説明

ポリスチレン組成物およびそれの製造方法および使用方法

ポリスチレンをカーボンブラックおよび膨張性微小球と接触させて組成物を生じさせそして前記微小球を膨張させることで前記組成物を発泡させることを含んで成る方法を開示する。また、ポリスチレン、カーボンブラックおよび膨張性微小球を含有して成る発泡組成物も開示する。本発明のポリスチレン組成物は向上した機械的特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はポリスチレン組成物に関する。より具体的には、本開示は、カーボンブラックと膨張性微小球を含有させた発泡ポリスチレン組成物および前記ポリスチレン組成物の使用方法に関する。本発明のポリスチレン組成物は向上した機械的特性を示す。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン組成物、例えば発泡ポリスチレン組成物などはいろいろな用途で用いるに有用である。発泡ポリスチレンは低コストおよび優れた物性、例えば高い構造強度および低密度などの利点を示す。発泡ポリスチレンはいろいろな最終使用製品および品物の製造で用いられる。
【0003】
発泡ポリスチレンを製造する時に直面する問題の中の1つは、材料の密度が低くなる結果として機械的特性が低下する点にある。例えば、ポリスチレンフォームは装飾用途の場合には木の代わりに成り得るが、そのような材料を耐力木材の代わりに用いるのは不可能である、と言うのは、ポリスチレンフォームが示す剛性および曲げ弾性率はそのような機能に適合しないからである。このように、向上した耐力能力を有するポリスチレン発泡材料を開発することができれば、これは望ましいことである。
【簡単な要約】
【0004】
本明細書では、ポリスチレンをカーボンブラックおよび膨張性微小球と接触させることで組成物を生じさせそして前記微小球を膨張させることで前記組成物を発泡させることを含んで成る方法を開示する。
【0005】
本明細書では、また、ポリスチレン、カーボンブラックおよび膨張性微小球を含有して成る発泡組成物も開示する。
【0006】
前記は、以下に示す態様の詳細な説明がより良好に理解されるように、本開示の特徴および技術的利点の概略をかなり幅広く示したものである。本開示の請求項の主題を構成する態様の追加的特徴および利点を本明細書の以下に記述する。当業者は、その開示する概念および具体的態様を他の構造物を修飾または考案する基礎として容易に利用して本開示の目的と同じ目的を実施することができるでことを理解するであろう。また、当業者は、そのような相当する構造物は添付請求項に示す如き本開示の精神および範囲から逸脱しないことも理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施例1で得たサンプルが示した曲げ弾性率をカーボンブラックの関数として示したグラフである。
【図2】図2に、化学的発泡剤であるSAFOAM FP−40を用いて製造した発泡ポリスチレンサンプル4の画像を示す。
【図3】図3に、EXPANCEL膨張性微小球を1%用いて発泡させた発泡ポリスチレンサンプル7の画像を示す。
【図4】図4に、EXPANCEL膨張性微小球を1%およびカーボンブラックを5%含有させて発泡させたポリスチレンサンプル8の画像を示す。
【図5】図5に、化学的発泡剤であるSAFOAM FP−40を1%およびカーボンブラックを5%用いて製造した発泡ポリスチレンサンプル5の画像を示す。
【図6】図6に、カーボンブラックを15%およびSAFOAM FP−40を1%用いて製造した発泡ポリスチレンサンプル6の画像を示す。
【図7】図7に、カーボンブラックを15%およびEXPANCEL膨張性微小球を1%用いて製造した発泡ポリスチレンサンプル9の画像を示す。
【詳細な説明】
【0008】
本明細書では、向上した機械的特性を示す発泡ポリスチレン組成物およびそれの製造方法および使用方法を開示する。1つの態様における本重合体組成物は、スチレン系重合体、膨張性微小球およびカーボンブラックを含有して成る。そのような組成物を用いることで、膨張性微小球もカーボンブラックも入っていないが同様な密度を有するポリスチレン組成物に比べて曲げ弾性率が高いことで明らかなように向上した強度を示し得る発泡ポリスチレンを生じさせることができる。スチレン系重合体、膨張性微小球およびカーボンブラックを含有させて本明細書に記述するようにして調製した組成物を本明細書では以降向上した機械的特性を有するポリスチレン組成物(PSIMP)と呼ぶ。
