説明

ポリシロキサン微粒子及びその製造方法

【課題】揮発性有機溶媒を使用することなく、非直鎖状ポリシロキサン、特にシリコーンレジンを使用して、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子を得ること
【解決手段】ガラス転移温度が30℃以上の非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解した後、減圧膨張して得られた、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサンからなる微粒子は、その撥水性、耐熱性等の特性を利用して、塗料、化粧品等の添加剤として利用されている。
【0003】
また、ポリシロキサン微粒子は、特開平4−29748号公報に記載されるように、揮発性有機溶媒にポリシロキサンを溶解させて得られた溶液を熱気流中に噴霧し、当該溶媒を揮発させて製造することが可能であるが、この場合は、溶媒の完全な乾燥が困難であるために、製造された微粒子中に残存する微量の揮発性有機溶媒によって当該微粒子を配合した組成物が可燃性となり、また、微粒子のガラス転移温度が低下して、その結果、当該組成物の十分な貯蔵安定性が得られない等の問題が生じる恐れがある。
【0004】
一方、特開2002−206028号公報及び特開平2002−210356号公報では、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に、微粉末とポリシロキサンを加えた後、容器内を減圧することにより二酸化炭素を除去してポリシロキサンで被覆した複合微粒子を得る方法が提案されている。この方法では、揮発性有機溶媒を使用する必要がないので、複合微粒子中に当該有機溶媒が残存する恐れがない。
【0005】
しかし、特開2002−206028号公報及び特開平2002−210356号公報記載の方法では、直鎖状のポリシロキサンを使用しており、非直鎖状のポリシロキサン、特にシリコーンレジンの超臨界二酸化炭素への溶解並びに微粒子化については何ら検討されていない。
【特許文献1】特開平4−29748号公報
【特許文献2】特開2002−206028号公報
【特許文献3】特開2002−210356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、揮発性有機溶媒を使用することなく、非直鎖状ポリシロキサン、特にシリコーンレジンを使用して、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子を得ること、並びに、そのための方法を確立することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、ガラス転移温度が30℃以上の非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解した後、減圧膨張して得られた、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子によって達成される。
【0008】
また、前記非直鎖状ポリシロキサンは、平均組成式:
SiO(4−a)/2
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、aは0.7〜1.8の数を表す)
で表されるものが好ましい。
【0009】
更に、前記平均組成式において、一分子中、Rの少なくとも1個はフェニル基であることが好ましい。
【0010】
更に、前記平均組成式において、一分子中、Rの少なくとも1個はフッ素原子置換の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0011】
また、前記非直鎖ポリシロキサンは、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、b、c、d、およびeはそれぞれ、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦1.0、0≦e≦0.8、d+e≧0.3、b+c+d+e=1である)
で表されるものが好ましい。
【0012】
更に、前記平均単位式において、一分子中、Rの少なくとも1個はフェニル基であることが好ましい。
【0013】
更に、前記平均単位式において、一分子中、Rの少なくとも1個はフッ素原子置換の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0014】
前記ポリシロキサン微粒子は、ガラス転移温度が30℃以上の非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解させ、次いで、得られた溶解物を減圧膨張させる方法によって製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリシロキサン微粒子は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解後、減圧膨張して得られるので、揮発性有機溶媒等を含まず、有機溶媒に対する可溶解性を保持することを特徴とする。また、本発明の製造方法は、揮発性有機溶媒等を含まず、有機溶媒に可溶解性を保持し、粒径の揃ったポリシロキサン微粒子を効率よく製造することができるという特徴がある。
