説明

ポリスチレン系発泡性樹脂粒子、ポリスチレン系発泡樹脂粒子及びポリスチレン系発泡樹脂成形体

【課題】高断熱性と低密度を両立させつつ、より難燃性の高いポリスチレン系発泡樹脂成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂と、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、ブタン及びペンタンから選択されるフッ素非含有炭化水素とから構成されるガス成分と、難燃剤とを含む0.01〜0.1g/cm3の密度を有するポリスチレン系発泡樹脂成形体であり、前記ガス成分が、発泡樹脂成形体中に、1〜10質量%含まれ、前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、前記フッ素非含有炭化水素1質量部に対して、1〜10(質量比)の割合で前記ガス成分中に含まれることを特徴とするポリスチレン系発泡樹脂成形体により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系発泡性樹脂粒子、ポリスチレン系発泡樹脂粒子及びポリスチレン系発泡樹脂成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、低密度で、高断熱性で、かつ優れた難燃性の発泡樹脂成形体を与えうるポリスチレン系発泡性樹脂粒子及びポリスチレン系発泡樹脂粒子、得られたポリスチレン系発泡樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂の発泡樹脂成形体は、一般にポリスチレン系発泡性樹脂粒子を水蒸気等で加熱発泡して一旦発泡粒子(予備発泡粒子)とし、これを多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させた後、冷却し金型より取り出すことにより製造される。
ポリスチレン系発泡樹脂成形体は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを少なくとも含んでいる。これまで様々な種類の発泡剤の使用例が報告されている。例えば、フロンのようなハロゲン含有炭化水素、ブタンのようなハロゲン非含有炭化水素、二酸化炭素のような無機ガス等を使用した例が報告されている。これら発泡剤の内、発泡性が比較的高く、オゾン破壊係数が低く、地球温暖化係数が低い、ブタンが最近主として使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、断熱性を向上する要求が高まっており、この要求を満たすための発泡剤の検討が行われている。例えば、特表2010−522808号公報(特許文献1)及び特開2010−265471号公報(特許文献2)では、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)が、オゾン破壊係数が0であり、地球温暖化係数が50未満であり、断熱性の高い発泡樹脂成形体を与えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−522808号公報
【特許文献2】特開2010−265471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡樹脂成形体に断熱性を発現させるためには、ポリスチレン系発泡性樹脂粒子に含浸させたHFO−1234zeを、予備発泡工程及び発泡成形工程を経た発泡樹脂成形体にできるだけ残存させる必要がある。しかしながら、上記公報では、この観点についての検討はされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、HFO−1234zeの発泡樹脂成形体への残存量を増やすことを種々試みた。まず、単純にHFO−1234zeのポリスチレン系樹脂への含浸量を増やす方法がある。この方法では、発泡樹脂成形体中の残存量は増加するが、低密度の発泡樹脂成形体を得難いことが判った。そこで、残存量の増加と低密度を両立させることを検討した結果、フッ素非含有炭化水素であるブタン及び/又はペンタンを併用することで、意外にも両立が可能であることを見い出すことで本発明に至った。両立は、ブタン及び/又はペンタンの併用で可能であり、例えばプロパンや二酸化炭素では可能でないことも発明者らは見い出している。
【0007】
かくして本発明によれば、ポリスチレン系樹脂と、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、ブタン及びペンタンから選択されるフッ素非含有炭化水素とから構成されるガス成分と、難燃剤とを含むポリスチレン系発泡性樹脂粒子であり、
前記ガス成分が、ポリスチレン系発泡性樹脂粒子中に、5〜15質量%含まれ、
前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、前記フッ素非含有炭化水素1質量部に対して、1〜10(質量比)の割合で前記ガス成分中に含まれることを特徴とするポリスチレン系発泡性樹脂粒子が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記ポリスチレン系発泡性樹脂粒子を加熱発泡して形成されたポリスチレン系発泡樹脂粒子が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、ポリスチレン系樹脂と、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、ブタン及びペンタンから選択されるフッ素非含有炭化水素とから構成されるガス成分と、難燃剤とを含む0.01〜0.1g/cm3の密度を有するポリスチレン系発泡樹脂成形体であり、
前記ガス成分が、発泡樹脂成形体中に、1〜10質量%含まれ、
前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、前記フッ素非含有炭化水素1質量部に対して、1〜10(質量比)の割合で前記ガス成分中に含まれることを特徴とするポリスチレン系発泡樹脂成形体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、HFO−1234zeの残存量の増加による高断熱性と、低密度とが両立したポリスチレン系発泡樹脂成形体を提供できる。
更に、難燃剤が、160〜280℃の5%分解温度を有する臭素系難燃剤である場合、高断熱性と低密度を両立させつつ、より難燃性の高いポリスチレン系発泡樹脂成形体を提供できる。
また、難燃剤が、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で含まれる場合、高断熱性と低密度を両立させつつ、より難燃性の高いポリスチレン系発泡樹脂成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ポリスチレン系発泡性樹脂粒子)
本発明のポリスチレン系発泡性樹脂粒子(以下、発泡性粒子)は、ポリスチレン系樹脂と、ガス成分と、難燃剤とを含んでいる。
(1)ガス成分
ガス成分は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)と、ブタン及びペンタンから選択されるフッ素非含有炭化水素とを含む。
HFO−1234zeは、シス体及びトランス体のいずれでもよく、シス体とトランス体との混合物でもよい。
ブタンは、n−ブタン及びi−ブタンのいずれでもよく、n−ブタンとi−ブタンとの混合物でもよい。
ペンタンはn−ペンタン及びi−ペンタン及びc−ペンタンのいずれでもよく、n−ペンタン及びi−ペンタン及びc−ペンタンとの混合物であってもよい。
また、フッ素非含有炭化水素は、ブタン又はペンタンのいずれか1種でもよく、ブタンとペンタンの混合物でもよい。
【0012】
HFO−1234zeは、フッ素非含有炭化水素1質量部に対して、1〜10(質量比)の割合でガス成分中に含まれている。HFO−1234zeの含有比が1未満の場合、発泡粒子にHFO−1234zeが残存することによる十分な断熱性を付与できないことがある。10より多い場合、ポリスチレン系発泡樹脂粒子(以下、発泡粒子)が低密度となり十分な断熱性を付与できないことがある。より好ましいHFO−1234zeの含有比は、1.2〜8である。
ガス成分中、HFO−1234zeとフッ素非含有炭化水素との合計量が占める割合は、50質量%以上であることが好ましい。
【0013】
ガス成分は、ポリスチレン系発泡樹脂成形体(以下、発泡成形体)中に、1〜10質量%含まれている。含有量が1質量%未満の場合、高断熱性と低密度を両立させた発泡成形体が得難いことがある。10質量%より多い場合、難燃性を満足させるために必要な難燃剤量が多くなったり、難燃性を付与できなくなることがある。より好ましい含有量は、2〜8質量%である。
【0014】
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体が挙げられる。
更に、ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体も挙げられる。この共重合体の場合、スチレン系モノマー由来の成分が主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上)を占めることが好ましい。更に、スチレン系モノマー由来の成分は、スチレン由来の成分を50質量%以上含有していることが好ましく、ポリスチレンのみからなることがより好ましい。
【0015】
スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0016】
(3)難燃剤
難燃剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)等が挙げられる。
難燃剤は、発泡性や発泡成形体の難燃性の観点から、160〜280℃の5%分解温度を有する臭素系難燃剤が好ましい。このような臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)が挙げられる。
難燃剤は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で含まれていることが好ましい。含有量が0.1質量部未満の場合、発泡粒子に付与される難燃性が十分でないことがある。10質量部より多い場合、発泡成形体の成形性が低下することがある。より好ましい含有量は、0.5〜6質量部である。
【0017】
(4)その他の添加剤
更に、本発明の発泡性粒子は、物性を損なわない範囲内において、溶剤、可塑剤、難燃助剤、発泡セル造核剤、充填剤、滑剤、着色剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
難燃助剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物が挙げられる。
【0018】
(5)発泡性粒子の形状
発泡性粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。発泡性粒子の粒子径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.2〜5mmの粒子径のものを使用できる。また、円柱状である場合は、高さが0.2〜5mm、直径が0.1〜5mmのものを使用できる。
【0019】
(6)発泡性粒子の製造方法
発泡性粒子は、例えば、ポリスチレン系樹脂粒子にガス成分となる発泡剤を含浸させることで得ることができる。
ポリスチレン系樹脂粒子は、特に限定されず、公知の方法により入手できる。例えば、ポリスチレン系樹脂を押出機にて溶融混練し、ストランド状に押し出し、得られたストランドをカットすることにより得ることができる。また、カットされた粒子を種粒子とするスチレン系モノマーのシード重合により得ることも可能である。