【0009】
1つの態様における本PSIMPはスチレン系重合体(即ちポリスチレン)を含有して成るが、そのスチレン系重合体はホモ重合体であってもよいか或は場合により1種以上のコモノマーを含有して成っていてもよい。スチレン(またビニルベンゼン、エチエニルベンゼンおよびフェニルエテンとしても知られる)は、化学式Cで表される有機化合物である。スチレンは商業的に幅広く入手可能であり、本明細書で用いる如き用語スチレンには、いろいろな置換スチレン(例えばアルファ−メチルスチレン)、環置換スチレン、例えばp−メチルスチレンなど、二置換スチレン、例えばp−t−ブチルスチレンなどばかりでなく非置換スチレンが含まれる。1つの態様では、そのようなスチレン系重合体を本組成物の総重量の1.0から99.9重量パーセント(重量%)、または5から99%、または10%から95%の量で存在させる。1つの態様として、本PSIMPを他の材料が占める場合にはそれの残りをスチレン系重合体で構成させる。
【0010】
いくつかの態様では、スチレン系重合体に更にコモノマーも含有させてもよく、それをスチレンと重合させるとスチレン系共重合体がもたらされる。そのようなコモノマーの例には、例えばこれらに限定するものでないが、α−メチルスチレン、ハロゲン置換スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸と炭素数が1から8のアルコールのエステル、N−ビニル化合物、例えばビニルカルバゾールなど、無水マレイン酸、重合性二重結合を2個含有する化合物、例えばこれらに限定するものでないが、ジビニルベンゼンまたはブタンジオールジアクリレートなど、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。そのようなコモノマーを本組成物の使用者が望む1種以上の特性を与えるに有効な量で存在させてもよい。そのような有効な量を通常の当業者は決定することができるであろう。例えば、そのようなコモノマーを本組成物の総重量の1から99.9重量パーセント、または1から90%、または1から50%の量の範囲の量で当該スチレン系重合体に存在させてもよい。
【0011】
いくつかの態様では、そのようなスチレン系重合体に更に弾性重合体も含めてもよく、その結果としてもたらされる組成物は耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)であり得る。そのようなHIPSはポリスチレンマトリクスの中に埋め込まれている弾性重合体相を含有し、その結果として、向上した耐衝撃性を示す組成物がもたらされる。1つの態様におけるスチレン系重合体組成物は、共役ジエンモノマーを弾性重合体用として含有して成るH
IPSである。適切な共役ジエンモノマーの例には、これらに限定するものでないが、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2クロロ−1,3ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンおよび2クロロ−1,3−ブタジエンが含まれる。別法として、HIPSは脂肪族共役ジエンモノマーを弾性重合体用として含有して成る。適切な脂肪族共役ジエンモノマーの例には、これらに限定するものでないが、CからCのジエン、例えばブタジエンモノマーなどが含まれる。また、そのようなジエンモノマーの混合物または共重合体を用いることも可能である。そのような弾性重合体を使用者が望む1種以上の特性をもたらすに有効な量で存在させてもよい。そのような有効な量を通常の当業者は決定することができるであろう。例えば、そのような弾性重合体を本組成物の総重量の0.1から50重量パーセント、または0.5から40%、または1から30%の範囲の量で当該スチレン系重合体に存在させてもよい。
【0012】
1つの態様として、スチレン系重合体の製造方法は、スチレンモノマーおよび通常の当業者に公知の如き他の成分、例えばコモノマーなどを当該モノマーの重合に適した反応条件下で接触させることを含んで成る。
【0013】
