得た。次に、導電性弾性部材2の導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さ(Rz)が5.5μmで、振れが18μm、硬度が73度(アスカーC)の導電性弾性部材3(表面研磨後の導電性弾性部材)を得た。
【0070】
なお、十点平均粗さ(Rz)はJISB6101に準拠して測定した。また、振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機「LSM−430v」(商品名)を用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0071】
また、アスカーC硬度の測定は、測定環境25℃×55%RHで、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0072】
[ポリシロキサン含有膜形成用の組成物の調製]
次に、ポリシロキサン含有膜形成用の組成物の調製方法について述べる。まず、工程(i)として、以下の成分を300mlのナスフラスコ中で混合した後、室温で30分撹拌した。なお、イオン交換水はその他の材料を全て混合し撹拌している中に滴下して加えた。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)(加水分解性シラン化合物(A))
(商品名:「KBE−403」、信越化学工業(株)製)
27.11g(0.097mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)(加水分解性シラン化合物(B))
(商品名:「KBM−3063」、信越化学工業(株)製)
28.66g(0.139mol)
・チタニウム(IV)プロポキシド(Ti(OnPr)4)(加水分解性チタン化合物(C))
(ALDRICH社製 純度98%)
6.86g(0.024mol)
・エタノール(E)(キシダ化学(株)製 特級) 117.64g
・イオン交換水(D) 5.79g。
【0073】
続いてオイルバスを用い、120℃で3時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物と加水分解性チタン化合物の縮合物Aを得た。一連の撹拌は750rpmで行った。なお、Ti/Siは0.1である。
【0074】
この縮合物Aの理論固形分(加水分解性シラン化合物(A)及び(B)が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン縮合物質量の、溶液全質量に対する質量比率)は20.0質量%であった。また、縮合物Aの実質固形分は21.4質量%であった。実質固形分は、縮合物A 数(g)を200℃のオーブンで30分加熱することにより測定した。この加熱により得られる実質固形分と理論固形分の差より、縮合物Aに残存している未反応のモノマー(残モノマー)量を算出することができる。次に工程(ii)として、まず、エポキシ変性シリコーンオイル(F)として、片末端エポキシ変性シリコーンオイル1を合成した。1Lの反応器に、メチレンオキシラン70g、トルエン84g、イソプロピルアルコール6g、及び、塩化白金酸のブタノール錯体を白金純分で0.01g投入し、80℃で撹拌しながら加熱した。その後、下記式(7)で示されるメチル水素ポリシロキサン225gを滴下して付加反応を行った。
【0075】
【化13】

【0076】
(nは2〜300である)。
【0077】
反応後溶媒を除去するために、加温減圧ストリッピングを行った。得られた生成物をGPC測定した結果、エポキシ変性シロキサンであることが確認でき、またエポキシ開環による高分子量物の副生は全く見られなかった。
【0078】
このように得られた片末端エポキシ変性シリコーンオイル1(下記式(8))2.5gを、MEK(メチルエチルケトン)47.5gに添加した5.0質量%希釈品1を調製した。
【0079】
【化14】