【0016】
また、本発明のポリシロキサン微粒子の製造方法は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を使用するので、人体に無害であり、且つ、簡易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用される非直鎖状ポリシロキサンは、直鎖状の主鎖のみを有するポリシロキサン以外の、分岐又は架橋構造を有するものである。したがって、非直鎖状ポリシロキサンは、一官能性シロキサン単位(M単位)及び/又は二官能性シロキサン単位(D単位)のみからなる直鎖状ポリシロキサンとは異なり、これらに加えて、或いは、これらを含まずに、三官能性シロキサン単位(T単位)及び/又は四官能性シロキサン単位(Q単位)を含むものである。非直鎖状ポリシロキサンとしては、特に、分岐又は架橋の程度の高いシリコーンレジンが好ましい。
【0018】
前記非直鎖状ポリシロキサンとしては、平均組成式:
SiO(4−a)/2
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、aは0.7〜1.8の数を表す)
で表されるものを好適に使用することができる。
【0019】
前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、及び、アリール基からなる群から選択される一価炭化水素基が好ましい。アルキル基としては、C−C12アルキル基が好ましく、C−Cアルキル基がより好ましい。C−Cアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられるが特にメチル基が好ましい。アルケニル基としては、C−C12アルケニル基が好ましく、C−Cアルケニル基がより好ましい。C−Cアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられるが特にビニル基が好ましい。アラルキル基としては、C−C12アラルキル基が好ましく、C−C12アラルキル基がより好ましい。C−C12アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられるが特にベンジル基が好ましい。アリール基としては、C−C12アリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、トリル基が挙げられるが、特にフェニル基が好ましい。
【0020】
前記炭化水素基は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のC−Cアルコキシ基;アミノ基;アミド基;ニトロ基;エポキシ基等が挙げられるが、ハロゲンが好ましく、特にフッ素原子が好ましい。したがって、前記非直鎖状ポリシロキサンはフッ素原子を含むことが特に好ましく、その場合は、非直鎖状ポリシロキサンの全重量に対するフッ素原子の重量分率は1〜40重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、3〜20重量%がより好ましい。なお、フッ素原子は、例えば、3,3,3−トリフロロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基等のフルオロアルキル基、又は、4−トリフルオロメチルフェニル基等のフルオロアリール基として非直鎖状ポリシロキサン中のケイ素原子に結合することができる。
【0021】
前記aは0.7〜1.8の数を表す。
【0022】
また、前記非直鎖状ポリシロキサンは、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、b、c、d、およびeはそれぞれ、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦1.0、0≦e≦0.8、d+e≧0.3、b+c+d+e=1である)
で表されるものを好適に使用することができる。
【0023】
前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、及び、アリール基からなる群から選択される一価炭化水素基が好ましく、前記と同様の基が例示される。前記炭化水素基は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のC−Cアルコキシ基;アミノ基;アミド基;ニトロ基;エポキシ基等が挙げられるが、ハロゲンが好ましく、特にフッ素原子が好ましい。したがって、前記非直鎖状ポリシロキサンはフッ素原子を含むことが特に好ましく、その場合は、非直鎖状ポリシロキサンの全重量に対するフッ素原子の重量分率は1〜40重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、3〜20重量%がより好ましい。なお、フッ素原子は、例えば、3,3,3−トリフロロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基等のフルオロアルキル基、又は、4−トリフルオロメチルフェニル基等のフルオロアリール基として非直鎖状ポリシロキサン中のケイ素原子に結合することができる。