発泡性粒子を得るための発泡剤の含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)、媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)、押出機内で溶融したポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入して溶融混錬し、多数のノズルから水中に押し出し、その直後にカットする方法(水中ホットカット法)のいずれでも行うことができる。また、必要に応じて、加熱及び/又は加圧下で含浸を行うことができる。
【0020】
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、スチレン系モノマーの液滴及び種粒子の分散性を安定させるために分散剤が含まれていてもよい。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。ここで、難溶性無機化合物を用いる場合には、界面活性剤も使用することが好ましい。分散剤の使用量は、分散剤を含む水性媒体中、0.1〜4質量%であることが好ましい。0.1質量%未満の場合、分散安定性の効果が発現し難いことがある。4質量%より多い場合、分散安定性の効果は発現するが、多量の使用に見合う効果が望めず、製造コストが上昇することがある。
【0021】
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0022】
発泡剤の含浸において、HFO−1234zeとブタンは、ポリスチレン系樹脂粒子に同時に含浸させてもよく、一方を先に含浸させた後、他方を含浸させてもよい。
発泡性粒子は、発泡粒子の製造前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。発泡性粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、発泡性粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、発泡性粒子中の発泡剤が散逸して発泡性が低下することがある。
必要に応じて、結合防止剤で発泡性粒子の表面を被覆してもよい。
結合防止剤は、発泡粒子製造時の加熱により発泡性樹脂粒子同士が結合することを防止する役割を果たす。結合防止剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0023】
(発泡粒子)
発泡粒子は、例えば、発泡性粒子を発泡(予備発泡)させることで、発泡粒子(予備発泡粒子)を得ることができる。
発泡粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。
発泡粒子は、例えば、0.01〜0.1g/cm3の嵩密度を有する。嵩密度が0.01g/cm3未満の場合、発泡粒子の気泡膜破れが増えることにより発泡成形体としての機械的強度が低下したり、断熱性能が低下に繋がることがある。0.1g/cm3より大きい場合、発泡成形体を成形するときの成形サイクルが長くなり発泡成形体の生産効率が低下することがある。特に、発泡剤として、HFO−1234zeを使用した場合、0.1〜0.01g/cm3の範囲の嵩密度の発泡粒子は、通常入手困難であるため、この範囲は本発明が特に有用な範囲である。
【0024】
(発泡成形体)
本発明の発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂と、ガス成分と、難燃剤とを含んでいる。これら含有成分の種類及び含有量は、上記発泡粒子と同じである。
発泡成形体は、発泡粒子と同じ理由から、0.01〜0.1g/cm3の嵩密度を有する。発泡粒子と同様、ガス成分として、HFO−1234zeを使用した場合、0.1〜0.01g/cm3の範囲の嵩密度の発泡成形体は、通常入手困難であるため、この範囲は本発明が特に有用な範囲である。
発泡成形体は、魚箱等の梱包材や保温容器、建材用断熱材として好適に用いることができる。
【0025】
発泡成形体は、例えば、上記発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体が製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整する等して調製できる。
発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、発泡粒子中のガス成分(発泡剤)が散逸して成形性が低下することがある。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各種測定法を下記する。
<嵩密度>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0027】
<発泡成形体の密度>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
【0028】
<熱伝導率>
JIS A 1412−2:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法)記載の方法に準拠して、熱伝導率を求める。試験体サンプルは長さ200×幅200×厚み25mmの大きさで試験体平均温度は23℃とする。
測定装置は英弘精機産業社製HC−074を用い、装置の低温板は試験体平均温度より15℃低く、高温板は試験体平均温度よりも15℃高く設定して測定し、23℃での熱伝導率測定値を求める。
【0029】
<燃焼性>
発泡成形体から縦200mm×横25mm×高さ10mmの直方体形状の試験片5個をバーチカルカッターにて切り出す。試験片を60℃オーブンで1日間養生後、JIS A9511:2006の測定方法Aに準じて消炎時間を測定する。5個の試験片の消炎時間の平均値を求め、下記基準に基づいて燃焼性を総合的に評価する。なお、上記JIS規格では消炎時間が3秒以内である必要があり、2秒以内であれば好ましく、1秒以内であればより好ましい。
×・・・消炎時間が3秒を超えているか、又は、試験片の1個でも残じんがあるか若しくは燃焼限界指示線を超えて燃焼する。
