ポリスルホンポリマー並びに逆浸透、ナノ濾過及び限外濾過のための膜
本発明は、フェニル環の1つ又は複数において官能基によって置換されている変性ポリスルホン及び変性ポリスルホンから構成されている膜を提供する。また、単分散ナノ多孔質ポリマー膜の調製方法を提供する。この膜は、逆浸透、ナノ濾過及び限外濾過、特に水の精製に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリスルホンポリマー、前記ポリスルホンポリマーから構成される膜、並びに逆浸透、ナノ濾過及び限外濾過に適した膜の新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜は、可溶性、拡散性の差、電荷、極性、大きさ及び形状の差といった様々な機構を介して、特定の成分の好ましい通過を可能にし、他の成分の通過を妨げる選択的障壁として作用する。膜の有用性は、以下の主な特性、所望の分離性、透過性に関する考察、機械的安定性(クリープ及び圧縮性に関する考察)、化学的安定性(加水分解安定性、許容可能なpH範囲、微生物耐性、酸化耐性等)、汚染耐性及び温度安定性に対してもたらされる選択度を特徴とし得る。
【0003】
膜は、汚染除去水のための信頼できる手頃な装置であることが証明されている。しかしこれらの膜の費用は、不適切な水の供給源に悩む殆どの地域社会が負担できる費用を未だ上回っている。材料の進歩は、膜の費用を低下させる一助となり得る。
【0004】
現在、膜が除去する材料の大きさを基にして一般的に許容されている4種類の膜が存在する。孔径の小さい方から大きい順に、これらは逆浸透(RO)、ナノ濾過(NF)、限外濾過(UF)及び精密濾過(MF)膜である。
【0005】
逆浸透(RO)膜技術は、汽水及び海水の脱塩化に最も有望であるとみなされている。この技術は、わずかに汚染された水の処理にも使用される。これは、塩溶液の浸透圧を克服するために動圧を使用するものであり、したがって膜の塩側から淡水側への水選択的透過を生じる。塩は膜によって排除され、分離が達成される。RO膜は無孔である。水は膜の皮膜、膜の特性を決定する活性層に溶解し、次いで拡散によって膜に透過する。皮膜は、約30〜200nmの厚さであり、水の通過に対する水圧耐性を低減するように設計されている。
【0006】
流束及び排除などの膜の主な特性は、皮膜の厚さ及び完全性によって制御される。現在のRO膜は、高pH及び低pH、溶媒、酸化材料等に対して敏感である。良好な膜は、流束を増大させ、長い使用期間に伴う汚染を防止することができる化学的及び機械的な高い安定性を備える必要がある。RO膜の改善は、脱塩法における費用の低減に対する重要な鍵である。高流束膜は、得られる淡水の生成物1単位当たりに必要なエネルギー及び主な投資を低減することができる。
【0007】
ナノ濾過(NF)は、逆浸透(RO)及び限外濾過(UF)の間に位置する膜液体分離技術である。逆浸透法は、通常、溶液中に溶解している直径0.0001ミクロン以下の範囲の溶質分子を除去し、ナノ濾過法は、0.001ミクロン範囲のより大きい分子を除去する。ナノ濾過技術は、後続のRO法で相当高いエネルギー費用で通常使用される高圧に起因して、水の実際的な流束を用いた低圧で膜RO法を実施するべく30年前に始まったものであった。それらの「低圧高流束逆浸透膜」は、ナノ濾過(NF)膜として公知となった。NF法の最初の適用が、1987〜1989年に報告されている。元々、水産業界(特に飲料用)は、ナノ濾過に関して主な適用領域を有している。これに関する当時の理由は、NF膜が基本的に、低可溶性の無機塩の濃度を低減する(軟化する)ために開発されたことであり、NF膜は未だ「軟化」膜と表されることがある。
【0008】
ナノ濾過膜は、水から重い塩及び大きい有機分子を部分的に除去して、わずかに汚染された地表水を処理するために使用され、脱塩法の前処理として使用される。ナノ濾過膜は、3nmの範囲の直径を有する細孔を含む。ナノフィルターに適用される電荷は、塩の排除に影響を及ぼす。膜を介する水の通過は、細孔を介する毛管運動によって促進される。
【0009】
限外濾過(UF)膜は、10〜100nmの範囲の細孔の直径を有する。精密濾過(MF)膜は、最大1μmのより大きい細孔の直径を有する。これらの膜を使用する水からの汚染物質の分離は、溶液中の汚染物質粒子の大きさ及び細孔の大きさに依存する簡単な濾過に基づく。膜は、大きい分子、主に有機分子及び浮遊物質を保持する。UF膜は、水から細菌及びウィルスを除去するための現代の解決策である。MF膜は、浮遊粒子の除去のために使用され、幾つかの場合、細菌及び殆どのウィルスに対する保護をもたらすこともできる。UF及びMFは、膜バイオリアクターなどの廃水処理装置において組み合わせて広範に使用されており、又は処理済みの水及び地表水を清浄にするために使用される。
【0010】
水は、地中海沿岸及び中東諸国を含む幾つかの国では限られた資源とみなされている。再生可能な水資源は、ここ10年で最大約60%減少している。このような状況下、RO又はNF処理に適した質の未処理水源のための既に乏しい供給源は、ほぼ入手不可能になっており、より低質な原水は、膜による軟化及び脱塩を含む処理のための新候補とみなされるべきである。
【0011】
多数の政府が、行政の処理廃水を回収及び再利用し、塩水の井戸及び汚染井戸及び他の供給源を修復し、辺境の汽水供給源を脱塩するための大規模プログラムを発表している。多数の用途のために海水及び他の高塩分原水を脱塩するための農産業に関する幾つかの活動が、民間企業によって行われている。
【0012】
膜濾過の分野では、保持されるべき粒子の大きさ及び形状に基づく膜による多種多様な方法の中でも、分別が有効である。ROは、非常に清浄な水及び高濃縮物/濃縮水を生成することができるが、この方法は、使用する技術が比較的高性能であることにより、非常に高価となり得る。一方UFは比較的安価であるが、厳しい再利用標準を満たすには十分に効果的でないことがある。したがって良好なUF膜の研究は、今や技術の最先端である。さらにNF膜は、幾つかの水の供給源に関してRO及びUFの間の効果的な折衷案にもなり得る。NFは、実施がより容易であり、逆浸透よりも安価である。NFは微細な膜を使用しないため、NF系の供給圧力は、海水の実用的なROを利用する。
【0013】
ポリマー膜は、それらの細孔構造が等方性又は非対称(異方性)であり得る。等方性の膜は、非対称膜とは対照的に、膜中に均一な細孔構造を有する。膜は、RO膜のように無孔であってもよい。
【0014】
RO膜は、ポリマー溶融物又は溶液のいずれかを流延することによって得られ、非対称ポリマー膜は、通常転相法によって製造される。これらの技術では、ポリマー及び溶媒からなる均一なポリマー溶液は、様々な外部効果及び相分離が生じるために、熱力学的に不安定になる。非対称膜構造の形成は、流延溶液の熱力学及び輸送方法の動力学の両方によって制御される。
【0015】
膜の形成は、溶媒を排出し、流延溶液に非溶媒を進入させ、2相系を残すことによって生じる。ポリマーを多く含む相は膜のマトリックスを形成し、ポリマーに乏しく、溶媒及び非溶媒を多く含む相は、細孔を充填する。蒸発/クエンチ条件、最初の厚さ及びポリマー溶液の組成に応じて、様々な膜構造を得ることができる。
【0016】
非対称膜は、より開いた細孔の副層によって支持された、非常に薄く緻密な皮膜層を特徴とする。緻密な皮膜層は、分離性能を決定し、多孔質の副層は、機械的支持を提供し、全体の流れ抵抗に影響を及ぼす。
【0017】
膜構造、特に孔径及びその分布は、ポリマー、溶媒、非溶媒及び調製条件の選択に応じて、各特定の用途に合わせて制御することができる。
【0018】
RO膜は、それらがどのように流延されるかに応じて対称又は非対称になり得るが、NF又はUF膜の殆どは、膜の中に様々な孔径を有する非対称である。溶質側上の膜の孔径は、透過側の膜の孔径よりも小さく、したがって膜の閉塞を回避する。様々な条件下での膜の安定性及び孔径は、それが膜の寿命及びこの技術を使用する潜在用途数を決定するため、非常に重要である。膜の保持特性の定量的基準は、分子量カットオフであり、これは溶質の90%が膜によって保持される分子量と定義される。さらに、孔径分布(NF及びUFについて)、電荷効果、親水性及び/又は親油性、並びに媒体の極性が、膜の真の透過性に影響を及ぼすことになる。さらに溶質の巨大分子については、溶液中の分子の分子形状が重要な役割を担う。例えば折り畳み分子は、類似の分子量の長い線状分子と比較して、より効率的に膜によって保持される。膜濾過法で行われる物理的方法を説明するために、圧力、誘電パラメータ、膜の透過率などの他のパラメータを考慮に入れなければならない。
【0019】
したがって、NF及びUFは本質的にROの低圧型であり、この場合、生成物としての水の純度は高純度水ほど重要ではなく、或いは除去されることになる溶解固体のレベルは、汽水若しくは海水、又はROによる塩の高い排除率が必要ない用途に一般に見られるレベルよりも低い。NFは、望ましくない塩素化炭化水素及びトリハロメタン(オゾンリスクのある化合物。それらが揮発性である場合に限り、発癌性同様に危険度が高い)を発生させることなく、カルシウム又はマグネシウム塩などの硬質成分を除去することができ、細菌及びウィルス並びに有機関連の有色物質を除去することもできる。ナノ濾過は、農薬並びに地表水及び地下水からの他の有機汚染物質を除去して、飲料水の公共的供給の安全性を確保する一助にするためにも使用される。
【0020】
RO及びNF法は、排除される粒子の電荷の影響を受ける。したがってより高電荷の粒子は、他の非電荷粒子よりも排除される可能性が高く、したがって膜の誘電特性は、排除を促進するための重要な主題である。
【0021】
誘電性の排除は、様々な誘電率の媒体の間の界面における、イオンとイオンによって誘導される結合電荷との相互反応によって生じ、これが濾過の機構の1つとみなされる。さらに、円柱のような閉じた形状の細孔からの誘電性の排除力は、スリットのような比較的開いた形状の細孔からの誘電性の排除力よりも本質的に強い。
【0022】
RO膜を得るための溶融物又は溶液からの流延の他に、ナノ濾過のための非対称膜は、大部分は転相と呼ばれる方法によって製造され、これは、3つの主な方法、浸漬析出(湿式−流延)、乾燥−流延及び熱誘導性相分離によって達成することができる。
【0023】
当技術分野で公知の方法では、膜孔径及び孔径分布を制御することができない。したがって、均一なナノ細孔を作製する新規な方法を開発するために幾つかの研究が行われている。
【0024】
以下の構造1の芳香族ポリスルホン(PSU)は、主鎖骨格中にスルホン基に結合したフェノキシド環を含む高性能の工学的熱可塑性物質のファミリーである。それらは、ビスフェノールA及びジ−p−ジクロロジフェニルスルホンの間の反応によって得られる。
【化1】
【0025】
1960年代のポリスルホンの開発以来、それらは膜材料として、主にUF及びROの領域で広範に使用されてきたが、他の工業及び医療用途も周知である。これらのポリマーは、優れた酸化、熱及び加水分解安定性と共に優れた強度及び柔軟性、良好な機械特性及びフィルム形成特性、並びに極度のpH、酸化及び酸触媒加水分解に対する耐性を示す。しかしかかる利益にもかかわらず、それらは幾つかの欠点を有する。これらの幾らか疎水性の性質は、親水性の性質を要する幾つかの水性膜用途においては相当制限を受ける。親水性の強化は、事前に形成したポリスルホン膜に、様々な物理的及び化学的な表面処理手順を施し、又は他の親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)などの幾つかの添加剤で膜の流延溶液をドープして汚染を低減し、膜にさらなる望ましい特性を付与することによって達成される。合成膜の表面特性を変化させる別の異なる方法は、流延の前にポリマーを化学修飾し(置換によって官能基を付加する)、したがって変性誘導体から新規な膜を形成することである。化学修飾は、ポリマー主鎖上へのイオン交換基、潜在的架橋部位及び水中に存在する有害な又は特定の汚染物質の錯体形成のための結合部位を導入する可能性を付与する(US3,709,841)。
【0026】
これらの目的では、様々な官能基がポリスルホンポリマー上に導入されている。カルボキシル化及びスルホン化手順は、親水性及びカチオン交換膜をもたらしている(Noshay及びRobeson、1976年)。ハロメチル化反応(クロロ及びブロモメチル化)は、アニオン交換及び他の官能化誘導体に有用な中間体をもたらしている。
【0027】
リチオ化も、ポリスルホンの官能化のための多目的ポリスルホンの修飾ツールである。カルボキシル化ポリスルホンは、中でもリチオ化中間体からCO2の付加によって得ることができ、これはその高い親水性によりUF、NF及びRO法における有用な膜材料となる(Tremblayら、1991年;US4,894,159)。
【0028】
N−含有官能基を有するポリスルホンは、リチオ化反応によっても調製されている(Rodemann及びStaude、1994年;Rodemann及びStaude、1995年)。
【0029】
ポリスルホンのリチオ化は、ヘテロ原子促進性の方法である。スルホン基は、それによって誘導される強力な電子吸引作用により、以下の式に示されるように隣接するオルト位にリチウムを誘導する(Guiverら、1988年;Guiverら、1989年)。
【化2】
【0030】
ポリマー変性反応におけるスルホン酸基の結合によって合成されたスルホン化芳香族ポリスルホン(スルホン化後の経路)は、市販のポリスルホンの穏やかなスルホン化手順を開発したNoshay及びRobesonの先駆的研究以来、調査されつつある(Noshay及びRobeson、1976年)。この手法には、逆浸透用の脱塩膜及び関連の水精製用途の領域で大きな関心が集まった(Johnsonら、1984年)。クロロスルホン酸及び三酸化硫黄−リン酸トリエチル錯体などの様々なスルホン化剤が、この変性に使用されている。これらのスルホン化後の反応では、スルホン酸基は、以下の式に示すように芳香族エーテル結合(芳香族求電子置換を介する)に対して活性なオルト位に限定される。
【化3】
【0031】
ポリマー主鎖上へのリン基の組込みは、優れた熱安定性及び難燃性を付与することができる。リンは、高い炭化収率を生じることによってその難燃効果をもたらす。加熱下では、まずリン含有基が分解し、次いでリンを多く含む残基を形成する。この残基は、熱耐性を介してポリマーのさらなる分解を防止し、ポリマーの分解温度を高レベルに上昇させる一助となる。
【0032】
有機合成及び分子認識のための有機ホウ素化合物のルイス酸結合特性に利益があるという相当な証拠がある。三角形Sp2混成ボロン酸RB(OH)2は、三角面の中性ボロン酸エステルの可逆的形成によって、又はより好ましくはイオン対Sp3混成四面体アニオンを含むとみなされる機構を介して、親水性ジオールと結合する。ポリマー構造への電子不足のホウ素中心の組込みは、例えばそれがドナーアクセプター結合を介してポリマーをさらに操作する機会を付与する場合に特に魅力がある。ホウ素含有ポリマーはまた、極性側の基を有する官能化ポリマーの合成における中間体として主な役割を担い、バッテリー、高性能難燃剤用のポリマー電解質として、並びにプレセラミック及び光揮性材料として使用される。
【0033】
より良好な環境上の解決及びより清浄な技術に対する国際的な要求によって、膜技術は科学の最先端になりつつある。したがって、非常に劇的な機械的条件及び化学的悪化条件下で機能することができる、膜を詰まらせることのない、溶質の高流束及び高保持率のより良好で簡単な逆浸透、ナノ濾過及び限外濾過膜に対する探求が急務である。さらに、今日のものよりもはるかに良好に機能することができる任意の特定の膜に対する探求によって、さらに良好な膜の使用、価格、技術、用途の結果を得ることができよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、変性ポリスルホン並びに逆浸透、精密濾過、ナノ濾過及び限外濾過に適した膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
一態様では、本発明は、フェニル環の1つ又は複数において、(i)−CO−R1、(ii)−CON(R2)R3、(iii)−B(OR2)2、(iv)−P(=O)(OR2)2、及び(v)ポリマー主鎖の2個の鎖を結合する−CO−O−R4−O−CO−(R1はOH、ハロヒドロカルビルオキシ、単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体であり、R2はH又はヒドロカルビルであり、R3は単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体であり、R4はアルキレンである)から選択される官能基によって置換されている変性ポリスルホンポリマーに関する。
【0036】
別の態様では、本発明は、前記変性ポリスルホンポリマーから構成されるポリスルホン膜に関する。
【0037】
本発明はさらに、逆浸透、精密濾過、ナノ濾過及び限外濾過のための新規な膜の新規な調製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】市販のポリスルホン膜1によって決定した浸透圧への純水の透過率依存を示す図である。水流束Jv対圧力;Lp=45.248L/時間*m2*P。
【図1B】市販のポリスルホン膜1によって決定した浸透圧へのCaCl2塩溶液の透過率依存を示す図である。CaCl20.1%の流束対圧力;Lp=41.06L/時間*m2*P。
【図2A】異なる圧力下及び異なる塩濃度で、カルボン酸基を有するポリスルホン膜(ポリマー4)によるCaCl2の排除率(R)を示す図である。CaCl2に対して:ひし形=0.1%、四角=1%、及び三角=3%。
【図2B】異なる圧力下及び異なる塩濃度で、ポリスルホン膜(ポリマー1)によるNaCl塩の排除率(R)を示す図である。NaClに対して:ひし形=0.5%、及び四角=1%。
【図3A】異なるポリマーから作製された膜に対するNaCl0.1%の排除率を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1(本発明者の実験室で調製);(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;(5)ホスホン酸基を有するポリスルホン19。
【図3B】異なるポリマーから作製された膜に対するCaCl20.1%の排除率を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1(本発明者の実験室で調製);(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;(5)ホスホン酸基を有するポリスルホン19。
【図4A】異なる膜によるCaCl20.1%の排除率を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;並びに(5)マンノース基を有するポリスルホン12;(6)ネオマイシン基を有するポリスルホン13;(7)ガラクトース基を有するポリスルホン15;(8)クロロエタン基を有するポリスルホン10;(9)クロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11;(10)クロロオクタン基を有するポリスルホン8;(11)リン酸エステル基を有するポリスルホン18;(12)ボロン酸基を有するポリスルホン16;(13)ホスホン酸基を有するポリスルホン19;及び(14)ポリキノン系ポリスルホン3。
【図4B】異なる膜による純水流束を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;並びに(5)マンノース基を有するポリスルホン12;(6)ネオマイシン基を有するポリスルホン13;(7)ガラクトース基を有するポリスルホン15;(8)クロロエタン基を有するポリスルホン10;(9)クロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11;(10)クロロオクタン基を有するポリスルホン8;(11)リン酸エステル基を有するポリスルホン18;(12)ボロン酸基を有するポリスルホン16;(13)ホスホン酸基を有するポリスルホン19;及び(14)ポリキノン系ポリスルホン3。
【図5】膜1〜13(膜の数字は上記図4に対するのと同じである)による2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩0.1%の排除率を示す図である。
【図6A】異なる膜による純水透過率を示す図である。異なる主鎖基を有するポリマーから調製した膜:ポリスルホン1(ひし形)、ポリフルオロスルホン2(四角)及びポリキノン系ポリスルホン3(三角)。
【図6B】異なる膜によるCaCl20.1%の排除率を示す図である。異なる主鎖基を有するポリマーから調製した膜:ポリスルホン1(ひし形)、ポリフルオロスルホン2(四角)及びポリキノン系ポリスルホン3(三角)。
【図6C】異なる膜による純水透過率を示す図である。ポリマー骨格中に異なる官能基を有するポリマーから調製した膜:クロロエタン基を有するポリスルホン10(ひし形);及びクロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11(四角)。
【図6D】異なる膜によるCaCl20.1%の排除率を示す図である。ポリマー骨格中に異なる官能基を有するポリマーから調製した膜:クロロエタン基を有するポリスルホン10(ひし形);及びクロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11(四角)。
【図7A】ポリマー4から調製した、カルボン酸基を含むポリスルホン膜による高分子量の有機巨大分子の排除率を示す図である。PEG(ポリエチレングリコール)600、1000、4000、10000及び20000Daの排除率を示す。
【図7B】ポリマー4から調製した、カルボン酸基を含むポリスルホン膜による高分子量の有機巨大分子の排除率を示す図である。PEG4000Da、PVA(ポリビニルアルコール)130000Da及びPAA(ポリアクリル酸)5000Daの排除率を示す。
【図8A】大腸菌(E.coli)により攻撃され及びDAPIで塗布された、ネオマイシン基を有しない対照膜の蛍光顕微鏡検査写真を示す図である。
【図8B】大腸菌により攻撃され及びDAPIで塗布された、ネオマイシン基を有する膜の蛍光顕微鏡検査写真を示す図である。
【図8C】大腸菌で攻撃され及びPIで塗布された、ネオマイシン基を有する膜の蛍光顕微鏡検査写真を示す図である。
【図9A】ポリスルホン1から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9B】発泡ポリスルホン1から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9C】マンノース基を有するポリスルホン12から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9D】ガラクトース基を有するポリスルホン14から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9E】ネオマイシン基を有するポリスルホン13から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9F】ホスホン酸基を有するポリスルホン19から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9G】ホスホン酸エステル基を有するポリスルホン18から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9H】クロロエタン基を有するポリスルホン10から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図10A】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す図である:エッチング前(20〜50nm)。図の左の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【図10B】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す図である:1時間エッチング後(20〜100nm)。図の左の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【図10C】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す図である:6時間エッチング後(80〜100nm)。図の左の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【図11A】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す図である:エッチング前(50〜100nm)。
【図11B】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す図である:1時間エッチング後。
【図11C】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す図である:2時間エッチング後。
【図12A】加水分解前(ひし形)、並びに1時間後(長方形)、2時間後(三角)及び6時間後(四角)に測定した水流束を示す図である。
【図12B】加水分解前(ひし形)、並びに1時間後(長方形)、2時間後(三角)及び6時間後(四角)に測定したCaCl20.1%の排除率を示す図である。
【図13A】塩基加水分解法によって架橋ポリスルホン7から調製した単分散ナノ多孔質膜の、加水分解前(ひし形)並びにNaOH2Mで6時間加水分解後(四角)及びNaOH4Mで6時間加水分解後(三角)の水流束測定値を示す図である。
【図13B】塩基加水分解法によって架橋ポリスルホン7から調製した単分散ナノ多孔質膜の、加水分解前(ひし形)並びにNaOH2Mで6時間加水分解後(四角)及びNaOH4Mで6時間加水分解後(三角)のCaCl20.1%の排除率測定値を示す図である。
【図14A】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、2時間2MNaCl加水分解後の水流束測定値を示す図である。
【図14B】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、2時間2MNaCl加水分解後のCaCl20.1%(ひし形)及びNaCl0.1%(四角)の排除率測定値を示す図である。
【図14C】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、12時間2MNaCl加水分解後の水流束測定値を示す図である。
【図14D】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、12時間2MNaCl加水分解後のCaCl20.1%(ひし形)及びNaCl0.1%(四角)の排除率測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一態様では、本発明は、フェニル環の1つ又は複数において、
(i)−CO−R1(R1は、−OH、ハロヒドロカルビルオキシ、単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(ii)−CON(R2)R3(R2はH又はヒドロカルビルであり、R3は単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(iii)−B(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、
(iv)−P(=O)(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、及び
(v)ポリマー主鎖の2個の鎖を結合する−CO−O−R4−O−CO−(R4はアルキレンである)
から選択される官能基によって置換されている変性ポリスルホンポリマーに関し、
但し、この変性ポリスルホンは、式[−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−]の繰返し単位、及びスルホン基に隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトである2個のカルボキシ基を含むカルボキシル化ポリスルホンではない。
【0040】
本発明の範囲から排除されるカルボキシル化ポリスルホンは、以下の例3のポリマー4である。それは、式[−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−]の繰返し単位、及びスルホン基に隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトである2個のカルボキシ基を含む。このことはGuiverら、米国特許第4,894,159号に記載されている。
【0041】
本発明によれば、基R2としての、又はヒドロカルビルオキシ基R1の一部としてのヒドロカルビルは、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子の芳香族基を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、非環式又は環式であってよい。ヒドロカルビルは、それに限定されるものではないが、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、より好ましくはエチル若しくはオクチルなどの、好ましくは2〜8個の炭素原子のアルキル基であってよく、又はヒドロカルビルは、アルケニル、例えばビニル;アルキニル、例えばプロパルギル;シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル;フェニル若しくはナフチルなどのアリール;又はベンジル及びフェネチルなどのアラルキル基であってよい。
【0042】
ハロヒドロカルビルオキシ基R1では、ハロは、F、Cl、Br及びIなどのハロゲン原子、好ましくはClであり、R1は、アミノ、シリル、ヒドロキシル、カルボキシ及びそれらのエステル、チオール、カルボキサミド、フェノキシなどの1つ若しくは複数のさらなる基若しくは残基、又は糖類、薬物、抗生物質、酵素、ペプチド、DNA、RNA、NADH、ATP若しくはADPから選択される薬剤の残基によってさらに置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、R1は、Cl−C2〜C8アルコキシ、特にCl−オクチルオキシ及びCl−エトキシである。
【0043】
本発明の単糖類は、フラノース又はピラノース形態のペントース及びヘキソースから選択することができ、それに限定されるものではないが、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース、リボース及びキシロースが含まれる。好ましい実施形態では、単糖類は、ガラクトース、グルコース又はマンノースである。単糖類の誘導体には、エーテル、例えばC1〜C6アルキル、フェニル及びベンジルエーテル、例えばC1〜C6アルカン酸、安息香酸又はフェニル酢酸とのエステル、並びにイソプロピリデン及びグリコシド誘導体が含まれる。一実施形態では、誘導体は、ガラクトースのテトラピバロイルエステルによって例示されるアルカノイルエステルである(例15)。別の実施形態では、R1は、2個のイソプロピリデン基によって置換されているマンノース残基である(例11)。
【0044】
本発明のオリゴ糖は、先に定義の2〜10個の単糖類残基を含むことができ、それに限定されるものではないが、スクロース、又は単糖類誘導体について先に定義した通りのその誘導体が含まれる。
【0045】
本発明の一実施形態では、単糖又はオリゴ糖誘導体は、アミノグリコシド抗生物質である。これらの化合物は、2個のアミノ又はグアニジノ基及び1つ又は複数の糖類又はアミノ糖類で置換されているイノシトール部分を含む。本発明に従って使用することができるアミノグリコシドには、それに限定されるものではないが、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アミカシン及びカナマイシンが含まれる。好ましい一実施形態では、R3はネオマイシンである。
【0046】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、官能基はCOR1であり、R1はOH、Cl−C2〜C8アルコキシ、特にCl−オクチルオキシ及びCl−エトキシ、又は2個のイソプロピリデン基によって置換されているマンノースである。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態では、官能基は、−CON(R2)R3(R2はHであり、R3は、ガラクトース、グルコース若しくはマンノース又はそれらの誘導体から選択される単糖類の残基である)、又はアミノグリコシド抗生物質、好ましくはネオマイシンの残基である。単糖類誘導体の例には、テトラピバロイルガラクトースなどのC2〜C6アルカン酸とのエステルが含まれる。
【0048】
本発明のさらに好ましい実施形態では、官能基は−B(OR2)2であり、R2はH又はC1〜C6、好ましくはC4アルキルである。
【0049】
本発明のさらにより好ましい実施形態では、官能基は−P(=O)(OR2)2であり、R2はH又はC1〜C6、好ましくはC2アルキルである。
【0050】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、官能基は、カルボキシ基を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖を架橋する−COO−R4−OCO−であり、R4はC2〜C4アルキレン、好ましくはエチレンである。