【0024】
前記非直鎖状ポリシロキサンの分子量は特に限定されるものではないが、分子量は比較的小さい方が好ましい。具体的には、重量平均分子量で、500〜100,000が好ましく、500〜50,000がより好ましく、1,000〜20,000が更により好ましい。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにて標準ポリスチレンに対する相対値として決定することができる。
【0025】
本発明のポリシロキサン微粒子は、上記の非直鎖状ポリシロキサンからなり、ガラス転移温度が30℃以上である。
【0026】
ガラス転移温度は、DSC(デファレンシャル・スキャニング・カロリメーター)を使用することにより測定することができる。本発明のポリシロキサン微粒子のガラス転移温度は30℃〜200℃が好ましく、40℃〜150℃がより好ましく、50℃〜120℃が更により好ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、使用時に粒子が凝集して取り扱いが困難となる恐れがある。
【0027】
本発明のポリシロキサン微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは20μm以下である。ここでの平均粒子径は、微粒子の粒度分布のメジアン径(累積分布の50%に相当する粒径)を意味する。本発明のポリシロキサン微粒子の平均粒子径は0.01〜20μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01〜1μmが更により好ましい。平均粒子径が20μmを越えると、粒子が凝集して取り扱いが困難となり、また、組成物中の基剤への分散も困難となる恐れがある。
【0028】
本発明のポリシロキサン微粒子は有機溶媒可溶性である。この有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、酢酸エチル等の極性有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の非極性有機溶媒が挙げられる。
【0029】
本発明のポリシロキサン微粒子は、上記の非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解させ、得られた溶解物を減圧膨張させる方法により得ることができる。ここでの減圧とは、二酸化炭素が超臨界状態又は液化状態となる圧力値未満に圧力を低下させることをいう。
【0030】
超臨界二酸化炭素とは、臨界温度以上で且つ臨界圧力以上の圧力の条件下の二酸化炭素をいい、僅かな圧力変化によって密度が急変するという性質を有する。そして、臨界温度を僅かに超えた超臨界二酸化炭素の圧力を増加させると、密度が急増するため、臨界圧力を超えた領域で溶質の溶解度が急激に増加する。逆に、超臨界二酸化炭素の減圧を行うと、二酸化炭素の膨張により溶質の溶解度を急激に低下させることができるので、減圧操作のみで溶質と超臨界二酸化炭素との分離が可能となる。
【0031】
超臨界二酸化炭素の減圧開始時の温度は、超臨界二酸化炭素の減圧膨張を効率的に行う観点から、好ましくは31〜250℃、より好ましくは35〜200℃、更に好ましくは35〜150℃である。また、減圧開始時の超臨界二酸化炭素の圧力は、超臨界二酸化炭素の減圧膨張を効率的に行うために、7.4〜40MPaであることが好ましく、より好ましくは10〜30MPaである。
【0032】
本発明においては、液化二酸化炭素を使用することもできる。この場合も、液化二酸化炭素を減圧すると、溶質の二酸化炭素に対する溶解度を急激に低下させることができるので、減圧操作のみで溶質と二酸化炭素との分離が可能となる。液化二酸化炭素の減圧開始時の温度は、液化二酸化炭素の減圧膨張を効率的に行う観点から、好ましくは−40〜30℃であり、より好ましくは0〜30℃である。また、減圧開始時の液化二酸化炭素の圧力は、液化二酸化炭素の減圧を効率的に行うために、1〜40MPaであることが好ましく、より好ましくは3.5〜40MPaである。
【0033】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素の減圧膨張は、これに限定されるものではないが、例えば、上記の非直鎖状ポリシロキサンを溶解させる媒体である超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を連続的に供給することにより、容器内の圧力を一定に保ちながら所定の口径を有するノズルから常温常圧下に噴出させる方法によって実施することができる。この際のノズルの直径は0.01〜0.5mmが好ましくは、特に、0.03〜0.3mmが好ましい。また、ノズルは60℃以上に保温することがドライアイスの生成を防止する点で好ましい。容器としては、オートクレーブ、耐圧セル等を使用することができる。
【0034】
より大量の溶質を溶解できるという点では、液化二酸化炭素よりも超臨界二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0035】