1つの態様として、スチレン系重合体の製造方法は、スチレン系モノマーを少なくとも1種の開始剤と接触させることを含んで成る。フリーラジカルを発生させてスチレンの重合を助長させる能力を有する如何なる開始剤も使用可能である。そのような開始剤は当該技術分野で良く知られており、それには、例として、これらに限定するものでないが、有機過酸化物が含まれる。重合の開始で用いるに有用な有機過酸化物の例には、これらに限定するものでないが、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ヒドロパーオキサイド、またはこれらの組み合わせが含まれる。開始剤の選択および有効な量はいろいろな要因(例えば温度、反応時間)に依存するが、当業者は当該工程で望まれる必要に合致するようにそれらを選択することができるであろう。重合開始剤およびそれらの有効な量が米国特許第6,822,046号、4,861,127号、5,559,162号、4,433,099号および7,179,873号(これらは各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0014】
1つの態様では、そのようなスチレン系重合体を生じさせる重合反応を溶液またはマス重合工程で実施してもよい。マス重合(また塊状重合としても知られる)は、モノマーを当該モノマー以外の媒体も触媒も重合開始剤も全く存在させないで重合させることを指す。溶液重合は、重合反応開始時に当該モノマーおよび重合開始剤をモノマーではない液状溶媒に溶解させる重合工程を指す。そのような液体は通常はまた結果としてもたらされる重合体または共重合体にとっても溶媒である。
【0015】
そのような重合工程はバッチ式または連続式のいずれであってもよい。1つの態様では、重合反応を単一の反応槽または複数の反応槽を含有する重合装置を用いた連続生産工程で実施してもよい。例えば、重合体組成物の調製を上昇流反応槽を用いて実施してもよい。重合体組成物の製造に適した反応槽および条件が米国特許第4,777,210号(これは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に開示されている。
【0016】
本開示の方法で用いるに有用な温度の範囲は、当該重合の実施で用いる装置の実施特徴に一致するように選択可能である。1つの態様では、重合温度範囲を90℃から240℃にしてもよい。別の態様では、重合温度の範囲を100℃から180℃にしてもよい。更に別の態様では、重合反応を複数の反応槽内で実施することも可能であり、この場合には各反応槽の温度の範囲を最適にする。例えば、重合反応を連続撹拌タンク反応槽(CSTR)またはプラグフロー(plug−flow)反応槽のいずれかである1番目と2番目の重合反応槽を用いた反応槽系などで実施してもよい。1つの態様では、本明細書に開示
する種類のスチレン系重合体を製造するに適した複数の反応槽を含有する重合反応槽の1番目の反応槽(例えばCSTR)[また予備重合反応槽としても知られる]を90℃から135℃の範囲の温度で操作する一方で2番目の反応槽(例えばCSTRまたはプラグフロー)を100℃から165℃の範囲で操作してもよい。
【0017】
前記1番目の反応槽から出る重合生成物を本明細書ではプレポリマーと呼ぶこともあり得る。そのプレポリマーが所望の変換率に到達した時点で、それを加熱装置に通して2番目の反応槽に送って更に重合させてもよい。その2番目の反応槽から出る重合生成物にさらなる処理を通常の当業者に知られかつ文献に詳述されているようにして受けさせてもよい。重合反応が終了した時点でスチレン系重合体を回収した後、処理、例えば揮発物除去、ペレット化などを実施する。
【0018】
1つの態様では、そのようなスチレン系重合体にまた所望の物性、例えば向上した光沢または色などを与える必要があると思われる時にはそれに応じて添加剤を含有させてもよい。添加剤の例には、これらに限定するものでないが、連鎖移動剤、タルク、抗酸化剤、紫外線安定剤、滑剤、鉱油、可塑剤などが含まれる。上述した添加剤を単独または組み合わせのいずれかで用いることで当該組成物のいろいろな配合物を生じさせることができる。例えば、安定剤または安定化剤を用いると重合体組成物が過剰な温度および/または紫外光にさらされることが理由で起こる劣化からそれを保護するに役立ち得る。そのような添加剤を所望特性を与えるに有効な量で含有させてもよい。そのような添加剤を重合体組成物に含有させるに有効な添加剤量および方法は当業者に公知である。例えば、1種以上の添加剤を当該スチレン系重合体を回収した後、例えばコンパウンド化、例えばペレット化など中に添加してもよい。本PSIMPのスチレン系重合体成分にそのような添加剤を含有させる代わりにか或は追加的に、そのような添加剤を本PSIMPを生じさせている間または本PSMIPに含める他の1種以上の成分に添加することも可能である。