【0051】
本発明によれば、ポリスルホンポリマーは、
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−及び
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
から選択される繰返し単位を含むことができ、
式中、
X1〜X5は、同じ又は異なっており、それぞれは、−O−、−S−、−P(R)−、−P(=O)(R)−、−B(R)−、−N(R)−又はR’であり(Rは、ハロゲンによって、又はO、S若しくはNから選択されるヘテロ原子を含む基によって場合によって置換されている脂肪族又は芳香族C1〜C20ヒドロカルビルであり、R’は、O、S、P(R)、P(O)(R)、B(R)、N(R)から選択される1つ又は複数のヘテロ原子によって場合によって中断されている、又はハロゲン及び/又は=O、=S、−P(R)2、−P(=O)(R)2、−B(R)2、−N(R)2によって置換されている脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビレン、又は脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビルである)、
フェニル環の1つ又は複数は、先に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している。
【0052】
先に定義のC1〜C20ヒドロカルビル又はヒドロカルビレンは、アルキル若しくはアルキレン、アルケニル若しくはアルケニレンなどの直鎖又は分岐の脂肪族基、シクロアルキル若しくはシクロアルキレンなどの環式基、又はフェニル若しくはフェニレン及びナフチル若しくはナフチレンなどの芳香族基であってよい。
【0053】
ヒドロカルビル基Rは、非置換であってよく、又はF、Cl、Br及びIなどのハロゲンから選択される1つ又は複数の原子、好ましくはF、並びにO、例えば=O、S、例えば=S、及びN、例えばNH2を含む1つ若しくは複数の基によって置換されていてもよい。
【0054】
ヒドロカルビレン基R’は、非置換であってよく、又はF、Cl、Br及びIなどのハロゲンから選択される1つ又は複数の原子、好ましくはF、並びにO(例えば=O)、S(例えば=S)、P(R)2、P(O)(R)2、B(R)2、N(R)2又は先に定義の脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビルを含む1つ若しくは複数の基によって置換されていてもよく、又は1つ若しくは複数のヘテロ原子−O−若しくは−S−が、又は基−P(R)−、−P(=O)(R)−、−B(R)−若しくは−N(R)−が挿入されていてもよい。本明細書で使用される場合、C1〜C20ヒドロカルビレンは、ヘテロ原子又は他の基によるそれらの置換又は挿入とは独立に、2個のフェニル基間の各炭素鎖における炭素原子の数を指すことに留意されたい。
【0055】
基X1〜X5の例には、それに限定されるものではないが、−O−、−S−、直鎖又は分岐のアルキレン、例えば−CH2−、−C(CH3)2−、−CH2−(CH2)n−CH2−(nは0〜10である);アルキレン鎖の一部としての−CF2−、−C(CF3)2−、−C(=O)、−CH(NRR)−及び−CH(PRR)−などの直鎖又は分岐の置換アルキレン;−フェニレン−及び置換フェニレンが含まれる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、X1、X2、X4及びX5は−O−であり、X3は−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−である。
【0057】
一実施形態では、本発明のポリスルホンポリマーは、フェニル環の1つにおいて、好ましくはスルホン基に対してオルトの1個の官能基を含む。別の実施形態では、ポリスルホンは、2個の異なるフェニル環において、好ましくはスルホンに対してオルトの2個又は3個の同じ又は異なる官能基を含む。
【0058】
好ましい一実施形態では、ポリスルホンポリマーは、式
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−、又は
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X1及びX2は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む。
【0059】
より好ましい一実施形態では、X1及びX2はOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環は、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている。より好ましい一実施形態では、ポリスルホンポリマーは、スルホンに隣接しているフェニル基の一方において、スルホンに対してオルトの1個の−COOH基、及びスルホンに隣接している他方のフェニル環において、スルホンに対してオルト位のさらなる2個の−COOH基を含み、好ましくはポリマー6(例5)として本明細書で特定されているポリスルホンである。
【0060】
別の好ましい一実施形態では、ポリスルホンポリマーは、式
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X3は、ハロゲンによって、好ましくはFによって場合によって置換されているC2〜C8、好ましくはC3アルキルであり、X4及びX5は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む。
【0061】
より好ましい一実施形態では、先のポリスルホンポリマーにおいて、X3は−C(CH3)2−であり、X4及びX5はOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環は、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている。かかるポリスルホンの例には、(i)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択されるポリスルホン、好ましくはそれぞれポリマー8(例7)及びポリマー10(例9)として本明細書で特定されているポリスルホン、(ii)2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの2個の官能基の1個が−COOHであり、他方のフェニル環において他の官能基がスルホンに対してオルトの2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノースであるポリスルホン、好ましくはポリマー12(例11)として本明細書で特定されているポリスルホン、(iii)2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が−COOHであり、他方のフェニル環において別の官能基がネオマイシン残基であるポリスルホン、好ましくはポリマー13(例12)として本明細書で特定されているポリスルホン、(iv)2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニルであり、他方のフェニル環において他の官能基がβ−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であるポリスルホン、好ましくはポリマー14(例13)として本明細書で特定されているポリスルホン、(v)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であるポリスルホン、好ましくはポリマー15(例14)として本明細書で特定されているポリスルホン、(vi)スルホン基に隣接している2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトのボロン酸官能基−B(OH)2を含むポリスルホン、好ましくはポリマー16(例15)として本明細書で特定されているポリスルホン、及び(vii)2個の同一のホスホン酸又はエステル基−P(=O)(OR2)2(R2は、2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトのH又はC1〜C6アルキル、好ましくはエチルである)を含有するポリスルホン、好ましくはそれぞれポリマー19(例18)及びポリマー18(例17)として本明細書で特定されているポリスルホン、及び(viii)官能基が、スルホンに対してオルトである位置を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖と結合している−COO−CH2−CH2−OCO−である架橋ポリスルホン、好ましくはポリマー7(例6)として本明細書で特定されているポリスルホンが含まれる。
【0062】
別のより好ましい実施形態では、X3は−C(CF3)2−であり、X4及びX5はOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環は、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている。その例には、(i)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、COOHであるポリスルホンポリマー、好ましくはポリマー5(例4)として本明細書で特定されているポリスルホン、(ii)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択されるポリスルホン、好ましくはそれぞれポリマー9(例8)及びポリマー11(例10)として本明細書で特定されているポリスルホン、(iii)スルホンに隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの同一のボロン酸官能基−B(OH)2又はそのアルキルエステルを含有するポリスルホン、好ましくはポリマー17(例16)として本明細書で特定されているポリスルホンが含まれる。
【0063】
別の態様では、本発明は、本発明の変性ポリスルホンポリマーから構成される膜に関する。これらの膜は、逆浸透及び精密濾過、特にナノ濾過又は限外濾過に有用である。
【0064】
先の背景技術部分で言及した通り、当技術分野のポリスルホンポリマーは多くの利点を有している。それらは広範なpH範囲で操作され、優れた熱及び機械特性を有し、圧縮耐性があり、耐塩素性を示す。しかしそれらは疎水性であり、有機溶媒への耐性に制限がある。カルボキシル及びスルホン酸基を主鎖に導入して親水性及びカチオン交換膜を得ることによって、ポリスルホンの特性を改善する試みがなされている。
【0065】
本発明では、ポリスルホンは、電荷、親水性基及び様々な官能性を有する基を付加することによって修飾され、それによって膜の性能が改善される。官能基の幾つかは、高い親水性を付与する。修飾には、流束及び選択性に関して所望の性能に膜を最適化するようにポリマー構造を適合することが求められる。本明細書において例に示されるように、本発明の膜は、常用のナノ濾過領域の塩に対する類似の排除率を示すと同時に、それらの幾つかは、著しく高い流束を示す。
【0066】
本発明の膜は、0.02〜400μmの範囲、好ましくは2μmの厚さを特徴とする。
【0067】
本発明の膜はさらに、10nm〜10μmの範囲の均一な孔径を特徴とする。10〜100nmの範囲、好ましくは10nmの均一な孔径の膜が、ナノ濾過における使用に適している。100nm〜1μmの範囲、好ましくは200nmの均一な孔径の膜が、限外濾過における使用に適している。1〜10μmの範囲、好ましくは2μmの均一な孔径の膜が、精密濾過における使用に適している。
【0068】
さらなる一態様では、本発明はまた、単分散ナノ多孔質膜の新規な調製方法を提供する。これらの方法は、ポリマー膜の流延中に適用され、選択的な単分散ナノホールを形成する。
【0069】
第1の方法は、ポリマーネットワークにそれら自体を体系化する選択的ナノ粒子の存在下で膜を調製することにある。次いで、適切な溶媒によるナノ粒子の溶解によって、体系化された均一なナノ細孔の膜が得られる。
【0070】
本発明はしたがって、
(i)浸漬析出誘導性の転相法によってポリマー膜を調製するステップ、
(ii)ナノ粒子をポリマーネットワークに導入するステップ、及び
(iii)前記ナノ粒子を溶解することができる薬剤によってナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜を調製する方法を提供する。
【0071】
この方法は、公知の市販の膜並びに本発明の新規な膜の修飾に適している。好ましい実施形態では、該方法は、ポリスルホン膜に使用される。
【0072】
一実施形態では、該方法は、それに限定されるものではないが、式
−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−
の繰返し単位を含むポリマー1として本明細書で特定される市販のポリスルホンなどの市販のポリスルホンポリマーから製造される膜に使用される。
【0073】
他の実施形態では、該方法は、本発明の新規な変性ポリスルホンポリマー、例えばポリマー7として本明細書で特定されている架橋ポリスルホンから構成される膜の調製に使用される。
【0074】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)及び(ii)は、同時に実施される。
【0075】
この方法では任意の適切なナノ粒子を使用することができる。それらは金属酸化物、好ましくはFe2O3;膜にナノホールを残す、酸若しくは塩基によって溶解することができる塩のナノ粒子であってよく、又はそれらは水若しくは有機溶媒で溶解することができる有機化合物のナノ粒子であってもよい。
【0076】
より好ましい一実施形態では、ナノ粒子はFe2O3ナノ粒子である。それらは、好ましくはFeCl3の加水分解によってその場で調製され、Fe2O3ナノ粒子は、磁場によってポリマーネットワーク内に配列している。ナノ粒子は、酸エッチングによって、例えば塩酸で除去される。
【0077】
したがって好ましい一実施形態では、本発明は、
(i)ポリスルホン、FeCl3の加水分解によってその場で調製されるFe2O3ナノ粒子及び溶媒を含む流延溶液を調製するステップ、
(ii)膜試料をガラス表面上に流延し、溶媒を蒸発させ、流延フィルムをガラスプレートと一緒に氷冷水に浸漬するステップ、
(iii)ガラスプレートから分離した薄いポリマーフィルムを洗浄し、湿った膜をプレス圧縮するステップ、並びに
(iv)HClでのエッチングによってFe2O3ナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がFe2O3ナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を調製する方法を提供する。
【0078】
任意の適切な溶媒を使用することができる。好ましい一実施形態では、溶媒はN−メチルピロリドンである。
【0079】
本発明はまた、逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過において使用するための、先の方法によって得られる膜を包含する。これらの膜は、10nm〜10μm、好ましくは20〜100nm又は50〜100nmの範囲の均一な孔径を有する。
【0080】
本発明はさらに、カルボキシル化ポリスルホンのカルボン酸基を架橋剤で架橋し、その後加水分解するステップを含む、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜の第2の調製方法を提供する。
【0081】
架橋剤は、OH、SH、NH2、シリル、B(OH)2及びP(O)(OH)2、又はそれらの混合物から選択される2個以上の官能基を有する脂肪族、芳香族又は複素環化合物であってよい。
【0082】
好ましい実施形態では、架橋剤は、それに限定されるものではないが、アルキレングリコール、アルキレンジアミン、アルキレンジチオール、アルキレンジシリル、ボロン酸−アルキレン−ホスホン酸又はボロン酸−アルキレン−アミン(アルキレンは、2〜8個の炭素原子を有する)などの二官能性脂肪族化合物である。より好ましい一実施形態では、架橋剤はアルキレングリコール、最も好ましくはエチレングリコールである。
【0083】
架橋剤としてアルキレングリコールが使用される場合、加水分解は、膜を流延及び圧縮した後に、強塩基、好ましくはNaOHで実施される。様々な濃度及び様々な時間でのNaOHによるエチレングリコールエステル結合の塩基加水分解によって、架橋剤の大きさの単分散ナノ細孔が得られる。
【0084】
第2の方法の一実施形態では、加水分解は、架橋モチーフの部分的開裂をもたらし、全て均一な大きさの多数の単分散ナノ細孔の形成を誘導し、その孔径は架橋開裂度によって決定される。
【0085】
第2の方法の別の実施形態では、加水分解は部分的であり、架橋モチーフの片側上のポリマー鎖間に結合の部分的開裂を引き起こし、したがって単分散ナノ細孔及び各アームの末端に官能基を有する、空間内で方向付けられたペンダントアーム(加水分解後)を備える膜の形成を引き起こす。これによって、溶液中の分子との双極性相互反応が可能となり、ホールの周辺にそれらが近付くのを防止する。こうして得られた膜は、誘電性の排除を誘導し、選択的ナノ濾過を可能にする。一実施形態では、架橋分子の半分が除去され、その結果ペンダント基は、末端の官能基と共に旋回したままとなり、それにより単分散ホール及び様々な長さを備え、鎖の末端に双極性相互反応のための官能基を有する鎖の両方を形成する。
【0086】
本発明の第3の方法は、2個のポリマーから構成される膜の内部の酸無水物結合の塩基加水分解によって、2個のポリマーのブレンドからポリマー膜を調製することに関する。
【0087】
この方法は、有機溶媒中にポリスルホン及び無水基を含むコポリマー、例えばポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)を含む均一な流延溶液を調製し、その溶液を流延し、その後300℃で溶媒を蒸発させ、冷水に膜を浸漬し、膜を圧縮し、塩基加水分解にかけ、それによってカルボン酸ナトリウム塩の基を得、酸性化によってそれらをカルボン酸基に変換するステップを含む。加水分解の時間は、膜の特性に影響を及ぼす。
【0088】
好ましい一実施形態では、ブレンドは、ポリスルホン(市販のポリスルホン又は本発明のポリスルホン)及びポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)を含む。
【0089】
本発明の膜は、逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過手順で使用するのに適しており、特に工業、農業又は都市廃水の処理などの水の精製に適している。
【0090】
本発明の新規な技術による膜調製のための様々なポリマーを合成することに成功し、NMR、IR及び13C−(CP−MAS)NMR技術によって特徴付けた。SEM及びAFM技術を使用して、酸エッチング及び塩基加水分解の時間の前後の膜表面上の孔径及び孔径分布の変化を決定した。
【0091】
膜が開発され、水処理用途に高い潜在可能性を示した。合成膜は、18〜50%の範囲の一価イオン及び20〜60%の範囲の多価イオンを排除した。
【0092】
本発明に従って調製された膜は、より高い操作圧力及び水の高流束を有すると同時に、市販の膜と同じ排除率を維持している。同じ又は非常に類似したポリマー構造を有し、転相法によって調製された市販の膜と比較した。調製された膜の特性は、エッチング及び加水分解の時間に大きく依存し、本発明者らの目的に従って、これらの膜の使用が可能となることが示された。本発明者らは、架橋ポリマー単位の塩基加水分解を使用して、孔径分布の均一性を著しく改善できることを見出した。
【0093】
ここで本発明を、以下の非限定的な例によって例示する。
【実施例】
【0094】
材料:
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)はAldrichから購入し、減圧(20mmHg)下で酸化バリウムから分留した。無水THFはAldrichから購入し、窒素下でNa/Kから蒸留した。ピリジンはFlukaから購入し、窒素下で酸化バリウムから蒸留した。n−ブチルリチウムは、ヘキサン中1.6M溶液としてAldrichから購入し、受け取ったまま使用した。塩化チオニルは、Aldrichから購入し、窒素下で蒸留した。エチレングリコールはAldrichから購入し、MgSO4で乾燥させ、真空下で蒸留した。分析等級の無水メタノールは、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。分析純度のポリスルホンポリマー(1)20,000は、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。ポリマーは全て、Aldrichから入手した市販の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,−3,3,3−ヘキサフルオロプロパン又はヒドロキノン、及びビス(4−フルオロフェニル)スルホンから合成した。分析等級のフッ化セシウムは、Aldrichから購入し、加熱ガンで乾燥させた。分析等級の8−クロロ−1−オクタノール、1−クロロエタノール、2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノース、2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミン、ホウ酸トリブチル、ジエチルクロロホスフェート、ナトリウムメトキシド及びDMSOは、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。塩形態のネオマイシンは、Aldrichから購入し、ナトリウムメトキシドで中和した。分析等級のNaCl、CaCl2、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩、ポリエチレングリコール(PEG)600、1,000、4,000、10,000及び20,000Da、ポリビニルアルコール(PVA)130,000Da、並びにポリアクリル酸(PAA)5,000Daは、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。分析純度のポリスチレン−co−無水マレイン酸コポリマー(Mn=1,600)はAldrichから購入し、受け取ったまま使用した。分析純度のDMSO、塩酸及び水酸化ナトリウムの溶液、NaCl及びCaCl2の塩は、Aldrichから入手して、受け取ったまま使用した。
【0095】
(例1)
ポリフルオロスルホンの調製−ポリマー2
【化4】
還流冷却器及びマグネチックスターラーを備えた50mlシュレンクフラスコに、フッ化セシウム1.824g(12mmol)を入れ、窒素を少しずつ流しながら、加熱ガンを使用して、フラスコを70℃まで加熱することにより、塩を乾燥させた。フラスコに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−3,3,3−ヘキサフルオロプロパン1.008g(3mmol)及びビス(4−フルオロフェニル)スルホン0.762g(3mmol)及びNMP7mlを窒素下で添加し、反応物を室温で撹拌して溶解した。次いで、混合物を160℃に維持された油浴内で、窒素下で3時間撹拌することにより加熱した。反応混合物を水に注ぐことにより、ポリマーを単離した。沈殿したポリマーを回収し、熱湯及び熱メタノールで洗浄し、真空下において50℃で乾燥した。得られた最終生成物、ポリマー2は、白色固体(1.6g、収率97%)であり、下記の特徴を備えていた:
【化5】
【0096】
(例2)
ヒドロキノン系ポリスルホンの調製−ポリマー3
【化6】
還流冷却器及びマグネチックスターラーを備えた50mlシュレンクフラスコに、フッ化セシウム1.824g(12mmol)を入れ、窒素を少しずつ流しながら、加熱ガンを使用して、フラスコを70℃まで加熱することにより、塩を乾燥させた。フラスコにヒドロキノン0.33g(3mmol)及びビス(4−フルオロフェニル)スルホン0.762g(3mmol)、及びNMP7mlを窒素下で添加し、反応物を室温で撹拌して溶解した。次いで、混合物を160℃に維持された油浴内で、窒素下で3時間撹拌することにより加熱した。反応混合物を水に注ぐことにより、ポリマーを単離した。沈殿したポリマーを回収し、熱湯及び熱メタノールで洗浄し、真空下において50℃で乾燥した。得られた最終生成物、ポリマー3は、白色固体(1.9g、収率98%)であり、下記の特徴を備えていた:
【化7】
【0097】
(例3)
カルボキシル化ポリスルホンの調製−ポリマー4
【化8】
式1の乾燥ポリスルホン(「発明の背景」を参照)を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。2g(0.0045mol)のポリスルホン1を無水THF(75ml)に溶解し、溶液の温度を−50℃に下げた。THF(10ml)で希釈したn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6Mを2.5mol当量、0.0112mol、7.03ml)を12分かけて、滴下で添加したが、その間に混合物は赤褐色に変化した。30分後、CO2(S)(10g)を30分間かけて、ゆっくりと添加し、ポリマーをクエンチした後、室温までゆっくりと加温させた。THFをシュレンクライン上で蒸発させ、白色のスラリーを生成した。ポリマーを希釈HCl(10%)水溶液に沈殿させ、蒸留水で洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、次の特徴を有する、白色固体としてポリマー4を得た(2g、収率98%):
【化9】
【0098】
(例4)
カルボキシル化ポリフルオロスルホンの調製−ポリマー5
【化10】
前述の例1の乾燥させたポリフルオロスルホン2を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。2g(0.0036mol)のポリフルオロスルホンを無水THF(75ml)に溶解し、溶液の温度を−50℃に下げた。THF(10ml)で希釈したn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6Mを2.5mol当量、0.0091mol、5.68ml)を12分かけて、滴下で添加したが、その間に混合物は赤褐色に変化した。30分後、CO2(S)(10g)を30分間かけて、ゆっくりと添加し、ポリマーをクエンチした後、室温までゆっくりと加温させた。THFをシュレンクライン上で蒸発させ、白色のスラリーを生成した。ポリマーを希釈HCl(10%)水溶液に沈殿させ、蒸留水で洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、白色固体を得た(1.82g、収率88%)。
【化11】
【0099】
(例5)
カルボキシル化ヒドロキノン系ポリスルホンの調製−ポリマー6
【化12】
前述の例2の乾燥させたヒドロキノン系ポリスフホン3を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0030mol)のヒドロキノン系ポリスルホンを無水THF(50ml)に溶解し、溶液の温度を−50℃に下げた。THF(10ml)で希釈したn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6Mを3mol当量、0.0092mol、5.78ml)を12分かけて、滴下で添加したが、その間に混合物は暗褐色に変化した。リチウム化ポリマー溶液を30分間撹拌した後、固体二酸化炭素10gを、30分かけて溶液に添加し、次いで室温までゆっくりと加温させた。THFをシュレンクライン上で蒸発させ、白色のスラリーを得た。生じた白色スラリーを希釈HCl(10%)水溶液に沈殿させてポリマーを回収した後、蒸留水で洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、白色固体としてポリマー6を得た(0.9g、収率63%)。
【化13】
【0100】
(例6)
架橋ポリスルホンの調製−ポリマー7
【化14】
前述の例3のポリマー4を1g(0.0018mol、等量=555グラム/モル繰返し単位)、50mlシュレンクフラスコに入れ、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF10ml中エチレングリコール0.1ml(0.0018mol)溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、以下の特性を有する、褐色固体としてポリマー7を得た(1g、収率90%)。
【化15】
【0101】
(例7)
クロロオクタン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー8
【化16】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な8−クロロ−1−オクタノール1.27ml(2mol当量、0.0075mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させることにより回収した。生成物の精製は、熱いCH2Cl2に溶解し、エタノールに沈殿させ、真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、以下の特性を有する、褐色固体としてポリマー8を得た(1.52g、収率98%)。
【化17】
【0102】
(例8)
クロロオクタン基を有するポリフルオロスルホンの調製−ポリマー9
【化18】
1g(0.0015mol、当量=666グラム/モル繰返し単位)のポリマー5を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な8−クロロ−1−オクタノール1.05ml(2mol当量、0.0062mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させることにより回収した。生成物の精製は、熱いCH2Cl2に溶解し、エタノールに沈殿させ、真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより行い、以下の特性を有する、褐色固体としてポリマー9を得た(1.39g、収率95%)。
【化19】
【0103】
(例9)
クロロエタン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー10
【化20】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な1−クロロエタノール0.5ml(2mol当量、0.0075mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、エタノールで洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、回収し、褐色固体としてポリマー10を得た(1.1g、収率91.66%)。
【化21】
【0104】
(例10)
クロロエタン基を有するポリフルオロスルホンの調製−ポリマー11
【化22】
1g(0.0015mol、当量=666グラム/モル繰返し単位)のポリマー5を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な1−クロロエタノール0.4ml(2mol当量、0.0062mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、エタノールで洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより回収し、褐色固体としてポリマー11を得た(1.1g、収率97%)。
【化23】
【0105】
(例11)
2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−マンノフラノース基を有するポリスルホンの調製−ポリマー12
【化24】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF(10ml)に溶解した過剰な2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノース0.962g(1.5mol当量、0.0056mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより回収し、褐色固体としてポリマー12を得た(1.05g、収率55%)。
【化25】
【0106】
(例12)
ネオマイシン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー13
【化26】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を100mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(50ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。塩の形のネオマイシン(Aldrichから購入)を、NaOCH3溶液で処理し、アミノ基の電荷を中和した。2g(0.0021mol)のネオマイシン塩(ネオマイシン1mol当たりH2SO4を3mol含有)を50mlの無水CH3OHに溶解した。次いで、NaOCH3溶液(6mol当量、0.63ml)を室温にて、滴下で添加し、30分間撹拌した。CH3OH溶媒を真空蒸留により除去した。新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF(50ml)中に溶解したネオマイシン1.4g(0.5mol当量、0.0024mol)溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、室温にて乾燥させることにより回収し、黄色固体としてポリマー13を得た(1.53g、収率70%)。