超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解させる非直鎖状ポリシロキサンの濃度は、特に限定されるものではないが、例えば0.01〜50重量%の範囲とすることができ、好ましくは0.02〜40重量%であり、より好ましくは0.03〜30重量%である。
【0036】
本発明のポリシロキサン微粒子の製造方法においては、二酸化炭素は無害であり、且つ、揮発性有機溶媒は全く使用されないので、人体への悪影響を排除することができる。また、二酸化炭素の圧力及び温度の調整装置以外は特別な装置を使用しないので、簡易なシステムによりポリシロキサン微粒子を得ることができる。
【0037】
また、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を用いるので、低温で操作を行なうことができるため、操作が容易であり、しかも、二酸化炭素は安価であるので、製造コストを削減することができるという利点もある。
【0038】
本発明のポリシロキサン微粒子の製造装置の一例を図1に示す。
【0039】
図1は、溶質を超臨界二酸化炭素に溶解させてノズルから噴射することによって急激に減圧させて当該溶質を粒子化するRESS法に基づく製造装置の概略図であり、二酸化炭素は、タンク1から液化器2を通過して配管5を介して容器6内へ供給される。容器6内に供給される二酸化炭素は、ヒーター4a及び高圧ポンプ3により、所定温度及び圧力の状態に維持される。なお、図1中、P1は二酸化炭素の圧力を検知するための圧力計であり、V1はタンク1のバルブであり、V2は配管5内の逆流を回避するためのストップバルブである。
【0040】
容器6は非直鎖状ポリシロキサン供給用の配管7を備えており、図示を省略する供給源から、非直鎖状ポリシロキサンが配管7を介して容器6内に供給される。なお、図1中、V4は配管7内の逆流を回避するためのストップバルブである。
【0041】
容器6内において、配管5及び配管7から供給された二酸化炭素と非直鎖状ポリシロキサンとが混合される。容器6内には攪拌機8が備え付けられており、容器6内の二酸化炭素及び非直鎖状ポリシロキサンを攪拌して、均一な混合物を得ることが可能である。また、容器6内には温度計Tが設置されると共に、容器6の周囲には温度調節用のジャケット9が配設されており、ジャケット9内に図示しない供給源より所定温度の熱冷媒を導入することによって容器6内の温度の調節が可能とされている。なお、図1中、P2は容器6内の圧力を検知するための圧力計である。
【0042】
容器6からはヒーター4bを備えた配管10が噴霧室11に接続されており、容器6内の混合物を所定の温度で噴霧室11に供給可能とされている。図1中、V3は配管10内の逆流を回避するためのストップバルブである。
【0043】
噴霧室11内には所定の口径を有するノズル12及びスライドガラスからなるターゲット13が設置されており、容器6から供給された混合物はノズル12からターゲット13に向けて噴射される。ノズル12は図示を省略する温度調節装置を備えており、ノズル12の温度は所定の範囲内に維持される。噴霧室11内は室温及び大気圧下の状態に維持されている。
【0044】
図1に示す装置を使用してポリシロキサン微粒子を製造する場合は、タンク1から超臨界状態とされた二酸化炭素を配管5を介して容器6内に供給する一方、図示しない供給源から非直鎖状ポリシロキサンを配管7を介して容器6内に供給する。容器6内では、攪拌機8及びジャケット9により所定温度で混合操作を行い、非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素に溶解させる。非直鎖状ポリシロキサンを完全に超臨界二酸化炭素に溶解させた後に、溶解混合物を配管10を介して噴霧室11に供給し、ノズル12から噴霧室11内に噴射させる。
【0045】
ノズル12から噴霧された溶解混合物中の二酸化炭素は噴霧室11内で揮散し、ターゲット13上には非直鎖状ポリシロキサンからなる微粒子が付着する。したがって、所定時間後に、ターゲット13上の微粒子を収集することによって、本発明のポリシロキサン微粒子を得ることができる。
【0046】
ヒーター4a、4b、ジャケット9、及び、ノズル12の温度は二酸化炭素の超臨界状態を維持できる範囲であれば特に制限されるものではないが、40〜150℃の範囲が好ましく、40〜100℃の範囲がより好ましい。また、配管5、配管7、配管10、容器6、及び、ノズル12の内圧についても、二酸化炭素の超臨界状態を維持できる範囲であれば特に制限されるものではないが、10〜40MPaが好ましく、15〜30MPaがより好ましい。なお、噴霧室11内でのターゲット13への噴射時間は特に限定されるものではないが、例えば、5〜30分間の範囲とすることができる。
【0047】