【0019】
1つの態様では、本PSIMPに微小球、または膨張性微小球を含有させる。本明細書における膨張性微小球は、膨張性材料を封じ込めている膨張性殻を含有して成る材料を指す。1つの態様における膨張性微小球は、炭化水素ガスを封じ込めている熱可塑性重合体殻を含有して成る。その炭化水素ガスを封じ込めている熱可塑性プラスチック殻を加熱すると軟化が起こる。その熱可塑性プラスチック殻が軟化すると同時にガスが膨張して、前記殻にかかる圧力が増大する結果として当該微小球の体積が大きくなる。その微小球が完全に膨張すると、それの体積は元々の体積の40倍以上にまで大きくなる可能性がある。本開示で用いるに適した膨張性微小球の例には、これらに限定するものでないが、Expancel an Akzo Nobel社から商業的に入手可能な膨張性微小球であるEXPANCEL WU、EXPANCEL DU、EXPANCEL SLおよびEXPANCEL MB、およびSekisui Chemical Companyから商業的に入手可能な膨張性微小球であるADVANCELL EMが含まれる。また、商業的に入手可能であるか或は当業者に公知の他の膨張性微小球も本発明で用いるに適する。1つの態様では、そのような膨張性微小球を本PSIMPに0.1重量%から50重量%、または0.1重量%から10重量%、または1重量%から9重量%の量で存在させるが、前記重量パーセントは本組成物の総重量を基準にしたパーセントである。
【0020】
1つの態様では、本PSIMPに更にカーボンブラックも含有させる。カーボンブラック[C.A.S No.1333−86−4]は、コロイド状粒子の形態の実質的に高純度の元素状炭素である。大部分のカーボンブラックはファーネスブラックおよびサーマルブラックと呼ばれる製造工程を用いて製造されたカーボンブラックである。サーマルブラックとファーネスブラック工程は、用いられる反応槽の種類が異なることに加えて、用いられる主要な原料の性質が異なる。具体的には、ファーネスブラック工程では重質芳香族油が原料として用いられる一方、サーマルブラック工程はメタンを含有する天然ガスまた
は重質芳香族油を原料として用いることに頼っている。理論で範囲を限定することを望むものでないが、カーボンブラックは本重合体組成物中で補強剤として機能する可能性があり、その結果として、構造一体性が向上した材料がもたらされ得る。カーボンブラックは商業的に幅広く入手可能であり、それを本PSIMPに0.1重量%から13重量%、または1重量%から10重量%、または3重量%から8重量%の範囲の量で含有させてもよいが、前記重量パーセントは本組成物の総重量を基準にしたパーセントである。
【0021】
1つの態様では、本PSIMPの調製を当該スチレン系重合体をカーボンブラックおよび膨張性微小球と接触させた後にこれらの成分を例えばコンパウンド化または押出し加工などで完全に混合することで実施する。1つの態様では、前記スチレン系重合体を押出し加工機で加熱することで可塑化または溶融させた後、カーボンブラックおよび膨張性微小球と接触させて350°F未満の温度で完全に混合する。別法として、当該スチレン系重合体をカーボンブラックおよび膨張性微小球と接触させた後にその混合物を押出し加工機に導入し(例えばバルク混合などで)、その間に前記スチレン系重合体を押出し加工機に導入してもよいか、或はそれらの組み合わせを実施してもよい。
【0022】