【化27】
【0107】
(例13)
2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー14
【化28】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF(10ml)に溶解した過剰な2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミン1.945g(1.5mol当量、0.0037mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより回収し、褐色固体としてポリマー14を得た(2.01g、収率71%)。
【化29】
【0108】
(例14)
β−D−ガラクトピラノシルアミン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー15
【化30】
0.5g(0.0003mol)のポリスルホン18を、無水メタノール(10ml)に溶解し、触媒量のナトリウムメトキシド(MeOH中0.5M溶液)により、0℃にて処理した。溶液を室温にて19時間撹拌した。減圧下でメタノールを蒸発させ、生成物をCH2Cl2及びエタノールで洗浄し、最後に真空オーブンで、室温にて乾燥させ、黄色固体としてポリマー15を得た(0.36g、収率95%)。
【化31】
【0109】
(例15)
ボロン酸基を有するポリスルホンの調製−ポリマー16
【化32】
乾燥ポリスルホン1を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0022mol)のポリスルホン1を無水THF(50ml)に溶解し、混合物を−50℃に冷却した。THF(10ml)で希釈したn−BuLi(ヘキサン中1.6Mを0.0033mol、1.5mol当量、2.11ml)を10分かけて、滴下で添加した。生じた赤褐色の溶液を−50℃にて30分間撹拌した後、−78℃に冷却した。THF(10ml)中ボロン酸トリブチル1.21ml(2mol当量、0.0045mol)溶液を滴下で添加した。生じた透明な溶液を同じ温度にて、さらに2時間撹拌した後、一晩室温まで加温させた。溶媒の殆どを、30分間真空に蒸発させ、ボロン酸エーテル含有基を得た。希釈HCl(100ml、3M)を添加し、1時間激しく撹拌することにより、生成物を加水分解した。生じた白い沈殿を蒸留水で洗浄し、濾過し、減圧下で50℃にて乾燥させ、所望のポリマー16にボロン酸基を白色固体として与えた(1.05g、収率88%)。
【化33】
【0110】
(例16)
ボロン酸基を有するポリフルオロスルホンの調製−ポリマー17
【化34】
乾燥ポリフルオロスルホン2を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0018mol)のポリフルオロスルホン2を無水THF(50ml)に溶解し、混合物を−50℃に冷却した。THF(10ml)で希釈したn−BuLi(ヘキサン中1.6Mを0.0045mol、2.5mol当量、2.84ml)を10分かけて、滴下で添加した。生じた赤褐色の溶液を−50℃にて30分間撹拌した後、−78℃に冷却した。THF(10ml)中ボロン酸トリブチル1.46ml(3mol当量、0.0054mol)溶液を滴下で添加した。生じた透明な溶液を同じ温度にて、さらに2時間撹拌した後、一晩室温まで加温させた。溶媒の殆どを30分間真空に蒸発させ、黄色固体としてボロン酸エーテル含有基を得た。
【化35】
希釈HCl(100ml、3M)を添加し、1時間激しく撹拌することにより、生成物を加水分解した。生じた白い沈殿を蒸留水で洗浄し、濾過し、減圧下で50℃にて乾燥させ、所望のポリマー17にボロン酸基を白色固体として与えた(1.1g、収率94.8%)。
【化36】
【0111】
(例17)
ホスホネートエステル基を有するポリスルホンの調製−ポリマー18
【化37】
乾燥ポリフルオロスルホン1を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0022mol)のポリフルオロスルホン1を無水THF(50ml)に溶解し、混合物を−50℃に冷却した。THF(10ml)で希釈したn−BuLi(ヘキサン中1.6Mを0.0056mol、2.5mol当量、3.53ml)を10分かけて、滴下で添加した。生じた赤褐色の溶液を−50℃にて30分間撹拌した後、−60℃に冷却した。無水THF(10ml)中ジエチルクロロホスフェート0.98ml(3mol当量、0.0067mol)溶液を10分かけて、滴下で添加した。反応混合物をこの温度に4時間維持した後、室温にて一晩撹拌した。水を添加し、生成物を水及びエタノールで幾度か洗浄した。ポリマーを真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、黄色固体としてポリマー18を得た(1.14g、収率71%)。
【化38】
【0112】
(例18)
ホスホン酸基を有するポリスルホンの調製−ポリマー19
【化39】
0.5g(0.0007mol)のホスフェートジエステル基を有する、上述の例のポリマー18を、NaOH(2M)溶液20ml中で、5時間懸濁した。次いで、溶液を濃塩酸で酸性化し、pH=7に調節した。黄色の沈殿をメタノールで洗浄し、最後に、真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、黄色固体としてポリマー19を得た(0.31g、収率75%)。
【化40】
【0113】
II.新規な膜の調製及び性能
【0114】
方法及び装置
試験は全て、19.63cm2の活性面積を有する平坦圧力セルで行ったが、加えた圧力は2〜15気圧の範囲であった。
【0115】
Conductometer(モデルDDS−11A)は、透過溶液及び供給溶液の導電性の測定のために用いた。
【0116】
NMR法は、透過溶液及び供給溶液の有機物の構造及び濃度を分析するために用いた。NMR法及び13C−(CP−MAS)NMR法は、合成ポリマーの構造を分析するために用いた。スペクトルは、Bruker AV300及びAV500分光計で記録した。
【0117】
赤外(IR)スペクトル(Bruker、Vector22)は、官能基決定のために用いた。
【0118】
AFM(Model Autoprobe CP)、SEM(Model Quanta200)、HRSEM(Model Leo982)は、表層及び膜横断面の構造、形態及びトポグラフィーの分析のために用いた。
【0119】
GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)(Model Waters2000)は、一部のポリマーの数平均(Mn)、重量平均(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)を決定するために用いた。残念なことに、THF溶媒中の低溶解度のために、又はその溶媒と比べて同じ屈折率のために、合成ポリマーの全てがGPC測定に適しているとは限らなかった。
【0120】
蛍光顕微鏡(Model Carl Zeiss 426126)は、膜表面の細菌の発生を分析するために用いた。
【0121】
膜ポリマーの合成
同じ骨格主鎖及びそれに結合した異なる官能基を有する芳香族ポリスルホンポリマーは、上記例に示したように合成した。さらに、異なる骨格主鎖を有するポリマーも、比較のために合成した。これらのポリマーを膜に変換して、膜性能に対する異なる官能基の影響を測定した。
【0122】
膜調製
RO膜は、DMSO中にポリマーを再溶解させて20%透明溶液を得、次いで、この溶液を清浄ガラス基板上に流延することによって調製した。
【0123】
NF膜及びUF膜は、DMSO中にポリマーを再溶解させて20%透明溶液を得、この溶液を清浄ガラス基板上に流延し、このフィルムをオーブン中窒素雰囲気下で300℃において2分間注意深く乾燥させることによって調製した。次いで、この乾燥フィルムを脱イオン水浴中に0℃で一晩浸漬させた。
【0124】
測定
膜を空気で30分間加圧した後、供給溶液及び透過溶液を集めた。これらの2つの溶液の導電率を導電率計で測定した。
【0125】
水流束は、単位時間当たり膜を透過する透過溶液の容量を測定することによって計算した。
【0126】
一連の異なる膜を、種々の塩溶液及び有機溶液で試験した。これらの実験は、0.1%の、NaCl、CaCl2、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩、ポリエチレングリコール(PEG)(分子量600、1,000、20,000)、ポリビニルアルコール(PVA)(分子量130,000)及びポリ(アクリル酸)(PAA)(分子量5,000)を最初に含む同一の供給溶液で行った。
【0127】
導電率−濃度依存性に従って、濃度を得た。次いで、塩の排除率を以下の式:排除率(%)=100*(Cf−Cp)/Cf(ここで、Cf及びCpはそれぞれ、供給溶液及び透過溶液の濃度である)を用いることによって計算した。膜の裏側により多くの化合物を残すので、排除が高いほど、膜は良好である。例えば、R=30%はナノ濾過を意味する。
【0128】
本発明者らの実験において、有機物の供給溶液及び透過溶液の濃度はNMR法で決定した。供給溶液中溶質の濃度(Cf)は、NMRスペクトル中溶質と相関したピークの面積を計算することによって決定した。透過溶液中溶質の濃度は、同様に決定した。最終的に、排除率は、上記式を用いて計算することができた。
【0129】
溶液流量に対する膜透過率Lpは、以下の式を用いて計算した:
Lp=Jv/(P−σ*Δπ)
Lpは、単位圧力当たり流束の単位、例えば、Li/m2*時間*バールを有する。
ここで、Jv(Li/m2*時間)は、膜による流束であり、P(バール)は加えられた機械的圧力であり、Δπ(バール)は浸透圧であり、σは屈折係数である。
【0130】
浸透圧は、以下の式を用いることによって計算することができる:
Δπ=R*T*Cs*ν
ここで、R(Li*原子/モル*°K)は理想ガス定数であり、T(°K)は溶液温度であり、γは塩の1モルの解離で形成されるイオンの数であり、Cs(M)は、溶液中イオンの総モル濃度である。
【0131】
それぞれの実験後、全体セルを脱塩水で完全にすすぎ洗いし、膜を洗浄して全ての沈殿物を除去した。膜を通して移動した水の導電率を、膜の内部に吸収されたイオンの不在を確認するために測定した。
【0132】
非水性導電率滴定
逆滴定法によりポリスルホンポリマー中のホスホン酸基及びカルボン酸基含量を定量的に測定するために、非水性導電率滴定を用いた。これらの基を含むポリマーを、DMSO溶媒に最初に溶解させ、次いで、過剰の水酸化ナトリウムと反応させた。その後、過剰の水酸化ナトリウムを塩酸で滴定した。鋭敏な最終滴定点が観察され、強い酸−塩基反応が確認された。逆滴定のための反応式は、以下の式で与えられる:
R−PO(OH)2 + NaOH → R−PO(ONa)2 +H2O +NaOH
NaOH + HCl → NaCl +H2O
又は
R−COOH + NaOH → R−COONa +H2O +NaOH
NaOH + HCl → NaCl + H2O
【0133】
滴定によって測定した官能基の数は、ポリマーの一繰返し単位当たり2.00の官能基であった。
【0134】
(例19)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)結果
Aldrichの20,000Daのポリスルホン1並びにポリマー2、ポリマー3、ポリマー6、ポリマー8〜ポリマー12、ポリマー15及びポリマー17〜ポリマー19の数平均(Mn)、重量平均(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)を、GPCで測定した。残念なことに、THF溶媒中の低い溶解度のために、又は溶媒と比べて同じ屈折率のために、合成ポリマーの全てがGPC測定に適切であるとは限らなかった。結果を表1に示す。
表1.異なるポリマーに対するゲル透過クロマトグラフィー結果
【表1】
【0135】
GPC結果から、ポリマー鎖のカットオフを示す、ポリマー3のカルボキシル化ポリマー6への変換からのポリマーのMn及びMwの減少を見ることができる。可能な説明は、酸性状態のためのポリマー主鎖のエーテル結合の切断である。同じ説明が、ポリマー1のポリマー10へ、ポリマー2のポリマー11へ、及びポリマー18のポリマー19への変換に対して示唆され得る。ポリマー1のポリマー8へ、ポリマー2のポリマー9へ、ポリマー1のポリマー15へ、及びポリマー1のポリマー18への変換からのMn及びMwの増加を見ることもできる。第1の可能な説明は、ポリマーカルボキシル化のためにn−BuLi反応剤を添加した後の重縮合重合の継続性である。第2の可能な説明は、酸無水物結合を伴うアシル化反応中のポリマー鎖間の架橋である。
【0136】
(例20)
ポリスルホン1及びカルボン酸基を有するポリスルホン4の膜における、浸透圧に対する透過率及び塩排除率の依存性
純水透過率を、ポリスルホン膜1によって測定した。その後、浸透圧に対する透過率の依存性及び塩排除率を測定した。CaCl2塩の最初の供給溶液濃度は、0.1%であった。
【0137】
結果を表1に示す。膜の流束は、運転圧力が増加するにつれて増加した。膜表面上の浸透圧発生のために、蒸留水に対する膜の透過率は、塩溶液に対するものより高かった。
【0138】
2つの異なる膜について排除率に対する塩濃度の影響を図2A〜図2Bに示す。ポリマー4(カルボン酸基を有するポリスルホン)から調製した膜は、CaCl2塩で試験し、市販のポリスルホン1から調製した膜は、異なる濃度でのNaCl塩で試験した。
【0139】
細孔拡大のために、圧力が増加するとともに、排除率のわずかな減少を見ることができる。大きな細孔に対する孔径拡大は、小さな細孔に対するより多く、したがって、塩通過は増加した。排除率は塩濃度が増加するとともに減少した−供給水の高イオン強度による膜表面の遮へいによって引き起こされる現象−濃度分極効果。膜表面上の溶解塩層の形成は、塩排除率を低下させ、膜による塩透過を向上させることが予想される。塩濃度の30%増加は、塩排除率の非常に少ない減少をもたらし、現孔径が最大細孔による多くのイオンの通過を同時にさせないことを示す。
【0140】
(例21)
異なる膜によるNaCl及びCaCl2の塩排除率間の比較
異なる膜による異なる塩の分離の原因となる要因を、この例で検討する。
【0141】
ポリマー1、ポリマー2、ポリマー4、ポリマー7及びポリマー19から調製した6つの異なる膜によるNaCl及びCaCl2の塩の排除率を試験した。結果を、それぞれ、図3A及び図3Bに示す。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販ポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;及び(5)ホスホン酸基を有するポリスルホン19。
【0142】
膜の塩選択性は、ドナン排除(膜表面及びイオン間の電荷相互作用の結果としてのイオン成分の排除)及びサイズ効果(Vezzani and Bandini、2002年)の両方の関数であるようにみえる。これは、膜が、イオンサイズ及び電荷斥力/引力の両方に基づいて、一価塩と二価塩とを区別することを示唆する。水溶液中のイオンの全ては、水分子により水和されるようになった。Ca+2カチオンに結合した水分子の配位数は10であり(Skipperら、1989a)、及びNa+カチオンに結合したものは5である(Skipperら、1989b)。したがって、Ca+2イオンは、Na+イオン(5.6〜7.9Å)より大きい水和イオン半径(9.6Å)を有し、したがって、小さい細孔によってより容易に排除される。
【0143】
荷電化学種、例えば、イオンの保持は、原子価、溶液中の化合物の濃度及び化学的性質、表面電荷、電荷密度及び膜表面上の基の化学的性質に依存すると説明されてきた。
【0144】
カルボン酸基及びホスホン酸基を含む膜は、これらの基の解離によって発生した一定の陰電荷を有する。これらの基は、静電斥力によってCl−のようなアニオンを排除するが、Na+及びCa+2などのカチオンを吸着する。Ca+2イオンは、そのより高い原子価のために、Na+イオン(Ks(Na+)=2.7)よりカルボン酸基に対してより高い選択定数(Ks(Ca+2)=3.9)を有し、したがって、Ca+2−イオンは、膜表面上の陰性基により強く結合する。
【0145】
膜を横切って輸送される殆ど全ての塩イオンは、電気的中性を満足させるために反対電荷イオンの対応する数とともに輸送されなければならない。この場合、拡散係数も保持に影響するように見え、最高拡散係数を有する塩は、最低保持を示す(例えば、拡散係数は、NaClに対して6.01*10−12m2/sとして、及びCaCl2に対して0.301*10−12m2/sとして位置づけされる)(Nonnorら、1998年)。
【0146】
荷電されていない膜中へ分配するイオンの能力は、その水和の自由エネルギーによって影響される。水和の自由エネルギー(−ΔGH)は通常、イオン原子価電荷が増加すると、及びその原子半径が減少すると増加する。ナトリウムはカルシウムイオン(−1584kj/モル)より小さい水和の自由エネルギー(−407kj/モル)を有するとともに、より小さい原子価電荷を有する。したがって、ナトリウムが膜を通過するより大きな流束を有することは驚くことではない。上記のこれらの要因の全てにより、膜表面からのNaCl塩を超えるCaCl2のより大きな排除率を説明することができる。
【0147】
NF膜は、主としてそれらの表面電荷のためにイオンを保持することができる。さらに、弱い電荷は、イオンを保持させるには十分ではないこともある。本発明によって調製される膜は、塩排除の定義によってNF膜と定義される。NF膜において、一価イオンに対する排除率は、0〜50%の範囲であり、多価イオンに対する排除率は20〜90%の範囲である。
【0148】
(例22)
異なる膜による塩排除率及び透過率間の比較
膜の保持率及び透過率は、その電荷及び親水性特性によって説明された。膜透過率及び平均溶質排除率データを、図4A〜図4Bにまとめる。これらの2つのパラメータは、膜特徴付けにとって最も重要である。
【0149】
図4A〜図4Bは、異なる膜によるCaCl20.1%の排除率(4A)及び純水透過率(4B)を示す。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販ポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;並びに(5)マンノース基を有するポリスルホン12;(6)ネオマイシン基を有するポリスルホン13;(7)ガラクトース基を有するポリスルホン11;(8)クロロエタン基を有するポリスルホン10;(9)クロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11;(10)クロロオクタン基を有するポリスルホン8;(11)ホスホン酸エステル基を有するポリスルホン18;(12)ボロン酸基を有するポリスルホン16;(13)ホスホン酸基を有するポリスルホン19;及びポリキノン系ポリスルホン3。
【0150】
ポリマー鎖上の親水性基が、水分子との水素結合によって膜透過率を改善し得ることは前に報告された(Noshay及びRobeson、1976年)。荷電基が、静電相互作用によって膜表面からの塩保持率を改善し得ることも知られている(Manttariら、2002年)。
【0151】
膜性能に対する異なる官能基の影響を確証するために、異なる種類の膜及びそれらの蒸留水に対する透過率を図4に示したように比較した。しかし、ポリスルホン及びポリフルオロスルホン単独(それぞれ、膜1及び2)から作製した膜は、ポリマー鎖上の官能基の不在のために非常に低い水流束をもたらした。
【0152】
クロロエタン基を有する膜(膜8)及びクロロオクタン基を有する膜(膜10)も、水収着又はイオン複合化を誘導する特定の反応部位を全くもたず、これらの膜に対して得られる非常に小さい流束及び塩排除率の値は予想されないものではなかった。膜の透過率は、親水性酸及び炭水化物基の付加によって著しく高められ(例えば、膜5、膜6、膜7)、これは水素結合による水収着を誘導し得る。しかし、水透過率の増加にもかかわらず、塩排除は全ての膜種類に対して殆ど一定に維持された。可能な説明は、ポリマー主鎖上に親水性基を有する膜が、多数の細孔を有するより多くの開いた構造を有し、これが高い流束を可能にするが、塩通過を制限しないということである。したがって、水流束の増加があるが、塩排除率の変化はない。さらに、酸性基の解離によって誘導された膜電荷は、前に検討したように塩排除率を改善し得る。
【0153】
ここに、材料構造間の差が膜性能に影響することがわかる。
【0154】
(例23)
異なる膜による2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩0.1%の排除率
2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩は、塩化物の2倍の電荷を有し、また非常に大きい(Schirg及びWidmer、1992年)。膜1〜膜13(膜の数字は、前の例におけるとおりである)による塩排除率に対する大きさ及び電荷の影響は、塩の0.1%溶液で測定した。結果を図5に示す。
【0155】
その表面上に固定の陰性電荷を有する膜からの2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸アニオンに対する電荷斥力は、一価Cl−アニオンに対するよりも強く、したがって、それは膜細孔からより容易に排除される。荷電されていない表面を有する膜は、それらの水和イオンの大きさによってイオンを排除する。
【0156】
結論は、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩のより大きな保持率は、立体障害及び比較的大きな電荷のためであり、一方、NaClの保持率はその電荷によって主に影響されるということである。
【0157】
(例24)
市販のナノ濾過膜との比較
3つの主パラメータ−運転圧力、流束及び排除率は一般に、膜性能の特徴付けのために用いられる。これらのパラメータは、本発明者らの実験室で調製した、親水性官能基を有する一部の膜について測定した。親水性基をやはり含む市販の膜との比較を行った。市販の膜についてのデータは、文献(Rautenbach及びGroschl、1990年;Xiaofengら、2002年)から報告及び引用される。
【0158】
ポリマー4(カルボキシル化ポリスルホン)(第1欄)、ポリマー19(ホスホン酸基を有するポリスルホン)(第2欄)及びポリスルホンとポリスチレン−co−無水マレイン酸コポリマーのブレンド(第3欄)から作製した膜の特性を、ポリピペラジンアミド(FilmTec Corporation)(第4欄)、酢酸セルロース(FilmTec Corporation FT30)(第5欄)及びスルホン化ポリスルホン(NTR−7450、Nitto Denko)(第6欄)から作製した市販のNF膜と比較し、表2にまとめる。
表2.市販のナノ濾過膜に対する比較
【表2】
【0159】
本発明者らの実験室で調製した膜は、より高い流束、及びより高いか又は殆ど同じ塩排除率を有し、したがって、市販の膜より低い圧力での運転をもたらすことがわかる。
【0160】
(例25)
異なる主鎖基又は異なる官能基を有するポリマーの膜性能
ポリマー骨格の内部に異なる官能基を有するポリマー、すなわち、ポリスルホン1、ポリフルオロスルホン2及びポリキノン系ポリスルホン3から調製した膜を、水透過率及びCaCl20.1%排除率について試験した。結果を図6A〜図6Bに示す。
【0161】
水透過率及び塩排除率間の比較を、これらの3つの膜について行った。ヘキサフルオロイソプロピリデン基を有するポリマー2は、ヘキサイソプロピリデン基を有するポリマー1より、膜調製に使用した有機溶媒により可溶性である;しかし、この事実は、ポリマーの構造、並びに透過率及び塩排除率のようなポリマー特性に影響しない。透過率及び塩排除率は、ポリスルホンポリマーから流延した膜と非常に類似であり、これはこれらのポリマーの分子構造の類似性のためである。しかし、ポリキノン系ポリスルホン3膜は、親水性スルホン基の高い含量のために親水性が増加するために、比較的高い水透過率を有した。
【0162】
これらの3つの膜の塩排除率は、恐らくは同じ孔径分布のために、一定に維持された。クロロエタン側基を有するポリスルホン及びポリフルオロスルホンの膜(それぞれ、ポリマー10及びポリマー11)について、同じ結果を図6C〜図6Dに示す。したがって、それらの性能におけるかなりの変化を有する膜を調整するために、互いに完全に異なる基をポリマーに結合させることが必要とされる。
【0163】
(例26)
高分子量有機巨大分子の排除率
小有機分子のような荷電されていない化学種の保持率は、その化合物の大きさ、形状、化学的性質及び親水性/疎水性に依存する(Manttariら、2002年)。
【0164】
膜の保持特性に対する定量的基準は、分子量カットオフ(MWCO)であり、これは、溶質の90%がその膜によって保持される分子量と定義される。PEG(ポリエチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)及びPAA(ポリアクリル酸)は異なる極性分子であり、膜のMWCOの決定のために実際の利用において保持される有機材料の興味深い高分子量モデルとして使用され得る。
【0165】
異なる分子量のPEG、PVA及びPAA−異なる極性及び電荷を有する3つの溶質の排除率を、ポリマー4から調製した、カルボン酸基を有するポリスルホン膜で試験した。図7A〜図7Bにおける結果は、PEG600、1000、4000、10000及び20000Daの排除率(7A)並びにPEG4000Da、PVA130000Da及びPAA5000Daの排除率(7B)を示す。
【0166】
したがって、溶質の分子の大きさは、膜細孔によるサイズ排除を介した排除率を単に決定すると考えられる。PEG保持率は、サイズ排除機構に対して予想されるより低かった。第1の可能な説明は、有機物透過を可能にする大きな細孔の存在である。分子量20,000を有するPEG溶質の直径は7nmである。
【0167】
第2の説明は、膜ポリマーマトリックスにおけるPEGの分配及びその後の拡散である。恐らくは、PEGは膜ポリマーによって強く吸着される。ポリマーの疎水性領域とPEG溶質の間の疎水性相互作用があることが推測される。この場合に留意されるPVA及びPAAの吸着は、アルコールのヒドロキシル基又はカルボン酸基とポリマー上の親水性官能基の間の水素結合から生じることが最もあり得る。PVAは、その高分子量のためにPEGより良好な排除率を有する。PVA及びPAAの溶質の直径は、それぞれ、18nm及び17nmである。
【0168】
PEGが荷電されていない分子であるので、膜を、PEG(荷電されていない)及びPAA(部分的に荷電されている)間の比較で例証されたとおり、膜に対する親和性が溶質上の電荷の存在に対してどう変化するか試験した。
【0169】
全ての膜について、荷電されていない溶質は、荷電されたものより非常に少なく保持される。結果として、膜とPAAの間の電荷−双極子又は双極子−双極子の相互作用は重要な役割を果すが、それらは膜排除率を向上させるために十分強くはない。
【0170】
(例27)
ネオマイシン基を有する抗菌膜
本発明の主たる態様の1つは、ネオマイシン基を有する膜を合成し、細菌攻撃に対するその抵抗性を調べることである。細菌E.coli(大腸菌)は、ネオマイシン作用に感受性であることが知られている。アミノグリコシドは、細菌細胞の外側膜に亀裂を生じさせることによって作用する強力な細菌抗生物質である。その表面にネオマイシン基を有する本発明の膜は、細胞表面に分布したアニオン部位への即時の静電結合によって細菌に影響を及ぼすと考えられる。
【0171】
実験は以下のステップを含んだ:
(i)ネオマイシン基を有する膜表面(ポリマー13から調製)への、及び対照としてネオマイシン基をもたない同じ膜への大腸菌のインキュベーション;
(ii)2種類の蛍光染料による膜表面の塗布:PI(ヨウ化プロピジウム)(死細胞を選択的に染色するために使用される膜−不透過性核酸挿入物)、及びDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩)(細胞膜を通って浸透し、生細胞又は固定細胞の細胞核を染色する);及び
(iii)蛍光顕微鏡を用いて、膜表面上の細菌発生を観察した。
【0172】
結果を、大腸菌で攻撃され、DAPIで塗布された(8A)、ネオマイシン基をもたない対照膜、及び大腸菌で攻撃され、DAPI(8B)又はPI(8C)で塗布された、ネオマイシン基を有する膜の蛍光顕微鏡写真として、図8A〜図8Cに示す。
【0173】
DAPIで染色されたネオマイシン基をもたない膜には、膜表面上に大量の細菌が含まれたが(8A)、ネオマイシン基を有する膜は、膜表面上に殆ど細菌を有しなかった(8B)ことを観察することができる。図8Cにおけるオレンジ点は、膜表面上の死細胞を示す。
【0174】
これらの結果は、この実験が、ネオマイシン基を含む膜はその表面上に細菌を発生させず、また細菌死に導くので成功であったことを示す。
【0175】
(例28)
異なる膜の横断面のSEM写真
膜の表面及び横断面画像を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮った。表面及び横断面画像を撮るために、試料は液体窒素に浸した後で破砕した。SEMのための試料は全て、炭素蒸着でコーティングして、電子ビーム下での試料充電を減少させた。
【0176】
異なる膜に対するSEM写真を作製し、膜構造(スポンジ様又はフィンガー様構造)(Smoldersら、1992年)、膜全体厚さ、最上層厚さ、及び膜上の欠陥を特徴付けした。
【0177】
図9A〜図9Hは、ポリスルホン1(9A)、発泡ポリスルホン1(9B)、マンノース基を有するポリスルホン12(9C)、ガラクトース基を有するポリスルホン14(9D)、ネオマイシン基を有するポリスルホン13(9E)、ホスホン酸基を有するポリスルホン19(9F)、ホスホン酸エステル基を有するポリスルホン18(9G)、及びクロロエタン基を有するポリスルホン10(9H)から調製した膜のSEM写真である。
【0178】
これらの膜の横断面SEMは、フィンガー様又はスポンジ様形態を有する開いた多孔質副層上の極薄最上面層を示す。最上層の平均厚さは2μmであり、全体の膜厚は200μmであった。
【0179】
理論的には、高塩排除率及び高流束を有する膜は、非常に薄く、堅固な選択性バリヤー層を指示する。本発明者らの場合に、かなり高い流束を有する膜はスポンジ様副層を有するが、低い流束を有する膜はフィンガー様多孔質副層を有する。マクロボイド(ポリマー中空繊維膜に見られる大きな、特徴的に裂け目又はフィンガー形状のボイド)の存在は、それらが膜中に弱い場所をもたらし得るので一般には有利ではない。
【0180】
スポンジ様構造中に、多くの核が同時に創始される。したがって、全ての核が溶媒を消費するので、全ての核の成長は、他の隣接する核によって制限される。このように、マクロボイドの成長は不可能であり、単に比較的小さい細孔のみが形成される、すなわち、スポンジ様構造が形成される。
【0181】
フィンガー様構造にとって、制限された数の核形成が生じることが必要である。本発明者らは、浸漬ポリマー溶液中のポリマーのやせた相の有核液滴がマクロボイドの創始の原因であると考える。それらの一部が非常に大きな寸法に膨張するとき、マクロボイドが形成され、一方、新たな核が既存のものの前方に生成されているとき、スポンジ構造の副層が形成される。最上層及び多孔質副層の同じ一般構造が、多くの市販のNF膜について観察される。
【0182】
例1〜例28に基づく結論
膜調製のための異なるポリマーは、成功裏に合成し、NMR、IR及び13C−(CP−MAS)NMR手法により特徴付けした。さらに、GPC分析を行い、合成ポリマーのMw、Mn及びMw/Mnを決定した。GPC結果から、大部分の測定ポリマーは高分子量を有することが示された。しかし、調製ポリマーの全てが有機溶媒に良好な溶解度を有するとは限らず、したがってそれらの特徴付けを制限する。
【0183】
膜横断面のSEMは、2つの異なる形態(一方は、スポンジ様細孔を有し、他方はフィンガー様細孔を有する)を有する多孔質副層によって支持された薄い最上層からなる非対称の膜構造を示した。
【0184】
膜は、NF−UF膜として水処理用途に開発され、高い可能性を示した。合成膜は、一価イオンに対して18〜50%の範囲、及び多価イオンに対して20〜60%の範囲で排除率を示した。これらの結果は、一価イオンに対して0〜50%の範囲、及び多価イオンに対して20〜90%の範囲で排除率を有するNF膜の理論的定義と一致している。限外濾過用の膜は、多価イオンに対して排除を示さないが、高分子量の有機物を排除する。したがって、調製膜は、塩及び有機物の排除率に従ってNF及びUFの両特性の範囲にある。
【0185】
本発明の膜は、高い流束、中程度の塩排除率、及び低い運転圧力の特徴を有する。市販の膜と比較して、流束は選択性を喪失することなしに比較的高く、これは比較的低い圧力で運転を可能にする。同じか又は非常に類似したポリマー構造を有し、転相法で調製された市販の膜と比較を行った。官能基の付加は、それらに水処理に有用な新規な改善された特性を加えた。
【0186】
塩排除率は、試験した殆どの修飾に対してむしろ中程度であるが、高分子量有機分子に対する排除率は驚くほど低い。適当な説明は、この段階でこの現象に与えることができない。膜ポリマーマトリックス中のPEGの分配及びその後の拡散は、比較的低い保持率をもたらし得る。恐らくは、PEGは、膜ポリマーによって強く吸着される。結論として、排除率グラフは、溶質の電荷に依存していることが見出された。
