説明

ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法

【課題】二次発泡倍率の低下が抑えられ、成形性に優れ、しかも長期間保存した場合であっても爆発などの危険性がなく、食品容器などに好適に使用し得るポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂50〜90質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂10〜50質量部とを含む樹脂混合物を加熱して溶融させた後、該樹脂混合物100質量部に対して、イソブタン濃度が70〜100質量%であり且つノルマルブタン濃度が0〜30質量%であるブタン2.5〜5.0質量部を含浸させ、ついで該樹脂混合物100質量部に対するブタンの残存量が2.0〜3.5質量部となるように押出発泡することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法に関し、具体的には例えば、二次発泡能力の保持性に優れ、二次発泡成形性に優れたポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートは、二次発泡成形を施すことが容易であり、また、得られた成形体が美麗でかつ軽量であり、しかも断熱性に優れ、安価であることから、食器容器などに使用されている。斯かるポリスチレン系樹脂発泡シートは、一般に、ポリスチレン、タルクや炭酸カルシウムなどの造核剤および流動パラフィンなどの成形性調整剤を、押出機を用いて溶融、混合し、発泡剤を圧入したのち、サーキュラーダイより押出し発泡させてシート化することによって製造されている。
【0003】
従来、発泡剤としては、ブタンを主成分とし不純物を比較的多く含む工業用ブタンなどが使用されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
発泡剤として工業用ブタンを用いてつくられたポリスチレン系樹脂発泡シートは、二次発泡成形性を有するものであるが、ポリスチレン系樹脂発泡シートからの工業用ブタンの逸散性が大きく、短時間にポリスチレン系樹脂発泡シート中の該工業用ブタン含量が低下し、二次発泡成形性が低下するため、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造後から二次発泡成形を施すことができるまでの期間(以下、製品ライフという)が短いという問題がある。また、可燃性を呈するブタンガスが多量にシート中から逸散するため、火気などに対して非常に慎重な取扱いが要求されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−271456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点等に鑑み、優れた製品ライフ、及び優れた二次発泡成形性の双方を具備し、しかも取扱い上の危険性が抑えられたポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることができるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法は、ポリスチレン系樹脂50〜90質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂10〜50質量部とを含む樹脂混合物を加熱して溶融させた後、該樹脂混合物100質量部に対して、イソブタン濃度が70〜100質量%であり且つノルマルブタン濃度が0〜30質量%であるブタン2.5〜5.0質量部を含浸させ、ついで該樹脂混合物100質量部に対するブタンの残存量が2.0〜3.5質量部となるように押出発泡することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法によれば、二次発泡倍率の低下が抑えられ、成形性に優れ、しかも長期間保存した場合であっても爆発などの危険性が抑制された、例えば、食品容器などに好適に使用できるポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法は、ポリスチレン系樹脂50〜90質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂10〜50質量部とを含む樹脂混合物を加熱して溶融させた後、該樹脂混合物100質量部に対して、イソブタン濃度が70〜100質量%であり且つノルマルブタン濃度が0〜30質量%であるブタン2.5〜5.0質量部を含浸させ、ついで該樹脂混合物100質量部に対するブタンの残存量が2.0〜3.5質量部となるように押出発泡するものである。また、好ましくは、二次発泡能力として二次発泡倍率が1.78倍以上であるポリスチレン系樹脂発泡シートを製造するものである。
【0010】
前記ポリスチレン系樹脂は、分子中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体が重合してなるものである。
【0011】
前記スチレン系単量体としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、α,4‐ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどが挙げられる。
【0012】
前記スチレン系樹脂としては、前記スチレン系単量体の1種の単独重合体、又は前記スチレン系単量体の複数種の共重合体などが挙げられる。また、前記スチレン系単量体と、他のビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0013】
他のビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられる。
