説明

ポリスチレン樹脂の臭素化方法

【課題】 ビニル芳香族単量体の高品質臭化重合体(例えば臭化ポリスチレン樹脂)を経済的かつ安全に製造する。
【解決手段】 ビニル芳香族単量体の重合体を臭素化する方法であって、臭素化剤を含んで成る第一流れ、ビニル芳香族重合体を含んで成る第二流れおよび臭素化用触媒を含んで成る反応槽から出る第三流れを反応槽に供給することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高品質の臭化ポリスチレン樹脂(brominated polystyrenic resins)を経済的かつ安全に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化ポリスチレン樹脂、即ちアルケニル芳香族繰り返し単位を含む重合体の臭素化品は有用な難燃剤である。特に、臭化ポリスチレン、特別には臭素を少なくとも60重量%含有する臭化ポリスチレンが有用である。70重量%に近い量で臭素を含有しかつ色が白色に近い臭化ポリスチレンに高い価値が置かれている。このように価値が高い製品の入手は容易でない、と言うのは、大部分の方法は高い臭素含有量と良好な色の間に逆の相互関係によって制限されているからである。高い臭素含有量と良好な色を得ることに加えて、その臭素化を受けさせた樹脂に存在する架橋の度合をゼロにするか或は少なくとも非常に低くすべきである。
【0003】
スチレン重合体を臭素化する大部分の方法は、臭素化剤(brominating agent)、例えば臭素およびBrClなどをスチレン重合体が入っている溶液にルイス酸触媒、例えばAlCl、AlBr、FeClおよびFeBrなどの存在下で接触させることを特徴とする。本技術分野では、そのような基本的モデルを用いて可能な最良の方法を推測する努力が長年に渡って続けられてきている。提案された種々の方法はその望みを完全には満たせなかったことから、成功は容易でなかった。
【0004】
特許文献1には、スチレン重合体を臭素化して高品質の製品を良好な収率で得ようとするにとって興味がそそられる方法が記述されている。その方法は、少なくとも1種のスチレン重合体が入っている溶液を臭素化剤にルイス酸触媒の存在下で接触させることを特徴とし、そこでは、スチレン重合体と臭素化剤の両方を個別に供給してルイス酸触媒に接触させている。特許文献1では個別に供給することが重要であると強調されている。使用する触媒が非常に高い活性を示す触媒、即ちAlClである時には、スチレン重合体を供給する前に臭素化剤のいくらかが触媒中に完全に分散していることを確保することも重要であると思われている。このように、臭素化剤全体の少なくとも5モルパーセントを前以て反応槽に添加しておくことが推奨されている。
【0005】
特許文献1の方法は、従来技術の方法に対する改良ではあり得るが、万能ではない。ポリスチレンを臭素化する研究において、特許文献1に教示されているように臭素化剤とポリスチレンの個別供給を用いた方法は蒸気爆発が起こることが原因で反応槽の内容物が反応槽の上部に飛び散って還流および供給系列の中に入り込み得ると言った危険性を伴うと結論付けられた。このような爆発の強度は活性がより高い触媒を用いた場合および/または臭素化が激しく起こるに好都合な反応条件を用いた場合に最大になると考えられる。また、蒸気爆発の問題は商業サイズの反応槽、即ち500から6,000ガロンの反応槽の時に最も重大になると予測される、と言うのは、そのような反応槽では実用の観点からより小型の反応槽で可能なようには高速撹拌することができないからである。
【0006】
このような蒸気爆発は伝熱と質量移動が劣る結果である。臭素化剤の供給とスチレン重合体の供給を個別に行いそして反応槽が大きくて高速撹拌ができない時には、この2つの反応体が高濃度で多量に出会う機会が存在し易い。その結果として、伝熱が良好でないと発熱反応が起こり、それによって、反応溶媒がいくらか蒸発する可能性がある。また、臭素化反応ではHBrが気体状副生成物として生じ、これが蒸気体積全体に寄与する。この一緒にした蒸気体積が大きくて局在化すると、上述した爆発が起こると予測され得る。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,975,496号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、蒸気爆発の危険がなく色が優れていて臭素含有量が高くかつほとんど架橋していない臭化スチレン重合体をもたらすスチレン重合体臭素化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はスチレン重合体を臭素化する方法を特別に取り扱うものであり、この方法に、臭素化剤を含んで成る第一流れ、スチレン重合体を含んで成る第二流れおよび臭素化用触媒を含んで成る第三流れをミキサーに供給して上記流れを密に混合することを含める。