【0080】
(nは2〜300である)。
【0081】
前記縮合物A 100gに前記希釈品1を20g加えた。さらに光カチオン重合開始剤(G)としての芳香族スルホニウム塩(商品名:「アデカオプトマー SP−150」、(株)ADEKA製)をMIBK(メチルイソブチルケトン)で10質量%に希釈したものを3.00g添加し、希釈前の組成物1を得た。配合比は、ポリシロキサン縮合物:片末端エポキシ変性シリコーンオイル:芳香族スルホニウム塩=100.0:5.0:1.5(質量部)である。前記希釈前の組成物1を固形分が1.0質量%になるようにエタノールで希釈し、組成物1を調製した。前記希釈前の組成物1から以下の手順で分析用サンプルを作製し、光重合後のエポキシ基の開環の確認と誘電率の測定を行った。
【0082】
(分析用サンプルの作製)
ケトンやアルコール等で脱脂したアルミシート(厚み100μm)上にスピンコート装置(商品名:「1H−D7」、ミカサ(株)製)を用いて、前記希釈前の組成物1をスピンコートにより塗布した。塗布条件は回転300rpm、2秒間とした。乾燥後、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、希釈前の組成物1を硬化(架橋反応による硬化)させて成膜した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0083】
(エポキシ基開環確認)
前記アルミシート上の膜をガラス板等で削り取り、回収した固形物よりエポキシ基の開環を、13C−NMR固体測定(商品名:「JMN−EX400」、JEOL社製を使用)により確認した。測定条件を以下の表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
測定結果よりエポキシ基の開環を確認した。評価基準は以下の通りである。
○:エポキシ基開環
×:エポキシ基残存。
【0086】
(誘電率測定)
前記アルミシート上の膜に金蒸着を施したサンプルを用い、誘電率を測定した。誘電率の測定には、誘電率測定装置(1296型誘電率測定インターフェース、1260型インピーダンスアナライザーを併用、英国ソーラトロン社製)を用い、印加電圧3V、測定周波数0.1Hz〜1MHzで測定した。ここで10Hz時の静電容量を用い、製膜時の膜厚を用いて誘電率を算出した。
【0087】
[帯電部材の作製]
次に、前記組成物1を用いた帯電部材の作製について示す。前記導電性弾性部材3の導電性弾性層上に前記組成物1を、リング塗布(吐出量:0.020ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.065ml)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、組成物1を硬化(架橋反応による硬化)させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。以上のようにして作製した帯電部材を、帯電部材1とする。帯電部材の評価方法を以下に示す。
【0088】
(評価1 外観)
帯電部材表面の外観状態を目視にて以下のように判断した。
○:帯電部材の表面に全くムラがない場合。
△:帯電部材の端部表面に一部ムラやスジが生じた場合。
×:帯電部材の表面の全領域にムラやスジが生じた場合。
【0089】
(評価2 表面自由エネルギー)
帯電部材の表面自由エネルギーを測定した。測定には接触角測定装置(商品名:「接触角計CA−X ROLL型」、協和界面(株)製)を用いた。
【0090】
(評価3 動摩擦係数)
帯電部材の動摩擦係数を測定した。本発明において動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図を図3に示す。図3に示す測定機は、測定対象である帯電部材201に所定の角度θで接触させたベルト202と、ベルト202の一端に繋がれた重り203と、ベルト202の他端に繋がれた荷重計204と、荷重計204に接続された記録計205と、から構成されている。なお、ベルト202には、ポリエチレンテレフタレート(「ルミラーS10 #100」(商品名)、東レ(株)製)の、厚さ100μm、幅30mm、長さ180mmのものを用いた。
【0091】
図3に示す状態で、帯電部材201を所定の方向及び所定の速度で回転させたとき、荷重計204で測定された力をF(g重)(0.0098F(N))、重りの重さとベルトの重さとの和をW(g重)(0.0098W(N))とする。摩擦係数は以下の式で求められる。なお、この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
【0092】
摩擦係数=(1/θ)ln(F/W)
本発明においては、W=100(g重)(0.98(N))とし、帯電部材201の回転速度を115rpmとし、測定環境を23℃/50%RHとした。
【0093】
(評価4 耐久性)
帯電部材を用いて、以下に示す出力画像評価を行った。作製した帯電部材と、感光ドラムとを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジに組み込んだ。このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用のレーザービームプリンター(商品名:「HP Color LaserJet 4700 Printer」、HP社製)に装着した。このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは164mm/sであり、画像解像度は600dpiである。帯電部材には直流電圧のみの電圧(−1000V)を印加し、暗部電位は−500V、明部電位は−150Vとした。また、現像手段としては、接触現像手段を採用した。なお、帯電部材とともにプロセスカートリッジに組み込んだ感光ドラムは、支持体上に層厚19.0μmの有機感光層を形成してなる有機感光ドラムである。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は感光ドラムの表面層となっている。また、前記レーザービームプリンターに使用したトナーは、いわゆる重合トナーであり、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。この重合トナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレート及びエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子に、シリカ微粒子及び酸化チタン微粒子を外添したトナー粒子を含んでいる。
【0094】
画像出力は、定温定湿下(温度25℃/湿度50%RH)及び高温高湿環境下(温度30℃/湿度80%RH)で行い、A4紙に印字率1%のE文字パターンを形成し、2枚毎に4秒間の空回転を入れる間欠出力モードで出力した。間欠出力モードでの画像出力は、連続通紙に比べて、同じ通紙枚数でも帯電部材と感光ドラムとの摺擦回数が多くなるため、帯電部材表面の汚れの評価に対しては、より厳しい評価である。各条件下にてこれを164mm/sのプロセススピードで8000枚出力した。出力画像の評価は、2000枚ごとに出力画像を目視することによって行った。評価基準は以下のとおりである。
AA:帯電部材の表面へのトナー等の固着による帯電ムラが出力画像上確認できない。
A :帯電部材の表面に、塗工時のムラやスジ部分へのトナー等の固着による帯電ムラが出力画像上ほとんど確認できない。
B :帯電部材の表面に、塗工時のムラやスジ部分へのトナー等の固着による帯電ムラが出力画像上確認できる。
C :帯電部材の表面に、塗工時のムラやスジ部分へのトナー等の固着による帯電ムラが出力画像上確認でき、その帯電ムラの程度が大きい。具体的には、白い縦スジ状の帯電ムラが確認できる。
【0095】
(評価5 耐久性評価後の外観)
8000枚画像出力した後の帯電部材を、目視によりトナーや外添剤の付着を調べた。評価基準は以下のとおりである。
○:付着なし
△:僅かに付着あり
×:付着あり。
【0096】
以上、実施例1の原料の配合量、膜物性、帯電部材評価の結果を表2に示す。
【0097】
(実施例2)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(9)で示した側鎖エポキシ変性シリコーンオイル2で調製した希釈品2を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0098】
【化15】