なお、本発明のポリシロキサン微粒子は、非直鎖状ポリシロキサン以外の任意成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等が挙げられる。これらの任意成分は単独で使用されてもよく、或いは、2種類以上を混合して使用してもよい。任意成分は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解させることにより、微粒子に含有させることができる。任意成分を適宜選択することにより、目的とする用途に応じて、撥水性、撥油性、光学特性、紫外線防御性、感触、安全性、色調、耐候性等の所望の性質を本発明のポリシロキサン微粒子に付与することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。生成物であるポリシロキサン微粒子のガラス転移温度は、エスアイアイナノテクノロジー(株)製DSC6200により昇温速度20℃/minで測定した。また、ポリシロキサン微粒子の重量平均分子量(以下、単に「分子量」)は、東ソー(株)製HLC−8020により、クロロホルムを溶出液とし、標準ポリスチレンに対する相対値として算出した。
【0049】
[実施例1]
図1に示す装置を使用して、非直鎖状ポリシロキサンであるフッ素変性シリコーンレジンの微粒子を調製した。容器6としては容量330mlの高圧溶解槽を使用し、ヒーター4a、ジャケット9の温度は40℃、ヒーター4b及びノズル12の温度は100℃、内圧は15.0MPaとした。ノズル12の内径は0.1mmとし、ノズル12とターゲット13との間の距離は13cmとした。
【0050】
具体的には、図1に示す装置において、最初に、分子量3000で、平均組成式:
(CHF0.4(CH0.5(CH)0.3SiO1.4
で表され、また、平均単位式:[(CHSiO1/20.1(CSiO3/20.5(CSiO3/20.4で表されるフッ素変性シリコーンレジンを配管7から容器6内に供給し、次に、温度40℃、圧力15MPaの超臨界状態にある二酸化炭素を配管5から容器6内に供給して、30分から1時間の間攪拌し、フッ素変性シリコーンレジンを完全に溶解させた。得られた混合物を配管10を介して噴霧室11に導入し、ノズル12からターゲット13に向けて噴霧して、ターゲット13上にフッ素変性シリコーンレジンからなる微粒子を捕集した。
【0051】
実施例1において得られた微粒子のSEM画像を図2に示す。図2中の(A)、(B)及び(C)はターゲット13上での捕集時間がそれぞれ5分、15分及び30分の場合の状態を示す。各微粒子は相互の融着がなく独立した状態であって、粒径の揃ったものであった。平均粒子径は約0.5μmであった。この微粒子のガラス転移温度は70℃、分子量は3000であり、微粒子化前と変わらない値であった。
【0052】
[実施例2〜6]
実施例1と同様の装置を用い、ヒーター4b及びノズル12の温度並びに内圧を、それぞれ、100℃及び20MPaとした場合(実施例2)、125℃及び20MPaとした場合(実施例3)、125℃及び25MPaとした場合(実施例4)、150℃及び20.0MPaとした場合(実施例5)、並びに、150℃及び25.0MPaとした場合(実施例6)についても、同様に、平均粒子径約0.5μmの微粒子を得ることができた。これらの微粒子のガラス転移温度は70℃、分子量は3000であり、微粒子化前と変わらない値であった。
【0053】
[実施例7]
実施例1で使用したフッ素変性シリコーンレジンに代えて、分子量13000で、平均組成式:
(CHF0.4(CH0.4(CH)0.4SiO1.4
で表され、また、平均単位式:[(CHSiO2/20.2(CSiO3/20.4(CSiO3/20.4で表されるフッ素変性シリコーンレジンを使用した以外は実施例1と同様にして平均粒子径0.6μmのフッ素変性シリコーンレジンからなる微粒子を捕集した。この微粒子のガラス転移温度は102℃、分子量は13000であり、微粒子化前と変わらない値であった。
【0054】
なお、分子量13000のフッ素変性シリコーンレジンの40℃の超臨界二酸化炭素に対する溶解性は実施例1で使用した分子量3000のフッ素変性シリコーンレジンの約半分程度であった。
【0055】
[実施例8]
実施例1で使用したフッ素変性シリコーンレジンに代えて、分子量3000で、平均組成式:
(CH0.8(CH)0.4SiO1.4
で表され、また、平均単位式:[(CHSiO2/20.2(CSiO3/20.8で表されるシリコーンレジンを使用した以外は実施例1と同様にして平均粒子径0.3μmのシリコーンレジンからなる微粒子を捕集した。この微粒子のガラス転移温度は60℃、分子量は3000であり、微粒子化前と変わらない値であった。
【0056】
なお、分子量3000のシリコーンレジンの40℃の超臨界二酸化炭素に対する溶解性は実施例1で使用した分子量3000のフッ素変性シリコーンレジンの約12分の1程度であった。
【0057】
[比較例1]
実施例1で使用したフッ素変性シリコーンレジンに代えて、分子量15000のポリカーボネート“ユーピロンH3000”を使用した以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートからなる微粒子の製造を試みたが、分子量15000のポリカーボネートの40℃の超臨界二酸化炭素に対する溶解性は実施例8で使用した分子量3000のシリコーンレジンの約30分の1程度であったために、超臨界二酸化炭素に十分に溶解することができず、微粒子を製造することはできなかった。