【0187】
(例29)
逆浸透のための膜の調製
DMSOの溶液から及び溶融溶液からポリマー4、ポリマー5、ポリマー7及びポリマー9を流延することによって、膜を調製した。高さで8ミクロンの膜を逆浸透膜として使用し、NaCl92%及びCaCl295%の排除率を可能にした。
【0188】
(例30)
ナノ−及び限外−濾過のための均一なナノ細孔を有する膜の調製
この例において、本発明者らは、浸漬析出プロセスによって誘導される転相法による、前に調製した膜上の均一な細孔生成のための異なる3つの手法によって、水処理用途のための均一な孔径を有するNF−UF膜を製造することについて述べる。
【0189】
材料及び方法
芳香族ポリスルホンポリマー1はAldrichから購入し、取り込まれたナノ鉄粒子を有する膜のために受け取ったまま使用した。芳香族架橋ポリスルホン7は、上記例6で記載したようにエチレングリコール官能基の挿入を介してリチウム化及びアシル化反応によって得た。置換度(DS)は、1つのポリマー繰返し単位当たり2.0個の官能基であった。この変性ポリマーを、13C−(CP−MAS)NMR、溶液中NMR及びIR法によって特徴付けした。架橋ポリマーからの均一な細孔形成を、エチレングリコール単位の塩基加水分解によって得た。分析純度のポリスチレン−co−無水マレイン酸コポリマーは、Aldrichから購入し、ポリマーの混合物からの膜形成のために受け取ったまま使用した。膜は全て、異なる無機塩溶液で試験し、HRSEM及びAFM手法によって特徴付けし、商業的に知られている膜と比較した。
【0190】
装置及び測定の全ては、前項におけるとおりであった。
【0191】
(例30.1)
単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜のためのナノ鉄酸エッチング法
この方法には、選択的Fe2O3ナノ粒子(50nmの大きさ、FeCl3×6H2Oの加水分解から調製、分析等級、Merck KGaA)の存在下でのポリスルホン膜の合成が含まれ、これを磁場によってポリマーネットワーク中に導入した。重量で、20%のポリスルホン1、2%のFe2O3ナノ粒子、及び溶媒として78%のN−メチルピロリドン(NMP)を含む流延溶液を調製した。これらのナノ粒子は、以下の式:
2FeCl3 + 3H2O → Fe2O3 + 6HCl
によって希薄FeCl3溶液から形成した。
【0192】
所望のサイズを有するFe2O3ナノ粒子は、成長条件の制御によって希薄溶液から得た(Sugimoto及びMuramatsu、1996年)。膜試料は、流延ナイフを用いて厚さ200μmにガラス表面上に流延した。溶媒を窒素下で300℃において2分間蒸発させ、その後、ガラス板と一緒のその流延フィルムを氷冷水中に24時間浸漬させた。転相は直ちに始まり、数分後に薄いポリマーフィルムをガラスから外して分離した。このフィルムは脱塩水で繰り返し洗浄し、湿ったまま保存した。膜の実際の厚さは、マイクロメーターを用いて測定した。膜を圧搾空気で30分間プレス圧縮して、最終構造を得た。エッチング剤HClで鉄ナノ粒子を溶解させると、新たな細孔生成が生じ、これをAFM及びHRSEM測定によって確認した。
【0193】
図10A〜図10Cは、異なる時間帯:エッチング前(図10A、20〜50nm)、1時間エッチング後(図10B、20〜100nm)、及び6時間エッチング後(図10C、80〜100nm)におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す。図の左側の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【0194】
図11A〜図11Cは、異なる時間帯:エッチング前(図11A、50〜100nm)、1時間エッチング後(図11B)、及び2時間エッチング後(図11C)におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す。図12A〜図12Bは、それぞれ、加水分解前(ひし形)並びに1時間(長方形)、2時間(三角)及び6時間(正方形)加水分解後に測定した、水流束及びCaCl20.1%の排除率を示す。
【0195】
ポリマー鎖上に官能基をもたない膜は、孔径分布に従って、単に篩い分け機構のために塩及び他の溶解物質を排除し得る。ポリマーマトリックスの内部のナノ鉄粒子分布は、図10からわかるように、磁石によって誘導された磁場作用にもかかわらず、均一でなかった。
【0196】
ナノ鉄粒子も凝集体又はクラスターを形成し、したがって、酸エッチング後のそれらの孔径を増加させた。図10及び図11により、ナノ鉄の大きなクラスターへの凝集によるエッチング時間の増加に伴う孔径の拡大が確認された。
【0197】
図12は、多数の細孔生成によって生じた、エッチング後の塩排除率の減少を示す。膜中の細孔の数の増加及び/又はそれらの孔径の増加は、より多くの溶質分子が通過することを可能にし、したがって、排除率を低下させる。しかし、この細孔は100nm程度に大きいにもかかわらず、この膜の塩排除率は非常に高かった。細孔は、閉じられていることが観察され、塩排除率測定を、孔構造の密閉を確認するために行った。これは、細孔が膜を横切って互いに相互連結されていないこと;すなわち、膜における密閉細孔構造を意味する。水流束は、エッチング時間の増加とともに増加したが、これは、細孔の大きさの増加及び皮膜層抵抗の減少と一致する。細孔の相互連結は、エッチング時間の増加によって高めることができた。
【0198】
市販のポリスルホン膜(Kalle Co.)と本発明者らの実験室で調製したポリスルホンとの比較を表3に示す。
表3.実験室調製ポリスルホン膜と市販のポリスルホン膜との比較
【表3】
【0199】
この市販の膜は、転相法によってポリスルホンポリマーから作製した。本発明者らの実験室で調製した膜も、細孔生成を与えるためのナノ鉄粒子の酸エッチングに加えて、転相法によってポリスルホンポリマーから作製した。この酸エッチング法は、膜による溶液の透過率を増加させるのに役立った。それらの2つの膜間の比較は、本発明者らの実験室調製膜について著しくより高い流束及びより低い運転圧力を示すが、同じ排除率を維持したままである。
【0200】
(例30.2)
単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜のための架橋ポリマーの塩基加水分解法
架橋ポリスルホン7膜製造は、湿式転相法によって行い、エチレングリコールを介して架橋されたポリスルホン20%及び溶媒としてDMSO80%からなる流延溶液の調製を含んだ。この溶液は、わずかに膨潤し、したがって、流延に有用な均一混合物を与えるために、架橋ポリスルホン20%及びNMP80%からなる、20%の第2の溶液を添加した。この均一溶液を流延ナイフでガラス表面上に流延し、その後、300℃で2分間溶媒を蒸発させた。この流延フィルムを蒸留水浴中に0℃で一晩の期間浸漬させた。この膜を圧搾空気によって30分間プレス圧縮して、最終構造を得た。異なる濃度及び異なる時間帯でNaOHによるエチレングリコールエステル結合の塩基加水分解を行い、以下の式による架橋剤(エチレングリコール)の大きさで単分散ナノ細孔を得た。
【化41】
【0201】
その後、塩酸中30分間の膜の浸漬(immesion)、その後の脱イオン水中12時間の浸漬(soaking)を伴って、酸性化手順によりカルボキシル化ポリマー膜をそれらの酸形態に変換した。
【0202】
加水分解前(ひし形)並びにNaOH2M(四角)及びNaOH4M(三角)による6時間加水分解後の流束及びCaCl20.1%の排除率の測定値を、それぞれ、図13A〜図13Bに示す。
【0203】
最先端のNF膜において、陰性基は主にカルボン酸基からであり、これはカルシウム及びナトリウムカチオンと容易に複合する。
【0204】
これらの結果により、気孔率の増加により生じた流束の増加は、塩基加水分解後に継続し、多数のナノ分散細孔が塩基加水分解後に形成され、全く同じ排除率を有する良好な濾過を可能にすることを示すことが示される。膜の透過率はNaOH4Mによる加水分解後にかなり増加したが、排除率値は殆ど一定(±20%)に維持された。この事実は、エチレングリコールエステル結合の加水分解からの均一な孔径の生成を示す。
【0205】
塩基加水分解後のカルボン酸基の出現は、排除率を高く保つのに役立った。この結果は、膜が、カルボン酸基を有するポリスルホンからなることを示す本発明者らの前の結果と一致している。
【0206】
市販のスルホン化ポリスルホン膜(Nitto Denko)と実験室調製膜(Guiverら、米国特許第4,894,159号によるカルボキシル化ポリスルホン膜及び本発明によるカルボキシル化ポリスルホン膜)との比較を行い、本方法の有用性を判断した。結果を以下の表4に示す。
表4.実験室調製膜と市販の膜との比較
【表4】
【0207】
親水性スルホン酸基及びカルボン酸基を含む市販膜と比較して、本発明者らの膜は、より高い水流束及びより高い塩排除率を有することが見出された。しかし、米国特許第4,894,159号によってカルボン酸基を有するポリスルホンから調製した膜は、同じ排除率及び流束値を有した(この膜における細孔の均一性について情報は全く提供されていない)。したがって、本発明者らの調製方法は、均一な細孔生成による改善された流束及び選択性を有する膜を与える。
【0208】
(例30.3)
ポリスルホン膜及びポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)膜−塩基加水分解法による細孔生成
本方法の目的は、2種の異なるポリマー−ポリスルホン及びポリスチレン−co−無水マレイン酸(80:20パーセント比)のブレンドから膜を調製し、膜性能に対する酸無水物結合の塩基加水分解の影響を調べることである。
【0209】
塩基加水分解後のヒドロキシル基の出現及びポリマー構造の変化は、水素結合によって誘導された親水性の増加のようなポリマー特性に影響を与えることが予想される。この塩排除率も、解離したカルボン酸基の陰性電荷による排除のために改善され得る。
【0210】
膜は、溶媒としてNMP80%中ポリマーブレンド20%(ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)20%及びポリスルホン80%)からなる流延ドープの調製により、湿式転相法によって製造した。この均一溶液を、流延ナイフを用いて流延し、その後300℃で2分間溶媒を蒸発させた。この膜を蒸留水浴中に0℃で一晩浸漬させた。圧搾空気によるプレス圧縮をかけて、最終構造を得た。異なる時間帯におけるNaOH2Mによる酸無水物結合の塩基加水分解を行い、カルボン酸ナトリウム塩を得た。このカルボキシル化ポリマー膜を、塩酸中30分間の膜の浸漬(immersion)、その後の脱イオン水中12時間の浸漬(soaking)を伴う酸性化手順によって、それらの酸形態に変換した。2時間の2MNaCl加水分解後の、水流束並びにCaCl20.1%(ひし形)及びNaCl0.1%(四角)の排除率の測定値を、それぞれ、図14A〜図14Bに示し、12時間の2MNaCl加水分解後のものは、それぞれ、図14C〜図14Dに示す。
【0211】
2時間の加水分解後に、本発明者らは、低い透過率を補う高い選択性を有する高性能膜を得た。加水分解時間の増加は、膜による水流束を増加させ、したがって、新たな細孔生成に寄与する。膜の排除率は、加水分解時間が増加するとともにその最初の値の半分に減少した。塩基加水分解後のカルボン酸の出現は、中程度の排除率値を保つために役立った。
【0212】
本方法による細孔形成の機構は、依然として調査中であり、孔が、間隙を介したポリマーマトリックスの構造的変化によって生成され、したがって、塩基加水分解後の異なるポリマー鎖の再配列を可能にすると推定された。恐らくは、孔は、ポリマー鎖間の新たな間隔によって形成されたと思われる。また、加水分解時間の増加とともに非常に急激な流束の増加及び塩排除率の減少もあった。これは、膜構造が長い加水分解時間後に破壊されたと推定され得る。
【0213】
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリスルホンポリマー、前記ポリスルホンポリマーから構成される膜、並びに逆浸透、ナノ濾過及び限外濾過に適した膜の新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜は、可溶性、拡散性の差、電荷、極性、大きさ及び形状の差といった様々な機構を介して、特定の成分の好ましい通過を可能にし、他の成分の通過を妨げる選択的障壁として作用する。膜の有用性は、以下の主な特性、所望の分離性、透過性に関する考察、機械的安定性(クリープ及び圧縮性に関する考察)、化学的安定性(加水分解安定性、許容可能なpH範囲、微生物耐性、酸化耐性等)、汚染耐性及び温度安定性に対してもたらされる選択度を特徴とし得る。
【0003】
膜は、汚染除去水のための信頼できる手頃な装置であることが証明されている。しかしこれらの膜の費用は、不適切な水の供給源に悩む殆どの地域社会が負担できる費用を未だ上回っている。材料の進歩は、膜の費用を低下させる一助となり得る。
【0004】
現在、膜が除去する材料の大きさを基にして一般的に許容されている4種類の膜が存在する。孔径の小さい方から大きい順に、これらは逆浸透(RO)、ナノ濾過(NF)、限外濾過(UF)及び精密濾過(MF)膜である。
【0005】
逆浸透(RO)膜技術は、汽水及び海水の脱塩化に最も有望であるとみなされている。この技術は、わずかに汚染された水の処理にも使用される。これは、塩溶液の浸透圧を克服するために動圧を使用するものであり、したがって膜の塩側から淡水側への水選択的透過を生じる。塩は膜によって排除され、分離が達成される。RO膜は無孔である。水は膜の皮膜、膜の特性を決定する活性層に溶解し、次いで拡散によって膜に透過する。皮膜は、約30〜200nmの厚さであり、水の通過に対する水圧耐性を低減するように設計されている。
【0006】
流束及び排除などの膜の主な特性は、皮膜の厚さ及び完全性によって制御される。現在のRO膜は、高pH及び低pH、溶媒、酸化材料等に対して敏感である。良好な膜は、流束を増大させ、長い使用期間に伴う汚染を防止することができる化学的及び機械的な高い安定性を備える必要がある。RO膜の改善は、脱塩法における費用の低減に対する重要な鍵である。高流束膜は、得られる淡水の生成物1単位当たりに必要なエネルギー及び主な投資を低減することができる。
【0007】
ナノ濾過(NF)は、逆浸透(RO)及び限外濾過(UF)の間に位置する膜液体分離技術である。逆浸透法は、通常、溶液中に溶解している直径0.0001ミクロン以下の範囲の溶質分子を除去し、ナノ濾過法は、0.001ミクロン範囲のより大きい分子を除去する。ナノ濾過技術は、後続のRO法で相当高いエネルギー費用で通常使用される高圧に起因して、水の実際的な流束を用いた低圧で膜RO法を実施するべく30年前に始まったものであった。それらの「低圧高流束逆浸透膜」は、ナノ濾過(NF)膜として公知となった。NF法の最初の適用が、1987〜1989年に報告されている。元々、水産業界(特に飲料用)は、ナノ濾過に関して主な適用領域を有している。これに関する当時の理由は、NF膜が基本的に、低可溶性の無機塩の濃度を低減する(軟化する)ために開発されたことであり、NF膜は未だ「軟化」膜と表されることがある。
【0008】
ナノ濾過膜は、水から重い塩及び大きい有機分子を部分的に除去して、わずかに汚染された地表水を処理するために使用され、脱塩法の前処理として使用される。ナノ濾過膜は、3nmの範囲の直径を有する細孔を含む。ナノフィルターに適用される電荷は、塩の排除に影響を及ぼす。膜を介する水の通過は、細孔を介する毛管運動によって促進される。
【0009】
限外濾過(UF)膜は、10〜100nmの範囲の細孔の直径を有する。精密濾過(MF)膜は、最大1μmのより大きい細孔の直径を有する。これらの膜を使用する水からの汚染物質の分離は、溶液中の汚染物質粒子の大きさ及び細孔の大きさに依存する簡単な濾過に基づく。膜は、大きい分子、主に有機分子及び浮遊物質を保持する。UF膜は、水から細菌及びウィルスを除去するための現代の解決策である。MF膜は、浮遊粒子の除去のために使用され、幾つかの場合、細菌及び殆どのウィルスに対する保護をもたらすこともできる。UF及びMFは、膜バイオリアクターなどの廃水処理装置において組み合わせて広範に使用されており、又は処理済みの水及び地表水を清浄にするために使用される。
【0010】
水は、地中海沿岸及び中東諸国を含む幾つかの国では限られた資源とみなされている。再生可能な水資源は、ここ10年で最大約60%減少している。このような状況下、RO又はNF処理に適した質の未処理水源のための既に乏しい供給源は、ほぼ入手不可能になっており、より低質な原水は、膜による軟化及び脱塩を含む処理のための新候補とみなされるべきである。
【0011】
多数の政府が、行政の処理廃水を回収及び再利用し、塩水の井戸及び汚染井戸及び他の供給源を修復し、辺境の汽水供給源を脱塩するための大規模プログラムを発表している。多数の用途のために海水及び他の高塩分原水を脱塩するための農産業に関する幾つかの活動が、民間企業によって行われている。
【0012】
膜濾過の分野では、保持されるべき粒子の大きさ及び形状に基づく膜による多種多様な方法の中でも、分別が有効である。ROは、非常に清浄な水及び高濃縮物/濃縮水を生成することができるが、この方法は、使用する技術が比較的高性能であることにより、非常に高価となり得る。一方UFは比較的安価であるが、厳しい再利用標準を満たすには十分に効果的でないことがある。したがって良好なUF膜の研究は、今や技術の最先端である。さらにNF膜は、幾つかの水の供給源に関してRO及びUFの間の効果的な折衷案にもなり得る。NFは、実施がより容易であり、逆浸透よりも安価である。NFは微細な膜を使用しないため、NF系の供給圧力は、海水の実用的なROを利用する。
【0013】
ポリマー膜は、それらの細孔構造が等方性又は非対称(異方性)であり得る。等方性の膜は、非対称膜とは対照的に、膜中に均一な細孔構造を有する。膜は、RO膜のように無孔であってもよい。
【0014】
RO膜は、ポリマー溶融物又は溶液のいずれかを流延することによって得られ、非対称ポリマー膜は、通常転相法によって製造される。これらの技術では、ポリマー及び溶媒からなる均一なポリマー溶液は、様々な外部効果及び相分離が生じるために、熱力学的に不安定になる。非対称膜構造の形成は、流延溶液の熱力学及び輸送方法の動力学の両方によって制御される。
【0015】
膜の形成は、溶媒を排出し、流延溶液に非溶媒を進入させ、2相系を残すことによって生じる。ポリマーを多く含む相は膜のマトリックスを形成し、ポリマーに乏しく、溶媒及び非溶媒を多く含む相は、細孔を充填する。蒸発/クエンチ条件、最初の厚さ及びポリマー溶液の組成に応じて、様々な膜構造を得ることができる。
【0016】
非対称膜は、より開いた細孔の副層によって支持された、非常に薄く緻密な皮膜層を特徴とする。緻密な皮膜層は、分離性能を決定し、多孔質の副層は、機械的支持を提供し、全体の流れ抵抗に影響を及ぼす。
【0017】
膜構造、特に孔径及びその分布は、ポリマー、溶媒、非溶媒及び調製条件の選択に応じて、各特定の用途に合わせて制御することができる。
【0018】
RO膜は、それらがどのように流延されるかに応じて対称又は非対称になり得るが、NF又はUF膜の殆どは、膜の中に様々な孔径を有する非対称である。溶質側上の膜の孔径は、透過側の膜の孔径よりも小さく、したがって膜の閉塞を回避する。様々な条件下での膜の安定性及び孔径は、それが膜の寿命及びこの技術を使用する潜在用途数を決定するため、非常に重要である。膜の保持特性の定量的基準は、分子量カットオフであり、これは溶質の90%が膜によって保持される分子量と定義される。さらに、孔径分布(NF及びUFについて)、電荷効果、親水性及び/又は親油性、並びに媒体の極性が、膜の真の透過性に影響を及ぼすことになる。さらに溶質の巨大分子については、溶液中の分子の分子形状が重要な役割を担う。例えば折り畳み分子は、類似の分子量の長い線状分子と比較して、より効率的に膜によって保持される。膜濾過法で行われる物理的方法を説明するために、圧力、誘電パラメータ、膜の透過率などの他のパラメータを考慮に入れなければならない。
【0019】
したがって、NF及びUFは本質的にROの低圧型であり、この場合、生成物としての水の純度は高純度水ほど重要ではなく、或いは除去されることになる溶解固体のレベルは、汽水若しくは海水、又はROによる塩の高い排除率が必要ない用途に一般に見られるレベルよりも低い。NFは、望ましくない塩素化炭化水素及びトリハロメタン(オゾンリスクのある化合物。それらが揮発性である場合に限り、発癌性同様に危険度が高い)を発生させることなく、カルシウム又はマグネシウム塩などの硬質成分を除去することができ、細菌及びウィルス並びに有機関連の有色物質を除去することもできる。ナノ濾過は、農薬並びに地表水及び地下水からの他の有機汚染物質を除去して、飲料水の公共的供給の安全性を確保する一助にするためにも使用される。
【0020】
RO及びNF法は、排除される粒子の電荷の影響を受ける。したがってより高電荷の粒子は、他の非電荷粒子よりも排除される可能性が高く、したがって膜の誘電特性は、排除を促進するための重要な主題である。
【0021】
誘電性の排除は、様々な誘電率の媒体の間の界面における、イオンとイオンによって誘導される結合電荷との相互反応によって生じ、これが濾過の機構の1つとみなされる。さらに、円柱のような閉じた形状の細孔からの誘電性の排除力は、スリットのような比較的開いた形状の細孔からの誘電性の排除力よりも本質的に強い。
【0022】
RO膜を得るための溶融物又は溶液からの流延の他に、ナノ濾過のための非対称膜は、大部分は転相と呼ばれる方法によって製造され、これは、3つの主な方法、浸漬析出(湿式−流延)、乾燥−流延及び熱誘導性相分離によって達成することができる。
【0023】
当技術分野で公知の方法では、膜孔径及び孔径分布を制御することができない。したがって、均一なナノ細孔を作製する新規な方法を開発するために幾つかの研究が行われている。
【0024】
以下の構造1の芳香族ポリスルホン(PSU)は、主鎖骨格中にスルホン基に結合したフェノキシド環を含む高性能の工学的熱可塑性物質のファミリーである。それらは、ビスフェノールA及びジ−p−ジクロロジフェニルスルホンの間の反応によって得られる。
【化1】
【0025】
1960年代のポリスルホンの開発以来、それらは膜材料として、主にUF及びROの領域で広範に使用されてきたが、他の工業及び医療用途も周知である。これらのポリマーは、優れた酸化、熱及び加水分解安定性と共に優れた強度及び柔軟性、良好な機械特性及びフィルム形成特性、並びに極度のpH、酸化及び酸触媒加水分解に対する耐性を示す。しかしかかる利益にもかかわらず、それらは幾つかの欠点を有する。これらの幾らか疎水性の性質は、親水性の性質を要する幾つかの水性膜用途においては相当制限を受ける。親水性の強化は、事前に形成したポリスルホン膜に、様々な物理的及び化学的な表面処理手順を施し、又は他の親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)などの幾つかの添加剤で膜の流延溶液をドープして汚染を低減し、膜にさらなる望ましい特性を付与することによって達成される。合成膜の表面特性を変化させる別の異なる方法は、流延の前にポリマーを化学修飾し(置換によって官能基を付加する)、したがって変性誘導体から新規な膜を形成することである。化学修飾は、ポリマー主鎖上へのイオン交換基、潜在的架橋部位及び水中に存在する有害な又は特定の汚染物質の錯体形成のための結合部位を導入する可能性を付与する(US3,709,841)。
【0026】
これらの目的では、様々な官能基がポリスルホンポリマー上に導入されている。カルボキシル化及びスルホン化手順は、親水性及びカチオン交換膜をもたらしている(Noshay及びRobeson、1976年)。ハロメチル化反応(クロロ及びブロモメチル化)は、アニオン交換及び他の官能化誘導体に有用な中間体をもたらしている。
【0027】
リチオ化も、ポリスルホンの官能化のための多目的ポリスルホンの修飾ツールである。カルボキシル化ポリスルホンは、中でもリチオ化中間体からCO2の付加によって得ることができ、これはその高い親水性によりUF、NF及びRO法における有用な膜材料となる(Tremblayら、1991年;US4,894,159)。
【0028】
N−含有官能基を有するポリスルホンは、リチオ化反応によっても調製されている(Rodemann及びStaude、1994年;Rodemann及びStaude、1995年)。
【0029】
ポリスルホンのリチオ化は、ヘテロ原子促進性の方法である。スルホン基は、それによって誘導される強力な電子吸引作用により、以下の式に示されるように隣接するオルト位にリチウムを誘導する(Guiverら、1988年;Guiverら、1989年)。
【化2】
【0030】
ポリマー変性反応におけるスルホン酸基の結合によって合成されたスルホン化芳香族ポリスルホン(スルホン化後の経路)は、市販のポリスルホンの穏やかなスルホン化手順を開発したNoshay及びRobesonの先駆的研究以来、調査されつつある(Noshay及びRobeson、1976年)。この手法には、逆浸透用の脱塩膜及び関連の水精製用途の領域で大きな関心が集まった(Johnsonら、1984年)。クロロスルホン酸及び三酸化硫黄−リン酸トリエチル錯体などの様々なスルホン化剤が、この変性に使用されている。これらのスルホン化後の反応では、スルホン酸基は、以下の式に示すように芳香族エーテル結合(芳香族求電子置換を介する)に対して活性なオルト位に限定される。
【化3】
【0031】
ポリマー主鎖上へのリン基の組込みは、優れた熱安定性及び難燃性を付与することができる。リンは、高い炭化収率を生じることによってその難燃効果をもたらす。加熱下では、まずリン含有基が分解し、次いでリンを多く含む残基を形成する。この残基は、熱耐性を介してポリマーのさらなる分解を防止し、ポリマーの分解温度を高レベルに上昇させる一助となる。
【0032】
有機合成及び分子認識のための有機ホウ素化合物のルイス酸結合特性に利益があるという相当な証拠がある。三角形Sp2混成ボロン酸RB(OH)2は、三角面の中性ボロン酸エステルの可逆的形成によって、又はより好ましくはイオン対Sp3混成四面体アニオンを含むとみなされる機構を介して、親水性ジオールと結合する。ポリマー構造への電子不足のホウ素中心の組込みは、例えばそれがドナーアクセプター結合を介してポリマーをさらに操作する機会を付与する場合に特に魅力がある。ホウ素含有ポリマーはまた、極性側の基を有する官能化ポリマーの合成における中間体として主な役割を担い、バッテリー、高性能難燃剤用のポリマー電解質として、並びにプレセラミック及び光揮性材料として使用される。
【0033】
より良好な環境上の解決及びより清浄な技術に対する国際的な要求によって、膜技術は科学の最先端になりつつある。したがって、非常に劇的な機械的条件及び化学的悪化条件下で機能することができる、膜を詰まらせることのない、溶質の高流束及び高保持率のより良好で簡単な逆浸透、ナノ濾過及び限外濾過膜に対する探求が急務である。さらに、今日のものよりもはるかに良好に機能することができる任意の特定の膜に対する探求によって、さらに良好な膜の使用、価格、技術、用途の結果を得ることができよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、変性ポリスルホン並びに逆浸透、精密濾過、ナノ濾過及び限外濾過に適した膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
一態様では、本発明は、フェニル環の1つ又は複数において、(i)−CO−R1、(ii)−CON(R2)R3、(iii)−B(OR2)2、(iv)−P(=O)(OR2)2、及び(v)ポリマー主鎖の2個の鎖を結合する−CO−O−R4−O−CO−(R1はOH、ハロヒドロカルビルオキシ、単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体であり、R2はH又はヒドロカルビルであり、R3は単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体であり、R4はアルキレンである)から選択される官能基によって置換されている変性ポリスルホンポリマーに関する。
【0036】
別の態様では、本発明は、前記変性ポリスルホンポリマーから構成されるポリスルホン膜に関する。
【0037】
本発明はさらに、逆浸透、精密濾過、ナノ濾過及び限外濾過のための新規な膜の新規な調製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】市販のポリスルホン膜1によって決定した浸透圧への純水の透過率依存を示す図である。水流束Jv対圧力;Lp=45.248L/時間*m2*P。
【図1B】市販のポリスルホン膜1によって決定した浸透圧へのCaCl2塩溶液の透過率依存を示す図である。CaCl20.1%の流束対圧力;Lp=41.06L/時間*m2*P。
【図2A】異なる圧力下及び異なる塩濃度で、カルボン酸基を有するポリスルホン膜(ポリマー4)によるCaCl2の排除率(R)を示す図である。CaCl2に対して:ひし形=0.1%、四角=1%、及び三角=3%。
【図2B】異なる圧力下及び異なる塩濃度で、ポリスルホン膜(ポリマー1)によるNaCl塩の排除率(R)を示す図である。NaClに対して:ひし形=0.5%、及び四角=1%。
【図3A】異なるポリマーから作製された膜に対するNaCl0.1%の排除率を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1(本発明者の実験室で調製);(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;(5)ホスホン酸基を有するポリスルホン19。
【図3B】異なるポリマーから作製された膜に対するCaCl20.1%の排除率を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1(本発明者の実験室で調製);(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;(5)ホスホン酸基を有するポリスルホン19。
【図4A】異なる膜によるCaCl20.1%の排除率を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;並びに(5)マンノース基を有するポリスルホン12;(6)ネオマイシン基を有するポリスルホン13;(7)ガラクトース基を有するポリスルホン15;(8)クロロエタン基を有するポリスルホン10;(9)クロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11;(10)クロロオクタン基を有するポリスルホン8;(11)リン酸エステル基を有するポリスルホン18;(12)ボロン酸基を有するポリスルホン16;(13)ホスホン酸基を有するポリスルホン19;及び(14)ポリキノン系ポリスルホン3。
【図4B】異なる膜による純水流束を示す図である。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販のポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;並びに(5)マンノース基を有するポリスルホン12;(6)ネオマイシン基を有するポリスルホン13;(7)ガラクトース基を有するポリスルホン15;(8)クロロエタン基を有するポリスルホン10;(9)クロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11;(10)クロロオクタン基を有するポリスルホン8;(11)リン酸エステル基を有するポリスルホン18;(12)ボロン酸基を有するポリスルホン16;(13)ホスホン酸基を有するポリスルホン19;及び(14)ポリキノン系ポリスルホン3。
【図5】膜1〜13(膜の数字は上記図4に対するのと同じである)による2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩0.1%の排除率を示す図である。
【図6A】異なる膜による純水透過率を示す図である。異なる主鎖基を有するポリマーから調製した膜:ポリスルホン1(ひし形)、ポリフルオロスルホン2(四角)及びポリキノン系ポリスルホン3(三角)。
【図6B】異なる膜によるCaCl20.1%の排除率を示す図である。異なる主鎖基を有するポリマーから調製した膜:ポリスルホン1(ひし形)、ポリフルオロスルホン2(四角)及びポリキノン系ポリスルホン3(三角)。
【図6C】異なる膜による純水透過率を示す図である。ポリマー骨格中に異なる官能基を有するポリマーから調製した膜:クロロエタン基を有するポリスルホン10(ひし形);及びクロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11(四角)。
【図6D】異なる膜によるCaCl20.1%の排除率を示す図である。ポリマー骨格中に異なる官能基を有するポリマーから調製した膜:クロロエタン基を有するポリスルホン10(ひし形);及びクロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11(四角)。
【図7A】ポリマー4から調製した、カルボン酸基を含むポリスルホン膜による高分子量の有機巨大分子の排除率を示す図である。PEG(ポリエチレングリコール)600、1000、4000、10000及び20000Daの排除率を示す。
【図7B】ポリマー4から調製した、カルボン酸基を含むポリスルホン膜による高分子量の有機巨大分子の排除率を示す図である。PEG4000Da、PVA(ポリビニルアルコール)130000Da及びPAA(ポリアクリル酸)5000Daの排除率を示す。