前記膨張性微小球を膨張させて当該組成物を発泡させることができる。例えば、前記微小球の加熱および/または当該組成物の圧力低下、例えば溶融した組成物が押出し加工機を出てダイス、鋳型または他の成形工程に入る時に起こる如き圧力低下などで前記微小球を膨張させてもよい。理論で範囲を限定することを望むものでないが、前記膨張性微小球の熱可塑性プラスチック殻は押出し加工中に軟化しそして前記膨張性材料は温度上昇および/または圧力降下が理由で膨張し、それによって、その熱可塑性プラスチック殻の壁が押されて溶融したスチレン系重合体およびカーボンブラックと物理的に接触することで本PSIMPが発泡する。1つの態様では、その後、その発泡したPSIMP組成物をダイスに導入する前の押出し加工最終段階として弛緩ゾーンに通してもよく、その中でそれが冷却される。そのPSIMPを連続的に撹拌しながら150℃から210℃の範囲の温度から40℃から100℃の範囲の温度に冷却した後、ダイスに通して押出してもよい。その膨張性微小球の熱可塑性プラスチック殻が冷却時に硬化することで、その微小球はその膨張した体積を維持することができる。発泡ポリスチレン組成物の製造方法が米国特許第5,006,566号および6,387,968号(これらは各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0023】
理論で範囲を限定することを望むものでないが、化学的フォーミング剤(また化学的発泡剤としても知られる)を用いるとガスが発生し、それが当該組成物の中に連行される。次に、その発生したガスによって当該材料の中に空隙が生じ、このように、そのような材料の構造的一体性は膨張性微小球を用いて発泡させた材料(即ちPSIMP)に比べて低くなり得る。膨張性微小球は、発泡剤として作用した後に熱可塑性プラスチック殻を維持する物理的発泡剤として働き、その結果として、発泡材料の中に存在する発泡空隙空間の量が少なくなる。その上、カーボンブラックを化学的発泡剤が入っている材料に添加すると、それはその発泡剤が発生する気体1種または2種以上と反応する可能性があることでその材料の構造的一体性が更に低下する可能性もある。しかしながら、膨張性微小球を用いると、生じたガスは封じ込められていることからカーボンブラックとの反応で利用されず、従って、その材料の構造的一体性はカーボンブラックと膨張性微小球の両方の存在によって高くなり得る。
【0024】
本開示のPSIMPは適切ないずれかの方法で最終使用製品に変換可能である。その最終使用製品の生産とPSIMPの混合および/または発泡をほぼ同時に行ってもよい(例えば逐次的一体式工程ラインで)か、或はそれの生産をPSIMPの混合および/または発泡後に行うことも可能である(例えば個別の工程ライン、例えば最終使用のコンパウンド化および/または熱成形ラインで)。1つの態様では、本PSIMPを本明細書に記述
するように押出し加工またはコンパウンド化で混合および発泡させた後、その溶融させたPSIMPを成形工程(例えば鋳型、ダイス、レイダウンバー(lay down bar)など)に送り込んでPSIMPの成形を実施する。そのPSIMPの発泡を起こさせる時期は成形前、成形中または成形後であってもよい。1つの態様では、溶融させたPSIMPを鋳型の中に注入して、その中でそのPSIMPを発泡させてそれが鋳型を満たすようにすることで成形品を生じさせる。1つの態様では、本PSIMPをシートに成形した後、それにさらなる工程段階を受けさせる、例えばそれに熱成形を受けさせることなどで最終製品を生じさせる。本PSIMPを成形して生じさせることができる最終使用製品の例には、食品包装材、事務用品、プラスチック木材または代用木材、パティオデッキ材、構造支柱、積層床材組成物、高分子発泡基質および装飾面、例えばクラウンモールディングなど、耐候性屋外材料、店頭標識および表示、家庭用品および消費財、建物用断熱材、化粧品包装材、屋外代用材料などが含まれる。追加的最終使用製品は当業者に明らかであろう。
【0025】
1つの態様において、本PSIMPは曲げ弾性率が向上していることで示されるように向上した機械的特性、例えば向上した剛性などを示し得る。本明細書では、ある材料が示す曲げ弾性率は、当該材料が負荷下で変形に耐える能力の指標である。曲げ弾性率試験は、幅広い意味で、サンプル材料である梁を曲げるに要する力を測定する試験である。具体的には、梁の両端を支えながら、ある力をサンプルである梁の中心部にかける。1つの態様として、本明細書に開示するようにして調製したPSIMPが示す曲げ弾性率は、ASTM D−790またはISO 178に従って測定した時、1,000psiから10,000,000psi、または10,000psiから1,000,000psi、または100,000psiから500,000psiである。膨張性微小球およびカーボンブラックを含有させたPSIMPが示す曲げ弾性率は、膨張性微小球ではなく化学的発泡剤を用いる以外は同じに発泡させた同様な密度の組成物が示すそれに比べて20%以上、または30%以上、または35%以上高い可能性がある。