【0099】
((m+n)=2〜300を示す)。
【0100】
前記側鎖エポキシ変性シリコーンオイル2の合成方法を以下に示す。実施例1で用いた出発原料のうち、前記式(7)で示したメチル水素ポリシロキサンを下記式(10)で示した形態のものに代えた以外は、実施例1と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0101】
【化16】

【0102】
((m+n)=2〜300を示す)。
【0103】
(実施例3)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(11)で示した両末端エポキシ変性シリコーンオイル3で調製した希釈品3を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0104】
【化17】

【0105】
(nは2〜300を示す)。
【0106】
前記両末端エポキシ変性シリコーンオイル3の合成方法を以下に示す。実施例1で用いた出発原料のうち前記式(7)で示したメチル水素ポリシロキサンを、下記式(12)で示した形態のものに代え、メチレンオキシランの添加量を140gに増やした以外は実施例1と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0107】
【化18】

【0108】
(nは2〜300を示す)。
【0109】
(実施例4)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(13)で示した側鎖両末端エポキシ変性シリコーンオイル4で調製した希釈品4を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0110】
【化19】

【0111】
((m+n)=2〜300を示す)。
【0112】
側鎖両末端エポキシ変性シリコーンオイル4の合成方法を以下に示す。実施例1で用いた出発原料のうち前記式(7)で示したメチル水素ポリシロキサンを、下記式(14)で示した形態のものに代え、メチレンオキシランの添加量を210gに増やした以外は実施例1と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0113】
【化20】

【0114】
((m+n)=2〜300を示す)。
【0115】
(実施例5)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(15)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル5で調製した希釈品5を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0116】
【化21】

【0117】
(nは2〜300を示す)。
【0118】
片末端エポキシ変性シリコーンオイル5の合成方法を以下に示す。実施例1で用いた出発原料のうちメチレンオキシランを11−ドデシルオキシラン 245gに代えた以外は、実施例1と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0119】
(実施例6)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(16)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル6(商品名:「X22−173DX」、信越化学工業(株)製)で調製した希釈品6を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0120】
【化22】

【0121】
(nは2〜300を示す)。
【0122】
(実施例7)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(17)で示した片末端脂環式エポキシ変性シリコーンオイル7で調製した希釈品7を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0123】
【化23】

【0124】
(nは2〜300を示す)。
【0125】
片末端エポキシ変性シリコーンオイル7の合成方法を以下に示す。実施例1で用いた出発原料のうちメチレンオキシランを4−ビニルシクロヘキセンオキシド 152gに代えた以外は実施例1と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0126】
(実施例8)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(18)で示した側鎖脂環式エポキシ変性シリコーンオイル8で調製した希釈品8を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0127】
【化24】

【0128】
((m+n)=2〜300を示す)。
【0129】
側鎖エポキシ変性シリコーンオイル8の合成方法を以下に示す。実施例2で用いた出発原料のうちメチレンオキシランを4−ビニルシクロヘキセンオキシド 152gに代えた以外は実施例2と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0130】
(実施例9)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(19)で示した両末端脂環式エポキシ変性シリコーンオイル9で調製した希釈品9を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0131】
【化25】