【図8A】大腸菌(E.coli)により攻撃され及びDAPIで塗布された、ネオマイシン基を有しない対照膜の蛍光顕微鏡検査写真を示す図である。
【図8B】大腸菌により攻撃され及びDAPIで塗布された、ネオマイシン基を有する膜の蛍光顕微鏡検査写真を示す図である。
【図8C】大腸菌で攻撃され及びPIで塗布された、ネオマイシン基を有する膜の蛍光顕微鏡検査写真を示す図である。
【図9A】ポリスルホン1から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9B】発泡ポリスルホン1から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9C】マンノース基を有するポリスルホン12から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9D】ガラクトース基を有するポリスルホン14から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9E】ネオマイシン基を有するポリスルホン13から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9F】ホスホン酸基を有するポリスルホン19から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9G】ホスホン酸エステル基を有するポリスルホン18から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図9H】クロロエタン基を有するポリスルホン10から調製した膜のSEM写真を示す図である。
【図10A】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す図である:エッチング前(20〜50nm)。図の左の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【図10B】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す図である:1時間エッチング後(20〜100nm)。図の左の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【図10C】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す図である:6時間エッチング後(80〜100nm)。図の左の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【図11A】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す図である:エッチング前(50〜100nm)。
【図11B】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す図である:1時間エッチング後。
【図11C】異なる時間帯におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す図である:2時間エッチング後。
【図12A】加水分解前(ひし形)、並びに1時間後(長方形)、2時間後(三角)及び6時間後(四角)に測定した水流束を示す図である。
【図12B】加水分解前(ひし形)、並びに1時間後(長方形)、2時間後(三角)及び6時間後(四角)に測定したCaCl20.1%の排除率を示す図である。
【図13A】塩基加水分解法によって架橋ポリスルホン7から調製した単分散ナノ多孔質膜の、加水分解前(ひし形)並びにNaOH2Mで6時間加水分解後(四角)及びNaOH4Mで6時間加水分解後(三角)の水流束測定値を示す図である。
【図13B】塩基加水分解法によって架橋ポリスルホン7から調製した単分散ナノ多孔質膜の、加水分解前(ひし形)並びにNaOH2Mで6時間加水分解後(四角)及びNaOH4Mで6時間加水分解後(三角)のCaCl20.1%の排除率測定値を示す図である。
【図14A】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、2時間2MNaCl加水分解後の水流束測定値を示す図である。
【図14B】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、2時間2MNaCl加水分解後のCaCl20.1%(ひし形)及びNaCl0.1%(四角)の排除率測定値を示す図である。
【図14C】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、12時間2MNaCl加水分解後の水流束測定値を示す図である。
【図14D】80%ポリスルホン1及び20%ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)のブレンドから作製された膜による、12時間2MNaCl加水分解後のCaCl20.1%(ひし形)及びNaCl0.1%(四角)の排除率測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一態様では、本発明は、フェニル環の1つ又は複数において、
(i)−CO−R1(R1は、−OH、ハロヒドロカルビルオキシ、単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(ii)−CON(R2)R3(R2はH又はヒドロカルビルであり、R3は単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(iii)−B(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、
(iv)−P(=O)(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、及び
(v)ポリマー主鎖の2個の鎖を結合する−CO−O−R4−O−CO−(R4はアルキレンである)
から選択される官能基によって置換されている変性ポリスルホンポリマーに関し、
但し、この変性ポリスルホンは、式[−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−]の繰返し単位、及びスルホン基に隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトである2個のカルボキシ基を含むカルボキシル化ポリスルホンではない。
【0040】
本発明の範囲から排除されるカルボキシル化ポリスルホンは、以下の例3のポリマー4である。それは、式[−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−]の繰返し単位、及びスルホン基に隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトである2個のカルボキシ基を含む。このことはGuiverら、米国特許第4,894,159号に記載されている。
【0041】
本発明によれば、基R2としての、又はヒドロカルビルオキシ基R1の一部としてのヒドロカルビルは、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子の芳香族基を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、非環式又は環式であってよい。ヒドロカルビルは、それに限定されるものではないが、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、より好ましくはエチル若しくはオクチルなどの、好ましくは2〜8個の炭素原子のアルキル基であってよく、又はヒドロカルビルは、アルケニル、例えばビニル;アルキニル、例えばプロパルギル;シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル;フェニル若しくはナフチルなどのアリール;又はベンジル及びフェネチルなどのアラルキル基であってよい。
【0042】
ハロヒドロカルビルオキシ基R1では、ハロは、F、Cl、Br及びIなどのハロゲン原子、好ましくはClであり、R1は、アミノ、シリル、ヒドロキシル、カルボキシ及びそれらのエステル、チオール、カルボキサミド、フェノキシなどの1つ若しくは複数のさらなる基若しくは残基、又は糖類、薬物、抗生物質、酵素、ペプチド、DNA、RNA、NADH、ATP若しくはADPから選択される薬剤の残基によってさらに置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、R1は、Cl−C2〜C8アルコキシ、特にCl−オクチルオキシ及びCl−エトキシである。
【0043】
本発明の単糖類は、フラノース又はピラノース形態のペントース及びヘキソースから選択することができ、それに限定されるものではないが、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース、リボース及びキシロースが含まれる。好ましい実施形態では、単糖類は、ガラクトース、グルコース又はマンノースである。単糖類の誘導体には、エーテル、例えばC1〜C6アルキル、フェニル及びベンジルエーテル、例えばC1〜C6アルカン酸、安息香酸又はフェニル酢酸とのエステル、並びにイソプロピリデン及びグリコシド誘導体が含まれる。一実施形態では、誘導体は、ガラクトースのテトラピバロイルエステルによって例示されるアルカノイルエステルである(例15)。別の実施形態では、R1は、2個のイソプロピリデン基によって置換されているマンノース残基である(例11)。
【0044】
本発明のオリゴ糖は、先に定義の2〜10個の単糖類残基を含むことができ、それに限定されるものではないが、スクロース、又は単糖類誘導体について先に定義した通りのその誘導体が含まれる。
【0045】
本発明の一実施形態では、単糖又はオリゴ糖誘導体は、アミノグリコシド抗生物質である。これらの化合物は、2個のアミノ又はグアニジノ基及び1つ又は複数の糖類又はアミノ糖類で置換されているイノシトール部分を含む。本発明に従って使用することができるアミノグリコシドには、それに限定されるものではないが、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アミカシン及びカナマイシンが含まれる。好ましい一実施形態では、R3はネオマイシンである。
【0046】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、官能基はCOR1であり、R1はOH、Cl−C2〜C8アルコキシ、特にCl−オクチルオキシ及びCl−エトキシ、又は2個のイソプロピリデン基によって置換されているマンノースである。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態では、官能基は、−CON(R2)R3(R2はHであり、R3は、ガラクトース、グルコース若しくはマンノース又はそれらの誘導体から選択される単糖類の残基である)、又はアミノグリコシド抗生物質、好ましくはネオマイシンの残基である。単糖類誘導体の例には、テトラピバロイルガラクトースなどのC2〜C6アルカン酸とのエステルが含まれる。
【0048】
本発明のさらに好ましい実施形態では、官能基は−B(OR2)2であり、R2はH又はC1〜C6、好ましくはC4アルキルである。
【0049】
本発明のさらにより好ましい実施形態では、官能基は−P(=O)(OR2)2であり、R2はH又はC1〜C6、好ましくはC2アルキルである。
【0050】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、官能基は、カルボキシ基を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖を架橋する−COO−R4−OCO−であり、R4はC2〜C4アルキレン、好ましくはエチレンである。
【0051】
本発明によれば、ポリスルホンポリマーは、
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−及び
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
から選択される繰返し単位を含むことができ、
式中、
X1〜X5は、同じ又は異なっており、それぞれは、−O−、−S−、−P(R)−、−P(=O)(R)−、−B(R)−、−N(R)−又はR’であり(Rは、ハロゲンによって、又はO、S若しくはNから選択されるヘテロ原子を含む基によって場合によって置換されている脂肪族又は芳香族C1〜C20ヒドロカルビルであり、R’は、O、S、P(R)、P(O)(R)、B(R)、N(R)から選択される1つ又は複数のヘテロ原子によって場合によって中断されている、又はハロゲン及び/又は=O、=S、−P(R)2、−P(=O)(R)2、−B(R)2、−N(R)2によって置換されている脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビレン、又は脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビルである)、
フェニル環の1つ又は複数は、先に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している。
【0052】
先に定義のC1〜C20ヒドロカルビル又はヒドロカルビレンは、アルキル若しくはアルキレン、アルケニル若しくはアルケニレンなどの直鎖又は分岐の脂肪族基、シクロアルキル若しくはシクロアルキレンなどの環式基、又はフェニル若しくはフェニレン及びナフチル若しくはナフチレンなどの芳香族基であってよい。
【0053】
ヒドロカルビル基Rは、非置換であってよく、又はF、Cl、Br及びIなどのハロゲンから選択される1つ又は複数の原子、好ましくはF、並びにO、例えば=O、S、例えば=S、及びN、例えばNH2を含む1つ若しくは複数の基によって置換されていてもよい。
【0054】
ヒドロカルビレン基R’は、非置換であってよく、又はF、Cl、Br及びIなどのハロゲンから選択される1つ又は複数の原子、好ましくはF、並びにO(例えば=O)、S(例えば=S)、P(R)2、P(O)(R)2、B(R)2、N(R)2又は先に定義の脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビルを含む1つ若しくは複数の基によって置換されていてもよく、又は1つ若しくは複数のヘテロ原子−O−若しくは−S−が、又は基−P(R)−、−P(=O)(R)−、−B(R)−若しくは−N(R)−が挿入されていてもよい。本明細書で使用される場合、C1〜C20ヒドロカルビレンは、ヘテロ原子又は他の基によるそれらの置換又は挿入とは独立に、2個のフェニル基間の各炭素鎖における炭素原子の数を指すことに留意されたい。
【0055】
基X1〜X5の例には、それに限定されるものではないが、−O−、−S−、直鎖又は分岐のアルキレン、例えば−CH2−、−C(CH3)2−、−CH2−(CH2)n−CH2−(nは0〜10である);アルキレン鎖の一部としての−CF2−、−C(CF3)2−、−C(=O)、−CH(NRR)−及び−CH(PRR)−などの直鎖又は分岐の置換アルキレン;−フェニレン−及び置換フェニレンが含まれる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、X1、X2、X4及びX5は−O−であり、X3は−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−である。
【0057】
一実施形態では、本発明のポリスルホンポリマーは、フェニル環の1つにおいて、好ましくはスルホン基に対してオルトの1個の官能基を含む。別の実施形態では、ポリスルホンは、2個の異なるフェニル環において、好ましくはスルホンに対してオルトの2個又は3個の同じ又は異なる官能基を含む。
【0058】
好ましい一実施形態では、ポリスルホンポリマーは、式
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−、又は
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X1及びX2は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む。
【0059】
より好ましい一実施形態では、X1及びX2はOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環は、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている。より好ましい一実施形態では、ポリスルホンポリマーは、スルホンに隣接しているフェニル基の一方において、スルホンに対してオルトの1個の−COOH基、及びスルホンに隣接している他方のフェニル環において、スルホンに対してオルト位のさらなる2個の−COOH基を含み、好ましくはポリマー6(例5)として本明細書で特定されているポリスルホンである。
【0060】
別の好ましい一実施形態では、ポリスルホンポリマーは、式
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X3は、ハロゲンによって、好ましくはFによって場合によって置換されているC2〜C8、好ましくはC3アルキルであり、X4及びX5は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む。
【0061】
より好ましい一実施形態では、先のポリスルホンポリマーにおいて、X3は−C(CH3)2−であり、X4及びX5はOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環は、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている。かかるポリスルホンの例には、(i)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択されるポリスルホン、好ましくはそれぞれポリマー8(例7)及びポリマー10(例9)として本明細書で特定されているポリスルホン、(ii)2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの2個の官能基の1個が−COOHであり、他方のフェニル環において他の官能基がスルホンに対してオルトの2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノースであるポリスルホン、好ましくはポリマー12(例11)として本明細書で特定されているポリスルホン、(iii)2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が−COOHであり、他方のフェニル環において別の官能基がネオマイシン残基であるポリスルホン、好ましくはポリマー13(例12)として本明細書で特定されているポリスルホン、(iv)2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニルであり、他方のフェニル環において他の官能基がβ−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であるポリスルホン、好ましくはポリマー14(例13)として本明細書で特定されているポリスルホン、(v)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であるポリスルホン、好ましくはポリマー15(例14)として本明細書で特定されているポリスルホン、(vi)スルホン基に隣接している2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトのボロン酸官能基−B(OH)2を含むポリスルホン、好ましくはポリマー16(例15)として本明細書で特定されているポリスルホン、及び(vii)2個の同一のホスホン酸又はエステル基−P(=O)(OR2)2(R2は、2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトのH又はC1〜C6アルキル、好ましくはエチルである)を含有するポリスルホン、好ましくはそれぞれポリマー19(例18)及びポリマー18(例17)として本明細書で特定されているポリスルホン、及び(viii)官能基が、スルホンに対してオルトである位置を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖と結合している−COO−CH2−CH2−OCO−である架橋ポリスルホン、好ましくはポリマー7(例6)として本明細書で特定されているポリスルホンが含まれる。
【0062】
別のより好ましい実施形態では、X3は−C(CF3)2−であり、X4及びX5はOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環は、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている。その例には、(i)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、COOHであるポリスルホンポリマー、好ましくはポリマー5(例4)として本明細書で特定されているポリスルホン、(ii)2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択されるポリスルホン、好ましくはそれぞれポリマー9(例8)及びポリマー11(例10)として本明細書で特定されているポリスルホン、(iii)スルホンに隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの同一のボロン酸官能基−B(OH)2又はそのアルキルエステルを含有するポリスルホン、好ましくはポリマー17(例16)として本明細書で特定されているポリスルホンが含まれる。
【0063】
別の態様では、本発明は、本発明の変性ポリスルホンポリマーから構成される膜に関する。これらの膜は、逆浸透及び精密濾過、特にナノ濾過又は限外濾過に有用である。
【0064】
先の背景技術部分で言及した通り、当技術分野のポリスルホンポリマーは多くの利点を有している。それらは広範なpH範囲で操作され、優れた熱及び機械特性を有し、圧縮耐性があり、耐塩素性を示す。しかしそれらは疎水性であり、有機溶媒への耐性に制限がある。カルボキシル及びスルホン酸基を主鎖に導入して親水性及びカチオン交換膜を得ることによって、ポリスルホンの特性を改善する試みがなされている。
【0065】
本発明では、ポリスルホンは、電荷、親水性基及び様々な官能性を有する基を付加することによって修飾され、それによって膜の性能が改善される。官能基の幾つかは、高い親水性を付与する。修飾には、流束及び選択性に関して所望の性能に膜を最適化するようにポリマー構造を適合することが求められる。本明細書において例に示されるように、本発明の膜は、常用のナノ濾過領域の塩に対する類似の排除率を示すと同時に、それらの幾つかは、著しく高い流束を示す。
【0066】
本発明の膜は、0.02〜400μmの範囲、好ましくは2μmの厚さを特徴とする。
【0067】
本発明の膜はさらに、10nm〜10μmの範囲の均一な孔径を特徴とする。10〜100nmの範囲、好ましくは10nmの均一な孔径の膜が、ナノ濾過における使用に適している。100nm〜1μmの範囲、好ましくは200nmの均一な孔径の膜が、限外濾過における使用に適している。1〜10μmの範囲、好ましくは2μmの均一な孔径の膜が、精密濾過における使用に適している。
【0068】
さらなる一態様では、本発明はまた、単分散ナノ多孔質膜の新規な調製方法を提供する。これらの方法は、ポリマー膜の流延中に適用され、選択的な単分散ナノホールを形成する。
【0069】
第1の方法は、ポリマーネットワークにそれら自体を体系化する選択的ナノ粒子の存在下で膜を調製することにある。次いで、適切な溶媒によるナノ粒子の溶解によって、体系化された均一なナノ細孔の膜が得られる。
【0070】
本発明はしたがって、
(i)浸漬析出誘導性の転相法によってポリマー膜を調製するステップ、
(ii)ナノ粒子をポリマーネットワークに導入するステップ、及び
(iii)前記ナノ粒子を溶解することができる薬剤によってナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜を調製する方法を提供する。
【0071】
この方法は、公知の市販の膜並びに本発明の新規な膜の修飾に適している。好ましい実施形態では、該方法は、ポリスルホン膜に使用される。
【0072】
一実施形態では、該方法は、それに限定されるものではないが、式
−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−
の繰返し単位を含むポリマー1として本明細書で特定される市販のポリスルホンなどの市販のポリスルホンポリマーから製造される膜に使用される。
【0073】
他の実施形態では、該方法は、本発明の新規な変性ポリスルホンポリマー、例えばポリマー7として本明細書で特定されている架橋ポリスルホンから構成される膜の調製に使用される。
【0074】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)及び(ii)は、同時に実施される。
【0075】
この方法では任意の適切なナノ粒子を使用することができる。それらは金属酸化物、好ましくはFe2O3;膜にナノホールを残す、酸若しくは塩基によって溶解することができる塩のナノ粒子であってよく、又はそれらは水若しくは有機溶媒で溶解することができる有機化合物のナノ粒子であってもよい。
【0076】
より好ましい一実施形態では、ナノ粒子はFe2O3ナノ粒子である。それらは、好ましくはFeCl3の加水分解によってその場で調製され、Fe2O3ナノ粒子は、磁場によってポリマーネットワーク内に配列している。ナノ粒子は、酸エッチングによって、例えば塩酸で除去される。
【0077】
したがって好ましい一実施形態では、本発明は、
(i)ポリスルホン、FeCl3の加水分解によってその場で調製されるFe2O3ナノ粒子及び溶媒を含む流延溶液を調製するステップ、
(ii)膜試料をガラス表面上に流延し、溶媒を蒸発させ、流延フィルムをガラスプレートと一緒に氷冷水に浸漬するステップ、
(iii)ガラスプレートから分離した薄いポリマーフィルムを洗浄し、湿った膜をプレス圧縮するステップ、並びに
(iv)HClでのエッチングによってFe2O3ナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がFe2O3ナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を調製する方法を提供する。
【0078】
任意の適切な溶媒を使用することができる。好ましい一実施形態では、溶媒はN−メチルピロリドンである。
【0079】
本発明はまた、逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過において使用するための、先の方法によって得られる膜を包含する。これらの膜は、10nm〜10μm、好ましくは20〜100nm又は50〜100nmの範囲の均一な孔径を有する。
【0080】
本発明はさらに、カルボキシル化ポリスルホンのカルボン酸基を架橋剤で架橋し、その後加水分解するステップを含む、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜の第2の調製方法を提供する。
【0081】
架橋剤は、OH、SH、NH2、シリル、B(OH)2及びP(O)(OH)2、又はそれらの混合物から選択される2個以上の官能基を有する脂肪族、芳香族又は複素環化合物であってよい。
【0082】
好ましい実施形態では、架橋剤は、それに限定されるものではないが、アルキレングリコール、アルキレンジアミン、アルキレンジチオール、アルキレンジシリル、ボロン酸−アルキレン−ホスホン酸又はボロン酸−アルキレン−アミン(アルキレンは、2〜8個の炭素原子を有する)などの二官能性脂肪族化合物である。より好ましい一実施形態では、架橋剤はアルキレングリコール、最も好ましくはエチレングリコールである。
【0083】
架橋剤としてアルキレングリコールが使用される場合、加水分解は、膜を流延及び圧縮した後に、強塩基、好ましくはNaOHで実施される。様々な濃度及び様々な時間でのNaOHによるエチレングリコールエステル結合の塩基加水分解によって、架橋剤の大きさの単分散ナノ細孔が得られる。
【0084】
第2の方法の一実施形態では、加水分解は、架橋モチーフの部分的開裂をもたらし、全て均一な大きさの多数の単分散ナノ細孔の形成を誘導し、その孔径は架橋開裂度によって決定される。
【0085】
第2の方法の別の実施形態では、加水分解は部分的であり、架橋モチーフの片側上のポリマー鎖間に結合の部分的開裂を引き起こし、したがって単分散ナノ細孔及び各アームの末端に官能基を有する、空間内で方向付けられたペンダントアーム(加水分解後)を備える膜の形成を引き起こす。これによって、溶液中の分子との双極性相互反応が可能となり、ホールの周辺にそれらが近付くのを防止する。こうして得られた膜は、誘電性の排除を誘導し、選択的ナノ濾過を可能にする。一実施形態では、架橋分子の半分が除去され、その結果ペンダント基は、末端の官能基と共に旋回したままとなり、それにより単分散ホール及び様々な長さを備え、鎖の末端に双極性相互反応のための官能基を有する鎖の両方を形成する。
【0086】
本発明の第3の方法は、2個のポリマーから構成される膜の内部の酸無水物結合の塩基加水分解によって、2個のポリマーのブレンドからポリマー膜を調製することに関する。
【0087】
この方法は、有機溶媒中にポリスルホン及び無水基を含むコポリマー、例えばポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)を含む均一な流延溶液を調製し、その溶液を流延し、その後300℃で溶媒を蒸発させ、冷水に膜を浸漬し、膜を圧縮し、塩基加水分解にかけ、それによってカルボン酸ナトリウム塩の基を得、酸性化によってそれらをカルボン酸基に変換するステップを含む。加水分解の時間は、膜の特性に影響を及ぼす。
【0088】
好ましい一実施形態では、ブレンドは、ポリスルホン(市販のポリスルホン又は本発明のポリスルホン)及びポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)を含む。
【0089】
本発明の膜は、逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過手順で使用するのに適しており、特に工業、農業又は都市廃水の処理などの水の精製に適している。
【0090】
本発明の新規な技術による膜調製のための様々なポリマーを合成することに成功し、NMR、IR及び13C−(CP−MAS)NMR技術によって特徴付けた。SEM及びAFM技術を使用して、酸エッチング及び塩基加水分解の時間の前後の膜表面上の孔径及び孔径分布の変化を決定した。
【0091】
膜が開発され、水処理用途に高い潜在可能性を示した。合成膜は、18〜50%の範囲の一価イオン及び20〜60%の範囲の多価イオンを排除した。
【0092】
本発明に従って調製された膜は、より高い操作圧力及び水の高流束を有すると同時に、市販の膜と同じ排除率を維持している。同じ又は非常に類似したポリマー構造を有し、転相法によって調製された市販の膜と比較した。調製された膜の特性は、エッチング及び加水分解の時間に大きく依存し、本発明者らの目的に従って、これらの膜の使用が可能となることが示された。本発明者らは、架橋ポリマー単位の塩基加水分解を使用して、孔径分布の均一性を著しく改善できることを見出した。
【0093】
ここで本発明を、以下の非限定的な例によって例示する。
【実施例】
【0094】
材料:
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)はAldrichから購入し、減圧(20mmHg)下で酸化バリウムから分留した。無水THFはAldrichから購入し、窒素下でNa/Kから蒸留した。ピリジンはFlukaから購入し、窒素下で酸化バリウムから蒸留した。n−ブチルリチウムは、ヘキサン中1.6M溶液としてAldrichから購入し、受け取ったまま使用した。塩化チオニルは、Aldrichから購入し、窒素下で蒸留した。エチレングリコールはAldrichから購入し、MgSO4で乾燥させ、真空下で蒸留した。分析等級の無水メタノールは、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。分析純度のポリスルホンポリマー(1)20,000は、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。ポリマーは全て、Aldrichから入手した市販の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,−3,3,3−ヘキサフルオロプロパン又はヒドロキノン、及びビス(4−フルオロフェニル)スルホンから合成した。分析等級のフッ化セシウムは、Aldrichから購入し、加熱ガンで乾燥させた。分析等級の8−クロロ−1−オクタノール、1−クロロエタノール、2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノース、2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミン、ホウ酸トリブチル、ジエチルクロロホスフェート、ナトリウムメトキシド及びDMSOは、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。塩形態のネオマイシンは、Aldrichから購入し、ナトリウムメトキシドで中和した。分析等級のNaCl、CaCl2、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩、ポリエチレングリコール(PEG)600、1,000、4,000、10,000及び20,000Da、ポリビニルアルコール(PVA)130,000Da、並びにポリアクリル酸(PAA)5,000Daは、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。分析純度のポリスチレン−co−無水マレイン酸コポリマー(Mn=1,600)はAldrichから購入し、受け取ったまま使用した。分析純度のDMSO、塩酸及び水酸化ナトリウムの溶液、NaCl及びCaCl2の塩は、Aldrichから入手して、受け取ったまま使用した。
