説明

ポリスルホンポリマーを含有する微細構造化フィルム

【課題】向上された熱安定性、光再利用能力、および複製忠実パーセントを提供する透明微細構造化ポリマーフィルムの提供。
【解決手段】本発明は、その少なくとも1面に微細構造を含むフィルムに関し、そのフィルムはポリスルホンポリマーを含む。かかるフィルムは向上された熱安定性、光再利用能力、および複製忠実度を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1面にポリスルホン微細構造を含むポリマーフィルムに関する。詳細には、LCDディスプレイ装置などにおいて、光エネルギーを指向するのに好適な複数のマイクロメートルサイズの一体型ポリスルホンフィーチャーを含む光方向変換ポリマーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスルホン樹脂フィルムは、一般に熱溶解押出しおよび溶液キャスト法によって製造される。これらのフィルムは、光学特性、機械的強度特性、電気特性、透明度、耐熱性、耐燃性などに優れていることが知られている。これらの優れた特性のため、このフィルムは延伸され、例えば、液晶ディスプレイ装置のための光学フィルタ(例えば移相子など)として用いられている。米国特許第5611985号(コバヤシ等)は、溶液キャスト法を用いることによって優れた透明度を有する高品質ポリスルホン樹脂フィルムを製造する生産性の高い方法、および優れた光学特性を有する高品質位相差フィルムを製造する生産性の高い方法を記載している。
【0003】
芳香族ポリスルホン樹脂は、耐熱性、耐燃性、耐薬品性などに優れているだけでなく、金属、ガラス、セラミック、種々の樹脂、および炭素化合物をはじめとする材料に対する接着性も良好であるため、様々な被覆物質、接着剤、および複合材料の構成材料として用いられている。この樹脂の利用においては、例えば、樹脂の有機溶媒溶液を基体に塗布し、次いで分子量を増大する、すなわちさらに重合するためにそれを熱処理に付し、その後、不活性化する。
【0004】
芳香族ポリカーボネートは、広く商業的に使用されているよく知られた工業用熱可塑性物質である。芳香族ポリスルホンカーボネートは特許文献に記載されており、一般的に芳香族ポリカーボネートと組み合わせて用いられる。米国特許第3737409号において、組成物は、(a)ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、(b)2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニルプロパン)、および(c)カーボネート前駆体の反応生成物のコポリマーを含む。これらの組成物は、成形用途、押出し用途、ならびにフィルムおよび繊維の製造に用いられることが意図されている。
【0005】
ポリスルホンポリマーは、液晶ディスプレイでの使用が提案されている。ガラス基材は光学特性に優れ、研磨されたときに表面の平滑性が非常に高いため、液晶ディスプレイのための透明電極基材として用いられている。しかしながら、ガラス板は密度が高く、その脆弱性のためにそれ自体を十分に厚くなければならない。したがって、ガラス基材上の液晶ディスプレイをコンパクトで軽量かつ耐衝撃性にするのは困難である。ガラス基材を含むこれらの装置の不都合を解消する方法として、高分子量ポリマーフィルムの使用が提案されている。
【0006】
米国特許第6433071号(アライ等)は、340℃で測定された溶融粘度500Pa・s未満および剪断速度1000/秒を有する100重量部の芳香族ポリスルホン樹脂に対して、流れ温度250から320℃を有する5から50重量部の液晶ポリエステル樹脂を含む芳香族ポリスルホン樹脂組成物、ならびにその成形品を記載している。この組成物は、その成形品の優れた機械的特性および耐熱性を損なうことなく、成形において優れた流動性を示す。
【0007】
米国特許第6013716号(ノムラ等)は、表面がウレタン樹脂で処理されている5から240重量部のガラス繊維と合成された100重量部の芳香族ポリスルホン樹脂を含む芳香族ポリスルホン樹脂組成物を記載している。この芳香族ポリスルホン樹脂組成物は、優れた耐熱性、優れた機械的特性、成形処理時の高熱安定性を有し、得られる成形品に吸蔵される気体が低レベルであることから、電子部品および電気部品を含む耐熱性使用の材料として極めて有用である。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0212989号(カシワギ等)は、有機エレクトロルミネセンス要素の集光プレートとして用いるのに好適である、透明フィルムの表面に複数の角錐型の凸部または凹部を有するレンズアレイシートを開示している。米国特許出願公開第2005/0167863号は、放射エネルギー源で直接または間接的にシートの少なくとも一部を加熱し、シートの加熱部分にツールを押し付け、それによってシートの表面をパターン化することを含む、シート材料にエンボス加工を施す方法を開示している。
【0009】
ポリスルホンポリマーは、平滑な連続シートを形成するために、一般に溶媒キャストされる。熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂は、通常有機溶媒の溶液として用いられる。この溶液を調製するために用いられる有機溶媒は、溶媒がその樹脂を溶解する限り特に限定されないが、通常は塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、キノリン、アニリン、o−クロロフェノール、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、アニソール、γ−ブチロラクトン、ジオキソランなどが有機溶媒として用いられる。
【0010】
芳香族ポリスルホン樹脂は非晶質であるため、等方性を有し、成形収縮率が低い。さらに、ポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテル−ケトンなどをはじめとする高耐熱性樹脂よりガラス転移点が高いため、芳香族ポリスルホン樹脂はそれらの樹脂と比べて、より高い温度まで強度、弾性率、耐クリープ性などの劣化をより低く抑える。したがって、芳香族ポリスルホン樹脂は、電子部品の材料として首尾よく用いることができる。
【0011】
芳香族ポリスルホン樹脂は、比較的高い溶融粘度を有するため、小型で複雑な形状を有する電子部品、または薄肉部位を有する電子部品の射出成形に用いられるとき、より高い成形温度、射出圧力、および成形速度を必要とする。ポリマーシートに小さく精密な光学構造を形成することは、電子ディスプレイシステム、例えばOLED、エレクトロルミネセンス、および液晶ディスプレイなどにおいて光エネルギーの方向を変えるのに有用であることがよく知られている。米国特許第6721102号、米国特許出願公開第2001/0053075号、および米国特許第6027220号に提案されている精密小型光学構造の連続形成は、商業的に入手可能な高分子量ポリスルホンでは困難である。連続ポリスルホン溶融押出し成形プロセスにおいて、連続光学構造を形成するために必要とされる圧力と温度を維持するのは困難であることが見出されている。ポリマーシートの表面に精密小型光学構造を形成するために、ポリスルホンポリマーを用いることができれば望ましい。
【特許文献1】米国特許第5611985号明細書
【特許文献2】米国特許第3737409号明細書
【特許文献3】米国特許第6433071号明細書
【特許文献4】米国特許第6013716号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0212989号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0167863号明細書
【特許文献7】米国特許第6721102号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2001/0053075号明細書
【特許文献9】米国特許第6027220号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
向上された熱安定性、光再利用能力、および複製忠実パーセントを提供する透明微細構造化ポリマーフィルムを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、その少なくとも1面に微細構造を含むフィルムを提供し、前記フィルムは、ポリスルホンポリマーを含む。かかるフィルムは、向上した熱安定性、および光再利用能力を示す。
【0014】
添付の図面と併せて読むことにより、本発明は以下の詳細な説明から最もよく理解される。種々のフィーチャーは必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが強調される。
【0015】
本発明の一目的は、ポリスルホンポリマーを含む微細構造化フィルムを提供することである。他の目的は、微細構造化光指向性フィルムを提供することである。さらなる目的は、高い複製忠実度を有する微細構造化光指向性フィルムを提供することである。
【0016】