○・・・消炎時間が3秒以内であり、5個の試験片全てにおいて、残じんがなく燃焼限界指示線を超えて燃焼しない。
【0030】
<発泡性粒子及び発泡成形体中の残ガス量>
発泡性粒子及び発泡成形体中の残ガス量は、次のように測定する。まず、発泡性粒子及び発泡成形体からそれぞれ表層部分を除外した20mg程度の量を精秤し、島津製作所社製熱分解炉PYR−1Aの分解炉入り口にセットし、15秒間ほどヘリウムでパージしてサンプルセット時の混入ガスを排出する。密閉後試料を180℃の炉心に挿入し、120秒間加熱してガスを放出させ、この放出ガスを島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−14B(検出器:TCD)を用いて定量する。その測定条件はカラムがジーエルサイエンス社製ポラパックQ(80/100)3mmφ×1.5mを用いカラム温度(100℃)、キャリアーガス(ヘリウム)、キャリアーガス流量(1ml/min)、注入口温度(120℃)、検出器温度(120℃)とする。
プロパン、ブタン、ペンタン、HFO−1234zeの定量には、予め測定したそれぞれの検量線に基づいて得られたチャートから試験片中の残ガス量を算出し、以下の式に基づいて求める。
(残ガス量 質量%)=100×試験片中の残ガス量/試験片質量
ここでの発泡性粒子及び発泡成形体中の残ガス量は製造から3日経過した時点で測定する。
【0031】
<発泡性粒子及び発泡成形体中のHFO1234zeの含有割合>
発泡性粒子及び発泡成形体中のHFO1234zeの含有割合は、HFO1234zeの残ガス量を、HFO1234ze以外の発泡剤の残ガス量により除して求める。
【0032】
[実施例1]
ポリスチレン系樹脂(東洋スチレン社製HRM10N)100質量部と、難燃剤としてのテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)(第一工業製薬社製SR−130、5%分解温度259℃)3.5質量部とをドライブレンドした。ブレンド物を口径30mmの二軸押出機(L/D=30)に投入して溶融混練した。混練物を、口径1mm及び孔数12個のダイスから5kg/時間の吐出量でストランド状に押し出した。得られたストランドを、長さ2mの冷却水槽中の30℃の水中を通過させることにより冷却し、ペレタイザーによりカットすることで、直径0.9mm及び長さ1.2mmのポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0033】
攪拌機付の内容積5リットルの耐圧密閉容器内に、イオン交換水3リットル、ピロリン酸ナトリウム8.9g、硫酸マグネシウム16.4g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.12gを入れて水性媒体を得た。水性媒体にポリスチレン系樹脂粒子1500gを投入し、攪拌速度300rpmで攪拌しつつ、ブタン75gを窒素にて圧入した。次に、315gのHFO−1234zeを窒素にて圧入した後、30℃から100℃へ昇温した。昇温後、その温度を7時間保持した後、30℃以下になるまで冷却することで、発泡性粒子を得た。
【0034】
発泡性粒子を取り出し、脱水及び乾燥後、18メッシュ残で分級した。分級後の発泡性粒子を、発泡粒子の気泡状態を均一にするため、3日間室温(約25℃)で熟成した。熟成後の発泡性粒子に100質量部に対して、0.05質量部のステアリン酸亜鉛で、発泡性粒子の表面を被覆した。
次に、発泡性粒子を、攪拌機付の内容積100リットルのバッチ式発泡機に投入し、0.03MPaの圧力のスチームを吹き込むことで、嵩密度0.026g/cm3の発泡粒子を得た。
【0035】
得られた発泡粒子を24時間放置した後、発泡粒子を閉鎖し得るが密閉しえない金型内に充填した。金型を、発泡成形機を用いて、0.07MPaの圧力のスチームにより加熱し、次いで水冷及び真空放冷することにより、密度0.026g/cm3の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、ブタン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0036】
[実施例2]
ブタンの圧入量を45gにすること以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、ブタン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
ブタンの圧入量を120gにすること以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、ブタン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0038】
[実施例4]
ブタンのかわりにペンタンを発泡剤とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、ペンタン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0039】
[実施例5]
ポリスチレン系樹脂粒子として懸濁重合法によって得られた平均粒子径が0.8mm、重量平均分子量が30万となるポリスチレン系樹脂粒子を用い、攪拌機付の内容積5リットルの耐圧密閉容器内に、難燃剤としてテトラブロモシクロオクタン(第一工業製薬社製FR−200、5%分解温度180℃)18g、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド5.4gを投入した以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、ブタン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
ブタンを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、密度が高いものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