なお、ポリスチレン系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性の観点から、スチレン単独重合体であるポリスチレン樹脂が好ましい。
【0014】
前記樹脂混合物に含有させる前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、次の一般式(1)で表される。
【化1】

ここでR1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、nは重合度を表す正の整数である。
例示すれば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等が本実施形態において用いられ得る。
また、重合度nは、通常10〜5000の範囲内である。
【0015】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合の量で用いられる。
【0016】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、耐熱性の向上に有効なものではあるが、ポリフェニレンエーテル系樹脂を、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で樹脂混合物に含有させることが好ましいのは、10質量部以上であることにより、ポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が確実に発揮されることによる。また、50質量部を超えた含有割合であってもポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果がそれ以上に発揮されにくい。
また、一般的には、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリスチレン系樹脂に比べて高価であるために上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させると材料コストの観点において好ましいとはいえない。
【0017】
通常、ポリスチレン系樹脂のJIS K7206(B法、50℃/h)に基づいて測定されるビカット軟化温度は、102℃程度であるが、上記のようなポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させることにより、ビカット軟化温度を110〜155℃の範囲に向上させることができ、該ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだ樹脂混合物を使用することで、得られるポリスチレン系樹脂発泡シートや該ポリスチレン系樹脂発泡シートを二次加工した製品などの耐熱性向上を図ることができる。
【0018】
一般にポリスチレン系樹脂が用いられてなる製品に耐熱性が求められる場合には、スチレンホモポリマーよりもビカット軟化温度の高いスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などのコポリマーをその形成材料に採用することが行われている。
一方で、上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドする方法は、単に製品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる点においても優れている。
【0019】
したがって、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだポリスチレン系樹脂発泡シートを使用して発泡トレーなどを形成させることにより、急激な変形が加えられても割れたりすることのない発泡トレーを形成させることができる。
【0020】
ただし、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特有の臭いを有していることから、特に臭気を嫌う用途などにおいては消臭のための成分を含有させることが好ましい。
この消臭成分としては、ゼオライト系やリン酸ジルコニウム系の無機物粒子が挙げられる。
【0021】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法では、イソブタンを70〜100質量%含み且つノルマルブタンを0〜30質量%含むブタンが発泡剤として用いられる。
【0022】
前記ブタン中においてイソブタンが増えることに伴い、二次発泡能力などの製品ライフは長くなる。ブタン中に占めるイソブタンの割合を70質量%以上とすることにより、優れた製品ライフを保持させることができる。一般に工業用ブタン中には、微量のプロパンやペンタンなどの炭化水素が不純物として存在するが、ブタン中におけるイソブタンの組成比が70質量%以上であれば、これら不純物が存在していてもポリスチレン系樹脂発泡シートの二次発泡成形性や製品ライフなどの物性が優れたものになり得る。好ましくは、ブタン中におけるイソブタン以外の成分は、ノルマルブタンで占められる。
【0023】
前記製造方法において、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含む樹脂混合物からポリスチレン系樹脂発泡シートを得る方法としては、樹脂混合物と造核剤などの添加剤とを混合した後、押出機に投入し、樹脂混合物を溶融した後に発泡剤としてのブタンを圧入して押出す方法を採用することができる。
【0024】