【0095】
(例1)
ポリフルオロスルホンの調製−ポリマー2
【化4】
還流冷却器及びマグネチックスターラーを備えた50mlシュレンクフラスコに、フッ化セシウム1.824g(12mmol)を入れ、窒素を少しずつ流しながら、加熱ガンを使用して、フラスコを70℃まで加熱することにより、塩を乾燥させた。フラスコに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−3,3,3−ヘキサフルオロプロパン1.008g(3mmol)及びビス(4−フルオロフェニル)スルホン0.762g(3mmol)及びNMP7mlを窒素下で添加し、反応物を室温で撹拌して溶解した。次いで、混合物を160℃に維持された油浴内で、窒素下で3時間撹拌することにより加熱した。反応混合物を水に注ぐことにより、ポリマーを単離した。沈殿したポリマーを回収し、熱湯及び熱メタノールで洗浄し、真空下において50℃で乾燥した。得られた最終生成物、ポリマー2は、白色固体(1.6g、収率97%)であり、下記の特徴を備えていた:
【化5】
【0096】
(例2)
ヒドロキノン系ポリスルホンの調製−ポリマー3
【化6】
還流冷却器及びマグネチックスターラーを備えた50mlシュレンクフラスコに、フッ化セシウム1.824g(12mmol)を入れ、窒素を少しずつ流しながら、加熱ガンを使用して、フラスコを70℃まで加熱することにより、塩を乾燥させた。フラスコにヒドロキノン0.33g(3mmol)及びビス(4−フルオロフェニル)スルホン0.762g(3mmol)、及びNMP7mlを窒素下で添加し、反応物を室温で撹拌して溶解した。次いで、混合物を160℃に維持された油浴内で、窒素下で3時間撹拌することにより加熱した。反応混合物を水に注ぐことにより、ポリマーを単離した。沈殿したポリマーを回収し、熱湯及び熱メタノールで洗浄し、真空下において50℃で乾燥した。得られた最終生成物、ポリマー3は、白色固体(1.9g、収率98%)であり、下記の特徴を備えていた:
【化7】
【0097】
(例3)
カルボキシル化ポリスルホンの調製−ポリマー4
【化8】
式1の乾燥ポリスルホン(「発明の背景」を参照)を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。2g(0.0045mol)のポリスルホン1を無水THF(75ml)に溶解し、溶液の温度を−50℃に下げた。THF(10ml)で希釈したn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6Mを2.5mol当量、0.0112mol、7.03ml)を12分かけて、滴下で添加したが、その間に混合物は赤褐色に変化した。30分後、CO2(S)(10g)を30分間かけて、ゆっくりと添加し、ポリマーをクエンチした後、室温までゆっくりと加温させた。THFをシュレンクライン上で蒸発させ、白色のスラリーを生成した。ポリマーを希釈HCl(10%)水溶液に沈殿させ、蒸留水で洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、次の特徴を有する、白色固体としてポリマー4を得た(2g、収率98%):
【化9】
【0098】
(例4)
カルボキシル化ポリフルオロスルホンの調製−ポリマー5
【化10】
前述の例1の乾燥させたポリフルオロスルホン2を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。2g(0.0036mol)のポリフルオロスルホンを無水THF(75ml)に溶解し、溶液の温度を−50℃に下げた。THF(10ml)で希釈したn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6Mを2.5mol当量、0.0091mol、5.68ml)を12分かけて、滴下で添加したが、その間に混合物は赤褐色に変化した。30分後、CO2(S)(10g)を30分間かけて、ゆっくりと添加し、ポリマーをクエンチした後、室温までゆっくりと加温させた。THFをシュレンクライン上で蒸発させ、白色のスラリーを生成した。ポリマーを希釈HCl(10%)水溶液に沈殿させ、蒸留水で洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、白色固体を得た(1.82g、収率88%)。
【化11】
【0099】
(例5)
カルボキシル化ヒドロキノン系ポリスルホンの調製−ポリマー6
【化12】
前述の例2の乾燥させたヒドロキノン系ポリスフホン3を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0030mol)のヒドロキノン系ポリスルホンを無水THF(50ml)に溶解し、溶液の温度を−50℃に下げた。THF(10ml)で希釈したn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6Mを3mol当量、0.0092mol、5.78ml)を12分かけて、滴下で添加したが、その間に混合物は暗褐色に変化した。リチウム化ポリマー溶液を30分間撹拌した後、固体二酸化炭素10gを、30分かけて溶液に添加し、次いで室温までゆっくりと加温させた。THFをシュレンクライン上で蒸発させ、白色のスラリーを得た。生じた白色スラリーを希釈HCl(10%)水溶液に沈殿させてポリマーを回収した後、蒸留水で洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、白色固体としてポリマー6を得た(0.9g、収率63%)。
【化13】
【0100】
(例6)
架橋ポリスルホンの調製−ポリマー7
【化14】
前述の例3のポリマー4を1g(0.0018mol、等量=555グラム/モル繰返し単位)、50mlシュレンクフラスコに入れ、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF10ml中エチレングリコール0.1ml(0.0018mol)溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、以下の特性を有する、褐色固体としてポリマー7を得た(1g、収率90%)。
【化15】
【0101】
(例7)
クロロオクタン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー8
【化16】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な8−クロロ−1−オクタノール1.27ml(2mol当量、0.0075mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させることにより回収した。生成物の精製は、熱いCH2Cl2に溶解し、エタノールに沈殿させ、真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、以下の特性を有する、褐色固体としてポリマー8を得た(1.52g、収率98%)。
【化17】
【0102】
(例8)
クロロオクタン基を有するポリフルオロスルホンの調製−ポリマー9
【化18】
1g(0.0015mol、当量=666グラム/モル繰返し単位)のポリマー5を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な8−クロロ−1−オクタノール1.05ml(2mol当量、0.0062mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させることにより回収した。生成物の精製は、熱いCH2Cl2に溶解し、エタノールに沈殿させ、真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより行い、以下の特性を有する、褐色固体としてポリマー9を得た(1.39g、収率95%)。
【化19】
【0103】
(例9)
クロロエタン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー10
【化20】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な1−クロロエタノール0.5ml(2mol当量、0.0075mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、エタノールで洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより、回収し、褐色固体としてポリマー10を得た(1.1g、収率91.66%)。
【化21】
【0104】
(例10)
クロロエタン基を有するポリフルオロスルホンの調製−ポリマー11
【化22】
1g(0.0015mol、当量=666グラム/モル繰返し単位)のポリマー5を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、過剰な1−クロロエタノール0.4ml(2mol当量、0.0062mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、エタノールで洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより回収し、褐色固体としてポリマー11を得た(1.1g、収率97%)。
【化23】
【0105】
(例11)
2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−マンノフラノース基を有するポリスルホンの調製−ポリマー12
【化24】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF(10ml)に溶解した過剰な2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノース0.962g(1.5mol当量、0.0056mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより回収し、褐色固体としてポリマー12を得た(1.05g、収率55%)。
【化25】
【0106】
(例12)
ネオマイシン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー13
【化26】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を100mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(50ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。塩の形のネオマイシン(Aldrichから購入)を、NaOCH3溶液で処理し、アミノ基の電荷を中和した。2g(0.0021mol)のネオマイシン塩(ネオマイシン1mol当たりH2SO4を3mol含有)を50mlの無水CH3OHに溶解した。次いで、NaOCH3溶液(6mol当量、0.63ml)を室温にて、滴下で添加し、30分間撹拌した。CH3OH溶媒を真空蒸留により除去した。新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF(50ml)中に溶解したネオマイシン1.4g(0.5mol当量、0.0024mol)溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、室温にて乾燥させることにより回収し、黄色固体としてポリマー13を得た(1.53g、収率70%)。
【化27】
【0107】
(例13)
2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー14
【化28】
1g(0.0018mol、当量=555グラム/モル繰返し単位)の前述の例3のポリマー4を50mlシュレンクフラスコに入れて、無水THF(30ml)に溶解した。シュレンクフラスコを、NaOH溶液(2M)を含むトラップに接続し、HCl及びSO2を吸収した。次いで、無水ピリジン0.5ml(0.0062mol)及びSOCl20.3ml(0.0041mol)を、室温でシュレンクフラスコに滴下で添加した。温度をゆっくりと上昇させ、60℃に3時間維持した。過剰のSOCl2及びTHFを、50℃にて、真空下で、30分間蒸留し、生じた粗製酸塩化物ポリマーを得た。次いで、新たに蒸留したTHF(30ml)を添加し、アシル化ポリマーを溶解した。ポリマーの完全な溶解のために必要な30分が経過した後、無水THF(10ml)に溶解した過剰な2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミン1.945g(1.5mol当量、0.0037mol)の溶液を、激しく撹拌しながら、室温にて、ポリマー溶液に滴下で添加し、24時間撹拌した。ポリマーを蒸留水に沈殿させ、幾度か洗浄し、最後に真空オーブンで、50℃にて乾燥させることにより回収し、褐色固体としてポリマー14を得た(2.01g、収率71%)。
【化29】
【0108】
(例14)
β−D−ガラクトピラノシルアミン基を有するポリスルホンの調製−ポリマー15
【化30】
0.5g(0.0003mol)のポリスルホン18を、無水メタノール(10ml)に溶解し、触媒量のナトリウムメトキシド(MeOH中0.5M溶液)により、0℃にて処理した。溶液を室温にて19時間撹拌した。減圧下でメタノールを蒸発させ、生成物をCH2Cl2及びエタノールで洗浄し、最後に真空オーブンで、室温にて乾燥させ、黄色固体としてポリマー15を得た(0.36g、収率95%)。
【化31】
【0109】
(例15)
ボロン酸基を有するポリスルホンの調製−ポリマー16
【化32】
乾燥ポリスルホン1を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0022mol)のポリスルホン1を無水THF(50ml)に溶解し、混合物を−50℃に冷却した。THF(10ml)で希釈したn−BuLi(ヘキサン中1.6Mを0.0033mol、1.5mol当量、2.11ml)を10分かけて、滴下で添加した。生じた赤褐色の溶液を−50℃にて30分間撹拌した後、−78℃に冷却した。THF(10ml)中ボロン酸トリブチル1.21ml(2mol当量、0.0045mol)溶液を滴下で添加した。生じた透明な溶液を同じ温度にて、さらに2時間撹拌した後、一晩室温まで加温させた。溶媒の殆どを、30分間真空に蒸発させ、ボロン酸エーテル含有基を得た。希釈HCl(100ml、3M)を添加し、1時間激しく撹拌することにより、生成物を加水分解した。生じた白い沈殿を蒸留水で洗浄し、濾過し、減圧下で50℃にて乾燥させ、所望のポリマー16にボロン酸基を白色固体として与えた(1.05g、収率88%)。
【化33】
【0110】
(例16)
ボロン酸基を有するポリフルオロスルホンの調製−ポリマー17
【化34】
乾燥ポリフルオロスルホン2を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0018mol)のポリフルオロスルホン2を無水THF(50ml)に溶解し、混合物を−50℃に冷却した。THF(10ml)で希釈したn−BuLi(ヘキサン中1.6Mを0.0045mol、2.5mol当量、2.84ml)を10分かけて、滴下で添加した。生じた赤褐色の溶液を−50℃にて30分間撹拌した後、−78℃に冷却した。THF(10ml)中ボロン酸トリブチル1.46ml(3mol当量、0.0054mol)溶液を滴下で添加した。生じた透明な溶液を同じ温度にて、さらに2時間撹拌した後、一晩室温まで加温させた。溶媒の殆どを30分間真空に蒸発させ、黄色固体としてボロン酸エーテル含有基を得た。
【化35】
希釈HCl(100ml、3M)を添加し、1時間激しく撹拌することにより、生成物を加水分解した。生じた白い沈殿を蒸留水で洗浄し、濾過し、減圧下で50℃にて乾燥させ、所望のポリマー17にボロン酸基を白色固体として与えた(1.1g、収率94.8%)。
【化36】
【0111】
(例17)
ホスホネートエステル基を有するポリスルホンの調製−ポリマー18
【化37】
乾燥ポリフルオロスルホン1を、滴下ロート、温度計、N2注入口及びマグネチックスターラーを備えた、100mlの三口シュレンクフラスコに入れた。1g(0.0022mol)のポリフルオロスルホン1を無水THF(50ml)に溶解し、混合物を−50℃に冷却した。THF(10ml)で希釈したn−BuLi(ヘキサン中1.6Mを0.0056mol、2.5mol当量、3.53ml)を10分かけて、滴下で添加した。生じた赤褐色の溶液を−50℃にて30分間撹拌した後、−60℃に冷却した。無水THF(10ml)中ジエチルクロロホスフェート0.98ml(3mol当量、0.0067mol)溶液を10分かけて、滴下で添加した。反応混合物をこの温度に4時間維持した後、室温にて一晩撹拌した。水を添加し、生成物を水及びエタノールで幾度か洗浄した。ポリマーを真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、黄色固体としてポリマー18を得た(1.14g、収率71%)。
【化38】
【0112】
(例18)
ホスホン酸基を有するポリスルホンの調製−ポリマー19
【化39】
0.5g(0.0007mol)のホスフェートジエステル基を有する、上述の例のポリマー18を、NaOH(2M)溶液20ml中で、5時間懸濁した。次いで、溶液を濃塩酸で酸性化し、pH=7に調節した。黄色の沈殿をメタノールで洗浄し、最後に、真空オーブンで、50℃にて乾燥させ、黄色固体としてポリマー19を得た(0.31g、収率75%)。
【化40】
【0113】
II.新規な膜の調製及び性能
【0114】
方法及び装置
試験は全て、19.63cm2の活性面積を有する平坦圧力セルで行ったが、加えた圧力は2〜15気圧の範囲であった。
【0115】
Conductometer(モデルDDS−11A)は、透過溶液及び供給溶液の導電性の測定のために用いた。
【0116】
NMR法は、透過溶液及び供給溶液の有機物の構造及び濃度を分析するために用いた。NMR法及び13C−(CP−MAS)NMR法は、合成ポリマーの構造を分析するために用いた。スペクトルは、Bruker AV300及びAV500分光計で記録した。
【0117】
赤外(IR)スペクトル(Bruker、Vector22)は、官能基決定のために用いた。
【0118】
AFM(Model Autoprobe CP)、SEM(Model Quanta200)、HRSEM(Model Leo982)は、表層及び膜横断面の構造、形態及びトポグラフィーの分析のために用いた。
【0119】
GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)(Model Waters2000)は、一部のポリマーの数平均(Mn)、重量平均(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)を決定するために用いた。残念なことに、THF溶媒中の低溶解度のために、又はその溶媒と比べて同じ屈折率のために、合成ポリマーの全てがGPC測定に適しているとは限らなかった。
【0120】
蛍光顕微鏡(Model Carl Zeiss 426126)は、膜表面の細菌の発生を分析するために用いた。
【0121】
膜ポリマーの合成
同じ骨格主鎖及びそれに結合した異なる官能基を有する芳香族ポリスルホンポリマーは、上記例に示したように合成した。さらに、異なる骨格主鎖を有するポリマーも、比較のために合成した。これらのポリマーを膜に変換して、膜性能に対する異なる官能基の影響を測定した。
【0122】
膜調製
RO膜は、DMSO中にポリマーを再溶解させて20%透明溶液を得、次いで、この溶液を清浄ガラス基板上に流延することによって調製した。
【0123】
NF膜及びUF膜は、DMSO中にポリマーを再溶解させて20%透明溶液を得、この溶液を清浄ガラス基板上に流延し、このフィルムをオーブン中窒素雰囲気下で300℃において2分間注意深く乾燥させることによって調製した。次いで、この乾燥フィルムを脱イオン水浴中に0℃で一晩浸漬させた。
【0124】
測定
膜を空気で30分間加圧した後、供給溶液及び透過溶液を集めた。これらの2つの溶液の導電率を導電率計で測定した。
【0125】
水流束は、単位時間当たり膜を透過する透過溶液の容量を測定することによって計算した。
【0126】
一連の異なる膜を、種々の塩溶液及び有機溶液で試験した。これらの実験は、0.1%の、NaCl、CaCl2、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩、ポリエチレングリコール(PEG)(分子量600、1,000、20,000)、ポリビニルアルコール(PVA)(分子量130,000)及びポリ(アクリル酸)(PAA)(分子量5,000)を最初に含む同一の供給溶液で行った。
【0127】
導電率−濃度依存性に従って、濃度を得た。次いで、塩の排除率を以下の式:排除率(%)=100*(Cf−Cp)/Cf(ここで、Cf及びCpはそれぞれ、供給溶液及び透過溶液の濃度である)を用いることによって計算した。膜の裏側により多くの化合物を残すので、排除が高いほど、膜は良好である。例えば、R=30%はナノ濾過を意味する。
【0128】
本発明者らの実験において、有機物の供給溶液及び透過溶液の濃度はNMR法で決定した。供給溶液中溶質の濃度(Cf)は、NMRスペクトル中溶質と相関したピークの面積を計算することによって決定した。透過溶液中溶質の濃度は、同様に決定した。最終的に、排除率は、上記式を用いて計算することができた。
【0129】
溶液流量に対する膜透過率Lpは、以下の式を用いて計算した:
Lp=Jv/(P−σ*Δπ)
Lpは、単位圧力当たり流束の単位、例えば、Li/m2*時間*バールを有する。
ここで、Jv(Li/m2*時間)は、膜による流束であり、P(バール)は加えられた機械的圧力であり、Δπ(バール)は浸透圧であり、σは屈折係数である。
【0130】
浸透圧は、以下の式を用いることによって計算することができる:
Δπ=R*T*Cs*ν
ここで、R(Li*原子/モル*°K)は理想ガス定数であり、T(°K)は溶液温度であり、γは塩の1モルの解離で形成されるイオンの数であり、Cs(M)は、溶液中イオンの総モル濃度である。
【0131】
それぞれの実験後、全体セルを脱塩水で完全にすすぎ洗いし、膜を洗浄して全ての沈殿物を除去した。膜を通して移動した水の導電率を、膜の内部に吸収されたイオンの不在を確認するために測定した。
【0132】
非水性導電率滴定
逆滴定法によりポリスルホンポリマー中のホスホン酸基及びカルボン酸基含量を定量的に測定するために、非水性導電率滴定を用いた。これらの基を含むポリマーを、DMSO溶媒に最初に溶解させ、次いで、過剰の水酸化ナトリウムと反応させた。その後、過剰の水酸化ナトリウムを塩酸で滴定した。鋭敏な最終滴定点が観察され、強い酸−塩基反応が確認された。逆滴定のための反応式は、以下の式で与えられる:
R−PO(OH)2 + NaOH → R−PO(ONa)2 +H2O +NaOH
NaOH + HCl → NaCl +H2O
又は
R−COOH + NaOH → R−COONa +H2O +NaOH
NaOH + HCl → NaCl + H2O
【0133】
滴定によって測定した官能基の数は、ポリマーの一繰返し単位当たり2.00の官能基であった。
【0134】
(例19)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)結果
Aldrichの20,000Daのポリスルホン1並びにポリマー2、ポリマー3、ポリマー6、ポリマー8〜ポリマー12、ポリマー15及びポリマー17〜ポリマー19の数平均(Mn)、重量平均(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)を、GPCで測定した。残念なことに、THF溶媒中の低い溶解度のために、又は溶媒と比べて同じ屈折率のために、合成ポリマーの全てがGPC測定に適切であるとは限らなかった。結果を表1に示す。
表1.異なるポリマーに対するゲル透過クロマトグラフィー結果
【表1】
【0135】
GPC結果から、ポリマー鎖のカットオフを示す、ポリマー3のカルボキシル化ポリマー6への変換からのポリマーのMn及びMwの減少を見ることができる。可能な説明は、酸性状態のためのポリマー主鎖のエーテル結合の切断である。同じ説明が、ポリマー1のポリマー10へ、ポリマー2のポリマー11へ、及びポリマー18のポリマー19への変換に対して示唆され得る。ポリマー1のポリマー8へ、ポリマー2のポリマー9へ、ポリマー1のポリマー15へ、及びポリマー1のポリマー18への変換からのMn及びMwの増加を見ることもできる。第1の可能な説明は、ポリマーカルボキシル化のためにn−BuLi反応剤を添加した後の重縮合重合の継続性である。第2の可能な説明は、酸無水物結合を伴うアシル化反応中のポリマー鎖間の架橋である。
【0136】
(例20)
ポリスルホン1及びカルボン酸基を有するポリスルホン4の膜における、浸透圧に対する透過率及び塩排除率の依存性
純水透過率を、ポリスルホン膜1によって測定した。その後、浸透圧に対する透過率の依存性及び塩排除率を測定した。CaCl2塩の最初の供給溶液濃度は、0.1%であった。
【0137】
結果を表1に示す。膜の流束は、運転圧力が増加するにつれて増加した。膜表面上の浸透圧発生のために、蒸留水に対する膜の透過率は、塩溶液に対するものより高かった。
【0138】
2つの異なる膜について排除率に対する塩濃度の影響を図2A〜図2Bに示す。ポリマー4(カルボン酸基を有するポリスルホン)から調製した膜は、CaCl2塩で試験し、市販のポリスルホン1から調製した膜は、異なる濃度でのNaCl塩で試験した。
【0139】
細孔拡大のために、圧力が増加するとともに、排除率のわずかな減少を見ることができる。大きな細孔に対する孔径拡大は、小さな細孔に対するより多く、したがって、塩通過は増加した。排除率は塩濃度が増加するとともに減少した−供給水の高イオン強度による膜表面の遮へいによって引き起こされる現象−濃度分極効果。膜表面上の溶解塩層の形成は、塩排除率を低下させ、膜による塩透過を向上させることが予想される。塩濃度の30%増加は、塩排除率の非常に少ない減少をもたらし、現孔径が最大細孔による多くのイオンの通過を同時にさせないことを示す。
【0140】
(例21)
異なる膜によるNaCl及びCaCl2の塩排除率間の比較
異なる膜による異なる塩の分離の原因となる要因を、この例で検討する。
【0141】
ポリマー1、ポリマー2、ポリマー4、ポリマー7及びポリマー19から調製した6つの異なる膜によるNaCl及びCaCl2の塩の排除率を試験した。結果を、それぞれ、図3A及び図3Bに示す。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販ポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;及び(5)ホスホン酸基を有するポリスルホン19。
【0142】
膜の塩選択性は、ドナン排除(膜表面及びイオン間の電荷相互作用の結果としてのイオン成分の排除)及びサイズ効果(Vezzani and Bandini、2002年)の両方の関数であるようにみえる。これは、膜が、イオンサイズ及び電荷斥力/引力の両方に基づいて、一価塩と二価塩とを区別することを示唆する。水溶液中のイオンの全ては、水分子により水和されるようになった。Ca+2カチオンに結合した水分子の配位数は10であり(Skipperら、1989a)、及びNa+カチオンに結合したものは5である(Skipperら、1989b)。したがって、Ca+2イオンは、Na+イオン(5.6〜7.9Å)より大きい水和イオン半径(9.6Å)を有し、したがって、小さい細孔によってより容易に排除される。
【0143】
荷電化学種、例えば、イオンの保持は、原子価、溶液中の化合物の濃度及び化学的性質、表面電荷、電荷密度及び膜表面上の基の化学的性質に依存すると説明されてきた。
【0144】
カルボン酸基及びホスホン酸基を含む膜は、これらの基の解離によって発生した一定の陰電荷を有する。これらの基は、静電斥力によってCl−のようなアニオンを排除するが、Na+及びCa+2などのカチオンを吸着する。Ca+2イオンは、そのより高い原子価のために、Na+イオン(Ks(Na+)=2.7)よりカルボン酸基に対してより高い選択定数(Ks(Ca+2)=3.9)を有し、したがって、Ca+2−イオンは、膜表面上の陰性基により強く結合する。
【0145】
膜を横切って輸送される殆ど全ての塩イオンは、電気的中性を満足させるために反対電荷イオンの対応する数とともに輸送されなければならない。この場合、拡散係数も保持に影響するように見え、最高拡散係数を有する塩は、最低保持を示す(例えば、拡散係数は、NaClに対して6.01*10−12m2/sとして、及びCaCl2に対して0.301*10−12m2/sとして位置づけされる)(Nonnorら、1998年)。
【0146】
荷電されていない膜中へ分配するイオンの能力は、その水和の自由エネルギーによって影響される。水和の自由エネルギー(−ΔGH)は通常、イオン原子価電荷が増加すると、及びその原子半径が減少すると増加する。ナトリウムはカルシウムイオン(−1584kj/モル)より小さい水和の自由エネルギー(−407kj/モル)を有するとともに、より小さい原子価電荷を有する。したがって、ナトリウムが膜を通過するより大きな流束を有することは驚くことではない。上記のこれらの要因の全てにより、膜表面からのNaCl塩を超えるCaCl2のより大きな排除率を説明することができる。
【0147】
NF膜は、主としてそれらの表面電荷のためにイオンを保持することができる。さらに、弱い電荷は、イオンを保持させるには十分ではないこともある。本発明によって調製される膜は、塩排除の定義によってNF膜と定義される。NF膜において、一価イオンに対する排除率は、0〜50%の範囲であり、多価イオンに対する排除率は20〜90%の範囲である。
【0148】
(例22)
異なる膜による塩排除率及び透過率間の比較
膜の保持率及び透過率は、その電荷及び親水性特性によって説明された。膜透過率及び平均溶質排除率データを、図4A〜図4Bにまとめる。これらの2つのパラメータは、膜特徴付けにとって最も重要である。
【0149】
図4A〜図4Bは、異なる膜によるCaCl20.1%の排除率(4A)及び純水透過率(4B)を示す。膜の数字は、以下のとおりポリマーの数字に対応する:(1)市販ポリスルホン1;(2)ポリフルオロスルホン2;(3)架橋ポリスルホン7;(4)カルボキシル化ポリスルホン4;並びに(5)マンノース基を有するポリスルホン12;(6)ネオマイシン基を有するポリスルホン13;(7)ガラクトース基を有するポリスルホン11;(8)クロロエタン基を有するポリスルホン10;(9)クロロエタン基を有するポリフルオロスルホン11;(10)クロロオクタン基を有するポリスルホン8;(11)ホスホン酸エステル基を有するポリスルホン18;(12)ボロン酸基を有するポリスルホン16;(13)ホスホン酸基を有するポリスルホン19;及びポリキノン系ポリスルホン3。
【0150】
ポリマー鎖上の親水性基が、水分子との水素結合によって膜透過率を改善し得ることは前に報告された(Noshay及びRobeson、1976年)。荷電基が、静電相互作用によって膜表面からの塩保持率を改善し得ることも知られている(Manttariら、2002年)。
【0151】
膜性能に対する異なる官能基の影響を確証するために、異なる種類の膜及びそれらの蒸留水に対する透過率を図4に示したように比較した。しかし、ポリスルホン及びポリフルオロスルホン単独(それぞれ、膜1及び2)から作製した膜は、ポリマー鎖上の官能基の不在のために非常に低い水流束をもたらした。
【0152】
クロロエタン基を有する膜(膜8)及びクロロオクタン基を有する膜(膜10)も、水収着又はイオン複合化を誘導する特定の反応部位を全くもたず、これらの膜に対して得られる非常に小さい流束及び塩排除率の値は予想されないものではなかった。膜の透過率は、親水性酸及び炭水化物基の付加によって著しく高められ(例えば、膜5、膜6、膜7)、これは水素結合による水収着を誘導し得る。しかし、水透過率の増加にもかかわらず、塩排除は全ての膜種類に対して殆ど一定に維持された。可能な説明は、ポリマー主鎖上に親水性基を有する膜が、多数の細孔を有するより多くの開いた構造を有し、これが高い流束を可能にするが、塩通過を制限しないということである。したがって、水流束の増加があるが、塩排除率の変化はない。さらに、酸性基の解離によって誘導された膜電荷は、前に検討したように塩排除率を改善し得る。
【0153】
ここに、材料構造間の差が膜性能に影響することがわかる。
【0154】
(例23)
異なる膜による2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩0.1%の排除率
2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩は、塩化物の2倍の電荷を有し、また非常に大きい(Schirg及びWidmer、1992年)。膜1〜膜13(膜の数字は、前の例におけるとおりである)による塩排除率に対する大きさ及び電荷の影響は、塩の0.1%溶液で測定した。結果を図5に示す。
【0155】