本発明のこれらの目的および他の目的は、少なくとも1面上に微細構造を含むフィルムであって、前記フィルムがポリスルホンを含むフィルムによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、背面投射型ディスプレイ装置、例えば液晶ディスプレイ装置などに通常用いられる、液晶ディスプレイバックライトアセンブリの光方向変換フィルムを提供する。さらに本発明は、バックライト源の光方向変換を提供しながら、高い光透過率を有する。高い透過値は液晶ディスプレイをより明るくするか、または明るさのレベルを同じに保つことにより、バックライトの消費電力が低減し、それによってノート型コンピュータに一般的である電池式液晶装置の寿命を延ばすことができるため、光方向変換フィルムの高い透過率は液晶ディスプレイ装置にとって特に重要である。方向変換フィルムに用いられるポリマー材料は非晶質であり、本質的に主として結晶質であるポリマー材料より、一般に光学的に透明である。本発明の構造化された方向変換フィーチャーは、多くの液晶ディスプレイ装置に求められる所望の方向変換性を達成するために容易に変更することができ、したがって本発明の材料は、液晶ディスプレイ市場の急速に変化する製品の要件に対応することができる。
【0018】
本発明に用いられるポリマー材料は、一般にUVキャストおよび硬化ポリマー系を含む従来技術の光方向変換フィルムに比べて、ディスプレイ装置において向上された熱安定性を提供する。熱に誘発される波形は、動作中にディスプレイ装置に存在する熱勾配に直接起因するものである。従来技術の光指向性フィルムは一般にポリマー材料から製造されるため、熱勾配によって、望ましくないポリマーフィルム波形をもたらす熱膨張を生じることになる。本発明のポリマー材料は、比較的低い熱膨張係数を有し、したがって背面照射ディスプレイシステムにおいて光方向変換フィルムの波形を低減する。
【0019】
本発明に用いられるポリマー材料は、ポリカーボネートなどの従来技術の材料と比べて高いTgを有する。より高いTgは、背面照射LCD TVの厳しい条件により好適な光学フィルムを提供する。背面照射LCD TVシステムは、バックライトユニットに10から30の冷陰極蛍光灯を用いることが多く、これは典型的に1つまたは2つの冷陰極蛍光灯を含有するラップトップ型コンピュータのバックライトアセンブリと比べて、より高い動作温度を生じる。本発明に用いられるポリマー材料の比較的高いTgは、背面照射LCD TVに用いられる光学フィルムに向上した機械的安定性および熱安定性を提供する。温度サイクル(LCD TVのオン状態とオフ状態との温度差)、振動、光学フィルム間の磨耗、およびフィルムのたわみに関して、従来技術の材料と比べて改善が認められた。
【0020】
光方向変換フィルムの弾性率および耐スクラッチ性は、従来技術のキャストコートされたポリマー光方向変換フィルムを超えてより改善されており、液晶装置の組み立ておよび動作時に、より強固な光方向変換フィルムを提供する。本発明の非晶質材料は一般に硬く、耐スクラッチ性であり、したがってこれらの材料は硬い表面を有する他の光方向変換フィルムと組み合わせて用いることができる。
【0021】
この微細構造化フィルムは高い複製忠実度を有する。高い複製忠実度は、ディスプレイ装置に用いられるとき、ミクロフィーチャー化された光方向変換フィルムのために必要な要件である。従来技術のポリスルホンポリマーは比較的高い分子量を有し、比較的高い分子量は低い複製忠実度をもたらし、高い複製忠実度を有するポリマーフィルムより光学効率の低い光方向変換フィルムを提供することになる。本発明は、連続パターン化プロセスにおいて複製忠実度を向上するためにより低い分子量を有するポリマーを提供し、同時に光方向変換フィルムに必要とされる機械的、光学的、および熱的特性を提供する。このフィルムはポリマーの単一構造であるため、カール(curl)する傾向が低く、屈折率の異なる層間の損失がほとんどない。フィルムが2層からなる場合、その2層は典型的に環境条件(例えば、熱または高湿度)の変化に異なって反応するため、フィルムはカールする傾向がある。カールは、ディスプレイのフィルムに、ディスプレイを通して見ることができるワーピングをもたらし、且つカールはポリマーフィルムの光学性能を低下する傾向があるため、LCDの光方向変換フィルムには望ましくない。これらの利点および他の利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0022】
本明細書において使用される、「透明」という用語は、著しく偏位または吸収することなく放射を透過する能力を意味する。本発明では、「透明」材料は、90%より大きい分光透過率を有する材料として定義される。「光」という用語は、可視の光エネルギーを意味する。「ポリマーフィルム」という用語は、ポリマーを含むフィルムを意味する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、およびポリマーブレンドを意味する。「微細構造」という用語は、ポリスルホンフィルム表面上の物理的なポリスルホンの凸部または凹部を意味する。微細構造は、1から100マイクロメートルの平均粗さを有する。微細構造は対称であっても非対称であってもよく、ポリスルホンフィルムの表面にランダムに分布しても、表面全体に規定されたパターンでもよい。
【0023】
光学フィルムに関しては、個別の光学的要素とは、光学フィルムの凸部または凹部でありうる、境界明りょうな形状の要素を意味する。個別の光学的要素は、光学フィルムの長さおよび幅に比べて小さい。「曲面」という用語は、少なくとも1面に湾曲を有するフィルム上の三次元要素を示すために用いられる。「くさび形要素」は、1以上の傾斜面を含み、それらの表面が平面および曲面と組み合わせであってもよい要素を示すために用いられる。「光学フィルム」という用語は、透過された入射光の性質を変える薄いポリマーフィルムを示すために用いられる。例えば、方向変換光学フィルムは、1.0を超える光学利得(optical gain)(出力/入力)を提供する。「光学利得」は、所望の方向(通常はフィルム面に垂直方向)の出力光強度を入力光強度で割ったものとして定義される。「軸上利得」(On−axis gain)は、フィルム面に垂直の出力光強度を入力光強度で割ったものとして定義される。「方向変換」は、入射光エネルギーの方向を変える光学フィルムの光学特性として定義される。
【0024】
本明細書において使用される、「複製忠実度」という用語は、微細構造の複製品質を定量化するために用いられる。複製忠実度は、マスターツールに含有される寸法測定を、複製材料の同じ寸法と比較する。複製忠実率は下式で算出することができる。
複製忠実度%=(複製材料寸法Di/ツール寸法Di)×100
対象となる典型的な微細構造寸法には、微細構造の幅、高さ、長さ、頂点幅、曲率半径、および表面粗さが含まれる。ポリスルホンポリマーの連続溶融複製の場合、マスターツールとして、パターン化された金属ローラーが用いられる。
【0025】
例示となる実施形態の光方向変換層は、典型的に、フィルムを出る光の角度分布が、フィルムに入射する光角度分布とは異なるように、フィルムを通る光を再分布する実質的に透明な、光学フィルムまたは基体である。典型的に光方向変換フィルムは、フィルムを出る光線のフィルム/空気界面の角度を変えて、溝の屈折面と垂直な面を移動する入射光分布の成分をフィルムに入る光と比べて再分布する、プリズム溝、レンズ状溝、または角錐をフィルムの光出射面に備えている。かかる光方向変換層は、画像をより明るくし、コントラストをより高くするために、例えば液晶ディスプレイ、ラップトップ型コンピュータ、ワードプロセッサ、航空電子工学用ディスプレイ、携帯電話、PDA、直接照射LCD TVなどに用いることができる。光方向変換フィルムの例には、これに限定されるものではないが、回転フィルム、光拡散体、反射偏光子、光平行化フィルム、および光抽出フィルムが含まれる。
【0026】
非晶質ポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)法で生成される標準サーモグラムに融解転移を示さないポリマーである。この方法(当業者によく知られている)に従って、少量のポリマー試料(5〜20mg)を小さいアルミニウムパンに密封する。次いで、このパンをDSC装置(例えば、Perkin Elmer 7 Series Thermal Analysis System)に入れ、室温から300℃まで、10〜20℃/分の速度で走査して、熱応答を記録する。明確な吸熱ピークが融解を示す。かかるピークの不在は、試験ポリマーが機能的に非晶質であることを示している。サーモグラムの段階的変化は、ポリマーのガラス転移温度を表す。
【0027】
ポリスルホンポリマー材料の分子量を、3つのPolymer Laboratories Plgel mixed−Cカラムを用いて、非抑制THFで粘度測定検出し、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)で分析した。絶対分子量を、粘度データ、および580(logM=2.76)から2,300,000(logM=6.36)の狭い分子量分布のポリスチレン標準で作製したユニバーサル較正曲線から算出した。カラムセットの較正範囲を超えて現われるポリマー分布の部分は、定量の目的には用いるべきではない。縦座標「Wn(logM)」は、対数尺で所与の分子量のポリマー重量分率に比例する。数平均分子量(M)、重量平均分子量(M)、z平均分子量(M)、および30℃での、THF中dL/g単位の固有粘度はSEC概略報告で提供される。分布および分子量平均は、ガウシアンバンドブロードニング関数(Gaussian band−broadening function)を仮定して、軸方向分散に対して補正した。上述の方法を用いる広い分布のポリスチレン標準の正確なMは±5%である。
【0028】