【0010】
ある種のスチレン重合体は供給温度で極めて高い粘性を示すか或は固体であることから、上記第二流れに上記スチレン重合体を溶かす能力を有する溶媒を追加的に含めるのが好適である。また、質量移動の理由で、上記第三流れに上記触媒がスラリー、溶液、懸濁液または分散液を形成することを可能にする液体を含めるのも好適である。上記ミキサー内で生じさせた密な混合物を反応槽に供給してもよく、その反応槽内で、上記スチレン重合体の少なくとも一部に臭素化および/または連続臭素化を受けさせる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法をこの上に記述した様式で実施するといくつかの利点が実現化される。1番目として、上記3つの流れをミキサー内で密に混合すると、大きな体積の蒸気の生成および蒸気爆発が回避される。2番目として、臭素化剤とスチレン重合体から生じさせた供給混合物を用いると最も高い臭素化用触媒を願わくば上記スチレン重合体が架橋を起こさないようにする目的で従来技術で実施されていたことを実施する必要なく活性が用いることができることを立証した。例えば、AlClを触媒として用いた時に架橋が起こらないようにする目的で臭素を前以て反応槽に添加しておく(米国特許第4,975,496号に教示されているように)必要がなくなる。また、架橋を制御する目的でルイス塩基、例えば水などを反応槽に添加する(米国特許第4,200,703号に教示されているように)必要もなくなる。また、架橋を押える目的で活性がより低い触媒を無水系で用いる(米国特許第4,352,909号に教示されているように)必要もなくなる。3番目として、反応体である臭素化剤とスチレン重合体から混合物、特に均一な混合物を生じさせると、望ましくない副生成物の生成をもたらす可能性がある濃度異常が回避される。スチレン重合体と触媒が入っている反応マス(mass)に臭素を添加する従来技術の方法では、臭素添加領域に上記重合体の方が臭素よりも過度に豊富になる異常なゾーンが存在する。臭素化用触媒が入っている反応槽に臭素流れとスチレン重合体流れを個別に添加する場合には、2つの異常ゾーン、即ち臭素が豊富な1つのゾーンと重合体が豊富なもう1つのゾーンが存在するであろう。このようなゾーンでは化学量論が正しくないことから、望ましくない副生成物が生じる機会が導入される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に従って臭素化を受けさせるスチレン重合体は、ビニル芳香族単量体、即ち不飽和部分と芳香族部分を有する単量体から作られたホモポリマー類およびコポリマー類である。好適なビニル芳香族単量体は式:
C=CR−Ar
[式中、
Rは、水素、または炭素原子数が1から4のアルキル基であり、そしてArは、炭素原子数が6から10の芳香族基(環がアルキルおよびハロで置換されているいろいろな芳香族単位を包含)である]
で表される。そのようなビニル芳香族単量体の例はスチレン、アルファ−メチルスチレン
、オルソ−メチルスチレン、メタ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ジメチルスチレン類、t−ブチルスチレン、数種のクロロスチレン類(例えばモノ−およびジクロロ変形)、数種のブロモスチレン類(例えばモノ−、ジブロモ−およびトリブロモ変形)である。ポリスチレンが現在のところ好適なスチレン重合体であり、臭素化を受けさせるスチレン重合体が2種以上のビニル芳香族単量体から作られたコポリマーである時には、スチレンを上記単量体の1つにしてスチレンが共重合性ビニル芳香族単量体の少なくとも50重量パーセントを構成するようにするのが好適である。
【0013】