【0132】
(nは2〜300を示す)。
【0133】
両末端エポキシ変性シリコーンオイル9の合成方法を以下に示す。実施例3で用いた出発原料のうちメチレンオキシランを4−ビニルシクロヘキセンオキシド 304gに代えた以外は実施例3と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0134】
(実施例10)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(20)で示した側鎖両末端脂環式エポキシ変性シリコーンオイル10で調製した希釈品10を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表2に示す。
【0135】
【化26】

【0136】
((m+n)=2〜300を示す)。
【0137】
側鎖両末端エポキシ変性シリコーンオイル10の合成方法を以下に示す。実施例4で用いた出発原料のうちメチレンオキシランを4−ビニルシクロヘキセンオキシド 456gに代えた以外は実施例4と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0138】
(実施例11)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(21)で示した片末端脂環式エポキシ変性シリコーンオイル11で調製した希釈品11を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表3に示す。
【0139】
【化27】

【0140】
(nは2〜300を示す)。
【0141】
片末端エポキシ変性シリコーンオイル11の合成方法を以下に示す。実施例1で用いた出発原料のうちメチレンオキシランを4−(4−ペンテニル)シクロヘキセンオキシド 203gに代えた以外は実施例1と同様にエポキシ変性シロキサンを合成した。
【0142】
(実施例12)
実施例1で示した縮合物Aに対する希釈品1の添加量を4.0gとし、その他組成物の調製方法、帯電部材の作製手順、評価方法は同一とした。組成物の配合比は、ポリシロキサン縮合物:片末端エポキシ変性シリコーンオイル:芳香族スルホニウム塩=100.0:1.0:1.5(質量部)である。結果を表3に示す。
【0143】
(実施例13)
実施例1で示した縮合物Aに対する希釈品1の添加量を60.0gとし、その他組成物の調製方法、帯電部材の作製手順、評価方法は同一とした。組成物の配合比は、ポリシロキサン縮合物:片末端エポキシ変性シリコーンオイル:芳香族スルホニウム塩=100.0:15.0:1.5(質量部)である。結果を表3に示す。
【0144】
(実施例14)
次に以下のようにして縮合物Bを合成した。合成方法は縮合物Aと同様であり、原料は以下に示す。Ti/Si=0.1であり、この縮合物Bの理論固形分は20.0質量%である。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)(加水分解性シラン化合物(A))
(商品名:「KBE−403」、信越化学工業(株)製)
26.68g(0.096mol)
・フェニルトリエトキシシラン(PhTMS)(加水分解性シラン化合物(B))
(商品名:「KBE−103」、信越化学工業(株)製)
32.91g(0.137mol)
・チタニウム(IV)プロポキシド(Ti(OnPr)4)(加水分解性チタン化合物(C))
(ALDRICH社製 純度98%)
6.86g(0.023mol)
・エタノール(E)(キシダ化学(株) 特級) 105.85g
・イオン交換水(D) 5.70g。
【0145】
縮合物Bの実質固形分は21.9質量%であった。縮合物Aを縮合物Bに変更した以外は、実施例1と同様に希釈品1を加え、それ以降の帯電部材作製手順、評価方法は同一とした。結果を表3に示す。
【0146】
(実施例15)
次に以下のようにして縮合物Cを合成した。合成方法は縮合物Aと同様であり、原料は以下に示す。Ti/Si=0.2であり、この縮合物Cの理論固形分は20.0質量%である。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)(加水分解性シラン化合物(A))
(商品名:「KBE−403」、信越化学工業(株)製)
25.68g(0.092mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)(加水分解性シラン化合物(B))
(商品名:「KBM−3063」、信越化学工業(株)製)
27.14g(0.132mol)
・チタニウム(IV)プロポキシド(Ti(OnPr)4)(加水分解性チタン化合物(C))
(ALDRICH社製 純度98%)
12.99g(0.045mol)
・エタノール(E)(キシダ化学(株) 特級) 113.74g
・イオン交換水(D) 6.13g。
【0147】
縮合物Cの実質固形分は21.1質量%であった。縮合物Aを縮合物Cに変更した以外は、実施例1と同様に希釈品1を加え、それ以降の帯電部材作製手順、評価方法は同一とした。結果を表3に示す。
【0148】
(実施例16)
次に以下のようにして縮合物Dを合成した。合成方法は縮合物Aと同様であり、原料は以下に示す。Ti/Si=0.1であり、この縮合物Dの理論固形分は20.0質量%である。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)(加水分解性シラン化合物(A))
(商品名:「KBE−403」、信越化学工業(株)製)
27.01g(0.097mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)(加水分解性シラン化合物(B))
(商品名:「KBM−3063」、信越化学工業(株)製)
28.55g(0.139mol)
・Ti−Methyl(isopropoxide)3(Me−Ti(OiPr)3
(加水分解性チタン化合物(C))
(Gelest社製、1mol/l、THF液(<25%))
22.73g(0.024mol)
・エタノール(E)(キシダ化学(株) 特級) 101.31g
・イオン交換水(D) 5.77g。
【0149】
縮合物Dの実質固形分は22.1質量%であった。縮合物Aを縮合物Dに変更した以外は、実施例1と同様に希釈品1を加え、それ以降の帯電部材作製手順、評価方法は同一とした。結果を表3に示す。
【0150】
(比較例1)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(22)で示した側鎖アミノ変性シリコーンオイル15(商品名:「FZ−3705」、東レ・ダウコーニング(株)製)で調製した希釈品15を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表4に示す。
【0151】
【化28】