熱に誘発される波形が少なく、複製忠実度の高い微細構造化フィルムを生成するために、少なくとも1面上に微細構造を含むフィルムであって、該フィルムがポリスルホンを含むフィルムが好ましい。ポリスルホンポリマーは、従来技術の光方向変換ポリマーと比べて、比較的低い熱膨張係数(CTE)を有することが見出されている。さらに、ポリスルホンは、ポリカーボネートポリマー(光方向変換フィルムを形成するために典型的に用いられる)と比べて、より高い耐磨耗性、より高い機械的モジュラス、より高いT、および低い水分取り込み量を有し、そのためディスプレイバックライトアセンブリ、特に液晶バックライトアセンブリの厳しい条件に、より良好に耐え得る光学フィルムをもたらす。
【0029】
ポリスルホン、すなわちPSUは、1965年にUnion Carbideによって紹介された熱可塑性材料である。ポリスルホンは、靭性、剛性、高強度かつ透明であり、−100℃から+150℃でその特性を保つ。ポリスルホンは、非常に高い寸法安定性(沸騰水又は+150℃の空気または蒸気に暴露された場合のサイズ変化は0.1%未満に下がる)を有する。そのガラス転移温度は185℃である。化学的には、ポリスルホンはC2722Sの反復単位からなる。ポリスルホンは、ビスフェノールAとビス(4−クロロフェニル)スルホンを重合し、塩化水素を除去してポリエーテルを形成する工程によって生成される。
【0030】
ポリスルホンは、pH2から13の範囲で、鉱酸、アルカリ、および電解質に極めて耐性である。ポロスルホンは酸化剤に耐性であり、したがって漂白剤で清浄することができる。ポリスルホンは、界面活性剤および炭化水素油にも耐性である。ポリスルホンは、低極性有機溶媒(例えば、ケトンおよび塩素化炭化水素)、芳香族炭化水素には耐性ではない。機械的には、ポリスルホンはポリカーボネートと比べて、より高い圧縮抵抗性を有し、高圧下での使用が可能となる。ポリスルホンは、ガラス繊維で強化することができる。得られた複合材料は、引っ張り強さが2倍であり、そのモジュラスは3倍に増大する。
【0031】
ポリスルホンは、FDA承認装置で用いることができる。現在、医療装置、食品加工、給餌システム、ならびに自動車および電子産業において用いられている。ポリスルホンは、溶融加工可能なすべての熱可塑性物質のなかで最も高い使用温度を有する。ポリスルホンは高温に耐性であるため、通常のように難燃剤の添加により強度を損なうことなく、難燃剤の役割が与えられる。ポリスルホンは加水分解安定性が高いため、オートクレーブおよび蒸気滅菌を必要とする医療用途、並びに高い使用温度が求められるディスプレイ用途において用いることができる。
【0032】
好ましくは、微細構造化ポリスルホン光学フィルムは、光方向変換フィルムを含む。光方向変換フィルムは入射光の方向および角度拡散を変えるために用いられ、背面照射ディスプレイシステム、例えばLCDおよび投射型ディスプレイなどに広く用いられている。ポリスルホンポリマーは、従来技術のポリカーボネートポリマーより、より低いCTE、より高い機械的モジュール、およびより高い耐摩耗性を有し、ポリカーボネートと比べてより強固な光方向変換フィルムを提供する。さらに、ポリスルホンポリマーは、550ナノメートルで測定された屈折率1.63から1.66を有する。1.63から1.66の屈折率は、一般に1.59の屈折率を有するポリカーボネートおよびアクリル酸ポリマーと比べて、軸上利得の改善された典型的な光方向変換フィルムを提供する。好ましい光方向変換フィルムは、拡散フィルム、光平行化フィルム、光回転フィルム、再帰反射フィルム、および透過反射フィルムを含むリストから選択される。
【0033】
本発明に有用なポリスルホンは、下記の式(I)で表される反復基を有することを特徴とし、末端基は出発原料によって決まり、
【0034】
【化1】

【0035】
式中、各RおよびR’はそれぞれ、H、又はアルキル基、例えばメチルまたはエチルなどのアルキル基、又はフェニル基であり、
各R乃至Rはそれぞれ独立して、水素、又は独立して選択された1以上の環置換基を表す。
【0036】
好適には、RおよびR’はメチル基であり、各R乃至Rはそれぞれ水素を表す。末端基は反応物によって決まり、背景技術の参考文献に記載されており、製造方法は米国特許第5,611,985号に記載されている。
【0037】
他に特に記載のない限り、「置換された」または「置換基」という用語の使用は、水素以外の任意の基または原子を意味する。他に記載のない限り、置換可能な水素を含有する基、化合物、または式が言及されるとき、非置換形態だけでなく、その置換基が実用に必要とされる特性を損なわないならば、本明細書に記載のとおり1以上の任意の基でさらに置換された形態をも包含することも意図される。好適には、置換基はハロゲンであってよく、または炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、または硫黄の原子によって分子の残部と結合していてもよい。置換基は、例えば、ハロゲン、例えばクロロ、ブロモ、またはフルオロなど;ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシル;又はさらに置換されていてもよい基、例えば直鎖または分枝鎖、又は環状アルキルを含むアルキル、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t−ブチル、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)プロピル、シクロヘキシル、およびテトラデシルなど;アルケニル、例えばエチレン、2−ブテンなど;アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2−メトキシエトキシ、sec−ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、および2−ドデシルオキシエトキシなど;アリール、例えばフェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、ナフチルなど;アリールオキシ、例えばフェノキシ、2−メチルフェノキシ、α−またはβ−ナフチルオキシ、および4−トリルオキシなど;カルボンアミド、例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチル−フェノキシ)アセトアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α−(3−ペンタデシルフェノキシ)−ヘキサンアミド、α−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシ)−テトラデカンアミド、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−5−テトラデシルピロリン−1−イル、N−メチルテトラデカンアミド、N−スクシンイミド、N−フタルイミド、2,5−ジオキソ−1−オキサゾリジニル、3−ドデシル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリル、およびN−アセチル−N−ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5−(ジ−t−ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p−ドデシル−フェニルカルボニルアミノ、p−トリルカルボニルアミノ、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−メチル−N−ドデシルウレイド、N−ヘキサデシルウレイド、N,N−ジオクタデシルウレイド、N,N−ジオクチル−N’−エチルウレイド、N−フェニルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド、N−フェニル−N−p−トリルウレイド、N−(m−ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N−(2,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−N’−エチルウレイド、およびt−ブチルカルボンアミドなど;スルホンアミド、例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トリルスルホンアミド、p−ドデシルベンゼンスルホンアミド、N−メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N−ジプロピル−スルファモイルアミノ、およびヘキサデシルスルホンアミドなど;スルファモイル、例えばN−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−[3−(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N−メチル−N−テトラデシルスルファモイル、およびN−ドデシルスルファモイルなど;カルバモイル、例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N−メチル−N−テトラデシルカルバモイル、およびN,N−ジオクチルカルバモイルなど;アシル、例えばアセチル、(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p−ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3−ペンタデシルオキシカルボニル、およびドデシルオキシカルボニルなど;スルホニル、例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2−エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4−ノニルフェニルスルホニル、およびp−トリルスルホニルなど;スルホニルオキシ、例えばドデシルスルホニルオキシ、およびヘキサデシルスルホニルオキシなど;スルフィニル、例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4−ノニルフェニルスルフィニル、およびp−トリルスルフィニルなど;チオ、例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、およびp−トリルチオなど;アシルオキシ、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p−ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチルカルバモイルオキシ、およびシクロヘキシルカルボニルオキシなど;アミン、例えばフェニルアニリノ、2−クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミンなど;イミノ、例えば1(N−フェニルイミド)エチル、N−スクシンイミド、または3−ベンジルヒダントイニルなど;ホスフェート、例えばジメチルホスフェート、およびエチルブチルホスフェートなど;ホスファイト、例えばジエチルホスファイト、およびジヘキシルホスファイトなど;それぞれ置換されていてもよく、酸素、窒素、および硫黄からなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子と炭素原子とからなる3から7員複素環を含有する複素環基、複素環オキシ基、または複素環チオ基、例えばピリジル、チエニル、フリル、アゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリジノニル、キノリニル、イソキノリニル、2−フリル、2−チエニル、2−ベンゾイミダゾリルオキシ、または2−ベンゾチアゾリルなど;第四級アンモニウム、例えばトリエチルアンモニウムなど;ならびにシリルオキシ、例えばトリメチルシリルオキシなどであってよい。
【0038】
所望であれば、置換基はそれ自体、記載されている置換基で1回以上さらに置換されていてもよい。
【0039】
本発明のポリスルホンポリマーは、好ましくは27,000未満、より好ましくは5,000〜21,000の重量平均分子量を有するポリスルホンポリマーを含む。ポリマーの複製忠実度は、著しく分子量の低い形態のポリスルホンを用いることによって向上されることが見出されている。典型的な商業的に入手可能なポリスルホンは、40,000から100,000の重量平均分子量を有する。27,000未満の重量平均分子量を有する型のポリスルホンの形態を用いることによって、63,000の重量平均分子量を有する商業的に入手可能な形態のポリスルホンと比べて、溶融キャスト複製プロセスにおいて高い複製忠実度が得られた。さらに、より分子量の低いポリスルホンは、商業的に入手可能な形態のポリスルホンと比べて、高い複製忠実度を得るために必要とされる温度および圧力を著しく低減した。複製プロセスにおける温度および圧力の低減は、微細構造パターン化ツールの寿命を著しく向上させることが明らかとなっている。さらに、高分子量ポリスルホンからフィーチャーを形成するために用いられる高い複製圧力は、多くの場合、望ましくないポリマーの複屈折、および望ましくない機械的不安定性、例えば残留応力、またはエンボス加工の場合には、フィルムにカールを起こし得る望ましくない応力勾配をもたらすことが見出されている。4,000未満の重量平均分子量を有するポリスルホンは、望ましくない機械的特性の損失および脆化をもたらす。
【0040】
好ましくは、本発明のフィルムは、80%より高い、より好ましくは90%より高い、最も好ましくは95%より高い複製忠実度を有する。LCDディスプレイ装置に用いられる光方向変換微細構造には、多くの場合高い複製忠実度が必要とされる。一般により高い複製忠実度から、より高性能のフィルムが得られ、より高い複製忠実度は、低分子量のポリスルホンポリマーを使用することによって著しく向上する。例えば、80%と90%複製された(微細構造の高さ)90度プリズム方向変換フィルムとの軸上利得の差異は、15%ほどにもなり得る。軸上輝度の15%の増大は、LCDディスプレイの輝度の増大において非常に重要である。
【0041】
本発明の一実施形態において、光学フィルムは、光方向変換フィルムである。ポリスルホンを含む光方向変換フィルムは、光学効率、機械的モジュラス、CTE(熱膨張係数)、および耐摩耗性に関して、ポリカーボネートまたはアクリル酸ポリマーを含む従来技術の光方向変換フィルムより優れている。本発明の一実施形態において、光方向変換構造は、光学フィルムと一体化している。一体化光学フィーチャーは、フィルムと一体化していない光方向変換構造と比べて光学的に有効であるので好ましい。さらに、一体化構造はフィルムにしっかりと付着している傾向にあり、したがって容易にフィルムから外れない。本発明の一体化フィーチャーはさらに、透過光の効率的な平行化を提供する。本発明の一実施形態において、好ましい微細構造は、稜線を形成する2つ以上の面を有し、平行化フィルムの底部に対して浅い角度でフィーチャーに入る光を再利用することによって、光の効率的な平行化を提供することが明らかとなっている。
【0042】
一体化フィーチャーの深さは、好ましくは10から50マイクロメートルである。湾曲した一体化フィーチャーの深さは、湾曲一体化フィーチャーの頂上部から湾曲一体化フィーチャーの底部までを測定する。8マイクロメートル未満の深さは、8マイクロメートルより大きい一体化フィーチャーと比べてフィーチャーの頂点領域に特にかかわる非パターン化領域の量が多くなるため、輝度の低い平行化フィルムをもたらす。55マイクロメートルを超える深さを有するフィーチャーは、大きいフィーチャーを形成するためには一般に、より高圧が必要とされるため、製造が困難である。
【0043】
一体化フィーチャーは、好ましくは20から100マイクロメートルの幅を有する。前記要素が130マイクロメートルを超える幅を有するとき、それらは液晶ディスプレイを通して観察者が見ることができるほど大きくなり、ディスプレイの品質を損なう。要素が12マクロメートル未満の幅を有するとき、フィーチャーの稜線の幅がフィーチャーの幅の大部分を占める。この稜線は典型的に平坦化され、要素の残部と同じ光成形特性を持たない。この要素の幅に対する稜線の幅の増大は、フィルムの性能を低下させる。より好ましくは、湾曲一体化フィーチャーは、15から60マイクロメートルの幅を有する。この範囲は良好な光成形特性を提供し、観察者がディスプレイを通して見ることができないことが明らかとなっている。あるディスプレイ装置の設計に用いられる特定の幅は、部分的に、その液晶ディスプレイの画素ピッチに依存する。要素の幅は、モアレ干渉を最小限にする一助となるように選択されるべきである。
【0044】
突き出ている頂上部に沿って測定される一体化フィーチャーの長さは、好ましくは800から3000マイクロメートルである。長さが延びるにつれ、パターンは一次元となり、モアレパターンが生じ得る。パターンが短くなるにつれ、スクリーンゲイン(screen gain)が低減し、したがって関心の対象とはならない。この範囲の湾曲一体化フィーチャーの長さは望ましくないモアレパターンを低減し、同時に高い軸上輝度を提供することが見出されている。
【0045】
他の好ましい実施形態において、突き出ている頂上部に沿って測定される一体化フィーチャーは、好ましくは100から600マイクロメートルである。一体化フィーチャーの長さが減少するにつれ、モアレパターンが形成される傾向も減少する。この範囲の一体化フィーチャーの長さは、ディスプレイ装置に引き起こされる望ましくないモアレパターンを著しく低減し、同時に軸上輝度を提供することが明らかとなっている。
【0046】
本発明の一体化フィーチャーは、好ましくは重複している。湾曲一体化フィーチャーを重複させることにより、モアレの有利な低減が観察された。好ましくは、本発明の湾曲一体化フィーチャーは、ランダムに配置され、互いに平行である。これにより頂上部は一般に同じ方向に配列される。フィルムが、他よりも一方向に光を平行化するように配向された稜線を有することが一般に好ましく、これにより液晶バックライトシステムに用いられたとき、軸上利得が高くなる。湾曲一体化フィーチャーは、好ましくは、液晶ディスプレイの画素間隔への任意の干渉を排除するようにランダム化されている。このランダム化には、光学的要素の大きさ、形状、位置、深さ、配向、角度、または密度を含むことができる。これにより、モアレおよび類似の影響を無効にするための拡散層が必要なくなる。
【0047】
一体化フィーチャーの少なくとも一部は、フィルムの出射面全体にわたってグループで配置されていてよく、各グループの光学的要素の少なくとも一部は異なる大きさまたは形状特性を有するが、それらは膜全体にわたって変化する各グループの平均の大きさまたは形状特性を集合的に生じ、任意の単一光学的要素の機械加工許容値を超える平均特性値を得て、液晶ディスプレイの画素間隔へのモアレおよび干渉効果を無効にする。さらに、一体化フィーチャーの少なくとも一部は、フィルムが2つの異なる軸に沿って光を再配向/方向変換する能力をカスタマイズするために、互いに異なる角度で配向されていてもよい。フィーチャーをランダム化するとき、平面、非ファセット面領域を回避することが、フィルムの利得性能にとって重要である。非ファセットの領域または平面領域を回避するこれらのフィーチャーの擬似ランダム配置には、アルゴリズムが存在する。
【0048】