本発明に従って臭素化を受けさせるスチレン重合体は、スチレンの重合で用いられる技術に匹敵する塊状、即ちマス、溶液、懸濁または乳化重合技術で容易に生じる。重合はフリーラジカル、カチオン性またはアニオン性開始剤、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、アゾビス(イソブチロニトリル)、ジ−ベンゾイルパーオキサイド、過安息香酸t−ブチル、ジクミルパーオキサイド、過硫酸カリウム、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素のエーテル錯体、四塩化チタン、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、クミルカリウムおよび1,3−トリリチオシクロヘキサンなどの存在下で実施可能である。スチレンの重合(単独か或はスチレンと一緒に共重合し得る1種以上の単量体の存在下で行う)はよく知られており、重合方法を更に考察する必要はないと考える。本発明に従って分子量が少なくとも1,000、好適には少なくとも50,000、最も好適には150,000から500,000のスチレン重合体に臭素化を受けさせる。そのような分子量範囲外のスチレン重合体に本発明に従う臭素化を受けさせることも可能であるが、そのようにしても典型的には経済的な利点が得られない。
【0014】
本発明の方法で用いる触媒は、この触媒が高品質臭化ポリスチレン生成物の安全かつ効率良い製造を邪魔する働きをしないことを条件として、如何なる臭素化用触媒であってもよい。好適な触媒はルイス酸触媒であり、これの例はAlCl、AlBr、FeCl、FeBr、SbClおよびZrClである。Fe、AlおよびSbを用いて、それらを単に反応系に添加することを通してルイス酸触媒を生じさせることも可能である。また、触媒の混合物も使用可能である。上記触媒を反応系に添加すると、それは触媒活性を有意に失うことなくある種の反応を起こす可能性があり、例えばAlClはある程度であるがAlBrに変化する可能性がある。より好適な触媒はアルミニウムを基とする触媒および鉄を基とする触媒である。これらの中で最も好適な触媒はハロゲン化アルミニウムおよびハロゲン化鉄、特に臭化物および塩化物である。AlClおよびFeClが最も高度に好適であり、AlClが選択した触媒である。
【0015】
上記触媒を、求める触媒効果が得られるに充分な量で用いる。このような触媒量は上記触媒の活性に依存するが、一般的には、臭素化を受けさせるスチレン重合体の重量を基準にして0.2から20重量パーセントの範囲内、好適には0.5から15重量パーセントの範囲内に入るであろう。触媒の活性が高ければ高いほど使用量を少なくすることができる一方、触媒の活性が低くければ低いほど使用量を多くする。好適なアルミニウムを基とする触媒および鉄を基とする触媒の場合には、それらを0.5から5重量パーセントの範囲内の量で用いるのが好適である。AlClおよびFeClは0.2から10重量パーセントの範囲内の量で効果を示す。AlClを触媒として用いる場合には、0.5から3重量パーセントの範囲の量が好適である。
【0016】
本発明の方法で用いるに有用な臭素化剤は、上記重合体のビニル芳香族単位(本明細書では以降またスチレン単量体単位とも呼ぶ)に含まれる芳香族炭素を臭素化し得る如何なる臭素化剤であってもよい。本技術分野ではBrおよびBrClが良好な臭素化剤であると認識されており、前者が最も好適である。臭素は二原子形態で商業的に入手可能であ
るか、或はHBrの酸化で生じさせることができる。Brは液体または気体のいずれかで供給可能である。本方法で用いる臭素化剤の量は、供給する臭素化剤全体とスチレン重合体全体の全体モル比が上記重合体中のスチレン単量体1単位当たり1から3の臭素置換が起こるであろうようなモル比になる量であるべきである。一般的には、本発明の臭素化を受けさせたスチレン重合体生成物の臭素含有量が臭化重合体全重量を基準にして少なくとも30重量%になるようにするのが望ましい。この臭素化を受けた重合体の臭素含有量が50重量%以上、最も好適には臭素含有量が60重量%以上になるようにするのが好適である。本方法で用いる臭素化剤の量は、所定のスチレン重合体に関して選択した工程パラメーターを用いて得ることができる最大の臭素含有量を考慮した所望の臭素含有量によって決定されるであろう。臭素含有量をより高くしようとする場合には臭素化剤の量を多くする必要がある。過臭素化(perbromination)に近付くにつれて最後の臭素置換を行うのがより困難になることを指摘する。