その表面上に固定の陰性電荷を有する膜からの2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸アニオンに対する電荷斥力は、一価Cl−アニオンに対するよりも強く、したがって、それは膜細孔からより容易に排除される。荷電されていない表面を有する膜は、それらの水和イオンの大きさによってイオンを排除する。
【0156】
結論は、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム塩のより大きな保持率は、立体障害及び比較的大きな電荷のためであり、一方、NaClの保持率はその電荷によって主に影響されるということである。
【0157】
(例24)
市販のナノ濾過膜との比較
3つの主パラメータ−運転圧力、流束及び排除率は一般に、膜性能の特徴付けのために用いられる。これらのパラメータは、本発明者らの実験室で調製した、親水性官能基を有する一部の膜について測定した。親水性基をやはり含む市販の膜との比較を行った。市販の膜についてのデータは、文献(Rautenbach及びGroschl、1990年;Xiaofengら、2002年)から報告及び引用される。
【0158】
ポリマー4(カルボキシル化ポリスルホン)(第1欄)、ポリマー19(ホスホン酸基を有するポリスルホン)(第2欄)及びポリスルホンとポリスチレン−co−無水マレイン酸コポリマーのブレンド(第3欄)から作製した膜の特性を、ポリピペラジンアミド(FilmTec Corporation)(第4欄)、酢酸セルロース(FilmTec Corporation FT30)(第5欄)及びスルホン化ポリスルホン(NTR−7450、Nitto Denko)(第6欄)から作製した市販のNF膜と比較し、表2にまとめる。
表2.市販のナノ濾過膜に対する比較
【表2】
【0159】
本発明者らの実験室で調製した膜は、より高い流束、及びより高いか又は殆ど同じ塩排除率を有し、したがって、市販の膜より低い圧力での運転をもたらすことがわかる。
【0160】
(例25)
異なる主鎖基又は異なる官能基を有するポリマーの膜性能
ポリマー骨格の内部に異なる官能基を有するポリマー、すなわち、ポリスルホン1、ポリフルオロスルホン2及びポリキノン系ポリスルホン3から調製した膜を、水透過率及びCaCl20.1%排除率について試験した。結果を図6A〜図6Bに示す。
【0161】
水透過率及び塩排除率間の比較を、これらの3つの膜について行った。ヘキサフルオロイソプロピリデン基を有するポリマー2は、ヘキサイソプロピリデン基を有するポリマー1より、膜調製に使用した有機溶媒により可溶性である;しかし、この事実は、ポリマーの構造、並びに透過率及び塩排除率のようなポリマー特性に影響しない。透過率及び塩排除率は、ポリスルホンポリマーから流延した膜と非常に類似であり、これはこれらのポリマーの分子構造の類似性のためである。しかし、ポリキノン系ポリスルホン3膜は、親水性スルホン基の高い含量のために親水性が増加するために、比較的高い水透過率を有した。
【0162】
これらの3つの膜の塩排除率は、恐らくは同じ孔径分布のために、一定に維持された。クロロエタン側基を有するポリスルホン及びポリフルオロスルホンの膜(それぞれ、ポリマー10及びポリマー11)について、同じ結果を図6C〜図6Dに示す。したがって、それらの性能におけるかなりの変化を有する膜を調整するために、互いに完全に異なる基をポリマーに結合させることが必要とされる。
【0163】
(例26)
高分子量有機巨大分子の排除率
小有機分子のような荷電されていない化学種の保持率は、その化合物の大きさ、形状、化学的性質及び親水性/疎水性に依存する(Manttariら、2002年)。
【0164】
膜の保持特性に対する定量的基準は、分子量カットオフ(MWCO)であり、これは、溶質の90%がその膜によって保持される分子量と定義される。PEG(ポリエチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)及びPAA(ポリアクリル酸)は異なる極性分子であり、膜のMWCOの決定のために実際の利用において保持される有機材料の興味深い高分子量モデルとして使用され得る。
【0165】
異なる分子量のPEG、PVA及びPAA−異なる極性及び電荷を有する3つの溶質の排除率を、ポリマー4から調製した、カルボン酸基を有するポリスルホン膜で試験した。図7A〜図7Bにおける結果は、PEG600、1000、4000、10000及び20000Daの排除率(7A)並びにPEG4000Da、PVA130000Da及びPAA5000Daの排除率(7B)を示す。
【0166】
したがって、溶質の分子の大きさは、膜細孔によるサイズ排除を介した排除率を単に決定すると考えられる。PEG保持率は、サイズ排除機構に対して予想されるより低かった。第1の可能な説明は、有機物透過を可能にする大きな細孔の存在である。分子量20,000を有するPEG溶質の直径は7nmである。
【0167】
第2の説明は、膜ポリマーマトリックスにおけるPEGの分配及びその後の拡散である。恐らくは、PEGは膜ポリマーによって強く吸着される。ポリマーの疎水性領域とPEG溶質の間の疎水性相互作用があることが推測される。この場合に留意されるPVA及びPAAの吸着は、アルコールのヒドロキシル基又はカルボン酸基とポリマー上の親水性官能基の間の水素結合から生じることが最もあり得る。PVAは、その高分子量のためにPEGより良好な排除率を有する。PVA及びPAAの溶質の直径は、それぞれ、18nm及び17nmである。
【0168】
PEGが荷電されていない分子であるので、膜を、PEG(荷電されていない)及びPAA(部分的に荷電されている)間の比較で例証されたとおり、膜に対する親和性が溶質上の電荷の存在に対してどう変化するか試験した。
【0169】
全ての膜について、荷電されていない溶質は、荷電されたものより非常に少なく保持される。結果として、膜とPAAの間の電荷−双極子又は双極子−双極子の相互作用は重要な役割を果すが、それらは膜排除率を向上させるために十分強くはない。
【0170】
(例27)
ネオマイシン基を有する抗菌膜
本発明の主たる態様の1つは、ネオマイシン基を有する膜を合成し、細菌攻撃に対するその抵抗性を調べることである。細菌E.coli(大腸菌)は、ネオマイシン作用に感受性であることが知られている。アミノグリコシドは、細菌細胞の外側膜に亀裂を生じさせることによって作用する強力な細菌抗生物質である。その表面にネオマイシン基を有する本発明の膜は、細胞表面に分布したアニオン部位への即時の静電結合によって細菌に影響を及ぼすと考えられる。
【0171】
実験は以下のステップを含んだ:
(i)ネオマイシン基を有する膜表面(ポリマー13から調製)への、及び対照としてネオマイシン基をもたない同じ膜への大腸菌のインキュベーション;
(ii)2種類の蛍光染料による膜表面の塗布:PI(ヨウ化プロピジウム)(死細胞を選択的に染色するために使用される膜−不透過性核酸挿入物)、及びDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩)(細胞膜を通って浸透し、生細胞又は固定細胞の細胞核を染色する);及び
(iii)蛍光顕微鏡を用いて、膜表面上の細菌発生を観察した。
【0172】
結果を、大腸菌で攻撃され、DAPIで塗布された(8A)、ネオマイシン基をもたない対照膜、及び大腸菌で攻撃され、DAPI(8B)又はPI(8C)で塗布された、ネオマイシン基を有する膜の蛍光顕微鏡写真として、図8A〜図8Cに示す。
【0173】
DAPIで染色されたネオマイシン基をもたない膜には、膜表面上に大量の細菌が含まれたが(8A)、ネオマイシン基を有する膜は、膜表面上に殆ど細菌を有しなかった(8B)ことを観察することができる。図8Cにおけるオレンジ点は、膜表面上の死細胞を示す。
【0174】
これらの結果は、この実験が、ネオマイシン基を含む膜はその表面上に細菌を発生させず、また細菌死に導くので成功であったことを示す。
【0175】
(例28)
異なる膜の横断面のSEM写真
膜の表面及び横断面画像を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮った。表面及び横断面画像を撮るために、試料は液体窒素に浸した後で破砕した。SEMのための試料は全て、炭素蒸着でコーティングして、電子ビーム下での試料充電を減少させた。
【0176】
異なる膜に対するSEM写真を作製し、膜構造(スポンジ様又はフィンガー様構造)(Smoldersら、1992年)、膜全体厚さ、最上層厚さ、及び膜上の欠陥を特徴付けした。
【0177】
図9A〜図9Hは、ポリスルホン1(9A)、発泡ポリスルホン1(9B)、マンノース基を有するポリスルホン12(9C)、ガラクトース基を有するポリスルホン14(9D)、ネオマイシン基を有するポリスルホン13(9E)、ホスホン酸基を有するポリスルホン19(9F)、ホスホン酸エステル基を有するポリスルホン18(9G)、及びクロロエタン基を有するポリスルホン10(9H)から調製した膜のSEM写真である。
【0178】
これらの膜の横断面SEMは、フィンガー様又はスポンジ様形態を有する開いた多孔質副層上の極薄最上面層を示す。最上層の平均厚さは2μmであり、全体の膜厚は200μmであった。
【0179】
理論的には、高塩排除率及び高流束を有する膜は、非常に薄く、堅固な選択性バリヤー層を指示する。本発明者らの場合に、かなり高い流束を有する膜はスポンジ様副層を有するが、低い流束を有する膜はフィンガー様多孔質副層を有する。マクロボイド(ポリマー中空繊維膜に見られる大きな、特徴的に裂け目又はフィンガー形状のボイド)の存在は、それらが膜中に弱い場所をもたらし得るので一般には有利ではない。
【0180】
スポンジ様構造中に、多くの核が同時に創始される。したがって、全ての核が溶媒を消費するので、全ての核の成長は、他の隣接する核によって制限される。このように、マクロボイドの成長は不可能であり、単に比較的小さい細孔のみが形成される、すなわち、スポンジ様構造が形成される。
【0181】
フィンガー様構造にとって、制限された数の核形成が生じることが必要である。本発明者らは、浸漬ポリマー溶液中のポリマーのやせた相の有核液滴がマクロボイドの創始の原因であると考える。それらの一部が非常に大きな寸法に膨張するとき、マクロボイドが形成され、一方、新たな核が既存のものの前方に生成されているとき、スポンジ構造の副層が形成される。最上層及び多孔質副層の同じ一般構造が、多くの市販のNF膜について観察される。
【0182】
例1〜例28に基づく結論
膜調製のための異なるポリマーは、成功裏に合成し、NMR、IR及び13C−(CP−MAS)NMR手法により特徴付けした。さらに、GPC分析を行い、合成ポリマーのMw、Mn及びMw/Mnを決定した。GPC結果から、大部分の測定ポリマーは高分子量を有することが示された。しかし、調製ポリマーの全てが有機溶媒に良好な溶解度を有するとは限らず、したがってそれらの特徴付けを制限する。
【0183】
膜横断面のSEMは、2つの異なる形態(一方は、スポンジ様細孔を有し、他方はフィンガー様細孔を有する)を有する多孔質副層によって支持された薄い最上層からなる非対称の膜構造を示した。
【0184】
膜は、NF−UF膜として水処理用途に開発され、高い可能性を示した。合成膜は、一価イオンに対して18〜50%の範囲、及び多価イオンに対して20〜60%の範囲で排除率を示した。これらの結果は、一価イオンに対して0〜50%の範囲、及び多価イオンに対して20〜90%の範囲で排除率を有するNF膜の理論的定義と一致している。限外濾過用の膜は、多価イオンに対して排除を示さないが、高分子量の有機物を排除する。したがって、調製膜は、塩及び有機物の排除率に従ってNF及びUFの両特性の範囲にある。
【0185】
本発明の膜は、高い流束、中程度の塩排除率、及び低い運転圧力の特徴を有する。市販の膜と比較して、流束は選択性を喪失することなしに比較的高く、これは比較的低い圧力で運転を可能にする。同じか又は非常に類似したポリマー構造を有し、転相法で調製された市販の膜と比較を行った。官能基の付加は、それらに水処理に有用な新規な改善された特性を加えた。
【0186】
塩排除率は、試験した殆どの修飾に対してむしろ中程度であるが、高分子量有機分子に対する排除率は驚くほど低い。適当な説明は、この段階でこの現象に与えることができない。膜ポリマーマトリックス中のPEGの分配及びその後の拡散は、比較的低い保持率をもたらし得る。恐らくは、PEGは、膜ポリマーによって強く吸着される。結論として、排除率グラフは、溶質の電荷に依存していることが見出された。
【0187】
(例29)
逆浸透のための膜の調製
DMSOの溶液から及び溶融溶液からポリマー4、ポリマー5、ポリマー7及びポリマー9を流延することによって、膜を調製した。高さで8ミクロンの膜を逆浸透膜として使用し、NaCl92%及びCaCl295%の排除率を可能にした。
【0188】
(例30)
ナノ−及び限外−濾過のための均一なナノ細孔を有する膜の調製
この例において、本発明者らは、浸漬析出プロセスによって誘導される転相法による、前に調製した膜上の均一な細孔生成のための異なる3つの手法によって、水処理用途のための均一な孔径を有するNF−UF膜を製造することについて述べる。
【0189】
材料及び方法
芳香族ポリスルホンポリマー1はAldrichから購入し、取り込まれたナノ鉄粒子を有する膜のために受け取ったまま使用した。芳香族架橋ポリスルホン7は、上記例6で記載したようにエチレングリコール官能基の挿入を介してリチウム化及びアシル化反応によって得た。置換度(DS)は、1つのポリマー繰返し単位当たり2.0個の官能基であった。この変性ポリマーを、13C−(CP−MAS)NMR、溶液中NMR及びIR法によって特徴付けした。架橋ポリマーからの均一な細孔形成を、エチレングリコール単位の塩基加水分解によって得た。分析純度のポリスチレン−co−無水マレイン酸コポリマーは、Aldrichから購入し、ポリマーの混合物からの膜形成のために受け取ったまま使用した。膜は全て、異なる無機塩溶液で試験し、HRSEM及びAFM手法によって特徴付けし、商業的に知られている膜と比較した。
【0190】
装置及び測定の全ては、前項におけるとおりであった。
【0191】
(例30.1)
単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜のためのナノ鉄酸エッチング法
この方法には、選択的Fe2O3ナノ粒子(50nmの大きさ、FeCl3×6H2Oの加水分解から調製、分析等級、Merck KGaA)の存在下でのポリスルホン膜の合成が含まれ、これを磁場によってポリマーネットワーク中に導入した。重量で、20%のポリスルホン1、2%のFe2O3ナノ粒子、及び溶媒として78%のN−メチルピロリドン(NMP)を含む流延溶液を調製した。これらのナノ粒子は、以下の式:
2FeCl3 + 3H2O → Fe2O3 + 6HCl
によって希薄FeCl3溶液から形成した。
【0192】
所望のサイズを有するFe2O3ナノ粒子は、成長条件の制御によって希薄溶液から得た(Sugimoto及びMuramatsu、1996年)。膜試料は、流延ナイフを用いて厚さ200μmにガラス表面上に流延した。溶媒を窒素下で300℃において2分間蒸発させ、その後、ガラス板と一緒のその流延フィルムを氷冷水中に24時間浸漬させた。転相は直ちに始まり、数分後に薄いポリマーフィルムをガラスから外して分離した。このフィルムは脱塩水で繰り返し洗浄し、湿ったまま保存した。膜の実際の厚さは、マイクロメーターを用いて測定した。膜を圧搾空気で30分間プレス圧縮して、最終構造を得た。エッチング剤HClで鉄ナノ粒子を溶解させると、新たな細孔生成が生じ、これをAFM及びHRSEM測定によって確認した。
【0193】
図10A〜図10Cは、異なる時間帯:エッチング前(図10A、20〜50nm)、1時間エッチング後(図10B、20〜100nm)、及び6時間エッチング後(図10C、80〜100nm)におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのAFM写真を示す。図の左側の縮尺は、細孔の大きさを示す。
【0194】
図11A〜図11Cは、異なる時間帯:エッチング前(図11A、50〜100nm)、1時間エッチング後(図11B)、及び2時間エッチング後(図11C)におけるポリスルホン1膜からのナノ鉄粒子の酸エッチングのHRSEM写真を示す。図12A〜図12Bは、それぞれ、加水分解前(ひし形)並びに1時間(長方形)、2時間(三角)及び6時間(正方形)加水分解後に測定した、水流束及びCaCl20.1%の排除率を示す。
【0195】
ポリマー鎖上に官能基をもたない膜は、孔径分布に従って、単に篩い分け機構のために塩及び他の溶解物質を排除し得る。ポリマーマトリックスの内部のナノ鉄粒子分布は、図10からわかるように、磁石によって誘導された磁場作用にもかかわらず、均一でなかった。
【0196】
ナノ鉄粒子も凝集体又はクラスターを形成し、したがって、酸エッチング後のそれらの孔径を増加させた。図10及び図11により、ナノ鉄の大きなクラスターへの凝集によるエッチング時間の増加に伴う孔径の拡大が確認された。
【0197】
図12は、多数の細孔生成によって生じた、エッチング後の塩排除率の減少を示す。膜中の細孔の数の増加及び/又はそれらの孔径の増加は、より多くの溶質分子が通過することを可能にし、したがって、排除率を低下させる。しかし、この細孔は100nm程度に大きいにもかかわらず、この膜の塩排除率は非常に高かった。細孔は、閉じられていることが観察され、塩排除率測定を、孔構造の密閉を確認するために行った。これは、細孔が膜を横切って互いに相互連結されていないこと;すなわち、膜における密閉細孔構造を意味する。水流束は、エッチング時間の増加とともに増加したが、これは、細孔の大きさの増加及び皮膜層抵抗の減少と一致する。細孔の相互連結は、エッチング時間の増加によって高めることができた。
【0198】
市販のポリスルホン膜(Kalle Co.)と本発明者らの実験室で調製したポリスルホンとの比較を表3に示す。
表3.実験室調製ポリスルホン膜と市販のポリスルホン膜との比較
【表3】
【0199】
この市販の膜は、転相法によってポリスルホンポリマーから作製した。本発明者らの実験室で調製した膜も、細孔生成を与えるためのナノ鉄粒子の酸エッチングに加えて、転相法によってポリスルホンポリマーから作製した。この酸エッチング法は、膜による溶液の透過率を増加させるのに役立った。それらの2つの膜間の比較は、本発明者らの実験室調製膜について著しくより高い流束及びより低い運転圧力を示すが、同じ排除率を維持したままである。
【0200】
(例30.2)
単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜のための架橋ポリマーの塩基加水分解法
架橋ポリスルホン7膜製造は、湿式転相法によって行い、エチレングリコールを介して架橋されたポリスルホン20%及び溶媒としてDMSO80%からなる流延溶液の調製を含んだ。この溶液は、わずかに膨潤し、したがって、流延に有用な均一混合物を与えるために、架橋ポリスルホン20%及びNMP80%からなる、20%の第2の溶液を添加した。この均一溶液を流延ナイフでガラス表面上に流延し、その後、300℃で2分間溶媒を蒸発させた。この流延フィルムを蒸留水浴中に0℃で一晩の期間浸漬させた。この膜を圧搾空気によって30分間プレス圧縮して、最終構造を得た。異なる濃度及び異なる時間帯でNaOHによるエチレングリコールエステル結合の塩基加水分解を行い、以下の式による架橋剤(エチレングリコール)の大きさで単分散ナノ細孔を得た。
【化41】
【0201】
その後、塩酸中30分間の膜の浸漬(immesion)、その後の脱イオン水中12時間の浸漬(soaking)を伴って、酸性化手順によりカルボキシル化ポリマー膜をそれらの酸形態に変換した。
【0202】
加水分解前(ひし形)並びにNaOH2M(四角)及びNaOH4M(三角)による6時間加水分解後の流束及びCaCl20.1%の排除率の測定値を、それぞれ、図13A〜図13Bに示す。
【0203】
最先端のNF膜において、陰性基は主にカルボン酸基からであり、これはカルシウム及びナトリウムカチオンと容易に複合する。
【0204】
これらの結果により、気孔率の増加により生じた流束の増加は、塩基加水分解後に継続し、多数のナノ分散細孔が塩基加水分解後に形成され、全く同じ排除率を有する良好な濾過を可能にすることを示すことが示される。膜の透過率はNaOH4Mによる加水分解後にかなり増加したが、排除率値は殆ど一定(±20%)に維持された。この事実は、エチレングリコールエステル結合の加水分解からの均一な孔径の生成を示す。
【0205】
塩基加水分解後のカルボン酸基の出現は、排除率を高く保つのに役立った。この結果は、膜が、カルボン酸基を有するポリスルホンからなることを示す本発明者らの前の結果と一致している。
【0206】
市販のスルホン化ポリスルホン膜(Nitto Denko)と実験室調製膜(Guiverら、米国特許第4,894,159号によるカルボキシル化ポリスルホン膜及び本発明によるカルボキシル化ポリスルホン膜)との比較を行い、本方法の有用性を判断した。結果を以下の表4に示す。
表4.実験室調製膜と市販の膜との比較
【表4】
【0207】
親水性スルホン酸基及びカルボン酸基を含む市販膜と比較して、本発明者らの膜は、より高い水流束及びより高い塩排除率を有することが見出された。しかし、米国特許第4,894,159号によってカルボン酸基を有するポリスルホンから調製した膜は、同じ排除率及び流束値を有した(この膜における細孔の均一性について情報は全く提供されていない)。したがって、本発明者らの調製方法は、均一な細孔生成による改善された流束及び選択性を有する膜を与える。
【0208】
(例30.3)
ポリスルホン膜及びポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)膜−塩基加水分解法による細孔生成
本方法の目的は、2種の異なるポリマー−ポリスルホン及びポリスチレン−co−無水マレイン酸(80:20パーセント比)のブレンドから膜を調製し、膜性能に対する酸無水物結合の塩基加水分解の影響を調べることである。
【0209】
塩基加水分解後のヒドロキシル基の出現及びポリマー構造の変化は、水素結合によって誘導された親水性の増加のようなポリマー特性に影響を与えることが予想される。この塩排除率も、解離したカルボン酸基の陰性電荷による排除のために改善され得る。
【0210】
膜は、溶媒としてNMP80%中ポリマーブレンド20%(ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)20%及びポリスルホン80%)からなる流延ドープの調製により、湿式転相法によって製造した。この均一溶液を、流延ナイフを用いて流延し、その後300℃で2分間溶媒を蒸発させた。この膜を蒸留水浴中に0℃で一晩浸漬させた。圧搾空気によるプレス圧縮をかけて、最終構造を得た。異なる時間帯におけるNaOH2Mによる酸無水物結合の塩基加水分解を行い、カルボン酸ナトリウム塩を得た。このカルボキシル化ポリマー膜を、塩酸中30分間の膜の浸漬(immersion)、その後の脱イオン水中12時間の浸漬(soaking)を伴う酸性化手順によって、それらの酸形態に変換した。2時間の2MNaCl加水分解後の、水流束並びにCaCl20.1%(ひし形)及びNaCl0.1%(四角)の排除率の測定値を、それぞれ、図14A〜図14Bに示し、12時間の2MNaCl加水分解後のものは、それぞれ、図14C〜図14Dに示す。
【0211】
2時間の加水分解後に、本発明者らは、低い透過率を補う高い選択性を有する高性能膜を得た。加水分解時間の増加は、膜による水流束を増加させ、したがって、新たな細孔生成に寄与する。膜の排除率は、加水分解時間が増加するとともにその最初の値の半分に減少した。塩基加水分解後のカルボン酸の出現は、中程度の排除率値を保つために役立った。
【0212】
本方法による細孔形成の機構は、依然として調査中であり、孔が、間隙を介したポリマーマトリックスの構造的変化によって生成され、したがって、塩基加水分解後の異なるポリマー鎖の再配列を可能にすると推定された。恐らくは、孔は、ポリマー鎖間の新たな間隔によって形成されたと思われる。また、加水分解時間の増加とともに非常に急激な流束の増加及び塩排除率の減少もあった。これは、膜構造が長い加水分解時間後に破壊されたと推定され得る。
【0213】
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニル環の1つ又は複数において、
(i)−CO−R1(R1は、−OH、ハロヒドロカルビルオキシ、単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(ii)−CON(R2)R3(R2はH又はヒドロカルビルであり、R3は単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(iii)−B(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、
(iv)−P(=O)(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、及び
(v)ポリマー主鎖の2個の鎖を結合する−CO−O−R4−O−CO−(R4はアルキレンである)
から選択される1つ又は複数の官能基によって置換されている変性ポリスルホンポリマー
(但し、該変性ポリスルホンは、式[−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−]の繰返し単位、及びスルホン基に隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトである2個のカルボキシ基を含むカルボキシル化ポリスルホンではない)。
【請求項2】
基R2としての、又はヒドロカルビルオキシ基R1の一部としてのヒドロカルビル残基が、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子の芳香族基を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、非環式又は環式の残基であり、ハロヒドロカルビルオキシ基R1では、ハロが、F、Cl、Br及びIなどのハロゲン原子、好ましくはClであり、R1が、アミノ、シリル、ヒドロキシル、カルボキシ及びそれらのエステル、チオール、カルボキサミド、フェノキシを含む他の基若しくは残基、又は糖、薬物、抗生物質、酵素、ペプチド、DNA、RNA、NADH、ATP若しくはADPから選択される薬剤の残基によってさらに置換されていてもよく、単糖が、フラノース又はピラノース形態のペントース及びヘキソースから選択され、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース、リボース及びキシロース、並びにそれらのエーテル、エステル、イソプロピリデン及びグリコシド誘導体を含み、オリゴ糖が、単糖について定義された2〜10個の単糖残基又はその誘導体を含み、好ましくはゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アミカシン及びカナマイシンを含むアミノグリコシド抗生物質である、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項3】
官能基が−COR1であり、R1がOH、Cl−(C2〜C8)アルコキシ、又は2個のイソプロピリデン基によって場合によって任意に置換されているマンノース残基である、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項4】
官能基が−CON(R2)R3であり、R2がHであり、R3が、ガラクトース、グルコース若しくはマンノースの残基又はそれらの誘導体、又はアミノグリコシド抗生物質、好ましくはネオマイシンの残基である、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項5】
官能基が−B(OR2)2であり、R2がH又はC1〜C6、好ましくはC4アルキルである、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項6】
官能基が−P(=O)(OR2)2であり、R2がH又はC1〜C6、好ましくはC2アルキルである、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項7】
官能基が−COO−R4−OCO−であり、前記基が、スルホンに対してオルトの位置を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖と結合しており、R4がC2〜C4アルキレン、好ましくはエチレンである、請求項1に記載の架橋ポリスルホンポリマー。
【請求項8】
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−、及び
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
から選択される繰返し単位を含み、
式中、
X1〜X5は、同じか又は異なっており、それぞれが、O、S、P(R)、P(O)(R)、B(R)、N(R)又はR’であり(Rは、ハロゲンによって、又はO、S若しくはNから選択されるヘテロ原子を含む基によって任意に置換されている脂肪族又は芳香族C1〜C20ヒドロカルビルであり、R’は、O、S、P(R)、P(O)(R)、B(R)、N(R)から選択される1つ又は複数のヘテロ原子によって任意に中断されている、又はハロゲン及び/又はO、S、P(R)2、P(O)(R)2、B(R)2、N(R)2又はC1〜C20ヒドロカルビルによって置換されている脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビレンである)、
フェニル環の1つ又は複数が、請求項1に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、各フェニル環が、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している、請求項1から7までのいずれか一項に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項9】
フェニル環の1つにおいて、好ましくはスルホン基に対してオルトの、1個の官能基を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項10】
2個の異なるフェニル環において、好ましくはスルホン基に対してオルトの、2個又は3個の同じ又は異なる官能基を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項11】
前記ポリスルホンが、式
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−、又は
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、請求項1に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X1及びX2は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項12】
X1及びX2がOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環が、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている、請求項11に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項13】
スルホンに隣接しているフェニル基の一方において、スルホンに対してオルトの1個の−COOH基、及びスルホンに隣接している他方のフェニル環において、スルホンに対してオルト位のさらなる2個の−COOH基を含み、好ましくはポリスルホンがポリマー6として本明細書の説明で特定されている、請求項12に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項14】
前記ポリスルホンが、式
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、請求項1に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X3は、ハロゲンによって、好ましくはFによって任意に置換されているC2〜C8、好ましくはC3アルキルであり、X4及びX5は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項15】
X3が−C(CH3)2−であり、X4及びX5がOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環が、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている、請求項14に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項16】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択され、好ましくはポリスルホンがそれぞれポリマー8及びポリマー10として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項17】
2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの2個の官能基の1個が−COOHであり、他方のフェニル環において他の官能基がスルホンに対してオルトの2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノースであり、好ましくはポリスルホンがポリマー12として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項18】