好ましくは、一体化フィーチャーは、フィーチャーの頂点で90度の挟角を示す断面を有する。90度のピーク角度は光平行化フィルムで最も高い軸上輝度を生じることが明らかとなっている。この90度の角度は多少の自由度を有し、88から92度の角度も同様の結果をもたらし、軸上輝度をまったくまたはほとんど失わずに使用できることが見出されている。ピークの角度が85度未満であるか、または95度超であるとき、光平行化フィルムの軸上輝度は低下する。好ましくは挟角が90度であり、好ましくは幅が15から30マイクロメートルであるため、湾曲くさび形フィーチャーは、好ましくは7から30マイクロメートルのフィーチャーの最高頂上部高さを有する。この範囲のくさび形要素の高さは、高い軸上利得およびモアレの低減を提供することが明らかとなっている。
【0049】
一体化フィーチャーは、10から55マイクロメートルの平均ピッチを有する。平均ピッチは、2つの隣接するフィーチャーの最高点間の平均距離である。モアレを低減し、フィルム上に非パターン化領域が存在しないことを確実にするために、これらのフィーチャーは寸法が多様であり、重複し交差しており、フィルムの表面にランダムに配置されているため、平均ピッチはフィーチャーの幅とは異なる。非パターン化領域はくさび形要素と同じ光学性能は持たず、性能の低下をもたらすため、フィルム上の非パターン化領域は0.1%未満であることが好ましい。
【0050】
図2、3、および4は、一例となる実施形態による好ましい微細構造の拡大上面図である。図2は、明確な稜線を有する1つの平面と1つの曲面を有する個別の光学的要素を含む微細構造を示す。図3は、周期性を有する線状微細構造を示す。図4は、重複し交差している個別の光学的要素を示す。
【0051】
好ましくは、本発明のポリマーフィルムは、1.3から2.0の軸上利得を有する。本発明の光平行化フィルムは、高い軸上利得と低減されたモアレのバランスを保っている。ディスプレイの輝度を著しく増大するために、LCD製造者には少なくとも1.3の軸上利得が好ましいことが明らかとなっている。2.2を超える軸上利得は、高い軸上利得を提供するが、視角が非常に限定される。さらに、LCDバックライトにおける光再利用は、吸収、望ましくない反射、および典型的なLCDバックライトユニットの側面からの光漏れによって損なわれるため、一体化フィーチャーによって提供される2.2を超える軸上利得は、典型的なLCDバックライトにおいて高度の再利用をもたらすが、総体的に光出力を損なう。
【0052】
一体型フィーチャーを含有する光方向変換フィルムは、好ましくは、10から60度の半角を有する。半角は、フィルムに垂直な線と照度が軸輝度の50%である点からフィルムに引かれた線とが交差することによって作られた角度として定義される。半角は輝度のラジカル分布を示し、輝度が50%低下する点を定義する。入射光の輝度を高めるために一体型フィーチャーを用いるとき、70度より大きい半角は、十分な軸上輝度を提供しないことが明らかとなっている。8度未満の半角は、比較的高い軸上輝度を提供するが、再利用の効率が悪く、テレビなどの広視野用途で十分に広い照度を提供しない。
【0053】
好ましくは、一体化フィーチャーは、30ナノメートル未満の粗さRaを有する。表面粗さは、表面粗さの頂点から谷への平均距離の尺度である。フィルムの表面粗さは、精密な一体化フィーチャーを形成するために用いられるツールの表面粗さに直接関連する。表面粗さは、磨耗したツール、高いツール送り速度、または精密ツール表面の損傷から起こり得る。35ナノメートルより大きい表面粗さは、一体化フィーチャーの平行化能力を低減することが明らかとなっている。5ナノメートル未満の一体化フィーチャー表面粗さは、光出力の付加的な増加と比較してコストに見合わない。
【0054】
一体化フィーチャーと反対側の表面粗さは、好ましくは、30ナノメートル未満の表面粗さを有する。一体化フィーチャーと反対側の表面粗さは、ポリマーキャスト表面粗さ、望ましくないポリマーの収縮、またはフィルム移送時の表面の傷から起こり得る。35ナノメートルより大きい表面粗さは、入射光の望ましくない拡散反射が生じることにより、光方向変換フィルムの総体的出力を低下させることが明らかとなっている。5ナノメートル未満の表面粗さは、光出力の比較的小さい増加と比較してコストに見合わない。
【0055】
本発明の他の実施形態において、フィルムは、好ましくは基層、およびその少なくとも1つの面上に微細構造を含む微細構造化層を含み、微細構造化層のみがポリスルホンを含む。前述のとおり、ディスプレイの視野領域が増大を続けるにつれ、光方向変換層の寸法も増大する。大きさの増加に伴って、光学構造にかかる応力が増大し、該構造はたわむかまたは曲がる可能性がある。これは光学構造の光学特性を変化させ、画像の光学的品質または光源の性能に有害な影響を与え得る。したがって、基層は光学構造の他の層に剛性を提供する厚さを有するように選択され、そのような材料から作られる。一例となる実施形態において、基層は厚さ約250μm、約2GPaの弾性率を有する。基層は、好ましくは120℃より高いTを有するポリマーを含む。120℃より高いTを有するポリマーベースシートは、典型的に背面照射ディスプレイシステムに存在する温度勾配に対する抵抗性を提供し、その結果として優れた熱安定性を提供する。
【0056】
所望の機械的特性および熱的特性に加えて、基層は比較的無色であり、実質的に透明であってよい。一例となる実施形態において、基層は、約0.85より高い透過率を有する。特定の実施形態において、基層の透過率は約0.88より高く、約0.95より高くてもよい。さらに一例となる実施形態において、基層は、国際照明委員会(Commission on Illumination)(CIE)スケールで測定された約−2.0から約+2.0のb値を有する。青色着色剤、例えば染料および顔料などを、青色−黄色軸に沿って光学的要素の色を調整するために用いることができる。LCDディスプレイ装置に用いられる光学的フィルムが青い色合いを有する場合、LCDに表示された画像の「白色」は青い色合いを有する傾向があるため、わずかに青い色合いを有する光学的要素は、黄色光学的要素より知覚的に消費者に好まれる。
【0057】
透明基層は、光透過態様で用いられる光学構造に有用である。他の例となる実施形態において、基層は実質的に不透明であることが有利である場合がある。その基材が高い重量パーセントの白色顔料、例えばTiOまたはBsSOなどを有するか、基層が空隙を含有するか、又は基層が反射金属、例えばアルミニウムまたは銀などを含有する層を含有するかまたは有する場合、不透明層は高い反射率を提供することができる。不透明基層は、LCDディスプレイのバックリフレクタ、拡散ミラー、または半透過要素に用いることができる。
【0058】
一例となる実施形態において、基層は、熱可塑性材料である。特定の実施形態において、基層は、ポリカーボネート、ポリスチレン、配向ポリエステル、またはポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る。これらの材料は例示にすぎない。基材は、前述の材料特性を提供する他の材料であってよい。これらの材料には、これに限定されるものではないが、三酢酸セルロース、ポリプロピレン、PEN、またはPMMAが含まれる。
【0059】
上述した用いられるポリスルホンポリマーは、典型的に、プレキャストポリマーシート、特に配向された半結晶性ポリマーシートに対する接着性が乏しい。好ましくは、ポリスルホン微細構造と基層を接着し、2つの異種ポリマー材料が1つの構造に接合されることを可能にするために、接着層が提供される。異種材料を使用することにより、例えば、光学構造は広範な使用温度にわたって機械的に安定であり、さらに、望ましい光学特性、例えば高い光透過率、低い着色、および高い表面円滑性などを有することの何れもが可能になる。本発明の接着層は、プレフォームポリマーシートと溶融キャストポリマーとの間に優れた接着性を提供する。従来技術の接着層は、典型的に室温被覆ポリマーと配向シートとの間の接着を促進するが、本発明の接着層は、そのポリマーのTgを実質的に超える温度による溶融キャストポリマー(例えばポリカーボネートなど)と、配向プレフォームポリマーシートとの間に優れた接着性を提供する。本発明の接着層は、ポリマーキャスト時に溶融キャストポリマー層の接着性を提供し、それによりウェブベースの製造プロセスを通じて溶融キャストポリマーが効率的に運ばれ、要求の厳しい電子ディスプレイ用途、例えばLCD、有機発光ダイオード(OLED)、およびフレキシブルエレクトロウェッティングディスプレイなどに用いることのできる十分な接着性が提供される。
【0060】
さらに、本発明の接着層は、2種の異なる材料を有するポリマーフィルムの静電気の蓄積を低減する帯電防止層を提供するために用いることができる。光学フィルム上での静電気の蓄積は、ディスプレイ装置に欠陥を生じ得る、望ましくない浮遊粒子を引きつけることが明らかとなっている。さらに、本発明の接着層は、光拡散手段を提供し、ポリマー光学的要素に入る可視光の拡散を可能にするために用いることができる。接着層に光拡散手段を加えることによって、このフィルムは2つの機能を有することができ、別個の光拡散フィルムの必要がなくなる。
【0061】
例として、接着層は、アクリル、ポリウレタン、ポリエーテルイミド(PEI)、またはポリ(ビニルアルコール)(PVA)であり得る。基層が配向PETを含み、光学層がポリカーボネートを含むときは、接着層は、ポリ酢酸ビニル−エチレンコポリマー、またはモノマー比15/79/6のポリアクリロニトリル−塩化ビニリデン−アクリル酸コポリマーであることがより好ましい。
【0062】