臭素化剤の添加量をより多くしたとしてもそのような困難さが必ずしも軽減されるとは限らない。しかしながら、臭素含有量を最大限にしようと試みる場合には、臭素化剤を若干化学量論的過剰量で用いるのが役立つ。10%に及ぶ化学量論的過剰量が好適である。化学量論は、求める置換当たりに1モルのBrまたはBrClが必要であるとして容易に決定される。実施者は、実際、求める臭素含有量を重量基準で決定した後、理想化した基準を基に、上記を得るに必要な臭素化剤のモル数を計算するであろう。例えば、上記スチレン重合体がポリスチレンでありそして求める臭素含有量が68重量%であるとすると、スチレン単量体1単位当たり少なくとも2.7モルの臭素またはBrClが必要であり、これには所望の化学量論的過剰量は全く含まれていない。ポリスチレンに臭素化を受けさせる場合には40から70+重量%臭素の臭素含有量にするのが望ましい。理論的には臭素とスチレン単量体のモル比を0.9:1から3.0:1にするとそのような範囲を得ることができる。ポリスチレンに臭素化を受けさせる場合には、臭素の含有量が60から70+重量%になるようにするのが好適であり、臭素またはBrClを用いる場合、1.9:1から3.0:1の理論的モル比を用いてそれを得ることができる。本発明の方法を用いると容易に臭素を70重量%に及ぶ量、即ち67−68重量%の量で与えることができる。本方法で用いる臭素化剤の量を決定しようとする時、供給材料の混合物に入っている臭素化剤の量およびこの混合物を供給する前に前以ていくらか添加しておいた臭素化剤の量の両方を考慮に入れる。本明細書で指摘するように、臭素化剤を前以て触媒に添加しておく必要はなく、従って本方法で必要な臭素化剤の全部を上記混合物の送り込みを通して供給することができる。しかしながら、実施者が臭素化剤を前以て反応槽に添加することを選択する場合には、それを行うことも可能である。
【0017】
この上に臭素化剤とスチレン重合体の間の全体的な量的関係を記述してきたが、供給材料混合物に含める上記2つの反応体の間の量的関係に関してはまだ充分には考察していない。供給期間中に供給すべき混合物の臭素化剤含有量を一般にスチレン単量体単位1モル当たり1から8モルにしそして臭素化用触媒含有量をスチレン重合体の重量当たり0.5から20重量%にする。この供給中の量的関係は一定であってもよいか或は上述した範囲内で変えることも可能である(上記範囲の外側にある程度外れてもそれによって工程の効率も生成物の品質も有意な害を受けない限り容認されることは本発明の範囲内である)。供給材料混合物の好適な範囲はスチレン単量体単位1モル当たり2.5から5モルの臭素化剤およびスチレン単量体の重量当たり0.5から5重量%の臭素化用触媒である。理解されるであろうように、この選択した臭素化剤とスチレン単量体単位の全体モル比よりも低いか或は高い臭素化剤とスチレン単量体単位のモル比を与える量で臭素化剤を供給材料混合物に入れて用いると、結果として、密な混合物を生じさせる時に臭素化剤もしくはスチレン重合体のいずれかが他方の成分が枯渇する前に枯渇してしまうであろう。例えば、実施者が臭素含有量が70重量%の臭化ポリスチレンを製造することを選択した場合には、臭素とスチレン単量体単位の全体モル比を3.0:1するのが適切であり、望まれるならばそれよりもいくらか過剰にするのも適切である。もし実施者が臭素とスチレン単量体
単位のモル比が1:1の供給材料混合物を生じさせることを選択したとしたならば、その量では必要な臭素全体量を得る前にポリスチレンの供給が完了してしまうであろうことが分かるであろう。この場合、実施者は、最初に1:1の混合物を用いた後、ポリスチレン供給材料が枯渇した時点で臭素供給材料のみを用いて供給を継続する。他方、供給材料混合物のモル比が5:1になるように選択した時には、最初に臭素が枯渇するであろうから、ポリスチレンと臭素化用触媒のみを用いて密な混合物の生成を完成させる必要があるであろう。一般的には、全体としてのモル比および供給材料混合物のモル比を少なくともいくらか同じにするのが好適である。しかしながら、全てのケースで、最初の供給材料に含める臭素とスチレン単量体単位のモル比を好適には少なくとも1:1にすべきである。
【0018】