前記製造方法においては、発泡剤としての前記ブタンを樹脂混合物100部(質量部、以下同じ)に対して2.5〜5.0部用いる。また、得られるポリスチレン系樹脂発泡シート中にブタンが樹脂混合物100部に対して2.0〜3.5部残存するように押出条件などを調整する。該ブタンの残存量が2.0部未満であると、ポリスチレン系樹脂発泡シートの二次発泡能力が不足し、満足できる成形体が得られないおそれがある。また、該ブタンの残存量が3.5部を超えると、二次発泡能力が大きくなりすぎて二次発泡倍率を制御することができなくなるおそれや、逸散ガス量が多くなり、取扱い上、火災などに対する危険性が増大するおそれがある。
【0025】
ポリスチレン系樹脂発泡シートは、満足できる成形体を得るために、二次発泡倍率が1.78倍以上の二次発泡能力を有するように製造される。好ましくは、製造後40日経過後の二次発泡倍率が1.78倍以上の二次発泡能力を有するように製造される。
【0026】
製造されるポリスチレン系樹脂発泡シートは、通常、厚さ1.0〜2.5mm、坪量100〜250g/m2となるように調整されるが、これらの範囲に限定されるものではない。
【0027】
ブタンの残存量が樹脂混合物100部に対して2.0〜3.5部のポリスチレン系樹脂発泡シートは、袋などに入れて保管したり出荷したりするにあたっては、袋などにあらかじめ針孔などをあけるなどの処置を施しておけば、該袋内のブタンガス濃度が常にブタンの爆発燃焼範囲以下に保たれ、保管時の自然発火、移送・取扱時の静電気による着火などを未然に防止し得るため、斯かる処置は、非常に効果的である。
【0028】
製造されたポリスチレン系樹脂発泡シートの成形性、強度、脆さ、表面性などの品質は、従来の発泡剤として工業用ブタンガスを用いて製造したものと同程度又はそれより優れたものである。しかも、発泡剤としてのブタン中におけるイソブタンの組成比がより大きいものは、発泡剤の逸散性がより小さく、製造後、長時間経過しても発泡剤がポリスチレン系樹脂発泡シート中により多く残存するため、成形性がより良好に維持される。
【0029】
次に、実施例をあげて具体的に本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は斯かる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
ポリスチレン樹脂(商品名「XC−515」 DIC社製)70質量部、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とポリスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(商品名「ノリルEFN4230」 サビック社製 PPE/PS=70/30)30質量部の樹脂混合物100質量部に対して、造核剤(商品名「DSM1401A」 東洋スチレン社製)1質量部をブレンドし、115mm押出機に投入してブレンド物を加熱(約270℃)して溶融させた後、表1に示すイソブタンとノルマルブタン組成の発泡剤(ブタンガス)を樹脂混合物100質量部に対して3.5質量部の割合で押出機に圧入して樹脂と発泡剤ガスとを充分に混合した。
次に、接続された150mm押出機にて発泡温度(約175℃)まで樹脂を冷却した後、サーキュラーダイを通して押出発泡し、坪量150g/m2、厚さ1.8mm、厚さ方向のセル数13〜20個のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。
【0032】
次に、得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの残存発泡剤量、二次発泡倍率の低下能、ならびに二次発泡倍率およびトレーの成形性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0033】
(残存発泡剤量)
サーキュラーダイより押出発泡されたポリスチレン系樹脂発泡シートを30分間経過後に180℃の乾燥機中に30分間放置した後の加熱減量から算出した。
【0034】
(二次発泡倍率の低下能)
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートを押出成形した後、4〜60日にわたって180℃で10秒間加熱したときの二次発泡倍率を調べ、押出後経日数(X)と二次発泡倍率(Y)との関係式:Y=A−BlnX(Aは定数項を示す)から二次発泡倍率の低下能(B)を求めた。
【0035】
(二次発泡倍率およびトレーの成形性)
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの製造後40日経過後に180℃で12秒間加熱したときの二次発泡倍率および180℃で12秒間加熱後に10cm×18cm、深さ2.7cmの格子模様つきトレーを成形したときのトレーの状態を調べた。なお、トレーを成形したときの状態を下記の判定基準で評価した。
【0036】
(判定基準)
◎:金型の形状に沿った成形体が問題なく得られる。格子模様も明瞭に出る。
○:格子模様が不明瞭であるが、ほぼ金型の形状に沿った成形体が得られる。
△:角部を中心として金型形状とずれがあり、模様も出ない。成形体底部が若干湾曲している。
×:成形体表面に割れが発生し、成形体が得られない。
【0037】
【表1】

【0038】
以上の結果より、実施例1〜3で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの二次発泡倍率の低下能は、より小さい値であることがわかる。また、実施例3および比較例1で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの二次発泡倍率の低下能の結果から、イソブタンの含有量は70質量%以上必要であることがわかる。さらに、イソブタンの含有量が70質量%以上である実施例1〜3で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの成形性は、優れていることがわかる。