本発明の他の実施形態において、フィルムは、好ましくは少なくとも2つのポリスルホン層を含む。少なくとも2つのポリスルホン層を有することによって、それぞれの層が個別に特定の光学または物理的特性に最適化されることができる。例えば、それぞれの層は、添加剤、例えば帯電防止材料、蛍光増白剤、またはポリスルホンのコポリマーなどを加えることによって、変えることができる。特に、ポリスルホン微細構造は多くの場合、屈折率、またはシートのバルクより高い硬度など、特定の性質を必要とすることが見出されている。2種以上の層を提供することにより、微細構造化層の特性は、要件が同じではない可能性のある残りと層とは異なることができる。
【0063】
他の好ましい実施形態において、フィルムは、好ましくは2つの層を含み、第1層は、21,000未満の重量平均分子量を有し、第2層は、35,000より大きい重量平均分子量を有する。2層フィルムを提供することによって、21000未満の重量平均分子量を有する層は、高い熱流量を有する特性を有し、したがって高い複製忠実度を有することができ、さらに、35,000より大きい重量平均分子量を有する第2層は、より低い機械的バルク変形特性を有することができ、高い複製忠実度も可能にする。さらに、35,000より大きい重量平均分子量は、より良好な機械的特性を有する傾向があり、21,000未満の重量平均分子量を有するポリスルホンから作られた単層フィルムと比べて、より剛性のフィルムをもたらす。一例は図5に示すとおりである。
【0064】
本発明の他の好ましい実施形態において、フィルムは、1つの面上に光方向変換フィーチャーを含み、光方向変換フィーチャーと反対の面に光拡散フィーチャーを含む。光指向性フィルムが光拡散フィルムと組み合わせて用いられる場合、光指向性フィルムはしばしば性能を向上させることが見出されている。フィルムの一方の側に拡散構造を提供し、拡散構造と反対側に光方向変換フィーチャーを提供することによって、フィルムは追加のフィルムを必要とすることなく拡散要素から利益を享受することができ、それによって別個の拡散フィルムを組み入れることに起因する反射と吸収の損失が解消され、かつ重量が抑えられる。特定の一実施形態において、光方向変換微細構造は、稜線、及び約90度の挟角を有する個別の微細構造を含み、拡散要素は、0.4から1.0マイクロメートルの平均粗さを有する実質的に対称な微細構造を含む。
【0065】
本発明のフィルム(微細構造もしくはフィルムの非構造化部分、または両方の場所)に添加剤を加えることにより、ポリスルホンポリマーの特性がさらに改善されることが明らかとなっている。好ましい添加剤は、着色化合物、離型化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、蛍光増白剤、ナノメートルサイズ無機材料、および耐火性材料を含むリストから選択される。
【0066】
好ましい実施形態において、ポリスルホンポリマーの光学特性または機械的特性を変えるために、ポリスルホンポリマーに無機微粒子を添加する。無機微粒子は、好ましくは無機酸化物、より好ましくは金属酸化物を含む。本発明の無機酸化物粒子は、望ましくは実質的に球状形態であり、比較的大きさが均一である(実質的に単分散の粒度分布を有する)か、または2種以上の実質的に単分散の分布をブレンドすることによって得られた多峰分布である。光を散乱させ、光学的透明度を低減する大きな粒子が凝集によって生じ得るため、無機酸化物粒子は実質的に凝集しておらず(実質的に離散)、実質的に凝集していないまま維持されることがさらに好ましい。
【0067】
多様なコロイド無機酸化物粒子を本発明の光学的要素に用いることができる。代表的な例には、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、クロミア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、およびそれらの混合物が含まれる。無機酸化物粒子は、本質的に単一の酸化物(例えばシリカなど)、酸化物の組み合わせ(例えばシリカと酸化アルミニウムなど)、又はその上に他の種類の酸化物が堆積する1種の酸化物(または金属酸化物以外の材料のコア)を含むことができる。
【0068】
蛍光増白剤は、紫外光を吸収し、青色可視光としてそれを放射する実質的に無色の蛍光有機化合物である。例には、これに限定されるものではないが、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸の誘導体、クマリン誘導体、例えば4−メチル−7−ジエチルアミノクマリン、1−4−ビス(O−シアノスチリル)ベンゾール、および2−アミノ−4−メチルフェノールが含まれる。ディスプレイにおいて、背面紫外線光源は多くの場合、UV光エネルギーの供給源である。ポリスルホンポリマーに蛍光増白剤を混合することにより、ポリスルホンフィルムに入射する透過UV光エネルギーは、有用な青色光に変換される。
【0069】
印刷適性をはじめとするシートの特性を改善するため、蒸気バリアーを提供するため、ヒートシールを可能にするため、または接着性を改善するために用いることができる任意の数の被覆剤で、微細構造、または微細構造の反対側を、熱可塑の前または後に被覆または処理することができる。この例は、印刷適性の場合はアクリル被覆剤、ヒートシール性の場合は塩化ポリビニリデン被覆となる。さらに、例には、印刷適性または接着性を改善するための、火炎、プラズマ、またはコロナ放電処理が含まれる。
【0070】
ポリスルホンポリマーは、入射角によって光散乱特性を変化させる光学特性を低下させない範囲内で、例えばフィルムの表面の滑りやすさを改善するためのシリカなどをはじめとする、添加剤または潤滑剤と混合することができる。そのような添加剤の例は、有機溶媒、例えばキシレン、アルコール、またはケトンなど;アクリル樹脂、シリコーン樹脂、または金属酸化物の微粒子;又は充填剤である。
【0071】
ポリスルホンポリマーは、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。本発明の組成物に、熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル−イミド、ポリエーテル−ケトン、ポリアミド−イミドなど;並びに熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなど;からなる群から選択された少なくとも1つを、それらの添加が本発明の目的に悪影響を及ぼさない限り、添加することもできる。上述の材料の一部は、ポリスルホンと混和性でなく、90%未満の可視光透過率%を有する光学フィルムを生じる可能性のあることが理解される。
【0072】
図1は、光学フィルムを製造するための装置の概略図である。この装置は、ポリスルホンポリマー103を押し出す、押出し機101を含む。この装置はさらに、光学層113に光学フィーチャーを形成する、微細構造を含有するパターン化ローラー105を含む。さらにこの装置は、圧力を与えて材料103をパターン化ローラー105に押し込む加圧ローラー107と、材料113がパターン化ローラー105から除去するのを助ける剥離ローラー111を含む。
【0073】
作動中、基層109は、加圧ローラー107とパターン化ローラー105の間に溶融押出しされた材料103と共に押し込まれる。一例となる実施形態において、基層109は、ポリマーの配向されたシートである。さらに、パターン化ローラー105と加圧ローラー107の間を通った後、ポリスルホン103は、光学フィーチャーを含む光学層113を形成する。あるいは、接着層を押出し機101でポリスルホン103と共押出しすることができる。共押出しは、2つ以上の層による利益を提供する。共押出し接着層は、基層109と光学層113に、単層より高い接着性を生じる最適な接着性を提供するように選択することができる。したがって、共押出し接着層と光学層は、加圧ローラー107とパターン化ローラー105の間に基層と共に押し込まれる。加圧ローラー107とパターン化ローラー105の間を通った後、層113はローラー111に送出される。具体的な実施形態において、層113は、詳細に記載した実施形態の光学微細構造である。
【0074】
他の好ましい実施形態において、ポリスルホン103は、共押出し構造における残りの層より50%高いメルトインデックスを有する、パターン化ローラー105と接する表面層を有するポリマーの共押出し層を含む。高流量表面層はポリマーの複製忠実性に役立つことが見出されている。表面層以外の層ははるかに低いメルトインデックスを有し得るので、ディスプレイ装置の厳しい条件に耐えるのにより好適な、機械的に剛性の光学フィルムをもたらす。
【0075】
パターン化ローラー105は、好ましくは、所望の微細構造を含有する金属ローラーを含む。微細構造はローラーの表面に機械加工されるか、ランダムに配置され得る。ダイヤモンドターニング、ビードブラスト、コイニング、マイクロインデンテーション、または電気機械的彫刻などの既知の技法によって、許容できる微細構造が製造されることが明らかとなっている。さらに、薄い高密度クロムを電解的に微細構造に適用することができ、これによって電気を用いずに適用されためっきまたは被覆(無電解ニッケルなど)より優れた結合がもたらされる。0.25マイクロメートルの最小堆積厚は、多くの場合、電気化学めっきを害する水素の堆積を防ぐ。薄い高密度クロムは硬質クロムであり、これは非常に薄いのでクラッキングを引き起こすほどの応力を蓄積せず、したがって良好な耐腐食性を有する。薄い高密度クロムは、金属微細構造の表面に、高密度、高クロムの非磁性合金を均一に堆積させる。さらに、薄いクロムは、薄い高密度クロムを添加しない金属微細構造と比べて、潤滑性を高め、摩滅を防ぎ、耐摩耗性を改善し、及びより低い摩擦係数を有し、優れた抗焼付き性を提供し、より低い腐食性の抵抗性を有し、それによってパターン化ローラーはポリスルホンポリマーに必要とされる処理温度に耐えることが可能となることが明らかとなっている。
【0076】