本発明の方法では本質的に無水、即ち水含有量が100ppm(重量基準)未満で有機不純物、例えば油、グリース、カルボニル含有炭化水素などおよび鉄の含有量が10ppm以内の臭素を用いるのが好適である。入手可能な商業グレードの臭素はそのような純度を持ち得る。しかしながら、そのような臭素を入手することができない場合には、便利に、臭素と濃(94−98パーセント)硫酸を3対1の体積比で混合することを通して、臭素に含まれる有機不純物および水の含有量を低くすることができる。2相混合物が生じ、それを10−16時間撹拌する。撹拌後、不純物と水が一緒に入っている硫酸相を沈降させて、それを臭素相から分離する。この回収した臭素相に蒸留を受けさせて臭素の純度を更に向上させることも可能である。
【0019】
この上で述べたように、本発明の方法では溶媒を用いる方が好適である。この溶媒はスチレン重合体供給材料を安定にする能力を有していて反応条件下で本工程に比較的不活性であるべきである。この溶媒はまた臭素化が不完全な(underbrominated)スチレン重合体に関しても溶解性を示し、好適なケースでは、最終的な臭化生成物に関しても溶解性を示すべきである。好適な溶媒は、臭素化用触媒もまた溶かすか、容易に分散させるか或は容易に懸濁させる溶媒である。ハロゲン化溶媒が好適であり、その例は四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエタン、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、臭化メチレン、1,2−ジブロモエタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモクロロメタンおよびそれらの混合物である。ブロモクロロメタン、1,2−ジクロロエタンおよび塩化メチレンが特に好適である。
【0020】
溶媒とスチレン重合体が入っている溶液を生じさせると、この重合体の取り扱いが容易になりかつ密な混合物を生じさせるのが容易になる。本発明の溶液の重合体含有量を好適には5から50重量%にする。重合体含有量が5から30重量%の溶液がより高度に好適である。
【0021】
臭素化用触媒は、この触媒がスラリー、溶液、分散液または懸濁液になり得るように液体と会合するのが好適である。それによって反応マスの混合が向上しかつ質量移動の品質が高くなる。必ずしもではないが、上記スチレン重合体溶液を生じさせる時に用いたのと同じ液体、即ち溶媒を用いる方が好都合である。このように、好適な様式の本発明の方法では、ハロゲン化溶媒と触媒が入っていてミキサーに容易にポンプ輸送可能な混合物を生じさせる。液体と触媒の混合物は懸濁液であるとして最良に記述される。この懸濁液に存在させる液体の量を液体と触媒の全重量を基準にして一般に95から99.8重量%、好適には99から99.8重量%にする。
【0022】
上記スチレン重合体を溶かす目的で用いる溶媒および上記触媒と会合させた状態で用いる液体を好適には乾燥状態にする、即ちそれらの間の水の含有量を200ppm(重量基準)未満、好適には水の含有量を150ppm未満または100ppm未満にする。水の存在は望ましいことでない、と言うのは、それが有意量で存在していると触媒が望ましくない度合で失活し得るからである。ある理由で、実施者は工程中に水を多量に用いそして
脱水を実施しないことがあるが、その場合には、単に触媒の使用量を多くすることを通してそのような状況を克服することができるであろう。本発明の方法の特徴は、単に架橋を避ける目的で水を用いる(米国特許第4,200,703に教示されているように)のではなく、むしろ、本発明では新規な供給技術を包含する手段を用いて架橋の度合を低くする。
【0023】
上記3つの流れを供給する時、工程装置が臭素化過程が発熱的であることによる熱負荷、HBrの発生および他の工程懸念を処理する能力を有するか否かを考慮して、供給を迅速に行うべきである。簡単に言えば、重要な工程パラメーターの外側に外れることなく装置が容認する最も短い時間で供給を行うことができる。商業サイズのプラントの場合の供給時間は一般に0.5から3時間になるであろうと予測される。工程の規模が小さくなればなるほど供給時間が短くなると予測される。
【0024】
本発明の方法を−20から60℃の範囲内、好適には0から10℃の範囲内の温度で行う。圧力は大気圧、大気圧以下または大気圧以上であってもよい。
【実施例】
【0025】