2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が−COOHであり、他方のフェニル環において別の官能基がネオマイシン残基であり、好ましくはポリスルホンがポリマー13として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項19】
2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニルであり、他方のフェニル環において他の官能基がβ−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であり、好ましくはポリスルホンがポリマー14として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項20】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であり、好ましくはポリスルホンがポリマー15として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項21】
スルホンに隣接している2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトのボロン酸官能基−B(OH)2を含み、好ましくはポリスルホンがポリマー16として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項22】
2個の同一のホスホン酸又はエステル基−P(=O)(OR2)2(R2は、2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの、H又はC1〜C6アルキル、好ましくはエチルである)を含み、好ましくはポリスルホンがそれぞれポリマー19及びポリマー18として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項23】
官能基が、スルホンに対してオルトである位置を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖と結合している−COO−CH2−CH2−OCO−であり、好ましくはポリスルホンがポリマー7として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項24】
X3が−C(CF3)2−であり、X4及びX5がOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環が、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている、請求項14に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項25】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、COOHであり、好ましくはポリスルホンがポリマー5として本明細書の説明で特定されている、請求項24に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項26】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択され、好ましくはポリスルホンがそれぞれポリマー9及びポリマー11として本明細書の説明で特定されている、請求項24に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項27】
スルホンに隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの同一のボロン酸官能基−B(OH)2又はそのアルキルエステルを含み、好ましくはポリスルホンがポリマー17として本明細書の説明で特定されている、請求項24に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項28】
請求項1から27までのいずれか一項に記載の変性ポリスルホンポリマーから構成される膜。
【請求項29】
逆浸透、ナノ濾過、限外濾過又は精密濾過に使用するための、請求項28に記載の膜。
【請求項30】
0.02〜400μmの範囲、好ましくは2μmの厚さを有する、請求項29に記載の膜。
【請求項31】
10nm〜10μmの範囲の均一な孔径を有する、請求項28に記載の膜。
【請求項32】
ナノ濾過に使用するための、10〜100nmの範囲、好ましくは10nmの均一な孔径を有する、請求項31に記載の膜。
【請求項33】
限外濾過に使用するための、100nm〜1μmの範囲、好ましくは200nmの均一な孔径を有する、請求項31に記載の膜。
【請求項34】
精密濾過に使用するための、1〜10μmの範囲、好ましくは2μmの均一な孔径を有する、請求項31に記載の膜。
【請求項35】
(i)浸漬析出誘導性の転相法によってポリマー膜を調製するステップ、
(ii)ナノ粒子をポリマーネットワークに導入するステップ、及び
(iii)前記ナノ粒子を溶解することができる薬剤によってナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜を調製する方法。
【請求項36】
前記膜がポリスルホンポリマーから製造される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリスルホンポリマーが、市販のポリスルホンポリマー又は請求項1から27までのいずれかに記載の変性ポリスルホンポリマーである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記市販のポリスルホンが、式
−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−
の繰返し単位を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記変性ポリスルホンポリマーが、請求項22に記載のポリスルホンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ粒子がFe2O3ナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記Fe2O3ナノ粒子が、FeCl3の加水分解によってその場で調製され、前記Fe2O3ナノ粒子が、磁場によってポリマーネットワーク内に配列している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記Fe2O3ナノ粒子が酸エッチングによって除去される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記酸がHClである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(i)ポリスルホン、FeCl3の加水分解によってその場で調製されるFe2O3ナノ粒子及び溶媒を含む流延溶液を調製するステップ、
(ii)膜試料をガラス表面上に流延し、該溶媒を蒸発させ、流延フィルムをガラスプレートと一緒に氷冷水に浸漬するステップ、
(iii)該ガラスプレートから分離した薄いポリマーフィルムを洗浄し、湿った膜をプレス圧縮するステップ、並びに
(iv)HClでのエッチングによって該Fe2O3ナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がFe2O3ナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を調製するための、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノ粒子が、膜にナノホールを生成する、酸若しくは塩基によって溶解することができる塩のナノ粒子、又は水若しくは有機溶媒で溶解することができる有機化合物のナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(i)及び(ii)が同時に実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過に使用するための、請求項35から46までのいずれかに記載の方法によって得られる膜。
【請求項48】
10nm〜10μm、好ましくは20〜100nm又は50〜100nmの範囲の均一な孔径を有する、請求項47に記載の膜。
【請求項49】
カルボキシル化ポリスルホンのカルボン酸基を架橋剤で架橋し、その後加水分解するステップを含む、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜の調製方法。
【請求項50】
前記架橋剤が、OH、SH、NH2、シリル、B(OH)2及びP(O)(OH)2から選択される2個以上の官能基を有する脂肪族、芳香族又は複素環化合物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記架橋剤が、少なくとも1個のアルキレングリコール、アルキレンジアミン、アルキレンジチオール、アルキレンジシリル、ボロン酸−アルキレン−ホスホン酸又はボロン酸−アルキレン−アミン(アルキレンは、2〜8個の炭素原子を有する)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記架橋剤がアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコールである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
架橋モチーフの部分的開裂が、強塩基、好ましくはNaOHで実施され、したがって膜の孔径が架橋開裂度によって決定される、均一な大きさの分布の多数のナノホールを得る、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
加水分解による架橋モチーフの部分的除去によって、各アームの末端に特定の官能基を有する、空間内で方向付けられたペンダントアームが残る、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
(i)有機溶媒中にポリスルホン及びポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)などの無水基を含むコポリマーを含む均一な流延溶液を調製するステップ、
(ii)該溶液を流延し、その後該溶媒を蒸発させるステップ、
(iii)冷水に膜を浸漬し、膜を圧縮するステップ、
(iv)該圧縮した膜を塩基加水分解に付し、それによってカルボン酸ナトリウム塩の基を得るステップ、及び
(v)酸性化によって該カルボン酸ナトリウム塩の基をカルボン酸基に変換し、それによって高い選択性を有する膜を得るステップ
を含む、2個のポリマーから構成される膜の内部の無水物結合の塩基加水分解によって、2個のポリマーのブレンドからポリマー膜を調製する方法。
【請求項56】
前記ポリスルホンが、市販のポリスルホン又は請求項1から26までのいずれかに記載の変性ポリスルホンである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過に使用するための、請求項35から56までのいずれかに記載の方法によって得られる膜。
【請求項58】
水の精製のための、請求項28又は57に記載の膜。
【請求項59】
工業、農業又は都市廃水の処理のための、請求項28又は57に記載の膜。
【請求項1】
フェニル環の1つ又は複数において、
(i)−CO−R1(R1は、−OH、ハロヒドロカルビルオキシ、単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(ii)−CON(R2)R3(R2はH又はヒドロカルビルであり、R3は単糖若しくはオリゴ糖残基又はそれらの誘導体である)、
(iii)−B(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、
(iv)−P(=O)(OR2)2(R2はH又はヒドロカルビルである)、及び
(v)ポリマー主鎖の2個の鎖を結合する−CO−O−R4−O−CO−(R4はアルキレンである)
から選択される1つ又は複数の官能基によって置換されている変性ポリスルホンポリマー
(但し、該変性ポリスルホンは、式[−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−]の繰返し単位、及びスルホン基に隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトである2個のカルボキシ基を含むカルボキシル化ポリスルホンではない)。
【請求項2】
基R2としての、又はヒドロカルビルオキシ基R1の一部としてのヒドロカルビル残基が、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子の芳香族基を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、非環式又は環式の残基であり、ハロヒドロカルビルオキシ基R1では、ハロが、F、Cl、Br及びIなどのハロゲン原子、好ましくはClであり、R1が、アミノ、シリル、ヒドロキシル、カルボキシ及びそれらのエステル、チオール、カルボキサミド、フェノキシを含む他の基若しくは残基、又は糖、薬物、抗生物質、酵素、ペプチド、DNA、RNA、NADH、ATP若しくはADPから選択される薬剤の残基によってさらに置換されていてもよく、単糖が、フラノース又はピラノース形態のペントース及びヘキソースから選択され、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース、リボース及びキシロース、並びにそれらのエーテル、エステル、イソプロピリデン及びグリコシド誘導体を含み、オリゴ糖が、単糖について定義された2〜10個の単糖残基又はその誘導体を含み、好ましくはゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アミカシン及びカナマイシンを含むアミノグリコシド抗生物質である、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項3】
官能基が−COR1であり、R1がOH、Cl−(C2〜C8)アルコキシ、又は2個のイソプロピリデン基によって場合によって任意に置換されているマンノース残基である、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項4】
官能基が−CON(R2)R3であり、R2がHであり、R3が、ガラクトース、グルコース若しくはマンノースの残基又はそれらの誘導体、又はアミノグリコシド抗生物質、好ましくはネオマイシンの残基である、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項5】
官能基が−B(OR2)2であり、R2がH又はC1〜C6、好ましくはC4アルキルである、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項6】
官能基が−P(=O)(OR2)2であり、R2がH又はC1〜C6、好ましくはC2アルキルである、請求項1に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項7】
官能基が−COO−R4−OCO−であり、前記基が、スルホンに対してオルトの位置を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖と結合しており、R4がC2〜C4アルキレン、好ましくはエチレンである、請求項1に記載の架橋ポリスルホンポリマー。
【請求項8】
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−、及び
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
から選択される繰返し単位を含み、
式中、
X1〜X5は、同じか又は異なっており、それぞれが、O、S、P(R)、P(O)(R)、B(R)、N(R)又はR’であり(Rは、ハロゲンによって、又はO、S若しくはNから選択されるヘテロ原子を含む基によって任意に置換されている脂肪族又は芳香族C1〜C20ヒドロカルビルであり、R’は、O、S、P(R)、P(O)(R)、B(R)、N(R)から選択される1つ又は複数のヘテロ原子によって任意に中断されている、又はハロゲン及び/又はO、S、P(R)2、P(O)(R)2、B(R)2、N(R)2又はC1〜C20ヒドロカルビルによって置換されている脂肪族若しくは芳香族C1〜C20ヒドロカルビレンである)、
フェニル環の1つ又は複数が、請求項1に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、各フェニル環が、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している、請求項1から7までのいずれか一項に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項9】
フェニル環の1つにおいて、好ましくはスルホン基に対してオルトの、1個の官能基を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項10】
2個の異なるフェニル環において、好ましくはスルホン基に対してオルトの、2個又は3個の同じ又は異なる官能基を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項11】
前記ポリスルホンが、式
−フェニル−X1−フェニル−SO2−フェニル−X2−、又は
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、請求項1に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X1及びX2は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項12】
X1及びX2がOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環が、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている、請求項11に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項13】
スルホンに隣接しているフェニル基の一方において、スルホンに対してオルトの1個の−COOH基、及びスルホンに隣接している他方のフェニル環において、スルホンに対してオルト位のさらなる2個の−COOH基を含み、好ましくはポリスルホンがポリマー6として本明細書の説明で特定されている、請求項12に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項14】
前記ポリスルホンが、式
−フェニル−X3−フェニル−X4−フェニル−SO2−フェニル−X5−
(式中、フェニル環の1つ又は複数は、請求項1に定義の少なくとも1個の官能基(i)〜(v)によって置換されており、X3は、ハロゲンによって、好ましくはFによって任意に置換されているC2〜C8、好ましくはC3アルキルであり、X4及びX5は、それぞれO又はSであり、各フェニル環は、オルト、メタ又はパラ位において次のフェニル環に結合している)の繰返し単位を含む、請求項8に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項15】
X3が−C(CH3)2−であり、X4及びX5がOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環が、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている、請求項14に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項16】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択され、好ましくはポリスルホンがそれぞれポリマー8及びポリマー10として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項17】
2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの2個の官能基の1個が−COOHであり、他方のフェニル環において他の官能基がスルホンに対してオルトの2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデンマンノフラノースであり、好ましくはポリスルホンがポリマー12として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項18】
2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が−COOHであり、他方のフェニル環において別の官能基がネオマイシン残基であり、好ましくはポリスルホンがポリマー13として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項19】
2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトの1個の官能基が2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニルであり、他方のフェニル環において他の官能基がβ−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であり、好ましくはポリスルホンがポリマー14として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項20】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、β−D−ガラクトピラノシルアミノカルボニル残基であり、好ましくはポリスルホンがポリマー15として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項21】
スルホンに隣接している2個のフェニル基の一方においてスルホンに対してオルトのボロン酸官能基−B(OH)2を含み、好ましくはポリスルホンがポリマー16として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項22】
2個の同一のホスホン酸又はエステル基−P(=O)(OR2)2(R2は、2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの、H又はC1〜C6アルキル、好ましくはエチルである)を含み、好ましくはポリスルホンがそれぞれポリマー19及びポリマー18として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項23】
官能基が、スルホンに対してオルトである位置を介してポリスルホンポリマー主鎖の2個の異なる鎖と結合している−COO−CH2−CH2−OCO−であり、好ましくはポリスルホンがポリマー7として本明細書の説明で特定されている、請求項15に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項24】
X3が−C(CF3)2−であり、X4及びX5がOであり、スルホンに隣接している2個のフェニル環が、スルホンに対してオルトで、同じ又は異なる官能基(i)〜(v)によって置換されている、請求項14に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項25】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、COOHであり、好ましくはポリスルホンがポリマー5として本明細書の説明で特定されている、請求項24に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項26】
2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの2個の官能基が同じであり、−COO−(CH2)8−Cl及び−COO−(CH2)2−Clから選択され、好ましくはポリスルホンがそれぞれポリマー9及びポリマー11として本明細書の説明で特定されている、請求項24に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項27】
スルホンに隣接している2個のフェニル基においてスルホンに対してオルトの同一のボロン酸官能基−B(OH)2又はそのアルキルエステルを含み、好ましくはポリスルホンがポリマー17として本明細書の説明で特定されている、請求項24に記載のポリスルホンポリマー。
【請求項28】
請求項1から27までのいずれか一項に記載の変性ポリスルホンポリマーから構成される膜。
【請求項29】
逆浸透、ナノ濾過、限外濾過又は精密濾過に使用するための、請求項28に記載の膜。
【請求項30】
0.02〜400μmの範囲、好ましくは2μmの厚さを有する、請求項29に記載の膜。
【請求項31】
10nm〜10μmの範囲の均一な孔径を有する、請求項28に記載の膜。
【請求項32】
ナノ濾過に使用するための、10〜100nmの範囲、好ましくは10nmの均一な孔径を有する、請求項31に記載の膜。
【請求項33】
限外濾過に使用するための、100nm〜1μmの範囲、好ましくは200nmの均一な孔径を有する、請求項31に記載の膜。
【請求項34】
精密濾過に使用するための、1〜10μmの範囲、好ましくは2μmの均一な孔径を有する、請求項31に記載の膜。
【請求項35】
(i)浸漬析出誘導性の転相法によってポリマー膜を調製するステップ、
(ii)ナノ粒子をポリマーネットワークに導入するステップ、及び
(iii)前記ナノ粒子を溶解することができる薬剤によってナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜を調製する方法。
【請求項36】
前記膜がポリスルホンポリマーから製造される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリスルホンポリマーが、市販のポリスルホンポリマー又は請求項1から27までのいずれかに記載の変性ポリスルホンポリマーである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記市販のポリスルホンが、式
−フェニル−C(CH3)2−フェニル−O−フェニル−SO2−フェニル−O−
の繰返し単位を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記変性ポリスルホンポリマーが、請求項22に記載のポリスルホンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ粒子がFe2O3ナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記Fe2O3ナノ粒子が、FeCl3の加水分解によってその場で調製され、前記Fe2O3ナノ粒子が、磁場によってポリマーネットワーク内に配列している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記Fe2O3ナノ粒子が酸エッチングによって除去される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記酸がHClである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(i)ポリスルホン、FeCl3の加水分解によってその場で調製されるFe2O3ナノ粒子及び溶媒を含む流延溶液を調製するステップ、
(ii)膜試料をガラス表面上に流延し、該溶媒を蒸発させ、流延フィルムをガラスプレートと一緒に氷冷水に浸漬するステップ、
(iii)該ガラスプレートから分離した薄いポリマーフィルムを洗浄し、湿った膜をプレス圧縮するステップ、並びに
(iv)HClでのエッチングによって該Fe2O3ナノ粒子を除去するステップ
を含み、それによって膜の孔径がFe2O3ナノ粒子の大きさによって決定される均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を得る、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリスルホン膜を調製するための、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノ粒子が、膜にナノホールを生成する、酸若しくは塩基によって溶解することができる塩のナノ粒子、又は水若しくは有機溶媒で溶解することができる有機化合物のナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(i)及び(ii)が同時に実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過に使用するための、請求項35から46までのいずれかに記載の方法によって得られる膜。
【請求項48】
10nm〜10μm、好ましくは20〜100nm又は50〜100nmの範囲の均一な孔径を有する、請求項47に記載の膜。
【請求項49】
カルボキシル化ポリスルホンのカルボン酸基を架橋剤で架橋し、その後加水分解するステップを含む、均一な孔径の単分散ナノ多孔質ポリマー膜の調製方法。
【請求項50】
前記架橋剤が、OH、SH、NH2、シリル、B(OH)2及びP(O)(OH)2から選択される2個以上の官能基を有する脂肪族、芳香族又は複素環化合物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記架橋剤が、少なくとも1個のアルキレングリコール、アルキレンジアミン、アルキレンジチオール、アルキレンジシリル、ボロン酸−アルキレン−ホスホン酸又はボロン酸−アルキレン−アミン(アルキレンは、2〜8個の炭素原子を有する)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記架橋剤がアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコールである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
架橋モチーフの部分的開裂が、強塩基、好ましくはNaOHで実施され、したがって膜の孔径が架橋開裂度によって決定される、均一な大きさの分布の多数のナノホールを得る、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
加水分解による架橋モチーフの部分的除去によって、各アームの末端に特定の官能基を有する、空間内で方向付けられたペンダントアームが残る、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
(i)有機溶媒中にポリスルホン及びポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)などの無水基を含むコポリマーを含む均一な流延溶液を調製するステップ、
(ii)該溶液を流延し、その後該溶媒を蒸発させるステップ、
(iii)冷水に膜を浸漬し、膜を圧縮するステップ、
(iv)該圧縮した膜を塩基加水分解に付し、それによってカルボン酸ナトリウム塩の基を得るステップ、及び
(v)酸性化によって該カルボン酸ナトリウム塩の基をカルボン酸基に変換し、それによって高い選択性を有する膜を得るステップ
を含む、2個のポリマーから構成される膜の内部の無水物結合の塩基加水分解によって、2個のポリマーのブレンドからポリマー膜を調製する方法。
【請求項56】
前記ポリスルホンが、市販のポリスルホン又は請求項1から26までのいずれかに記載の変性ポリスルホンである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
逆浸透、ナノ濾過又は限外濾過に使用するための、請求項35から56までのいずれかに記載の方法によって得られる膜。
【請求項58】
水の精製のための、請求項28又は57に記載の膜。
【請求項59】
工業、農業又は都市廃水の処理のための、請求項28又は57に記載の膜。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【公表番号】特表2010−536980(P2010−536980A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521536(P2010−521536)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001139
【国際公開番号】WO2009/024973
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(504127647)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001139
【国際公開番号】WO2009/024973
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(504127647)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド (20)
【Fターム(参考)】
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