好ましくは、ポリスルホンポリマー溶解物103は、27,000未満の重量平均分子量を有する。27,000未満の重量平均分子量を有するポリスルホンポリマーを提供することによって、パターン化ローラー105におけるフィーチャーの複製忠実度は、50,000より大きい重量平均分子量を有するポリスルホンポリマーと比べて著しく向上する。より低い分子量であれば、ポリスルホンポリマーは滞留時間0.25秒未満で、より良好にローラー15に存在する微細構造を流れることができる。滞留時間0.25秒未満でのポリスルホンポリマー材料の溶融押出しパターン化によって、ロールツーロール形態において微細構造化ポリスルホン材料を効率的かつ低コストで製造することが可能になり、コストに敏感な液晶ディスプレイバックライトアセンブリにおいて微細構造化ポリスルホンを用いることができる。
【0077】
好ましくは、ローラー105は、200℃より高い温度に加熱される。200℃より高くかつ400℃未満の温度によって、ポリスルホンポリマーは、かかるポリマーのTgより高い状態にとどまり、ポリスルホンポリマーの複製忠実度がさらに高くなる。27,000未満の重量平均分子量と200℃より高いローラー105の温度との組み合わせによって、ポリスルホンを用いて得ることができないと考えられていた0.5より高く、5.0までのアスペクト比(微細構造の高さ対微細構造の幅)を有する微細構造の高い複製忠実度が可能となる。
【0078】
本発明は任意の液晶ディスプレイ装置と併せて用いることができ、その典型的な配置を以下に説明する。液晶(LC)は電子ディスプレイに広く用いられている。これらのディスプレイシステムにおいて、LC層は偏光子層と検光子層との間に位置し、垂直軸に対して層を通る方位ねじれを示すダイレクタを有する。この検光子は、その吸収軸が偏光子と垂直になるように配向されている。偏光子によって偏光された入射光は、液晶セルを通過し、液晶の分子配向の影響を受け、この分子配向はセルを横切る電圧の印加によって変えることができる。この原理を用いることによって、周囲光を含む外部光源からの光の透過を制御することができる。この制御を達成するために必要なエネルギーは一般に、ブラウン管などの他のディスプレイ型に使われる発光材料に必要とされるエネルギーよりはるかに小さい。したがって、LC技術は、軽量、低い電力消費、および長い動作寿命が重要な特徴である多くの用途、これに限定されるものではないが、デジタル時計、計算機、ポータブルコンピュータ、電子ゲームを含む用途に用いられている。
【0079】
アクティブマトリクス液晶ディスプレイ(LCD)は、それぞれの液晶画素を駆動するためのスイッチング装置として薄膜トランジスタ(TFT)を用いる。これらのLCDは、個別の液晶画素を選択的に駆動することができるため、クロストークのない高精細度画像を表示することができる。光学モード干渉(OMI)ディスプレイは、「ノーマリホワイト」、すなわちオフ状態で光がディスプレイ層を透過する液晶ディスプレイである。ねじれネマティック液晶を用いるLCDの動作モードは、大まかに複屈折モードと旋光モードに分類される。「補償フィルム超ねじれネマティック」(FSTN)LCDは、ノーマリブラックであり、すなわち電圧が印加されていないとき、オフ状態で光の透過は抑えられる。OMIディスプレイは、より迅速な応答時間とより広い動作温度範囲を有することが報告されている。
【0080】
白熱電球または太陽からの常光はランダムに偏光されており、すなわち可能なすべての方向に配向されている光波を含む。偏光子は、2つの垂直平面偏光成分の一方を入射光ビームから選択的に除去することによって、ランダムに偏光された(「非偏光」)光ビームを偏光ビームに変換するように機能するダイクロイック材料である。直線偏光子は液晶ディスプレイ(LCD)装置の重要な構成要素である。
【0081】
液晶ディスプレイ装置には、例えばアクティブマトリクス駆動、および単純マトリクス駆動から選択された駆動方式と、例えばねじれネマティック、超ねじれネマティック、強誘電性液晶、および反強誘電性液晶モードから選択された液晶モードとの組み合わせを有するディスプレイ装置が含まれるが、本発明は上述の組み合わせに限定されない。液晶ディスプレイ装置において、本発明の配向フィルムは、バックライトの前面に位置される必要がある。本発明の小レンズ拡散フィルムは、光を拡大してすべての方向に優れた可視性を与える優れた光散乱特性を有するため、ディスプレイ全体にわたって液晶ディスプレイ装置の明度を均一にすることができる。上述の効果は、そのような小レンズ拡散フィルムの単独使用によっても達成できるが、複数のフィルムを組み合わせて用いることもできる。均質化小レンズ拡散フィルムは、光を分配して、光をさらに均質化するために、透過モードのLCD材料の前面に配置することができる。本発明は、光源分解装置として重要な用途を有する。多くの用途において、フィラメント構造を光源の出力自体から排除することが望ましい。フィラメント構造は、試料全体に分配された光が変化し、このことが望ましくないため、ある種の用途で問題となり得る。また、光源交換後の光源フィラメントまたはアークの配向の変動により、誤った紛らわしい読み取りを生じることがある。光源と検出器との間に配置された本発明のフィルムは、光源の出力からフィラメント構造の痕跡を排除し、それによって光源間で同一の均質化された出力をもたらすことができる。
【0082】
ポリスルホン微細構造化フィルムは、所望の場所に向けられた好ましい均質化された光を提供することにより、舞台の照明を制御するために用いることができる。舞台およびテレビの製作では、適切な照明に必要な種々の効果をすべて達成するために、多種多様な舞台用の光を用いなければならない。そのためには多くの異なるランプを使用する必要があり、不便で費用がかかる。ランプを覆うように配置された本発明のフィルムは、ほぼ制限のないフレキシビリティを付与し、必要な場所に光を分散することができる。その結果として、任意の動くものであっても動かないものであっても、任意の形状のほぼすべての対象に、正確に光を当てることができる。
【0083】
金属フィルムなどからなる反射層を本発明のポリスルホン構造化フィルムに適用することによって形成された反射フィルムは、例えば交通標識用の逆反射部材として用いることができる。これは車、自転車、または人などに適用した状態で用いることができる。
【0084】
本発明のポリスルホン構造化フィルムは、レーザーダイオード(LD)または発光ダイオード(LED)からの出力を警備区域全体にわたって均質化し、赤外線(IR)探知器に、より高いコントラストを提供するために、警察および警備システムの分野でも用いることができる。本発明のフィルムは、例えば紙幣読み取り装置または皮膚処置装置などにおいて、LEDまたはLD源を用いる装置から構造を除去するために用いることもできる。これにより精度が、より高くなる。
【0085】
外科医のヘッドピースに取り付けられた光ファイバアセンブリは、手術中に光ファイバ要素の1つが壊れた場合、強度のばらついた、気を散らす光を手術野に投じる可能性がある。ファイバ束の末端に配置された本発明のポリスルホン構造化フィルムは、残ったファイバから出る光を均質化し、患者に投じられる光から壊れたファイバの痕跡を排除する。標準的なすりガラスの拡散体は、著しい後方散乱がスループットの損失を引き起こすため、この使用に有効ではない。
【0086】
本発明のポリスルホン構造化フィルムは、光源のフィラメントまたはアークを分解して、均質に照らされた視野を得ることにより、顕微鏡下の試料を均質に照らすために用いることもできる。このフィルムは、ファイバを介して伝播する種々のモード、例えばヘリカルモードファイバからの光出力を均質化するためにも用いることができる。
【0087】
本発明のポリスルホン構造化フィルムは、作業空間や居住空間に適切な光を提供するなど、重要な建築用途も有している。典型的な商業上の用途では、部屋中に光を拡散させるのを助けるために、安価な透明ポリマー拡散フィルムが用いられている。これら従来の拡散体の1つと取って代わる本発明の均質化体は、部屋全体のすべての角度に均等に光が拡散され、かつホットスポットがないようにより均一な光出力を提供し、同時に商用の照明で直面する高温に対して優れた耐性を有する。
【0088】
本発明のポリスルホン微細構造化フィルムは、芸術作品を照らす光を拡散するために用いることもできる。この透明ポリマーフィルム拡散体は、最も望ましい様式で芸術作品を表現するために、好適な寸法に作られ、方向づけられた好適な開口を提供する。
【0089】
さらに、本発明のポリスルホン微細構造化フィルムは、表示装置などの光学機器の部品として広く用いることができる。例えば、前述した液晶ディスプレイ装置のバックライトシステムの光散乱板に加えて、反射型液晶ディスプレイ装置において金属フィルムなどの反射フィルムと積層された光反射板として、または装置の背面(観察者と反対側)に金属フィルムが配置される場合、フィルムを前面(観察者側)に向ける前面散乱フィルムと積層された光反射板として用いることができる。本発明のポリスルホン構造化フィルムは、ITOフィルムに代表される酸化インジウムからなる透明導電層を積層することによって、電極として用いることができる。この材料が反射型スクリーン、例えば前面投影スクリーンを形成するために用いられる場合、光反射層は透明ポリマーフィルム拡散体に適用される。
【0090】
透明ポリマー拡散フィルムの別の適用例は背面投影スクリーンであり、背面投影スクリーンでは一般に、光源から範囲の拡大したスクリーンに画像を投影することが望ましい。テレビの視角は、典型的に水平方向より垂直方向が短い。この拡散体は、光を拡げ、視角を拡げるように作用する。
【0091】
本発明の実施形態は、より容易に忠実に複製され、耐スクラッチ性であり、容易に溶融せず、切断が容易である微細構造化ポリマーフィルム提供することができる。