本発明の方法を実施する時、臭素化用触媒、即ちAlClを本質的に無水のブロモクロロメタンに懸濁させて撹拌が容易な懸濁液を生じさせる。この懸濁液を、外側にループ(loop)が備わっているグラスライニングの撹拌反応槽に供給して、−5から10℃の範囲内の温度にもって行く。この懸濁液を不活性な乾燥雰囲気下の反応槽内に保持する。スチレン重合体と溶媒、例えばブロモクロロメタンの溶液を調製する。この反応槽から1つの流れを取り出すが、この流れには、最初、懸濁している触媒が入っている。この触媒が懸濁している流れと、スチレン重合体が入っている溶液の流れと、臭素化剤の流れを、上記外側のループとインライン(in−line)で位置するミキサーに供給する。このミキサー内で上記3つの流れの密な混合物を生じさせる。この混合物を上記反応槽に戻して反応槽内容物の一部を構成させる時、この混合物中でも臭素化がいくらか起こり得る。この工程を臭素化剤とスチレン重合体の全部が送り込まれるまで継続する。この工程を継続している間にポリスチレンの臭素化度が高くなる。
【0026】
反応槽の外側に位置させるループの使用の例示に関しては図1が参考になり、この図に反応槽を一般的に番号1で表示して示す。反応槽1は撹拌反応槽であり、これに、最初、触媒仕込み物と溶媒(即ち好適なハロゲン化炭化水素溶媒のいずれか)を入れておく。1つの流れを反応槽1から反応槽出口導管4に通して取り出してポンプ5に送り込む。ポンプ5によって上記流れを加圧し、その結果として、この流れは導管7を通って衝突ミキサー(impingement mixer)10に勢い良く送り込まれる。臭素は導管20を通ってポンプPに送り込まれ、それによって導管21を通って衝突ミキサー10に送り込まれる。ポリスチレンと溶媒(好適には反応槽1に入っている溶媒と同じ溶媒)の溶液は導管22を通ってポンプPに送り込まれた後、導管23によって衝突ミキサー10に送り込まれる。ミキサー10内で上記3つの流れが密な混合物を生じる。衝突ミキサー10の排出物は導管33を通って反応槽1に送り込まれる(供給口3を通って)。反応槽1の内容物の取り出しおよび衝突ミキサー10への送り込みを臭素およびポリスチレン/溶媒溶液の少なくとも実質的に全部が送り込まれるまで継続して行う。
【0027】
理解されるであろうように、反応槽1の内容物の組成は上記臭素およびポリスチレン/溶媒溶液を供給している間変化する。最初、反応槽1の内容物は触媒と溶媒を含んで成る。工程が進行するにつれて、反応槽の内容物は臭化ポリスチレンを含むようになってその量がより豊富になり始め、この臭化ポリスチレンのいくらかは臭素化が不完全でありかつそれのいくらかは求める臭素化度のものである。加熱処理(cook)を行っている間に最終的な臭素化が起こる。この加熱処理期間中、混合を補助する目的で、反応槽の流れを
外側に位置するループの中に連続して流すことを継続してもよい。
【0028】
この上で指摘したように、スチレン重合体の臭素化は置換反応である。この反応で生じる主な副生成物はHBrである。この工程で生じたHBrは、通常、反応槽内容物の上に存在する塔頂空間内に見られる。このHBrを取り出して水スクラバーに送り込むか或は乾燥HBrとして貯蔵するのが好適である。不活性な乾燥ガス、即ち窒素を反応槽内容物の上のパッド(pad)として用いてそこに存在する水の量を最小限にすることができる。
【0029】
スチレン重合体および/または臭素化用供給材料を供給している間、場合により、反応槽を低温、例えば0から10℃、好適には4から8℃に保持する。
【0030】
この供給が終了した後、反応槽を0.5から6時間、好適には1から3時間の加熱処理時間保持する。加熱処理温度を0から10℃の範囲内、好適には2から5℃の範囲内にする。この加熱処理時間は、求める臭素化度が得られるまで臭素化を継続するためのものである。この時間は臭素およびポリスチレンを供給している間の反応パラメーターが穏やかな臭素化条件を与える場合には長くてもよく、或は選択したパラメーターがより苛酷な臭素化条件を与える場合には短くてもよい。この加熱処理時間は一般に反応槽内に存在する時間である。
【0031】