【0039】
また、イソブタン20〜40質量%含有のブタンを発泡剤として用いた比較例2および3で得られた発泡ポリスチレンは、二次発泡保持性および成形性が悪いことがわかる。
【0040】
次に、実施例2および比較例2で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートを用いて、それぞれ別個に幅1047mm、長さ200mのロール巻品(巻芯径:250mm)を作製し、これを縦および横15mmごとに針孔(孔径:約0.2mm)を設けたポリエチレン製の袋(縦:2000mm、横:1400mm)に入れて25℃にて10日間保管し、巻芯部のブタンガスの滞留状況を調べた。
【0041】
実施例2で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートを用いたものは巻芯部のブタンガス濃度は最高で15000ppm程度であったが、比較例2で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートを用いたものは巻芯部のブタンガス濃度は、測定直後から最高で28000ppmにも達し、しかもブタンガスの爆発限界の下限の濃度18000ppmを超える期間は3日間続いた。
【0042】
上記のことから比較例2で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートは、取扱い上、爆発の危険性があるのに対し、実施例2で得られたポリスチレン系樹脂発泡シートは、爆発の危険性がなく、きわめて取扱いやすいものであることがわかる。
【0043】
(参考例)
以下に、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂とを含有させた樹脂混合物で形成した発泡シートと、ポリスチレン系樹脂で形成した発泡シートとにおいて割れ難さを評価した事例を示す。
【0044】
(シート1)
スチレン系樹脂(DIC社製GPPS[スチレンホモポリマー]商品名「XC−515」)70質量%、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(サビック社製 商品名「ノリルEFN4230」 PPE/PS=70/30)30質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、消臭成分として東亜合成社製のリン酸ジルコニウム系消臭剤(商品名「ケスモンNS−10」)を0.5質量部含有する樹脂組成物を押出し発泡して、厚み2.0mm、目付け180g/m2の発泡シートを作製した。
【0045】
(シート2)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてアクリル系モノマーとスチレンモノマーとの共重合体を押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けの発泡シートを作製した。
【0046】
(シート3)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてGPPSのみを押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けの発泡シートを作製した。
【0047】
(耐熱性評価:示差走査熱量測定)
上記シートから6.5±0.5mgのサンプルを採取し、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定を実施した(使用装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、示差走査熱量計装置、型名「DSC6220」)。
その結果、シート1、2のサンプルにおいては、JIS K7121 9.3(1)に記載の「中間点ガラス転移温度(Tmg)」が120℃付近に観察され、シート3のサンプルでは、106℃に観察された。
【0048】
(靱性評価:ダイナタップ衝撃試験)
上記シート1〜3から、100×100mmのテストピースを採取して、該テストピースに対して、ASTM D3763に基づくダイナタップ衝撃試験を実施した(使用装置:General Research Corp.社製、ダイナタップ衝撃試験装置、型名「GRC8250」)。
その結果、シート2のテストピースについては、最大点変位3.2mm、最大荷重29Nという結果となり、シート3のテストピースについては、最大点変位4.0mm、最大荷重36Nという結果となった。
一方でシート1のテストピースについては、最大点変位4.4mm、最大荷重42Nという結果となった。
このことからもシート1は、PPE系樹脂が含有されることによって変位と荷重が大きな割れ難い状態となっていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂50〜90質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂10〜50質量部とを含む樹脂混合物を加熱して溶融させた後、該樹脂混合物100質量部に対して、イソブタン濃度が70〜100質量%であり且つノルマルブタン濃度が0〜30質量%であるブタン2.5〜5.0質量部を含浸させ、ついで該樹脂混合物100質量部に対するブタンの残存量が2.0〜3.5質量部となるように押出発泡することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−7133(P2012−7133A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146722(P2010−146722)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】