難燃剤を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0042】
[比較例3]
HFO−1234zeの圧入量を105gにし、ブタンの圧入量を150gにすること以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体では難燃性が乏しく燃焼試験が不合格であった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、ブタン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0043】
[比較例4]
ブタンのかわりにプロパンを発泡剤とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、熱伝導率が悪く断熱性が乏しいものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、プロパン量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0044】
[比較例5]
ブタンを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして得られた発泡性粒子を、内容積5リットルの耐圧密閉容器内に投入した後、二酸化炭素を1.5MPaまで圧入し20℃の雰囲気下で10時間保持することでHFO1234zeと二酸化炭素を含む発泡性粒子を得た。ここで、取り出し直後の発泡性粒子の重量変化を測定したところ、3.1質量%の二酸化炭素が含浸されていることを確認した。取り出した発泡性粒子を直ちに二攪拌機付の内容積100リットルのバッチ式発泡機に投入し、0.03MPaの圧力のスチームを吹き込むことで、嵩密度0.11g/cm3の発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を24時間放置した後、発泡粒子を閉鎖し得るが密閉しえない金型内に充填した。金型を、発泡成形機を用いて、0.07MPaの圧力のスチームにより加熱し、次いで水冷及び真空放冷することにより、密度0.11g/cm3の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、収縮のない、外観の良好なものであった。得られた発泡成形体は、発泡剤として二酸化炭素を併用したにもかかわらず密度が高いものであった。
得られた発泡成形体のHFO−1234ze量、熱伝導率及び燃焼性を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例と、比較例1及び3〜4とから、ガス成分が発泡成形体中に特定量含まれ、HFO−1234ze量とブタン及びペンタン量との比が特定の範囲であれば、高断熱性で、高難燃性で、低密度の発泡成形体が得られることがわかる。
実施例と比較例2とから、難燃剤を含むことで、高断熱性で、高難燃性で、低密度の発泡成形体が得られることがわかる。
比較例3から、難燃剤を含んでいても、HFO−1234ze量とブタン量との比が特定の範囲でない場合、難燃性が不十分であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂と、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、ブタン及びペンタンから選択されるフッ素非含有炭化水素とから構成されるガス成分と、難燃剤とを含むポリスチレン系発泡性樹脂粒子であり、
前記ガス成分が、ポリスチレン系発泡性樹脂粒子中に、5〜15質量%含まれ、
前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、前記フッ素非含有炭化水素1質量部に対して、1〜10(質量比)の割合で前記ガス成分中に含まれることを特徴とするポリスチレン系発泡性樹脂粒子。
【請求項2】
前記難燃剤が、160〜280℃の5%分解温度を有する臭素系難燃剤である請求項1に記載のポリスチレン系発泡性樹脂粒子。
【請求項3】
前記難燃剤が、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で含まれる請求項1又は2に記載のポリスチレン系発泡性樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリスチレン系発泡性樹脂粒子を加熱発泡して形成されたポリスチレン系発泡樹脂粒子。
【請求項5】
ポリスチレン系樹脂と、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、ブタン及びペンタンから選択されるフッ素非含有炭化水素とから構成されるガス成分と、難燃剤とを含む0.01〜0.1g/cm3の密度を有するポリスチレン系発泡樹脂成形体であり、
前記ガス成分が、発泡樹脂成形体中に、1〜10質量%含まれ、
前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、前記フッ素非含有炭化水素1質量部に対して、1〜10(質量比)の割合で前記ガス成分中に含まれることを特徴とするポリスチレン系発泡樹脂成形体。
【請求項6】
前記難燃剤が、160〜280℃の5%分解温度を有する臭素系難燃剤である請求項5に記載のポリスチレン系発泡樹脂成形体。
【請求項7】
前記難燃剤が、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で含まれる請求項5又は6に記載のポリスチレン系発泡樹脂成形体。

【公開番号】特開2012−188634(P2012−188634A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55818(P2011−55818)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】