この加熱処理時間後、反応マスを水、亜硫酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムで処理して触媒を失活させ、いくらか残存する臭素化剤を分解させかつ反応マスのpHを調整してもよい。このような処理を行った後、反応マスを沈降させて2相反応マスを得るが、これには有機相(臭化スチレン重合体生成物が溶質として入っている)と水相が含まれている。この水相をデカンテーションで除去した後、残存する有機相から溶媒成分を除去する。この有機相を沸騰水の中に注ぎ込むことを通して上記除去を達成するのが最も便利である。溶媒が除去されるにつれて、臭化スチレン重合体生成物が沈澱を形成してくる。この沈澱物は如何なる液体−固体分離技術で回収されてもよく、例えば濾過および遠心分離などで回収可能である。次に、この回収した沈澱物を乾燥させる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の臭化スチレン重合体は、熱可塑材、特にエンジニアリング熱可塑材、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロンなどに入れる難燃剤として用いるに適切である。本臭化重合体の使用量は難燃をもたらす量である、即ち臭化重合体の使用量を熱可塑材100重量当たり5から20重量%にする。従来技術に教示されている如き通常のブレンド技術を用いることができる。加うるに、必要に応じて、通常の添加剤、例えばUV安定剤、衝撃改良剤、難燃相乗剤、染料、顔料、充填材、可塑材、流動助剤、抗酸化剤およびフリーラジカル開始剤などを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法を描写する図式図である。
【符号の説明】
【0034】
1:反応槽
20:第一流れの導管
22:第二流れの導管
7:第三流れの導管
10:衝突ミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体の重合体を臭素化する方法であって、臭素化剤を含んで成る第一流れ、ビニル芳香族重合体を含んで成る第二流れおよび臭素化用触媒を含んで成る反応槽から出る第三流れを反応槽に供給することを含む方法。
【請求項2】
該第二流れを該ビニル芳香族単量体の重合体を溶かす溶媒を用いて追加的に生じさせる請求項1記載の方法。
【請求項3】
該臭素化用触媒を溶液、スラリー、分散液または懸濁液の状態で存在させる請求項1記載の方法。
【請求項4】
該第二流れをビニル芳香族単量体の重合体を溶かす溶媒を用いて追加的に生じさせ、そして臭素化用触媒を少なくとも該重合体を溶かす目的で用いた種類の溶媒と該臭素化用触媒から生じさせた懸濁液の状態で存在させる請求項1記載の方法。
【請求項5】
該臭素化用触媒がルイス酸触媒である請求項1記載の方法。
【請求項6】
該臭素化用触媒がAlCl、AlBr、FeCl、FeBrまたは前記いずれか2種以上の混合物である請求項1記載の方法。
【請求項7】
該臭素化用触媒がAlCl、AlBrまたはそれらの混合物であり、そして該密な混合物を最初に生じさせる前に臭素化剤を該臭素化用触媒に前以て実質的に全く添加しておかない請求項1記載の方法。
【請求項8】
該臭素化用触媒を反応槽に入れてこの反応槽から出る該臭素化用触媒を含んで成る流れを該反応槽の外側に位置するミキサーに供給しそしてこのミキサーにまた臭素化剤およびビニル芳香族単量体の重合体も供給することでこの3つの供給材料の密な混合物を生じさせてこの混合物を該反応槽に戻す請求項1記載の方法。
【請求項9】
上記供給を該臭素化剤と該重合体の供給がほとんど全部完了するまで実質的に絶え間なく行う請求項8記載の方法。
【請求項10】
アルミニウムを基とする臭素化用触媒を使用して製造されたビニル芳香族単量体の臭化重合体であって、該重合体が(i)67〜68重量%の臭素含有量を有すること、および(ii)架橋していないこと、を特徴とするビニル芳香族単量体の臭化重合体。
【請求項11】
ビニル芳香族単量体の臭化重合体が臭化ポリスチレンである請求項10記載のビニル芳香族単量体の臭化重合体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−303401(P2008−303401A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244012(P2008−244012)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願平10−515657の分割
【原出願日】平成9年9月5日(1997.9.5)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】