【実施例】
【0026】
本態様を一般的に記述してきたが、以下の実施例を本開示の特別な態様として本発明の実施および利点を立証する目的で示す。本実施例は例示として示すものであり、決して本請求項の明細事項を制限することを意図するものでないと理解する。
【実施例1】
【0027】
膨張性微小球およびカーボンブラックを用いるとポリスチレン組成物が示す曲げ弾性率が高くなることを調査した。具体的には、発泡剤(即ちSAFOAM FP−40またはEXPANCEL 950 MB 120)およびカーボンブラックを表1に示す量で含有して成るポリスチレン発泡組成物を調製した。各サンプルで用いた基礎樹脂はポリスチレン585であり、これはTotal Petrochemicalsから商業的に入手可能な高分子量で低メルトフローの結晶性ポリスチレンである。ポリスチレン585の典型的な物性を表2に示す。SAFOAM FP−40は、Reedy Internationalから商業的に入手可能な吸熱性の化学的核形成および発泡剤である。表1に示す加工条件に従い、WELEXミニシートラインを用いることで、各サンプル組成物毎に20ミル(出発)ゲージのシートを作成した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
前記発泡剤を添加した後のシートをそれの起こるべくして起こる寸法にまで発泡させた。各シートの密度の測定を下記を除いてASTM D 1622に従って実施した:サンプルを85mm x 85mm x(起こるべくして起こった寸法)の発泡体として採取した後、存在するスキン層と一緒に密度を見かけ密度として測定した。そのシートの曲げ弾性率を縦方向(MD)および横方向(TD)の両方に関してASTM D−790に従って測定した。各サンプルに関する両方の値に加えて前記値の平均を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
曲げ弾性率をカーボンブラック充填率の関数としてプロットした図を図1に示す。発泡剤を全く存在させなかった固体状シートでは、カーボンブラックが5%の時(サンプル2)に示した曲げ弾性率の方がカーボンブラックが15%の時(サンプル3)および対照(サンプル1)のそれよりも若干低かったが、化学的発泡剤を用いた発泡体が示した曲げ弾性率はカーボンブラックの濃度を高くするにつれて徐々に低下した(サンプル4から6)。EXPANCELを1%とカーボンブラックを5%にした時の発泡体(サンプル8)が示した曲げ弾性率の方がカーボンブラックを用いなかった発泡体(サンプル4または7)が示したそれよりも約35%高かった。カーボンブラックを存在させた時にはEXPANCEL発泡体が示した曲げ弾性率の方がSAFOAM FP−40を含有させた発泡体が示したそれよりも高かった。カーボンブラックを用いない時には、両方の発泡剤とも同じ曲げ弾性率をもたらした。これらの結果は、カーボンブラックと膨張性微小球の組み合わせを用いて発泡させたポリスチレンサンプルが平均曲げ弾性率の向上を示したことを立証している。
【実施例2】
【0033】
実施例1で得たサンプル4−9が示す断面画像を光顕微鏡(OM)を用いて得て、それらを図2から7に示す。サンプル4−9はポリスチレン585を基礎樹脂として含有しかつSAFOAM FP−40、EXPANCELおよびカーボンブラックを表4に示す量で含有して成る。
【0034】
【表4】

【0035】
図2に、化学的発泡剤SAFOAM FP−40を用いて調製した発泡ポリスチレンサンプル4が示した画像を示す。図2を参照して、その画像は、材料を横切る間隙を有する相互連結通路が数多く存在することを示している。そのような通路の1つを参照矢印10で示す。理論で範囲を限定することを望むものでないが、その発泡ポリスチレンにそのような通路が生じたことは化学的発泡剤であるSAFOAM FP−40の作用に起因する。図3に、EXPANCEL膨張性微小球を1%に用いて発泡させた同じポリスチレン基礎樹脂(サンプル7)が示した画像を示す。この材料にはEXPANCEL膨張性微小球が全体に渡って分散しているが、しかしながら、化学的発泡剤を用いて製造した発泡ポリスチレンとは異なり、その微小球はその材料の中に通路を形成するように連結することは