【0058】
[比較例2]
実施例1で使用したフッ素変性シリコーンレジンに代えて、分子量3000で平均組成式:
(CH0.9(CH)1.2SiO0.95
で表され、また、平均単位式:(CHSiO[C(CH)SiO]20Si(CHで表される直鎖状ポリシロキサンを使用した以外は実施例1と同様にしてポリシロキサン微粒子の製造を試みたが、このポリシロキサンのガラス転移温度が−30℃であるため、粒子同士が凝集し、微粒子を製造することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のポリシロキサン微粒子は、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解後、減圧膨張して得られるので、揮発性有機溶媒等を含まず、有機溶媒に可溶解性を保持することができるので、このようなポリシロキサン微粒子は、化粧品等の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のポリシロキサン微粒子の製造装置の一例を示す図
【図2】実施例1で得られた微粒子のSEM画像
【符号の説明】
【0061】
1: タンク、 2: 液化器、 3: 高圧ポンプ、 4a、4b: ヒーター、 5: 二酸化炭素供給用配管、 6: 容器、 7: 非直鎖状ポリシロキサン供給用配管、 8: 攪拌機、 9: ジャケット、 10: 配管、 11:噴霧室、 12: ノズル、 13: ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が30℃以上の非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解した後、減圧膨張して得られた、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子。
【請求項2】
非直鎖状ポリシロキサンが、平均組成式:
SiO(4−a)/2
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、aは0.7〜1.8の数を表す)
で表される、請求項1記載のポリシロキサン微粒子。
【請求項3】
非直鎖状ポリシロキサンが、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、b、c、d、およびeはそれぞれ、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦1.0、0≦e≦0.8、d+e≧0.3、b+c+d+e=1である)
で表される、請求項1記載のポリシロキサン微粒子。
【請求項4】
一分子中、Rの少なくとも1個はフェニル基である、請求項2または3記載のポリシロキサン微粒子。
【請求項5】
一分子中、Rの少なくとも1個はフッ素原子置換の1価の炭化水素基である、請求項2または3記載のポリシロキサン微粒子。
【請求項6】
ガラス転移温度が30℃以上の非直鎖状ポリシロキサンを超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素に溶解させ、次いで、得られた溶解物を減圧膨張させることを特徴とする、有機溶媒可溶性のポリシロキサン微粒子の製造方法。
【請求項7】
非直鎖状ポリシロキサンが、平均組成式:
SiO(4−a)/2
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、aは0.7〜1.8の数を表す)
で表される、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
非直鎖状ポリシロキサンが、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
(式中、Rは1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、b、c、d、およびeはそれぞれ、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦1.0、0≦e≦0.8、d+e≧0.3、b+c+d+e=1である)
で表される、請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
一分子中、Rの少なくとも1個はフェニル基である、請求項7または8記載の製造方法。
【請求項10】
一分子中、Rの少なくとも1個はフッ素原子置換の1価の炭化水素基である、請求項7または8記載の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−50497(P2008−50497A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229613(P2006−229613)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月30日 社団法人 化学工学会主催の「化学工学会第71年会(平成18年度)」において文書をもって発表
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】