【0152】
((m+n)=2〜300、Rはアルキル基を示す)。
【0153】
(比較例2)
実施例1の前記式(8)で示した片末端エポキシ変性シリコーンオイル1の代わりに、下記式(23)で示した側鎖ポリエーテル変性シリコーンオイル16(非反応性)(商品名:「KF−351A」、信越化学工業(株)製)で調製した希釈品16を用いた。それ以外の帯電部材作製手順、評価方法は同一である。結果を表4に示す。
【0154】
【化29】

【0155】
((m+n)=2〜300、Rはアルキル基、a、bは任意の整数を示す)。
【0156】
(比較例3)
縮合物A100gにシリコーンオイル希釈品を添加せず、芳香族スルホニウム塩(商品名:「アデカオプトマー SP−150」、(株)ADEKA製)をメチルイソブチルケトン(MIBK)で10質量%に希釈したものを3.00g添加した。その後固形分が1.0質量%になるようにエタノールで希釈した。配合比は、ポリシロキサン縮合物:芳香族スルホニウム塩=100.0:1.5(質量部)である。このように調製した組成物を用いた以外は、その後の帯電部材作製手順、評価方法は実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
【表4】

【符号の説明】
【0160】
101 支持体
102 導電性弾性層
103 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)及び下記式(2)で表される加水分解性シラン化合物に対して、下記式(3)で示される加水分解性チタン化合物を0.01〜0.3モル%の割合で含む加水分解性化合物の混合物を、水及びアルコールの存在下で加水分解させて得た、該加水分解性シラン化合物と該加水分解性チタン化合物との縮合物と、エポキシ変性シリコーンオイルと、光重合開始剤とを含むことを特徴とするポリシロキサン含有膜形成用の組成物:
式(1)
1−Z−Si−(OR23
(上記一般式(1)中、R1はカチオン重合可能な有機基、Zは二価の有機基、R2は飽和又は不飽和の炭化水素基を示す)
式(2)
(R3)−Si−(OR23
(上記一般式(2)中、R2は飽和又は不飽和の炭化水素、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基を示す)
式(3)
(R3x−Ti−(OR24-x
(上記一般式(3)中、xは0〜3の整数、R2は飽和又は不飽和の炭化水素基、R3は置換又は未置換のアルキル基、或いは、置換又は未置換のアリール基を示す)。
【請求項2】
前記エポキシ変性シリコーンオイルの含有量が、前記縮合物100質量部に対して、1.0質量部以上、20質量部以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
支持体と、該支持体の外周に、導電性弾性層と、表面層とを少なくとも有する帯電部材において、該表面層が、請求項1又は2に記載の組成物の塗膜の光硬化膜を含むことを特徴とする帯電部材。
【請求項4】
請求項3に記載の帯電部材を具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項3に記載の帯電部材を具備していることを特徴とする電子写真装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の組成物の製造方法であって、
(i)前記式(1)及び前記式(2)で表される加水分解性シラン化合物に対して、前記式(3)で示される加水分解性チタン化合物を0.01〜0.3モル%の割合で含む加水分解性化合物の混合物を、水及びアルコールの存在下で加水分解させて、加水分解性シラン化合物と、該加水分解性チタン化合物との縮合物を調製する工程と、
(ii)該縮合物と、エポキシ変性シリコーンオイルと、光重合開始剤とを混合する工程と、を有することを特徴とするポリシロキサン含有膜形成用の組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−137109(P2011−137109A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298921(P2009−298921)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】