実質的にない。図3を参照して、EXPANCEL微小球間に相互連結部(参照矢印20で示す如き)がいくらか観察されはするが、その数は化学的発泡剤を用いた時に観察されたそれよりもずっと少ない。図4に、EXPANCELを1%とカーボンブラックを5%含有させて発泡させたポリスチレン(サンプル8)が示した画像を示す。その発泡させたポリスチレンもEXPANCEL微小球が材料全体に渡って離散的場所に分散していることを示しているが、しかしながら、微小球間の相互連結はほとんど全く見られない。化学的発泡剤SAFOAM FP−40を1%とカーボンブラックを5%用いて調製した材料は、この材料全体に渡って相互連結通路が生じたことを示しており(図5、サンプル5)、このことは、化学的発泡剤をカーボンブラックの存在無しに用いた時の観察(図2)と同様であった。SAFOAM FP−40を1%存在させてカーボンブラックの量を15%にまで高くすると通路の相互連結の数が減少したように見える(図6、サンプル6)が、しかしながら、それでも、その材料にはいくらか相互連結した大型の通路が観察される。図7に、カーボンブラックを15%とEXPANCEL膨張性微小球を1%用いて調製した発泡ポリスチレン(サンプル9)が示した画像を示す。その結果は、カーボンブラックの存在量を15%未満にしそしておよびEXPANCELを1%存在させて発泡させたポリスチレン材料は相互連結部をほとんど持たない離散的膨張性微小球を含有して成るように見える構造をもたらす(図4を参照)一方で化学的発泡剤はカーボンブラックの存在有り無しで材料全体に渡って相互連結した間隙を有する通路を形成することを立証している。EXPANCELを1%存在させてカーボンブラックのパーセントを15%まで高くすると結果として微小球間の相互連結部の数が多くなる。理論で範囲を限定することを望むものでないが、化学的発泡剤を用いた時に生じる間隙を有する相互連結通路によってその発泡ポリスチレンの構造的一体性がカーボンブラックと膨張性微小球を用いて調製した発泡ポリスチレンに比べて低下する可能性がある。
【0036】
いろいろな態様を示して記述してきたが、当業者は本開示の精神および教示から逸脱することなくそれらの修飾を行うことができるであろう。本明細書に記述する態様は単に例示であり、限定を意図するものでない。本明細書に開示した態様のいろいろな変形および修飾が可能であり、それらは本開示の範囲内である。数値の範囲または限界を明らかに記述する場合、そのように明示する範囲または限界はその明確に記述した範囲または限界の範囲内に入る同様な大きさの逐次範囲または限界を包含すると理解されるべきである(例えば約1から約10は2、3、4などを包含、0.10以上は0.11、0.12、0.13などを包含、等々)。用語“場合により”をある請求項のいずれかの要素に関して用いる場合、その主題要素が必要であるか或は必要でないことを意味することを意図する。両方の可能性とも本発明の範囲内であることを意図する。より幅広い用語、例えば含んで成る、包含する、有するなどの使用は、より狭い用語、例えばから成る、本質的にから成る、実質的に構成されるなどを支援するものであると理解されるべきである。
【0037】
従って、この上で行った説明で保護の範囲を限定するものでなく、以下の請求項によってのみ限定し、その範囲は本請求項の主題事項の相当物の全部を包含する。請求項の各々および全てを本開示の態様として本明細書に組み入れる。このように、本請求項はさらなる説明であり、本明細書に開示した態様への追加である。本明細書に示す引用文献の考察は、それが本開示に対する従来技術であることを認めるものでなく、特に公開日付が本出願の優先日の後であり得る如何なる文献も本開示に対する従来技術であることを認めるものでない。本明細書に引用した特許、特許出願および公開の開示は、それらが本明細書に示す例、手順または他の詳細を補足するそれらを与える度合で引用することによって本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンの製造方法であって、