【0092】
以下の実施例は、本発明の実施を例示するものである。これらの実施例は、本発明の可能なすべての変形を包括することを意図するものではない。他に示さない限り、部およびパーセントは重量による。
【実施例】
【0093】
実施例1
この実施例では、図1に示した方法を用い、パターン化金属ローラーと加圧ローラーの間でポリスルホンポリマーを溶融押出しすることによって、分子量の異なるいくつかのグレードのポリスルホンポリマーをパターン化した。この実施例は、ポリスルホンポリマーの分子量が低下するにつれ、光方向変換微細構造の高さの複製忠実度が上昇することを実証する。
【0094】
銅製ローラーの表面に光沢ニッケル層を電気めっきする工程を含む方法によって、パターン化されたローラーを製造した。ダイアモンドツールを用いて、ニッケルの表面に個別のレンズを電気機械的に彫刻した。レンズは、高さ35マイクロメートル、幅32マイクロメートル、長さ1200マイクロメートルを有していた。レンズは、稜線、及び約90度の頂角を有した。頂点は、0.78マイクロメートルの平面を有した。ローラーに電気機械的に彫刻された微細構造の一般的な形状を図2に示す。
【0095】
図1に例示した方法を用い、下記のポリスルホンポリマーを溶融押出しスロットダイから溶融押出しすることによって、上述のパターン化ローラーを用いて厚さ125マイクロメートルのパターン化されたポリマーフィルムを作製した。
ポリマーA:重量平均分子量48,400のポリスルホンポリマー
ポリマーB:重量平均分子量37,700のポリスルホンポリマー
ポリマーC:重量平均分子量22,300のポリスルホンポリマー
【0096】
上述のポリスルホンポリマーを用いて、3種の微細構造化フィルム(上で用いたポリスルホンポリマーに対応する)を形成した。パターン化ローラーの温度は210℃であり、微細構造化フィルムは8リニアメートル/分の速さで連続的に形成した。上述の微細構造化フィルムを高倍率で画像化し、レンズの頂点の幅とレンズの高さを光学的に測定した。複製忠実度は、マスターツール、この実施例ではパターン化金属ローラーに電気機械的に彫刻されたレンズを完全に複製するポリマーの能力の尺度である。ローラーに彫刻されたレンズは0.78マイクロメートルの平面を含有したため、100%の複製ならば0.78マイクロメートルの平面を有するポリスルホンレンズが生じることになる。0.78マイクロメートルより大きい平面は、100%未満の複製を示す。この実施例のポリスルホン微細構造フィルムの層構造は図6のとおりである。
【0097】
この実施例の光方向変換フィルムを形成するために用いたポリスルホンポリマーそれぞれに関して、何れもマイクロメートルで測定した平面の幅とレンズの高さ、ならびに算出したレンズの高さの複製忠実度%を下記の表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
図1に例示した溶融押出しパターン化法では、重量平均分子量のより低いポリスルホンポリマーが、レンズの高さと平面の幅の両方に関してより高い複製忠実度(高い複製率%)を有したことを、表1に示した結果は明らかに実証している。上述のとおり、多くの場合、精密な光学レンズには高い複製忠実度が求められる。レンズの機能はレンズが複製される能力に依存する。重量平均分子量のより低いポリスルホンポリマー、特にポリマーCは、優れた溶融流れ特性を提供し、8リニアメートル/分のパターン化ライン速度でレンズ形状の98%に流入することができ、有効で低コストのフィルムの製造を可能にした。さらに、重量平均分子量22,300を有するポリスルホンポリマーは、機械的特性と光透過率に測定可能ないかなる損失も受けなかった。
【0100】
上述の実施例は特定の光方向変換微細構造を対象にしたものであるが、他のポリスルホン微細構造、例えば光拡散微細構造、光回転微細構造、逆反射微細構造、および半透過微細構造なども、ディスプレイ装置、例えば液晶装置などにおいて有用である。さらに、高忠実度微細構造化ポリスルホンポリマーは、研磨用途、滑り防止表面、微小流体チャネル、画像支持体、包装材料などにも用いることができる。
【0101】
本明細書で言及した特許および他の刊行物の内容全体は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明のいくつかの好ましい実施形態を特に参照して本発明を詳細に述べたが、本発明の精神および範囲内で変更および修正を加えられ得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】一例となる実施形態による光学フィルムを製造するための装置の簡略図である。
【図2】一例となる実施形態による微細構造の拡大上面概略図である。
【図3】一例となる実施形態による微細構造の拡大上面概略図である。
【図4】一例となる実施形態による微細構造の拡大上面概略図である。
【図5】フィルムが2つの層を含む例を示す図である。
【図6】実施例1のポリスルホン微細構造フィルムの層構造を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
101 押出し機
103 溶融押出しポリスルホン
105 パターン化ローラー
107 加圧ローラー
109 基層
111 ローラー
113 微細構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1面上に微細構造を含むフィルムであって、前記フィルムがポリスルホンポリマーを含むフィルム。
【請求項2】
前記フィルムが、その少なくとも1面上に一体型光方向変換微細構造を含む光学フィルムである請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
ポリスルホンが、下記の式(I)で表される反復基を有することを特徴とする請求項1記載のフィルム:
【化1】

式中、RおよびR’はそれぞれ、H、又はアルキル基、例えばメチルまたはエチルなど、又はフェニル基であり、
乃至Rはそれぞれ独立して、水素、又は独立して選択された1以上の環置換基を表す。
【請求項4】
RおよびR’がメチル基であり、かつR乃至Rがそれぞれ水素を表す請求項3記載のフィルム。
【請求項5】
ポリスルホンが、27,000未満の重量平均分子量を有する請求項1記載のフィルム。
【請求項6】
ポリスルホンが、5,000から21,000の重量平均分子量を有する請求項5記載のフィルム。
【請求項7】
光方向変換微細構造が、稜線を有する個別の要素を含む請求項2記載のフィルム。
【請求項8】
光方向変換微細構造が、線状プリズム構造である請求項2記載のフィルム。
【請求項9】
基層と、その少なくとも1面上に微細構造を含む微細構造化層とを含み、微細構造化層のみがポリスルホンポリマーを含む請求項1記載のフィルム。
【請求項10】
基層と、その少なくとも1面上に光方向変換微細構造を含む光方向変換層とを含み、光方向変換層のみがポリスルホンポリマーを含む請求項2記載のフィルム。
【請求項11】
基層が、120℃より高いTgを有するポリマーを含む請求項10記載のフィルム。
【請求項12】
着色化合物、離型化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、蛍光増白剤、ナノメートルサイズの無機材料、および耐火性材料を含むリストから選択された添加剤をさらに含む請求項1記載のフィルム。
【請求項13】
微細構造が、5から100マイクロメートルの高さを有する請求項1記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムが2つの層を含み、第1層は、21,000未満の重量平均分子量を有し、及び第2層は、35,000より大きい重量平均分子量を有する請求項1記載のフィルム。
【請求項15】
ポリスルホンポリマーを、パターン化され加熱されたローラー上に連続的に溶融キャストする工程、および所望のパターンのネガに相当するパターンを有する加熱されたローラーにポリスルホンポリマーが接触している間に、ポリスルホンポリマーを冷却する工程を含む請求項1記載のフィルムを形成する方法。
【請求項16】
ポリスルホンポリマーが、27,000未満の平均分子量を有する請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記加熱されたローラーが、200℃より高い温度に加熱される請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記パターン化された加熱ローラーが、個別の要素を含有する請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記パターン化された加熱ローラーが、80ロックウェルCより大きい硬度を有するクロムを含む最外面を含む請求項15記載の方法。
【請求項20】
光源と、ポリスルホンポリマーフィルムの表面上に複数の表面構造を含むポリスルホンポリマーフィルムとを含む液晶装置であって、ポリスルホンポリマーフィルムが、光源と偏光フィルムとの間に位置されている液晶装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−137374(P2008−137374A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−205561(P2007−205561)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(307010188)ローム アンド ハース デンマーク ファイナンス エーエス (51)
【Fターム(参考)】