ポリスチレンをカーボンブラックおよび膨張性微小球と接触させることで組成物を生じさせ、そして
前記微小球を膨張させることで前記組成物を発泡させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記接触および膨張を押出し加工またはコンパウンド化中に実施する請求項1記載の方法。
【請求項3】
更に前記発泡させた組成物を製品に成形することも含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項4】
更に前記発泡させた組成物をシートに成形しそして前記シートを製品に熱成形することも含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ポリスチレンが共重合体である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ポリスチレンが耐衝撃性ポリスチレンである請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記膨張性微小球を前記組成物の総重量を基準にして0.1重量%から50重量%の量で存在させる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記カーボンブラックを前記組成物の総重量を基準にして0.1重量%から13重量%の量で存在させる請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記製品が示す曲げ弾性率の方が前記膨張性微小球の代わりに化学的発泡剤を用いて製造された以外は同じ発泡組成物および製品が示すそれよりも高い請求項3記載の方法。
【請求項10】
前記シート材料が示す曲げ弾性率の方が前記膨張性微小球の代わりに化学的発泡剤を用いて製造された以外は同じ発泡組成物および製品が示すそれよりも高い度合が20%以上である請求項4記載の方法。
【請求項11】
ポリスチレン、カーボンブラックおよび膨張性微小球を含有して成る発泡組成物。
【請求項12】
前記ポリスチレンが共重合体である請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリスチレンが弾性重合体を含んで成る請求項11記載の組成物。
【請求項14】
前記弾性重合体が共役ジエンを含んで成る請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記カーボンブラックが組成物の総重量を基準にして0.1重量%から13重量%の量で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項16】
前記膨張性微小球が組成物の総重量を基準にして0.1重量%から50重量%の量で存在する請求項11記載の組成物。
【請求項17】
請求項11記載の組成物で構成された製品。
【請求項18】
食品包装材、事務用品、プラスチック木材もしくは代用木材、パティオデッキ材、構造
支柱、積層床材組成物、高分子発泡基質および装飾面、耐候性屋外材料、店頭標識および表示、家庭用品および消費財、建物用断熱材、化粧品包装材および屋外代用材料を包含する請求項17記載の製品。
【請求項19】
1,000psiから10,000,000psiの曲げ弾性率を示す請求項17記載の製品。
【請求項20】
前記膨張性微小球の代わりに化学的発泡剤を用いて製造された以外は同じ発泡組成物および製品が示す曲げ弾性率よりも少なくとも20%高い曲げ弾性率を示す請求項17記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534273(P2010−534273A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518282(P2010−518282)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069857
【国際公開番号】WO2009/014922
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】